ザ・グレイトバトル -エンドレスメモリーズ- 

第3章

 

 

 ドゴーミン、スゴーミンを倒したシンたち。彼らの乗るデスティニーたちは、オーブを追って惑星グランに向かった。

「あれ?・・あのウルトラマンはどこに・・・?」

「あそこに誰かいるよ!・・知らない人ばかりだけど・・」

 ハルが声を上げて、ソラが地上を指さす。地上にはガイと永夢、良太郎がいた。

「あれは電王・・良太郎たちも来ていたのか・・!」

「みんな、着陸しましょう。もしかしたら今回のことを知っているかもしれない・・」

 シンが良太郎を目にして、ルナマリアが呼びかける。デスティニーがガイたちのそばに着地した。

「さっきのロボット・・無事にこっちまで来れたのか・・・」

「あれってもしかして、ガンダム!?

 ガイが安心を覚える中、永夢がデスティニーたちを見て驚きと感動を見せる。永夢はガンダムのことが知っていたが、デスティニーたちを見るのは初めてだった。

 デスティニーのコックピットから降りてきたシンが、電王への変身を解いた良太郎に駆け寄る。良太郎からはリュウタロスは外に出ていた。

「シンくんもこっちに来ていたんだね。やっぱり次元の穴がどんどん開いているみたいだ・・」

 良太郎がシンとの再会を喜んで、事情を話す。

「これも誰かの仕業だっていうのか・・!?

「その可能性が高いって、オーナーが・・・」

 シンの疑問に良太郎が頷く。

「シンさん、この人と知り合いなんですか?」

 ソラが良太郎を見てシンに問いかける。

「あぁ、前に話した、パラレルワールドで出会った人ですか・・?」

「えぇ。それぞれの世界の人たちが1つの世界に来ることになったの。違う宇宙だから、本来は会うことができないはずだった・・」

 ハルが頷いて、ルナマリアがかつて良太郎たちと会ったことを思い出す。

「君が宝生永夢、仮面ライダーエグゼイドだね。話はタケルくんから聞いているよ。」

 良太郎が永夢に振り向いて声をかける。

「タケルさん、仮面ライダーゴーストですね!」

 永夢が喜びを浮かべて答える。彼は天空寺(てんくうじ)タケル=仮面ライダーゴーストを始めとした他の仮面ライダーと面識があった。

「別の世界の人たちが1つの世界に・・ウルトラマンのみなさんと会ったことがあるのは、あなたたちでしたか。」

 ガイがシンたちに声をかけて笑みを見せた。

「オレの名はガイ。さっきあなたたちと会ったウルトラマンがオレ、ウルトラマンオーブだ。」

「あなたもウルトラマン・・ゼロやアスカみたいな・・・」

 自己紹介をするガイに、シンが戸惑いを見せる。

「シンさん、良太郎さん、ゼロさんたちからあなたのことは聞いています。スーパー戦隊のことも。」

 ガイが語りかけて、永夢に視線を移す。

「僕のことは初めて知ることになりますよね。みなさんが仰っている、前の別の世界での戦いにいませんでしたし・・」

「オレもウルトラマンのみなさん以外は、詳しく知っているわけじゃない・・」

 苦笑いを浮かべる永夢に、ガイが弁解を入れる。

「僕は宝生永夢。聖都大学附属病院に勤務しています。といっても、まだ研修医ですけど・・」

 永夢がガイたちに自己紹介をする。

「オレはシン。あの機体は、マークデスティニーというんだ。」

 シンも自己紹介をして、デスティニーに目を向ける。

「あの顔、ガンダムタイプか・・外見だけでもすごい武装だらけだって分かります・・!」

「ガンダム・・モビルスーツのことを言っているの?」

 永夢が微笑んで語ると、ソラが疑問符を浮かべてきた。

「モビルスーツの中に、ガンダムに分類される機体もあるんです。おそらく、あなた方が乗ってきたのは4機とも・・」

 永夢はインパルス、ジャッジ、ファルコンを見て話しを続ける。ガンダムに関する知識を持っている彼だが、ガンダムに関わる用語の定義は明確にはなっていない。

「驚いたわね。あなたもモビルスーツのことを知っているなんて・・」

「もしかして、あなたの世界にもモビルスーツなどの兵器が・・!?

 ルナマリアが戸惑いを見せて、ハルが驚きながら話を聞く。

「いえ、ガンダムは僕たちの世界では架空の存在です。僕はゲームで知って、プレイしていくうちに覚えるようになったんです。」

「えっ?ゲーム?僕たちの世界の兵器が登場するゲーム!?

