ギャバン×ウィザード×キョウリュウジャー

スーパーヒーロー英雄列伝

第6章

 

 

 晴人たちに追いつこうと急いでいたヒロムたちと魁たち。その途中、彼らは晴人、ノブハル、ソウジ、空蝉丸を発見した。

「あれは・・!」

 ヒロムたちが晴人たちに駆け寄って、体を支える。

「大丈夫か!?しっかりしろ!」

 ヒロムに呼びかけられて、ノブハルたちが目を覚ます。

「あれ?・・ここは・・?」

「よかった・・無事みたいだ・・」

 起き上がるノブハルを見て、リュウジが安心を覚える。そしてソウジ、空蝉丸、晴人も意識を取り戻した。

「あのガルヴォルスがいない・・ここまで吹き飛ばされてしまったのか・・」

「そうみたいだな。ここにいるのはお前たちだけだ・・」

 状況を把握しようとする晴人に魁が言いかける。

「その姿・・戦隊だってことは分かるが・・あなたたちも魔法使いか・・?」

「まぁな。オレたちは魔法使いの兄弟でもある。オレは末っ子だけどな。」

 晴人が声をかけると、魁が笑みを見せて答えた。

「そういうお前も魔法使いのようだな。魔法はオレたちと違うみたいだけどな。」

「まぁな。同じ魔法使い同士、よろしく頼むな・・」

 魁と晴人が声を掛け合って、握手を交わした。

「ということはお前ら、あのガルヴォルスに返り討ちにされて、みんなバラバラになっちまったってことか。」

 そこへマサトが口を挟んで、状況を語る。

「相手は晴人たちを返り討ちにするほどにまで力を上げている。ヤツのところに向かう前に、みんなと合流したほうがいいでしょう。」

「オレも同じ意見だ。バラバラに行動していたら、それこそ敵の思うつぼになる・・」

 ヒロムが口にした言葉に蒔人が頷く。

「急ごう!こんなことで、あたしたちの世界がムチャクチャになるなんてイヤだよ!」

「そうね!あたしたちが世界を、みんなの勇気と希望を守らないとね!」

 ヨーコと麗も決意を言い合う。彼女たちの言葉を聞いて、晴人が戸惑いを覚える。

「希望か・・そうだな・・そうだったな・・・」

 自分の戦う理由と信念を思い出して、晴人が呟いていく。

「貴様らの墓場はここだ。」

 そこへ声がかかって、晴人たちが振り返った。メーズがヒドラー兵たちを引き連れて現れた。

「お前はあのときのもののけ・・ここまで追ってきたでござるか!」

 空蝉丸が身構えてメーズたちを見据える。ヒロムたちもメーズを迎え撃とうとする。

「貴様らは仲間と再び会うこともできず、地球に戻ることもできずに死ぬことになる。お前たちに許されているのは絶望だけだ。」

「それは違う。」

 勝気に振る舞うメーズに言い返してきたのは晴人だった。

「オレたちを待っているのも、世界や宇宙に訪れるのも絶望じゃない。希望だ。そしてその希望を与えるのはオレ、いや、オレたちだ・・・!」

 メーズとヒドラー兵たちに立ち向かおうとする晴人。彼は自分だけでなく、世界や宇宙を守ろうとする戦士が他にもいると実感していた。

「くだらないことをゴチャゴチャと・・すぐにそのような口が叩けないようにしてくれる!やれ!」

 メーズは晴人たちをあざ笑って、ヒドラー兵に命令を出す。

「変身!」

“フレイム・ドラゴン・ボー・ボー・ボーボーボー!”

 晴人は強化変身をもたらす「フレイムドラゴンリング」をはめて、ハンドオーサーにかざした。彼はフレイムスタイルの強化形態「フレイムドラゴン」に変身した。

“ガブリンチョ!”

「キョウリュウチェンジ!ファイヤー!」

 ノブハル、ソウジ、空蝉丸もキョウリュウジャーに変身するヒロムたち、魁たちもメーズたちを迎え撃とうとする。

「オレたちには時間がないんだ。でも借りるのは猫の手じゃなくて、オレだけどな。」

 晴人は腕輪型装備「ドラゴタイマー」を呼び出して、右腕に装備した。

“ドラゴタイム!”

 ドラゴタイマーから音声が発せられる中、晴人がメーズたちに言いかける。

「このショータイムについてこれるかな?」

“セットアップ!スタート!”

