ガルヴォルスcross 第7話
静香が微笑んで眼を閉じたときだった。
彼女の体が石のように固くなり、微動だにしなくなる。
「静香さん・・・!?」
その瞬間に寧々と紅葉が眼を疑う。その直後、静香の体が砂のように崩れ、握られていた手も寧々の手からこぼれ落ちる。
「静香さん!」
寧々が悲痛の叫びを上げ、紅葉も悲しみのあまり体を震わせる。静香の亡骸が、再び寧々の手に握られる。
「こんなに・・こんなに辛い気分は、初めてかもしれない・・・お姉ちゃん・・・」
「あたしもだよ、寧々・・・どうして、こんなことになってしまったんだろうって・・・」
悲痛さを噛み締める寧々と紅葉。寧々の眼からあふれた涙が、静香の亡骸へとこぼれ落ちていった。
静香に石化されていた人々の体に付けられていたヒビが広がっていく。そして石の殻が剥がれ落ち、解放された。
「えっ・・・!?」
「あ、あたし・・・!?」
「元に、戻ってる・・・」
石化から解放された人々とともに、愛、舞、美衣が戸惑いを見せる。
「早苗、これって・・・」
「静香さんが亡くなったことで、私たちにかけられていた石化が解けたのね・・・」
佳苗と早苗も石化から解放されたことを実感する。同時に自分たちが全裸であることも気付き、2人とも困惑していた。
だが、2人は悲しみに暮れている寧々と紅葉を目の当たりにして、深刻な面持ちになる。
「紅葉ちゃん・・寧々ちゃん・・・」
「静香さんが、亡くなったのね・・・でなければ、私たちにかけられた石化が解けるはずもない・・・」
戸惑いを見せる佳苗と、冷静さを保とうとする早苗。
そして同じく石化から解放されていた夕美は、すぐに静香の死を理解していた。だが不思議と悲しさを感じてはいなかった。
自分の中に姉がいる。どんなことがあっても、これからも一緒にいる。夕美はそう思っていた。
「ゴメン・・夕美ちゃん・・・あなたのお姉ちゃん、守れなかった・・・」
寧々が涙ながらに夕美に謝罪する。すると夕美は微笑みかけ、首を横に振る。
「大丈夫だよ・・お姉ちゃんなら、私のそばにちゃんといるから・・・」
「夕美ちゃん・・・」
夕美の言葉を聞いて、寧々が困惑する。紅葉も夕美に対して戸惑いの色を隠せなかった。
「もう大丈夫だからね、お姉ちゃん・・私、強く生きていくから・・・」
夕美は自分の胸に手を当てて、静香への思いを募らせる。その気持ちを察して、寧々はようやく笑みを取り戻す。
「そうだね・・・静香さんも言ってた・・あたしたちには、笑顔が似合ってるって・・・」
「うん・・だから、これからは笑顔を消さないようにしていくつもり・・それが、お姉ちゃんが願ってた幸せの気がするから・・・」
寧々の言葉に夕美が頷く。すると寧々は夕美の頭を撫で、すかさず抱き寄せる。
「夕美ちゃん・・・あたしたちも、あなたと一緒にいるからね・・・」
「寧々さん・・紅葉さん・・・うん・・ありがとうね・・みんな・・・」
寧々に励まされて、夕美は涙ながらに頷きかける。2人の姿を見て、紅葉、早苗、佳苗も微笑んだ。
心優しき女性が引き起こしたこの事件は、終幕を迎えた。だが犠牲は小さくなかった。
隆一によって、静香や多くの刑事、警官が命を落とした。押し寄せる悲しみは、浅はかなものではなかった。
その絶望に似た悲観の中で、夕美は静香から勇気をもらった。周りを幸せにするための笑顔を、彼女は見せるようになっていた。
人見知りを克服した夕美の姿に、寧々や紅葉だけでなく、犬神神社に通う全ての人々の不幸を取り除いていった。
