ザ・グレイトバトル

-感情の力-

第2章

 

 

 何もない暗い空間の中を、ハルキは漂っていた。

(何だ?・・オレは、どうなったんだ?・・・体が、動かない・・・!?

 今の自分の異変に困惑するも、ハルキは声を出すこともできない。

「ここは君自身の心の中だ。」

 そこへ声がかかって、ハルキが意識を傾ける。彼の前に現れたのは、アーストロンたちを倒した巨人だった。

(アンタは誰だ?・・ウルトラマンなんだろう・・?)

 ハルキが心の中で声を上げる。彼は実際に声を出すことができなかった。

「ウルトラマン・・君たち地球人からすればそうなるだろう。」

 巨人がハルキの心の声を聞いて答えた。

「私の名はフォース。“惑星F4”からこの地球に来た。」

(フォース・・・!?

 巨人、フォースが名乗ってハルキが動揺を感じていく。

「惑星F4はウルトラマンの故郷“M78星雲”に負けず劣らずの輝きを宿した星だった。だが宇宙人の襲撃を受け、F4は壊滅した・・」

 フォースが自分のことをハルキに語りかける。

「その宇宙人を倒すため、私は地球に来た。」

(そうだったのか・・だけど、どうしてオレたちを助けたんだ・・?)

「君たちに私たちが受けたような悲しみを味わってほしくなかった。大切なものを失う悲しみを・・」

(大切なものを失う悲しみ・・それはオレも、痛いほど感じている・・・)

 さらに語りかけるフォースに、ハルキが自分のことも打ち明けた。

(オレは怪獣や宇宙人に、大切な人を殺され、自分の居場所を失った・・ヤツらをオレは許すことはできない・・!)

「君も、宇宙人たちを憎んでいるのか・・」

 敵への憎悪を見せるハルキに、フォースが戸惑いを覚える。

「私を君とともにいさせてもらえないだろうか?私は地球では長時間、本来の姿で滞在することはできない。エネルギーを消耗してしまうからだ。」

(だけど、そんなことをして、オレとアンタは何ともないのか・・!?

「普通に行動する上では問題はない。私と君が一心同体となるのだ。」

(そうか・・オレとアンタは、力を合わせることになるか・・・)

 フォースの話を聞いて、ハルキが安らぎを覚えた。

「ではこれからよろしく頼む。」

 フォースが感謝して、体から光を発した。そのまぶしさで、ハルキは周りが見えなくなった。

 