 晴人がドラゴタイマーを起動させて、ソードモードのウィザーソードガンを手にして走り出す。ヒドラー兵が彼に次々と襲いかかっていく。

“ウォータードラゴン!”

 晴人がドラゴタイマーを操作すると、青の魔法陣からもう1人の晴人が現れた。それは彼の分身で、その姿はウォータースタイルの強化形態「ウォータードラゴン」である。

 ドラゴタイマーによって呼び出された晴人の分身が、ヒドラー兵撃退に加わる。

“ハリケーンドラゴン!”

 さらに緑の魔法陣から、ハリケーンスタイルの強化形態「ハリケーンドラゴン」の晴人の分身が現れた。さらにスピードが増して、晴人たちがヒドラー兵たちを追い詰めていく。

“ランドドラゴン!”

 そして黄色の魔法陣からランドスタイルの強化形態「ランドドラゴン」も現れる。4人の晴人たちがヒドラー兵たちを次々と撃破していく。

「おのれ、ウィザード・・これ以上好き勝手にはさせんぞ!」

 メーズがいら立ちを見せて、鞭を振りかざしてビームを放つ。ビームは晴人たちに向かって飛んで地面に当たり、爆発してヒドラー兵を巻き込んだ。

「部下を巻き添えにするのは感心しないな。」

 ところが晴人たちはメーズの後ろに回り込んでいた。

“ファイナルタイム!”

「さぁ、フィナーレだ。」

 晴人がメーズに言いかけて、ドラゴタイマーを操作する。

“ドラゴンフォーメーション!”

 4人の晴人がそれぞれ火炎「ドラゴンブレス」、吹雪「ドラゴンテイル・ブリザード」、電撃「ドラゴンウィング・サンダー」、衝撃波「ドラゴンクロー」を同時に放つ。この一斉攻撃にメーズとヒドラー兵たちが巻き込まれた。

 必殺技を終えた晴人が分身と1つになった。

「おいおい、オレたちの見せ場まで持っていくなよ・・」

 マサトが晴人に見せ場を取られて不満の声を上げる。

「なかなかのマジックでま、ジーッと見ちゃったってことで。」

 ノブハルがダジャレを言うと、一気にこの場が静まり返った。ソウジと空蝉丸の苦笑いが小さくもれた。

「くだらないことは今のうちに言っておくのだな。」

 そこへ声がかかって、晴人たちが緊張を覚える。爆発の煙の中からメーズが出てきた。ヒドラー兵たちは晴人の魔法でほとんど倒されていた。

「こっちの見せ場はまだ残ってるってことか・・」

「のん気なことを言っている場合じゃないですよ、先輩・・」

 笑みをこぼすマサトにリュウジが肩を落とす。

「この戦、油断が命取りになるでござる・・・!」

 空蝉丸が緊張を膨らませながら、戦う力を残しているメーズを見据えた。

 

 さらに力を高めていくネクロマンサーガルヴォルス。倒された怪人たちをよみがえらせながら、魔空空間と外の世界をつなぐトンネルを見ていた。

「いよいよだ・・この魔空空間とともに、私は外の世界に戻るときが来た・・・!」

 ネクロマンサーガルヴォルスが喜びと期待を膨らませていく。

「地球も宇宙も魔空空間と同じにしていけば、強い怪人たちの世界へと作り変えることができる・・その怪人たちの命は私の手の内・・最高の怪人たちの理想郷を、私が築くことになる・・」

 ネクロマンサーガルヴォルスがトンネルのあるほうに両手を伸ばす。

「では始めよう・・魔空空間の拡大を!」

 ネクロマンサーガルヴォルスが両手からエネルギーを放出して、トンネルに注ぎ込む。魔空空間のエネルギーが外の世界に伸びていく。

「いいぞ!魔空空間のエネルギーが外に出始めてきた!このまま地球や宇宙、全世界を魔空空間同然に変えてくれる!」

 笑い声を上げるネクロマンサーガルヴォルスのエネルギーによって、魔空空間と外の世界をつなぐトンネルが広がっていく。

「よみがえった怪人たちよ、好きにするといい。外の世界に出て、それぞれの目的を果たすがいい!」

 ネクロマンサーガルヴォルスの言葉に動かされるように、魔空空間でよみがえった怪人たちが次々に外の世界に飛び出していった。

 

 ブラジラが繰り出す光の攻撃に、撃たちは翻弄されていく。

「くっ!・・相変わらず強力な攻撃だ・・・!」

「やはり、こっちも本気でやらないとダメということか・・・!」

 うめく撃と、反撃の手段を試みようとする光輝。

 そのとき、撃たちのいる場所が大きな揺れに襲われた。それはブラジラの力が起こしたものではない。

「とうとう本格的に始めたか。もうすぐ外の世界に怪人や戦士たちが向かうことになる。」

「何だと!?

