ガルヴォルスZEROrevenge 第7話「非情の銃弾」

 

 

 警察からの狙撃を受けて、大きな負担を被ったアテナ。高い治癒力で傷は消えたが、体力の消耗は大きくなったままだった。

 歩くこともままならなくなり、やがてアテナは道の真ん中で倒れ込んでしまった。

「あれは・・アテナさん!」

 そこへ通りがかったのは、アテナを探しに飛び出していたマリとダイゴだった。

 

 アテナが変身しているサキュバスガルヴォルスを追うカンナたち。だがアテナを発見することはできなかった。

「申し訳ありません・・ガルヴォルス、未だ発見できません・・」

「そう・・もう人間の姿になって、人ごみに紛れているのかもしれない・・・」

 兵士からの報告を受けて、カンナが呟きかける。

「あなたたちは1度引き上げなさい。騒ぎにするわけにいかないので、ここからは刑事のみ捜索続行とする。」

 カンナが兵士たちに指示を送る。

「それからガルヴォルスに関する情報を洗いなおしなさい。あのガルヴォルスの情報を細大漏らさず収集、整理するのよ。」

「了解。」

 兵士たちがカンナの指示で引き上げ、ガルヴォルスの捜索は警察のみで続行されることとなった。

(ガルヴォルスは1匹たりとも生き延びさせはしない・・必ず根絶やしにしてやる・・・!)

 ガルヴォルスへの憎しみを募らせて、カンナも引き上げていった。

 

 意識を失っていたアテナが目を覚ましたのは、病室のベットの上だった。

「目が覚めたのですね・・よかった・・・」

「おめぇ、よく倒れるな・・・」

 マリとダイゴに声をかけられて、アテナが当惑を浮かべる。

「また倒れたのですよ。また私たちが立ち寄ったから・・・」

「そうだったんですか・・また、私は・・・」

 マリから事情を聞いて、アテナが戸惑いを浮かべる。彼女の脳裏に警察、兵士から襲撃されたときの記憶が蘇ってくる。

(私はガルヴォルスとして、攻撃をされたのね・・・)

 アテナはこのことをダイゴたちに打ち明けることができなかった。話せば自分がガルヴォルスであることを知られることになるからだった。

「あまりムリをしないほうがいいですよ・・また倒れたりしたら・・・」

「もう大丈夫です・・元気になりましたよ・・・」

 マリから心配されるも、アテナはベットから起き上がろうとする。

「もう少し休んでろって・・身が持たねぇぞ・・」

 ダイゴにも苦言を呈されて、アテナは渋々ベットに横たわった。

「オレたちは家に戻る。アテナ、おめぇはしっかりと体を休めとけよな・・」

「ダイゴに言われなくても、そうするしかないでしょう・・」

 呼びかけるダイゴに、アテナがふてくされた態度を見せた。彼女が眠ったのを確かめてから、ダイゴとマリは病室を後にした。

 

