Drive Warrior Episode22「絶望への反抗」

 

 

 ヒカルを守ろうとしたアカリが、カイロスの放った光線を受けて動かなくなった。

「やっと倒れたか。もう2度と邪魔されることはない・・」

 カイロスが勝ち誇って哄笑を上げる。

「まだウラヌスは死んでいないか。とことん運がいいな・・だがその幸運も終わりだ!」

 言い放つカイロスが、右手に魔力を収束させていく。

「木っ端微塵に吹き飛ばしてやる!2度と復活できないようにな!」

 カイロスがヒカルに向けて光の弾を放った。

 だが次の瞬間、ヒカルとアカリの姿が、弾が命中する前に突然消えた。その瞬間をカイロスは見逃さなかった。

 2人がいた場所が光の弾によって爆発を引き起こす。だがカイロスは2人を倒した手応えを感じていなかった。

「ウラヌスが・・動いた、だと・・・!?

 カイロスは危機感を覚える。彼がとどめを刺そうとした瞬間に、ヒカルは意識を取り戻して、アカリを連れて素早く離れたのである。

「この期に及んで・・ウォーリアー・ウラヌス!」

 激昂したカイロスがヒカルを追って動きだす。思うようにヒカルを倒すことができず、カイロスの怒りは頂点に達していた。

 

 カイロスの攻撃を受ける前に、ヒカルは意識を取り戻した。彼女は残っていた力を振り絞って、アカリを抱えてカイロスから逃げ切っていた。

 人気のない草原の真ん中で、ヒカルは座り込んで、横たわったまま動かないアカリを見つめていた。

「お母さん・・・あたしを守ってくれたんだね・・・」

 ヒカルがアカリに声をかけて、涙を流していく。しかしアカリは何の反応も見せない。

「あたしのせいだよね・・あたしがメイに怒って、やられたから・・あたしがいつまでも眠ってたから・・あたしがお母さんを死なせたんだよね・・・」

 涙ながらに自分を責めるヒカル。自分の弱さのせいで友達も家族も不幸にしているのだと、彼女は思い込んでいた。

It has concentrated too much on the recovery of you. Your mother was not able to be helped.(あなたを回復させることに集中しすぎてしまいました。あなたのお母様を助けることができませんでした。)

 そんな彼女にカイザーが弁解を入れてきた。

All are my responsibilities. I am sorry really.(全ては私の責任です。本当に申し訳ありません。)

「ううん・・カイザーのせいじゃない・・全部あたしが悪いんだよ・・・」

 カイザーの励ましを受けても、ヒカルは自分を責めることをやめない。

「でも、いつまでもいじけて泣いていたら、お父さんにもお母さんにも怒られちゃうよね・・・」

 ヒカルは目に浮かぶ涙を拭って立ち上がる。

「まずはギルティアを倒さないと・・これ以上、あたしのために誰かが傷つくなんて耐えられない・・・」

You should take a rest still a little. It is not to power when recovering though consideration returned. It is a moment that depends on power a little as for movement ahead.(まだ少し休んだほうがいいです。意識は戻りましたが、力までは回復してはいません。先ほどの動きもわずかばかりの力による一瞬のことなのです。)

 決意を固めるヒカルに、カイザーが注意を入れる。

It is not possible to use it as thought of power for a while. Please wait only a little more.(しばらくは力を思うように使うことができません。もう少しだけ待ってください。)

「ありがとうね、カイザー・・でもこうしている間にも、ギルティアが何か仕掛けてるのかもしれない・・」

 カイザーが呼びかけても、ヒカルは決意を変えようとしなかった。

「逃げでも怒りでもない・・ギルティアの悪さを止めたい・・みんなを守りたい・・それ一筋だから・・・」

Really?You because feelings have hardened to the last minute so much when doing me each other.(そうですか。そこまで気持ちが固まっているというのでしたら、私も最後まであなたに付き合いましょう。)

 ヒカルの決意をカイザーも受け入れることにした。

It is my role to defend you, and there is my own application, too. Hereafter, it will never change.(あなたを守ることが私の役目であり、私自身の願いでもあります。それはこれからも変わることはありません。)