 永夢の話にハルは疑問をふくらませるばかりになっていた。

「いろんなゲームが出ていますよ。シューティング要素のある格闘ゲームとか、量産型の機体をバッタバッタとやっつけていくゲームとか。シュミレーションRPGもあって、他のロボット作品と共演したりしていますよ。」

「何か、話がすごくなってるね・・・」

 ガンダムのゲームについて楽しく語っていく永夢に、ソラがあ然となる。

「でもガンダムやモビルスーツとかが実際に出てきて戦争が起きてはいないよ。戦争もほとんど起きていない。日本は全く起きていないよ。」

「戦争のない世界・・そういう点では平和であると言える・・」

 永夢の世界を知って、ブラッドが小さく頷く。

「ですが、“バグスター”というコンピューターウィルスが猛威を振るっています。」

 永夢が深刻な顔を浮かべて話を続ける。

「といっても、人の体に感染するウィルスで、ゲーム病という病気を起こさせるんです。バグスターは人の体を乗っ取って、怪物の姿で外に出るんです・・」

「そんな怪人まで現れるなんて・・・」

 永夢の話を聞いて、良太郎が苦悩を覚える。

「ところで、この世界に起こっていること、何か知らないか?」

 ガイが良太郎たちに話を切り出す。

「その話はデンライナーで。オーナーが話してくれるそうだよ。」

 良太郎の言葉にガイたちは頷いた。彼らはデンライナーの食堂車に乗った。

 

「いらっしゃいませ〜♪コーヒーの用意、できてますよー♪」

 デンライナーの乗務員、ナオミが笑顔でガイたちを迎えた。食堂車には4人のイマジン、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスがいた。

「おかえり、良太郎。おや、かわいらしい方もご一緒に。」

 ウラタロスが良太郎に挨拶して、ルナマリアとソラを見て笑みをこぼす。

「よう!久しぶりだな、シン!前に見たときよりもすごくなってるみたいだな!」

 食堂車の席に腰かけていたモモタロスが立ち上がって、シンに声をかける。

「モモタロスたちも変わらないな。みんな個性的で・・」

「僕もみんなに会えてうれしいよ〜♪」

 シンが言いかけて、リュウタロスが近寄って無邪気に振る舞う。

「はーい♪コーヒーどうぞー♪」

 ナオミがコーヒーの入ったカップをモモタロスたちやガイたちに差し出した。ところがそのコーヒーには独特のフレーバーが入れられていた。

「な、何だ、このコーヒー・・・!?

