ガルヴォルスX 第24話「無限の感情」

 

 

 石化から抜け出し、シュウの前に現れた健太。彼の出現にシュウは驚きを隠せなくなっていた。

 健太がシュウに向かって突っ込む。彼が繰り出す拳を、シュウは後ろに動いてかわす。

「オレに石化された者は、オレが死なない限りは元には戻れないはず!なぜ貴様がここにいる!?

「自力で元に戻って、ここまで来たからに決まってるだろうが!」

 問い詰めてくるシュウに、健太が強気に言い放つ。

「オレはひたすら念じて、力を込めた!石化から、おめぇの支配から抜け出すってな!」

「バカな!?そんなことでオレの力が破れるわけがない!オレが何かしなければ、貴様たちは元には戻れないのだぞ!」

「けどオレは戻ってここにいる!それは確かなことだ!」

 驚愕するシュウに、健太がさらに言い放つ。

「ありえない・何が確かなことだ!」

 シュウがいきり立ち、ダークガルヴォルスとなって影を伸ばす。健太は駆け回って影をかわす。

「全員こっから出ていけー!命がほしかったらなー!」

 健太が突然声を張り上げて、議事堂にいる全員に呼びかけた。彼の怒鳴り声に押されるように、彼とシュウ以外の人たちが外へと飛び出した。

「これでここにいるのはオレとおめぇだけだ・・・!」

「わざわざ他のヤツを追い払ったのか・・くだらないマネを・・・!」

 笑みを見せる健太に、シュウがいら立ちを募らせる。

「ならばもう1度、貴様たちを支配する!2度と逆らえないように、徹底的に屈服させてやる!」

「そんなことにはならねぇ!オレがおめぇを、今度こそブッ飛ばしてやるぜ!」

 いきり立ったシュウを健太が迎え撃つ。2人が拳を繰り出して、激しくぶつけ合った。

 

 健太に言われて、大学の寮に戻ってきたひとみとユキ。2人は健太の無事を祈って、帰りを待っていた。

「健太・・・」

 健太のことが気がかりで、ひとみが心配を膨らませていく。

「ひとみちゃん・・大丈夫だよ、健太なら。」

「ユキちゃん・・僕も、そうは思うけど・・・」

 ユキが声をかけるが、ひとみは不安を募らせていく。

「健太にできないことはない。特に今の健太には、ひとみちゃんが付いてるんだから・・」

「ユキちゃん・・そうだね・・健太はどんなこともやっちゃいそうだからね・・」

 ユキに励まされて、ひとみも笑みをこぼした。

(健太・・絶対に無事に戻ってきてよね・・・)

 健太への信頼を胸に秘めて、ひとみは寮で待っていることにした。

 

 周囲の人々を遠ざけた健太は、シュウとの激闘を繰り広げていた。全力を出した健太に、シュウは徐々に追い込まれていく。

「おのれ・・こんなことで・・こんなことでオレが・・・!」

「また卑怯なやり方をしてくるつもりか!?

 いら立ちを見せるシュウに、健太が挑発を投げかける。

「たまには真正面から堂々とかかってこいよ!ま、闇に隠れてコソコソ攻めてきても別にいいけどな!」

「貴様・・人質を取らせないように、他のヤツを逃がして・・・!」

 健太に卑怯な手口を見抜かれて、シュウがいら立ちを見せる。

「オレは全てを支配する・・オレの前に、貴様も屈服することになる!」

 シュウが足元の影を健太に向けて伸ばす。健太は素早く動いて、床から飛び出す影をかわしていく。

「足元から狙ってきても、おめぇのずる賢い感じがビンビン感じるんだよ!」

「おのれ・・!」

 言い放つ健太にシュウがさらにいら立つ。

「オレは支配者だ!オレの思い通りにならないものは何もないのだ!」

「へっ!清々しいぐらいに自惚れやがって!」

 怒号を放つシュウに、健太が強気に言い返す。

「おめぇのようなヤツには、何も思い通りにはできねぇ!」

 言い放つ健太の姿が刺々しいものへと変わった。彼はさらに勢いを付けて、シュウに飛びかかる。

「ぐおっ!」

 体に拳を叩き込まれ、シュウがうめく。激高した彼が健太に向けて影を一斉に伸ばす。

 健太が床に拳を叩きつけて、その衝撃で影を吹き飛ばした。

「何っ!?

