魔法戦記エメラルえりなResonance

第24話「レゾナンス」

 

 

 ララを手にかけたなのはを集中的に狙う霞美。なのはも射撃、砲撃で応戦するが、霞美の放つ漆黒のオーラが、それらをことごとく弾き飛ばしていた。

「射撃だと弾かれ、砲撃もオーラの強度を上げられて防がれる・・暴走してんのに的確に対応しとる・・・!」

「これじゃバインドもケージもすぐに打ち破られてしまう・・あとは接近戦だけど・・・」

 はやてとジャンヌが霞美の力に毒づく。フェイトとライムが霞美の左右から飛びかかり、一閃を繰り出す。

 だがバルディッシュもクリスレイサーも、霞美の放つオーラに防がれてしまう。

「くっ!なんて硬いオーラなんだ!」

「霞美の激しい怒りが、力も上げている・・・!」

 毒づくライムとフェイトが、霞美が放出した閃光に吹き飛ばされる。すぐに体勢を整えて踏みとどまるも、2人は攻めきれないことに焦りを感じていた。

「もうドライブチャージ・インフィニティーを使うしかない・・でも陸にも被害が出るかもしれない・・」

「コロナに結界を張ってもらおう。それならある程度は被害を抑えられる・・」

 全開に踏み切れずにいる明日香に、玉緒が言いかける。

「それに賭けるしかないね・・・」

 迷いを振り切った明日香が、魔力集束のために意識を集中させる。

 そこへ駆けつけたジュンとマコトが、霞美に突っ込んできた。2人の突進力は、オーラで防ごうとする霞美をそのまま突き飛ばし、そばの小さな島に叩き落とした。

「あなたたち・・・!?

「あそこの島は無人島です!そこでならスバルさんたちも戦えます!」

 眼を見開く明日香に、ジュンが呼びかける。

「なりふり考えるのは今はなしだ!僕たちの故郷を、イースみたいに壊されるわけにはいかない!」

 マコトは言い放つと、霞美に向かって再び飛びかかっていった。

「戦闘機人・・その爆発力なら、霞美さんを押さえ込めるかもしれない・・」

「でも1人だけじゃ危険や・・私らも援護せな・・・!」

 ジャンヌとはやてが言いかけると、明日香たちも霞美とマコトを追いかけていった。

(ジュン、あなたも霞美さんのために、懸命になってるんだね・・・)

 ジュンの純粋な気持ちを悟って、明日香も改めて奮起していた。

 

 突如ジュンの突進で無人島に叩き落とされた霞美。しかしダメージはなく、霞美は平然と立ち上がってジュンに眼を向ける。

「霞美さん・・本当にあなたが・・・えりなさんたちを石にしたの・・・!?

 歯がゆさを押し殺しながら、ジュンが霞美に言いかける。

「だってララを傷つけられたんだよ・・あの世界を壊さないと・・ララが本当に辛いよ・・・」

「そうやって壊した後に、何が残るの!?・・・そんなことにしたら、霞美さん、あなたは絶対に後悔する・・・!」

「ううん、後悔しない・・だってそうしないと、みんなまで辛い思いをすることになるから・・・」

「絶対に後悔する・・だって私も、大切な人を傷つけられて、怒って、見境なしに周りを壊した・・憎しみを持って戦うことで生まれるものは何もないって、私は思い知らされた・・・」

「悲しみが消えて、喜びが生まれる・・喜びが生まれるんだよ・・・」

「そんなことをして喜ぶのはあなただけだよ!」

 考えを変えない霞美にジュンが言い放つ。

「あなた以外は誰も喜ばない・・ララさんだって!」

「ララのことを知らないのに、勝手なことを言わないで!」

 言いかけるジュンに怒りをあらわにする霞美。放たれた黒い閃光を、ジュンは素早く回避する。

Flame smash.”

