魔法戦記エメラルえりなResonance
第10話「トリニティ」
セヴィルが仕組んだ暗躍部隊によるクラナガン襲撃。だがそれはアレンたちの迎撃に阻まれた。
アレンはある部隊を伴って、クラナガンの防衛に当たっていた。それは、かつて「ロア」のメンバーだった者たちである。
シグマ・ハワード、ジュリア・ファミリア、ギーガ・タイタンをフォワードとし、後方には医務官としてポルテ・セラティが控えている。
「久しぶりの大きな任務だが、腕はなまってはいないようだ・・」
「こういうときのために訓練を続けてきたのに、なまってたらシャレになんないって・・」
淡々と呟きかけるシグマに、ギーガが呆れて肩を落とす。
「2人とも集中して。敵はまだいるのだから・・」
「分かっている。まだ敵の攻撃は終わってはいない・・」
そこへジュリアが声をかけ、シグマが答える。
「ポルテ、敵の動きはどうなっている?」
“北北西25、路地に2人隠れているわ。”
シグマの呼びかけに、ポルテが念話で答える。暗躍部隊は予期せぬ迎撃を受けたことで動揺を隠せなくなり、魔力を抑えて感知を避けることに気が向きすぎてしまい、レーダーには彼らの位置が筒抜けになっていた。
「他はレーダーを気にして、魔力を抑えるのがおろそかになっているわね・・これでは自滅同然ね。」
「被害を最小限に食い止めつつ、イースを拘束するぞ。」
ジュリアの言葉に続けるように、シグマが指示を送る。3人が散開して、イースの暗躍部隊の残党への攻撃を仕掛けた。
アレンが率いる彼らこそが、特別編成部隊「トリニティ」である。
トリニティの活躍により、イースの暗躍は失敗に終わった。
暗躍部隊の拘束という事実を聞かされ、セヴィルは愕然となっていた。
「まさかクラナガンへの攻撃が防がれるとは・・・!」
「私たちの力を甘く見たのが敗因です・・あなたたちの企みは、私たちが必ず阻止します・・」
うめくセヴィルに、明日香が真剣な面持ちで言いかける。
「ヴィッツたちの戦いも終わりを迎えそうだよ・・」
フェイトが言いかけて、ヴィッツたちのほうに眼を向ける。
だがそのとき、戦況を見守っていたえりなが、突如力なく落下を始めた。
「えりな!?」
なのはが慌てて降下して、えりなを受け止める。えりなは顔色が悪くなっており、余裕がなくなっていた。
「しっかりして、えりな!?・・まさか、まだ目が治っていないんじゃ・・・!?」
「やっぱり、黙って見ているなんてできなかったです・・健一やシャッハさんに強く止められたんですけど・・」
声をかけるなのはに、えりなが苦笑いを見せる。彼女の言い分に、なのはが呆れて肩を落とす。
「もう・・あなたは相変わらずムチャばかりするんだから・・・」
「ムチャはエースの専売特許になってますよ・・なのはさんも口ではムチャを嫌うようなこと言っても、まだけっこうムチャしてますよ・・」
「それだけ口数が多いんじゃ・・心配して損だよ・・」
憎まれ口を叩くえりなに、なのはは呆れ果てていた。
「すぐにデルタ本部に戻るよ・・ユウキさん、高町なのは、帰還します!」
“分かった。シャマルさんとアクシオに任せるんだ。”
なのはの呼びかけを受けて、ユウキが指示を出す。
“他のみんなはトリニティと合流して、街の防衛に当たってくれ。オレもヴィッツたちの援護のため、出撃する。”
さらなる指示を出して、ユウキも前線に赴くのだった。
ヴィッツに代わってリオに戦いを挑む健一。だがリオはヘルフレイムの多用のため、これ以上の戦闘を危惧していた。
(もうここまでですね・・ディオン、引き上げましょう!)
(リオ・・そうだな。もはややむを得ない・・撤退だ!)