 力を力で打ち破られたことに、シュウが驚愕をあらわにする。

「もうおめぇにオレをどうこうすることはできねぇ・・いや、誰もオレを止めることはできねぇぜ!」

 健太が両手を強く握りしめて、シュウに飛びかかる。シュウがとっさに影を伸ばして壁を作り、健太の拳を防ぐ。

「フフフフ!貴様のいいようにさせてたまるか!」

 シュウが健太に対して不敵な笑みを浮かべる。健太が連続で影の壁に拳を叩きつけていく。

「ムダムダ!闇を重ねて頑丈にしてある!貴様でも壊せはせんぞ!」

「それはどうかな!」

 あざ笑ってくるシュウに言い返す健太。彼が繰り出した拳が、影の壁を打ち破った。

「おめぇの姑息なやり方は、オレには通用・・!」

 健太が強気に言い放ち、シュウに飛びかかる。しかしその先にシュウがいない。

「ちっ!また闇の中に隠れやがったか・・!」

 健太が辺りを見回して、シュウを探す。彼は感覚を研ぎ澄ませて気配を探っていく。

(コソコソ隠れやがって・・とことん卑怯なヤツだ・・・!)

 シュウのやり口に不満を感じていく健太。周りを見回す彼を、シュウは影の中から狙っていた。

(オレは支配者だ・・貴様がオレに逆らうなどありえない・・・!)

 シュウが健太にいら立ちを感じながら、隙をうかがっていく。

(全てを支配したオレの思い通りにならないものなど、何もないのだ!)

 シュウは健太の影から飛び出して、背後から黒い球を放つ。だが健太は横に動いて、球をかわした。

「何っ!?

 奇襲をかわされたことに驚愕するシュウ。彼の体に健太が全力で拳を叩き込んだ。

「ぐほっ!」

 重みのある一撃を受けて、シュウが吐血する。

「おめぇの卑怯な気配は、イヤでも感じるんだよ!」

 健太がシュウに対して不敵な笑みを崩さない。シュウが突き飛ばされて、壁に叩きつけられる。

「ぐっ!・・オレは気配を殺していた・・誰だろうと探知できは・・・!」

「言っただろ!イヤでも感じるってな!」

 驚きを隠せないでいるシュウに、健太が言い放つ。

「こんなバカな・・バカなことがあってたまるか!」

 シュウが激高して健太を狙って飛びかかる。だが体に激痛が走り、彼はふらついて倒れかかる。

「くっ・・オレの体が・・言うことを聞かない・・・!?

 思うように動くことができず、シュウが愕然となる。

「なぜ・・なぜこれほどの力が・・強さが・・・!?

「オレにはかわい子ちゃんがついてる!かわい子ちゃんがいるなら、オレはどんなこともやってやる!」

 体を震わせるシュウに、健太が高らかに言い放つ。

「特に今はひとみがいる!ひとみがいる限り、オレは絶対無敵なんだよ!」

「そんなバカなことで、オレが支配できないことには!」

 健太の意思に激高するシュウだが、ついには立ち上がることもできなくなってしまった。

「おのれ・・オレが・・全てを支配したオレが、こんなことで・・・!」

 起き上がろうともがくシュウの前に、健太が立ちはだかる。

「ホントは戦えなくなったヤツにとどめを刺すなんてマネはしたくねぇとこだが、おめぇは別だ・・・!」

 健太がシュウに鋭い視線を向ける。

「ここでブッ倒しとかねぇと、何をしてくるか分かんねぇからな!」

「や、やめろ!オレは支配者だぞ!このオレにそんなマネをして、ただで済むと思ってるのか!?