 ブラジラが口にした言葉に、イアンが声を上げる。

「私も救星のために乗り出すことにしよう。魔空空間が広がる世界で。」

「待て!お前たちを外には出させないぞ!」

 魔空空間から外に出ようとするブラジラを、撃が止めようとレーザーサーベルを振りかざす。しかしブラジラが左手から放った光に吹き飛ばされて、返り討ちにされてしまう。

「撃!」

 ダイゴが撃に声を上げて、改めて歩き出すブラジラに目を向ける。

「こうなったらコイツで止めるしかない!」

“ガブリンチョ!ア〜ケノロン!”

 ダイゴがガブリボルバーに獣電池をセットして引き金を引く。するとこの場の重力が一気に重くなり、ブラジラとダイゴたちが自由に動けなくなる。

「こ、これは!?・・動きが・・・!」

 強くなった重力にブラジラがうめく。

「へへ!これで動きが鈍ったな!」

「動きが鈍ったのはこっちもだけどね・・・!」

 笑みを見せるダイゴに、アミィが声をかける。

「だったら、10秒で終わらせるしかないようだな・・・!」

Complete.”

 巧がファイズアクセルを起動させて、アクセルフォームになる。

「今度はそっちは動きが鈍っているから、ついてこれるか分からないな・・・!」

Start up.”

 ファイズポインターを右足にセットしてから、ファイズアクセルのボタンを押す。何とか体を起こしたブラジラに、複数の赤い円錐が向けられる。

「私は倒れるわけにはいかない・・・!」

 ブラジラが力を込めてエネルギーを放出しようとするが、間に合わず、アクセルクリムゾンスマッシュの連続直撃を受ける。

「うっ!」

3,2,1...Time out.”

 ブラジラがうめくそばで、巧が着地してファイズのアクセルフォームが解除される。

「これでも倒れないのか・・何でヤツだ・・!」

「だが今度こそ終わりだ・・オレがとどめを刺してやる・・・」

 修二と雅人が力を振り絞って立ち上がる。そしてダイゴの放った獣電池の重力の効果が消えた。

 雅人がブラジラを見据えて、カイザブレイガンを構える。

Exceed charge.”

 カイザブレイガンの光の刃にエネルギーが集中される。

「このまま・・このまま倒れるものか!」

 ブラジラが全身から光を放出して、雅人の突撃を回避する。彼は背中から翼を広げて、飛び去るように姿を消した。

「逃がしたか・・まぁいいさ・・」

 雅人がカイザブレイガンの光の刃を収める。

「オレたちも急いだほうがいいみたいだな・・!」

 ダイゴが声をかけると、撃たちが頷く。

「こうなったら、この魔空空間から外に出たほうがよさそうだ・・」

 RXの声にダイゴ、撃、巧が頷く。

「あの怪人の力で生き返った草加やこの怪人が、外に出ても生きていられるかどうかは分からないけど・・」

「そんなことを気にしている場合じゃないな・・」

 修二とイアンが雅人やクジラ怪人の安否について呟く。彼らは気にしていることを頭の隅に追いやって、晴人たちと合流すべく走り出していった。

 

 晴人によって追い詰められるメーズだが、まだ戦う力を残していた。

「しぶといな。だがそのダメージでこれだけの人数を相手にするのは無謀じゃないか?」

 マサトが気さくに問いかけると、メーズがいら立ちを見せてくる。

 そのとき、晴人たちのいる場所に地震が起こった。突然のことに彼らが周りを見回す。

「どうやらヤツが力を解放して、外の世界にも魔空空間を広げようとしているな・・・!」

 メーズが魔空空間と外の世界をつなぐトンネルを見据えて言いかける。

「貴様たちの始末は後でしてやるぞ・・それまで首を洗っておくのだな・・!」

 メーズは晴人たちに言いかけて、ジャンプで立ち去っていった。

「今は追うよりも、撃たちと合流するのが先だ。」

「キングたちとうまく合流できるかな・・」

 ヒロムとノブハルが言いかけて、徐々に大きくなっていくトンネルに目を向ける。

「今はダイゴたちを信じて、オレたちも外に向かうのがいい・・・!」

 晴人の言葉にヒロムたちが頷く。彼らも外の世界をつなぐトンネルに向かって走り出した。

 

