Drive Warrior Episode24「2つの心」

 

 

 クロノスから力を与えられたメイ。力に満ちた喜びと自身の目的への意思が強いあまり、彼女は得た力を制御できず、怒りのままに力を振るっていた。

 メイが繰り出した拳が地面に当たり、爆発を引き起こす。その爆発を避けきれず、ヒカルが吹き飛ばされる。

「うわっ!」

 悲鳴を上げるヒカルが激しく横転する。増大になるメイの力に、ヒカルは追い詰められていた。

 起き上がったヒカルの眼前まで、メイは迫ってきていた。

「ヒカル、あなたがここまで強くなったのは、私も正直驚きだった・・でもそれでも、私はあなたに、誰にも邪魔されるわけにはいかないのよ・・・」

 メイがヒカルに向けて低く告げる。

「私はようやく力を手に入れた・・ここまで来て諦めるわけにはいかない・・諦めたら私のしてきたことの全てがムダになるだけでなく、私が生きる理由も意味もなくなる・・」

「それは違う!・・力を手に入れたって、使い方を間違えたり、うまく使えなかったりしたら、それこそ自分のいる意味が分からなくなるよ・・・」

 敵意を募らせていくメイに、ヒカルも言葉を返す。

「今のメイは、強すぎてる力をうまく使えていない・・力を求めることばかり考えて、自分を見失ってるよ!」

「いいえ、私は私よ・・世界を正しくするために、ずっと力を求め続けてきた・・それが本当の私よ・・・!」

 ヒカルの呼び声を頑なに拒絶するメイ。

「昨日や今日の話じゃない・・私はずっと力を求めてきた・・そしてやっと、その力を手に入れた・・世界を正しく変えることができる!」

 いきり立つメイがヒカルに回し蹴りを見舞う。ヒカルは動揺しながらも、跳躍してメイの蹴りをかわす。

「メイ・・あたしの言葉が伝わらない・・・」

She doesn't listen to your word. It is likely not to respond to the calling persuasion.(彼女はあなたの言葉に耳を貸しません。呼びかけての説得には応じないでしょう。)

 困惑を膨らませるヒカルに、カイザーがなだめようとする。

However, it knows the method of telling the other party the desire in you excluding the word. If the maximum desire is put, you are sure to be forbidden her.(ですがあなたには言葉以外でも、思いを相手に伝える方法を知っています。最大限の思いを込めれば、あなたは彼女を止められるはずです。)

「言葉以外の、思いを伝える方法・・・」

I also cover you as much as possible. You also must incline the desire to her by your best. Your straight feelings can surely be completely transmitted.(私も極力あなたを援護します。あなたも彼女への思いを全力で傾けてください。あなたの真っ直ぐな気持ちが、全く伝わらないことはあり得ません。)

「カイザー・・・ありがとう、励ましてくれて・・・」

 ヒカルが落ち着きを取り戻し、魔力をあふれさせているメイを見据える。

「単純に考えて、今のメイの力はあたしを上回ってる・・でもだからって、簡単に諦めるあたしじゃない!」

 ヒカルがメイに向かって、真正面から向かっていく。

「あなたが諦めが悪いのは分かっている・・だからもう、私はあなたを倒すしかない!」

 メイがヒカルを迎え撃ち、魔力を放つ。ヒカルはよけようとせず、両腕で防ぎながら突っ込もうとする。

「考えなしに行動する・・ヒカルのそんな部分が好き・・・同時に嫌いなところでもある・・・」

 メイがさらに力を込めて、ヒカルを吹き飛ばそうとする。だがヒカルは押されるどころか、さらにメイとの距離を詰めていく。

「あたしは・・あたしは絶対に逃げない!」

 ヒカルが強引にメイの放つ砲撃を突き破ろうとする。だが決心に体がついていかなくなり、ヒカルは怯んでうずくまってしまう。

 砲撃を終えたメイが、立ち上がれずにいるヒカルを見下ろす。

「頭の中は頑固でも、体は正直のようね・・・」

 少し呼吸を乱しながら、メイがヒカルに向けて声をかける。一気に力を消耗してしまったため、ヒカルは思うように立ち上がることができなかった。

「さらに強くなった私までここまで追い込むなんて・・私と同じドライブウォーリアーというだけあるわね・・でももうチェックよ・・」

 メイがヒカルに向けて右手をかざす。

「戦いに勝ち、目的を達成させられるのは、力と決意がどちらも相手を上回っていなければならない・・私はヒカルよりも、力も気持ちも超えている!」

 メイがヒカルに砲撃を放とうとする。思うように動けず、ヒカルは直撃を覚悟した。

 だが発射されようとしていたメイの魔力が、突然弾けるように消えた。

「えっ・・・!?

