Drive Warrior Episode23「クロノス」

 

 

 ダイアナ、ブルガノス、カイロス。ギルティア上位幹部の全員が、ヒカルとメイの手にかかって息絶えた。

 ドライブウォーリアーの強大な力に、エビルたちは恐怖を膨らませて逃げ出そうとする。

 だがギルティアに属する者はドライブウォーリアーを除いてクロノスの魔力を注がれており、逃亡や反逆の行動に出た瞬間にその魔力が命を奪うようになっている。

 恐怖による逃避行が、ハデス自身の死を招くこととなった。

「ついに決着のときが来る・・・ウラヌス、プルート・・どちらが我が後継者となるか・・・」

 誰の耳にも届かない声が、ギルティア本部から発せられる。ギルティアの統率者、クロノスの声である。

「ギルティアの後継者の証であるデバイスを与えられた時点で、お前たちの運命は決まっているのだ・・運命に従い、戦うのだ・・・」

 ヒカルとメイの対決を心待ちにするクロノス。2人の対決と決着は刻一刻と近づいてきていた。

 

 親友、家族、家。自分が過ごしてきた日常を失い、ヒカルの悲しみは極限に達していた。しかし彼女はメイやギルティアと戦う決意を固め、押し寄せる悲しみ、苦しみに耐えていた。

 森の中央にある草原で、ヒカルは休息を取っていた。万全の状態で臨まなければ、ギルティアとの戦いを切り抜けることも、メイを止めることもできなくなる。ヒカルはそう考えていた。

(もう少しだけ待ってて、メイ・・元気になったら、すぐにでも飛んでいくから・・・)

A little more endurance, please. There is no what you cannot do if power recovers completely, and it is preserved one's calm.(もう少しの辛抱をお願いします。力が全快になり、冷静さを保っていられれば、あなたにできないことは何もないのです。)

 メイへの信頼を寄せるヒカルに、カイザーが呼びかけていく。

I who is the device might not perfectly understand person's mind. However, it was possible to have met you, and the mind came to seem to have budded.(デバイスである私には、人の心を完璧に理解することはできないのかもしれません。ですがあなたと出会えて、心が芽生えたのだと思えるようになりました。)

(カイザー・・・)

It does by your favor. I do with wish to express our gratitude to you very much by us.(あなたのおかげです。私はあなたに大いに感謝してします。)

(感謝してるのはあたしだよ・・カイザーがいなかったらあたし、すぐにダメになってた・・・)

 互いに感謝を送るカイザーとヒカル。数多くの苦境に打ちひしがれた自分を支えてくれたのがカイザーであると、ヒカルは改めて実感していた。

(もう迷わない・・メイ、今度こそあなたを止める・・そしてまた一緒に、楽しくやっていこう・・・)

 メイに向けての願いを込めて、ヒカルは大木の幹に背を預けて眠りについた。

 

 同じ頃、メイも次の戦いに備えて休息を取っていた。

 メイも家族も親友も失っている。しかし彼女はヒカルと違い、自らの意思で切り捨てている。

(ようやくここまで来た・・ヒカルを倒し、ギルティアを滅ぼせば、この世界を本当の平和にすることができる・・)

 決意を募らせるメイが、目つきを鋭くする。

As for me, true peace cannot understand something. However, I exist with you. I want to keep also requesting what you seek.(私は本当の平和が何かは分かりかねます。ですが私はあなたと共に存在しています。あなたの追い求めるものを、私も求め続けていきたいです。)

 そのメイにハデスが呼びかけてくる。

(後悔することになるわよ・・もっとも、やめさせるつもりもないけど・・・)

It doesn't regret. Because I exist for you now.(後悔はしません。私は今はあなたのために存在しているのですから。)

 忠告を送るメイだが、ハデスは彼女についていくつもりでいた。

(だったらどこまでもついてきてもらうわよ、ハデス・・)

Of course, will that.(もちろんそのつもりです。)

 メイの呼びかけにハデスが答える。揺れ動く感情を押し殺して、メイが瞳と閉じる。

(もしも生きていたとしたら、覚悟しなさい、ヒカル・・今度こそ・・今度こそこの手であなたを倒して、世界を変えるきっかけに・・・)