「夕美ちゃん、元気になってよかったね、お姉ちゃん・・・」
「うん・・でも、静香さんがいなくなってしまったことは、やっぱり辛いよ・・・」
微笑みかける寧々に、紅葉は沈痛の面持ちを浮かべる。
「うん・・でも、夕美ちゃんは大丈夫だよ・・静香さんがそばにいるし、静香さんに負けないくらいの強さと優しさを持ってるから・・・」
「そうね・・あたしたちが心配しなくても大丈夫ね・・・」
寧々の言葉に紅葉が同意する。そして2人は、互いに対する気持ちの整理をつけようとしていた。
「お姉ちゃん、ゴメン・・静香さんや夕美ちゃんを思うあまり、お姉ちゃんのいうことを聞かなくて・・」
「ううん。寧々、あたしのほうこそ、寧々の気持ちを分かってあげられなくて・・・」
自分の心境を告げて、寧々と紅葉が謝る。2人はたまらず互いを抱きしめあっていた。
「お姉ちゃん、ゴメンね・・そして、ありがとう・・・」
「あたしこそ・・あたしこそゴメンね・・・寧々・・・あぁぁ・・・」
喜びと悲しみが入り混じり、大粒の涙を浮かべる寧々と紅葉。
「寧々・・今夜、そばにいてくれないかな・・・?」
「うん、いいよ・・・」
紅葉の呼びかけに寧々は小さく頷いた。
その日の夜、寧々は紅葉を自分の部屋に招き入れた。そして2人は衣服を脱ぎ捨て、抱擁を果たす。
「やっぱり、こうして寧々を抱いているのが、1番気分がよくなってくるよ・・・」
「うん・・あたしも体も心もあったかくなってくるよ・・・お姉ちゃん・・・」
互いに微笑みかけて、頷きあう紅葉と寧々。
「それじゃいくよ、寧々・・まずは胸からね・・・」
紅葉が寧々の胸に手を当てて撫でていく。その接触に寧々が苦悶の表情を浮かべる。
「・・ハァ・・・お姉ちゃん・・・」
心地よさを感じるあまり、吐息をもらす寧々。彼女の胸をさらに揉み解し、紅葉も高揚感を募らせていた。
(あたしには分かるよ、寧々・・あなたがいろいろと抱えていたのが・・・)
寧々の中にあるもやもやをつかみ取っていく紅葉。その感覚を抱えたまま、彼女は寧々の胸に顔をうずめてきた。
「お姉ちゃん・・・お姉ちゃんの吐息が伝わってくる・・ぁぁぁ・・・」
さらに押し寄せる高揚感に、寧々があえぎ声を上げる。
「ダメ・・もう、我慢できない・・・」
快感にさいなまれた寧々の秘所から愛液があふれ出す。もはや彼女の心に歯止めはかからなくなっていた。
「もっと・・もっとやって・・いけないところも、触っていいから・・・」
快楽に溺れて紅葉に呼びかける寧々。その言葉を受けて紅葉が身をかがめ、寧々の秘所に舌を入れる。
「んなっ・・あはぁぁ・・お姉ちゃん・・お姉ちゃん・・・」
自分への介入をさらに迫る寧々。その恍惚のあまりに愛液があふれ、紅葉の顔にかかる。
「んくっ・・これが・・今の寧々の気持ち、なのね・・・」
愛液を舐め取り、紅葉も高揚感を募らせる。
「寧々・・今度はあたしの気持ちを・・・」
「お姉ちゃん・・・うん・・分かったよ・・・」
紅葉の呼びかけに寧々が頷く。今度は寧々が紅葉に寄り添い、その胸に乳房に口をつける。母親のお乳を飲む赤ん坊のように。
「寧々・・もっと吸って・・吸っちゃって・・・」
紅葉が寧々の頭を抱えて、自分に引き寄せる。すると寧々が紅葉の下腹部に手を伸ばしてきた。
「寧々・・出ちゃう・・出てきちゃうよ・・・」
紅葉が言いかけた直後、彼女の秘所から愛液があふれ出す。その雫が、伸ばしていた寧々の手の中にも落ちる。