 ジュンがすぐさま飛びかかり、霞美に向けて炎の拳を繰り出す。戦闘機人としての炎の力を上乗せした攻撃だが、霞美は漆黒のオーラで防ぐ。

「ララのことを分かっていないのは霞美さんのほうじゃない!分かったような気になって、自分の気持ちをみんなに押し付けてるだけ!」

「気持ちを押し付けてるのは、あなたたちじゃない!」

 力だけでなく、言葉さえも拮抗するジュンと霞美。霞美が振りかざしたトリニティクロスの一閃が、ジュンの体に叩き込まれる。

「ぐっ!」

 痛烈な衝撃を受けて突き飛ばされるジュン。だが彼女は、駆けつけたスバルとマコトに受け止められる。

「大丈夫、ジュン!?

「スバルさん・・私は大丈夫です・・それより、霞美さんを!」

 呼びかけるスバルにジュンが答える。マコトが霞美を鋭く見据える。

「僕も今のアンタみたいに、壊すこと以外に何もなかった・・だから僕はこの手で、お前のその力を壊す・・・!」

「やっと本性を現したんだね・・・!」

 いきり立つマコトが、冷徹に呟く霞美に飛びかかる。

「何とでも言え!もう理屈ぬきでやろうじゃないか!」

 言い放つマコトが、魔力を込めた拳を繰り出す。打撃は霞美の発するオーラに防がれるも、そのしょ重みと衝撃が彼女に刺激を与えていた。

「マコト、力押しで行ってる・・でも真っ向からじゃ、霞美さんの石化を受けかねない・・・!」

「あたしたちも援護するしかないね・・・行こう、ジュン!」

 毒づくジュンに呼びかけるスバル。

「ちょっと待ちなさい、2人とも。あたしたちもいるんだからね・・」

 そこへ声をかけてきたのはティアナだった。クオンたちも臨戦態勢に入っていた。

「僕が援護するよ、ジュン。僕たちの思いと願いは、絶対にあの人に伝えられる・・」

「クオン・・そうだね。霞美さんに、私たちの気持ちを伝えよう・・」

 呼びかけるクオンに、ジュンが微笑んで頷きかける。

「アタッカーは6方向に展開して突撃。他は6人を援護する・・相手は強力よ・・油断しないで!」

「了解!」

 ティアナの呼びかけを受けてジュンたちが答える。アタッカーであるジュン、スバル、クオン、エリオ、ナディア、ロッキーが飛び出し、マコトと交戦している霞美を包囲する。

「マコト、みんなで戦おう!時空管理局の局員に協力するんじゃなくて、みんなを守るために!」

「ジュン・・・分かった!」

 ジュンの呼びかけを受けて、マコトが霞美の繰り出した一閃をかわして上に飛び上がる。

 マコトの姿が背後の太陽の光に紛れる。その光に、霞美が一瞬眼をくらまされる。

 だが霞美はすぐにマコトに視線を戻す。彼女はトリニティクロスを振りかざし、漆黒の一閃をマコトに放つ。

 だが光刃がぶつかったはずのマコトの姿が突如消える。

 その瞬間、ティアナとネオンが放った射撃が霞美に直撃した。光刃を受けたのは、ティアナが発動したフェイクシルエットによるマコトの幻影だった。

 だが霞美への攻撃はこれで終わりではなかった。射撃の衝撃で魔力を分散された彼女は、レイが発したバインドに体を拘束される。

 身動きが徐々に封じ込められていく霞美。キャロの指示により、フリードリヒが霞美に向けて炎を吹き付ける。

 その炎を浴びて、霞美が顔を歪める。無防備の彼女がダメージを覚えた証拠だった。

 そこへクオン、エリオ、ロッキーが飛びかかり、スクラム、ストラーダ、ブレスセイバーによる突きを叩き込む。

「ぐっ!」

 魔法の刃を体に突き立てられて、霞美がうめく。

「今だよ、ジュン!」

 クオンが呼びかけると、ジュン、スバル、ナディアが霞美に飛びかかる。上空からマコトも飛び込んできた。

「止める!あなたの暴走を、私たちが止める!」

「私がここで倒れたら、ララが・・・ララが!」

 ジュンが言い放った瞬間、霞美が憎悪を強める。それに呼応して彼女をまとう漆黒のオーラが放出される。

「何っ!?