「カイザー・・・ありがとう・・あなたには、いつも助けられてばかりだね・・・」

 自分の考えを告げるカイザーに、ヒカルが感謝を投げかける。

「いい加減にしっかりしないと・・カイザーにも、みんなにも悪いから・・・」

I must not worry. Because it is a wish as my wanting help of you, and the support of you intention.(私のことは気にしないでください。あなたを助け、あなたを支えていきたいという私の意思と願いなのですから。)

 自分に喝を入れるヒカルに、カイザーが弁解を入れる。カイザーの支えに改めて感謝しながら、ヒカルはギルティア、そしてメイとの戦いを見据えるのだった。

「行くよ、お母さん・・これからはしっかりとやるから、あたたかく見守っていてね・・」

 アカリに目を向けてから、ヒカルは歩き出していった。

 

 逃走したヒカルの行方を、血眼になって捜すカイロス。ヒカルが魔力を発揮していなかったため、カイロスは彼女を見つけられずにいた。

「おのれ、ウラヌス!どこまでもオレに屈辱を与えて!」

 怒りを膨らませていくカイロス。彼はヒカルを倒すために、どんな手段も使おうとしていた。

「もう許しておかない!この街諸共、お前を排除してやるぞ、ウォーリアー・ウラヌス!」

 激昂したカイロスが街に向けて光の弾を発射していった。結界を張っていない世界の空から放たれた弾は、次々に建物に直撃し、人々を恐怖させた。

「他人を放っておけないウラヌスのことだ!こうしていればたまらず出てくるはずだ!」

 ヒカルをおびき寄せるために、カイロスはさらに街への射撃を行っていった。

 

 突然の襲撃に見舞われた街。その様子をメイは神凪家から見ていた。

「カイロス、派手に暴れているようね・・追い込まれて、とうとう見境を失くしたのかしら・・」

 カイロスの暴走をあざけるメイ。

「どちらにしても私には関係ない。この街がどうなろうと、私の知ったことではない・・ただ・・」

 嘲笑するメイだが、笑みを消して目つきを鋭くする。

「私に攻撃を仕掛けてくるなら、そのときは容赦しない・・・」

 自分の行く手を阻むものは全て敵。世界の正しさを求めていくメイは、自分に敵対するものを倒すことに、何の迷いも持っていなかった。

 

 カイロスの街への襲撃を、ヒカルとカイザーも目の当たりにしていた。

「カイロス・・あたしのために、関係ない人を・・・!」

The enemy seems already to be upset. It attacks it without the idea to defeat you.(敵はもう冷静さを失っているようです。あなたを倒すために、考えなしに攻撃を仕掛けています。)

 カイロスの行動に怒りを覚えるヒカルに、カイザーが声をかける。

「あんなこと、放っておいていいわけがない・・すぐに行ってやめさせないと・・!」

Please wait. Your power has not recovered as said ahead. It cannot be said that it is possible to fight still though it gradually faces the recovery.(待ってください。先ほども言ったとおり、あなたの力は回復していません。徐々に回復に向かっていますが、それでも戦いができるとは言えません。)

 街に向かおうとしたヒカルを、カイザーが呼び止める。

「戦えないからって言っても、みんなを見殺しにしていい理由にはならない・・また倒れることになるとしても、あたしはみんなを・・!」

Please do not act by the dispersal of the life. It was a low degree of the possibility to be able to say that it was a miracle that you who had fallen because of the friend's attack had woken up.(命を散らすような行動はやめてください。友人の攻撃で倒れたあなたが目を覚ましたのも、奇跡といえる可能性の低さだったのですよ。)”

 それでも街に向かおうとするヒカルに、カイザーが警告を送る。

The act to waste the life will betray feelings of the people who believe you. Please consider feelings of everybody well if you defend everybody.(命を無駄にするような行為は、あなたを信じている人たちの気持ちを裏切ることになります。みなさんを守ろうとするなら、みなさんの気持ちをよく考えてください。)