 外の世界で待機して、晴人たちの帰りを待っていた攻介。ゴーオンジャーも魔空空間に通じるトンネルを見ていた。

「ここでじっとしてても仕方がない。オレたちも乗り込もうぜ!」

「既に蒔人たちが突入している。オレたちまで突入したら、ヒューマンワールドの守りが手薄になってしまう。」

 ゴーオンレッドが魔空空間に飛び込むことを提案するが、ゴールドに却下される。

「それに、これからもっととんでもないことが起こる気がしてならない・・だから私たちはここで待機。他の戦隊や仮面ライダーが来るかもしれないし。」

「くーっ!じっとするってのはどうも苦手なんだよな〜!」

 シルバーにも言われて、レッドが待つしかないことに悔しさを見せる。

「ハァ・・ライダーもだけど、戦隊って何人いるんだよ・・みなまで言うのは大変かも・・」

 攻介もライダーや戦隊の多さに肩を落としていた。

「お、おい、だから放せって!」

 そこへ男の声が飛び込んできて、攻介たちが振り返る。破れのあったジーンズジャンバーを着た男を、袴姿の少女が引っ張ってきて、その後をもう1人の少女がついてきていた。

「薫さん、久しぶり・・この人は?」

 シルバーが2人の少女、志葉(しば)(かおる)花織(はなおり)ことはに声をかける。

「物の怪や悪の者たちが黄泉から現世に戻っていることには気づいているな・・生きていたのだ。腑破(ふわ)十臓(じゅうぞう)も・・」

「だからオレはそんなふわふわした名前じゃねぇって!ちゅーかいい加減に放せって!」

 語りかける薫に怒鳴りかかる男。

「十臓・・にしてはえらく軽い感じだね・・」

 ゴーオンブルーが男を見て首をかしげる。

「しかしこやつには悪しき気配も感じ取れる。顔が同じというだけの人違いということは・・」

「しばらく地獄にいた間に、お前らも変わったようだな。」

 薫が言いかけていたところで声が飛び込んできた。攻介たちの前に1人の男が現れた。彼の顔は薫が捕まえている男とそっくりだった。

「腑破十臓!?ではこの者は・・!?