リオの呼びかけを受けて、ダイナと交戦しているディオンが答える。2人は戦いを中断して、健一とダイナから離れる。
「待て!逃げる気か!?」
「この勝負、次の機会に預けます!」
呼び止める健一にリオが言い返す。
「私はリオ。あなたは?」
「健一。辻健一だ・・・」
互いに名を名乗るリオと健一。そしてリオはディオンとともにこの場を離れた。
(すみません、セヴィルさん・・・あなたの仇、必ずとります・・・)
セヴィルの無念を抱えて、リオたちは撤退していった。
「逃がすことになったか・・・ヴィッツ、リイン、無事か!?」
「私は大丈夫だ。」
「私も平気です。ですがシグナムさんとザフィーラさんが・・」
健一の呼びかけにヴィッツとリインフォースが答える。シグナムが疲弊し、ザフィーラも手傷を負っていた。
「それよりえりなは大丈夫なのか?目は治ったのか?」
「治った・・っていいたいとこだけど、完璧には治ってない。オレの言うことも聞きゃしねぇ・・」
ヴィッツの質問に、健一が呆れながら答える。えりなはなのはに連れられて、デルタ本部での療養を課せられることとなった。
まだ目が完治していないまま出撃してしまったえりな。彼女はデルタ本部内の医務室のベットで横たわっていた。
「もう、これでは庇いきれませんよ・・」
えりなのムチャにシャマルも呆れていた。
「8割がた治っていたのに、症状を悪化させてしまいましたよ・・・」
「そうよ。ケガ人はケガを治してくるまで出しゃばらないの。」
シャマルに続いてアクシオも不満を口にしてきた。
「すみません・・治るまで大人しくしています・・・」
反論することができずに頭を下げるえりな。そこへ明日香、玉緒、健一、アレン、なのはがやってきた。
「えりな、本当に大丈夫なの・・?」
「明日香ちゃん・・もう治るまで休んでるよ。アハハハ・・・」
心配の声をかける明日香に、えりなが苦笑いを浮かべる。
「これからは自分たちの休養も兼ねて、僕たちはえりなを見晴らせてもらうよ。またムチャするようなら、今度は全員全力で止めに入るから。」
アレンの言葉を受けて、えりなは気落ちしてしまった。その反応を見て、明日香たちが笑みをこぼす。
「イースに関する情報はまだまだ少なすぎる。そこであの人に頼ることにしたの。」
「あの人って・・もしかして彼のことですね。」
なのはが切り出した言葉に玉緒が答える。
「となると、無限書庫は慌しくなっているかな・・」
健一も続けて呟きかけていた。
時空管理局が管理しているデータベースが置かれている無限書庫。書庫には書物を収めた棚が縦横無尽に広がっており、ひとつの資料を探すのもかなりの重労働である。
その司書長を務めているのは、ユーノ・スクライアである。ユーノはなのはの親友であり、彼女が魔導師となるきっかけとなった人物である。リッキーの親戚であり、彼の魔法の師でもある。
ユーノはユウキからの連絡を受けて、イースに関する情報を探していた。
「お久しぶりです、ユーノさん。僕たちも手伝いと護衛を任されてきました。」
その無限書庫を訪れた1人の青年。えりなの親友であり、彼女に魔導師の道を歩ませるきっかけを作った人物、リッキー・スクライアである。
リッキーの隣には1人の少女がいた。明日香の使い魔であり相棒のラックスである。
「久しぶりだね、リッキー、ラックス。無限書庫でも収められている情報が少なくて苦労しているよ・・」
「そんなに謎だらけなのかい、そのイースっていうのは?」
言いかけてくるユーノを前にして、ラックスが疑問を投げかける。
「時空管理局でも、イースに関する情報は収集が難しかった。無限書庫に収められているものでも、数えられるほどでしか・・」
「そうですか・・・ですがないよりは全然いいです。情報をできる限り集めて、対策を練り上げましょう。」
ユーノの言葉を受けて、リッキーが呼びかける。
「あたしも手伝うって。難しいことはよく分かんないけど、荷物運びとかならやれるからさ。」
「ありがとう、リッキー、ラックス・・それじゃお言葉に甘えて手伝ってもらおうかな・・」
意気込みを見せるラックス。2人に後押しされて、ユーノは笑顔を見せた。
クラナガンにおける被害の後処理を進めていたトリニティ。そこへユウキがやってきて、シグマと対面していた。