「考えてるよ・・・って言っても、ホントはちゃんと考えてないのかもしれない・・お父さんとお母さん、みんなの気持ちを裏切っちゃうかもしれない・・」

 さらに呼びかけていくカイザーの言葉を聞いて、ヒカルが物悲しい笑みを浮かべる。

「でももう決めたんだ・・あたしのためにみんなが傷つけさせないって・・・」

 カイロスに挑むことに対して完全に迷いを振り切っていたヒカル。これ以上呼び止めても聞き入れないと、カイザーは悟った。

It has not stopped it any longer. However, power has not recovered completely yet. Be never relax your guard and overconfident.(もう止めません。ですがまだ力が完全に回復していません。決して油断や過信をしないでください。)

「ありがとうね、カイザー・・それから、ごめんね・・・」

 カイザーに感謝と謝罪を返すヒカル。カイロスの暴走を止めようと、彼女は街に向かって駆け出していった。

 

 ヒカルをおびき出そうと、街への攻撃を行うカイロス。破壊の限りを尽くす彼に、街の人々は恐怖し逃げ惑う。

「出てこい。ウォーリアー・ウラヌス!ここの人間が死んでもいいのか!」

 カイロスが挑発しながら、さらに光の弾を撃ち込んでいく。

 そのとき、カイロスが体に重い衝撃を叩き込まれた。不意を突かれたカイロスが、うめきながら視線を下に向ける。

 飛び込んできたのはバリアジャケットを身に付けたヒカルだった。

「ウラヌス・・思った通り来たが、この速さは・・!」

 ヒカルが見せた速さと力に驚愕するカイロス。切り抜けようとする間もなく、彼はヒカルの高速の突進に押されて突き飛ばされた。

(まずは人のいないところにカイロスを連れていく!)

There are previously direction and ten-kilometer forests about 11 o'clock. Let's take it to meadow at the center.(11時の方向、10キロメートル先に森があります。その中央の草原に連れていきましょう。)

 これ以上街や人々に危害が及ばないようにするヒカルに、カイザーが助言する。ヒカルは吹っ飛んだカイロスを追いかけ、回し蹴りを叩き込んでさらに突き飛ばす。

 街から大きく離れた森の中の広場に、ヒカルはカイロスを連れ込むことができた。だがヒカルの魔力、体力は完全に回復しておらず、息が乱れるのを必死にこらえていた。

「ここなら心おきなく戦える・・勝負だよ、カイロス!」

 ヒカルが言い放つと、地面に叩きつけられたカイロスが起き上がってきた。

「来たか、ウラヌス・・ああやって攻撃していれば、必ず姿を現すヤツだからな、お前は・・」

「あたしのために、街やみんなを傷つけるなんて・・・!」

 不敵な笑みを見せるカイロスに、ヒカルが怒りを膨らませていく。

「オレに人間どもをやられて悔しいか?ならば潔くオレたちギルティアの言うとおりにしていれば、もしくはオレたちの手にかかって命を落としていれば、他のヤツが苦しむことはなかったがな・・」

「ふざけないで!アンタたちの身勝手のせいじゃない!」

 あざ笑ってくるカイロスに、ヒカルが怒りの言葉を投げかける。するとカイロスが笑みを消して苛立ちをあらわにする。

「貴様が大人しくオレに始末されていれば、全て思い通りに事が運んでいたのだ!ギルティア上位幹部であるオレが、処刑されるかどうかの瀬戸際に立たされている!」

 憤りを膨らませていくカイロスが、全身から魔力を放出していく。

「これほどの窮地と屈辱を与えたウォーリアー・ウラヌス・・もはやこの手で直接葬らなければ気が治まらん!」

 叫ぶカイロスがヒカルに向けて閃光を放出する。ヒカルは上空に大きく飛び上がって、閃光を回避する。

「もう逃がさないぞ、ウラヌス!貴様はオレが倒す!」

 カイロスも飛び上がってヒカルに光の弾を発射する。ヒカルは回避が間に合わず、両腕を構えて防御する。

(思うように動けない・・やっぱりまだ体力が・・・!)

