ザ・グレイトバトル
-感情の力-
第1章
ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊、ガンダム。
地球や宇宙の平穏、正義と平和、それぞれの大切なものを守るために戦う存在。
みんなの知らない世界でも、その戦士たちは存在していた。
そこはかつて、地球防衛隊の本部があった場所だった。しかし今、基地は炎に包まれていた。
出撃した隊員、避難しようとした隊の関係者は、ほとんどが命を落として倒れていた。
燃え上がる炎の広がる基地の敷地内を、3人の怪人物が歩いていた。
怪人・蜘蛛男、黒十字軍の黄金仮面、サーベル暴君マグマ星人である。
「人間どもをこうして始末できて、こんなに嬉しいことはないぞ・・」
「この調子だと征服も破壊も簡単なのだがな。」
「これもアイツのおかげだ。まさかあのようなヤツが力を貸してくれるとは、思っても見なかったぞ。」
蜘蛛男、黄金仮面、マグマ星人が喜びを感じて笑みをこぼす。
「アイツらも伸び伸びと暴れられて、満足しているはずだ。」
黄金仮面が言いかけて、蜘蛛男たちとともに後ろに振り向いた。その先には3体の怪獣がいた。
宇宙怪獣ベムラー、双子怪獣ブラックギラス、レッドギラス。ギラス兄弟の2体は、マグマ星人が操る忠実な怪獣たちである。
「もっとだ!もっと火の海を広げるのだ!」
マグマ星人が呼びかけて、ベムラーたちが破壊活動を再開した。口や頭の角から光線を放って、建物を破壊していく。
さらに広がる炎の中に、1人の青年が倒れていた。青年は顔を上げて、前に鋭い視線を向けていた。
「どうして・・どうしてこんなことに・・・!?」
青年が声を振り絞って顔を上げる。その先にはもう1人の黒服の青年がいた。
「どうして裏切ったんだ!?・・・どうしてみんなを!?」
声を張り上げる青年を、黒服の青年があざ笑った。この本部の壊滅は、黒服の青年の企みがきっかけとなった。
これが青年、隼ハルキの悲劇と、黒服の青年、鷹矢アキトの裏切りだった。
地球防衛隊本部が襲撃された日から1年が経った。防衛隊は地球や宇宙を脅かす脅威に対抗して、特別チームを編成した。
その名は「Gフォース」。機動兵器「モビルスーツ」を主力としていて、隊員たちもその操縦に長けた者ばかりである。
そのGフォースを指揮する隊長が、桜木トウジ。かつての防衛隊の宇宙ステーションで隊長を務めていた。
Gフォースの本部の作戦室にて、トウジは隊員のリストに目を通していた。
「4人全員が、モビルスーツを始めとした兵器の操縦技術のレベルが高いが、履歴は様々だ。防衛隊に入隊して間もない者や、かつての防衛隊の隊員として、1年前の壊滅の現場にいた者・・」」
隊員たちの経緯をチェックして、トウジは思いつめた顔を浮かべる。
「かつての防衛隊の一員・・隼ハルキが、この入隊、任務とどう向き合ってくるか・・」
トウジはリストの中から、トウジの履歴を見て考えていた。
Gフォースの隊員としての新たな任務に就くことになるハルキ。彼は今まで抱えてきた決意と記憶を思い返していた。
(やっと防衛隊の特殊チームに入ることができた・・ここで地球や宇宙を守りながら、アイツの行方を突き止めるんだ・・・!)
怒りと感情をふくらませていくハルキ。アキトのことを考えて、彼は体を震わせていた。
「よっ♪お前もGフォースに入るんだろ?」
そこへ1人の青年がやってきて、ハルキに声を掛けてきた。
「オレ、川西ギン♪よろしくな♪」
青年、ギンが自己紹介するが、ハルキは答えない。
「ちょっと、ちょっと〜・・返事ぐらいしてくれたって〜・・」
ギンがハルキの態度に不満を感じて、ふくれっ面を見せる。
「ギン、無理強いみたいなことをするのはよくないよ・・」
そこへもう1人の青年が来て、ギンに注意を呼び掛けた。
「いいじゃんか、イズルー。これから任務をしてく仲なんだから〜・・」
ギンが青年、東出イズルに不満の声を上げる。
「ゴメンね、ギンがいきなり声を掛けてきて・・」
イズルが謝るが、ハルキは彼にも答えない。
「と、とにかくGフォースの隊員は、隊長を除けばあと1人だな!全員で4人なんだから!」
ギンがGフォースの面々のことを考えて、周りを見回す。
「集合時間まであとちょっとだけど・・・噂をすればだね。」
イズルが言いかけて、ギンとともに視線を移す。彼らのほうに1人の少女が歩いてきた。
「おおーっ♪きれいな人だー♪」
ギンが少女を目にして、魅入られて歓喜をあらわにする。
ハルキもその少女を目にしたとき、大きな戸惑いを覚えた。
(ト、トウカ・・!?)
