ザ・グレイトバトル -エンドレスメモリーズ-
第1章
様々な宇宙、様々な次元、様々な世界が無数に存在している。
様々な戦士、様々なヒーロー、様々な敵。
次元の壁を超えて出会いを果たした戦士たち。
彼らはあらゆる世界を揺るがす事件を解決に導いた。
戦士たちは自分たちの世界に戻った。
次元の壁を超えることがないため、再び出会うことはないと彼らは思っていた。
夕暮れの空を背に歩く1人の青年。彼はハーモニカを奏でながら、ゆっくりと歩を進めていた。
クレナイ・ガイ。世界を旅する風来坊である。
「この街も穏やかだな。みんな幸せに過ごしている・・」
街の風景を見渡して、ガイが呟いて笑みをこぼす。
「アイツらもこんなふうに、今もワイワイやってるのかな・・」
しばらく滞在していた町「北川町」での月日を思い出すガイ。そこでのひと時は彼にとってかけがえのない時間だった。
本来の自分を取り戻すこと、自分の力を制御することが、北川町でのガイの大きな出来事となった。
「いつかまた行ってやらないとな。」
仲間やかけがえのない人たちとの再会を心の片隅で願っているガイ。しかしその気持ちを表に出そうとは思わなかった。
(しかし、悪い予感がするな・・これからとんでもないことが起こるかもしれない・・・)
ガイは心の中で呟いて、ポケットにしまっていたカードを取り出した。複数あるそのカードには、それぞれ戦士の姿が描かれていた。
戦士の名はウルトラマン。地球や宇宙の平和を守る光の巨人である。
(かつて、様々な世界の戦士たちが次元を超えて出会い、力を合わせて巨大な敵を倒した話を聞いたことがある。)
ガイが記憶を巡らせて、カード「ウルトラフュージョンカード」を見つめる。
(ウルトラマンさん、ゾフィーさん、ジャックさん、タロウさん、メビウスさん、ゼロさん、みなさんはその瞬間に立ち会ったんですよね。そしてベリアルさんは、みなさんの敵の1人になっていた・・)
カードに描かれているウルトラマンたちに語りかけるように、ガイが思いを投げかける。
次元を超えたこの戦いに、ウルトラマンたちウルトラ戦士もいた。その中で邪悪に染まったウルトラマン、ベリアルはこのときも彼らの敵として現れていた。
(そのときはウルトラ戦士以外にも、たくさんの戦士たちがいた。彼らの出会いと協力がなかったら、その戦いで平和を取り戻せなかったことも・・)
ウルトラ戦士以外の様々な戦士たちの存在も、ガイは耳にしていた。彼はその戦士たちといつか会えたらとも思っていた。
そのとき、ガイが気配を感じて足を止める。彼が振り返った先、霧が立ち込めるその先に、1つの人物がいた。
それは人間ではなく、ハサミの付いた6本の腕のある黒い姿の怪物だった。
「お前、何者だ?どう見ても宇宙人だろ?」
ガイは動揺することなく、怪物に鋭い視線を向ける。
「私はクール星人コルド。見つけたぞ、クレナイ・ガイ。」
宇宙人、コルドがガイに声をかける。
「我々はこの地球を新たな人間牧場にしようと考えている。だがそのための力が足りない。そこでお前の力を借りたいと思ったのだ。」
コルドが自分たちの目的を話して、ガイを誘う。
「人間など我々にとっては昆虫のようなものだ。我々が飼いならして有効活用してやったほうがいいのだ。」
「何が人間牧場だ。そんなふざけたことをいうお前のほうが十分昆虫っぽじゃないか。」
嘲笑してくるコルドの誘いを、ガイがはねつける。
「誰も他のヤツを好きにしていいことにはならない。お前のようなヤツは、オレが地球から追っ払ってやるぞ。」
コルドに向かって冷静に言いかける。彼に誘いを拒まれて、コルドがいら立ちを覚える。
「やはりお前もそうか・・ならば地球人への見せつけのため、お前をここで始末してやるぞ!」
コルドが敵意を向けると、1つのアイテムと1つの人形を取り出した。怪獣の姿かたちをした人形である。
「最近見つけることができたこの道具、ここで実践させてもらおう。」
コルドが言いかけて、アイテムを人形の足の部分に当てた。
“ダークライブ!サンダーダランビア!”