 そのオーラでスバルたちが突き飛ばされる。踏みとどまるジュンだが、突進の勢いを殺されてしまう。

 それでも諦めようとしないジュンに、霞美が立ちはだかる。

「あなたも私たちを利用して、傷つけていくんだね・・・」

 霞美がジュンに向けて、魔力を込めた右手を叩き込む。その衝撃でジュンが突き飛ばされる。

「ぐあっ!」

「ジュンちゃん!」

 悲鳴を上げるジュンに、ネオンが悲鳴を上げる。霞美の攻撃でジュンが海に投げ出されたかに思われた。

 だが海沿いでジュンの体が受け止められる。

「えっ・・・!?

 ジュンも何が起こったのかすぐには分からなかった。だがそれを確信すると、ジュンは戸惑いを覚えた。

 ジュンを受け止めたのは、石化から解放されたえりなだった。地球に駆けつけたえりなは、ジュンに微笑みかける。

「ジュン、大丈夫?」

「えりな、さん・・・!?

 えりなに声をかけられるジュンだが、困惑のあまりに言葉が返せなくなっていた。

「別に幽霊でも幻でもないよ。シャマルさんのおかげで、元に戻れたんだから・・」

「ホントに・・ホントにえりなさんなんですね・・・」

 苦笑いを見せるえりなに、ジュンがようやく喜びの笑みを浮かべた。2人にスバル、明日香、なのはが駆け込んできた。

「えりな、本当に大丈夫なの・・?」

「はい・・心配かけてすいませんね・・」

 なのはが訊ねると、えりなが微笑んで答える。

「どうして戻れたの?私たちの力でも解けなかったのに・・」

「シャマルさんのおかげだよ。でも詳しい話は後回しにしたほうがいいかも・・」

 明日香が疑問を投げかけるが、えりなが霞美に視線を向ける。彼女の登場に霞美は驚きを感じていた。

「どうして・・あなたたちは、私が止めたのに・・・!?

「私たちは、何もない世界にじっとしているわけにいかないの・・・」

 声を荒げる霞美に、えりなが真剣な面持ちで言いかける。

「どんなに辛くても、悲しくても、お互いに支えあう優しさと絆で乗り越えられる・・お互いを強くしていくことができる・・・」

「おめぇみてぇに壊してばかりいたって、自分をもっと辛くするだけだぜ。」

 えりなに続いて、駆けつけた健一も声をかけてきた。

「イヤなものを壊さないと、それこそみんなが辛くなる・・どうしてそれが分からないの・・・!?

「口で言っても分かんねぇっていうなら、体で分からせるしかねぇってことだ・・そんなに自分が正しいなら、そうだってオレたちに教えてみせろよ!」

 声を上げる霞美に対し、健一が不敵な笑みを見せる。

「リミッターは解除されています。だから私たちも全力でやれます・・・!」

「うん。でもムチャしないでね。周りにも危害が及ぶわけにいかないから・・」

 臨戦態勢に入るえりなに、なのはが注意を促す。

「そういうあなたも、十分に気をつけてくださいよ・・」

 えりなはなのはに言葉を返すと、ブレイブネイチャーを構える。

「行くよ、ブレイブネイチャー・・フェニックスモード!」

Phoenix mode,awekening.”

 えりなの呼びかけに答えるブレイブネイチャーが、フェニックスモードに形状を変える。炎の槍と化したデバイスを、彼女は力強く握り締める。

「まずは連携でたたみかけよう。取り囲んで攻め立てよう・・」

「この期に及んで様子見かよ・・でも近いうちに全力全開、決めとこうぜ・・・!」

 えりなの呼びかけを受けて、健一が先行して霞美の後方に回り込む。明日香と玉緒も上空に飛び上がり、えりなも霞美を鋭く見据える。

「止めるだけじゃダメだってことなの!?・・・だったらもう2度と悪いことができないように、消してあげないと・・・!」

 苛立ちを膨らませる霞美が、トリニティクロスを振りかざしてえりなに漆黒の光刃を放つ。だが飛びかかったえりなが突き出した炎の刃は、漆黒の刃を貫く。

 眼を見開いた霞美が、飛び上がってえりなの突きをかわす。だが上空では明日香と玉緒が砲撃を仕掛けようとしていた。

Malti force.”