その手を引いて、寧々はついている愛液を舐め取っていく。
「お姉ちゃん・・・いろいろあって、ずっと我慢してたんだね・・・ゴメンね・・お姉ちゃん・・・」
「ううん・・あたしこそゴメンね・・寧々・・・」
高揚感を募らせたまま、弱々しく声を掛け合う寧々と紅葉。2人は感情の赴くまま、抱擁をしていく。
「寧々、これからはお姉ちゃんがそばにいるからね・・どんなことがあっても、ずっと・・・」
「お姉ちゃん・・・ありがとうね・・・あたしも、お姉ちゃんのそばを離れないから・・・」
互いに自分の気持ちを切実に告げる紅葉と寧々。2人はそのまま口付けを交わし、眠りへと落ちていった。
2人だけの一夜を過ごした寧々と紅葉。2人はいつしか眠りにつき、夜が明けていた。
先に眼を覚ましたのは寧々だった。寧々は昨日までの出来事を思い返していた。
姉とのすれ違い、親しくしていた人の暴走、勇気、和解、別れ。
様々な思いが寧々の中を駆け巡っていた。
(静香さん、ありがとうね・・これからはあたしたちが、みんなに幸せを与えていくから・・静香さんが果たせなかった分まで・・・)
決意を胸に秘めて、寧々が微笑みかける。見つめていた右手を、彼女は強く握り締める。
「寧々、眼が覚めてたのね・・・」
そこへ眼を覚ました紅葉が声をかけてきた。
「お姉ちゃん・・・」
寧々が紅葉に向けて微笑みかける。そして寧々は唐突に問いかけを投げかけた。
「お姉ちゃん、静香さんに石にされたとき、どんな気分だった?」
「えっ?何よ、いきなり・・・?」
一瞬戸惑いを見せるも、紅葉は寧々の質問に答える。
「そうね・・体だけが石になって、服が破れて、裸の石像になったってときは参ったわね。全然身動きが取れないから、見放題、触り放題にされちゃうのよね。」
「同感。あの状態でいいようにされちゃったら、ホントに参っちゃうわよ。」
紅葉の答えに同意して、寧々がため息をつく。
「聞いた話だけど、ガクトも同じ石化にかけられたって・・」
「ホントなの?・・ガクトさんも災難としかいえないわね・・」
寧々の言葉に驚く紅葉。2人は屈託のない話に思わず笑みをこぼしていた。
「静香さん、夕美ちゃんはもう大丈夫だよ・・静香さんの勇気と優しさを持ってるから・・・」
寧々が唐突に言いかけた言葉に、紅葉が同意して微笑みかける。
「紅葉さん、寧々さん、おはようございます。」
そこへ夕美が2人のいる部屋のふすまを開けてきた。突然のことに寧々と紅葉が赤面する。
「ゆ、ゆ、夕美ちゃん!?・・こ、これは、その・・・」
「・・・ゴ、ゴメン・・私、そんなつもりじゃ・・・」
寧々がとっさに弁解を入れようとすると、夕美も赤面して動揺する。
「夕美ちゃん、すぐに起きるから、戸を閉めてくれるかな?アハハハ・・」
紅葉が照れ笑いを浮かべて言いかける。その言葉を受けて、夕美がゆっくりとふすまを閉めた。
その直後、寧々と紅葉が同時に大きく吐息をついた。
「早く服着よう。夕美ちゃんやみんなが待ってるから・・」
「そうだね、お姉ちゃん。エヘヘヘ・・・」
紅葉の言葉に、寧々が照れ笑いを浮かべて答える。2人は気持ちを切り替えて、日常へと戻っていった。
(あたし、どんなことにも負けたりしないからね。今度会ったときにビックリさせてやるんだからね、ガクト・・・)
ガクトへの想いと決意を胸に、明日を歩こうとする寧々。彼女の心には今、揺るぎない強さが秘められていた。