すると黒い闇が現れて、コルドが包まれる。闇の中から人形と同じ姿の巨大な怪獣が現れた。
「宇宙人が怪獣に!?・・まさか、あれが怪獣にライブするということなのか・・!」
ガイが怪獣を見上げて緊張を見せる。
「いいぞ!我々クール星人の頭脳と怪獣の強さ!両方ある私に怖いものはないぞ!」
怪獣、超合成獣サンダーダランビアからコルドの声が響く。彼は人形「スパークドールズ」とライブ、一体化を果たしたのである。
「お前が怪獣の力を借りるなら・・!」
ガイが言いかけて、リング状のアイテムを取り出した。
「ウルトラマンさん!」
彼がウルトラマンのウルトラフュージョンカードをアイテム「オーブリング」の中央に入れてリードする。
“ウルトラマン!”
カードを読み取ったオーブリングから音声が発する。
「ティガさん!」
“ウルトラマンティガ!”
続けてガイはウルトラマンティガのカードをオーブリングにリードさせる。
「光の力、お借りします!」
“フュージョンアップ!”
オーブリングを高く掲げたガイが、2人のウルトラマンの光に包まれる。
“ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン!”
彼の姿が新たな光の巨人に変わった。
ガイは地球人ではなくウルトラ戦士、ウルトラマンオーブである。彼が今変身したのは、初代ウルトラマンとティガの力を宿した姿「スペシウムゼペリオン」である。
「オレの名はオーブ!ウルトラマンオーブ!闇を照らして、悪を撃つ!」
ガイが変身したオーブが名乗りを上げて、構えを取る。
「お前も変身してきたか!だが私とサンダーダランビアの力に敵うものか!」
コルドが言い放って、サンダーダランビアが彼の意思を受けてオーブに向かってきた。オーブが両手でサンダーダランビアの突進を受け止める。
サンダーダランビアが体から電撃を放出する。オーブが電気ショックを受けて突き飛ばされる。
サンダーダランビアがさらに電撃を放つ。電撃を直撃されて、オーブがダメージを受けていく。
「これが我々のパワーだ!私の仲間とならなかったことを後悔するがいい、ウルトラマンオーブ!」
コルドがサンダーダランビアの力とオーブを追い詰めていたことを喜んで、笑い声を上げる。
「パワーだったらオレも負けていないぞ!」
オーブが立ち上がって、ガイが新たなウルトラフュージョンカードを手にした。
「タロウさん!」
“ウルトラマンタロウ!”
「メビウスさん!」
“ウルトラマンメビウス!”
彼がタロウとメビウスのカードをオーブリングにリードする。
「熱いヤツ、頼みます!」
“フュージョンアップ!”
ガイがオーブリングを高く掲げる。
“ウルトラマンオーブ・バーンマイト!”