 暗闇に満ちた裏路地の小道。その行き止まりを、1人の女性が背にしていた。

 女性の眼前には異形の怪物がいた。怪物は恐怖する女性を見つめて、妖しい笑みを浮かべていた。

「フフフフ・・きれいな女・・体がきれいということは、味もおいしいのかしらね・・・」

 怪物は笑みをこぼすと、尻尾を振りかざしてきた。長く伸びた尻尾の先端が、女性の胸に突き刺さった。

「キャアッ!」

 刺されて悲鳴を上げる女性。彼女の体から怪物の尻尾を通じて吸い出されていく。

「おいしい・・その美しさは厚化粧のかりそめということではなかったわね・・・」

 怪物、ヒルガルヴォルスが感嘆の声を上げる。彼女が女性から吸い取っているのは血液。

 ヒルガルヴォルスは人間の血を吸い取って栄養としている。さらにきれいな人の血であればある程、自分の強さに加算させることもできるのである。

「助けて・・・たす・・け・・・て・・・」

 血を吸いとられていき、その場に倒れた女性が青ざめていく。生気をも失っていった彼女は、横たわったまま動かなくなった。

 女性から尻尾を引き抜き、血の味を確かめるヒルガルヴォルス。喜びを感じたまま、彼女は長い黒髪の女性へと戻った。

「この感じがたまらない・・私の強さをさらに引き出し、引き立ててくれる・・・」

 笑みをこぼしていく女性。だが彼女の顔からすぐに笑みが消えた。

「人間など私にとってはただの家畜にしかならない・・それ以外には全く価値がない・・ガルヴォルスよりも無能のくせに生物の王者を気取って・・・」

 人間への怒りを浮かべてくる女性。

「それに人間気取りのガルヴォルスも認めない・・ガルヴォルスという力を手に入れたのに、人間として生きようとするなんて、バカみたいなこと・・・」

 人間でいようとするガルヴォルスを嘲笑する女性。彼女は次の獲物を求めて、彼女はきびすを返して歩き出していった。

「私は強くなる・・誰も私の邪魔ができないほどに・・・!」

 

 ガルヴォルスに関する情報の収集と整理を行っていく兵士たち。その彼らの前にカンナがやってきた。

「ガルヴォルスの行方と動向はどうなっているの?」

「生存が確認されているガルヴォルスは12体。うち居場所が判明しているのは10体です。既に兵を向かわせ、処理に当たらせています。」

 カンナの問いかけに兵士の1人が答える。

「先ほど攻撃を行いましたガルヴォルスに関するデータはありませんでした。現在データを蓄積中。早期の現在位置の特定を進めております。」

「分かったわ。このまま捜索を続けなさい・・それともうひとつ。」

「はい・・」

「この近辺にもガルヴォルスが潜んでいる可能性が高い。警戒を強化するように。」

「了解。すぐにそのように伝達いたします。」

 カンナの指示を受けて、兵士たちが行動を拡大していく。

(街に隠れているガルヴォルスは大勢いる・・ここで一気にあぶり出してやる・・・!)

 ガルヴォルスの撲滅を企むカンナ。彼女もその目的のために行動を続けるのだった。

 

 警察がガルヴォルスへの攻撃を開始してから一夜が明けた。その日もダイゴたちはマーロンでの仕事をしていた。

 アテナは退院したものの、体調が万全でないため、家で休むこととなった。

(警察が本格的にガルヴォルスを取り締まろうとしてる・・けど、それがホントにみんなのためになるんだろうか・・・?)

 警察の動向にダイゴが懸念を抱く。

(単にバケモンだからってだけで根絶やしにする・・人間より人間らしいガルヴォルスも叩き潰そうとしてる・・もしもそうだったとしたら・・・)

「マリ、ミライ、ちょっといいか・・・?」

 仕事を中断して、ダイゴがマリとミライに声をかけた。裏口にてダイゴは話を切り出した。

「おめぇらはおっちゃんの言ってたことをどう思う?・・警察の連中がガルヴォルスを倒すことが、ホントにオレたちやみんなのためになってると思うか?

「うん・・普通に考えればみんなのためだって思う・・実際に悪いガルヴォルスがいて、そのガルヴォルスは何とかしないといけないんじゃないかって・・・」

 ダイゴの問いかけにミライが答える。

「でも中には心優しいガルヴォルスもいる・・警察がいいガルヴォルスと悪いガルヴォルスの区別をつけられる確証があるとは・・・」

 マリが深刻な面持ちで続けて答えていく。

「アテナさんはガルヴォルスを憎んでいる・・もしも今の警察から不審者と間違われたら・・・!」

「やべぇぞ・・すぐに家に戻らねぇと・・・!」

 マリが口にした言葉にダイゴが緊迫を覚える。

「私が行くよ・・ミソラさん、早退します!」

「えっ!?マリちゃん!?