「久しぶりだな、神楽ユウキ・・お前の保護がなければ、我々は平穏を取り戻すことができなかった・・」
「こちらこそ久しぶり、シグマ。貫こうとしている君たちの信念を壊したくなかった。その一心でオレたちは君たちの保護を買って出たわけさ。」
真剣な面持ちで言いかけるシグマに、ユウキが気さくに答える。2人は固い握手を交わし、街を見回す。
「不思議なものだ・・かつて復讐の刃を向けていた時空管理局に身を置き、クラナガンを守っているのだから・・」
「オレたちが守っているのは、管理局とかクラナガンといった範囲の狭いものじゃない。たくさんの世界を守っていきたいっていう気持ちがある。」
「そういった通ずる部分があったからこそ、我らは手を組めたんだ・・」
「本当に大切なものが何なのか。オレたちはそれを理解して、守っていかなくちゃいけない・・」
互いに決意を口にするシグマとユウキ。彼らは守るべきものが何なのかを気付かされ、そのために全身全霊を賭けてきたのである。
「あ、そうだ。伝え忘れていたことがあったんだ。」
ユウキが切り出した言葉に、シグマが眉をひそめる。
「マコトとレイが、地球でスバルたちと合流したよ。ジュンも一緒だ。」
「マコトとレイが?・・そうか・・・」
ユウキからの報告を受けて、シグマが喜びの微笑を浮かべた。旅立った仲間との再会が間近になったと感じて、彼は嬉しかった。
「大丈夫。スバルもジュンもクオンたちも、強くて優しいヤツばかりだ。信じてくれていい・・」
「あぁ。お前たちは、信頼に足る存在だと思っている・・・」
絆を深めていくユウキとシグマ。かつてロアと呼ばれていた面々は、デルタや時空管理局に欠かせない支えとなっていた。
新暦79年5月7日
ソニカとの厳しい戦いを潜り抜けたジュンたち。彼らはイースの幹部の力に緊張を募らせていた。
「あのソニカという人、手強かった・・ホントに油断できない・・」
スバル、ティアナとともに調査に出ていたジュンが、ソニカを警戒していた。
「心配ないって。今度はみんな一緒に力を合わせればいいんだから♪」
「相変わらず能天気なんだから、スバルは・・」
明るく振舞うスバルに、ティアナが呆れてため息をつく。
「でもミッドチルダでも、イースの襲撃があったみたいだね・・でもなのはさんたちがいるから大丈夫だよね。」
「それにそろそろえりなさんも戻ってくる・・」
スバルとジュンが期待を募らせる。そこへティアナが真面目に言いかける。
「あたしたちにはあたしたちの仕事がある。頼りきりになるのはよくないわよ。」
「分かっています。私は私の意思でここにいます。イースからみんなを守りたいと思ったから・・」
ジュンがティアナに向けて自分の気持ちを告げる。時空管理局局員と一般の人間。ジュンはその狭間にいるのである。
「そういうのもありかもしれないわね・・みんな自分の意思で決めて、あたしたちはこうしてイースと戦い、地球を守っている・・」
「頑張っていこう♪ジュンの決心は、ジュンだけのものじゃないから♪」
ティアナが言いかけ、スバルが笑顔を見せる。2人の気持ちを汲み取って、ジュンも笑みを見せた。
短期大学での授業を終えて帰宅した後、霞美はララとフューリーを連れて散歩に出ていた。いろいろな場所に行ってみることで、ララの記憶に関することが見つかるかもしれないという、ジョンのアドバイスだった。
「ありがとう、霞美・・ララのために・・・」
ララが微笑んで、霞美に感謝の言葉をかける。霞美とフューリーとの生活を経て、ララは難なく会話することができるようになった。
「いいよ、ララ・・ララを助けたい、守りたいって思ったから・・私がそう決めたから・・・」
「私もララさんと霞美さんのことを大切に思っています。2人とジョンさんに会えたことを、とても嬉しいです。」
霞美とフューリーが自分の気持ちを率直に告げる。その優しさを感じ取って、ララが微笑みかける。
「ありがとう・・本当にありがとう・・・」
再び感謝の言葉をかけるララ。
「さて、今日は街に出てみようかな。少し騒がしいところで、ララにはちょっとうるさいかもしれないけど・・」
「ううん、大丈夫・・霞美がそばにいるから・・・」
霞美の呼びかけにララが微笑みかける。こうして3人は街に繰り出すことになった。