 言い放つ健太にシュウが声を張り上げる。

「おめぇを野放しにする方が、ただじゃ済まねぇだろうが!」

「バカなことを言うな!オレに逆らうな!オレは全ての・・!」

 怒号を放つ健太が振り下ろした拳が、絶叫を上げるシュウの体に叩き込まれた。

「ぐはぁっ!」

 殴られて床にめり込まれたシュウが、体をバラバラにされた。粉々になった彼が霧のように消えていく。

「ハァ・・ハァ・・・や、やったぞ・・・!」

 呼吸を整えながら、健太がシュウを倒せたことに安堵を感じていく。

「さてと、ひとみとユキのとこへ帰るか・・・」

 健太は笑みをこぼすと、議事堂から外に出る。彼は外に避難していた人々の目を気にすることなく、寮に向かって駆けていった。

 

 健太の帰りを待っていたひとみとユキ。既に外は夜を迎えて暗くなっていた。

「この感じ・・健太・・・!」

「えっ・・・!?

 ユキが声を上げて、ひとみが辺りを見回す。2人の耳に、近づいてくる足音が入ってくる。

「こっちに来る・・・間違いない!この感じは健太!」

 ユキが声を上げると、健太が彼女とひとみの前に現れた。

「健太!」

「ひとみ、ユキ・・ちょっと遅くなっちまった・・ワリィ・・」

 駆け寄ってきたひとみに健太が気さくに言いかける。

「謝ることはないよ・・健太はこうして、無事に帰ってきたんだから・・」

「へへ・・ひとみ、サンキューな・・」

 励ましの言葉を送るひとみに、健太が感謝を言う。

「ひとみちゃん、健太、よかった・・よかったね・・・」

 ユキが2人を見て喜びの笑みを見せる。彼女を見て健太とひとみも頷いた。

 そのとき、健太の影からシュウが飛び出してきた。とどめを刺されて消滅したように見えた彼だが、健太の影の中に潜んでいた。

「必ず貴様たちに地獄を味わわせてやるぞ!」

 狂気に満ちた笑みを浮かべて、シュウが背後から健太を狙う。

「ホント、往生際が悪いんだよ、おめぇは・・・!」

 健太が鋭く言うと、振り向きざまにシュウに拳を繰り出した。

「ぐおっ!」

 健太の一撃を受けて、シュウが絶叫を上げる。シュウは健太たちの前でうつ伏せに倒れる。

「いい加減に消えろ・・おめぇには、何もできねぇよ・・・!」

「おのれ・・・金城健太・・・!」

 肩を落とす健太への憎悪を抱えたまま、シュウは今度こそ崩壊を引き起こした。

「ホントにしつこいね、アイツ・・もう2度と会いたくないと思ってたのに・・・!」

 シュウの末路を見て、ユキが不満を口にする。

「けど、今度こそおしまいだ・・アイツが死ねば、アイツに石にされた美女たちが元に戻る・・・」

 健太が夜空を見据えて言いかける。彼はシュウが完全に絶命したと確信していた。

 

 シュウによって石化されていた女性たち。彼の死によって、石像になっていた彼女たちが元に戻った。

「あっ・・・」

「私、さらわれて、石にされて・・・」

「元に、戻った・・・!」

 元に戻った女性たちが、自分たちの身に起きたことに困惑を感じていく。

「助かったってこと・・・!?

「は、早く外に連絡を・・助けを呼ばないと・・!」

 女性たちは助けてもらおうと、外への連絡を試みた。しばらくして警察が駆けつけ、彼女たちは保護されることになった。

 