 とどめが刺せないことにメイが驚愕する。ヒカルも困惑しながらも、力を振り絞って立ち上がる。

「まだ、私の力は残っている!まだヒカルを倒すだけの力は残っている!」

 メイが再び右手をヒカルに向ける。メイは自分の力が有り余っていることを確信していた。

「私はまだやれる!ヒカルを倒すことができる!世界を正しく変えることができる!」

 言い放つメイが再び砲撃を試みる。だが彼女の意思に反して、掲げた手から魔力が出てこない。

(どうして!?・・どうして攻撃ができないの!?

 心の中で愕然となるメイ。なぜ魔力が出せないのか、彼女には分からなかった。

(力が残っていることは間違いない・・それなのになぜ力が・・・まさか、ヒカルを倒したくないというの・・・!?

 思考を巡らせるうちに、メイは冷静さを保てなくなっていった。彼女は自分が無意識にヒカルを倒すことを拒絶しているのではないかと思うようになっていった。

(そんなことはない!私はこの戦いを望んだ!ヒカルが邪魔してきても、倒すと心に決めていた!だからヒカルを倒すことにためらうなんて!)

 心に湧き上がる気持ちをひたすら拒絶するメイ。彼女は錯乱したかのように、頭を押さえて後ずさりする。

「メイ、どうしたの・・・!?

 メイの異変にヒカルも驚くばかりになっていた。

You seem not to be able to attack her though it doesn't understand of what.(どういうことなのかは分かりませんが、彼女はあなたに攻撃できないようです。)

 カイザーがメイに声をかけていく。冷静になりきれず、メイが呼吸を大きく乱す。

「メイ・・・まだ、メイの心が残って・・・!」

 ヒカルはメイが完全に怒りや憎しみに駆り立てられていないと察する。自分への思いがメイの攻撃を止めていると、ヒカルは思っていた。

「止めるなら今がチャンス・・でも、メイを傷つけてしまうかもしれない・・・」

It is you that decide for her which action to take.(彼女に対してどの行動を取るのか、決めるのはあなた自身です。)

 迷いを抱くヒカルに、カイザーが呼びかける。苦悩を深めるメイを救うため、ヒカルは心に決めた。

「メイを止めるために、あたしは全力を尽くす!」

 ヒカルが全身から魔力を振り絞って駆け出す。彼女はふらついているメイに駆け寄り、力強く抱きしめる。

「な、何をする、ヒカル!?放して!」

 メイが振り払おうとするが、ヒカルは彼女から離れようとしない。

「メイ、あたしの力と気持ち、メイに伝えるから!」

「放して!そんなことで私を迷わせようというの!?私はまだ、戦いをやめるわけにはいかない!」

 呼びかけてくるヒカルにメイが反発する。

「この世界を正しく変えないといけない!ヒカルは世界が間違ったままでいいの!?

「メイがしようとしてることのほうが間違ってるよ!」

 問いかけてくるメイに言い返して、ヒカルが魔力を放出して注ごうとする。彼女の返した言葉にメイが激昂する。

「ヒカル!どうしてあなたまで、間違った世界を望むのよ!?

 メイも持てる魔力の全てを放出して、ヒカルを吹き飛ばそうとする。2人の魔力が入り混じり、膨大な光の柱となって上に上っていった。

 

 まばゆい光に包まれたメイ。怒りのままに動きだそうとする彼女だが、体に力が入らず、動くことができない。

 水に流されるように漂っていくメイ。彼女の視界に映っていたのは、幼い頃の自分自身だった。

(あれは・・私・・・)

