ガルヴォルスRebirth 第２４話「再生」
レイの前に現れたカズヤ。紅いオーラを出しながら、カズヤはレイに迫ってくる。
「オレはお前をブッ倒す・・お前がいると、安心して暮らせないからな・・・！」
「安心して、ね・・あのままおとなしくしていれば、その通りになれたのに・・」
鋭い視線を向けるカズヤに、レイが呆れた素振りを見せる。
「お前にムチャクチャにされてじっとしてろってか？・・あんなのはゴメンなんだよ・・・！」
カズヤが憤りを募らせて、両手を強く握りしめる。
「もうオレは、誰にも振り回されたりしない・・そうしてくるヤツがいると分かったら、オレは容赦しない・・・！」
彼の手からも紅いオーラがあふれ出てくる。
「オレはお前には、もう容赦しない！」
カズヤが飛びかかり、レイに向かって拳を振りかざす。レイから出ていた光が、カズヤの紅いオーラをまとった拳に打ち破られる。
「容赦しないのは、私の方よ・・・！」
レイが両手を前に出して、念力を放つ。念力がカズヤの体を押さえつけて、宙に持ち上げる。
「カズヤ！」
動きを抑えられたカズヤにルナが声を上げる。
「慈悲は与えない・・このままあなたを潰すわ・・・！」
レイが両手に力を込めて、念力を強めていく。カズヤが体を締め付けられて、痛みを覚える。
「もうあなたにいいようにはさせない・・あなたたちは私の思い通りにする・・・！」
「そんなことは認めないって、言ってんだろうが・・・！」
目つきを鋭くするレイに、カズヤが声を振り絞る。彼は全身に力を込める。
「コウにかけたものよりも強くしている・・あなたでも破ることは・・」
「こんなもので、オレたちをいいようにできると思うな！」
レイに言い返すと、カズヤが力を放出して、束縛してくる念力を打ち破った。
「私の・・今の私の力が・・・!?」
力が跳ね返されたことにレイが愕然となる。
「私は世界を正しく変えていく・・そのための力を、あなたたちと交わることで手に入れた・・・！」
「お前の勝手な理屈なんてオレの知ったこっちゃない・・オレたちを弄ぶお前のことなんか・・・！」
困惑するレイにカズヤが鋭く言いかける。彼が力を込めて、レイに拳を振りかざす。
「うっ！」
カズヤに殴り飛ばされて、レイが突き飛ばされる。顔を殴られた彼女の口から血があふれてくる。
「私の力が通じない・・世界を変えるための力が・・・！」
「世界を変える・・自分にとって正しいだけだろ・・・」
絶望を感じていくレイの言葉を、カズヤがはねつける。
「お前はオレたちの前に出てきたらいけないんだ・・お前がいると、オレたちは安心して暮らしていけないんだよ・・・！」
「安心して暮らす・・なら私に協力してもらえないかしら・・・？」
憤りを見せるカズヤに、レイが微笑んで手を差し伸べてきた。
「私に力を貸せば、あなたたちが苦しむことはなくなる・・そのための世界を、私が作る・・・」
レイがカズヤたちに誘いを持ちかける。しかしカズヤだけでなく、ルナもコウも頑なにレイの誘いを拒んでいた。
「いい加減に諦めたら？往生際悪いよ・・」
そこへヒナタが駆けつけて、レイに声をかけてきた。
「カズヤはどうやったって、もうアンタの言うことは聞かない。カズヤだけじゃない。ルナちゃんもアンタの思い通りにはならない。」
「そんなことはない・・そうなったら、あなたたちの絶望は終わらない・・・」
真剣な面持ちで言いかけるヒナタだが、レイは自分の考えをさらに呼びかける。
「お前が、オレたちにその絶望を与えてるんだよ・・・！」
カズヤがレイの呼びかけをはねつけた。この言葉がレイに絶望を植え付けた。
「違う・・私は、世界を正しく導いていく・・そのための力が私にはある！」