 ハルキが目を覚ましたのは、Gフォースの本部内にある医務室のベッドの上だった。

「ハルキ隊員、気が付いたんだね・・!」

「・・ここは・・?」

 付き添っていたイズルが安心を見せて、ハルキが体を起こして周りを見回す。

「本部だよ。応答がないから、フォースガンダムから君を出して、ここまで連れてきたんだ。もちろん、フォースガンダムも収容されて、戻ってきているよ。」

「いきなり倒れたからビックリしたんだぞ〜・・!」

 イズルが事情を説明して、ギンが安心して大きく肩を落とす。

「1人で突っ走るのはなしだぜ、ハルキ!オレたちはGフォース!チームなんだからな!」

 イズルがハルキを心配して詰め寄る。

「その通りだ、ハルキ。」

 そこへトウジがナツとともにやってきて、ハルキに声を掛けてきた。

「今回は現れた巨人が怪獣と超獣を倒したからいいものの、このような勝手な単独行動は君自身だけでなく、我々全員や守るべき人々や場所を危険にさらすことになるのだぞ。」

 トウジがハルキに注意を呼びかける。アーストロンたちとの戦いを思い返して、ハルキが歯がゆさを覚える。

「これからはこのような行動は慎むように。周りに危害が及ぶようなことになれば、私は君に謹慎処分を下すことになると思うように。」

「はい・・申し訳ありませんでした・・・」

 トウジからの警告を受けて、ハルキが頭を下げた。

「イズルとナツは今回現れた怪獣、超獣の分析を始めてくれ。ギンはパトロール隊と連携して、警戒態勢に入ってくれ。」

「了解!」

 トウジが指示を出して、ナツたちが敬礼して答えた。

「ハルキは次の指示があるまで休息を取れ。戦いでの傷を治すように。」

「分かりました・・」

 トウジが続けて呼びかけて、ハルキが答えた。トウジとナツたちが外へ出て、医務室はハルキだけになった。

(オレは怪獣たちを倒さないといけない・・休んでなど・・・!)

 ハルキが心の中で、怪獣たちへの怒りをふくらませていく。

“ならば私の力を使えばいい。”

 そのとき、ハルキに向かって声が響いてきた。

「だ、誰だ・・!?

 ハルキが周りを見回すが、彼以外に医務室にはいない。

“私はフォース。今は君と一心同体にある。”

「フォース!?あのウルトラマンか!?

 声の主、フォースの声を聞いて、ハルキが驚きを浮かべる。

“この声は君にしか聞こえない。今、君が左腕に着けているフォースブレスを通して話している。”

 フォースの話を聞いて、ハルキが視線を移す。彼の左腕には腕輪「フォースブレス」が着けられていた。

“フォースブレスを使えば、君は変身して私の力を使うことができる。ただし変身していられる時間に限りがあることは、頭に入れてほしい。”

(オレがあなたの、ウルトラマンの力を使えるのか・・・!?

 フォースの話を聞いて、ハルキがさらに戸惑いを感じていく。

“私も怪獣を倒すために戦っている。ともに力を合わせていこう。”

(あぁ。オレも怪獣を倒すために戦う・・)

 互いに決意を伝え合って、フォースとハルキは意思を共有した。

 

 その翌日、休息を終えたハルキは、格納庫に収められているフォースガンダムの前にいた。彼はフォースガンダムとフォースのことを思い返して、力について考えていた。

(フォースの力があるなら、フォースガンダムの力が不必要ということになってしまうんだろうか・・・?)

“いや、私の力にも限界はある。君が変身する時間もな。そこに頼りすぎるのではなく、このメカの力も貴重であると考えたほうがいい。”

 疑問を感じていくハルキに、フォースが助言を送る。

“そのメカにも可能性があることは、私にも分かる。”

(分かるのか・・状況に応じて変形できるそうだが、そのデータがまだないんだ。今、この前の戦いを参考にして、そのデータを開発中だけど・・)

“そのデータについても、私は力を貸せるかもしれない。”

(ホントなのか!?

 フォースの言葉を聞いて、ハルキが驚きを覚える。

“そのメカがどのようなものなのか、詳細が分かっていないので確証はないが。”

(でも可能性があるということか・・試してみる価値はある。)

 フォースの言葉を受けて、ハルキが自信を覚える。彼はフォースガンダムのコックピットに乗り込んで、コンピューターを操作する。

“このメカ、私の力と連動させることができれば・・”

(できるのか?)

“やってみなければ分からないが・・”

 フォースの言葉を受けて、ハルキが戸惑いを浮かべる。彼がフォースブレスをコンピューターに近づけると、フォースがそのコンピューターを確認する。

“そのメカと私の力、うまく連動させられそうだ。”

(ホントか!?・・フォースガンダムは、短時間なら自動運転が可能だ。そしてガンダムとフォースをリンクさせて、うまくパワーアップにつながれば・・・!)

 フォースがハルキとともに、自分とフォースガンダムの可能性を見出した。

 そのとき、Gフォースの基地内に警報が鳴り出した。真剣な顔を浮かべたハルキが、本部の指令室への連絡を取った。

「どうしたんですか、隊長!?