 男、十臓の出現に驚き、薫は捕まえていた男を放す。

「イタタ・・だから人違いだって言ってんだろ!・・ちゅーか、お前誰だ!?イケてるオレそっくりな顔しちゃって!」

 男、海堂(かいどう)直也(なおや)が薫に文句を言ってから、十臓を指さす。

「世の中には顔がそっくりなヤツがいると聞いたことがあるが、ここで会うことになるとはな。」

 直也に言いかけると、十臓が怪人の姿に変わった。彼は携帯していた刀「裏正」を鞘から引き抜いた。

「十臓はそっちにいたか・・お前だけでも止めなくてはならないようだ・・!」

 薫が十臓に対して戦う意思を見せる。するとそこへ攻介が彼女と十臓の間に割って入ってきた。

「お前ら、要するに戦隊と怪人ってわけか?」

「お前たちからすればそうなるな。この際だから名乗っておこう・・」

 攻介の問いかけに答えて、薫がことはと頷き合ってから、携帯電話「ショドウフォン」を手にする。

「一筆奏上!」

 2人が筆モードにしたショドウフォンでそれぞれ「火」、「土」を書く。彼女たちが書き記した「モヂカラ」を受けて変身を果たす。

「シンケンレッド、志葉薫。」

「同じくイエロー、花織ことは。」

 薫とことはが刀「シンケンマル」を抜いて名乗りを上げる。

「現れたか、シンケンジャー。もう1度お前たちとの勝負、楽しませてもらうぞ・・」

 十臓が目つきを鋭くして、薫に飛びかかって裏正を振りかざす。薫がシンケンマルを構えて裏正を受け止める。

「この世に戻ってきた悪しき存在は、私たちもこの刀で倒す!」

「お前に私を斬れるか?それに今のオレは、お前らの知っている私ではない。」

 薫に言い返して、十臓が裏正を振りかざしてシンケンマルを引き離す。ことはも加勢してシンケンマルを振り下ろすが、十臓の裏正にはじき返される。

「疑いは晴れたみたいだけど、オレのそっくりさんがかっこつけてるのはよくねぇな・・」

 そこへ直也がやってきて、十臓に勝気な態度を見せる。そして直也がかっこつけて仮面ライダーのポーズを取ってみせた。

「いけてるのは、オレのほうだ・・」

「お前もオレの相手をするのか?命がいらぬのならかかってこい・・」

 直也に向けて十臓が裏正の切っ先を向ける、ゆっくりと迫る。

「変身!」

 十臓に向かって飛び出す直也が変化を遂げる。その姿はヘビの怪人、スネークオルフェノクだった。

 直也も剣を手にして十臓に攻撃を仕掛ける。しかし剣の腕の立つ十臓には、直也も太刀打ちできない。

「ただの人間ではないようだが、この程度で勝負を挑むとは、オレも見くびられたものだな・・」

 しりもちをついている直也の鼻先に、十臓が裏正の切っ先を向ける。

「戦いをけがすなら許さんぞ・・すぐに切り捨てる・・!」

「相変わらず貴様は堅物なのであーる。」

 そこへ声がかかって、十臓が視線を移す。彼の後ろには歯車のような頭とドライバーの形の右手、スパナの形の左手をした男が立っていた。

「お、お前は!?・・お前も復活してたのか!?

 ゴーオンレッドが男に対して緊張を見せる。すると男が攻介に目を向けた。

「初めてお目にかかる者もいるので、名乗っておくのであーる。予はガイアーク害統領、バッチードであーる。」

 男、バッチードが攻介に名乗りを上げる。

「な、何!?ばっちぃ!?・・確かに錆びついてて見た目ばっちぃよな・・」

「バッチードであーる!」

 攻介が口にした言葉に腹を立てて、バッチードが地団太を踏む。踏みつけた衝撃で、一瞬この場が大きく揺れた。

「分かった!分かったからみなまで言うなって!」

 攻介が慌ただしくバッチードをなだめる。

「バッチード、何度現れてもお前の勝手にはさせないぞ!」

 ゴーオンレッドがバッチードを指さして言い放つ。しかしバッチードは笑みを消さない。

「ゴーオンジャー、これまでの予と同じと思わぬことであーる。それに貴様らの相手は他にもおるのであーる。」

 バッチードが言いかけると、彼らのいる場所に向かって空から火の玉が飛んできた。火の玉は攻介たちの前に飛び込んで爆発を引き起こすと、怪人の姿へと変わった。

「何者だ!?お前もガイアークか!?

「オレはクライシス帝国の使者、グランザイラス。お前たちから始末してくれる。」

 ゴーオンブラックが声をかけると、最強怪人、グランザイラスが言い放つ。

「みんな、行くぞ!」

 ゴーオンレッドが呼びかけて、ロードサーベルを手にして立ち向かう。グランザイラスが右手から炎を放ち、巻き上がる爆発でゴーオンジャーをさえぎる。

 薫とことはもグランザイラスに立ち向かい、シンケンマルを突き出す。しかしグランザイラスにシンケンマルの刀身を受け止められる。

「シンケンジャー、そしてゴーオンジャー、貴様たちの力であろうと、オレには通用せんぞ!」

 グランザイラスが全身からエネルギーを放出して、薫とことはを吹き飛ばす。

「何て力を持っとるんですの・・!」

「一瞬の油断も命取りになる・・・!」

 ことはも薫もグランザイラスのすさまじいパワーを痛感していた。

「ったく、オレもやるしかないてことか!」

 攻介が乗り出してグランザイラスを見据える。

「へんーしん!」

“セット!オープン!LION、ライオン!

