Drive Warrior Episode18「魔女の終戦」

 

 

 魔力を取り戻してから一夜が過ぎ、ヒカルは体も心も元気を取り戻しつつあった。

「おはよう、お母さん・・」

「おはよう、ヒカル・・すっかり元気になったようね・・」

 挨拶を交わすヒカルとアカリ。ヒカルがアカリの朝の支度の手伝いをする。

「お父さん、昨日出かけたきりなんだね・・・」

 コウの姿が見えず、ヒカルが言いかける。

「大きな事件の調査としか聞いてないけど・・これもよくあることだから・・」

 するとアカリが淡々と答える。彼女はコウから事件や仕事のことは聞かされておらず、ニュースもそれに関した事件を報道してはいなかった。

「そして無事に帰ってきてる・・また元気な姿を見せてくれるって・・」

「そうよね。勇ましくたくましいからこそのお父さんよね♪」

 ヒカルがかけた言葉を聞いて、アカリが上機嫌になる。いつもと変わらない母だと思い、ヒカルも笑みをこぼした。

 

 元気に家を出て学校に向かうヒカル。だがアカリの姿が見えなくなったところで、ヒカルは肩の力を抜いた。

(ホントに元気になれたのか、まだまだ不安だよ・・・)

It seems to have gotten back into the swing of it really. I was relieved, too.(本当に調子が戻ったようですね。私も安心しました。)

 心の中で呟くヒカルに、カイザーが声をかけてくる。

It is good for the body and the mind to keep a moderate tension. However, carelessness is a taboo in more than before.(適度な緊張感を保つことが、体にも心にもいいことです。ですが今まで以上に油断は禁物ですよ。)

 カイザーが告げてきた言葉に、ヒカルが緊張を覚える。

The enemy will also attack it more than before and obstinately. We might not be imagined.(おそらく敵も今まで以上に執拗に攻めてくるでしょう。私たちが思ってもみないことをしてくるかもしれません。)

(・・・思ってもみないことなら、もう起きたよ・・・)

 カイザーからの忠告を聞くと、ヒカルが物悲しい笑みを浮かべる。彼女はネネの死を思い返していた。

 カイザーを拒絶して魔力が使えなくなった。そのためにネネを守れず、死なせてしまった。罪の意識と後悔が、ヒカルの中で駆け巡っていた。

(あたしがしっかりしてたら・・ネネちゃんは・・・)

I think that you should stop having already worried. The friend is made embarrassed oppositely.(もう悩むのはやめたほうがいいと思います。逆に友人を困らせてしまいます。)

(カイザー・・・でも・・・)

Everybody hopes for you energetic as this morning.(今朝のような元気なあなたを、みなさんは望んでいますよ。)

 困惑するヒカルに、カイザーが励ましていく。気持ちを落ちつけてから、ヒカルは笑みを取り戻していく。

(元気にならないと・・ネネちゃんに悪いし、メイとも向かい合えなくなる・・・)

 自分に喝を入れてから、ヒカルは再び足を速める。メイとの対面と衝突を彼女は予感していた。

 

 学校を訪れたものの、ヒカルは孤独を感じずにはいられなかった。

 普段過ごしている教室。だがそこにはメイもネネもマモルもいない。心から信頼できた親友の姿が、今日の教室にない。

 魔法と元気は取り戻せたものの、ヒカルの心には寂しさが残っていた。

(どうして・・・どうしてこんなことになってしまったのかな・・・)

 どうすることもできなかった現実と非情さを痛感し、呪うヒカル。

(こんな悲しみを生み出したギルティア・・絶対に許せない・・・!)

 悲しみを怒りに変えていくヒカル。彼女はギルティアとの次の戦いに備えるのだった。

 

 孤独と苦悩を深めていくヒカルの様子を、ダイアナが鋭く見据えていた。

(今度こそ最後よ、ウォーリアー・ウラヌス・・お前を倒さなければ、私が最後を迎えることになる・・・)

 戦意と敵意をむき出しにするダイアナ。

(絶対に倒してやる・・私の存命のためにも、ウラヌスは絶対に私に倒されなくてはならない・・・!)

 ヒカル打倒のために、ついに動き出したダイアナ。彼女はヒカルのいる学校を中心に、特殊な結界を展開していった。

(これを展開させるには、私であっても時間がかかりすぎてしまう・・それまで気付かれず、妨害されなければ、必勝の秘策が完成する・・・!)

