ガルヴォルスExbreak

第25話「2人の生活」

 

 

 ガイを止められず、気絶していたマサキとガイ。2人が目を覚ましたときには、夜を迎えていた。
「オレたち、倒れていたのか・・・」
 マサキが記憶を呼び起こしながら、周りを見回す。
「ガイは行ってしまったのか・・・シュラさんは・・・!?」
 ガイがいないことも把握して、マサキがシュラのことを気にする。彼はスマートフォンを取り出して連絡を試みる。
「つながらない・・大丈夫だろうか・・・!?」
「マサキ、ヘイゾウさんのところに戻ろう・・きっと心配しているはずだから・・・」
 心配を募らせるマサキに、ツバサが悲しい顔を浮かべて呼びかける。
「あぁ・・ジンボーに戻って、そこでもう1度シュラさんに連絡してみる・・」
 マサキが答えて歩き出す。しかしふらついてツバサに支えられる。
「ゴ、ゴメン・・・」
「目は覚めたけど、体力を使い果たしている・・思うように動けなくて当然だよ・・」
 謝るマサキをツバサが気遣う。
「でも疲れているのはツバサも同じはずだよ・・・」
「マサキほどじゃないよ・・このくらいさせて・・・」
 心配するマサキに言い返して、ツバサが彼女を連れて歩き出した。

