ギャバン×ウィザード×キョウリュウジャー
スーパーヒーロー英雄列伝
第4章
ネクロマンサーガルヴォルスたちの攻撃から、辛くも脱した晴人たち。変身を解いた彼らは、ネクロマンサーガルヴォルスたちへの警戒を抱えていた。
「あのガルヴォルスがまさか生きていたなんて・・・!」
「しかも魔空空間の影響で、パワーをさらに上げている・・このままでは、オレたちが倒してきた怪人たちが次々とよみがえってしまう・・・!」
光輝と光太郎がネクロマンサーガルヴォルスに対して危機感を膨らませていく。
「何とかしてアイツをこの空間から引きずり出さないと・・」
「この空間から出して、パワーを弱めようってことだな。」
晴人が声をかけると、ダイゴが笑みを見せて頷く。
「君たち全員、自分とお気楽だね・・そんなことをしなくても、オレが全て終わらせてやる。」
すると雅人が晴人たちをあざ笑ってきた。
「おいおい、ずいぶんと自信たっぷりなことを言うじゃない。」
「しかし1人で何とかできるほど、今回の戦いは甘くないことは、今の怪人たちとの戦いで分かっているはずだ。」
イアンとソウジが雅人に言葉を返す。しかし雅人は不敵な笑みを消さない。
「分かっていないのは君たちのほうだ。そいつ、乾巧はオルフェノク。たとえファイズとして戦っていようと、その事実は変わらない。」
雅人の口にした言葉を聞いて、晴人たちが巧に目を向ける。巧はオルフェノクから人の姿に戻り、何とかオルフェノクの力の暴走を抑えていた。
「現に自分の力を抑えられずに暴走した。それが心まで腐ったオルフェノクであることの証拠。」
「そいつは違うぜ。」
雅人に言い返してきたのはダイゴだった。
「アイツは必死に自分と戦ってるんだ。悪い心に支配された自分と。悪い心に負けたりしないって、オレは信じているぜ。」
「どこまでもおめでたいヤツだな。」
巧を信じて笑みを見せるダイゴに、雅人が不満を込めて言い返す。
「その言葉には同意するよ。」
「キング、いつも明るくて能天気で前向きだもんね。」
イアンとアミィがダイゴについて口にする。このやり取りに晴人と撃が苦笑をこぼしていた。
「こういうときでも明るいヤツだ・・」
「けどそのおかげで、この絶望的な状況でもより希望を感じることができる・・そんな気になってくる・・」
ダイゴの前向きな性格に、撃も晴人も冷静さを取り戻していた。苦悩を深めて落ち着きを取り戻せずにいる巧に、ダイゴが駆け寄って声をかけてきた。
「お前が怪物になった瞬間にはビックリさせられたが、そのぐらいのことだ。お前が仮面ライダーだってことは同じだろ?」
「オレが仮面ライダー・・オレがファイズだってこと・・・」
ダイゴの励ましの言葉をかけられて、巧が戸惑いを覚える。
「たとえ人間じゃなくてもバケモンになっちまっても、お前はお前のままならそれでいいじゃないか。」
「オレはオレのまま・・言ってくれるな・・・」
巧がダイゴに向けて笑みを見せてきた。
「オレは決めたんだ・・人間を守るために戦うって・・人間として、ファイズとして・・」
迷いを振り切り、巧がファイズフォンを手にして見つめる。
「そしてオレの夢は、みんなが幸せになってほしいこと・・・」
「幸せか。お前もすっげーブレイブだな!」
巧の決意を聞いて、ダイゴが興奮を見せてきた。陽気に振る舞ってくるダイゴに、巧が肩を落としてきた。
「お前のようなヤツと一緒にいると、こっちの調子が狂う・・あんまり近寄ってくるな・・」
「ヘッ!お前らしさが戻ってきたみたいだな!」
わざと不満を口にする巧に気さくさを見せてから、ダイゴは彼から離れた。
「さて、気を取り直して、アイツをどうするか、作戦を練るとするか・・」
「アイツのパワーは一気に膨らんでいる。無理やり魔空空間から追い出すとしても至難の業だ・・」