“あぁ。LL7地点に2体の怪獣が現れた。今は海上にいるが、湾岸に被害が及ぶのも時間の問題だ。”

 ハルキがたずねて、トウジが状況を説明する。

“全隊員、現場へ急行!被害を最小限に食い止めろ!”

「了解!フォースガンダム、行きます!」

 トウジが命令を下して、ハルキがフォースガンダムを発進させる。フォースガンダムとともに、ナツたちの乗るGパニッシャーが本部から出撃した。

 

 湾岸に隣接した小さな町。そのそばの海に、2体の怪獣がいた。

 その海岸線にフォースガンダムとGパニッシャーが駆けつけた。

「今度は赤と黒の怪獣かよ!次から次に出てきて、気が休まらないなぁ!」

「あの怪獣たち、姿かたちがそっくりだ・・もしかして、双子・・!?

 ギンとイズルが怪獣たちを見て声を上げる。

(あの怪獣・・・間違いない・・防衛隊本部を襲ったうちの2匹!双子怪獣だ!)

 ハルキが双子怪獣、ブラックギラスとレッドギラスを見て、怒りを覚える。

“この怪獣たち、惑星F4を滅ぼした怪獣たちだ・・!”

 そのとき、フォースがハルキに向かって声を上げた。

(何だと!?・・まさか、オレとフォースの仇が同じだったなんて・・それなら好都合というものだ!)

「アイツに連携攻撃をさせるな!1匹ずつ分断して倒すんだ!」

 思い立ったハルキが、ナツたちに呼びかける。

「ハルキ、あの怪獣を知ってるのか!?

「防衛隊本部を襲ったときに出てきた双子怪獣だ!2匹が組んで回転して、竜巻を引き起こす!」

 ギンが問いかけて、ハルキが記憶を呼び起こす。

「あの海でそんなマネされたら、町が危険だよ!」

「2機ずつに分かれて攻撃しましょう!怪獣たちを引き離しましょう!」

 イズルが不安の声を上げて、ナツが呼びかける。ギンとイズル、ハルキとナツがそれぞれレッドギラス、ブラックギラスへの集中攻撃を仕掛ける。

 フォースガンダムとGパニッシャーがビームライフルを連射する。ブラックギラスたちはビームを当てられるも、ほとんどダメージを受けていない。

「なんて頑丈なヤツだ・・!」

「こうなったら直接切りつけてやるさ!」

 イズルが驚いて、ギンがいきり立つ。ギンのGパニッシャーがビームサーベルを手にして、レッドギラスに向かっていく。

「ギン、焦ったらダメだ!」

 イズルが呼び止めるが、ギンのGパニッシャーがレッドギラスに向かってビームサーベルを振りかざした。レッドギラスはあなたの角でビームサーベルを防いだ。

「何っ!?

 ビームサーベルも通じないことに、ギンが驚く。レッドギラスが角から発した光線を受けて、Gパニッシャーが爆発に襲われる。

「ぐっ!」

「ギン!」

 うめくギンにイズルが叫ぶ。イズルのGパニッシャーがビームライフルを発射して、レッドギラスをけん制する。

「ギン、今のうちに体勢を!」

「すまない、イズル!」

 イズルの声を聞いて、ギンがGパニッシャーを動かして後ろに下がる。

 フォースガンダムとナツのGパニッシャーが、ブラックギラスに向けてビームを放っていく。ブラックギラスがダメージを受けて押されていく。

 レッドギラスがブラックギラスに近づいて合流する。2体が組み付くと、回転を加える。

「まずい!ギラススピンが来るぞ!」

 ハルキが呼びかけて、フォースガンダムとGパニッシャーが離れる。ブラックギラスたちが高速回転して、竜巻のように動き出す。

 高速回転「ギラススピン」によって海が揺さぶられて、津波が巻き起こる。

「これ以上、アイツらに好き勝手にさせるか・・!」

 ハルキが怒りをふくらませて、フォースガンダムがビームライフルを発射する。しかしビームはギラススピンにはじかれる。

 ブラックギラスたちは回転しながら、角からビームを放つ。

「ぐっ!」

 フォースガンダムがビームを受けて、ハルキが衝撃に襲われる。

「ハルキくん!」

 ナツがハルキに向かって呼びかける。フォースガンダムが海岸に叩きつけられて、ハルキが痛みを覚える。

「あれじゃ攻撃が通らない・・!」

“私の力を使ってくれ。力を合わせて双子怪獣を倒すのだ。”