目の前に現れた少女が、自分の知っている少女、日向トウカとそっくりで、ハルキは驚きを隠せなくなる。
「みなさん、はじめまして。私は羽鳥ナツです。よろしくお願いします。」
少女、ナツが自己紹介をして、ハルキたちに敬礼を送った。
「しかも礼儀正しい・・・!」
ギンがさらに言いかけて、イズルが大きく頷く。
(やはり人違いか・・トウカが生きているわけがない・・・あのとき、トウカはオレの前で・・・!)
ナツがトウカとは別人であると認識して、ハルキは昔の悲劇を思い返していた。
かつての地球防衛隊の本部の襲撃に、ハルキは巻き込まれた。幼馴染みであり、防衛隊での同じチームの一員だったトウカと。
避難しようとするアキトとトウカ。2人の前にマグマ星人が現れた。
「まだ生き残りがいたか・・お前たちもこのサーベルの餌食にしてくれる!」
マグマ星人が笑みを浮かべて、右手に装備したサーベルを構える。
「トウカ、逃げろ!オレがアイツの注意を引き付ける!」
「ハルキ!」
ハルキが銃を手にして飛び出して、トウカが叫ぶ。
「バカめ!地球人ごときがこのオレに敵うと思っているのか!」
マグマ星人があざ笑って、ハルキを迎え撃つ。ハルキの発砲した弾丸をかわして、マグマ星人が迫る。
マグマ星人が振りかざすサーベルを、ハルキが後ろに動いてかわす。しかしだんだんとハルキは距離を詰められていく。
「やはり地球人ではこの程度のようだ・・」
マグマ星人がサーベルを振り上げて、ハルキの銃をはじき飛ばした。
「しまった!」
手を押さえたハルキが危機感を覚える。マグマ星人が彼に向かってサーベルを構えた。
「ハルキ!」
トウカが叫んで、銃を構えて発砲する。気付いたマグマ星人が、サーベルを振りかざして射撃をはじいた。
「小娘が。死に急ぎたいなら、望みどおりにしてやるぞ。」
マグマ星人が笑みを浮かべて、トウカに狙いを変える。
「トウカ、逃げろ!」
ハルキが呼びかけて、トウカを助けようとマグマ星人に飛びかかる。サーベルを腕で押さえたハルキだが、マグマ星人に膝蹴りを体に叩き込まれる。
「ぐっ!」
ハルキが苦痛に襲われてふらつく。マグマ星人がサーベルを振りかざして、彼を投げ飛ばす。
ハルキは地面に叩きつけられるも、すぐに立ち上がる。彼はもう1つ銃を取り出して、マグマ星人に銃口を向ける。
「ムダなあがきを・・それもできないようにしてくれる!」
マグマ星人がいら立ちを噛みしめて、サーベルを振りかざす。突き出したサーベルの先から、ビームが放たれた。
ビームがハルキの左肩をかすめた。
「うぐっ!」
ハルキが痛みを覚えて倒れる。彼は左手に銃を持ちかえて、右手で左肩を押さえる。
「ハルキ!」
トウカが叫んで銃を構えて、マグマ星人に向かって発砲する。しかしマグマ星人に軽々とかわされる。
「どっちも往生際が悪い・・いい加減に始末してくれるぞ・・!」
マグマ星人が言いかけて、サーベルをハルキに向けてきた。
「まずはお前だ!」
マグマ星人がハルキに向かって突っ込んできた。ハルキが左腕を上げて銃を撃とうとするが、狙いが定まらない。
サーベルが刺さった音がした。サーベルに体を貫かれたのは、ハルキではなく、飛び込んできたトウカだった。
「トウカ・・・!?」
ハルキがトウカを目の当たりにして、驚きを隠せなくなる。
「ハルキ・・無事でよかった・・・」
トウカがハルキに目を向けて微笑みかける。
「宇宙人が!」
怒りをあらわにしたハルキが、マグマ星人の体に銃を突きつけた。
「ぐおっ!」
ゼロ距離から射撃されて、マグマ星人が引き離される。
「トウカ、しっかりして!トウカ!」
ハルキがトウカを支えて、声を張り上げる。