 彼はビーストドライバーを起動させて、ビーストに変身する。

「貴様は仮面ライダーか。貴様も他のヤツら共々、地獄の炎で灰になれ!」

 グランザイラスが右手から炎を放つ。炎による爆発を、攻介は横に横転して回避する。

「お前らじゃ食えても腹を壊しそうだ・・さっさとスクラップにしてやるぜ!」

 攻介がダイスサーベルを手にして、グランザイラスに立ち向かう。しかしグランザイラスのパワーに攻撃をはじき返される。

「コイツ、ホントに強いぞ・・!」

「貴様の相手はこやつだけではないのであーる。」

 声を上げる攻介にバッチードが声をかけてきた。

「貴様は予自ら処罰するのであーる。ありがたく思うのであーる。」

「ふざけんな。お前なんぞにオレの生き方決めさせるか!」

 笑みをこぼすバッチードに攻介が言い返す。

「受けよ、バッチードスパイラル!」

 バッチードが歯車の形のエネルギーを放つ。歯車をぶつけられて、攻介、薫、ことは、直也が突き飛ばされる。

「みんな!」

 ゴーオンレッドが声を上げると、グランザイラスが火の玉になって突っ込んできた。ゴーオンジャーが火の玉の突撃と熱でダメージを負う。

「これでは手ごたえ、いや、歯ごたえがないのであーる。」

 倒れた攻介たちをバッチードが高笑いを見せる。

「では改めて処罰を下すのであーる。最初の処罰の相手は、ゴーオンレッド!」

 バッチードが右手のドライバーの先をゴーオンレッドに向ける。

「貴様らから受けた雪辱、今ここで晴らすのであーる!」

「ちょーっと待ったー!」

 そこへ声が飛び込んできて、バッチードたちが振り返った。その先には新しく仮面ライダーが現れた。

「オレ、参上!」

 仮面ライダー電王。イマジンの1人、モモタロスが憑依している野上(のがみ)良太郎(りょうたろう)が高らかにポーズを決める。

「また仮面ライダーが現れたのであーる。しかし何人集まろうとムダなのであーる。」

「言ってくれるじゃねぇか。言っとくがオレは最初から最後までクライマックスなんだよ!」

 バッチードが言い放つと、良太郎も言い返して専用武器「デンガッシャー」を「ソードモード」にして構える。

「いくぜ、いくぜ、いくぜ!」

 良太郎が飛びかかって、バッチードにデンガッシャーを振りかざす。しかしバッチードの両手に次々に防がれていく。

「大きな口を叩くわりに戦闘力は小さいのであーる。」

「コイツ、調子に乗りやがってー!」

 笑みをこぼすバッチードに腹を立てて、良太郎がデンガッシャーを振り下ろす。しかしバッチードの左手のスパナにデンガッシャーがつかまれてしまう。

「あ、あれ!?は、挟まった!?おお、おい、放せ!放せってんだよ!」

「望みどおり放してやるのであーる。」

 わめく良太郎に笑い声を投げかけると、バッチードは彼を上空に投げ飛ばした。落下してきたところを狙って、バッチードがビームを放つ。

「ぐあっ!」

 ビームの直撃を受けて、良太郎が地上に落とされる。悲鳴を上げながら立ち上がった彼に、攻介が駆け寄ってきた。

「いきなり出てきて簡単にやられすぎだっての!」

「うっせぇな!言ったはずだ!オレは最初からクライマッ・・!」

「あぁ、みなまで言うな。アンタも仮面ライダーなんだろ。」

「だーかーらー!オレは最初からクラ・・!」

「分かった!分かったからお前もみなまで言うなって!」

「無視かよ・・・!」

 攻介に勝手に抗議を打ち切られて、良太郎が肩を落とす。その2人の前にバッチードが立ちはだかる。

「貴様らの茶番に付き合うつもりは毛頭ないのであーる。そこの貴様も予が処罰を下すのであーる。」

「おもしれぇ・・やれるもんならやってみやがれ!」

 とどめを刺そうとするバッチードに、良太郎が立ち向かおうとした。

 そのとき、攻介たちのいる場所の上空で雷鳴が轟いた。突然のことに攻介たちが辺りを見回す。

「とうとうこのときを迎えたか・・」

 十臓が呟いて振り返る。その先にある、魔空空間に通じているトンネルが広がりを見せていた。

「まさか、晴人たち、やられちまったのか・・!?

 攻介が思わず晴人たちのことを気にする。

「どうやら貴様らの相手をしている場合ではなくなったのであーる。ヒューマンワールド支配に向けて、本格的に動き出すのであーる。」

「お前たちがでしゃばってきても止めることはできない。アイツもオレたちも・・」

 バッチードと十臓が言いかけて、攻介たちの前から姿を消した。

「逃げられた・・けどバッチードやガイアークばかりに気を取られてる場合じゃない・・!」

 ゴーオンレッドが魔空空間とのトンネルを見て、緊張感を膨らませていく。

「晴人たちがやられちまうわけがねぇ!アイツはオレのライバルだ!簡単にやられたなんて言わせるか!」

「同じ仮面ライダー、スーパー戦隊ならば簡単にやられるはずがない。そう信じるのは当然のことだ。」

 不満をあらわにする攻介にゴーオンゴールドが言いかける。

「それに蒔人たちも魔空空間に言っている。なおさら簡単にはやられないわよ。」

「そうか・・それならいいが・・」

 ゴーオンシルバーにも言われて、攻介は思いとどまった。彼らが話をしている間にも、トンネルは広がって、魔空空間が外の世界を侵食し始めていた。

 

 

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