オーブの姿にも変化が起きた。赤のメインカラーをしていて、頭には2つの角「ウルトラホーン」が生えていた。
オーブはタロウとメビウスの力を宿した姿「バーンマイト」に変わった。
「紅に燃えるぜ!」
オーブが高らかに言い放って、熱気と闘志を放つ。
「姿を変えたところで、我々には遠く及ばん!」
コルドが言い放って、サンダーダランビアがオーブに向かっていく。オーブがサンダーダランビアの突進を受け止めて、踏みとどまる。
オーブがそのままサンダーダランビアを持ち上げて放り投げる。
「ぐおっ!」
サンダーダランビアが地面に倒れて、コルドがその衝撃に揺さぶられる。
サンダーダランビアが電撃を放つが、オーブはジャンプしてかわす。彼は空中で回転してキックを繰り出して、サンダーダランビアに命中させた。
「ぐっ!・・パワーもスピードも、我々を上回るなど・・!」
「このまま一気に行くぞ!」
うめくコルドと、全身から炎を発するオーブ。
「ストビュームバースト!」
オーブが炎の球を放つ。サンダーダランビアが電撃を放つが押し切られて、炎の球の直撃を受ける。
「こ、こうも簡単に・・ぐあぁっ!」
コルドが絶叫を上げる中、サンダーダランビアが爆発を起こした。ライブが解除されて、ダメージを受けたコルドが慌てて逃げ出す。
「逃がすか!」
オーブが飛行してコルドを追う。
そのとき、コルドとオーブの向かう先の空に空間のゆがみが発生した。
「な、何だ、あれは・・!?」
ガイが空間を見て疑問を覚える。さらに彼が持っていたウルトラマンゼロのカードから光があふれ出した。
「ゼロさん・・もしかしてあれは、別の宇宙につながっているんじゃ・・!?」
ガイは空間のゆがみの先に何かあるのではないかと予感した。同時に彼は一抹の不安も感じていた。
「行くしかない・・この世界も危険にさらされるかもしれない・・・!」
ガイが意を決して、空間のゆがみで生まれたトンネルに飛び込んだ。逃走したコルドを追って。
地球から遠く離れた位置に点在するスペースコロニー「プラント」。遺伝子操作によって生誕している種族「コーディネイター」が、そこに滞在している。
そしてプラントを拠点としている軍事組織「ZAFT」。
地球とプラント、周辺の宇宙はコーディネイターと遺伝子操作を受けていない「ナチュラル」の長きにわたる戦争が沈静化に向かいつつあった。1人の青年の、武力による敵対勢力や破壊者の弾圧によって。
シン・アスカ。ザフトに所属するMSパイロットである。
シンと彼の仲間の活躍によって、混迷を極めていた戦争は沈静化に向かっていた。彼らへの反発は途絶えていないが、彼らの意思を曲げるには至っていない。
このとき、シンは反乱分子の報告を得て、探査行動を行っていた。モビルスーツ、マークデスティニーに搭乗して。
(まだ戦争を仕掛けてくるヤツらがいるのか・・悲しみや苦しみを失くそうと思う人が多いのに・・・!)
争いが途絶えないことのいら立ちを感じていくシン。彼の乗るデスティニーに通信が入る。
“シン、こっちは何もないわ。敵がいる様子も戦闘の痕跡も見つからなかった・・”
「ルナ・・分かった。いったん合流しよう。」
通信の相手、ルナマリア・ホークに答えるシン。デスティニーがきびすを返して移動をする。
前進するデスティニーの向かう先に3機の機体があった。インパルス、ファルコン、ジャッジである。
「シンさん・・こっちも敵対勢力を見つけられませんでした・・」
「僕たちの動きに気付いて、逃走したのでしょうか・・?」
ファルコンに搭乗しているソラ・アオイ、ハル・ソーマがシンに報告する。
「もう1度調べてみるぞ。それで敵が動きを見せるかもしれない。」
ジャッジのパイロット、ブラッド・J・クロノスが言いかける。
「私たちが別れるのを狙っているのかもしれないわね。お互い、気を付けるようにしないと。」
ルナマリアの言葉を聞いて、シンたちが頷いた。