It is possible not to necessarily move as thought. When judged, it is necessary to consider that.(思うような動きができるとは限りません。判断の際にはそのことを考慮する必要があります。)

 思うような動作ができない自分に焦るヒカルに、カイザーが注意を投げかける。

When exchanging it by the single differrence, it is dangerous. Please take the distance that can surely be evaded.(紙一重でかわそうとすると危険です。確実に回避できる距離を取ってください。)

(そうだね・・ここに来るだけでも十分ムチャなことだから、これ以上危なっかしいことをするのは無謀というもんだね・・)

 カイザーの助言を受けて、ヒカルが頷く。カイロスがさらに撃ち込んできた光の弾を、彼女は降下してかわす。

「まだ逃げるか・・だがこれはどうだ!」

 カイロスがヒカルに向けてさらに射撃を行う。ヒカルはできるだけ距離を取って回避を行っていく。

 だがヒカルがかわした光の弾が、反転して再び彼女に向かっていく。

「これなら逃げ切ることはできないだろう!集中砲火を浴びて滅ぶがいい、ウォーリアー・ウラヌス!」

 高らかに言い放つカイロス。向かってくる光の弾を次々に回避していくヒカルだが、弾は軌道を変えて彼女を狙い続ける。

(このままじゃやられる・・こうなったら・・!)

It is useless. It is dangerous to attack high power in the current state. The defeat waits surely though this shooting is got over.(駄目です。今の状態で高出力の攻撃を行うのは危険です。この射撃を乗り切っても、確実に敗北が待っています。)

 魔力を解き放って光の弾を吹き飛ばそうとするヒカルを、カイザーが呼び止める。

(でもこのままよけ続けても敗北するだけ・・だったら今の状況を乗り越えてから次を考える・・・!)

 ヒカルの決断は固かった。この選択が非常に危険であることは、彼女自身承知の上だった。

「これで終わりだ、ウラヌス!」

「バーストエクスプロージョン!」

 空中に飛び交う光の弾を傾けるカイロスと、残された魔力を爆発させるヒカル。解き放たれた魔力の閃光が、光の弾の群れを一掃した。

 だがこの一撃で、ヒカルは魔力のほとんどを消耗してしまっていた。疲れの色を隠せなくなり、彼女が息を乱す。

「潜り抜けるか、ウラヌス・・だがもう余裕がないようだな!」

 そこへカイロスが飛び込み、両手をヒカルの体に叩き込んできた。

「うっ!」

 痛烈な打撃を受けて体勢を崩すヒカル。頭で反応できても、体がついていけなくなっていた。

「お前も同じように強く叩きつけてやるぞ!」

 カイロスがさらに両手を打ちつけて、ヒカルを叩き落とす。抗う気力が出ず、彼女は地上に叩きつけられた。

 砂煙が舞う中、苦痛に顔を歪めるヒカル。起き上がることができずにいる彼女の前に、カイロスが降り立った。

「どうした?立ち上がることもできなくなったか?」

 満身創痍のヒカルを見下ろし、カイロスが嘲笑してくる。

「せめてもの礼だ。ここでとどめを刺してやる。すぐにでも家族とやらに会いたいだろう?」

「確かに会いたい・・すぐにでも会いたいと思ってるよ・・・」

 右手を伸ばすカイロスに対し、ヒカルが声を振り絞る。

「でも、そんなわがまま言ったら、それこそみんなに怒られちゃうよ・・・あたしがやらなきゃいけないのは、みんなのために立ちあがって、前に進むこと・・・!」

「貴様の往生際の悪さには本当に気分が悪くなる・・今すぐ消えろ、ウォーリアー・ウラヌス!」

 決意を言い放つヒカルに向けて、カイロスが魔力の閃光を放出する。今のヒカルに回避や防御のできる魔力、体力は残っていないはずだった。

 だがそのとき、ヒカルの体を淡い球状の光が包み込んだ。光はカイロスが放った閃光からヒカルを守っていた。

「コイツ・・どこにこんな力が残っていたというのだ!?

 ヒカルが発揮した光に驚愕するカイロス。彼が立て続けに砲撃を放つが、その全てがヒカルを包む光に弾かれ、あるいはかき消されていた。

 ヒカルを守った光は、カイザーが自動展開したものではなく、彼女自身が無意識に発動したものだった。

「あたし・・まだこんな力が・・・」

 ヒカル自身も放たれた光に動揺していた。

I am surprised at your concealed strength in reserve, too. However, there is no change in putting on the crisis situation still.(あなたの隠されていた底力に、私も驚いています。ですがまだ危機的状況に置かれていることに変わりはありません。)

 同じく驚きを見せながらも、カイザーがヒカルに注意を入れる。

「どこまで・・どこまで屈辱を与えるつもりだ、貴様は!?