 寮の自分の部屋に戻ってきた健太が、ベッドで大の字になった。部屋にはひとみも入ってきていた。

「ふぅ・・久しぶりに戻ってこれた・・・」

 健太が天井を見つめてひと息をつく。

「健太・・無事に戻ってきてくれて、ホントによかった・・・」

 ひとみが安心を感じて、健太に近づいていく。

「ワリィな、遅くなっちまって・・けど、オレは必ず帰るって言ったじゃんか。」

「そうだね・・そうだった。」

 気さくに言いかける健太に、ひとみが答えて飛びついた。2人は抱擁してから、互いの顔を見つめ合う。

「もう、逃がさない・・放さないから・・・」

「へへ・・捕まっちまったな・・・」

 微笑みかけてくるひとみに、健太が気さくな笑みをこぼす。2人はそのまま顔を近づけて、口付けを交わした。

「ひとみ・・やっぱ、おめぇじゃねぇと気分がよくならねぇな・・」

「思い切り刺激を与えてやるからね、健太・・・」

 唇を離した健太とひとみがまた笑みをこぼす。2人は抱擁を続けて、互いのぬくもりを感じ合っていく。

「石になってない・・誰かのいいようにもなってない・・」

「僕たちは僕たちの意思で、僕たちの自由で、こうして一緒にいる・・・」

 誰の支配も受けていない。自分たちの意思で抱きしめている。健太とひとみは互いのぬくもりとともに、そのことを実感していた。

「オレはオレ・・ひとみはひとみだ・・・」

「僕たちがエッチをするのも、僕たちがそうしたいと思ったから・・・」

「オレたちにとって、気持ちがいいと思うから・・・」

「このほうが安心できるから・・・」

 服を脱いで、さらなる抱擁を堪能していく健太とひとみ。2人は込み上げてくる恍惚を感じ合い、心地よさに体も心も委ねていった。

 

 シュウの死によって、彼の支配下に置かれた国や世界は安泰に向けて調整を行っていた。しかしガルヴォルスの存在が公になり、人々の不安が和らぐのは難しいことだった。

 これに乗じてガルヴォルスの暗躍は過激化に向かうかと思われた。

 威風堂々と人々に襲撃を仕掛ける複数のガルヴォルスたち。その前に立ちはだかったのは、シャドーガルヴォルスとなった健太だった。

「好き勝手できると思ったんだろうが、そうはいかねぇよ・・!」

「お、お前はあの・・!?

 不敵な笑みを見せる健太に、ガルヴォルスたちが緊迫を見せる。

「オレの目の届くうちは、おめぇらみてぇなのにかわい子ちゃんは手出しさせねぇよ!」

 健太が真正面からガルヴォルスたちに飛びかかる。反撃に転ずるガルヴォルスたちに、健太は拳を叩き込んでいく。

「な・・なんて強さだよ・・!」

「オレの力が、全然通じねぇ・・・!」

 ガルヴォルスたちが健太の強さに怯える。

「さっさと尻尾巻いて逃げて、これからずっとおとなしくしてるなら、これでおしまいにしといてやるよ。それともブッ飛ばされるのが望みか!?

 健太に鋭い視線を向けられて、ガルヴォルスたちが一目散に逃げ出していった。

「ふざけたマネばっかするんだから・・」

 ガルヴォルスたちの犯行に、健太が呆れて肩を落とす。

「さてと、そろそろオレは日常に戻るとするか・・」

 健太は1度人前から去って、人目のつかない裏路地に来たところで元に戻った。

「それじゃ、これから楽しい時間を・・」

「そんなことを考えてると思ってたよ。」

 にやけ顔を浮かべたところで声をかけられた健太。彼の後ろにひとみがいた。

「げっ!ひとみ!何でここに!?

「健太のことだから、またハレンチなことをしようと企んでるんじゃないかって思ってたら、案の定だった・・」

 驚く健太をひとみが睨んでくる。

「いやぁ、これから帰ろうと思ってたんだよ・・丁度ケリもついたし・・」

「下心見え見えだよ、この浮気者!」

 苦笑いを見せて言い訳する健太に、ひとみが怒鳴りかかる。

「こりゃ、何を言ってもムダか・・・逃げるっきゃねぇ!」

「あっ!コラー!待ちなさい、けんたー!」

 慌てて逃げ出した健太を、ひとみが怒鳴って追いかけていく。

「へっ!どこまで行っても、ひとみに追いかけられ続けるんだな・・!」

「コラー!けんたー!」

 健太が気さくな笑みを浮かべて、ひとみから逃げていった。

 

 

健太の美女に対する執念。

そしてひとみへの想い。

これからも留まることはない。

 

 

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