そのとき、デスティニーたちのレーダーが熱源を捉えた。シンたちが緊張を覚える。
「私たちが集まったのを狙ってきたってこと!?」
ソラがこの事態に毒づいて声を上げる。
「ルナはインパルスのエネルギーを回復するんだ!ハルたちも一緒に行くんだ!」
「分かりました、シンさん!」
シンの呼びかけにハルが答える。
「シン、すぐに戻ってくるからね・・!」
ルナマリアが言いかけて、シンが頷く。インパルスとファルコンが1度撤退をする。
インパルスには「デュートリオンビーム送電システム」によるエネルギー供給を可能としている。核エンジン「ニュートロンジャマーキャンセラー」とデュートリオンエンジンを組み合わせた「ハイパーデュートリオンエンジン」を備えたデスティニーたちと違って、インパルスはエネルギー供給が必要となってくる。
「行くぞ、シン!ヤツらを追い詰めるぞ!」
「あぁっ!」
ブラッドが呼びかけてシンが答える。ジャッジとデスティニーが先行して、敵勢力の追走に向かった。
加速するデスティニーたちの前に3機の巨大な機体が現れた。
「あれは・・!」
その中の2機を目の当たりにして、シンが目を見開く。彼はその機体に覚えがあった。
「デストロイ・・ラグナログ・・・ステラ・・アテナ・・・!」
シンが2機の機体を見て、記憶を巡らせる。彼はかつて心を通わせた少女、ステラ・ルーシェを思い返す。
「シン、オレが1度呼びかける。攻撃を仕掛けてくるかもしれないから、油断するな。」
そんなシンにブラッドが呼びかけてきた。シンが冷静さを取り戻して、ブラッドが3機の機体に向けて呼びかけた。
(残りの1機・・初めて見る機体だが・・)
「そこのモビルスーツ、応答せよ。オレはザフトのブラッド・J・クロノスだ。お前たちの名前と行動を教えてもらう。」
残る1機のことを気にしながら、ブラッドが呼びかける。しかし3機とも応答がない。
「どうした?応答しろ。こちらの声が消えていないのか?」
ブラッドがさらに呼びかけたときだった。デストロイ、ラグナログ、そして残る1機「サイコガンダム」がビームを放ってきた。
シンとブラッドが反応して、デスティニーとジャッジが加速してビームをかわす。
「問答無用に攻撃をしてきたか・・!」
「あれだけの巨体と火力だ!進行させれば被害が出る!その前に討つしかない!」
シンとブラッドが毒づき、デスティニーとジャッジが迎撃に出る。
デストロイとラグナログがエネルギー砲「アウフプラール」を発射する。ジャッジがデスティニーとともにビームをかわして、デストロイに向けてレールガンを発射する。
だがデストロイに搭載されている「陽電子リフレクター」によって、レールガンのビームがはじかれた。
「やはりヤツらに射撃、砲撃は通用しないか・・!」
「だったらオレに任せろ!」
毒づくブラッドにシンが呼びかける。デスティニーが腰に搭載されている「シュペール・アロンダイトビームソード」の柄を手にして、ビームの刃を発した。
初代デスティニーが使用していた「アロンダイトビームソード」は、実体の刀身の刃の部分にビームの刃が発せられていたが、シュペール・アロンダイトビームソードは刀身全てがビームとなっている。その長さはビームサーベルほどから大刀ほどにまで調整可能。
デスティニーが放たれるビームをかいくぐって、ビームの刃を長く伸ばしたビームソードを振りかざした。ビームソードがデストロイの両腕を切り裂いて爆発させる。
「誰が乗っているんだ!?正体を現せ!」
シンがさらに呼びかけるが、デストロイはビーム攻撃を止めない。
「そこまで戦争をしようっていうのか・・・!?」
あくまで破壊活動を続けるデストロイたちに、シンが憤りを覚える。デスティニーがビームソードの出力を抑えて、デストロイの胴体を切りつけた。
「な、何っ!?」
傷ついたデストロイにシンが目を疑う。傷の穴の先に見えるコックピットには誰もいない。