 ヒカルへの敵意を胸に秘めて、メイも眠りについた。

 

 運命の朝が訪れた。しかし何も知らない世界の人々は、世界の命運を分ける戦いの存在にも気付いていなかった。

 朝日に照らされて、ヒカルは目を覚ました。

 彼女は昨日までの出来事が夢であってほしいと、心の奥底で願っていた。次に目が覚めたら、今までと変わらない日常が待っていると願っていた。

 だがこの非情な現実は変わっていなかった。この現実を受け入れ、これからを戦っていかなければならない。

「ホントに、しっかりしないといけないね・・・」

 自分の頬を両手で叩いて、ヒカルが喝を入れる。1度五感を研ぎ澄ませてメイの魔力を感じ取ろうとするヒカルだが、感じることができない。

「まだメイを感じられない・・でももしかしたら、家にいるのかも・・・」

 ひとつの手がかりを頼りにして、ヒカルは森から歩き出していった。歩を進めていく中、彼女はこれまでの日常と戦いを思い返していた。

(お父さん、お母さん・・マモルちゃん、ネネちゃん・・今までホントにありがとう・・)

 家族や親友に感謝を傾けていくヒカル。

(誰がこんな悲しい気持ちになってもよくないよね・・だからあたし、これからも戦っていくよ・・・)

 心の中で決意を口にすると、ヒカルは気持ちを引き締めて神凪家に向かうのだった。

 

 朝が訪れても、メイは神凪家に滞在していた。彼女はヒカルが近づいてきているのを感じ取っていた。

(ヒカル、最後まで私の前に立ちふさがるのね・・でも私の戦う相手にふさわしくなる・・・)

 メイは笑みを浮かべると、ベッドから起き上がって自分の部屋を出る。

(逃げずに私に会おうとするその勇気は褒めておくよ、ヒカル・・でもそれは勇気ではなく無謀というもの・・私の信念で、あなたは今度こそ命を落とすのよ・・・)

 世界の敵への怒りとヒカルへの敵意を膨らませていくメイ。屋敷の玄関から庭に出て、彼女はヒカルが来るのを待つ。

(来なさい、ヒカル。これだけ距離が近くなれば、あなたならもう気付いているでしょう・・・?)

 ヒカルの到着を待ちわびるメイ。しばらく待ったところで、彼女の視界にヒカルの姿が映ってきた。

「ヒカル・・・」

「メイ・・・」

 真剣な面持ちを保つメイと、戸惑いを浮かべるヒカル。だがヒカルもすぐに真剣な面持ちに戻り、さらに歩を進めて庭に足を踏み入れた。

 メイも歩き出して、ヒカルとの距離を詰めていく。眼前に迫る距離になったところで、2人は同時に足を止めた。

「やっぱりここにいたんだね、メイ・・心当たりがここしかなかったから、違ったらどうしようって思ったよ・・」

「そう探ってくると思ったから、ここで待っていたという考えもあったのよ・・・」

 微笑みかけるヒカルに、メイは淡々と言葉を返す。だがヒカルの表情が徐々に曇っていく。

「あたしは何もかも失った・・お父さんもお母さんも、ネネちゃんもマモルちゃんもいない・・住んでいた家も燃えてしまった・・もうメイしかない・・・」

「いいえ、私はあなたの親友でも大切な人でもない・・それに、おじさんを手にかけたのは私・・あなたにとって私は、敵以外の何者でもないのよ・・」

「違う・・メイは今でもあたしの友達・・子供の頃からずっと一緒にいて、楽しくやってきた・・これからだってやっていけるよ・・・」

「ダメよ・・あなたも私の戦いの邪魔をしようとしている・・そのあなたを、私は受け入れるつもりはない・・・」

 ヒカルが切実に告げるが、メイは考えを変えようとしない。

「メイのやり方は間違ってる・・世界平和とかいって、人の命を奪って・・そんなやり方で、ホントに平和になるなんてあたしには思えない・・」

「でももうこのやり方でしか、平和は訪れない・・待っても何の解決も来ないことを知っているから・・・」

「メイ・・・」

「あなたが私に何を言っても無意味よ。あなたが考えを変えない限り、私はあなたを倒すことも変わらない・・」

 困惑を見せるヒカルに対し、メイが身構える。

「ハデス!」

 叫ぶメイの体をバリアジャケットが包み込む。

「戦いなさい、ヒカル!真っ向から打ち負かして、絶対に私を止められないことを思い知らせてやるわよ!」

 高らかに言い放つメイが戦意を見せつけてくる。

Can you determine it?The fight has not been avoided any longer.(覚悟はできていますか?もう戦いは避けられなくなりますよ。)