声を振り絞って叫ぶレイだが、再びカズヤに殴り飛ばされる。倒されたレイが激痛に襲われる。
「オレたちはオレたちの居場所に帰る・・安心できる生活を送っていくんだ・・・」
カズヤが思いを口にすると、剣を具現化して手にする。
「お前なんかに邪魔させるかよ！」
カズヤがレイに向かって剣を突き出す。剣の刀身がレイの体を貫いた。
「あなた・・自分が何をしたのか分かっているの・・・!?」
レイが自分を刺している剣をつかんで、声を振り絞る。
「私は人間・・あなたのやっていることは人殺しよ・・・！」
「そんなんじゃオレたちは止まらない・・オレたちは安心して過ごしたいだけだ・・・」
レイの言葉をカズヤが拒絶する。
「それに言ったはずだ・・お前はもう人間じゃない・・心がバケモンだって・・・」
カズヤはそういうと、レイから剣を引き抜いた。体から血をあふれさせて、レイが仰向けに倒れる。
「私は世界を正す・・その私が・・こんなところで・・・」
レイが声を振り絞って、前に手を伸ばす。しかし彼女は力尽きて、伸ばしていた手が力なく地面に落ちた。
「自分が正しいだと言い張っている世界を見るのは、自分だけにしてくれ・・オレたちや他のヤツを巻き込むな・・・」
歯がゆさを口にして、剣を手放すカズヤ。彼は人間の姿に戻って、ルナたちのところへ向かう。
「カズヤ・・・」
「ルナ・・レイは終わったよ・・・」
戸惑いを見せるルナに、カズヤが安堵を見せてくる。
「もうアイツが、オレたちに勝手なマネをしてくることはない・・これでやっと、安心できる・・・」
「まだ、他に悪い人がいないとは言えないけど・・とりあえず、これで・・・」
ふらつきかけたカズヤをルナが支える。２人は互いに目を向け合うと微笑みかけた。
「ま・・待て・・・！」
そのカズヤとルナをコウが呼び止めてきた。
「お前たちは・・オレの敵じゃないのか・・・!?」
「それはお前の行動次第だ・・これ以上オレたちに危害を加えようとするならな・・どんな理由であっても・・・」
問い詰めるコウにカズヤが真剣な面持ちで言いかける。カズヤは人間の姿に戻って、気を落ち着ける。
「オレたちはオレたちの居場所に帰る。そしてオレたちは普通に暮らしていく・・・」
「それが、お前たちの目的か・・」
「お前だって、もう縛られることもないんだろう？・・押さえつけようとするヤツをはねつける力も、気持ちもあるんだから・・」
カズヤが口にする気持ちに、コウが戸惑いを感じていく。彼はカズヤが投げかけた言葉に納得していた。
「オレはもう気楽に過ごす・・オレもオレなりに生きていく・・人間としてな・・」
「オレは・・・オレとして・・・」
カズヤに続いて、コウも自分自身の決心を口にしていた。落ち着きと信頼を取り戻したコウに、ルナは安心を感じていた。
「カズヤ・・帰ろう・・・」
「ルナ・・あぁ・・・」
ルナの声にカズヤが頷く。
「カズヤ・・・私も一緒に言っていいかな・・・？」
するとヒナタが苦笑いを見せて、カズヤたちに声をかけてきた。
「別に構わない・・もうオレのことを分かっているんだろう・・・？」
「カズヤ・・ルナちゃん・・・ありがとう・・」
カズヤに言われて、ヒナタが笑顔を見せた。
「カズヤ、ヒナタ・・行こう・・」
ルナが声をかけて、カズヤ、ヒナタと一緒に歩き出していった。彼らが去っていくのを、コウは見送っていた。
（オレも・・オレとして、生きていく・・オレを貫いていく・・・）
コウが自分の考えを確かめて、自分の手のひらを見つめる。彼はその手を握りしめて、意思を固める。
「オレは生きていく・・オレをオレとするために・・これからも、オレを脅かすものには容赦しない・・・」
コウは決意を口にして、１人歩き出していった。