「誰も乗ってない・・どうなってるんだ・・!?」
「AI・・自動操縦なのか・・・!」
シンだけでなく、ブラッドもデストロイに対して疑問を感じていた。ブラッドがとっさにジャッジのレーダーで生体反応を確かめたが、自分とシン以外に生体反応は探知できなかった。
「3機とも誰も乗っていない・・自動で動いている・・!」
「それじゃ、ただ攻撃するためだけに・・・!」
完全な機械任せの機体に、ブラッドとシンが毒づく。
「だったらなおさら、コイツらを見過ごすわけにはいかない!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーがビームソードを構える。
「焦るな、シン!下手に飛び込むと集中砲火を受けるぞ!」
ブラッドが呼びかけて、ジャッジも両手の甲からビームダガーを発してデスティニーに続く。
さらなるビームを放出するデストロイに、デスティニーが素早く詰め寄る。デスティニーがデストロイの頭部に左手を当てて、手のひらに装備されているビーム砲「パルマフィオキーナ」を発射した。
デストロイが頭から胴体へと爆発に襲われて大破、炎上した。
ラグナログとサイコガンダムが、デスティニーとジャッジを狙ってビームを放ってきた。
「オレがあの機体の相手をする!シンはラグナログを!」
「あぁ!分かった!」
ブラッドの呼びかけにシンが答える。デスティニーとジャッジがそれぞれラグナログとサイコガンダムに向かっていく。
ジャッジがビームダガーを振りかざして、サイコガンダムの左腕を切りつける。
サイコガンダムが全身の砲門からビームを乱射する。ジャッジがとっさに回避して、ビームライフルで反撃する。
ビームを受けたサイコガンダムの胴体に爆発が起こった。
(あの機体はビームを無効化する装備はない・・ならば・・!)
ブラッドが目つきを鋭くして、ジャッジが続けてビームライフルを発射する。サイコガンダムがビームを撃ち込まれて、ダメージを負っていく。
「このまま一気に仕留める!」
ブラッドがとどめを刺そうとして、ジャッジがレールガンを構えた。
「ぐっ!」
そのとき、ジャッジが電気ショックを受けて、ブラッドがその衝撃に襲われる。
「ブラッド!」
シンがブラッドに向かって声を上げる。ジャッジの後ろにもう1機、巨体の機体が現れた。
「このアンノウンの同型機・・!?」
ブラッドがもう1機の機体に毒づく。その機体「サイコガンダムMK-U」が発した電撃に襲われて、ジャッジが一時的なショートに陥った。
「う、動かない!?この電気ショックの影響か!?」
ジャッジが動かなくなって、ブラッドが危機感を覚える。
「ブラッド!」
シンが助けようとするが、デスティニーの前にラグナログが立ちふさがる。
(このままではやられる・・!)
ブラッドが絶体絶命を痛感して、2体のサイコガンダムがジャッジに狙いを定めた。
「ブラッドさん!」
そのとき、ジャッジの姿がサイコガンダムたちの前から消えた。ファルコンが戦闘機形態で駆けつけて、ジャッジを引っかけて引っ張って助けたのだった。
「大丈夫ですか、ブラッドさん!?」
「あぁ、助かった・・ジャッジも機能が回復してきた・・・!」
ソラが声をかけて、ブラッドがジャッジの状態をチェックする。
「シン、ブラッド、遅くなってゴメン・・!」
インパルスに乗るルナマリアがシンに呼びかける。
「ありがとう・・オレは大丈夫だ・・!」
シンが答えて、ラグナログに視線を戻す。
「あの機体がまた・・それに見たことのない機体も・・・!」
「あんなのがプラントや地球に攻めてきたら、大変なことになる・・!」
ソラとハルがラグナログたちを見て緊張をふくらませる。
「ここで一気に叩く!オレたちが戦いの火種を摘む!」
「はいっ!」
シンが言い放って、ソラとハルが答える。体勢を整えたジャッジが、再びサイコガンダムに向かっていく。