 結界を完成させるため、ダイアナは意識を集中させていく。学校の周辺には、多くのエビルたちが物陰に隠れて待機していた。

 

 普段通りに授業を受けていたヒカル。彼女は必死に気持ちを日常に戻そうとしていた。

I feel the group of strong power. It has aimed at us.(強い力の集まりを感じます。私たちを狙ってきています。)

 そこへカイザーからの声が飛び込んできた。一瞬緊迫を浮かべるヒカルだが、周りに不審に思われないように冷静になる。

(もしかしてギルティアが・・・どこにいるか分かる、カイザー・・?)

It is not one person. Here has been surrounded by an adult number.(1人ではありません。大人数でここを取り囲んでいます。)

 ヒカルの問いかけにカイザーが答える。ヒカルは意識を集中して、敵の気配を探ろうとする。

 彼女の研ぎ澄まされた五感が、ダイアナの魔力を捉えた。

(ダイアナ・・こんなときに・・・!)

 授業中に襲撃してきたダイアナに、ヒカルが焦りを覚える。すぐに迎え撃つことができず、彼女は歯がゆさを感じていた。

“ウォーリアー・ウラヌス・・いえ、天宮ヒカル・・”

 ヒカルの脳裏にダイアナの声が響き渡ってきた。

“カイザーを私たちに差し出しなさい。そうすればここにいる人間たちの命は保障するわ・・”

(ふざけないで!あたしたちの世界をムチャクチャにしようとしてるギルティアが、そんな保障なんてするはずがないじゃない!)

“抵抗して戦うつもり?でもここで戦えば、確実にここにいる人間たちは犠牲になるわよ・・”

 心の中で抗議の声を上げるヒカルだが、ダイアナの自信は揺るがない。

(卑怯な・・アンタみたいなの、絶対に許すわけにはいかない!)

Surrounding people will be jeopardized if unskillfully going out. Please still endure.(下手に出ていけば、周りの人たちを危険にさらすことになります。まだ耐えてください。)

 怒りを覚えるヒカルを、カイザーが呼び止める。

(でも・・このままじゃどっちにしてもみんなが・・・!)

The enemy is sure to show the chance. Never miss the moment.(敵は必ず隙を見せるはずです。その一瞬を決して見逃さないようにしてください。)

(一瞬の隙・・・出てくる前に、みんなに何もなければいいんだけど・・・)

 カイザーからの助言から受けて、ヒカルは必死にこらえようとする。

“もうあなたには、私たちに従う以外の選択肢はないのよ・・”

 勝機を見出すダイアナの声が、ヒカルに心の中に響く。しかしヒカルは学校の人々のため、すぐに飛び出すことができなかった。

 

 ヒカルへ念話を送りながら、結界の展開を続けるダイアナ。しかしヒカルが動きを見せた様子はない。

「出てこないか・・でも、そのほうが私たちには好都合・・・」

 一瞬眉をひそめるダイアナが、すぐに笑みを取り戻す。

(このまま結界展開を続ける。ウラヌスが少しでも何か動きを見せたなら、攻撃して構わないわ・・)

 ダイアナが念話でエビルたちに呼びかけた。

「覚悟してもらうわよ、ウラヌス・・この結界で、あなたは地獄の苦しみを味わうことになるのよ・・・」

 勝ち誇るダイアナが、結界に向けて魔力を注ぎ込んだ。紫の球状のヒカルが、学校を包み込んでいった。

 

 迂闊にダイアナに立ち向かうことができず、苦悩を深めるヒカル。打開の策を探る間も、彼女は焦りを募らせていた。

 そのとき、教室内のクラスメイトの1人が席を立ち、ヒカルに振り向いてきた。

 続いて他のクラスメイトが立ち上がり、さらには先生までもがヒカルに目を向けてきた。

「どうしたの、みんな・・・?」

「天宮ヒカル、カイザーを渡しなさい・・・」

 ヒカルが不安を浮かべると、先生が冷淡に声をかけてきた。普段の明るい雰囲気が一切感じられず、重苦しい空気があふれてきていた。

「何を言ってるんですか、先生!?・・・みんなも、ホントにどうしたの・・・!?

 先生とクラスメイトたちの異変に、ヒカルは困惑して声を荒げる。

All members are manipulated. Perhaps, with something the enemy set.(全員操られています。おそらく敵が仕掛けた何かによって。)

 そんな彼女に、カイザーが冷静に状況を説明する。

(操られてる!?・・まさか、ギルティアの仕業なの・・・!?