「すぐに医者に診せれば助かる!ちょっと耐えてくれ、トウカ!」
「ハルキ・・あなたのこと、守ることができてよかった・・・」
抱えて運ぼうとするハルキに、トウカが微笑みかける。
「ハルキ・・あなただけでも生きて・・私のことは気にしなくていいから・・・」
「そんなこと言うな!オレは絶対に、トウカを助ける!」
声を振り絞って呼びかけるトウカに、ハルキが感情をあらわにする。彼にとってトウカは仲間であると同時に、心の支えでもあった。
「ここを出れば、誰かが避難しているはずだ!そうすればまだ望みが・・!」
「ハルキ、あなたは生きて・・あなたが幸せに生きていくことが、私にとっても幸せになるから・・」
必死に助けようとするハルキに、トウカが微笑みかける。
「私は・・あなたと一緒にすごせて・・幸せ・・だったよ・・・」
自分の正直な想いを口にするトウカ。その瞬間、彼女の腕が力なく下がった。
「トウカ!?・・・おい・・トウカ・・・!」
目を閉じたトウカに、ハルキが目を疑う。
「目を開けてくれ・・起きてくれよ・・トウカ!」
ハルキの悲痛の叫びが、燃え続けている本部に響いた。かばって命を落としたトウカの死に、ハルキの悲しみは一気にふくらんだ。
この悲劇が、ハルキの心に癒えない傷と、怪獣や宇宙人に対する強い怒りを植え付けることになった。
トウカはハルキの目の前で死んだ。今、ハルキの前に現れたナツは、トウカと瓜二つだった。
(彼女はトウカじゃない・・ただそっくりな人というだけ・・それだけなんだ・・それだけなんだよ・・・!)
自分に言い聞かせて迷いを振り切ろうとするハルキ。しかし考えれば考えるほどに、過去の悲しみと怒りが込み上げてきて、彼は落ち着きを取り戻せないでいた。
「あの、どうかしたの?」
ナツが声を掛けてきて、ハルキが我に返った。
「いや、何でもない・・何でも・・・」
ハルキは返事をすると、ナツに背を向けた。彼の様子を気にするも、ナツはこれ以上は言わなかった。
「みんなそろっているな。」
そのとき、トウジがやってきて、ハルキたちが整列して敬礼をした。
「私はこのGフォースの隊長を務める桜木トウジだ。」
トウジがハルキたちに自己紹介をする。
「君たちはこの特殊部隊にふさわしい実力があると、私は思っている。これからの戦いを乗り越えていってほしい。」
「はいっ!」
トウジからの言葉を受けて、ハルキたちが答えた。
「我々の戦力は、モビルスーツが中心となる。それも科学班が研究に研究を重ねた最新鋭の機体だ。」
「最新鋭・・それをオレたちが使えるなんて・・!」
トウジの言葉を聞いて、ギンが喜びとやる気を見せる。
「だがそれでも怪獣や宇宙人を確実に倒せるとは断言できない。卑劣な手段を使う敵もいるし、こちらが油断すれば手痛い失敗を被ることにもなる。」
「油断大敵ってことですね・・!」
トウジが話を続けて、イズルが呟きかける。
「なので常に気を引き締め、任務には細心の注意を払うように。」
「了解です、隊長。」
トウジからの注意に、ナツが真剣な顔で答えた。
「Gフォースに配備される機体は“Gパニッシャー”。かつての戦争に投入された“ガンダム”のデータを元に開発された機体だ。」
「Gパニッシャー・・それを、オレたちが操縦できるなんて・・!」
トウジの話を聞いて、ギンが動揺と感動を見せる。
「ハルキ、君にはGパニッシャーではなく、もう1機の機体を使ってもらう。」
「もう1機の機体ですか・・?」
トウジが投げかけた言葉に、ハルキが疑問符を浮かべる。
「Gパニッシャーよりもガンダムの要素を備えている。性能も高いが、操縦も負担もその分高度になっている。」
「その機体を、オレが・・・」