 焦りを噛みしめるハルキに、フォースが呼びかけてきた。

「よし・・フォースの力、使わせてもらうぞ・・フォースガンダム、オートパイロット!」

 頷いたハルキがフォースガンダムの操縦をオートにした。

「フォース!」

 ハルキがフォースブレスを付けている左腕を前に伸ばした。彼が光を発しながらフォースガンダムの外へ飛び出して、光の巨人に、フォースに変身した。

「あ、あれは!」

「巨人・・この前現れたウルトラマンだ・・!」

 ギンとイズルがフォースを見て、驚きの声を上げる。ギラススピンを止めたブラックギラスとレッドギラスが、フォースに向かっていく。

 フォースが腕を振りかざして、ブラックギラスたちにパンチを叩き込んでいく。ブラックギラスたちがダメージを受けてふらつく。

「すごいパワーだ・・これが、フォースの力・・・!」

「私だけではない。ハルキ、君の意思も私を動かしているのだ。」

 戸惑いを感じていくハルキに、フォースが呼びかける。ハルキはフォースの中の空間にいるように感じていた。

 ブラックギラスとレッドギラスが再び組み合って、ギラススピンを仕掛けてきた。

「またあの回転攻撃が来るぞ!」

 ギンがフォースに向かって呼びかける。ブラックギラスたちが角から放つビームを、フォースが側転でかわす。

 フォースがジャンプして、ブラックギラスたちに向かってキックを繰り出す。しかしギラススピンに跳ね返されて、海に叩き落とされる。

「ぐっ!・・フォースでもギラススピンを破れないなんて・・!」

 ハルキがギラススピンの強度に毒づく。

「光線であの回転を突き破るしかない・・!」

 ハルキが呼びかけて、フォースが立ち上がってブラックギラスたちに視線を戻す。フォースが両手を握って、左胸の前で交差するように腕を組む。

「フォースチャージシュート!」

 フォースが両手を伸ばして右腕を縦、左腕を横にして再び両腕を組んだ。その右腕から光線を発射した。

 しかし光線はギラススピンにはじかれて、軌道をそらされた。

「そんな!?

「ウルトラマンの光線も通じないっていうのか!?

 ナツとギンが驚きの声を上げる。ブラックギラスたちが回転を続けたまま、フォースたちに向かってきた。

 フォースがギラススピンに突き飛ばされて、再び海に叩きつけられる。

「これじゃ攻撃が全部はじかれてしまうぞ!」

 ハルキが危機感を覚えて、自動操縦で後方に下がっているフォースガンダムに目を向けた。

「フォース、今でもフォースガンダムとリンクできるのか・・!?

「もちろんだ。今もリンクをつなげている。」

 ハルキが問いかけて、フォースが答える。フォースは戦いをしながら、無意識にフォースガンダムに思念を送っていた。

「今入っているデータは、鎧となってパワーを上げることだ。」

「パワーか・・そのパワーで、あのスピンを打ち破る!」

 フォースの言葉を聞いて、ハルキがフォースブレスの画面をスライドして、あるマークを表示させた。

「フォースアーマー!」

 フォースガンダムが変形をして、フォースの体に鎧のように装着された。フォースガンダムは装甲「フォースアーマー」になって、フォースの力をアップさせた。

「どうなってんだ!?フォースガンダムが変形して、あのウルトラマンと合体した!?

「これが、フォースガンダムの隠された力・・・!?