 幼い自分を見て、メイが戸惑いを覚える。

 子供の頃のメイは、自分で友達を作れず、ひとりぼっちでいることが多かった。大人しか助けてくれる人がいないことに、彼女は悲しんで泣いていた。

 立ち直れなくなっていたメイ。そんな彼女に手を差し伸べてきたのは、無邪気な女の子、ヒカルだった。

(ヒカル・・・そうだった・・独りだった私に気兼ねなく声をかけてきたのは、ヒカルが初めてだった・・・)

 思い出していくメイが、ヒカルとの出会いに心を揺さぶられていく。

 ヒカルがメイを力強く抱きついてきた。突然のことにメイは動揺した。

 だがヒカルに抱きしめられたことで、メイは悲しさや辛いことが和らいでいくのを感じた。

(この出会いで、私に初めて友達ができた・・もしもヒカルと出会わなかったら、私は子供の時から見境を失くして、何も成し遂げられないままみっともない結末を迎えていた・・・)

 ヒカルとの出会いで自分が変われたことを実感するメイ。彼女が人としてのあたたかさを知った瞬間だった。

(ヒカルがいたから、私は優しさを持てた・・同時に決意と勇気も・・・)

 ヒカルとの思い出を脳裏に浮かべて、メイは改めて決意を確かめる。世界を正しく変えるために、これからも戦い続けることを。

 

 2つの大きな魔力が入り混じった閃光。まばゆい光の中から、ヒカルが吹き飛ばされてきた。

「メイ・・メイ・・・!」

 横転したヒカルが起き上がろうとするが、体が言うことを聞かずにふらつく。

That light is your and her power. She is embraced in not only oneself but also the wish put in your power.(あの光はあなたと彼女の力です。彼女は自分自身だけでなく、あなたの力に込められた願いにも抱かれています。)

 カイザーが魔力を探知して、ヒカルに助言する。

「そうであっても、メイの姿を確認しないと・・・!」

 ヒカルが力を振り絞って、メイのいる光に近づこうとする。

 そのとき、メイのいる白い光に黒い光が稲妻のように入り混じってきた。徐々に姿がはっきりしていくメイの中に、黒い光が入り込んでいく。

「メイ!」

「まだ、プルートの怒りは潰えていない・・・」

 メイに駆け寄ろうとしたヒカルが、響き渡るクロノスの声を耳にする。

「怒りと憎しみのままに戦え、プルート・・ウラヌスを倒し、デバイスをえぐり出せ・・・」

「クロノス・・・!」

 メイに命令するクロノスに、ヒカルが怒りを覚える。

「やめて、クロノス!これ以上メイを戦わせないで!」

「戦うのだ・・この戦いの勝利者が、我が後継者となるのだ・・・」

 呼びかけるヒカルだが、クロノスはメイの怒りと憎しみを増大させていく。黒い稲妻が完全にメイの中に入り込んだ。

 メイの瞳は不気味に紅く染まっていた。怒りと憎しみに駆り立てられ、彼女は戦うこと、倒すことしか考えられなくなっていた。

「私はヒカルを倒す・・ヒカルを倒さないと、何も始まらない・・・!」

 メイが低い声音で言いかけると、ヒカルに向かって飛びかかる。メイの突進を受けたヒカルが大きく突き飛ばされる。

「ぐっ!」

 激しく横転してうめくヒカル。メイの力任せの攻撃に、ヒカルは体だけでなく心にも痛みを感じていた。

「メイ・・あたしを倒すことしか考えていない・・・!?

 ヒカルはメイの心を痛感していた。メイの心には、ヒカルへの怒りや憎しみしかなかった。

She today is a soldier who thinks only you are defeated. It is likely to die in her attack if movement is stopped even if it is a little.(今の彼女は、あなたを倒すことだけを考える戦士となっています。わずかでも動きを止めたら、彼女の攻撃で命を落としかねません。)

「そんなことない!メイは戦うだけの戦士なんかじゃない!」

 カイザーが呼びかけるが、ヒカルは聞き入れようとしない。再び突っ込んできたメイから、ヒカルは素早く動いて距離を保とうとする。

「メイは自分のやりたいことをちゃんと考えてた!ちゃんと心を持ってた!だから、メイは戦うだけの戦士なんかじゃない!」

 メイの心が失われていないことを、ヒカルは必死に自分に言い聞かせる。だが彼女の気持ちと願いとは裏腹に、メイがヒカルに憎悪をむき出しにして迫ってくる。

「メイ、目を覚まして!心を取り戻して!」

 ヒカルの呼び声も、今のメイには伝わらないと思われた。

(ヒカル・・・私を止めて・・・)

 突然、ヒカルの頭の中にメイの声が響いてきた。

「メイ・・・!?