「レイと同じ人間がいないとは限らない・・むしろまたオレを狙いに来る・・・ヤツらをオレはこの手で・・・」
自分の戦いを続けることを、コウは心に決めていた。
レイによって壊滅的な被害を被った上層部。レイの行動を重く見た彼らは、警戒とともに公にしないよう隠ぺいも画策していた。
「木崎レイ、なんと愚かなことを・・・」
「彼女の行為は公に出ないよう、完全に管理しておく必要がある・・」
議員たちがレイについて話し合っていく。
「木崎レイは死亡したようだが、ヤツを手にかけた怪物たちもまた厄介だ。」
「ヤツらに対する手立ても考えなければならないな。」
「今はおとなしくなっているようだが、いつ我々に牙を向けるかもしれん・・」
「不意打ちを食らわぬために、ヤツらの発見と監視、打開策を講じなくては・・」
「怪物たちの動向には、十分に注意せねば・・」
カズヤたちガルヴォルスたちへの対応を議論する議員たち。彼らはガルヴォルスへの警戒を強めていた。
レイとの決着を果たして、カズヤはルナ、ヒナタと一緒に喫茶店に戻ってきた。
「戻ってきたんだね、カズヤ・・・」
「あぁ・・やっとって感じがしてる・・ここを出たのは今日だっていうのに・・・」
ルナが声をかけて、カズヤが落ち着きを見せて答える。
「とりあえずここでの生活を過ごせる・・人間として暮らしていく・・・」
「カズヤ・・・」
「力を使うのは、これからは、誰かがオレたちを追い込もうとしてきたときだけ・・・」
自分の手のひらを見つめて、力があるのを確かめるカズヤに、ルナが戸惑いを感じていく。
「ホントに帰ってきたのかな・・今まで、いろいろなことがありすぎて、実感がわいてこない・・・」
カズヤが喫茶店の建物を見つめて、戸惑いを募らせていく。するとルナがカズヤに手を差し伸べてきた。
「おかえり、カズヤ・・・」
「ルナ・・・ただいま・・・」
ルナから挨拶されて、カズヤが微笑んで答えた。
（これでやっと・・落ち着ける・・・）
レイが事切れてから数日がたった。カズヤとルナは日常に戻っていて、喫茶店の仕事をこなしていた。
「だいぶ落ち着いてきたね、カズヤ・・」
「あぁ。だけど相変わらずリョウ先輩と連絡つかないんだよなぁ・・」
微笑みかけてきたルナに笑顔で答えるも、カズヤはリョウへの不満を口にする。
「どこまで歩き回ってることやら・・仕事しろってんだ・・」
「帰ってきたら思い切り仕事をさせないとね。」
ふくれっ面を浮かべるカズヤに、ルナが笑みをこぼす。
「あのレイという人の部隊、あれからどうしたのかな・・・？」
「さぁ・・もしもどこかでコソコソしてて、またオレたちに何かしようとしてきたら、そのときは・・・」
ルナからの疑問に答えて、カズヤが手を握りしめる。彼は相手が人間でもガルヴォルスでも、力を使うことをためらわないつもりでいた。
「カズヤ、ルナちゃん、こんにちは♪」
喫茶店にヒナタがやってきて、カズヤとルナに笑顔で挨拶をしてきた。
「ヒナタ、こんにちは。」
ルナから挨拶を返されて喜ぶヒナタだが、カズヤを見て表情を曇らせる。
「来たのか、ヒナタ。今日は何の用なんだ？」
「カズヤ・・ちょっとお手伝いをしようかなって・・」
カズヤが声をかけると、ヒナタが戸惑いを見せて答える。
「いや、やめてくれ・・お皿やコップを割られたら敵わないからな・・」
「カズヤ、そんな〜・・」
カズヤに気さくに言われてヒナタが落ち込んで肩を落とす。だが彼女はすぐに顔を上げて笑みを見せてきた。
「いつものカズヤだね・・よかった・・」
「ヒナタ・・・うん・・カズヤは落ち着いているよ・・私も・・」
安心するヒナタに、ルナが小さく頷いた。
「それじゃコーヒーとケーキを食べようかな。せめて売り上げに貢献しないとね。」
「かしこまりました・・エヘヘ・・」