 気持ちを落ちつけようとするヒカルに、カイザーが忠告を送る。

「あたしは決めたんだ・・メイを止めるって・・もうこれ以上、メイに間違いをさせるわけにはいかない・・・!」

 決意を口にするヒカルも意識を集中する。

「カイザー!」

 彼女の体をバリアジャケットが包み込んだ。ドライブウォーリアーの宿命を背負った2人の少女が、迷いを振り切って対決に臨もうとしていた。

「ついに・・ついにこの時を迎えた・・・」

 そのとき、2人のいる庭に声が響き渡った。この不気味な声にヒカルが緊迫を覚え、メイが警戒を強める。

「何、この声・・・!?

「まさか・・クロノス・・・!?

 声を荒げるヒカルとメイ。2人の周囲の空間が異様な歪みを引き起こす。

 次の瞬間、ヒカルとメイが暗闇に包まれた。身構えるヒカルと対照的に、メイは落ち着いた様子を保っていた。

「お前たちの勝利者が、我が後継者となる・・ギルティアの全てを受け継ぎ、全てを支配するのだ・・・」

「冗談じゃないよ!支配なんて、みんなを苦しめるだけのものでしかないじゃない!支配者なんて、あたしは絶対にならない!」

 響き渡ってくるクロノスの声に、ヒカルが不満の声を上げる。

「私はお前に従うつもりはない。ギルティアの支配者であるクロノスでも、邪魔をするなら容赦なく倒す・・・!」

 メイもクロノスに敵対の意思を示す。2人のドライブウォーリアーに刃向われても、クロノスはさらに不気味な声を発する。

「愚かな・・我らギルティアの栄光の力を得た時点で、お前たちは我らのために存在するしかなくなる・・お前たちがいかに逆らおうとも、我が後継者としての宿命からは逃れることはできない・・」

「そんなことはない!あたしはどんなことになっても、アンタたちの支配を止めてやるんだから!」

「止めることはできぬ・・なぜなら、我々ギルティアは、宇宙を影で支配していたのだから・・」

 さらに言い返すヒカルだが、クロノスが告げた言葉に顔を強張らせる。

「・・どういうこと・・・!?

「世界は宇宙を超える広域であり、その数も多い・・我らギルティアはその数多くの裏世界を支配してきたのだ・・」

 声を荒げるヒカルに、クロノスが語りかけていく。

「全ての世界を支配すれば、全ての隔たりは消える・・お前たちの秩序も正されるというもの・・・」

「バカなことをいうな!今のこの世界はもちろん、お前たちが支配する世界では平和は取り戻せない!」

 高らかに言い放つクロノスに、メイも言い返す。

「それを決めることが下等な生物では不可能であることは、プルート、お前も分かっているはずだ・・」

 クロノスが告げたこの言葉を聞いて、メイが目を見開く。

「愚かな世界を自らの手で変える・・そのために力を求め、ハデスを宿してプルートとなった・・」

「なぜ、そのことを!?・・このことをお前には口にしていないはず・・・!?