 玉緒が放った大量の光弾が霞美を取り囲み、いっせいに飛び込む。霞美からあふれる漆黒のオーラが、光弾を防いでいく。

Drive charge,infinite splash.”

 その間にも、明日香は魔力を集束して強化させていく。

「海神激流!スプラッシュスマッシャー!」

 その魔力を一気に解き放ち、明日香が大津波のような砲撃を発射する。その津波に飲み込まれた霞美。砲撃とオーラが反発して、電気のような衝撃を巻き起こす。

「今だよ、えりな、健一!」

 明日香が呼びかけると同時に、健一とえりなが飛びかかってきた。

Ultimate strush.”

Phoenix rancer.”

 健一の強力な一閃と、えりなの炎の突きが霞美に向けて繰り出される。2つの刃がオーラを突き破り、霞美の体に食い込んだ。

「もうやめよう、霞美さん!間違っても、私たちはやり直せる!」

「間違いをしたあなたたちに言えることじゃない!」

 呼びかけるえりなだが、霞美はその言葉をはねつける。彼女は全身から魔力を放出して、えりなたちを突き飛ばす。

「壊さないと・・あなたたちは、絶対に壊さないと!」

 霞美が魔力を強めて、えりなに向けて漆黒の一閃を放つ。えりなは回避しようとせず、ブレイブネイチャーを構えて受け止める。

「えりな!」

 声を荒げる健一の見つめる先で、えりなが力を込めて霞美の光刃を打ち砕く。攻撃を破られたことに、霞美が眼を見開く。

「あなたをこのまま放っておいたら、何もかも壊れてしまう・・だから私たちは、絶対に負けられない!」

「人を悪魔みたいに・・・でも、本当の悪魔はあなたたちのほうだよ!」

 決意と怒りの言葉を言い放つえりなと霞美。えりなたちの参戦により、戦いは過激化に向かおうとしていた。

「やめてください、霞美さん!」

 そこへ聞き覚えのある声が飛び込み、霞美が動きを止める。彼女が恐る恐る振り向いた先には、アクシオのそばにいるフューリーの姿があった。

「フューリー!?・・・フューリーなの・・・!?

「やめてください、霞美さん!こんなの、霞美さんらしくないですよ!」

 困惑する霞美に、フューリーが悲痛さを込めて呼びかける。

「霞美さんは優しく、そして勇気のある人です・・私とララさんを助け、家族として迎えてくれたじゃないですか・・・それだけじゃありません・・困っている人を守り、悪い人に逃げずに立ち向かっていく・・それが霞美さんじゃないですか!」

 呼びかけてくるフューリーに、霞美の心は揺れる。フューリーが呼び止めてくれると、彼女は思っていなかったのである。

「こんなことするの、全然霞美さんじゃないです!・・お願いです、霞美さん・・やめてください・・攻撃を止めてください・・・!」

「何を言ってるの・・・この人たちは、ララを傷つけたんだよ・・何とかしないと、みんながララみたいに・・・」

「違います!みなさんは、私を受け入れてくれました・・ララさんを攻撃したのも、ララさんが先に攻撃して、みなさんに迷惑をかけてしまったから・・!」

「どうしてそんなこというの!?どうしてララを傷つけた人たちの味方をするの、フューリー!?

 呼びかけるフューリーに霞美が怒号をぶつける。これに困惑し、フューリーが言葉を詰まらせる。

「裏切るの、フューリー・・・あなたまで、みんなの心を傷つけるっていうの・・・!?

