ザ・グレイトバトル
-感情の力-
第6章
ロッソとブル、レオとアストラはゴルザとクレッセント、ゴメスとベムラーとの攻防を繰り広げていた。
クレッセントが口から放つ光線を、ロッソとブルがジャンプしてかわす。
「ルーブスラッガー・ロッソ!」
「ルーブスラッガー・ブル!」
ロッソとブルが剣「ルーブスラッガー」を手にした。ロッソはルーブスラッガーを分割して、それぞれ両手で持って構えた。
クレッセントが放つ光線を、ロッソとブルはかわしながら前進する。2人がクレッセントとすれ違いざまに、ルーブスラッガーを振りかざす。
ゴルザが頭から光線を放って、ブルがルーブスラッガーを振りかざして切り裂いた。
“ウルトラセブン!”
イサミがウルトラセブンのルーブクリスタル「セブンクリスタル」をルーブスラッガーにセットする。
「ワイドショットスラッガー!」
ブルが振りかざしたルーブスラッガーから光の刃が放たれる。ゴルザが光の刃に左肩を切りつけられてふらつく。
“ウルトラマンゼロ!”
カツミがルーブスラッガーにウルトラマンゼロのルーブクリスタル「ゼロクリスタル」をセットした。
「ゼロツインスライサー!」
ロッソがルーブスラッガーを振りかざして、光の刃を放つ。クレッセントが光の刃を体に受けて、倒れて動かなくなった。
「やったな、カツ兄!」
「あぁっ!」
イサミとカツミが声をかけ合って、ロッソとブルがレオたちに目を向ける。
レオとアストラの繰り出す鉄拳で、ゴメスとベムラーを強く突き飛ばす。レオたちは光線技以上に、肉弾戦を得意としているウルトラ戦士である。
「行くぞ、アストラ!」
「あぁ、レオ兄さん!」
レオとアストラが声をかけ合う。ゴメスとベムラーが口から放った光線を、2人がジャンプしてかわす。
大きくジャンプしたレオとアストラが突き出した足の先に、熱が込められる。熱エネルギーを込めた足から繰り出される「レオキック」、「アストラキック」である。
ゴメスとベムラーがレオたちのキックを受けて、爆発を起こした。
着地したレオとアストラが、ロッソたちに振り返る。レオたちはさらにルパンカイザーたちにも目を向けた。
「これがスーパー戦隊のロボ、そして仮面ライダーにガンダムというものか。」
「強い信念と強さを持つ者もいるが、まだ粗削りなのもいる・・」
ハルキたちについてアストラと言葉を交わすレオ。その中でレオはハルキとフォースのことを気に掛けていた。
「アストラ、彼に宿っているウルトラマンのことを任せてもいいか?」
「放っておけないんだね、兄さん。オレは構わないよ。」
レオの頼みをアストラが聞き入れた。レオが意識を集中して、人間の姿、おおとりゲンとなった。
ロッソとブルも変身を解いて、カツミとイサミがゲンと合流した。
「君たちがロッソとブル、カツミくんとイサミくんの兄弟だな?」
「はい。あなたがウルトラマンレオ、おおとりゲンさんですね。」
ゲンとカツミが声をかけ合って、握手を交わした。
「詳しい話は、他のみんなと合流してからだ。」
「それなら、ここの防衛隊のみんなにも話をしましょう。情報交換ぐらいはしたほうがいいかなぁって。」
ゲンが呼びかけると、イサミがGフォースのことを話す。
「この世界の防衛隊か・・今の状況はいいとは言えない。だから力を合わせるのも重要になってくるな。」
ゲンが頷いて、カツミたちとともにライたちのところに向かった。
意識を失ったハルキは、Gフォース本部の医務室で目を覚ました。
「よかった・・気が付いたんですね・・」
介抱していたナツが、ハルキを見て笑みをこぼした。
「オレは・・・戦いは、どうなったんだ・・・!?」
「怪獣と怪人たちはみなさんが倒しました。ギンさんたちもカツミさんたちも、本部に戻っていますよ。」
周りを見回すハルキに、ナツが事情を話す。
「それと、新しい方々が来ていますよ。隊長と話をしてから、さらにみんなで話をまとめています。」
「みんなと・・オレも行くぞ・・話を聞かないと・・・!」
ナツから話を聞いて、ハルキがベッドから起きようとする。その瞬間、彼は体に痛みを感じて、顔を歪める。
「ムチャはダメです!フォースガンダムが負傷して、ハルキさん、気絶していたんですよ!」
ナツが慌ててハルキを支えて呼び止める。
「さっき駆けつけた戦士も、別の世界から来たんだろう!?・・だったらオレも話を聞かないと・・!」
それでもハルキはライたちと合流しようとする。