晴人と撃がネクロマンサーガルヴォルスへの対処を考えていく。
「それに・・」
「それに?」
「ヤツがよみがえらせた怪人が、外で何かしているかもしれない・・」
「仁藤が残っているけど、1人で大丈夫かって不安を感じてないわけじゃない・・」
言葉を交わす撃と晴人。彼らはネクロマンサーガルヴォルスの対処だけでなく、外の世界のことも気にしていた。
1人地球の守りを任されることになった攻介。彼は時間を持て余して、食事をとっていた。
「留守番はいいし、余計に魔力を消費しなくて済むけど、こうも暇だと腹ごしらえしかすることねぇなぁ・・」
パンにマヨネーズをかけて口に入れる攻介。彼は無類のマヨネーズ好きでもある。
「もしかして、オレの強さに恐れをなして出てこなくなった・・んなこたぁねぇよな・・」
能天気に独り言を口にしながら、食事をしていった攻介。
「1人でのん気に食事とは、余裕じゃないか。」
そこで声をかけられて、攻介が立ち上がる。彼の前に金色の体をしたアブラムシに似た姿の怪人、フィロキセラワームが現れた。
「おめぇ、ファントムじゃねぇじゃんか!おめぇなんか食っても腹壊すだけだ!帰れ、帰れ!」
攻介が不満を見せて追い払おうとする。が、フィロキセラワームにあざ笑われる。
「威勢のいいヤツだ。オレが厄介払いされるのではない。お前があの世に行くのだ。」
「あ〜、みなまで言うな。そういう悪モンの決まり文句は聞き飽きてるんだよ・・!」
フィロキセラワームにため息をつく攻介。
「ったく、しょうがねぇなぁ・・・へんーしん!」
“セット!オープン!L・I・O・N、ライオン!”
攻介はビーストドライバーを起動させて、ビーストに変身する。
「さぁ、害虫駆除だ!」
攻介がフィロキセラワームに向かっていって、パンチを繰り出していく。彼の攻撃を体に受けて、フィロキセラワームが押されていく。
「さすがはビースト。野獣のようにパワーがあるな。だがワームの力をお前は知らないはずだ。」
追い込まれた様子を見せずに笑みをこぼすフィロキセラワーム。
「そんなの関係ねぇ!このままぶっ倒してやるぜ!」
攻介がフィロキセラワームに向けて追撃を仕掛けた。次の瞬間、フィロキセラワームの姿が攻介の前から突然消えた。
「おっ!」
勢いをつけての攻撃が外れて、攻介が危うく転びそうになる。踏みとどまった彼が周りを見回すが、フィロキセラワームの姿は見られない。
「おい、どこに行ったんだよ!?隠れてないで出てこい!」
「隠れてなどいない。お前が私のスピードについてこれていないだけだ。」
怒鳴る攻介にフィロキセラワームが言葉を返す。次の瞬間、攻介が突然強い衝撃に襲われて突き飛ばされる。
「おわっ!どっから攻撃してきたんだ!?」
攻介が声を上げると、フィロキセラワームが彼の前に姿を見せた。
「どこから?オレは今、真正面から攻撃してきたぞ。ただこのスピードにお前がついてこれていないだけだがな。」
「オレがついてこれねぇだと!?オレがお前なんぞに!」
あざ笑ってくるフィロキセラワームに、攻介が再び飛びかかる。するとフィロキセラワームが超スピードで動いて、攻介の突撃をかわす。
ワームの共通の能力は、目にも留まらぬ超高速である。そのスピードに対応するには、それ以上のスピードを発揮しなければならない。
しかし攻介にはワームに対応するだけのスピードを備えていない。
フィロキセラワームの超高速による攻撃に、攻介は直撃されるばかりだった。
「くっ!このままじゃやられちまう・・こうなったら!」
“カメレオー!ゴー!カカ・カッカカ・カメレオー!”
攻介がとっさにカメレオマントを身に着けて、姿を消した。これでフィロキセラワームが足を止めた隙を狙おうとした。
しかしいつまで待ってもフィロキセラワームは動きを止めない。
(どこに行っちまったんだ?・・まさか、逃げたんじゃ・・!?)