「コーヒーやカフェラテにしちゃ、色がヘンだよ・・・」

 ハルとソラがナオミのコーヒーを見て動揺する。ガイも不審に思いながらもそのコーヒーを口にした。

「見た目だけじゃなく、味もヘンだな、こりゃ・・」

「ヘンだなんて失礼ですよ〜・・ホラ〜、モモちゃんたちには好評ですよ〜・・

 ガイが口にした感想に不満を見せて、ナオミがモモタロスたちに目を向ける。モモタロスたちイマジンは彼女のコーヒーにご満悦だった。

「おめぇら、このコーヒーの味が分かんねぇとは、不幸なことだなぁ・・」

「イマジンと人間は、やっぱりどこか違うのかな・・・」

 上機嫌になっているモモタロスを見て、良太郎が苦笑いを見せる。

「まぁ、コーヒーの味も、飲めば飲むほどよう分かるようになる・・」

 キンタロスもコーヒーに浸っていたときだった。彼らがガイを見て動きを止めた。

「あっ・・・」

「あーっ!」

 モモタロスがまず声を上げて、ウラタロスたちも続けて叫び声を上げた。

「ん?どうした、みんな?そろってオレをじっと見て・・」

 ガイがモモタロスたちにじっと見られて、疑問符を浮かべる。

「そ、その顔・・カイや・・・!」

「は?カイ?いや、オレはガイ。クレナイ・ガイだって・・」

 キンタロスが指さして声を上げて、ガイが疑問符を浮かべる。

「いや、カイだろ、どう見たってその顔・・・」

「その顔、なんか好きじゃな〜い・・!」

 モモタロスがさらに言って、リュウタロスが不満を見せる。

「きっと似ているってだけだよ。みんながイヤな気分になるのも分かるけど・・」

 良太郎が言いかけるが、フォローになっていない。

「オレ、そのカイってヤツにそんなにそっくりなのか?そんな顔してるのか?」

「してる。」

 問いかけるガイに、モモタロスたちイマジンとナオミが同時に即答で頷いた。

「ですが本当にそっくりな顔をしているだけで、全くの別人ですよ。」

 彼らのいる食堂車に1人の男性が入ってきた。デンライナーのオーナーである。

「あなたのことも私たちはご存知ですよ、クレナイ・ガイくん、ウルトラマンオーブ。」

「オレのことを知っているのですね。他のウルトラマンのみなさんや、ライダーや戦隊、ガンダムのことも・・」

 声を変えてきたオーナーにガイが答える。

「ナオミくん、例のものを。」

「はーい♪」

 オーナーからの注文に、ナオミが笑顔で答える。

「今回の事件も、シンくんたちが体感したような状況です。次元の穴が次々に発生して、様々な世界とのつながりを生んでいます。」

「でもゴッズはあのとき、私たちが倒したはず・・もう起きることなんて・・・」

 オーナーの話にルナマリアが疑問を覚える。

 かつて次元をゆがめて、様々な世界をつなげてその人物たちを1つの世界に引き寄せた首謀者、ゴッズ。彼はシンたちによって撃破されて、事件は解決した。

「確かにあのとき、ゴッズは倒されました。今回の犯人が誰なのか、まだ分かっていません。」

「それで僕たちも事件の謎を追って、ここまで来たんだ。ほとんどが、突然現れたトンネルを通ってきたみたいだけど・・」

 オーナーに続いて良太郎も語りかける。彼らの話を聞いて、ガイ、シン、ルナマリアは納得した。

「ということはつまり、ここは僕のいたのとは違う世界・・いわゆるパラレルワールドってことですか・・!?

 永夢が動揺を見せながら問いかける。

「僕の知らないところで、いろんな人がいろんなことをしているなんて・・・!」

 ゲームといった架空の話の中でしかありえないことが起こっている世界があることに、彼は感動と複雑な気分を感じていた。

「それで、これからどうするつもりなのですか?オレたち以外にも、仲間や知り合いはいるのですか?」

 ブラッドがオーナーに問いを投げかける。

「私たちの知り合いが別行動を取っています。あなた方と同じように、この世界に来た人と合流できればいいのですが・・」

「もしかしたら、僕たちみたいに誰かに襲われているかもしれないですね・・」

 オーナーの答えを聞いて、ハルが推測を口にする。

「まずは、他の仲間を探すことだね。その誰かが、有力な情報を持ってるかもしれないし。」

 ソラの言葉に良太郎たちが頷く。

「ヘヘッ!久しぶりに面白くなってきたぜ!大暴れしてやるぜ!」

 モモタロスが期待に胸を躍らせて、意気込みを見せる。

「モモタロスみたいに無闇やたらだと迷子になっちゃうよ〜♪」

 するとリュウタロスが口を挟んで、モモタロスをからかってくる。

「何だとー!?オレはてめぇみてぇにガキでもねぇし無闇やたらでもねぇ!」

 モモタロスが不満を覚えて、リュウタロスを睨みつける。

「いやいや、先輩の無鉄砲ぶりは、イマジンの間でもお墨付きだからねぇ。」

「だったらそのお墨付きの無鉄砲をお見舞いしてやろうか〜!?

 ウラタロスもからかってきて、モモタロスが怒鳴りかかる。

「ちょっと、モモタロス、みんな、やめてって・・」

 良太郎が困った顔を浮かべて、モモタロスたちを止める。

「人間じゃないからって悪いってわけじゃなんだけど・・」

「頼りになるのかならないのか、分かんなくなってきた・・・」

 良太郎とモモタロスたち、彼らを応援してあおるナオミに、ハルとソラは呆れていた。

 