平日であったものの夕方に近い時刻であったため、街は賑わいを見せていた。
「これは・・はぐれないように気をつけないといけないね・・・」
その人込みを見回して、霞美が苦笑いを浮かべる。
「ララ、フューリー、はぐれないように気をつけて・・」
霞美の呼びかけにララとフューリーが頷く。
(近くのレストランかファーストフードに立ち寄ったほうがいいかな・・・)
「霞美さん、大変です!ララさんが!」
考え込んでいたところでフューリーに声をかけられて、霞美が我に返る。彼女は丁度、人の波に飲み込まれていくララを目撃する。
「ララ!」
慌てて追いかけようとする霞美だが、ララの姿は人込みの中に消えていった。
「フューリー、バックの中にしっかり入っていて。」
「分かりました。ララさんをお願いします。」
霞美の呼びかけにフューリーが答える。霞美はララを追い求めて、人込みの中に飛び込んでいった。
調査を進めていくうちに、街に踏み込んでいたジュン、スバル、ティアナ。にぎわう街中にジュンたちは当惑していた。
「やっぱりいつ来ても、街には驚かされちゃうね・・」
「ビックリしてる場合じゃないって・・街はいつもミッドチルダで体感してるじゃない・・」
照れ笑いを見せるスバルに、ティアナが呆れてため息をつく。
「でもこれだけ人が多いと、眼と足で探すのに限界がありますよ。ミッドチルダのように魔法は使えませんし・・」
「それでもあの騎士を探すしかないわ。高い建物の最上階から探ってみるわよ。」
不安を口にするジュンに、ティアナが呼びかける。
「手分けして探すわよ。連絡は念話で行うこと。いいわね。」
「分かりました・・連絡を取り合って、後で合流しましょう。」
ジュンたちは呼びかけあってから、散開していった。魔力が発せられておらず、彼女たちは霞美の居場所を特定するに至っていなかった。
(何か事件が起これば、騎士が見つかる可能性が大きくなるんだけど、そんなのに頼るわけにいかないよね・・)
内心呟きかけるスバルが苦笑いを浮かべていた。
(それにしても、ホントにすごい人の数だね・・ここはこの波から出ないと・・)
人込みに苦慮していたスバルは、そこから脱出した。その先のファーストフード店の前で、彼女は驚きを覚えた。
彼女と同時に、ある少女も人込みから飛び出してきた。その顔はスバルそっくりだった。
「あたしと同じ・・どうなってるの・・・!?」
たまらず驚きの声を上げるスバル。少女も彼女を見つめて、きょとんとしている。
「ララと同じ顔・・もしかして、ララの記憶に関係している・・・?」
「えっ・・・?」
少女、ララが口にした言葉に、スバルが眉をひそめる。
「もしかして君・・記憶喪失っていうの・・・?」
スバルが問いかけると、ララが小さく頷く。
「記憶がない・・困っちゃったなぁ・・・何か覚えていることとかないかな・・・?」
「霞美・・霞美が、近くに・・・」
「かすみ?・・その人が君の知り合いなんだね・・・?」
スバルの言葉にララが小さく頷く。
「でもこの人の数じゃ、簡単に見つけられないし・・・確か広場があったはずだよね、近くに・・・」
思い立ったスバルが、広場のあるほうに振り向く。
「とりあえずあの広場に行ってみよう。あそこのほうが見通しがいいし・・」
スバルの案にララが頷く。2人はひとまず広場に移動し、霞美を探すこととなった。
だがそれでも人1人を見つけるのも難しく、逆に見つけてもらうのも不安があった。
「でもここのほうが見通しがいいよね・・・ここで待つことになるけど、いいよね・・・?」
「うん、いいよ・・霞美が見つかるなら・・・」
スバルの呼びかけにララが答える。2人はひとまず広場に留まることになった。
騎士の捜索のため、建物の最上階や屋上から人々を見下ろしていたジュンとティアナ。しかし騎士と思しき顔を見つけられず、ジュンは困惑していた。
(やっぱり難しいよね・・これだけの大人数から、1人を見つけ出すなんて・・・)
完全に困り果てていたジュン。そのとき、彼女は広場にスバルがいるのを発見する。
(スバルさん、何をやってるのよ・・・スバルさん!)
ジュンが不満を抱えたまま、スバルに念話を送る。
(何をやっているんですか!?あの騎士を探してください!)