トウジの話を聞いて、ハルキが動揺を浮かべる。
「名前は“フォースガンダム”あらゆる状況やエネルギーに対応する“フォースシステム”を搭載している。その性能や効果は、まだ完全に把握しているわけではない。」
トウジが新機体、フォースガンダムについて説明していく。フォースガンダムはフォースシステムとともに、未知の力となっていた。
「君ならこの機体を使いこなせると、我々は判断した。君はフォースガンダムで任務に当たりながら、機体やフォースシステムに関するデータを、ナツくんとともに収集してほしい。」
トウジから話を向けられて、ナツが息をのんだ。彼女はフォースガンダムを使っての戦いが、重要なカギであることを予測していた。
「分かりました、隊長。ハルキさん、よろしくお願いします。」
ナツはトウジに答えて、ハルキに手を差し伸べてきた。
「あ、あぁ・・」
ハルキが答えて、ナツと握手を交わした。トウカそっくりのナツとの対話と交流に、ハルキは複雑な気分を感じていた。
Gパニッシャー。新たな量産型を目指している機体を使いこなすため、ギンとイズルはシュミレーション練習を始めた。
「これがGパニッシャーの操縦か!けっこう大変だぞ、こりゃ!」
「最初の意気込みはどうしたの、ギン?確かに操縦は高度だけど、全然操縦できないってことはないよ。」
ギンが弱音を口にして、イズルが言いかける。
「でもあのハルキってヤツが乗るフォースガンダムは、もっと難易度高いんだろ?アイツと比べられちゃうと、やる気がなくなってくるよ〜・・」
「僕たちもGフォースの一員なんだ。ハルキくんができて、僕たちにできないことはないはずだよ。」
「ちっくしょー!こうなったらやってやろうじゃんかー!」
「ギンはその意気じゃないとね。僕も負けていられない。」
声を張り上げて練習を再開するギンに、イズルは笑みをこぼした。
同じ頃、ハルキはフォースガンダムの前に来ていた。白いボディのフォースガンダムを見つめて、ハルキは戸惑いを感じていた。
(トウカ、オレは戦う・・この新しい部隊で、この新しい機体で・・!)
トウカのことを思って、ハルキがこれからの決意を心の中で呟く。
(あのナツという人はトウカじゃない・・ただそっくりなだけだ・・・)
ナツのことを思い出すも、ハルキは自分に言い聞かせて、トウカを思い出さないようにする。
そのハルキにナツが近づいてきた。気付いて振り向いたハルキが、自身を律して今に意識を戻す。
「ギンさんとイズルさんは、Gパニッシャーのシュミレーションをしています。ハルキさんもするのですか?」
「そうだな。これから始める・・フォースガンダムのデータ収集を頼む。」
ナツが声を掛けてきて、ハルキが答える。彼はフォースガンダムに乗って、コックピット内の機器をチェックする。
(確かにオレの知っているモビルスーツ以上に複雑な操縦が必要になる。それでもオレはやってやる・・怪獣や怪人、宇宙人を倒すために・・・!)
ハルキが怒りを噛みしめて、フォースガンダムを起動させる。フォースガンダムが前進して、格納庫の外に出た。
歩きから走りへと動作を変えたフォースガンダム。さらにブースターを使って上昇、飛行する。
(歩行や飛行のスピードは、量産型の機体よりも上。ハルキさんの操縦もレベルが高い。)
ナツがフォースガンダムの動きとハルキの操縦を確かめて、戸惑いを感じていく。フォースガンダムが降下して、射撃場に着地した。
フォースガンダムが銃「ビームライフル」を手にして、正面の的を狙って発射する。放たれたビームは的の中心を射抜いただけでなく、その先の岩場にも当たって爆発を起こした。
(ライフルの通常ビームとしては高い威力だ・・!)