 漆黒の宇宙の影。1つの影が宇宙の様子を確かめていた。

「様々な宇宙にある記憶を探っていくうちに、次元の壁に風穴を開けてしまったようだ。だがそれも張り合いが出ると考えれば楽しみになる。」

 影が考えを巡らせて笑みをこぼす。影の近くには2人の男がいた。

「お前たち2人をよみがえらせたことで、退屈から抜け出すことができた。感謝しているよ。」

「ケッ!テメェに偉そうにされて、しかもいいなりにされてるオレはたまんねぇ気分だけどな!」

 微笑む影に男の1人が不満を口にする。

「まぁ、こっちもバリ面白い遊びができるからいいけどさ!獲物がたくさん現れて、オレも退屈しなくて済んでるぜ!」

「バングレイだけではないぞ。オレも全宇宙のヤツらに恐怖を与えることができる・・」

 男、バングレイにもう1人の男、エタルガーが笑みを浮かべる。

「この宇宙には様々な生物の記憶や恐怖が渦巻いている。オレたちが利用するには十分すぎるほどのな・・」

「アイツらにオレの屈辱を何倍にもして返してやる・・もちろん、他のヤツらも痛めつけて遊ばせてもらいがな!」

 エタルガーとバングレイが野心をむき出しにする。2人を見て影もさらに笑みをこぼす。

「お前たち2人に共通しているのは、記憶を使って実体化する能力を持つということだ。制限があったその能力を、ある程度自由に使えるようになった・・その力を存分に使い、戦力を増やしてもらいたい。」

「あくまで子分扱いかよ・・そこは気に入らねぇが、今は楽しませてもらうぜ・・・!」

 語りかける影に文句を言いながらも、バングレイがさらに笑みを浮かべる。

「さて、そろそろ本格始動と行こう。こちらの敵が恐れる強者を呼び出すとしよう・・」

 影が次の目的のための行動に踏み切った。

 

 停車しているデンライナーの食堂車の廊下で、ガイはハーモニカを吹いていた。彼の元に永夢がやってきた。

「うまいですね、あなたの演奏。」

 永夢に声をかけられて、ガイがハーモニカを口から離す。

「ですが、どこかに悲しみが込められているようにも感じます・・何か、大切なものが欠けてしまったような・・」

 永夢が口にした言葉を聞いて、ガイが深刻さを覚える。

「す、すみません・・いきなり失礼なことを言って・・・」

「いや、大丈夫だ・・大切なものが欠けていたのは本当だ・・」

 動揺を見せて謝る永夢に、ガイが微笑んで答える。

「オレはかつて大切な人を守れなかった・・そして、本当の自分を見失っていた・・」

 ガイが昔の自分を思い返していく。それは彼自身にとって苦い記憶だった。

「その人が本当は無事だということが分かり、本当の自分も取り戻した・・オレは自分の中にある闇を知り、共に生きることにした・・」

「闇と共に生きる・・・」

 ガイの話を聞いて、永夢が表情を曇らせる。

「誰にだって闇はある。そしてその闇を自分から完全に消すことはできない。闇があるからこそ、光がより輝かしいものとなる・・」

「闇が、光を輝かせる・・・」

 ガイがさらに語りかけて、永夢が思いつめていく。彼の様子をガイが気にする。

「何か気になるのか・・?」

「いえ・・患者もたくさんの人も、誰しも悩みや不安を抱えているものなんです・・その感情がゲーム病を引き起こすストレスにつながったり、それ以外でもその人を追い込んでいたり・・」

 ガイが問いを投げかけて、永夢が深刻な顔を浮かべて答える。患者の体を治すだけでなく心のケアもする。それがゲーム病を治す手がかりになるだけでなく、患者を本当の意味で療養することになる。彼はそう考えていた。

「病は気から、とはこのことだな・・心が追い込まれたら、体にも影響が出るからな・・」

「ガイさん、ウルトラマンも悩んだり、病気になったりすることはあるのですか・・?」

「地球人ほどではないが、ウルトラマンも病気にはなる。力を過剰に消耗すれば、普通の人間ではとても生きちゃいられないような状態になる。」

 永夢の疑問にガイが落ちつきを払いながら答える。彼は体感したことはないが、地球防衛を務めていたウルトラ戦士の中に、過労によって尋常でない疲弊に襲われた者はいた。

「ウルトラマンは地球を守るヒーローとして、長年みんなから愛されている。しかしウルトラマンは神というわけじゃない。」

「えっ・・!?