Different power wraps this place. The person whom power influences seems to be moved like art person's mind.(この場所を異質の力が包み込んでいます。力の影響を受けた人は、術者の意のままに動かされてしまうようです。)

(そんな・・・どうしたら・・・!?

Is power erased or is the enemy who is having them move power defeated?The latter might be powerful under the present situation.(力を消すか、力を発動させている敵を倒すか。現状では後者が有力でしょうね。)

(敵・・・ダイアナが、こんなことを・・・!)

 カイザーの言葉を聞いて、ヒカルがダイアナへの怒りを募らせていく。ダイアナの張った結界に操られた人々が、ヒカルに迫って取り囲もうとする。

Seeing the appearance as it is will jeopardize everybody oppositely. It is necessary to defeat the enemy in a hurry.(このまま様子を見るのは、逆にみなさんを危険にさらすことになります。急いで敵を倒す必要があります。)

 カイザーの言葉に浮き動かされる形で、ヒカルは生徒や先生たちをかき分けて教室を飛び出した。

(ダイアナの力はこの校舎の屋上に感じる・・一気に突っ走って、みんなを元に戻す!)

「カイザー!」

 心に決めるヒカルが、走りながらバリアジャケットを身にまとう。彼女は速度を上げて校舎を飛び出し、一気に屋上まで飛翔する。

「ダイアナ!」

 言い放つヒカルの視線の先には、妖しい笑みを浮かべているダイアナがいた。

「みんなを元に戻して!あなたたちの狙いはあたしでしょ!?

「そうよ・・私たちの狙いは、最初からあなたよ、ウラヌス!」

 呼びかけるヒカルに、ダイアナが笑みを強める。学校周辺で待機していたエビルたちが、ヒカルに向かって飛びかかってきた。

「ウラヌスを捕らえろ!死んでも逃がすな!」

 ダイアナの命令で、エビルたちがヒカルに飛びついて動きを止めようとする。だがヒカルは魔力を放出してエビルたちを吹き飛ばす。

「すぐにみんなを元に戻して!でないと・・!」

「でないとどうだというの?」

 呼びかけるヒカルだが、ダイアナは自信を消さない。

「あなたはこの状況は分かっていないようね。ここの人間を私の思うように動かせるようにしたのは、ただ手数を増やしたかっただけではないのよ・・」

 ダイアナがヒカルに言葉を投げかけると、クラスメイトの1人が屋上に現れた。彼女は自分の首に刃を出したカッターナイフを突き付けてきた。

「な、何を・・!?