サイコガンダムがビームを乱射するが、ジャッジは素早くかいくぐる。
「その機体は電磁攻撃を仕掛けてくる!動きを止められないように気を付けろ!」
「分かったわ!」
ブラッドの呼びかけにルナマリアが答える。インパルスとファルコンがビームライフルを手にする。
「ここは私に任せて、ハル!」
「分かった、ソラ!」
ソラが呼びかけて、ハルが彼女にファルコンの操縦権を渡した。2人乗りのファルコンは状況に応じて操縦を交代することができる。
射撃、遠距離戦が得意なソラと近距離戦に長けているハル。2人は操縦を交代して戦況を潜り抜けている。
インパルスとファルコンが左右に別れて、サイコガンダム・マーク2のビームと電撃をかわす。2機がビームライフルでの素早い射撃を仕掛ける。
「ビーム攻撃は効くみたいだ・・!」
「それなら止めることは難しくないよ!」
ハルと声をかけ合って、ソラが自信を浮かべる。ファルコンがスピードを上げて、サイコガンダム・マーク2にビームを当てていく。
「タイミングを合わせるよ、ソラ!」
「はい!」
ルナマリアの声にソラが答える。インパルスとファルコンがビームライフルを構えて、サイコガンダム・マーク2に同時に発射する。
2機のビームは交差するようにサイコガンダム・マーク2の胴体を貫通した。サイコガンダム・マーク2が爆発を起こして、宇宙の彼方に流れていった。
「やった!こっちは撃破したよ!」
ソラがサイコガンダム・マーク2の撃破を喜ぶ。
「でも、何だろう、この機体・・連合の残党の新兵器なのかな・・・!?」
ハルがサイコガンダム2体に対して疑問を感じていた。
「もしかして、この2体も・・・!?」
そのとき、ルナマリアは記憶を巡らせて、一抹の不安を感じた。
ジャッジがレールガンを発射して、サイコガンダムの胴体を貫いた。サイコガンダムも破壊されて、機能を停止した。
「残るはラグナログだけか・・・!」
ブラッドが交戦するデスティニーとラグナログに目を向ける。デスティニーが振り下ろしたビームソードが、ラグナログの両腕を切り裂いた。
「これで終わりだ!これ以上先へは行かせない!」
シンが言い放って、デスティニーが突っ込んで右手を伸ばして、パルマフィオキーナを発射した。ラグナログが胴体を爆破されて、機動力を失う。
宇宙に流れていくラグナログを見つめて、シンが呼吸を整える。
(ステラ、アテナ・・オレは戦う・・戦いを終わらせるために・・誰も戦いに駆り出されないように・・・)
自分が守ろうとした人、ステラとアテナ・アルテミスのことを思い出して、シンが決意をさらに強めていく。
そのとき、デスティニーたちのいる宙域に突然空間のゆがみが出現した。
「あれは・・!」
ルナマリアがゆがみを見て声を上げる。ゆがみはブラックホールのように周囲を吸い込み始めた。
「まさか、また次元のトンネルか・・!」
「みんな、すぐに退避だ!吸い込まれたらどうなるか分からないぞ!」
シンも緊張を覚えて、ブラッドが呼びかける。デスティニーたちがゆがみから離れていくが、ゆがみの近くにいたファルコンが吸い込まれ始める。
「しまった!引力に捕まった・・!」
「だ、脱出できない・・・!」
ハルとソラが焦りを覚える。ファルコンが加速するが、それでも空間のゆがみから抜け出せない。
「ハル!ソラ!」
シンが声を上げて、デスティニーがファルコンを助けようと引き返す。
「シン!」
ルナマリアとブラッドが声を上げる。デスティニーがファルコンを支えるが、2機ともゆがみに引っ張られる。
「このままではシンも吸い込まれて・・うっ!」
「しまった!オレたちも引力に捕まった・・!」
ルナマリアもブラッドもうめく。インパルスとジャッジも、拡大する空間の歪みによる引力に捕まった。
(今のデスティニーの力でも抜け出せない・・やはりこれは、あのときと同じ・・!)