 警察の調査が終わったジンボーで、ヘイゾウとララはマサキとツバサを待っていた。
「ツバサとマサキくん、大丈夫かな?・・」
「あの2人なら生きて帰ってくるじゃろう・・といっても、2人もわしらの考えの及ばんとこへいるみたいじゃが・・・」
 ララが心配して、ヘイゾウがマサキたちへの信頼を口にする。
「わしらに今できるのは、2人が戻ってくるのを信じて待つことじゃ・・」
「マスター・・あたしも、そうしたいと思ってますが・・・」
 ヘイゾウに元気づけられるララだが、不安を拭うことができない。
「あっ!・・マスター、あれ・・!」
 そのとき、ララがマサキとツバサが戻ってきたのを見つけて指さした。
「マサキ、ツバサちゃん、大丈夫か!?」
「マ、マスター・・・」
「ララ・・2人とも待っていてくれた・・・」
 ヘイゾウが呼びかけて、マサキとツバサが視線を移して笑みを浮かべる。マサキたちがヘイゾウとララに支えられた。
「ツバサ、マサキくん・・2人ともヘトヘトじゃない・・!」
「私たち、力を使い果たしてしまったから・・・」
 ララが心配して、ツバサが弱々しい声で答える。
「それで、一体何がどうなったんじゃ・・!?」
 ヘイゾウが深刻な面持ちを浮かべて、マサキたちに問いかける。
「ジンボーを襲ったヤツは倒しました・・でも他に止めたいヤツがいたのですが・・・」
「止められなかったです・・・私たちの知り合いが危ないことになっているのに・・・」
 マサキとツバサがシャークガルヴォルスの打倒と、ガイとの戦いに敗北したことを話す。
「マサキ、ツバサちゃん、今は病院へ行って体を診てもらうんじゃ。」
「はい!」
 ヘイゾウが呼びかけて、ララが頷く。
「待ってください、マスター・・オレの知り合いの連絡を待たないと・・・」
 マサキがシュラを心配して、ここに留まろうとする。
「でも早く手当てしないと・・2人とも取り返しのつかないことに・・・!」
「もう少しだけ・・・こっちに来るか、連絡が来るはずなんだ・・・」
 ララが心配するが、マサキはそれでもこの場に留まろうとする。
「お願い、ララ、マスター・・もう少しだけ・・・」
 ツバサからもお願いされて、ララもヘイゾウも聞き入れることにした。
(シュラさん、ガイにやられてなければいいが・・・)
 シュラを心配して、マサキが心の中で呟いた。
「あ、あれ・・!」
 そのとき、ララが人影を見つけて指さした。マサキとツバサがその方向に目を凝らすと、シュラがゆっくりと歩いてくる姿を視界に入れた。
「シュラさん!」
 マサキが叫び、力を振り絞ってシュラに向かって走る。しかし思うように動けず、ふらついて倒れてしまう。
「マサキ・・!」
 ツバサが慌ててマサキを支える。2人の目の前までシュラが来た。
「マサキくん、ツバサさん、ここに戻っていたのですね・・生きていて、よかったです・・」
 シュラがマサキたちを見つめて微笑む。次の瞬間、シュラがふらついてマサキが支えた。
「シュラさん、一緒に病院に行きましょう・・手当てをしないと・・・!」
「そうですね・・今回は少し疲れましたからね・・・」
 マサキが肩を貸して、シュラが頷いた。そのとき、シュラの通信機に連絡が入った。
「すみません・・応答しなくては・・・」
 シュラが言いかけて、通信機に答えた。
「どうしました?」
“竜田ガイが死亡しました。肉体の崩壊を確認しました。”
 応答したシュラに、ヴォルスレイの隊員が報告をした。
「ガイ・・・!」
 通信を耳にして、マサキが驚く。ツバサもこの報告が信じられず困惑する。
「分かりました・・・本日ただ今をもって、ヴォルスレイは解散です・・みなさん、それぞれの生き方を進んでください・・・」
“シュラさん、それではガルヴォルスの暴挙を止める者が・・・!”
「私たちはその目的のために罪を重ねてしまいました・・もう私たちがガルヴォルス討伐をする必要はないです・・私たちがいなくても、立ち上がってくれる人がいます・・」
“ガルヴォルス討伐に立ち向かう人・・?”
「正確には、罪のない人を襲う人に立ち向かう人ですね・・私のかけがえのない友人となった人たちです・・」
“シュラさんの友人・・・”
 シュラの話を聞いて、隊員が戸惑いを感じていく。
「みなさんは、今回のような悲惨な戦いから離れて、それぞれの人生を歩んでください・・」
“シュラさん・・・分かりました・・他の隊員には、私から伝えておきます・・”
 シュラが頼みごとをして、隊員が聞き入れた。
「みなさん・・今まで、ありがとうございました・・・」
“こちらこそ、ありがとうございました・・・!”
 隊員と礼を言い合ってから、シュラは通信を終えた。
「シュラさん・・・」
 通信を聞いて、ツバサが悲しみを感じていく。
「これでヴォルスレイの活動は、完全に終了です・・・」
 シュラが肩の荷が下りたと思って、ひと息ついた。
「シュラさん、病院に行きましょう・・体を休めないと・・・!」
 ツバサが言いかけて、マサキと一緒にシュラに肩を貸す。
「これで全ての肩の荷が下りたと思います・・罪の償いが残っていますが、これで休むことができます・・・」
 シュラが安らぎを感じて目を閉じた。その直後、彼の体から力が抜けた。
「シュラさん・・・!?」
 ツバサが声を掛けるが、シュラからの返事がない。
「シュラさん・・返事をしてください、シュラさん・・・!」
 マサキが呼びかけるが、それでもシュラは閉ざした目を開けない。
「あなたもこれからなんですよ!頑張ってください、シュラさん!」
 マサキがさらに声を掛けて、ツバサがシュラに向けて意識を集中する。
「お願い、シュラさん・・目を覚ましてください・・・!」
 ツバサが力を送り込んで、シュラを回復させようとする。エンジェルガルヴォルスになろうとしていた彼女だが、そこまでの力を出せるまで回復していない。
「どうして・・どうしてこんなときに、力が出ないの・・・!?」
「ツバサ・・・シュラさん、すみません・・オレたちにもっと力があったら・・・!」
 ツバサだけでなく、マサキも悲しみを募らせていく。
「と、とにかく、その人を連れて病院へ行こう・・」
 ヘイゾーが声を掛けて、マサキが小さく頷いた。マサキはシュラを抱えて、ツバサたちと一緒に歩き出した。