「そうだ、アキト・・アイツのことを知っている人がいるかもしれない・・・!」
「アキト?・・ハルキさん、あの仮面ライダーのことを知っているのですか・・・?」
アキトのことを思い出すハルキに、ナツが疑問を投げかける。
「アイツは・・オレの1番の敵だ・・・!」
ハルキは声を振り絞ると、痛みに耐えてベッドから飛び起きる。
「待って!待ってください、ハルキさん!」
ナツがハルキを追いかけて、続けて医務室を出た。
その頃、ゲンと魁利たちはトウジたちと情報交換をしていた。
「あなたも別の宇宙のウルトラマンなのですね。」
「はい。我々は宇宙の歪みをキャッチして、弟のアストラや他のウルトラマンたちとともに調査していました。その道中で次元のトンネルに巻き込まれて・・」
トウジが言いかけて、ゲンが自分たちのことを語っていく。
「オレたちも似たようなものだ。いきなりできた穴に吸い込まれて、オレたちがいたのとは違うこの世界に来てた・・」
魁利も自分たちのことを話していく。
「それと、他にもこの世界に他に3人来ているはずなんですが・・」
ノエルが続けて話して、苦笑いを見せた。
「えっ!?他にも仲間がいるのかー!?」
彼の言葉にギンが驚きと感動の声を上げる。
「いや、仲間というわけでは・・・」
「仲間なのは、ノエルさんだけっていうか・・・」
透真と初美花が言葉を詰まらせる。2人の言葉にギンもイズルも疑問符を浮かべる。
「魁利くんたち怪盗を追っている3人の警察官たちのことです。魁利くんたちを追っていた彼らも次元のトンネルに飛び込むことになったから、僕たちと同じくこっちに来ている可能性が高いと思っているのですが・・」
「そうだったのか・・その情報はまだ入ってきていない。」
ノエルが説明をして、トウジが答える。
「我々もその3人の捜索もしていく。見つけ次第、君たちに知らせよう。」
「メルシー。ご協力、感謝します。」
トウジが気遣いを見せて、ノエルが感謝して敬礼をした。
そのとき、カツミたちのいる指令室に、ハルキとナツがやってきた。
「ハルキ・・!」
「隊長、すみません・・止めたのですが・・!」
イズルが声を上げて、ナツがトウジに謝る。
「アキトは、あの仮面ライダーはどこに行ったか、分かりますか・・!?」
「それって、仮面ライダーフォースって名乗った人のこと?」
問いかけるハルキに、ソウゴが声を掛けてきた。
「ヤツはオレたちの前から姿を消した・・とてつもないパワーを備えたヤツだった・・・!」
ゲイツがアキトのことを思い出して、いら立ちを浮かべる。
「あの人物のこともレーダーで追ったが、行方が分からなくなってしまった・・今でも捜索を続けているが・・」
トウジが深刻な顔を浮かべて答える。ハルキがアキトへの怒りを噛みしめて、1人飛び出そうとする。
「待て、ハルキ隊員!今の君はとても戦える状態ではない!」
トウジが呼び止めて、足を止めたハルキが体を震わせる。
「行かせてください、隊長・・行かなくちゃならないんです・・・アイツは、地球の裏切り者・・アイツのせいで、かつての防衛隊がムチャクチャに会ったんです・・!」
「えっ!?」
ハルキが口にした言葉にナツ、ギン、イズルが驚きを覚える。
「鷹矢アキト、かつての防衛隊の一員だが、彼が情報をもらしたことで本部は壊滅的な損害を被ることになった・・」
「そんな!?・・地球人が、宇宙人たちに味方するなんて・・・!」
トウジが説明をして、ナツがさらに驚く。
「みんなにも話してもよさそうだな・・ハルキ、いいか?」
話を打ち明けることにしたトウジに、ハルキは落ち着きを取り戻してから頷いた。
「Gフォースができる以前から、地球防衛隊は侵略者と戦い続けてきた。防衛隊の本部や基地を叩こうと企む敵もいたが、侵入さえも許さなかった・・あのときを除いて・・」
語りかけるトウジが表情を曇らせる。ハルキも記憶を思い返して、怒りを感じていく。
「鷹矢アキト。ハルキとともに当時の防衛隊の隊員だった。ところがアキトは侵略目的の宇宙人、怪人に防衛隊の防衛網の情報をもらした・・」
トウジが話を続けて、ハルキが炎に包まれている本部の光景を思い出す。
「機密を知られた防衛網はもろく、怪獣、怪人、宇宙人の侵入を簡単にすることになった。隊員たちの多くは死傷し、防衛隊は壊滅的な打撃を受けてしまった・・」
トウジがさらに語って、ナツはハルキに対して戸惑いを感じていく。