攻介が気が滅入りそうになったときだった。上からビームが飛び込んできて、彼が爆発に巻き込まれて吹き飛ばされる。
「うあっ!こんなのアリかよ・・!」
カメレオマントの効力が消えて姿を現す攻介。直後に彼のビーストへの変身も解ける。
「姿を消してくるとはな。だがオレの前では小細工でしかなかったな。」
「やべぇ・・マジで大ピンチだ・・!」
迫り来るフィロキセラワームに攻介が追い込まれる。
「そろそろとどめを刺させてもらうぞ。」
「そうはさせないぜ!」
そこへ声が飛び込んできて、フィロキセラワームが手を止めた。彼と攻介が振り向いた先には7人の戦士たちがいた。
「お前たち・・スーパー戦隊か。」
「正義のロードを突き進む!炎神戦隊、ゴー!オンジャー!」
「テイクオフ!ゴーオンウィングス!」
フィロキセラワームが声をかけると、戦士たちが名乗りを上げる。
「炎神戦隊ゴーオンジャー」。「マシンワールド」と呼ばれる世界の生命体「炎神」のドライバーとして悪に立ち向かう5人の戦士たち。彼らよりも先に炎神のドライバーとなった兄妹の戦士「ゴーオンウィングス」が、のちにゴーオンジャーと合流した。
「スピード勝負なら、オレたちは負けねぇぜ!」
「ほう?ならオレを捕まえてみるんだな。ついてこれるなら!」
ゴーオンレッドが強気に言い放つと、フィロキセラワームが素早く動き出す。彼がゴーオンジャーに向かって攻撃を仕掛けた。
するとゴーオンジャーも一気にスピードを上げた。その動きはフィロキセラワームに迫る勢いだった。
スピードはまだフィロキセラワームのほうが上回っていた。しかしゴーオンジャーの連携は、スピードの遅れをカバーしていた。
「ロードサーベル!」
ゴーオンレッドが剣「ロードサーベル」を手にして、フィロキセラワームに向かって振りかざす。フィロキセラワームが爪で応戦するが、ロードサーベルに体を切りつけられる。
「ここはオレたちに任せてもらうよ。」
ゴーオンゴールドがゴーオンレッドに声をかける。ゴーオンゴールドとゴーオンシルバーが並び立ち、フィロキセラワームを見据える。
「ロケットダガー!」
2人が短剣「ロケットダガー」を手にして、ゴーオンゴールドが2と3のスイッチを、ゴーオンシルバーが3つ全てのスイッチを入れる。
「シューティングダガー!」
ゴーオンゴールドがロケットダガーを振りかざして、真空の刃を放つ。刃はフィロキセラワームの素早い動きを捉えて命中した。
「ジェットダガー!」
ゴーオンシルバーがロケットダガーのグリップ部からのジェット噴射を利用して回転して、フィロキセラワームを切りつける。
「うおっ!」
突き飛ばされてうめくフィロキセラワーム。起き上がった彼の前にゴーオンジャーが再び並び立った。
「なかなかやるな・・だがもうすぐその優劣も逆転することになる!」
フィロキセラワームは言い放つと、超スピードでゴーオンジャーと攻介の前から姿を消した。
「逃げられたか。逃げ足も速いってことか。」
ゴーオンブルーが皮肉を口にする。彼らが攻介に振り返った。
「危ないところだったね。あたしたちは・・」
「あぁ、分かってる、みなまで言うな。おめぇらも戦隊だってんだろ?」
ゴーオンイエローが声をかけるが、攻介が言葉をさえぎって言い返す。
「そういうということは、他の戦隊とも会ったということだな。」
「ならみんなの居場所は、あの先・・」
ゴーオンゴールドとゴーオンシルバーが振り返る。その先の魔空空間へのトンネルは、晴人たちが入ったときよりも大きくなっていた。
ネクロマンサーガルヴォルスと復活した怪人たちに対して、晴人たちは打開の作戦を見つけようとしていた。
「まずはあのガルヴォルスを何とかするのが先決だ。アイツが怪人たちをよみがえらせている張本人だってことは確かなんだから・・」
光輝がネクロマンサーガルヴォルスの打倒を口にする。
「しかしヤツのところまでたどり着くには、メーズやブラジラたちと戦うことになる。いや、他にもよみがえったヤツが出てくるかもしれない・・」
「だったら1人ずつ全力で倒していけばいいさ!こっちだって人数もパワーもいつも以上なんだから!」
問題を口にする晴人と、意気込みを見せるダイゴ。
「それでも数も力も向こうが下とは言えないんだ。ガムシャラに飛び込んで勝てるって保障は・・」
修二が不安の言葉を口にする。
「だがそれ以外に、オレたちが行えるいい作戦はないだろう。無謀かもしれないが、やるしかない・・」
そんな彼に撃が言いかける。
「へっ!無謀もムチャもブレイブのうちだぜ。危なくなったらオレたちがサポートするから。」
「さすがキングどの!この修羅場でも物怖じせぬとは、まことに頼もしいでござる!」
「頼もしいというか、危なっかしいというか・・」
気さくに声をかけるダイゴに、空蝉丸が感動の声を上げて、イアンが呆れていた。
「ずいぶんと騒いでいるようだな、お前たち。」
そこへ声がかかって、晴人たちが振り返った。彼らの前に黒い鎧のような服と黒い仮面、黒ずくめの男が現れた。
「何者だ!?お前もこの空間でよみがえった戦士か!?」
「そういうことになるな。オレの名はブーバ。オレがあの世に行っている間に、チェンジマンとは違う戦隊、戦隊と違う戦士が出てきたようだな。」
光太郎が声をかけると男、ブーバが名乗って不敵な笑みを見せる。
「お前、戦隊って言ったな?戦隊と戦ったことがあるのか?」
「当然だ。チェンジマンはオレが幾度となく戦いを繰り広げてきた宿敵だ。オレの相手をするなら、甘い覚悟をしないことだな。」
問いかけるダイゴに忠告を送って、ブーバは剣「ブルバドス」を手にしてきた。
「そんな心配しなくていいぜ!オレたちのブレイブは甘くないからさ!」
ダイゴがブーバに言い放つと、イアンたちが彼に並び立つ。
「獣電戦隊の力、見せることにしましょうか!」
ノブハルが言い放ち、彼らが獣電池を手にする。
“ガブリンチョ!”