「何を言っているんですか、霞美さん!?私がそんなことするわけないじゃないですか!」

「待っててね、フューリー・・すぐにその人たちをやっつけて、あなたを助けてあげるから・・・」

 フューリーの言葉に耳を貸さず、霞美が攻撃を再開する。トリニティクロスから繰り出される一閃が、えりなたちを狙い、アクシオやフューリーにも飛び火する。

「危ない!」

 アクシオがフューリーを抱えて飛び上がり、霞美の攻撃をかわす。

「大丈夫、フューリー!?

「は、はい・・私は大丈夫です・・・」

 呼びかけるアクシオに、フューリーが困惑を抱えたまま答える。

「おめぇ・・アイツはおめぇを心から信じてるっていうのに!」

 霞美の態度に怒りをあらわにする健一。力を振り絞った彼の一閃が繰り出され、展開されるオーラごと霞美を突き飛ばす。

 激化する攻防の中、アクシオはフューリーに呼びかける。

「ユニゾンするよ、フューリー!霞美を助ける!」

「アクシオさん・・・分かりました!私もやります!」

 頷きかけるフューリーが、アクシオとのユニゾンに意識を傾ける。

「ユニゾンイン!」

 アクシオの体にフューリーが溶け込んでいく。アクシオのまとう騎士服の青が薄まり、逆に髪の水色が青く濃くなっていく。

「ありがとうね、フューリー・・これであたしも、全力全開でやれる・・・!」

 フューリーへの感謝の言葉を口にすると、アクシオが霞美に飛びかかる。

「吹き荒れよ、水の息吹!」

Wassers atem.”

 アクシオが構えたオーリスの刀身に水流が渦巻く。その水流をまとったまま、彼女は霞美に向けてオーリスを振り下ろす。

 アクシオとフューリーの力は霞美のオーラと相殺するに留まった。だが霞美はフューリーの想いを込めたこの力に動揺していた。

「フューリー・・・どうして・・・!?