 飛び出していくマリに、ミソラが驚きの声を上げる。

「あたしたちはここで、マリちゃんの連絡を待ってよう・・」

 ミライの言葉にダイゴが頷く。彼の心の中で、不安が膨らみ続けていた。

 

 家で休んでいたアテナだが、ガルヴォルスや警察の動きが気にかかり、外に出ていた。

(警察がガルヴォルスにどう立ち向かっていくのか・・この目で確かめておく必要がある・・・)

 ガルヴォルスを倒す上で、今の警察の動きが重要なカギとなる。そう考えたアテナは、警察にも注意を払っていた。

 警戒心を強めたまま、彼女は街に出ていた。

(昨日のガルヴォルス・・また街に出てくるかもしれない・・・)

 キャンドルガルヴォルスの出現で、状況が大きく変わる。アテナはそんな予感がしていた。

 

 その頃、マリはマーロンを飛び出していたダイゴと合流していた。家にアテナがいないことを知ったマリは、ダイゴと連絡を取って街に出てきていた。

「ったく、こんなときに勝手に飛び出しやがって・・・」

「ゴメン、ダイゴ・・やはり私がそばについていたら・・・」

 愚痴をこぼすダイゴに、マリが謝る。

「気にすんな・・それより今はアテナを探すことだ・・」

「家の近くにはいない・・もしかしたら、街に来ているのではないかな・・・?」

 言いかけるダイゴにマリが説明する。2人はアテナの行方を探ろうとした。

「キャアッ!」

 その街中で悲鳴が上がった。その瞬間、ダイゴとマリがさらなる緊迫を覚える。

「もしかして、ガルヴォルスが・・・!?

 声を上げるマリと、すぐに悲鳴のしたほうに飛び出すダイゴ。彼は人目のつかない裏路地に差し掛かったところで、デーモンガルヴォルスに変身する。

 街中では再びキャンドルガルヴォルスが蝋をばらまいていた。

「ったく、いつもいつもこんなマネを!」

 苛立ちを浮かべるダイゴが、キャンドルガルヴォルスに突っ込む。突然横から突き飛ばされ、キャンドルガルヴォルスが横転する。

「また別のガルヴォルスが邪魔をするのか・・今度は確実に蝋人形にしてやる・・・!」

 立ち上がったキャンドルガルヴォルスが、ダイゴに向けて蝋を吹き付ける。ダイゴは背中から翼を広げて飛び上がり、蝋を回避する。

「ちょこまかと逃げ回って!」

 不満を口にしながらさらに蝋を放つキャンドルガルヴォルス。ダイゴが具現化した剣を手にして、キャンドルガルヴォルスに向かって突っ込む。

「同じ手を食うと思うか!」

 キャンドルガルヴォルスが後ろに下がって、ダイゴが突き出した剣をかわす。すかさず蝋を放つが、ダイゴに再びかわされる。

 だがダイゴが体勢を整えて着地したときだった。

 突然両足が地面から離れなくなり、ダイゴが違和感を覚える。

「何だ!?足が動かねぇ!?

「かかったな!お前は地面にかけた蝋に足を取られたんだよ!」

 声を荒げるダイゴに、キャンドルガルヴォルスが哄笑を上げる。

「オレが出した蝋は、オレの思い通りに固まるタイミングを変えられる!お前が着地したのを見計らって、地面にかかっていた蝋を固めたのだ!」

「くそっ!こんなことで・・・!」

「ムダだ!固まったオレの蝋はダイヤモンドよりも硬くできる!そう簡単に抜け出せるものか!」

 必死に抜け出そうとするダイゴを、キャンドルガルヴォルスがあざ笑う。

「ダイゴ!」

 そこへエンジェルガルヴォルスに変身したマリが飛び込んできた。マリはガルヴォルスの力を光に変えて、ダイゴたちを中心に照らされた。

 光を浴びた蝋が蒸発するように霧散していった。

「バカな!?オレの蝋をかき消した!?

「すまねぇ、マリ・・助かったぜ・・・」

 驚愕するキャンドルガルヴォルス。マリに微笑みかけるダイゴ。

「同じ手は食わねぇ・・着地せずにおめぇをブッ倒す!」

 言い放つダイゴがさらにキャンドルガルヴォルスに飛びかかる。キャンドルガルヴォルスが蝋を使って、巨大な針を作り出す。

「こうなったら、これで串刺しにして・・!」

 向かってくるダイゴを、キャンドルガルヴォルスが迎え撃とうとした。

 そのとき、突如キャンドルガルヴォルスが衝撃に襲われた。彼は背中から銃撃された。

「何っ!?