「医者も同じだろう?どれだけ技術や思いを込めても、救えない命があったり届かない思いもあったりする・・ウルトラマンも例外じゃない・・」

「ウルトラマンも人間も、一所懸命に生きる命・・・」

「生き返らせる力も持っているが、あくまで奇跡の力と思ってくれたほうがいい・・」

「命は1つしかない・・人間もウルトラマンも・・・」

 ガイの話を聞いて、永夢は誰にとってもかけがえのないものということを改めて実感する。さらに彼は命を救いたいという決意を強くした。

「話を戻すが、悩みや不安を抱えていること・・自分の心の闇にのみ込まれることにはなってはならない。自分の願いと裏腹に、何もかも傷つけてしまう・・自分自身も、守ろうとする人も・・」

 ガイが話を続けて、永夢が深刻さをふくらませる。

「安易に力を求めるもんじゃない・・最悪、自分を見失うことになる・・・」

「ガイさん・・・」

 ガイの話を聞いて、永夢が戸惑いを覚える。ガイは強い力を制御できずに暴走して、見境なく破壊行為を行ったことを思い出す。

「お前も何があっても自分を見失うなよ。そして、1人じゃないってこともな・・」

「ガイさん・・はい。」

 ガイからの励ましの言葉を受けて、永夢が微笑んで頷いた。

「ここにいたのか、2人とも・・」

 そこへシンもやってきて、ガイたちに声をかけてきた。

「シンさん・・ガイさんと、生きる上で大切なことを話していたんです・・」

 永夢が言いかけて、シンが真剣な顔を浮かべる。

「シンさんは、ザフトという軍隊に所属しているんですよね?・・平和を守るために、ですか・・・?」

 永夢がシンに質問を投げかける。シンは記憶を思い返しながら語りかける。

「オレは元々戦いに関わりはなかったんだ・・だけど戦争に巻き込まれて、オレ以外の家族が命を落とした・・オレの目の前で・・・」

 シンの話を聞いて、永夢だけでなく、ガイも息をのむ。

「力がないのが悔しかった。だからオレは軍に入って、戦いのない世界を目指した・・しかし力が及ばず、オレは戦いに負けた・・そんなオレを、オレの仲間がオレを支えてくれた・・」

 今までの自分の戦いを思い返すシン。数々の戦いの中でさらなる悲劇を経験しながら、彼は自分の目指す戦い方が間違っていなかったこと、理不尽に屈することの過ちを実感した。

「オレは誓った・・戦いを終わらせるための戦いを続けると・・世界を乱す存在と戦い続けることを・・」

「でも、それだとシンさん、あなたは・・・」

「救われないって周りに言われたよ・・でも、オレ自身で決めたことだから、後悔はない・・」

 自分の意思を貫いているシンに、永夢は戸惑いを覚える。たとえ自分が平和にならなくても、世界や大切なもののために戦う決意を自らの意思で選んだ。シンのこの姿を、永夢は強いと思うと同時に、悲しさも感じていた。

「永夢、お前は自分の意思で医者になるって決めたのか?」

 シンが真剣な顔で永夢に問いかけてきた。

「はい。僕、子供の頃に病気にかかって、助けてくれた医者に感謝したんです。そしてそんな医者になりたいと思って・・まだ見習いですけど、必ず立派な医者になってみせます。」

「だったら、自分が選んだその道を立派に突き進め。やり方や考え方は違うが、大事なもののために必死になっているってところはみんな同じだ。」

 答えて自分の過去を語る永夢に、ガイが励ましを送る。

「ガイさん、シンさん、ありがとうございます!僕、この思いを貫き通してみせます!」

 永夢が自信を見せて、ガイ、シンと握手を交わした。ガイとシンも安らぎを感じて、永夢に笑みを見せた。

 そのとき、デンライナーの周辺を哨戒していたブラッドのジャッジが戻ってきた。

「ブラッドが戻ってきた。オレ、行ってくる。」

 シンがガイたちに言いかけて、デンライナーを降りて近くに待機していたデスティニーに乗り込んだ。

「ブラッド、状況は?」

「こちらに向かって3機の熱源が近づいている。他にも生体反応が3つ。」

 シンがデスティニーから通信を送って、ブラッドが答える。

「熱源の1つの正体は分からないが、2つはガイアとレジェンドだ・・・!」

「何っ!?ガイアとレジェンド!?

 ブラッドの言葉を耳にして、シンが驚きを覚える。「ガイア」と「レジェンド」はともにプラントで開発されたモビルスーツで、どちらのパイロットもシンにとってのかけがえのない人だった。

「でも、レイもステラも・・どういうことなんだ・・・!?

 記憶を巡らせるシンが動揺をふくらませる。

 連合軍のパイロットだった少女、ステラ・ルーシェとシンの同期で仲間だったレイ・ザ・バレル。しかし2人は度重なる戦争の中で命を落とした。

 死んでほしくなかったという願いの一方で、確かに死んだはずだという現実の認識をシンはしていた。

「ホントにガイアとレジェンドなのか!?パイロットは!?