 メイの声に動揺し、一瞬動きが鈍るヒカル。メイが繰り出してきた拳を、ヒカルはすぐに我に返って、飛び上がってかわす。

(今の私は・・私が望んでいる自分ではない・・でも、クロノスによって増大している自分の怒りと憎しみを、私自身が止められなくなっている・・・)

「メイ・・まだ、心を失くしてなかったんだね・・・」

 メイの声が聞き間違いでなかったことに、ヒカルが喜びを覚える。

(本当は、あなたに私が止められることは我慢ならない・・・でも、自分の意思で戦えないことのほうが、もっと我慢ならない・・・)

「メイ・・・今のメイ自身が、許せなくなってるんだね・・・」

 苦渋の助力を求めてきたメイに、ヒカルは物悲しい笑みを浮かべる。怒りと憎しみ、悲しみと苦しみは断ち切らないといけない。決心したヒカルが、真剣な面持ちを見せる。

「少し痛いけど、これは我慢してね、メイ・・・」

(痛みのない戦いなんて望んでいない・・力を手にすることには痛みが伴うもの・・力を求めた時点で、それを覚悟していた・・・)

 囁くように呼びかけるヒカルに、メイが言葉を返した。

 憎悪に駆り立てられているメイが、ヒカルに向かって駆け出していく。ヒカルはメイから逃げようとせず、右手に自分の残された魔力を集めていく。

(ただでさえあたしの力は残り少ないのに、また思い切った攻撃をしたら、今度こそどうかなっちゃうかもしれない・・・)

 ヒカルが心の中で自分の気持ちを確かめていく。

(仮にこのピンチを乗り越えられても、クロノスに勝てるかどうか分かんない・・・でもバカなあたしは、いちいち先のことなんて考えていられない・・・!)

I have not thought that you are wise.(私はあなたが賢くないと思ったことはありません。)

 迷いを振り切るヒカルに、カイザーが励ましの言葉をかける。

You have been getting over a current fight by not only power to improve greatly but also strength of wisdom and the mind. The goodness of the resignation has made you escape from the pinch.(あなたはこれまでの戦いを、大きく向上した力だけでなく、知恵と心の強さで乗り越えてきました。思い切りの良さが、あなた自身をピンチから脱出させてきたのです。)”

(ありがとうね、カイザー・・おだてられて、あたし、やる気が出てきたよ・・・!)

 自信を感じていくヒカルも、メイに向かって走り出す。

 メイが力を込めてヒカルに右手を振りかざす。ヒカルは身をかがめて、メイの一撃を紙一重でかわし、魔力を集めた拳を繰り出す。

 思いと願いを込めたヒカルの渾身の一撃が、メイの体に叩き込まれた。メイの体から、入り込んでいた黒い光が飛び出してきた。

The evil force comes off her. Your desire might have woken up her mind.(彼女から邪悪な力が抜けていきます。あなたの思いが、彼女の心を呼び起こしたのでしょう。)