 フューリーの気持ちに揺さぶられる霞美。動揺のあまりに、彼女からあふれるオーラも霧散し始める。

「間違いない・・フューリーの気持ちが確実に伝わっている・・霞美も無意識にそれを感じて、カオスコアの魔力も不安定になってる・・」

 アクシオも霞美の異変を悟っていた。アクシオの中にいるフューリーも、戸惑いを募らせていた。

「えりな、そろそろレゾナンス、行くぞ・・・!」

 健一の呼びかけに頷き、えりながブレイブネイチャーを構える。シェリッシェルによって、ブレイブネイチャーとラッシュが結合する。

 ブレイブネイチャー・レゾナンスを手にするえりなと健一。2人は互いに頷きかけると、霞美に眼を向ける。

「消滅させないように気をつけろよ・・・!」

「分かってる・・・行くよ、健一!」

 声を掛け合うと、健一とえりなが意識と魔力を集中させていく。

「熱血一貫!」

「共鳴必勝!」

「フェニックスランサー!」

 えりなと健一が霞美に向かって突っ込む。まばゆい光となった刃を、霞美は迎え撃つ。

「私は・・私は絶対に負けられない!」

 霞美は込み上げてくる迷いを振り切ろうと魔力を放出する。漆黒のオーラをトリニティクロスの刀身に集束させる。

 白と黒の2つの刃が衝突し、激しく火花を散らす。その余波が周囲にも広がっていく。

「みんな、下がって!」

 なのはが呼びかけ、ジュンたちが後退していく。その間にも、えりな、健一、霞美の激突は拮抗していた。

「大人しくしていればよかった・・悪さをしなければ、消えることもなかったのに!」

「あなたが振りかざしているのは、独りよがりな正義だよ!自分だけで考えないで、みんなの声に耳を傾けて!」

「傾けても、傷つける言葉しか聞かせようとしないじゃない、あなたたちは!」

「そうやってあなたは決め付けて、聞こうとしていない!」

 言葉をぶつけ合う霞美とえりな。やがて双方の力の反発が高まり、ともに突き飛ばされる。

「ちっ!相殺されたか!」

 攻撃が通用しなかったことに、健一が毒づく。

「でもやっぱり安定できてる・・シェリッシェルのおかげだね・・」

 だがえりなはこの状況下でも落ち着いていた。霞美の思いを真摯に受け止めつつ、その暴走を泊めようと懸命になっていた。

「このまま続けよう、健一!私たちなら、あの力を止められる!」

「まったくおめぇは・・1度思い込んだら揺るがねぇんだから・・・」

 呼びかけるえりなに、健一が苦笑を浮かべる。

「待ってくださいよ、2人とも。後から来て見せ場を持っていくのはなしですよ。」

 そこへジュンが2人の前にやってくる。

「霞美さんを守りたい気持ちは、私も同じです・・私にもやらせてください・・・!」

 えりなに呼びかけるジュン。さらにスバルとマコトもやってきて、明日香となのはも降下してくる。

「たった1人を守れないんじゃ、みんなを守ることなんてできない・・・」

「地球は僕たちの故郷だ・・どんな理由があったって、地球を壊されてたまるか!」

 スバルとマコトが自分の気持ちを口にする。

「どんなに辛いことだって、みんなで支えあえば乗り越えられる・・・!」

「みんな一生懸命に生きてる・・あなたにだって、それだけの気持ちと、可能性を秘めている・・・!」

 明日香となのはも言いかける。クオンたち、ティアナたち、さらにはフューリーさえも霞美を思い、彼女と対峙していた。

「私はララのために戦う・・たとえ世界の全部が敵になっても、私は絶対に諦めない!」

 霞美は言い放つと、全身から漆黒のオーラを放出する。彼女は周囲にある微弱な魔力の粒子をも取り込み、回復に当てていた。

「コイツ、性懲りもなく・・!」

 えりなたちが回避する中、ヴィータが霞美の行動に毒づく。

「いろんなところから魔力を取り込んで、回復してしまう・・これじゃきりがない・・!」

「一気に追い込むしか方法がないってこと・・・!?

 玉緒とネオンが声を荒げる。霞美が球状の障壁を展開して、ゆっくりと上昇する。

「こうなったら・・・私が霞美さんの心の中に入ります!」

「何っ!?