“あ、ジュンちゃん・・ゴメン、ちょっと迷子がいて・・”
(迷子!?迷子は街の警察に任せればいいんですよ!私たちの仕事は他にあるんですから)
“ホントにゴメン!あたし、ほっとけないから!”
(あっ!ちょっと、スバルさん!・・・もう、しょうがない人・・・)
スバルから念話を打ち切られて、ジュンが肩を落とす。
(ティアナさん・・スバルさんが勝手な行動を・・・)
“えっ!?・・もう、スバルったら・・この年になっても子供なんだから・・・”
ジュンが報告をすると、ティアナの呆れのこもった声が返ってくる。
(私が連れてきます。ティアナさんはみなさんを呼んでください。)
“分かったわ。あのバカをお願いね。”
ジュンの呼びかけにティアナが答える。ジュンはスバルを連れ戻すべく、屋上から降りていった。
霞美を探すララを手伝うスバル。しかし時間がたつにつれて、人の数が増していくばかりだった。
「どうしよう・・逆効果だったかな・・・」
「霞美・・・どこなの・・霞美・・・」
苦笑いを浮かべるスバルと、霞美に会えないことに悲しむララ。
「大丈夫だって!必ず見つけてあげるから!」
スバルがララを励まそうとする。だがスバルは必死さが隠せなくなっていた。
不安を募らせながらしばらく待つと、2人は唐突に声をかけられた。
「何をやっているのですか、スバルさん!?」
声をかけてきたのは、スバルを追いかけてきたジュンだった。ジュンは眼を吊り上げて、スバルに詰め寄ってきた。
「だって、やっぱり放っておけないって!ジュンちゃんもそう思うよね?」
「それは放ってはおけないと私も思いますけど・・・」
スバルの言葉に反論できず、ジュンは困惑する。困っている人を放っておくことは、本来ならジュンにできないことだった。
「待ちなさい、そこの2人!」
そこへ再び声をかけられて、ジュンとスバルが振り返る。街中の人込みをかき分けて、カナが2人に迫ってきていた。
「あの人、この前の・・・!」
「もしかして、あたしたちを捕まえようとしているんじゃ・・・!?」
たまらず声を荒げるジュンとスバル。彼女たちの眼前に、ついにカナがたどり着いてきた。
「また会ったわね・・今度こそ話を聞かせてもらうわよ!」
「こ、怖い・・・」
呼びかけてくるカナに、ララが怯えて震える。それを見かねたスバルが、いきなりカナに飛びついた。
「ジュンちゃんはその子を連れて逃げて!」
「スバルさん、ちょっと!」
スバルの呼びかけにジュンが困惑する。だが迷う時間がないと痛感し、ジュンはやむなくララを連れて、広場から逃げ出した。
「ちょっとあなた!どういうつもりなの!?」
カナにはねつけられて、スバルがしりもちをつく。起き上がろうとしたところで、スバルがカナに手錠をかけられる。
「えっ!?」
「じっくり話を聞かせてもらいますよ、お嬢さん・・・!」
勝気な笑みを見せつけるカナに、スバルは愕然となった。
ララを連れて街の中を駆けていくジュン。スバルが気がかりとなった彼女は、通りの真ん中で立ち止まる。
「スバルさん・・大丈夫なんでしょうか・・・」
不安を募らせて、ジュンがスバルのいるはずの広場に戻ろうとした。
「ララ!」
そこへ声をかけられて、ジュンが足を止める。駆け込んできた少女の姿に、ララが喜びの笑みを浮かべる。
「霞美・・・霞美!」
「えっ・・・!?」
ジュンが驚きを見せる前で、ララが霞美と抱擁を交わす。
「ララ・・やっと見つかった・・見つかって、よかった・・・」
「霞美・・ララ、霞美に会えてよかった・・よかった・・・」
再会の喜びを浮かべて涙する霞美とララ。
「あの・・私のこと、忘れているみたいなんだけど・・・」
そこへ唖然となりながら、ジュンが声をかける。彼女の顔を見た途端、霞美が血相を変える。
「あなた、この前の人・・・!?」
「もしかしてあなた・・・待って!話を聞いて!」
ジュンが慌てて霞美を呼び止める。
「私たちはあなたたちをどうこうするつもりはない。ただ話をしたいだけなの。」
「本当なの?・・本当に話だけ・・・?」
呼びかけるジュンに、霞美が当惑する。するとジュンが微笑んで、霞美に手を差し伸べてきた。
「話してくれれば、私たちがあなたたちを守ることもできる・・だからお願い・・・」
「霞美・・この人がララを助けてくれた・・・」
頭を下げるジュンに続けて、ララが霞美に言いかける。2人の言葉に突き動かされて、霞美はジュンの手を取った。
「ありがとう・・私は春日ジュン。あなたは?」
「霞美。三重野霞美・・よろしくね、ジュンちゃん・・」
誤解を解消し、和解を果たしたジュンと霞美。ララも微笑んで、2人の手に自分の手を添えた。
「あ、ちょっと待っていてください。みんなと連絡を取りますから・・・って、スバルさん・・・!」
霞美に呼びかけたところで、スバルを思い出し、ジュンが愕然となる。
「ホ、ホントに待っててくださいね・・・」
体を震わせながら言いかけるジュンに、霞美とララが頷く。
(スバルさん・・応答してください、スバルさん・・・!)