 憤慨したカイロスがさらに魔力を収束させた砲撃を繰り出していく。ヒカルは今度は上に飛んでかわす。

 ヒカルの底力を目の当たりにして、カイロスは冷静さを失っていた。

「許さん!絶対に許すものか!いい加減に地獄に堕ちろ!」

 カイロスが怒りのままにヒカルに飛びかかっていく。だが的確な攻め方ができず、カイロスはヒカルに攻撃を当てられないでいた。

(バカな!?力を消耗しているはずのヤツに、オレが攻撃を当てられないだと!?

 形勢を逆転されたと痛感させられ、カイロスが愕然となる。

The other party seems to shake. It is a chance of the attack now.(相手は動揺しているようです。今が攻撃のチャンスです。)

「今度はこっちから行くよ!」

 カイザーに後押しされる形で、ヒカルが反撃に転ずる。彼女が繰り出した会心の打撃が、カイロスの体に叩き込まれる。

「ぐっ!」

 ヒカルの打撃に耐えられず、カイロスがうめいて顔を歪める。怯んだ彼に、ヒカルが魔力を込めた打撃を連続で叩き込んでいく。

「これ以上、アンタの勝手にはさせない!」

「いつまでも調子に乗るな、小娘!」

 さらに右の拳を繰り出すヒカルだが、カイロスはとっさにかわして彼女の横をすり抜ける。

「絶望させてやる!お前がいた場所を、オレが吹き飛ばして塵にしてやる!」

 街に狙いを定めて、カイロスが掲げた右手に魔力を集中させる。

「そんなこと、させるわけないでしょ!」

 彼の攻撃を止めようと、ヒカルが飛びかかる。だが距離を詰めたところでカイロスの迎撃を受けてしまう。

「うっ!」

 膝蹴りを受けて怯むヒカル。さらにカイロスに蹴り飛ばされるが、彼女は何とか踏みとどまる。

「そんなに死に急ぎたいと言うなら、望み通りにしてやるぞ!」

 カイロスがヒカルに向けて、魔力を集めた右手を向ける。

「よければ街が吹き飛ぶ!どちらが消えようと、お前の末路は破滅だけだ!」

「そんなことはない!」

 哄笑を上げるカイロスに、ヒカルが言い返す。カイロスが放った巨大な光の弾に、ヒカルが真正面から突っ込んでいく。

(あの攻撃を完全に真正面に跳ね返して、カイロスにぶつけないといけない・・ちょっとでもずれたら、負けるのはあたし・・・!)

If it is you, it is possible to do. It is possible to succeed up to now if you piled up training and the fight.(あなたならできます。今まで訓練と戦いを重ねてきたあなたなら成功できます。)

 緊張を強めるヒカルをカイザーが励ます。細心の注意を払って、ヒカルが反撃のタイミングを計る。

「ここ!」

 訓練と経験の積み重ねから導き出したタイミング。その一瞬に、ヒカルが両手を突き出す。

 カイロスが放った光の弾は、鏡の反射されたかのようにそのまま跳ね返された。

「何だと!?

 驚愕するカイロス。持てる力を攻撃につぎ込んでいた彼には、跳ね返ってきた光の弾を再び跳ね返す余力は残っていなかった。

 自ら放った魔力をそのままぶつけられ、カイロスは爆発に巻き込まれた。

(オレは負けない・・オレに刃向かうヤツは、オレに始末されるだけ・・・!)

 憎悪に満ちた断末魔を残して、カイロスは消滅。爆発の後に彼の姿が現れることはなかった。

「やった・・・何とか、みんなを守れた・・・」

 弱々しく呟くヒカル。ゆっくりと地上に降りた途端、彼女は力尽きてうつ伏せに倒れた。

 痛みや疲れを通り越して感覚が麻痺していたため、ヒカルの体が彼女の言うことを受け付けなくなっていた。

I become uneasy in your impossible behavior, too. Though I who is going with the action am responsible, too.(あなたの無理な行動には、私も不安になってしまいます。その行動に同行している私にも責任はあるのですが。)