「我はギルティアを支配する者・・ギルティアに属する者は、全て我が手中となる・・・」

 耳を疑うメイに、クロノスが高らかに言い放つ。

「戦うのだ、ウラヌス、プルート・・全ては我らギルティアのために・・・」

「私の心の中まで知っているとはね・・・それでも、私は私の戦いを続けるだけ!」

 クロノスが呼びかけてくる中、メイが戦意をむき出しにする。

「戦いなさい、ヒカル!私が間違いだと言うなら、私を倒して止めるしかないわよ!」

「待って、メイ!このままあたしたちが戦っても、クロノスの思い通りになるだけだよ!」

 言い放つメイに、ヒカルが悲痛さを込めて言い返す。しかしメイはヒカルの言葉を聞き入れようとしない。

「たとえこの戦いが、クロノスやギルティアにとって都合のいいことだとしても、私は最後までヤツらの思い通りにはならない!」

「メイ!」

「今はヒカル、あなたを倒すことが、今の私がやるべきこと!あなたとクロノスが、私の戦いの最大の障害となっているのよ!」

 必死に呼びかけてくるヒカルに、メイが飛びかかる。彼女が繰り出してくる打撃を、ヒカルは両腕で防いでいく。

「そこまでいうなら、もうあたしも我慢しない・・メイの間違いを止めて、クロノスの企みも止める!」

 迷いを捨てたヒカルが反撃に転ずる。ヒカルとメイが繰り出した拳がぶつかり合い、荒々しい衝撃がほとばしる。

「ヒカル、あなたが私を倒す理由はある・・私はおじさんの命を奪ったのだから・・・!」

「確かにお父さんを殺したことは許せない・・でもそれでも、あたしはもう自分を見失いたくない!」

 挑発してくるメイだが、ヒカルは自分を見失うことなく、冷静な攻防を続ける。

「それにあたしは1人じゃない!メイがまだいる!」

「何度も言わせないで!私はあなたの敵でしかないのよ!」

「ううん、メイだけじゃない!みんなが見守ってくれてるから!」

 反発するメイに、ヒカルがひたすら呼びかけていく。コウ、アカリ、ネネ、マモル。家族や親友が見守り、自分を支えてくれている。ヒカルはそう信じていた。

「何でもかんでも自分だけで背負いこもうとするメイじゃ、この気持ちは跳ね返せない!」

「いいえ、今の私にできないことはない!力を手に入れた私に、できないことは何もない!」

 言い放つヒカルとメイが繰り出した拳が、再びぶつかり合って轟音を轟かす。

「世界を動かすことができるのは、それに見合うだけの力と、その引き金となる揺るぎない決意!私にはそれがある!」

「ううん、それじゃホントの平和は訪れない!みんなが悲しくなるだけ!メイだって!」

 3度2人の拳がぶつかり合った。だがこの打撃はメイが力負けした。

「えっ!?

 ヒカルに押されたことにメイが一瞬驚愕する。だがメイはすぐに体勢を整えて、ヒカルを見据える。

「私は自分でこの戦いを望んだ!長い時間願い続けてきた!悲しんだり苦しんだりすることはない!」

「ウソだよ!ウソだってあたしには分かる!」

「ウソじゃない!今の私にウソをつく理由なんてない!」

「ううん、ウソだよ!だってメイに余裕がなくて、辛そうにしてるじゃない!」

 抗議の声を上げるメイに、ヒカルがひたすら呼びかける。彼女の言葉がメイの感情を逆撫でする。

「何も私のことを分かっていなかったくせに、勝手なことを言わないで!」

 激昂したメイが掲げた右手に魔力を収束させる。

「あなたを許さない・・ここで完全に消滅させてやる、ヒカル!」

 メイがヒカルに向けて魔力の閃光を放出させる。

It is a large attack of power. It is dangerous if it doesn't evade.(威力の大きい攻撃です。回避しなければ危険です。)