 ダイゴもとっさに飛翔して警戒する。彼らの前に銃を構えた兵士たちが現れた。

(まさか、これがおっちゃんの言ってた、ガルヴォルスを倒そうとしている・・・!)

 記憶を巡らせるダイゴが、緊迫を一気に膨らませる。

「ガルヴォルス発見!攻撃開始!」

「やべぇ・・逃げろ、マリ!」

 兵士たちが発砲し、ダイゴとマリがとっさに駆けだしていった。

 

 ダイゴとマリの発見の知らせは、カンナの耳にも入ってきた。

「そう・・また新しいガルヴォルスが・・・」

 報告を聞いてカンナが答える。

「本性を現す前に、速やかに処分すること・・・ガルヴォルスに変身しても、まだ力を隠している可能性は否定できない・・」

 現場の兵士たちに指示を送るカンナ。そこで彼女に1人の兵士が駆け付けてきた。

「重要人物を1人特定しました。」

 カンナに敬礼を送ってから、兵士が情報の報告をする。

「両親をガルヴォルスに殺され、その後消息不明となっていました・・」

「それで、その人物の名前は・・?」

 カンナに問われて、兵士が写真を手渡した。

「森アテナです・・・」

 その写真に写されている人物、アテナを見つめる。

「すぐに彼女を拘束しなさい。もしかしたらガルヴォルスに転化している可能性があるわ・・」

「はい!直ちに!」

 カンナの指示を受けて、兵士が出動していった。

(ガルヴォルスを滅ぼすには、彼女の掌握がカギになる・・何としてでも・・・!)

 ガルヴォルスへの憎悪を抱えたまま、カンナもアテナとの接触に向かうのだった。

 

 銃撃してくる兵士たちから逃げ出していくダイゴとマリ。だが兵士たちは執拗に2人を狙い続けてきていた。

「くそっ!しつけぇヤローどもだ!」

「それにあの銃・・何かイヤな予感がするよ・・・」

 毒づくダイゴと、不安を口にするマリ。公園に差し掛かったところで、2人は他の兵士たちの待ち伏せを受けた。

「ここにもいやがるのかよ!」

 声を上げるダイゴに向けて、兵士たちが発砲する。

「マリ!ぐっ!」

 ダイゴがマリを庇い、左腕を狙撃される。撃たれた痛みにさいなまれて、ダイゴが顔を歪めてその場に膝をつく。

「ダイゴ・・私を庇って・・・!」

「くっ・・普通の弾じゃねぇ・・銃で撃たれても平気なはずなのに・・・!」

 困惑するマリと、激痛に必死に耐えようとするダイゴ。2人を兵士たちが取り囲み、銃を構えてきた。

 窮地に追いやられ、ダイゴとマリは焦りを募らせていた。

 

 ガルヴォルスによる騒動を聞きつけて、アテナも街に出てきていた。だがそこにはダイゴたちも兵士たちもいなかった。

「遅かったっていうの!?・・・でも近くにいないはずはない・・・!」

 周囲を見回してガルヴォルスの行方を追うアテナ。だが周りは野次馬を含めた通行人であふれ返っていた。

「1度離れたほうがいいかも・・それでダメなら、1度警察に行くことに・・・」

 アテナが気持ちを落ち着けて、ガルヴォルスの追跡に出ようとする。彼女は人ごみを抜けて曲がり角に入る。

 そのとき、アテナは視線の先にいる1体のガルヴォルスに緊迫を覚える。

(あの、ガルヴォルス・・・)

 そのガルヴォルスに、アテナはかつてない怒りを感じていく。

「間違いない・・・父さんと母さんを殺した・・・!」

 激怒に駆り立てられてサキュバスガルヴォルスに変身したアテナが、そのガルヴォルス、ヒルガルヴォルスに飛びかかっていった。

 

 

次回

第8話「血塗られた牙」

 

「あなただけは、絶対に許さない!」

「アイツら・・問答無用でガルヴォルスを撃ってきやがる・・・」

「是非とも力を貸してほしい・・・」

「ガルヴォルスが、みんなの心をも傷つけていく・・・」

「ガルヴォルスを倒すためなら、私は手段を選ばない・・・!」

 

 

作品集

 

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