 カイザーがヒカルに向けて、心配と自責を告げる。

(ゴメンね、カイザー・・あなたが心配してくれているのに、全然言うことを聞かなくて・・)

It is safe even if it doesn't worry. The time spent with you is not short. Your idea is understood well, and sworn that I also act both with you. Up to now and hereafter, there will not be change in the oath.(気にしなくても大丈夫です。あなたと過ごした時間は短くありません。あなたの考えはよく分かりますし、私もあなたと行動を共にすると誓っています。今までもこれからも、その誓いに変わりはありません。)”

 心の中で照れ笑いを見せるヒカルに、カイザーが自分の心境を伝える。

(これからも・・これからもよろしくね、カイザー・・・)

Please continue your favors only toward here. It also always associates also even of where.(こちらこそよろしくお願いします。いつでもどこまでもお付き合いしますよ。)

 ヒカルとカイザーが改めて挨拶をしていく。両者の絆はさらに強固なものとなっていた。

 

 カイロスを撃退したヒカル。この魔力の動きを、メイも感じ取っていた。

「ヒカル・・・いいえ、そんなはずがない!」

 ヒカルが生きていたことが信じられず、メイが首を横に振る。

The mistake is not found. This power belongs to your friend.(間違いありません。この力はあなたの友人のものです。)

「ウソよ!ヒカルは私が殺したのよ!この手で、確かにヒカルを刺した!」

 ハデスが言葉を投げかけるが、メイは信じようとしない。

It was miraculously alive. Or, the possibility that you were not able to knock it down completely cannot be denied.(奇跡的に生きていたということですね。あるいは、あなたが完全に倒しきれなかったという可能性も否定できません。)

「そんなことはない!確かにヒカルを抉る感触を感じた!それで死んでいないなんてありえないわよ!」

 ハデスのさらなる助言に、メイは声を荒げるばかりになっていた。

Next, when appearing, it only has surely to knock it down. If it is you who became thorough, any other party is not defeated. That's right.(次に現れたときに確実に倒せばいいだけのことです。万全となったあなたなら、どんな相手でも負けることはない。そうですよね?)

 動揺を隠せずにいるメイを、ハデスが励ましていく。この言葉を聞いて、メイはようやく冷静さを取り戻した。

「そうよ・・まだ生きているというなら、今度こそ倒せばいいだけのこと・・2度と現れることがないように、今度こそヒカルを・・・!」

 メイが目つきを鋭くして両手を握りしめる。ヒカルや世界への怒りと憎しみを、彼女はさらに強めるのだった。

 

 執拗に攻めてきたカイロスに辛くも勝利したヒカル。しかし彼女はギルティアとの戦いの中で、大切なものを全て失った。

 親友も家族も命を落とし、住んでいた家も燃えてなくなってしまった。ただ1人、メイがいるだけである。

「メイ・・あたし、もう何もかもなくなっちゃったよ・・・」

 虚無感に襲われて、ヒカルが物悲しい笑みを浮かべる。

「みんながいるのが普通だって、ずっと信じてた・・でもみんないなくなっちゃったよ・・・」

 涙をこらえることができず、ヒカルが泣き崩れる。

「でも・・このまま泣いてても、何の解決にもならないことは分かってる・・ギルティアの悪さが、メイのしていることが、あたしと同じ辛さを増やすことになる・・・」

 ヒカルは涙を拭って立ち上がり、真剣な面持ちを浮かべる。

「やるよ、カイザー・・あたしがやらないと、ギルティアが世界に支配されてしまう・・メイの間違いを止められない・・・」

You are not absolutely one person. I am, too and everybody is watching you.(あなたは絶対に1人ではありません。私もいますし、みなさんもあなたを見守っていますよ。)

 決意を口にするヒカルに、カイザーが励ましの言葉をかける。メイとの戦いを見据えて、ヒカルは気持ちを落ち着かせていった。

 

 

次回予告

 

ギルティア上位幹部は全滅した。

混迷に陥ったギルティアをよそに、最後の戦いを予感するヒカルとメイ。

友情と敵対の狭間で交錯する2つの心。

2人の魔法の戦士に向けて、ギルティアの覇者が声を発した。

 

次回・「クロノス」

 

この宿命も、闇が手掛けたシナリオか・・・?

 

 

作品集

 

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