 カイザーが呼びかけるが、ヒカルはよけようとしない。

「ここはよけたらいけない・・逃げたらいけないところだよ!」

 ヒカルが両手に魔力を込めて前に突き出す。メイの閃光を受け止めるも、ヒカルは徐々に押されていく。

「相変わらず、逃げずに真正面から受け止めてくるのね・・でも、それがあなたの命取りよ!」

 メイが閃光にさらに力を込めて、威力を上げていく。しかしヒカルは押されることなく、逆に踏みとどまる。

「メイと向き合うには、こうするしかないから・・こうするしか考えられないバカだから、あたしは・・・!」

 ヒカルがさらに力を込めて、メイの閃光を押し返そうとする。

「この後あたしがどうなっちゃうかなんて考えられない・・考えたくない・・あたしはただ、メイを止めたいって思ってるだけ!」

 ヒカルが強引に閃光を押し切ろうとする。メイが負けじと力を注ぎ込もうとするが、ヒカルに押される一方になっていた。

「どうして!?・・私はヒカルに負けない力を手に入れた・・ヒカルにはない、強い決意が私にはある・・その私が、ヒカルに勝てないなど・・・!」

 自分がヒカルに押されていくことに、メイが愕然となっていく。

「私は・・ヒカルに勝てない要素なんて何もないというのに・・・!」

 必死に自分のほうが強いと思い込もうとするメイ。だがヒカルに押されていく現実は変わらなかった。

 ついにヒカルの力がメイの閃光を弾き返した。閃光は上空の暗闇に向かい、そのまま消えていった。

 自分の力を完全に跳ね返されたことに、メイは目を見開いていた。力を消耗していたヒカルが、ゆっくりと呼吸を整えていく。

「返した・・メイの力もすごかったけど、あたしでも返せた・・・」

Power seemed to have improved greatly when awaking because it recovered after it was apparently dying. I am a surprise.(どうやら死にかけてから回復して目覚めた際に、力が大きくアップしていたようですね。私も驚きです。)

 自分自身に戸惑いを感じているヒカルに、カイザーが言葉を投げかけていく。

However, there is no change in no infinity power. Be never relax your guard and overconfident.(ですが力が無限大でないことに変わりはありません。決して油断や過信はしないように。)

「分かってるよ、カイザー・・いくらなんでも、メイがこのくらいで降参するとは思えない・・・」

 注意を投げかけるカイザーに対し、ヒカルは冷静に戦況を把握していた。困惑しているが、メイは戦う意思を消してはいない。

「まだよ・・私はまだ負けていない・・・あなたには、絶対に負けを認めるわけにはいかない!」

 声と力を振り絞るメイ。彼女にもまだ戦う力が残っていた。

「私にはやらなければならないことがある!ここで倒れるわけにはいかない!あなたに邪魔されるわけにはいかないのよ!」

 ヒカルに向けて鋭く言い放つメイ。彼女は決意の他に、ヒカルへの怒りを膨らませていた。

「勝ちたいか?・・ウラヌスに勝利したいか・・・?」

 そのとき、メイの脳裏にクロノスの声が響き渡ってきた。

「我が力をお前に分け与えよう・・そうすればお前はウラヌスを倒せる・・・」

「何を企んでいるの?・・クロノス、私がお前の企みに従うと思っているの・・・!?

 助力を告げてきたクロノスに対し、メイが疑念を投げかける。

「お前の意思と怒りは、我が力に同調する・・その意思と怒りが、全ての世界を支配する源となる・・・」

 それでもクロノスがメイを手助けしようとする。疑念を抱きながらも、メイはクロノスのこの言葉に興味を持つ。

「後悔することになるわよ、クロノス・・自分の目的のための力を、私に利用されることになるわよ・・・」

 メイが忠告を送るが、クロノスからの返事はない。

「そこまで私に力を貸したいと言うなら、好きにするといいわ・・私はヒカルを倒し、この世界を正しい形に変えるだけよ!」

「よく言ったぞ、プルート・・期待しているぞ・・・」

 クロノスの助力を承諾したメイに、稲妻のような閃光が降り注いだ。光を浴びた彼女に、ヒカルが緊迫を覚える。

「メイ、どうしたの!?

 ヒカルが呼びかけるが、光を体に宿したメイは沈黙する。メイは瞳を閉じて、静寂を見せていた。

「メイ・・・!?

Please take care. Power goes up greatly than the current.(気を付けてください。今までよりも力が格段に上がっています。)

 困惑を見せるヒカルにカイザーが呼びかける。

 次の瞬間、メイがヒカルに向けて鋭い視線を投げかけてきた。その目つきは今まで以上に鋭く、怒りに満ちあふれていた。

「すごい力・・クロノス・・これだけの力を備えていたなんて・・・」

「メイ・・・まさか、クロノスの力に・・・!?

 不敵な笑みを見せるメイに、ヒカルが緊迫を募らせる。

「これならどんな相手にも負けない・・ヒカルにも、私に力を与えたクロノスさえもね・・・!」

 目を見開いたメイが、ヒカルに飛びかかる。彼女の速度が格段に上がっており、ヒカルは回避が間に合わずに突き飛ばされる。

 大きく跳ね飛ばされたが、ヒカルは上空で踏みとどまる。だが既にメイが彼女の背後に回り込んでいた。

 ヒカルは振り返ったと同時に、メイの回し蹴りを受けて再び突き飛ばされる。

(ホントにレベルアップしてる・・スピードだけじゃなく、パワーも上がってる・・・!)