ハルキもフォースガンダムの攻撃力に驚く。フォースガンダムが腰に装備されている柄を手にして、ビームの刃を発して「ビームサーベル」を展開した。
フォースガンダムがそばの岩をビームサーベルで切り裂いた。この一閃は速く、岩が斜めに両断された。
(通常兵器も他の機体と比べても威力が高い。しかもこのフォースガンダム、状況に合わせて様々な形状に変形することが可能とのことだが・・)
ハルキがコンピューターを操作して、フォースガンダムに関するデータを確認していく。
「変形のデータがない?これじゃ変形システムが入っていても、変形ができないぞ・・」
フォースガンダムを変形できないことに、ハルキが動揺を覚える。
「どういうことだ?変形のためのデータはどこなんだ?」
ハルキが通信を呼びかけて、ナツも動揺を感じながらコンピューターを操作してデータを確認する。
「こっちにもデータがないです・・そんなこと、あるはずないのに・・・」
「変形データは今は入ってはいない。」
動揺をふくらませるナツに、トウジが声を掛けてきた。
「隊長・・入っていないって、どういうことですか・・・!?」
「変形データはこれからの戦いの中で得たデータを元にして構築していく。本当は既にデータを作っておきたかったが、かつての防衛隊が収集していたデータは、本部襲撃の際に消滅してしまったから・・」
ナツが疑問を投げかけて、当時が深刻な顔を浮かべて説明する。
「フォースガンダムは、これからの任務を経て成長させていく機体だと考えてくれ・・」
「はぁ・・」
トウジの言葉に、ナツは頷くしかなかった。
「隊長、では今の時点ではライフルとサーベルだけということですか?」
「機体に装備されている武装はそれだけだ。バズーカなど他の兵器を使うことは可能だ。」
ハルキが投げかける疑問に、トウジが答える。フォースガンダムが引き返して、ナツたちのところまで戻ってきた。
フォースガンダムのコックピットから降りて、ハルキがため息をついた。
「操縦が難しいだけならともかく、こういうことになっているのはややこしいですよ・・」
ハルキはため息をついて、トウジに苦言を呈する。
「そのことはすまないと思っている。私も君たちを援護する。ギンもイズルも協力してくれる。」
「隊長・・・」
トウジから激励を受けて、ナツが戸惑いをふくらませていく。
(怪獣たちを倒せて、この機体のデータを増やせる・・一石二鳥というところか・・)
フォースガンダムが自分の戦いにおあつらえだと思って、ハルキは笑みを浮かべていた。
そのとき、トウジに向けて通信が入った。
「桜木だ。どうした?」
“BW67に巨大生物が出現!建物や人々を襲撃しています!”
応答するトウジに、防衛隊の別部隊の隊員が報告をしてきた。
“1体は怪獣、もう1体は超獣と思われます!”
「超獣だと!?」
トウジが報告を聞いて、緊張を覚える。
「超獣・・生物と宇宙怪獣を合成させた、異次元人の生物兵器・・・!」
ナツが超獣について口にして息をのむ。
(怪獣・・アイツらも宇宙人も、オレが全部倒す・・!)
「すぐに出撃します。このフォースガンダムで・・」
怒りを噛みしめるハルキが、再びフォースガンダムに乗り込む。
「待て、ハルキ!ギンたちと全員で出撃するんだ!」
トウジが呼び止めるが、フォースガンダムは上昇して、現場に向かっていった。
「ギン、イズル、すぐにGパニッシャーで発進!ハルキと合流するんだ!」
“は、はい!”
“了解!”
トウジが指示を出して、ギンたちが答える。2機のGパニッシャーも、フォースガンダムを追う形で出撃していった。
山林に隣接している小さな町に、怪獣と超獣が現れた。
凶暴怪獣アーストロンと、ミサイル超獣ベロクロン。2体は熱線とミサイル攻撃で、町を襲撃していた。
防衛隊の1部隊が急行して応戦する。町の人たちを避難させることができたが、アーストロンたちの力に押されて、後退を余儀なくされる。
そこへハルキの乗るフォースガンダムが駆けつけた。ハルキがアーストロンたちを目撃して、怒りを覚える。
(怪獣・・トウカやみんなを奪った敵・・・!)