ジュンが念話で呼びかけるが、スバルからの応答がない。
(もしかして、あの人に捕まってしまったんじゃ・・あの人もけっこうしつこいよ・・・)
「霞美さん・・今度は私の人探しに付き合ってもらうことになりそうです・・・」
「えっ・・・?」
ジュンが切り出した言葉に、霞美が当惑を見せた。
コテージにてレーダー探査を行っていたコロナ。そこへスバルがカナに捕まった報告をジュンから聞かされ、コロナは驚きの声を上げる。
「スバルさんが捕まった!?」
その大声に、小休止を取っていたクオンとネオンがせき込む。
「だ、大丈夫ですか、2人とも・・・!?」
「ぐふっ・・げほっ!・・だ、大丈夫です・・・」
ナディアが心配の声をかけるが、クオンが弁解を入れる。
「それで、スバルさんが捕まったって、ホントなんですか・・・!?」
「本当みたいです・・レーダーを見ながら調べてみたのですが、その人、インターポールの刑事みたいなんです・・・」
ネオンの質問に、コロナが困惑しながら答える。だがその言葉にネオンが疑問符を浮かべる。
「インターポールって何なの?」
「この地球での国際警察。世界規模の事件を担当するって聞いているよ・・」
そのネオンの疑問にクオンが説明する。
「そのインターポールが、あたしたちを怪しいって思ってるってことなの・・・!?」
「少なくてもそれは否定できないかな・・魔法は地球では空想上のものって認識が強いから、話しても信じないのが普通だけど・・・」
「万が一受け入れて、さらに疑問と警戒を植えつけることになっちゃったら・・・」
声を荒げるネオンにクオンが言いかけ、その言葉にナディアが困惑を見せる。
「とにかくティアナさんやエリオさんたちに連絡しましょう。僕たちもすぐに出ましょう。」
「そうだね、クオンくん・・コロナさん、ここをお願いします!」
クオンとネオンがスバル救出のために、コテージを飛び出していった。
「あっ!2人とも待ってください!」
ナディアも慌しく2人を追いかけていった。
「・・あう・・何だか頭が痛くなります・・・」
悪化していく事態に、コロナは頭を抱えてため息をついていた。
異次元航行を続けるアクレイム。その中でメガールはある映像を眼にしていた。
その映像は、数日前の紅い髪の少女とえりなとの戦いを映していた。
(やはりすばらしい・・あのエースオブエースの片割れとも、互角以上の戦いを繰り広げていた・・)
少女の力量に感心するメガール。
(惜しいことをしたと痛感していた・・だがまだ諦めるには早かった・・)
メガールは新しい映像を眼にする。そこには霞美と一緒にいるララの姿が映し出されていた。
(まさか地球に落ちていたとはな・・お前の力、再び発揮してもらうぞ、ブラット・・・)
不敵な笑みを浮かべるメガール。イースは新たに、ララを標的に加えたのだった。
次回予告
イースの脅威を辛くも退けたえりなたち。
だがイースの策略は、過激化に向かっていた。
そんな中、霞美たちとの交流を深めていくジュン。
だが、ティアナたちは霞美たちを警戒していた。
守りたい・・その決意の果てにあるのは・・・?