 えりなが口にした言葉に、健一が声を荒げる。

「霞美さんの心を沈めることができれば、暴走を止められるかもしれない・・私なら、元々カオスコアだった私ならできるかもしれない・・」

「でもただでさえ精神リンクは危険がつきものの行為・・しかも今の霞美さんは、体も心も完全にカオスコアに汚染されている・・」

「下手したらえりなちゃんの心が壊れちゃうんだよ!ダメだよ、そんなの!」

 えりなの提案に明日香と玉緒が反論する。しかしえりなの気持ちは変わらない。

「ありがとう、明日香ちゃん、玉緒ちゃん・・でもこのまま戦っても、いつか体力がなくなってしまう・・その前に地球が壊れてしまう危険が高い・・そうなる前に・・・!」

「えりな・・・仕方ねぇな。オレも付き合うぜ。」

 決意を秘めるえりなに対し、健一が気さくに言いかける。

「でも健一まで一緒にやらなくても・・・」

「私も一緒に行かせてください!」

 困り顔を浮かべるえりなに、ジュンも声をかけてきた。

「霞美さんは大切な人を守るために力を使っているんです・・ただそれが間違ったほうに向いているだけなんです・・そのことを、心の奥まで伝えないといけないんです!」

「ジュン・・健一・・・そこまでいうなら、最後までしっかりとついてきてね・・・!」

 ジュンと健一の意思を汲み取って、えりなが微笑んでブレイブネイチャーを構える。その柄を健一とジュンもつかむ。

「えりながそこまでいうなら、協力しないわけにはいかないね・・」

「あたしたちが援護するから、迷わずに突っ込んで!」

 明日香が微笑をこぼし、玉緒が笑顔で呼びかける。

「僕もジュンをサポートさせてもらうよ。活路を開いてやる!」

 マコトもえりなたちの援護に乗り気になっていた。

「やっとあたしも大勝負に参加できるようになったからね。あたしにも一矢報いさせてよね。」

 続けてアクシオもえりなたちに言いかける。ヴィッツとダイナも援護に赴こうとしていた。

「集中して、えりな、健一、ジュン・・絶対に妥協しないで、全てを霞美さんに叩き込むつもりで・・・!」

「明日香ちゃん、みんな・・・ありがとうね・・・」

 呼びかけてくる明日香に、えりなが感謝の言葉をかける。

「では私たちが先陣を切る・・後は頼むぞ!」

 リインフォースとユニゾンしているヴィッツが、霞美に飛びかかる。アクシオも、アギトとユニゾンしているダイナも続く。

「散開しろ!3方向から血路を開く!」

「任せといて!」

 ヴィッツの呼びかけにアクシオが答え、ダイナが頷く。

「一閃必殺!天光刃!」

「吹き荒れよ、水の息吹!」

「黒炎必砕!ブラックブレイク!」

 ヴィッツ、アクシオ、ダイナがそれぞれ、光と稲妻、水と風、炎の一閃を繰り出す。3方向からの異なる属性の魔法斬撃に、霞美はオーラで防ぐのも容易ではなかった。

 3人の一閃に耐え切れず、霞美が心身ともに揺さぶられる。だが彼女はすぐに魔力を放出して、ヴィッツたちを吹き飛ばす。

「このくらいで、私は負けたりしない・・・!」

 ヴィッツたちを退けて、霞美が言い放つ。だが彼女への攻撃は終わっていなかった。

 スバルとマコトが、霞美に向かって全速力で駆け抜けてきていた。

「こうなったら止めてしまえば・・・!」

 霞美が返り討ちにしようと左手をかざし、石化の光を放とうとした。だが玉緒が放った「光の楔」が、霞美の体を絡め取った。

「その力を使わせるわけにいかないよ!」

 言い放つ玉緒に霞美が眼を見開く。身動きの取れない彼女に、スバルとマコトが迫る。

「これが僕の全力の光・・ビックバン・ブレイク!」

 マコトが霞美に向けて、光と化した魔力を集束させた拳を叩き込む。その一撃によって障壁となっていたオーラは粉砕され、霞美は体にも痛烈なダメージを受ける。

 マコトの最強の技「ビックバン・ブレイク」。魔力を光のエネルギーに変えて右の拳に集束させ、さらに超振動を加えることによって、絶対的といえる破壊力をもたらす。ただし右手への負担が大きいため、マコトは使うべきと判断したとき以外は使わないようにしている。

「ぐっ!」

 うめく霞美が吐血し、たまらず後ずさりする。その彼女の懐に、スバルが飛び込んできた。

「一撃必倒!ディバインバスター!」

 スバルが繰り出したゼロ距離攻撃が、霞美の体に叩き込まれる。その衝撃で霞美のまとっていた漆黒のオーラが弾けて霧散する。

「海神激流!スプラッシュスマッシャー!」

 そこへ明日香が魔力の一点集中を伴った砲撃魔法を繰り出す。スバルとマコトが回避したところへ砲撃が飛び込み、霞美に襲い掛かる。

 声にならない悲鳴を上げる霞美。思うように動くことができず、霞美がその場にひざを付く。

「今だよ、えりな!」

 明日香が飛翔しながら呼びかける。これを機に、えりな、健一、ジュンが霞美に向かって飛び込んでいく。

(お願い、霞美さん・・私たちに、心を開いて・・・!)

 霞美への気持ちを切実に募らせるジュン。ブレイブネイチャー・レゾナンスの光の刃と、霞美の漆黒の魔力。白と黒が入り混じり、4人を包み込んでいった。

 

 

次回予告

 

安らぎある世界を守ろうとする少女。

幸せに満ちた世界を築こうとする少女。

2つの心は入り混じり、1つの答えを導き出す。

その先で、少年少女を待っているものとは?

 

次回・「ミンナノココロ」

 

全ての願いが、闇を消す光となる・・・

 

 

作品集

 

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