ガブリボルバーとガブリチェンジャーに獣電池をセットするダイゴたち。
「キョウリュウチェンジ!ファイヤー!」
彼らはサンバと歌舞伎の動きをして、ガブリボルバーとガブリチェンジャーからキョウリュウスピリットを放って身にまとう。
「それが今の戦隊の姿か。その力、試させてもらうぜ!」
「荒・れ・る・ぜ〜・・止めてみな!」
ブルバドスを構えるブーバに言い放つダイゴ。ダイゴたちがガブリボルバーとガブリカリバーを、空蝉丸がザンダーサンダーを手にして、ブーバに立ち向かう。
ダイゴと空蝉丸が振りかざすガブリカリバーとザンダーサンダーを、ブーバがブルバドスで受け止めていく。さらにイアンとアミィのガブリボルバーでの射撃を、ブーバはブルバドスを振りかざして弾く。
「すげぇ・・コイツ、マジで強い・・!」
「オレの弾丸を正確に弾き飛ばしている・・!」
ダイゴとイアンがブーバの力を痛感する。
「そんなものか?チェンジドラゴンのほうがまだ手ごたえがあったぞ。」
強気に言いかけるブーバが、ダイゴにブルバドスの切っ先を向ける。
「ダイゴくん!変身!」
光太郎がRXに変身して、ブーバに立ち向かう。RXはブルバドスをかわして、ブーバとの攻防を繰り広げる。
「お前は戦隊ではないが、腕は立つようだな。」
「人々の自由と平和のためにオレは戦う。できることなら、誇り高いお前とこのような形で戦いたくはなかった・・」
戦意を募らせながら言葉を交わすブーバとRX。
「だが地球を守るためなら、オレは戦いに迷ったりしない!リボルケイン!」
RXがベルト「サンライザー」から剣状の武器「リボルケイン」を引き抜いた。
「来い、ブーバ!」
「行くぞ、RX!」
RXとブーバが飛びかかり、リボルケインとブルバドスをぶつけ合っていく。2人は互角の勝負を繰り広げていく。
「RX・・オレも・・変身!」
“Complete.”
巧もファイズに変身して、ブーバに立ち向かう。巧がパンチを繰り出していって詰め寄り、ブーバに組み付いた。
「オレには分かっているぞ。お前、自分の力に翻弄されているな。」
「昔のオレならそうだった・・だが、オレはもう迷わない!」
ブーバが投げかけてきた言葉に言い返す巧。彼は右足を出してブーバを突き飛ばす。
「みんなはあの怪人のところへ行くんだ!ここはオレたちに任せてくれ!」
「RX!」
呼びかけるRXに光輝が声を上げる。
「行くぞ、三原!」
「草加!」
雅人の呼びかけに修二が答える。
「変身!」
“Standing by.”
“Complete.”