(ハルキさんは、アキトという人に裏切られて・・そのときの防衛隊にいた大切な人も失って・・・)
ハルキの過去を知ったと思って、ナツは自分の胸に手を当てていた。
「その後、防衛隊は防衛システムのデータを一新して、侵略者にGフォースの本部に侵入されることはない。ただ今回は本部のそばまで攻められたので、本部が直接攻撃されるのも時間の問題だともいえる・・」
トウジがこれからの襲撃に対する不安を口にする。これを聞いて、ギンとイズルが緊張をふくらませる。
「これから戦いは厳しくなる。今まで以上に気を引き締めてくれ。」
「はいっ!」
トウジの呼びかけにナツ、ギン、イズルが答えた。
「情けないことだが、我々にできることはきわめて少ない。君たちの力も貸してほしいのだが・・」
「それは構わないッスよ。帰れる方法が見つかるまで何もせずにおとなしくするのは、性に合わないんでね。」
「3人の捜索もしてもらってますしね。」
協力を願うトウジに、魁利とノエルが頷いた。
「オレも協力しますよ。ここはみんな力を合わせたほうがいいからね。」
「オレはアイツに借りがある・・今度こそヤツに勝ってみせる・・!」
ソウゴも協力することを望んで、ゲイツはアキトに対する怒りを噛みしめる。
「アイツを許せないのはオレもだ・・今度は必ずアイツをブッ倒す・・・!」
ノゾムもアキトへの怒りを強めていた。
「もちろんオレもみんなの力になろうとは考えている。しかしみんな、感情に任せ切りになるのではなく、冷静に戦うことが必要だ。」
ゲンが呼びかけて、ライたちをなだめる。
「冷静に、そして自分らしく、だな・・」
「そっちのほうがあたしたちらしけどね。」
ジョーが落ち着いたまま、ルカが気さくな笑みを見せる。
「ですが、アキトをこのまま野放しにすれば、この地球への危険が増すことになる!すぐに行動を起こさないと・・!」
ハルキが感情を込めて呼びかける。しかし痛みと疲れに襲われて、彼は床に膝を付く。
「ダメですよ、ハルキさん!まだ休んでいないと・・!」
ナツが慌ててハルキに駆け寄って支える。それでもハルキは動こうとする。
「彼女の言う通りだ。焦って動いても何の解決にもならない。そればかりか、敵の術中にはまる危険が増すことにもなりかねない・・」
「だからといって、このままじっとしていても、アイツらが好き放題になるだけだ・・!」
ゲンも呼びかけるが、ハルキは聞き入れようとしない。彼の姿を見て、ゲンは一瞬心を動かされた。
「お前、防衛チームに入ったばかりのオレにそっくりだな・・」
「えっ・・・?」
ゲンが口にした言葉を聞いて、ハルキが戸惑いを覚える。
「この地球を守り、侵略者を倒すために、どのようなことでもやる覚悟が、お前にあるか?」
「どんなことでもやる覚悟・・・はい、もちろんです・・!」
ゲンが続けて投げかけた言葉に、ハルキが頷いた。
「ならばついてくるんだ。桜木隊長、彼をお借りします。」
ゲンが呼びかけて、トウジが頷いた。ハルキはゲンとともに指令室を出て、ライたちも続いた。
Gフォース本部から外へ出たハルキとライたち。足を止めたゲンがハルキに振り返る。
「ハルキくん、君はウルトラマンと一心同体になっているな。君がチームの仲間に秘密にしているようだったので、あの場では言わなかったが・・」
ゲンがフォースについて指摘してきた。ハルキがフォースブレスを掲げると、フォースの姿が現れた。
“やはり気付いていましたか、ウルトラマンレオ。”
「あぁ。ハルキくんの中にある君の存在を、オレは感じていた。」
フォースが声を掛けて、ゲンが答える。
「オレは気付かなかったぞ・・イサミ、気付いてたか?」
「オレもハルキが話してくれなかったら気付かなかったって・・」
カツミとイサミがフォースのことを話していく。
「お前たちはウルトラマンの姿と力を使っているだけで、一心同体や同一という存在ではない。ウルトラマンに変身していない状態では、すぐに気付けなくて当然だ。」
ゲンがカツミたちに向けて言いかける。
ウルトラ戦士は、地球人と一心同体になった者、地球人に変身して地球に滞在した者がいる。地球人がウルトラマンの姿と力を得たこともあった。
「だが一心同体にあるはずの2人だが、ハルキくん、君はフォースの力を使いこなせるだけの身体能力は備わっていないようだ。」
ゲンが指摘したことに、ハルキが目を見開く。
「オレが、フォースの力を使いこなせていないということですか・・!?」