 カイザーが告げた言葉に、ヒカルは心の中で頷いた。クロノスが与えた邪な力が抜け出て、メイが脱力してヒカルに寄りかかる。

「メイ・・しっかりして、メイ・・・!」

 満身創痍の体に鞭を入れて踏みとどまり、ヒカルがメイに呼びかける。力を使い果たし、メイはヒカル以上に疲弊していた。

「ヒカル・・・まさか・・ここに来て・・あなたに助けられるなんて・・・」

 メイがヒカルに向けて弱々しく声をかけていく。

「メイ・・・よかった・・・」

「全然よくない・・・私はまだ・・足を止めるわけにはいかないのに・・・」

「もういいよ・・・これ以上戦わなくたって、あたしはメイの願いをちゃんと理解したよ・・・」

 歯がゆさを浮かべるメイに、ヒカルが微笑みかける。その無邪気な笑顔に、メイは戸惑いを覚える。

「メイを辛くさせるような人が現れたら、あたしもこのときは立ち向かうよ・・だってメイは、誰よりもあたしたちのいる場所が好きだから・・・」

 ヒカルが投げかけた言葉に、メイは心を揺さぶられる。

 メイは心から世界の平和を願っていた。だが現実の世界の平和が偽りであると知ったときから、彼女は戦うことと力への渇望に駆り立てられることになった。

 結果、メイはハデスを宿し、プルートとしての強大な力を手に入れた。彼女は世界の敵を倒し、自分の邪魔をする存在を徹底的に排除した。

 そのためなら、自分が大切にしてきたものを壊すことになっても構わない。メイはそう思って、非情な戦いに身を投じてきた。

 それでもヒカルは、メイを止めようと尽力してきた。たとえ自分が傷つくことになっても、ヒカルはメイへの友情を諦めようとしなかった。

 最後の最後で、メイにヒカルの思いが伝わったのである。

「本当に・・バカなんだから・・ヒカルは・・・」

「そうだよ・・あたし、バカだから・・こんなやり方しか思いつかなくて・・・」

 呆れるメイに、ヒカルは苦笑いを浮かべていた。しかしヒカルはメイがようやく帰ってきたと思っていた。

The attack approaches. Please save it at once.(攻撃が迫ってきています。すぐに退避してください。)

 そのとき、カイザーがヒカルに向けて声をかけてきた。彼女が視線を移したときには、漆黒の稲妻が距離を詰めてきていた。

「ヒカル!」

 次の瞬間、メイがヒカルを横に突き飛ばした。突然のことに驚くヒカルの前で、メイが漆黒の稲妻に体を貫かれた。

 一瞬にして絶望の光景を目の当たりにして、ヒカルは悲鳴を上げることもできなかった。愕然となっている彼女の前で、メイが力なく倒れていく。

「愚か者め、プルート・・倒すべきウラヌスを庇うとは・・・」

 2人のいる場所にクロノスの声が響き渡る。ヒカルに攻撃を仕掛けようとしていたのはクロノスだった。

 目から涙を浮かべるヒカルに、メイが声を振り絞ってきた。

「私が・・ヒカルを庇うなんて・・・」

「メイ・・・死んじゃダメだよ、メイ!」

 ヒカルがようやく声を上げた。涙ながらに呼びかける彼女だが、メイは瀕死に追い込まれていた。

There is no giving way of the hand any longer. The danger of the life has approached before receiving the attack. There is no method of helping her.(もう手の施しようがありません。攻撃を受ける前でも、命の危険が迫っている状態でした。彼女を助ける方法はありません。)

「そんなことない!メイが死んじゃうなんて、あたしは認めない!」

 カイザーが投げかけた言葉を、ヒカルが声を張り上げて聞き入れないようにする。

「メイ、すぐに助けるから!あたしの力、メイに上げるから!」

「ヒカル・・・もういい・・・」

 助けることしか考えられなくなっているヒカルに、メイが呼びかけてくる。

「これは・・・私が望んでいた・・戦いの結末・・・結局・・私は無力なままだった・・・」

「メイ・・・!」

「でも・・私は認めたくない・・・受け入れるしかない運命を・・・」

 困惑しているヒカルに、メイが力を振り絞って手を伸ばす。

「ヒカル・・・変えて・・こんな不条理な運命を・・・」

 ヒカルに届くことなく、メイの伸ばしていた手が地面に落ちる。それからメイが動くことはなかった。

「メイ・・・!?

 ヒカルが声を振り絞って呼びかけるが、メイは何の反応も見せない。

「メイ・・・目を開けてよ・・あたしに声をかけてよ・・・メイ!」

 悲痛の叫びを上げるヒカル。だがどんなに願っても、どんなに今の非情な現実を拒絶しようとしても、メイが目を覚ますことはなかった。

「まぁいい・・我が後継者をウラヌスとするだけ・・・ウラヌスよ、プルートからハデスを取り出すのだ・・・」

 絶望に打ちひしがれているヒカルに、クロノスの不気味な声が響いてくる。メイを殺された怒りを一気に膨らませて、ヒカルがクロノスに向かって叫ぶ。

「何をふざけたことを言ってるのよ・・・アンタのせいでどれだけの人が傷ついたと思ってるの!?