トウカの死の記憶を呼び起こして、ハルキが目つきを鋭くする。フォースガンダムがビームライフルを手にして、アーストロンとベロクロンに射撃を仕掛ける。
放たれたビームがアーストロンとベロクロンに命中した。アーストロンは怯んだが、ベロクロンは平然とした様子を見せていた。
ベロクロンがフォースガンダムを狙って、体にある突起物からミサイルを連続で発射してきた。ハルキが反応して、フォースガンダムがビームライフルを連射して、ミサイルを撃ち落としていく。
「これじゃキリがない・・詰め寄って本体を叩く・・!」
ハルキが毒づいて、フォースガンダムがビームライフルからビームサーベルに持ち替える。放たれるミサイルをかいくぐって、フォースガンダムがベロクロンに向かって突っ込む。
フォースガンダムが振りかざしたビームサーベルに叩かれて、ベロクロンは押される。サーベルが当たった跡が一瞬残ったが、ベロクロンは耐えていた。
「このまま畳み掛ける!」
ハルキがいきり立って、フォースガンダムがベロクロンに対して追撃を仕掛ける。
そこへアーストロンが熱線を吐き出してきた。フォースガンダムが左腕に装備されている盾で防ぐも、押されて横に突き飛ばされる。
「ぐっ!」
フォースガンダムが倒れた衝撃に押されて、ハルキがうめく。起き上がるフォースガンダムに、ベロクロンが迫る。
「こんなところで倒れるわけにはいかない・・オレのホントの敵は、またいるんだから・・!」
ハルキが自分に言い聞かせて、フォースガンダムがビームサーベルを構える。
「ハルキ隊員!」
そのとき、Gパニッシャーが駆けつけて、イズルが呼びかけてきた。
「オレたちがいることを忘れないでくれよな!」
「援護するよ、ハルキ隊員!」
ギンとイズルが呼びかけて、Gパニッシャーがビームライフルを手にして発射する。ビームを当てられたアーストロンとベロクロンが、Gパニッシャーに注意を向ける。
「ハルキ、今のうちに体勢を整えろ!」
ギンがハルキに向かって呼びかける。
「余計なことをしてきて・・・!」
ハルキがいら立ちを噛みしめて、フォースガンダムがアーストロンたちから離れる。
「必ず倒す・・怪獣も超獣も1匹残らず・・宇宙人も怪人も1人残らず・・・!」
ハルキが怒りをふくらませて、フォースガンダムが飛びかかる。フォースガンダムがビームサーベルを振りかざして、ベロクロンの左腕を切りつけた。
「このままヤツにとどめを刺す!」
「早まらないで!ベロクロンは口からも・・!」
とどめを狙うハルキに、イズルが呼びかける。ベロクロンが開いた口の中にも、ミサイルがあった。
「何っ!?ぐっ!」
ハルキが驚きの声を上げて、フォースガンダムがベロクロンのミサイルを受けて爆発に押される。倒れたフォースガンダムを、ベロクロンが見下ろす。
起き上がろうとするフォースガンダムを、ベロクロンが口から炎を吐こうとする。
「このままやられるわけにはいかない・・オレは、敵を倒してはいない・・!」
怒りを噛みしめるハルキが、反撃に転じようとした。
そのとき、フォースガンダムたちのいる場所に、1つの光が飛び込んできた。その直後、ベロクロンが光に突き飛ばされて倒れる。
「な、何だ!?」
突然のことにハルキが声を上げる。フォースガンダムの前に現れた光は、1人の巨人の姿に変わった。
「これは、まさか・・!?」
「光の巨人・・ウルトラマン・・・!」
ハルキとイズルがその巨人を見て驚きを覚える。その姿は地球や宇宙を守るために戦った戦士、ウルトラマンそのものだった。
ベロクロンが立ち上がって、巨人に向かって口から炎を吐き出した。巨人は右手を出すと、向かってきた炎をかき消した。
「な、なんてパワーだよ・・!」
「さすがウルトラマンってところだよ・・・!」
ギンとイズルが巨人の力に驚きをふくらませていく。
アーストロンが巨人に向かって飛びかかる。巨人は素早く動いて突進をかわして、アーストロンの胴体にパンチを叩き込んだ。
アーストロンがふらついて、前のめりに倒れる。
「これが・・ウルトラマンだっていうのか・・・!?」
ハルキが巨人に対する動揺と、力への渇望をふくらませていく。
そのとき、ベロクロンが狙いをGパニッシャーに変えて、ミサイルを連射してきた。
「おわっ!」
ギンとイズルが悲鳴を上げて、Gパニッシャー2機が吹き飛ばされる。
巨人がベロクロンに振り向いて、伸ばした左手から光線を放った。ベロクロンが口に光線を当てられて、火花を散らす。
巨人がアーストロンに目を向けると、両手を握って左胸の前で交差するように腕を組む。そこから両手を伸ばして右腕を縦、左腕を横にして再び両腕を組んだ。
巨人の右腕から光線が放たれた。光線はアーストロンに命中して、さらに発射を続けたままベロクロンにも命中した。
アーストロンとベロクロンが力尽きて、倒れて爆発した。
「や、やった・・・!」
ハルキが巨人を見て、戸惑いをふくらませていく。起き上がるフォースガンダムに、巨人が振り向いた。
巨人はフォースガンダムに乗っているハルキを認識した。すると巨人の体が再び光り出した。
「うあっ!」
光が一気に強まって、ハルキが目を閉じた。その直後、彼は意識を失った。