「そうだ。君自身が強くならなければ、フォースも本来の強さを発揮することはできない。どんなに大きな力や強力な武器でも、使いこなせなければ意味はない。」
声を上げるハルキに、ゲンが檄を飛ばす。
「あの双子怪獣の回転攻撃にも、君は苦戦している。あの装甲の力も、まだ使いこなせてはいない。」
「それを使いこなせばいいということだろう・・!?」
「軽々しいことを言うな!簡単なことではないぞ!強くなることも、大切なものを守る戦いも!」
ゲンが語気を強めて、ハルキが言葉を詰まらせる。
「お前が今している戦いは、負けることが絶対に許されない戦いなのだ!」
「そんなことは分かっています・・もうオレは、アイツに負けるわけにはいかないんだ・・!」
「ならばどうすべきか、どうあるべきか、しっかりと考えろ!軽率な行動が自分だけでなく、多くの人々を脅かすことになる!」
「このままじっとしていることのほうが、それこそ軽率です!早くアイツを、アキトを・・!」
さらに叱咤するゲンだが、ハルキはアキトに対する怒りを消さない。
「今のお前は、怒りに囚われている・・それでは、大切なものまで傷つけてしまうぞ・・・!」
「怒りを忘れることが大事だと言っているんですか・・・!?」
ゲンに言い返してきたのは、ノゾムだった。
「オレは身勝手な考えの敵と戦っている・・そうしなければ、敵の言いなりになれば、オレはオレでなくなるから・・・!」
「怒りを忘れろとは言っていない。しかしその感情に振り回されるなと言っている。自分を見失うなということだ。」
自分の怒りを口にするノゾムに、ゲンが冷静に告げる。彼の言葉を聞いて、ノゾムが戸惑いを感じた。
「お前の敵だけでなく、双子怪獣にも勝てはしない。今のお前ではな・・」
「オレたちが、あの怪獣たちにも勝てない・・!?」
ゲンの投げかけた言葉に、ハルキがいら立ちを浮かべる。
「だが単純に力を高めることだけが、強くなることではない。敵の弱点を突くのも、勝利のカギだ。」
「敵の弱点を突く・・・!」
「目には目を、スピンにはスピンだ・・!」
戸惑いを浮かべるハルキに言うと、ゲンがコマを取り出して回す。直後に足元に落ちていた真っ直ぐな形の木の棒を拾って、回転を加えて空高く投げた。
回転する木の棒は真っ直ぐに落下して、回転しているコマを上から真っ二つに割った。
「回ってるコマが割れた・・!?」
「回転が同じなんだ!・・同じ向きとスピードで回転すれば、棒からすればコマは回っていないのと同じになる・・!」
カツミが驚きを見せて、イサミがコマと棒の原理を見抜いた。
「だけど、それを人がやるとしたら、回転に耐えられるだけの忍耐力と身体能力が必要になってくる・・」
「言うは易し、行うは難しってヤツだね・・」
ゲイツとソウゴも割れたコマを見て言いかける。
「このコマを双子怪獣に見立てて、自らも回転して上から攻撃する。そのための強さを、お前は身に着けなければならない・・!」
ゲンが投げかけた言葉に、ハルキは無言で頷いた。
「それからフォース、君には異空間でアストラから訓練を受けてもらう。」
ゲンがフォースにも呼びかけてきた。
“私が、ウルトラマンから・・”
フォースが戸惑いを感じながらも、アストラからの特訓を受けることを決めた。
その後、ハルキは高速回転に耐えられる強さを得るための特訓に入った。彼は回転装置を使って、高速回転に目と体を慣れさせようとする。
「うあっ!」
しかし回転に耐えられずに、ハルキは振り落とされて倒れる。
「くそっ!・・あそこまで言われて、これができないなんてことになったら、かっこ悪いじゃないか・・・!」
ハルキはいら立ちを噛みしめて、再び回転装置をつかんで再び回転する。
「よく続くな、アイツ・・」
イサミがハルキの様子を見て、ため息をつくばかりになっていた。
「イサミ、オレたちも訓練するぞ。」
「ええっ!?カツ兄、何でオレたちまで回んなくちゃなんないんだよ!?」
カツミが呼びかけて、イサミが不満の声を上げる。
「回転ばかりじゃない。体を鍛える方法はな。」
カツミは言い返すと、その場で腕立て伏せを始めた。
「まったく、カツ兄は・・本番になってへばってても知らないよ・・」
イサミも不満を見せながら、運動を始める。2人をよそに、ハルキは訓練を続けていく。
(耐えるんだ・・これで振り回されているんじゃ、自分でこれだけの回転をするなんてムチャだ・・!)