2人がカイザとデルタに変身して、ブーバに立ち向かう。4人の仮面ライダーに囲まれて、ブーバは追い込まれる。
「お前らは行け!お前らの相手は違うだろ!」
「巧さん・・分かりました!」
「こっちは任せてくれ!」
巧が呼びかけると、光輝と晴人が答える。2人と撃、ダイゴたち、ヒロムたちがネクロマンサーガルヴォルスを探しに走り出していった。
「お前にはここで消えてもらう。」
雅人がカイザブレイガンを手にして、ブーバに言いかける。
「消えるのは貴様たちのほうだ。」
そこへ声がかかって、RXたちとブーバが振り返った。彼らの前に現れたのは黒服と金の仮面とマスクを身に着けた男だった。
「お前はブライトン!コイツらの相手をしているのはオレだ!」
ブーバが男、ブライトンに言い放つ。しかしブライトンは引き下がらない。
「貴様たちは仮面ライダーか。あの宇宙刑事と会えなかったのは残念だが。」
ブライトンがRXたちを見て言いかける。
「私はマクーのブライトン。仮面ライダー、宇宙刑事の前に、貴様たちを始末してくれる!」
ブライトンは金の剣を構えて飛び込んでいた。雅人がカイザブレイガンから光の刃を出して、ブライトンを迎え撃つ。
「草加!」
修二が雅人に加勢しようとブライトンに向かっていく。しかしブライトンの振りかざす金の剣で、修二はデルタの装甲を切りつけられる。
「草加!三原!」
巧が声を上げるが、ブルバドスを構えるブーバに行く手をさえぎられる。
「こうなればお前たちだけでも相手になってもらうぞ。」
RX、巧と対峙してくるブーバ。
「だったらお前から倒して・・!」
巧が改めてブーバに立ち向かおうとしたときだった。
「うっ!」
再びオルフェノクの力の暴走に苦しむ巧。倒れた途端に彼はファイズの変身が解けてしまう。
「巧くん!・・まさか、また・・!」
巧の異変にRXが不安を感じる。巧の姿がウルフオルフェノクへと変わっていく。
「オレは・・オレは!」
巧がオルフェノクの本能に突き動かされるように、ブーバに飛びかかる。巧が繰り出す拳を、ブーバは素早くかわしていく。
「皮肉なことだな。これはオレとではなく、自分自身の戦いって感じだな。」
「オレ自身の戦い・・そうかもな・・・!」
ブーバに皮肉を言われて、巧が声を振り絞る。
一方、雅人も修二もブライトンの攻撃に防戦一方になっていた。
「その程度か?仮面ライダーも大したことがないということか。」
「ふざけるな!」
あざ笑ってくるブライトンに怒鳴って、雅人がカイザブレイガンで光の弾を放つ。
“Exceed charge.”
カイザブレイガンの光の刃にエネルギーが集まる。雅人がブライトンに向かって飛び込む。
しかしブライトンは金の光を打ち破って、金の剣を振りかざしてカイザブレイガンにぶつけ合う。その衝撃に押されて、雅人が岩場の壁に叩きつけられる。
「草加!・・チェック!」
“Exceed charge.”
修二がデルタフォンから青い光の弾丸を放ち、ブライトンを狙う。彼がジャンプしてルシファーズハンマーを繰り出すが、ブライトンが振りかざした剣にはじき飛ばされてしまう。
「貴様たちでは私に勝つことはできん。破滅の末路を辿るしかない。」
ブライトンが雅人に金の剣の切っ先を向けた。そこへ巧が飛び込んできて、金の剣の刀身を押さえてきた。
「貴様は違う最悪の末路を辿ることになりそうだ。」
ブライトンが巧を突き飛ばして、金の剣を振りかざす。その刃に巧が切りつけられていく。
ダメージを大きくしていく巧は、オルフェノクの力の暴走の挟み撃ちにあい、絶体絶命に追い込まれていた。
「このままじゃ・・オレは・・オレは・・・!」
「お前からとどめを刺してやる。命を落とすか、オルフェノクの力にのみ込まれるか・・」
ブライトンが金の剣を振り上げて、巧にとどめを刺そうとした。
そこへ白いガスが飛び込んできた。ガスを浴びることになったブライトンは、体に白い粘液が付着して身動きが取れなくなる。
「これは!?・・な、何者だ!?」
ブライトンが声を上げると、1人の怪人が姿を見せてきた。
「君は、クジラ怪人!」
RXがゴルゴムのクジラ怪人を見て声を上げる。
海と海の怪人を案じていたクジラ怪人は、暗黒結社「ゴルゴム」を裏切って、RXの前身である仮面ライダーBLACKに助けられることになった。1度は命を落としたBLACKに再生治療を施したクジラ怪人だったが、最終的に処刑されて命を落とすことになってしまった。