 ギンとイズルがフォースを見て驚きをふくらませていく。

「それじゃ、ガンダムにいるハルキさんは・・・!?

 ハルキがまだフォースガンダムの中にいると思って、ナツが心配する。

「ハルキさん、応答して!ハルキさん!」

 ナツが呼びかけるが、フォースアーマーからは応答がない。フォースと一体化しているハルキにも、彼女の声は伝わっていない。

「どれほどのリスクがあるか分からない。短時間でヤツらを倒すぞ。」

「もちろんそのつもりだ!」

 フォースが呼びかけて、ハルキが答える。フォースアーマーを装着しているフォースが、右手を振りかぶってエネルギーを集める。

「フォースチャージナックル!」

 フォースアーマーの剛腕に集められたエネルギーを、フォースはパンチとして繰り出した。パンチはギラススピンを打ち破って、ブラックギラスとレッドギラスを吹き飛ばした。

「やった!」

「あのスピンを打ち破った・・!」

 ギンとイズルがフォースの攻撃を見て、戸惑いを感じていく。

 フォースの強力な一撃を受けて、ブラックギラスとレッドギラスは大きなダメージを受けた。だがフォースのエネルギーの消耗も大きくなっていて、胸にある「カラータイマー」が青から赤に変わって点滅を始めていた。