It is only done even if it struggles to repulse from the front. If the other party's attack is not read ahead, the action is not in time.(真正面から迎え撃とうとしてもやられるだけです。相手の攻撃を先読みしないと、対処が間に合いません。)

 胸中で毒づくヒカルと、声を上げるカイザー。身構えるヒカルが、メイの追撃に備えて全身に魔力を帯びる。

(メイを感じ取らないと・・メイを感じ取って、止めないと・・・!)

 注意力を高めて、ヒカルがメイの動きを追う。五感を研ぎ澄ませて、敵や魔力の位置や動きをつかんできた。カイザーと培ってきた知識と訓練によるものである。

 だが集中力を高めていたにもかかわらず、ヒカルがメイが放った光の弾をぶつけられる。

(つかめない・・メイの動きが・・・!?

 体勢を整えるも、ヒカルはメイの動きをつかむことができなかったことに驚愕する。

Her movement might be too fast. It is obviously different from the other party with whom you have fought up to now.(彼女の動きが速すぎるのでしょう。今まであなたが戦ってきた相手とは、明らかに違っています。)

(違うよ・・今のメイからは、メイの心が感じられないの・・・)

 呼びかけてくるカイザーだが、ヒカルは首を横に振る。

(今まではメイのことを感じることができた・・ドライブウォーリアーになって、戦うことになったときも、メイの気持ちや決心を感じ取ることができた・・魔力とかそういうのじゃないんだけど・・・)

Can it commune it like the family and the best friend, etc(家族や親友のように、心を通わせるということですか?)

(そうだと思う・・でも、今のメイからはその気持ちや心が感じられない・・まるでメイじゃないみたいな・・・)

 カイザーからの疑問に答えて、ヒカルが不安を浮かべる。メイが別人になってしまったかのような違和感と疑念を痛感してしまい、ヒカルは彼女を感じ取ることができなくなっていた。

Perhaps, it seems that it is an influence that takes the bad morale power.(おそらく、悪しき力を取り込んだ影響ではないかと思われます。)

 カイザーがヒカルに推測を告げる。

Cronus's power is lost, and she might do feelings and the synchronized, and it been lost that it seems to be her as a result. To have kept requesting power, I will have been taken into power to obtain.(クロノスの力が彼女の感情とシンクロしてしまい、その結果、彼女らしさが失われてしまったのでしょう。力を求め続けたために、手に入れた力に自分が取り込まれてしまったことになります。)”

(それじゃメイは、今の自分の力を制御できていない・・・!?

 カイザーの説明を聞いて、ヒカルが愕然となる。クロノスの力と敵を倒そうとする敵意に、メイは知らず知らずのうちにのみ込まれてしまっていた。

The way things are going, she will fall into the state of reckless driving before I notice. The power that I can have will be discharged without discretion.(彼女はこのままでは、自分が気付かないうちに暴走状態に陥ってしまいます。自分の持てる力を見境なしに放出させることになります。)

「そんなのダメ!こんなの、メイの戦い方じゃない!」

 カイザーの話を聞いて、ヒカルが悲痛さを覚える。しかし彼女の気持ちは、今のメイに届いていない。

 困惑を膨らませていくヒカルに向かって、メイがまたも飛びかかっていく。

「私はこの馬鹿げた世界を変える!邪魔をするなら、ヒカルもクロノスも倒す!」

 メイがヒカルに向けて、魔力を込めた拳を繰り出す。とっさに後ろに下がるヒカルだが、メイの打撃は彼女の眼前の地面を殴りつけて爆発を引き起こす。

「うわっ!」

 メイの打撃の余波で突き飛ばされ、ヒカルが悲鳴を上げる。彼女はメイに対して苦悩を深めようとしていた。

 

 

次回予告

 

クロノスから力を分け与えられ、強化したメイ。

世界に本当の平和をもたらそうとして、彼女は戦士の闇に落ちていく。

これが世界を導く力なのか?

ヒカルの声は、もうメイには届かないのか?

 

次回・「2つの心」

 

これが、真の戦士の姿か・・・?

 

 

作品集

 

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