「ライダー・・ライダーも来てくれたのか・・・!」
「クジラ怪人・・お前もよみがえったのか・・・!」
再会を果たしたクジラ怪人とRXが駆け寄って握手を交わした。
「またオルフェノクと違う怪人か・・けど助かった・・・」
巧がクジラ怪人に声をかけると、人の姿に戻った。しかし彼はオルフェノクの力を抑えるのもままならなくなっていた。
「やはりもうダメだ、お前は・・このままオルフェノクの力に振り回されて、心までバケモノになる・・」
雅人が巧の前に来て言いかける。
「これまでファイズとして戦ってきたお前だ。せめてオレの手でその苦しみを終わらせてやる。」
「待て。ファイズはオレがやる。」
巧にとどめを刺そうとした雅人に、ブーバが声をかけてきた。彼は巧に向けてブルバドスを構えてきた。
「お前、何を・・!?」
「ブルバドス活人剣!」
修二が呼び止めるのも間に合わず、ブーバでブルバドスで切りつけてきた。
「乾!・・お前、乾を!」
修二が怒りを覚えて飛びかかるが、ブーバは飛び上がって岩場の上に移った。
「勝負は預けておくぞ、仮面ライダー!」
ブーバはRXたちに言い放ってからこの場を去った。
「ブーバ、出しゃばりおって・・今はこれで引き上げてやる!」
ブライトンもRXたちの前から姿を消した。修二がデルタへの変身を解いて、倒れた巧に駆け寄った。
「乾、しっかりしろ!乾!」
修二が呼びかけるが、巧は目を覚まさない。
「ブーバ・・巧くんを手にかけるとは・・・!」
RXへの変身を解いた光太郎も、ブーバへの怒りを感じていた。そのとき、クジラ怪人が巧に近寄って様子を見た。
「違う。これは仮死状態にある。ブーバは彼を殺したのではなく、助けたのだ・・」
「仮死状態・・もしや、これは・・!」
クジラ怪人の言葉を聞いて、光太郎は巧の状態を悟る。
巧がオルフェノクの力の暴走で人間の心を失事を危惧したブーバは、一時的に仮死状態にして復活させるブルバドス活人剣を浴びせた。これで巧がオルフェノクの力の暴走に振り回されることがないように。
「次に目が覚めたときにはきっと、彼は落ちつきを取り戻しているだろう・・」
「フン。だったらここで止めを刺してやるのも面白いな。」
クジラ怪人が説明すると、雅人があざ笑って巧に近づく。しかし修二と光太郎に止められる。
「どういうつもりだ・・・!?」
「そうやって自分の目的のために手段を選ばないのは、決して正義ではないぞ!」
「正義?くだらないな。オレはオレのために戦っている。そのために手段を選ぶ必要はない。」
「ならば自由と平和のため、オレは君と戦わなければならない・・・!」
あざ笑ってくる雅人に、光太郎は敵対することにも迷いを見せない。
「草加には悪いけど、オレも乾を死なせたくない・・おかしくなっている世界を元通りにするためには、乾の力も欠かせない・・」
修二も雅人に巧を守ろうとすることを告げる。2人に対立されていら立つも、雅人は巧から離れる。
「せいぜい後悔しないことだ・・オレの言う通りにしていればよかったと・・」
嘲笑してくる雅人を背に、光太郎と修二が眠り続けている巧に目を向ける。
「乾・・早く目を覚ましてくれ・・・」
修二が巧の復活を祈る。
「ところでクジラ怪人、この魔空空間で戦士たちをよみがえらせているあの怪人は何を企んでいるか、分かるか?」
光太郎がクジラ怪人にネクロマンサーガルヴォルスやよみがえった怪人たちについて訊ねる。
「詳しいことは分かっていない。あのガルヴォルスも魔空空間で高まっている自分の力に酔いしれているみたいで、アイツ自身力を暴走させている・・」
「力を暴走・・高まっている力をコントロールできていないということか・・」
「その結果、人間を守る側についたオレたちもよみがえることができたけど・・」
納得する光太郎に、クジラ怪人はさらに話を続ける。
「あのガルヴォルスの力の上昇はまだ続いている。このままだとこの魔空空間そのものにも影響が出てしまう・・・!」
「影響が出るって・・どんな・・・!?」
クジラ怪人が口にした言葉に、修二が不安を込めて聞き返す。
「まず地球が、魔空空間と同じ状態になってしまう・・・!」
クジラ怪人が口にしたこの言葉に、光太郎も修二も緊張を隠せなくなった。彼らが考えていた以上の最悪の事態が起こりつつあった。