 ウルトラマンの多くは、胸にカラータイマーを備えている。通常は青色をしているが、エネルギーが少なくなると赤く点滅を始めて、さらに少なくなると点滅を早めるのである。

「普段よりもエネルギーの消耗が激しい・・このアーマーは、よりエネルギーを使うようだ。」

「ホントに勝負を早めたほうがいいということか・・!」

 フォースとハルキが焦りを噛みしめる。ブラックギラスたちにとどめを刺そうと、フォースが走り出す。

 そのとき、上空から1つの影が飛び出してきた。ブラックギラスたちを操るマグマ星人が現れた。

「お前は!」

 ハルキがマグマ星人を目の当たりにして、声を上げる。マグマ星人が降下しながら、装備したサーベルを振りかざした。

 切りつけられたフォースアーマーから火花が散って、フォースが突き飛ばされる。

「戦いを長引かせるわけにはいかない!コイツもすぐに倒す!」

「そのつもりだ・・!」

 ハルキが呼びかけて、フォースが答える。フォースが握りしめた右手を振りかざして、マグマ星人に向かって振りかざす。

 マグマ星人は素早く動いて、フォースのパンチをかわす。

「速い!」

 ハルキが毒づいて、フォースが攻撃を続ける。しかしマグマ星人のスピードに追い付けない。

「ウルトラマンの援護をするんだ!」

「はい!ビームライフル、発射!」

 ギンが呼びかけて、ナツが答える。Gパニッシャーがマグマ星人を狙って、ビームライフルを発射する。

 マグマ星人が素早く動いて、ビームをかいくぐる。

「このアーマー、パワーがあるがスピードが弱まっている・・!」

 フォースアーマーの弱点を痛感して、ハルキが焦りをふくらませる。

「今は双子怪獣を先に倒すのが先決だ・・またギラススピンを出されたら厄介だ・・!」

 フォースが呼びかけて、ハルキが集中力を高める。フォースがブラックギラスとレッドギラスを倒そうと、残りの力を振り絞る。

 そのとき、マグマ星人がサーベルを振りかざして、ビームを発射した。ビームを横から受けて、フォースが体勢を崩して倒れた。

「ギラスたちはやらせはせんぞ、フォース!」

 マグマ星人がフォースをあざ笑って、Gパニッシャーが放つビームをかいくぐる。

「こうなったら、直接アイツの動きを止める!」

 ギンが言い放って、彼の乗るGパニッシャーがビームサーベルを手にして飛びかかる。ビームサーベルとマグマ星人のサーベルが、激しくぶつかり合う。

「所詮は機械・・このオレの敵ではない!」

 マグマ星人があざ笑って、サーベルを振りかざす。ビームサーベルを持つGパニッシャーの腕が切り裂かれた。

「しまった!」

 ギンが声を上げて、Gパニッシャーが体勢を崩す。

「こ・・このままでは・・・!」

 フォースのエネルギーが少なくなって、ハルキが焦りをふくらませる。フォースのカラータイマーの点滅が速まっていく。

 窮地に追い込まれたフォースガンダムとGパニッシャーに、ブラックギラスたちとマグマ星人が迫った。

 

 パラレルワールド。平行世界とも呼ばれていて、同じ世界、同じ宇宙が次元を隔てていくつも存在している。

 その次元を超えて、2人の青年がハルキたちのいる世界に来ていた。

「ホントに何がどうなってんだか・・どう見てもオレたちの知ってる地球じゃないぞ・・」

「これはパラレルワールドってことだな。ここは地球だけど、オレたちが住んでる地球じゃない。」

 2人の青年、(みなと)カツミとイサミが周りを見て言いかける。

「これはオレたちがこっちに来たときと同じ波長の次元トンネルを通らないと、元の世界に戻れないぞ・・」

「だったら早く戻らねぇと!みんな心配してるはずだから!」

 イサミが現状を分析して、カツミが慌てる。そのとき、2人は轟音が鳴り響いたのを耳にして振り返った。

「な、何だ!?

「向こうで戦いが起こってるみたい・・あれは、怪獣と宇宙人!?それにロボット!?

 カツミとイサミが海辺をじっと見て声を上げる。彼らはマグマ星人たちを目撃した。

「しかもあれ、ウルトラマンだよ!」

「見たことないウルトラマンだ・・新しく出てきたウルトラマンなのか・・!?

 イサミとカツミがフォースも見て、さらに驚く。

「ウルトラマンとロボットのほうがピンチみたいだぞ・・!」

「助けよう、カツ(にぃ)!あのウルトラマンなら何か知ってるかもしれない!」

 カツミとイサミが声をかけ合う。

「オレ色に染め上げろ、ルーブ!」

 2人がアイテム「ルーブジャイロ」を手にした。

「セレクト・クリスタル!」

 カツミとイサミがメダル「ルーブクリスタル」を手にして、それぞれ角を2本、1本展開する。

「まとうは火!紅蓮の炎!」

「まとうは水!紺碧の海!」

“ウルトラマンタロウ!”

“ウルトラマンギンガ!”

 2人がルーブジャイロの中央にそれぞれウルトラマンタロウ、ウルトラマンギンガの力を備えたルーブクリスタル「タロウクリスタル」、「ギンガクリスタル」をセットして、両端のグリップを引く。

“ウルトラマンロッソ・フレイム!”

“ウルトラマンブル・アクア!”

 カツミとイサミの姿が変化して、それぞれ赤と青の巨人になった。2人が変身した巨人、ウルトラマンロッソとウルトラマンブルとなった。

 ロッソとブルが頷き合ってから、フォースたちのところへ飛んだ。2人がマグマ星人、レッドギラスに降下しながらのキックを繰り出した。

 マグマ星人とレッドギラスが蹴り飛ばされて、海に倒れる。

「えっ!?またウルトラマン!?

「しかも今度は、赤と青の2人のウルトラマンだよ・・!」

 ギンとイズルがロッソたちを見て、驚きの声を上げる。

「大丈夫か、ウルトラマン!?