「ぐあぁっ!」
記憶を巡らせて確信を覚えたシンだが、デスティニーがファルコンとともに次元の穴に吸い込まれてしまった。
「シン!ソラ!ハル!」
ルナマリアがシンたちに向かって叫ぶ。インパルスとジャッジも耐えきれなくなって、次元の穴に吸い込まれてしまった。
多次元宇宙「マルチバース」。次元を隔てて無数の宇宙、無数の世界が並行して存在している。
宇宙と宇宙をまたにかけて、2人の宇宙人が攻防を繰り広げていた。
「どこへ逃げてもムダだぞ、チブル星人ヘルダ!」
「どこまでもしつこくしおって、ウルトラマンゼロ・・!」
2人の宇宙人、ゼロとヘルダが言い合う。ヘルダはチブル星人専用の人型メカ「チブローダー」に乗っていた。
「関係のない星のヤツを支配して手駒にしようとするお前の企みは、オレがさせないぞ!」
ゼロがヘルダに言い放つと、頭にある2つのブーメラン「ゼロスラッガー」を放つ。
ヘルダのチブローダーからバリヤーが発せられて、ゼロスラッガーをはじき返した。
「貴様を始めとしたウルトラ戦士の能力を分析して開発・調整した最新鋭のチブローダーだ!いくら貴様でも私に勝つことはできぬ!」
ヘルダがチブローダーに自信を感じて勝ち誇る。しかしゼロは全く焦っていない。
「その能力っていうのは、今までのオレたちのことを言っているのか?」
「何!?」
「日々成長して進化してるんだよ・・オレたちウルトラマンも、正義と平和を持っているみんなも!」
言い放つゼロにヘルダが驚きの声を上げる。
「見せてやる!オレたちの無限の可能性を!」
ゼロが再びゼロスラッガーをヘルダ目がけて放つ。
「それは効かないことが分からんか!?」
ヘルダがあざ笑って、チブローダーがビーム砲を備えた両腕をゼロに向ける。ゼロが続けて左腕に装備しているブレスレット「ウルティメイトブレスレット」を外して、「ウルトラゼロスパーク」として放つ。
「食らうがいい!最新チブローダーのチブルキャノンを!」
勝ち誇るヘルダが、ゼロに砲撃を仕掛けようとした。
そのとき、ゼロスラッガーとウルティメイトブレスレットがチブローダーの胴体の1点に命中した。するとチブローダーの胴体に傷がついて、爆発を起こした。
「何っ!?」
チブローダーを傷付けられたことに、ヘルダが驚く。損傷したチブローダーが動きを鈍らせる
「お前の教えに感謝しているぜ、ミラーナイト・・」
ゼロスラッガーとともに戻したウルティメイトブレスレットを見つめて、ゼロが感謝を感じていた。
「おのれ!・・私は倒れん!私が全ての生物の頂点に立つのだ!」
ヘルダが怒りをあらわにするが、チブローダーは彼の思うように動かない。
「お前のようなヤツが、トップになる世界はどこにもない!」
ゼロが言い放って、左腕を横に伸ばしてから、両腕をL字に組む。
「ワイドゼロショット!」
彼が放った光線がチブローダーに直撃した。
「おのれ、ゼロ・・ゼロー!」
絶叫を上げるヘルダがチブローダーの爆発に巻き込まれて倒れた。
「やっとヘルダを倒すことができた・・だが・・・」
一瞬安心を感じたゼロだが、すぐに気を引き締めなおす。
「次元のゆがみがまた起きている・・また何かとんでもないことが起こりそうだ・・・」
一抹の不安を感じながら、ゼロは移動する。彼はこの異変を引き起こしている首謀者がいるのではないかという予感をしていた。