ハルキは気を引き締めて、回転に耐えていく。彼は回って見える周りの光景を目に焼き付けていた。
(見える・・これだけ回転していても、周りの様子が・・・!)
動体視力が磨かれたことを実感して、ハルキが戸惑いを覚える。彼は回転したまま回転装置から手を放して、床に着地した。
そのとき、着地した床が削れてへこみができた。
「か、回転で穴が開いた・・!」
「足がドリルみたいに床を削ったんだ・・!」
カツミが驚いて、イサミが今の現象を悟る。
「これを、オレがやったのか・・・!?」
「これがスピンを破る技、きりもみキックだ。」
戸惑いを感じているハルキに、ゲンが声を掛けてきた。
「しかしこれではヤツらを倒すことはできない。岩1つを砕くほどでなければ、技とは言えない。」
「もっと精度を上げろということですね・・・!」
ゲンの言葉を受けて、ハルキが気を引き締めなおす。
「外へ出る。キックを完成させるんだ。」
ゲンがハルキを連れて外へ出る。2人のその様子を、通りがかったナツが目撃した。
(ハルキさん・・まだ体が回復していないのに・・・)
ハルキを心配したナツは、彼らを追いかけていった。
Gフォース本部の外へ出たハルキとゲン。ハルキの特訓をライ、聖也、ソウゴ、ゲイツ、ノゾムも見ていた。
「オレも強くなるために特訓を重ねた。ハルキを見ていると、そのときのことを思い出すな・・」
ゲイツが昔のことを思い出して呟く。
「ゲイツが・・それってジクウドライバーとライドウォッチを使えるようになるための・・?」
「そうだ。全てはジオウ、お前が魔王になる歴史を変えるためにな・・」
ソウゴが興味津々に問いかけて、ゲイツが彼に鋭い視線を向ける。
ゲイツは未来から、悲惨な歴史を変えるために来た。彼のいた時代では、ソウゴが最低最悪の魔王「オーマジオウ」が支配していた。
ゲイツからこの未来のことを聞かされたソウゴは、最高最善の王様になる決意を強めたのだった。
「どっちに転がるのがいいのか悪いのかは、オレには分かんない・・オレは、全てを正すだけだ・・オレの目の前に起こる出来事は・・」
ライも自分の考えを口にする。彼は自分に備わっている力を思い返していく。
これまで仮面ライダーが戦ってきた怪人たちの集まった組織「ハイパーショッカー」によって、ライはその戦士として調整された。しかし洗脳される前に彼は脱出して、ハイパーショッカーとの戦いに身を投じたのだった。
「戦う理由や持っている力はそれぞれだが、大切なものを守ろうとする姿勢は同じ。そしてそれは、仮面ライダーに限ったことではない。」
「ウルトラマンも、モビルスーツのパイロットも・・・」
聖也とノゾムがハルキたちの様子を見て言いかけた。
きりもみキックの特訓を続けるハルキだが、岩にうまくキックを当てることができない。できても砕くほどの威力を発揮できないでいた。
「やる前よりは回転も力も上がっているはず・・それでも力が足りないのか・・・!?」
ハルキが無力感に襲われて、苦悩を感じていく。
「身体能力だけでない。心技体。それが技の威力を上げることになる。」
ゲンが彼に向かって助言を送る。
「勝とうとする、守ろうとする。その信念を強くすれば、体の力につながる。」
「強い信念・・・!」
ゲンの言葉を聞いて、ハルキが目を閉じて集中力を高める。
「君にも守りたいものが残っているはずだ。この地球、君と苦楽を共にする仲間・・まだ残っているはずだ。」
「オレの、守りたいもの・・・」
ゲンに言われて、ハルキが記憶を巡らせた。彼の脳裏にトウカが、さらにナツの姿が浮かび上がった。
「何をしているのですか!?」
そこへナツが姿を現して、ハルキたちに向かって声を掛けてきた。ナツのことを考えていたハルキは、彼女に対して戸惑いを覚える。