 病院に来たマサキたちは、事情を話して手当てを受けることになった。
 マサキとツバサはガルヴォルスであることを知られることなく、手当てを受けることができた。しかしシュラは目を覚まさなかった。
「シュラさん・・・こんなことになるなんて・・・」
 マサキがシュラの死への悲しみと自分の無力さを痛感する。
「シュラさんも助けられず、ガイを止めることもできなかった・・力があっても、何でもできるわけじゃない・・・」
「マサキ・・悔しいのは私も同じだよ・・・私・・もっと強くなりたいと思ったよ・・マサキと一緒に・・・」
 自分を責めるマサキに、ツバサが決意を伝える。
「ツバサ・・オレも強くなりたいと思ってた・・もう大切な人を守れないオレも、止めないといけないときに止められないオレも、もうイヤだ・・・!」
「私も同じ・・一緒に強くなろう・・力だけじゃなく、心も・・・」
 マサキとツバサが言葉を交わして、手を握り合って決意を強くした。
「ツバサ、マサキくん・・すっかり仲良しって感じだね・・」
 ララがマサキたちを見て笑みをこぼす。彼女に見られて、マサキとツバサが頬を赤くする。
「えっと・・いろいろあってね・・・」
 ツバサが言いかけて、マサキと目を合わせた。
「じゃが今は休んだ方がいい。幸い入院せずに帰れそうじゃから、わしが腕によりをかけるぞ。」
 ヘイゾーがマサキたちに言って、意気込みを見せる。
「でもマスター、お店の方は・・・」
「あ・・そうじゃったな・・・」
 ララに言われて、ヘイゾーが苦笑いする。
「あたしが家に事情を話すから、そこでご飯を作ろう。もちろん、ツバサたちのことは秘密にするから・・」
「ララ・・ありがとう・・今は甘えたくて仕方がない気分になっていたから・・・」
 家へ招待するララが気遣って、ツバサが感謝する。
「それじゃ連絡するからね。」
 ララはスマートフォンを取り出して、家へ連絡した。彼女はうまく事情を話して、了承を得た。
「OKだよ。というより、お母さんのほうがご飯作るのに力を入れそうかな。エヘヘ・・」
 ララが許可をもらったことを伝えて、母親の張り切り様に苦笑いを浮かべた。
「ありがとう・・本当にありがとうね、ララ、マスター・・・」
 ツバサがララたちに感謝して、マサキと安らぎを分かち合った。

 それからマサキとツバサはヘイゾーと共に、ララの家に来て夕食を食べることにした。
 体も心もあたたまる食事ができて、マサキとツバサは心から安心していた。
「あ・・あれ?・・涙が、出てきた・・・」
 涙があふれたことに、ツバサが動揺を見せる。
「色々なことから解放されたってことなのかな・・・」
「ツバサ・・・そうだね・・今はもう、辛いことを考えることはないんだ・・・」
 物悲しい笑みを浮かべるツバサを、マサキが励ます。
「さぁさぁ、今日はたくさん食べて、元気になってね。」
 ララが笑顔を見せて、マサキたちを元気づける。
「それじゃ、言う通りにさせてもらっちゃうぞ!」
 マサキが元気よく答えて、食べ物を口に運んでいく。
(元気になって、マサキくん、ツバサ。あたしには、あなたたちに甘えることしかできないよ・・)
 ララは心の中でマサキたちに対する気持ちを呟いていく。
 ララはマサキたちに助けられたことに感謝していた。たとえ2人が普通の人間でないとしても。
(悲しいことや辛いことがたくさん起こったけど・・まだオレたちには、幸せが残っていた・・・)
 ツバサやララに支えられて、マサキは安らぎを感じていた。

 夕食を満喫したマサキとツバサはララ、ヘイゾーと別れてツバサの家へ行くことにした。
「本当にありがとうね、ララ・・マスター、これから協力していきたいと思います。」
「お手伝いしたいと思ってるのは、あたしも同じだよ。」
 感謝するツバサに、ララも笑顔で答える。
「マスター、明日、店の修復の手伝いに来ますので。」
「助かるよ、マサキ。これからも一緒に頑張っていこう。」
 マサキが協力を申し出て、ヘイゾーが感謝した。
「今日はゆっくり休んで、これからに備えるのじゃ。わしらもわしらのできることで、マサキとツバサちゃんを助けるからね。」
「はい、マスター。」
 ヘイゾーが励まして、マサキが答えた。ツバサも微笑んで、ララと頷き合った。
「それじゃ、また明日・・」
 ツバサはヘイゾーたちと別れて、マサキと一緒に歩いていった。
「2人とも、明日は元気になってるでしょうか・・?」
「信じるしかないのぅ・・わしは元気になるって信じてる・・」
 マサキたちを心配するララに、ヘイゾーが2人への信頼を口にした。