注文をしてきたヒナタに答えて、ルナが笑顔を見せた。
「あの部隊、全然動きがないよ。秘密にしている可能性も見たけど、それさえも・・」
ヒナタがレイが指揮していた部隊のことを話す。
「あのまま尻尾巻いて逃げたならそれでいい・・何もしてこなきゃどうでもいいさ・・」
「何かしてきたら迷わずに力を使って戦う・・カズヤも、私も・・」
自分の考えを正直に言うカズヤとルナ。２人の決心にヒナタは頭が上がらなくなっていた。
「ホントにすごいよ、２人とも・・私じゃ足元にも及ばないと、その心の強さというのには・・」
「そんな大それたことじゃない・・オレを、オレたちを守りたい・・それだけなんだ・・・」
感心するヒナタに、カズヤが物悲しい笑みを浮かべてきた。
「バケモンになって、自分の力に振り回されて、レイに振り回されて・・コウと会ってぶつかり合って・・」
「私も怪物になって、力を持って・・いろいろありすぎて、今でも本当の時間より長く過ぎた気がする・・・」
今までの自分たちの出来事を思い出していくカズヤとルナ。２人が顔を見合わせて、互いにそっと手を差し伸べて触れ合った。
「オレはやっと、支えてくれる人と出会えた・・ルナがいなかったら、オレは心までバケモンになってただろうな・・」
「そんな・・私は、カズヤに助けられてばかりで、迷惑をかけてばかりで・・・」
互いに感謝し合うカズヤとルナ。２人は戸惑いを感じながら見つめ合う。
「もう、２人ともすっかりラブラブなんだから・・私の入る隙間もないって感じで・・」
２人を見て苦笑いを浮かべるも、自分の想いがカズヤに伝わらないことを痛感して、ヒナタは心の中で悲観していた。
「そういえば、コウはどうしてるのかな・・？」
カズヤがふとコウのことを口にしてきた。
「詳しくは分からないけど、レイって人と関係ある人たちを探し回っているみたい・・きっと叩き潰そうとしているのかも・・」
「そうか・・そうだな・・アイツならそうするだろうな・・」
ヒナタの話を聞いて、カズヤは納得していた。
カズヤたちが思っていた通り、コウは自分を脅かしに来る敵を倒していた。人間、ガルヴォルス関係なく、彼は敵だと判断した相手を容赦なく叩きつぶしていた。
「や、やめてくれ・・助けてくれ・・・！」
コウにつかまれている男が助けを求める。
「も、もう何もしない・・何でもするから、命ばかりは・・・！」
「そんな言葉を吐くぐらいなら、最初から何もしなければよかった・・・」
命乞いする男に呆れ果てるコウ。彼は男を地面に叩きつけた。
男は悲鳴を上げる間もなく即死した。事切れた男を放して、コウは歩き出す。
「オレは戦う・・戦い続ける・・オレが生きるために・・・」
自分自身の決意を胸に秘めて、コウはたった１人の戦いを続けていた。
喫茶店の裏口の前で、カズヤは１人で考え事をしていた。彼はコウのことを気にしていた。
「オレたちがこうしている間にも、コウはどこかで戦ってるんだろうな・・」
「コウさんも、自分の道を選んだだけだよ・・」
呟いていたカズヤに、ルナが声をかけてきた。
「コウさんは戦い続けることを選んだ・・そして私たちは、落ち着ける日常を選んだ・・」
「ルナ・・・」
「私たちが戦うのは、この日常を壊そうとする敵が出てきたときだけ・・・」
「そうだな・・そうやってオレたちは、人間として生きていくんだ・・・」
ルナに励まされて、カズヤは笑みをこぼしていた。彼が落ち着きを取り戻したのを見て、ルナも笑顔を見せた。
「オレたちは生きていく・・オレたちの居場所を守るために・・・」
カズヤは言いかけて店の中に戻っていく。ルナも頷いて続いていく。
自分たちの日常を過ごしていくことを心に決めたカズヤ。戦うときは、自分たちの平穏を壊すものが現れたときだけ。