「ハルキ隊員、あなたは体が回復していないんです!そんなムチャをしたら、治るものも治らないです!」
「これはオレが強くなるために、オレが決めてやっていることだ・・別にやらされているわけじゃない・・」
注意をするナツに、ハルキが言い返す。
「彼の言う通りだ。強くなりたいという彼の意思を汲んで、オレは特訓に付き合っている。」
ゲンもナツに事情を話す。それでもナツは納得しようとしない。
「それでもダメです!万全な状態になってからやらなければ、それは特訓にはなりません!」
ナツがハルキの腕をつかんで、無理やり本部に連れ戻そうとする。
「よさないか。ハルキの決意を押さえつけても、君は平気なのか・・!?」
するとゲンがナツを呼び止めてきた。
「ケガを悪化させて取り返しのつかないことになるくらいなら・・命は、誰にだって1つしかないんです!」
「だからこそ、オレがやるしかないんだ・・怪獣や宇宙人、そしてアイツを倒すのは、オレだ・・!」
さらに呼びかけるナツだが、ハルキは特訓をやめようとしない。ナツが強引にハルキの腕を引っ張ろうとする。
「あなたは大切な人を失ったことは、私にも想像がつきます!だからあなたは死んではいけないんです!」
「死んじゃいけないのは、お前だって同じだ!」
呼びかけるナツに、ハルキが言い返す。彼の言葉を聞いて戸惑いを感じて、ナツがハルキから手を放す。
「・・・もう正直に言ったほうがいいな・・馬鹿げてると思われるかもしれないが・・・」
ハルキがため息をついて、自分が抱えているものをナツに打ち明けることにした。
「似ているんだ・・君が、トウカに・・オレの仲間だった人に・・・」
「えっ・・私が・・・?」
ハルキが口にした言葉に、ナツが戸惑いをふくらませる。
「君と初めて会ったとき、トウカかと思った・・トウカはあのとき死んだはずなのに・・・」
「だから、私のことを不思議そうに見ていたのですね・・・」
ハルキの話を聞いて、ナツが悲しい顔を浮かべる。
「オレの自分勝手だ・・あんまり思いつめなくていい・・」
「本当・・勝手なことを考えてましたね・・・」
言いかけるハルキに、ナツが物悲しい笑みを見せた。
「今は技を完成させることに専念するんだ。双子怪獣が、いつまた現れるか分からないのだから・・」
「分かっています・・彼女のことは後回しです・・・!」
ゲンが呼びかけて、ハルキが頷く。彼は集中力を高めて、大きくジャンプして回転した。
(回転の速度はヤツらのスピンに負けてはいない・・そこからさらに威力を上げるには・・!)
ハルキが回転しながら、考えを巡らせる。
(足に力を集中させて、一気に叩き込む・・!)
感覚を研ぎ澄ませた彼が、眼下の岩に足を突き出した。岩が真っ二つに割れて、さらにバラバラに吹き飛んだ。
「やった・・!」
その瞬間を見て、ソウゴが声を上げた。
「できた・・岩を砕けた・・・!」
着地したハルキも、割った岩を見て戸惑いを覚える。
「これでフォースになったとき、回転する怪獣を攻撃することができる。」
「上から回転しながら急降下して、怪獣を攻撃する・・台風の目を突くように・・・!」
ゲンが微笑んで、ハルキが特訓の手応えを感じて手を握りしめる。
「お前の大切なものは。お前自身で守り抜かなければならない。そのために精進を続けるんだ。」
「ありがとうございます、ゲンさん・・ですが、なぜそこまでオレのことを・・・?」
激励を送るゲンに感謝するも、ハルキが疑問を投げかける。
「オレがあなたに似ていると言ってましたが・・・」
「オレも大切なものを失ってきたからな・・家族も故郷も、仲間も・・」
言いかけるハルキに、ゲンが自分のことを打ち明けた。彼の話を聞いて、ハルキだけでなく、ライたちも戸惑いを感じていた。