 ツバサはマサキと一緒に家に戻ってきた。その直後、2人は緊張の糸が切れて、床に膝をついた。
「辛いことだらけだ・・オレたち、結局何もできず、みんなに世話になりっぱなしになってしまった・・・」
「ガルヴォルスになっても・・力を合わせても・・何でもできるってわけじゃないんだね・・・」
 また自分の無力さを感じて、マサキとツバサが落ち込んでいく。
「ツバサ、今夜はそばにいさせて・・今だけは甘えさせてほしい・・・」
「私も同じことを思っていたよ・・マサキと一緒にいさせて・・・」
 マサキとツバサが互いにすがり付いて、顔を見つめ合う。
「どっちも今は、甘えたくて仕方がないってことか・・・」
 マサキが苦笑いを見せると、ツバサと同時に互いを強く抱きしめ合った。2人とも抱擁のぬくもりで安らぎを感じていた。
 マサキとツバサは抱き合ったまま、服を脱いでさらにぬくもりを感じていく。
「シュラさん・・ガイさん・・・みんな・・・!」
「こんな戦いのために・・みんな死んでしまった・・ヴォルスレイもガルヴォルスも、どっちかが正しいってわけじゃないのに・・・!」
 大切な人の死と戦いの悲劇を悲しみ、ツバサとマサキが涙を流す。
「オレたちも正しいことをしているとは言い切れないけど・・」
「守りたい人を守れるようになりたい・・・」
「強くなるしかない・・力も心も・・・」
「せめて、私たちの大切なものを守れるくらいの力を・・そして、力や感情に振り回されないだけの強さを・・・」
 すがるように抱擁して、マサキとツバサが決意を口にする。2人は感情のままに服を脱ぎ、さらに互いのぬくもりを感じ合っていく。
「こうして私たち、結ばれるってことなのかな・・・?」
「これでずっといることになるなら、それで・・・」
 ツバサとマサキが抱きしめ合い、安らぎを感じ合う。マサキはそこから性器をツバサの秘所に入れた。
 ツバサが刺激を感じて声にならないあえぎをする。マサキがそのまま体を揺らして、彼女と共に恍惚を感じていく。
「すごい・・ツバサに引き込まれていくみたいだ・・・!」
「私の中に、マサキが入ってくる・・・!」
 込み上げてくる感情に引き込まれるままに、マサキとツバサがあえぎ声を上げる。
「どんどん込み上げてくる・・オレの中にあるものが・・・!」
 快感を増していくマサキが、ツバサの秘所に性器を入れたまま、精液をあふれさせた。
「あっ・・・!」
 自分の中に精液が入ったのを感じて、ツバサは戸惑いを募らせる。
「私の中に、マサキが・・・」
 彼女が心を揺さぶられて、力なくマサキに寄り添った。
「これでもう・・私たちは離れることはない・・ずっと一緒にいるということになる・・・」
「これが、結ばれるってことか・・・」
 身体的な意味でもつながりができたと、ツバサとマサキが実感する。
「これからもずっと一緒だよ、マサキ・・・」
「もちろんだ、ツバサ・・・」
 ツバサとマサキが抱きしめ合って、ぬくもりとつながりを確かめた。互いへの想いを抱えたまま、2人は眠りについた。

 ヘイゾーは連絡して呼んだ業者と協力して、ジンボーの建物の修理を始めていた。
「新装開店まで少し時間がかかるのぅ・・新しい人手も探さないといかんし・・」
 ヘイゾーが悩みの多さに大きく肩を落とす。
「気を落とさないでください、マスター♪あたしの知り合いの子に声を掛けてみますよ♪」
 ララが笑顔を振りまいて、ヘイゾーを励ます。
「すまないね、ララちゃん・・すっかり助けられてばかりじゃ・・」
「あたしも、このお店をもう1度盛り立てたいと思ってますからね。」
「ララちゃん、ありがとうね・・マサキとツバサちゃんにも感謝しないと・・・」
「あたしもまたお礼を言わなくちゃですね。」
 ヘイゾーが感謝を感じて、ララが頷いた。
「マスター!」
「ララ!」
 マサキとツバサが来て、ヘイゾーたちに声を掛けてきた。
「マサキ!」
「ツバサ!」
 ヘイゾーとララが笑顔で答えて、2人を迎えた。
「今日から改めてここで仕事をしますね。」
「よろしくお願いします、ヘイゾーさん。ララも一緒に頑張ろうね。」
 マサキが気さくに言って、ツバサがヘイゾーたちに挨拶する。
(ガイ、シュラさん、オレたちは生きていく・・戦いのない日常を守るために・・・)
 マサキが心の中で呟いてから、ツバサと共に修理の手伝いをした。

 ガルヴォルスでありながら、人間として生きていくことを決めたマサキとツバサ。
 2人はこれからの日常を守るために、ガルヴォルスの力を使うことを決めていた。
 そばにある大切なものを守るのが、マサキたちの願いであり決意だった。

 

 

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