「通信を試みたが応答がない。しかしガイア、レジェンドのデータと一致するのは間違いない・・」

 感情をあらわにするシンに、ブラッドがさらに答える。シンもデスティニーから、近づいてくる機影を目にした。

 シンたちのいるほうに向かってくる3機の機体。1機はサイコガンダムだが、次元を超える前にシンたちが戦ったものとは違う。

 そして他の2機は紛れもなくガイアとレジェンドだった。

「間違いない・・ガイアとレジェンド・・・!」

 ブラッドの報告を確信するシンだが、なぜ2機がいるのかという疑問も感じていた。

 ガイア、レジェンド、サイコガンダムに続いて、3体の怪獣が姿を現した。デンライナーから出たガイと永夢も怪獣たちを目撃した。

「あれは、ゼッパンドン・・!」

 ガイが怪獣の1体、合体魔王獣ゼッパンドンを見て声を上げる。宇宙恐竜ゼットンと双頭怪獣パンドンの合体怪獣である。

「他の2匹は、バードンとブラックエンド・・!」

 ガイは2体の怪獣、火山怪鳥バードンと円盤生物ブラックエンドも目撃する。

「3匹ともとんでもなく熱く物騒なヤツらだ!みんな、気を付けろ!」

 ガイがシンたちに向かって呼びかける。

「たとえどんな相手でも、オレは立ち向かう・・あの2機に乗ってるのがステラとレイだっていうなら、なおさら・・!」

 シンは退こうとせず、ゼッパンドンたちを迎え撃とうとした。

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」

 シンの乗るデスティニーが発進。ガイアたちのところへ飛翔した。

 

「シンさんがデスティニーで飛び出した!」

 状況を理解した永夢がルナマリアたちに知らせる。ルナマリアたちも食堂車の窓から外を見て、ガイアたちの接近を目にしていた。

「私たちも行きます!シンさんとブラッドさんを援護しないと!」

「待って、ソラ。私たちは待機よ。」

 デンライナーから飛び出そうとしたソラをルナマリアが呼び止める。

「どうしてですか!?このままじゃシンさんたちが!」

「ここにもし巨大な敵が来たら、デンライナーが危険になるわ。私たちがここを守らないと・・」

 シンたちを心配するソラに、ルナマリアが檄を飛ばす。彼女に呼び止められて、ソラが思いとどまる。

「ちょっと待て、おめぇら。オレたちの力を甘く見るなよ。たとえ怪獣みてぇなデカブツだろうと関係ねぇ!」

 モモタロスたちがルナマリアたちに意気込みを見せる。

「いざとなったらデンライナーでも戦えるしね・・」

 良太郎も勇気を出して言いかける。彼らは戦うことに迷いも恐れもなかった。

「だったらオレが行く。」

 そこへガイがやってきて声をかけてきた。

「おいおい、オレの手柄を横取りする気かよ!?

 モモタロスがガイに向かって不満を見せる。

「この騒ぎに乗じて、宇宙人や怪人が乗り込んでくるかもしれない。だからオレたちみんな外に出てくわけにはいかないってことだ。」

 ガイが指摘して、良太郎が納得して頷く。

「そうそう。デンライナーが乗っ取られたら大変だよ。」

「おめぇが言うな、おめぇが!」

 ウラタロスが言いかけて、モモタロスが文句を言う。

「そういうわけだ。みんな、デンライナーを頼むぜ。」

 ガイは永夢たちに言ってから、デンライナーを飛び出した。

「ウルトラマンさん!」

“ウルトラマン!”

「ティガさん!」

“ウルトラマンティガ!”

 ガイがオーブリングにウルトラマンとティガのカードをリードさせる。

「光の力、お借りします!」

“フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン!”

 彼がオーブ・スペシウムゼペリオンに変身して、デスティニーたちを視界に入れる。

「この状況は単純じゃないが、追跡する怪獣たちを返り討ちにすることは間違いないな・・」

 オーブは呟いてから、デスティニーたちのところへ向かった。

 

 デンライナーから飛び立ったオーブ。彼を見送って、1人の男が動き出した。

「邪魔者は出払ったか。これでたっぷり楽しめるというもんだ・・」

 男がデンライナーを見つめて笑みを浮かべる。彼の後ろに数多くの怪人や戦闘員がいた。

 

 

 

小説

 

TOP

inserted by FC2 system