「ハデスを奪え・・我が後継者としての使命を果たせ・・・」

 目を見開いて叫ぶヒカルだが、クロノスはヒカルにプルートとしての使命を果たすことを迫るだけだった。

「姿を見せなさい、クロノス!あたしが倒してやる!」

 ヒカルがクロノスへの敵意をむき出しにする。メイを殺された怒りに彼女は駆り立てられていた。

Please stop it. It dies surely when fighting in the current state.(やめてください。今の状態で戦ったら、確実に死んでしまいます。)

 彼女の危険を察したカイザーが呼びかけてくる。

Power is considerably consumed to you. The purpose of withdrawing once is you.(あなたもかなり力を消耗しています。1度撤退したほうがあなたのためです。)

「それでも、あたしはクロノスを許せない!メイを殺したアイツを、あたしは許せない!」

 しかしヒカルは怒りのあまり、カイザーの忠告を聞き入れようとしない。

「愚かな・・ギルティアを統べる以外に、お前に生きる意味がないというのに・・・」

 冷徹に言葉を発するクロノスが、ヒカルに向けて魔力を放出しようとする。

The anger that has a lump in one's throat has not put the brakes. Only doing the compulsion metastasis is here.(込み上げてくる怒りに歯止めがかからなくなっています。ここは強制転移させるしかありません。)

 危機感を覚えたカイザーが転移魔法を自動発動させた。ヒカルがクロノスの魔力に立ち向かおうとした瞬間に、転移魔法による姿を消した。

「カイザーが逃がしたか・・だがムダなこと・・我が後継者の宿命からは逃れられぬ・・・」

 クロノスはヒカルを追うことなく、不気味な声を発するだけだった。その場にはヒカルだけでなく、メイの姿も消えていた。

 

 カイザーの自動転移により、ヒカルは別の草原に移動させられていた。眠りについたメイも一緒に来ていた。

「カイザー・・・どうして・・・!?

You also died surely when not doing even so. Because it did not think your death to become it for your friend.(こうでもしなかったら、あなたも確実に命を落とすところでした。あなたが死ぬことを、あなたの友人のためにもならないと思いましたので。)

 悲痛さを噛みしめるヒカルに、カイザーが言葉を返す。カイザーはヒカルだけでなく、メイにも気を遣っていた。

「ゴメン、カイザー・・・でもあたし、やっぱり許せないよ・・・」

I also understand anger and sadness from which it is deprived of an important person and the important one. Please think why it only has to be going to go for everybody in the future well.(大切な人、大切なものを奪われた怒りと悲しみは、私も分かります。だからこそ、みなさんのためにこれからどうしていけばいいのか、よく考えてください。)”

 涙を流すヒカルにカイザーが呼びかける。この言葉を聞いて我に返り、ヒカルが横たわるメイに目を向ける。

「メイ・・あたしのせいで、メイまでこんなことに・・・」

 怒りを抑えられた一方、メイへの悲しみを止められなくなったヒカル。

 どうすればメイやみんなを助けられたのだろうか。そもそも自分がドライブウォーリアーになったから、みんながこんなことになってしまったのだろうか。

 込み上げてくる悲しみと苦しみに打ちひしがれていくヒカル。彼女は何とか気持ちを落ち着かせようとしてから、声を振り絞った。

「カイザー・・クロノスの居場所って分かる?・・ギルティアのアジトの場所でもいいよ・・・」

I do not understand Cronus's whereabouts either. However, it is possible in me to specify the place of enemy's stronghold.(クロノスの居場所は私にも分かりません。ですが敵の本拠地の場所を特定することは、私には可能です。)

 ヒカルの問いかけにカイザーが答える。その返答にヒカルは納得していた。

「うん・・それだけでもいいよ・・少し休んだら、ギルティアの本拠地に行くよ・・・」

 改めて決意を秘めるヒカル。自分たちに振りかかった宿命を終わらせるため、彼女はギルティアの本部に乗り込もうとしていた。

 

 

次回予告

 

全てを失った。

この先には何の希望も残されていないのかもしれない。

全ての悲劇を終わらせるため、少女は今、最後の戦いの地に赴く。

 

次回・「未来への戦い」

 

少女を支えるもの、決意と絆・・・

 

 

作品集

 

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