 ロッソがフォースに駆け寄って呼びかける。

「お前たちもウルトラマンか・・私はフォースだ。」

「オレはロッソ!ウルトラマンロッソだ!」

 フォースとカツミが互いに自己紹介をする。

「オレはブルだ!・・って、のん気に自己紹介してる場合じゃない!」

 イサミも声を掛けて、マグマ星人たちに目を向ける。

「ウルトラ戦士が他に2人もいたか・・ギラスたちよ、スピンだ!」

 マグマ星人が呼びかけて、左手から光線を出す。光線を角で受けて、ブラックとギラスとレッドギラスが組み合って回転する。

「ギラススピンが来るぞ!並みの攻撃ではあのスピンに跳ね返される!」

 フォースがカツミとイサミに呼びかける。しかしエネルギーが少なくなって、フォースは立っているだけでもやっとになっていた。

「そんな回転、オレが打ち破ってやる!」

 カツミが意気込みを見せて、ロッソが突っ込む。しかし逆にギラススピンにはじき返される。

「カツ兄!」

 イサミが声を上げて、ロッソが着地してブラックギラスたちに目を向ける。

「こうなったら必殺技で・・フレイムスフィアシュート!」

 カツミがいら立ちを噛みしめて、ロッソが両腕を十字に組んで光の球を放つ。だがこれもギラススピンにはじき飛ばされた。

「これもダメなのかよ!・・どうすりゃいいんだ!?

「向こうが竜巻起こしてるなら、こっちも強い風で対抗するしかないよ!」

 焦りをふくらませるカツミに、イサミが呼びかける。

「カツ兄は風を使って!オレはこのまま水を使うから!」

「よくは分かんないが、その通りにするぞ、イサミ!」

 イサミが指示を出して、カツミが頷く。彼が新たにルーブクリスタル「ティガクリスタル」を手にして、ルーブジャイロにセットした。

「まとうは風!紫電の疾風!」

“ウルトラマンティガ!”

 カツミがルーブジャイロのグリップを引く。

“ウルトラマンロッソ・ウィンド!”

 ロッソの体が赤から紫に変わった。彼は「フレイム」から「ウィンド」へと変身を果たした。

「まずはオレから!アクアジェットブラスト!」

 イサミが言い放って、ブルが海に手を入れて水流を起こす。回転をしていたブラックギラス、レッドギラスだが水流に下から持ち上げられて、体勢を崩して回転が弱まった。

「今だ!ストームフリッカー!」

 カツミが声を上げて、ロッソが竜巻を起こしてパンチで打ち出す。ブラックギラスたちが竜巻を受けて、完全に宙に舞い上げられた。

「バカな!?ギラススピンが破られただと!?

 宙に跳ね上げられたブラックギラスたちを見て、マグマ星人が驚く。ブラックギラスたちが海に落ちてダメージを負う。

「引き上げるぞ、お前たち!」

 マグマ星人が呼びかけて、飛び上がって雲の中に姿を消した。ブラックギラスとレッドギラスも海の中に潜って逃走した。

「た、助かった・・怪獣たちを追い払えた・・・!」

 マグマ星人たちを退けたと思って、ギンが安心を覚える。

 そのとき、フォースが体から光をあふれさせて倒れた。エネルギーを使い果した彼は光を出しながら消えた。

「フォース!」

 カツミとイサミが声を上げて、ロッソとブルがフォースのいた場所に駆けつけた。その場にはアーマーへの変形が解けて、人型に戻ったフォースガンダムだけが残った。

 カツミたちはフォースガンダムだけでなく、そのコックピットで意識を失っているハルキの姿も目撃していた。

 ロッソ、ブルへの変身を解除して、カツミとイサミがフォースガンダムに駆け寄った。

「これ、どうやって中を開けるんだ!?

 カツミがコックピットのハッチを開けようとして、フォースガンダムを登ろうとする。そのとき、フォースガンダムのコックピットが開いて、中からハルキが出てきた。

「よかった・・パイロットのほうから出てきたみたいだ・・」

「お前たちが、今の2人のウルトラマンか・・・!」

 イサミが安心を見せて、ハルキが彼らを見て戸惑いを覚える。ハルキとフォースは別世界のウルトラマンとの出会いを果たした。

 

 

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