「大人しくカイザーを差し出さなければ、あの人間の命はない。私の考えひとつで、操っている人間をどうとでもできるのよ・・」

 驚愕するヒカルに、ダイアナが強気に言い放つ。彼女はクラスメイトを操って、人質に仕立てたのである。

「すぐにバリアジャケットを解除しなさい。カイザーを取り出した後、ここの人間たちは解放するわ・・」

「そんな言葉、信じられないって言ってるでしょ!」

「ならこの人間を放置するつもり?見殺しにするなんて、あなたにはできないでしょうね・・」

 ダイアナに向かおうとするヒカルに、ダイアナがさらに脅しをかける。迂闊に動くことができなくなり、ヒカルが歯がゆさを募らせる。

「バリアジャケットを解除して、大人しくしなさい。これ以上違う動きを見せたなら、あの人間は自殺することになるわよ・・」

 さらに脅迫してくるダイアナに、ヒカルはついにバリアジャケットを解除した。

「これでいいんでしょ・・みんなを元に戻して!」

「事態が事態だからね。念には念を入れておく・・アームズ!」

 呼びかけるヒカルに対し、ダイアナはさらにアームズを攻めさせる。彼女はヒカルから戦う意思だけでなく、戦うための魔力をも封じこもうとしていた。

「これで小細工をして人間を助けようとしても、根源である魔力を封じてしまえばその小細工も使えなくなる・・」

 ヒカル打倒のために徹底するダイアナ。アームズにも迫られて、ヒカルは窮地に立たされていた。

「思っていたこととはちょっと違ったけど・・うまく引っかかったみたいだね・・」

 ヒカルが唐突に口にした言葉に、ダイアナが眉をひそめる。

 そのとき、アームズが踏みつけた瞬間に屋上の床が突然崩れ出した。同時にヒカルがクラスメイトに向かって駆け出した。

 ヒカルはバリアジャケットを解除する前に両足から魔力を放ち、屋上の床をもろくしたのである。重量のあるアームズが踏みつけたことで、床は崩壊を早めることとなった。

「ウラヌス、いつの間にこんなマネを・・・!」

 ヒカルの奇襲にダイアナが毒づく。ヒカルがクラスメイトに駆け寄り、持っていたカッターナイフを叩き落とした。

「ゴメン!」

 ヒカルはさらに手刀を浴びせて、クラスメイトを気絶させる。意識を失ったクラスメイトが、倒れて動かなくなる。

「カイザー!」

 再びバリアジャケットを身にまとうヒカル。策を破られて、ダイアナが苛立ちを隠せなくなる。

「こんな卑怯なことをするアンタたちの言うことには、絶対に従わない!あたしはアンタたちをやっつけて、みんなを助ける!」

「言ってくれるわね、ウラヌス!でも私たちが操っている人間が1人だけでないことを忘れているわよ!」

 声を張り上げるヒカルに対し、ダイアナがすぐに笑みを取り戻す。

「あなたの見えないところで、私の操る人間たちが、いつでも自殺できるように待機させている。あなたの不利は変わってないわよ、ウラヌス・・」

 さらにヒカルに脅迫していくダイアナ。

「覚悟を決めなさい、ウラヌス。今のあなたのしていることは、ムダな抵抗にしかならないのよ・・」

「そうまでして・・みんなを苦しめてまで・・・!」

 哄笑を浮かべるダイアナに対し、ヒカルが低い声音で言いかける。

「目的のためなら、関係ない人まで利用して危険に巻き込む・・やっぱり許せないよ、ギルティア・・・!」

「許せなくても状況は変わらない。これ以上の抵抗は、人間たちの犠牲の増加にしかならないわ・・」

 怒りを募らせていくヒカルだが、ダイアナは自信を崩さない。

 次の瞬間、ヒカルの体から紅い光があふれ出してきた。彼女はダイアナに向けて鋭い視線を向けてきていた。

「抵抗しないほうがいいって言ったのに聞こえなかったの?大人しくカイザーを差し出さないと、あなたの代わりに他の人間たちが犠牲に・・」

「そんなことしたら・・あたしはアンタに一切容赦しない・・・!」

 忠告を送るダイアナだが、ヒカルは鋭い視線を消さない。今の彼女はダイアナへの怒りに駆り立てられていた。

「逆上でもしたというの!?あなたの身近な人間が死ぬことになるのよ!」

 ダイアナが声を荒げるが、ヒカルは態度を変えない。揺るがない怒りを見せてくる彼女に、ダイアナが焦りを膨らませる。

「アームズ、出て来なさい!ウラヌスの力を封じなさい!」

 ダイアナの命令を受けて、屋上から落とされたアームズたちが登ってきた。アームズのAMFでヒカルの魔力が弱まったのを見計らって、ダイアナは攻撃を加えようと考えていた。

 だがヒカルの発する魔力が弱まることはなく、彼女が発した衝撃波によってアームズが簡単に吹き飛ばされた。

AMFすら無効化できないウラヌスの底力・・・でも大人しくしなければ、ここの人間が・・!」

 またも脅迫するダイアナだが、素早く飛び込んできたヒカルに拳を叩き込まれる。痛烈な衝撃に襲われて、ダイアナが怯む。

「許さない・・アンタたちギルティアの勝手にはさせないって言ってるでしょ・・・!」

 ヒカルが低く告げると、さらに1発拳を叩きつける。突き飛ばされたダイアナが、学校の屋上から投げ出される。

(私の命がけの作戦が、ことごとくウラヌスに・・・!)

 絶望感にさいなまれるダイアナ。失敗の許されない出撃に失敗しようとしている現状を、彼女は認めたくなかった。

(もう私には・・死ぬ以外の未来はないというの・・・!?

 迫ってきている破滅に抗おうとして、ダイアナが目を見開く。彼女の眼前に、屋上から飛び出してきたヒカルが迫ってきた。

「もう容赦しない・・ダイアナ、アンタを倒す!」

「もうこの未来しかないというなら!」

 言い放つヒカルに、いきり立ったダイアナがつかみかかる。

「このまま私と地獄に行ってもらうわよ、ウォーリアー・ウラヌス!」

「な、何を!?

 ダイアナが言い放った言葉に、ヒカルが声を荒げる。

「このまま魔力を放出して、あなたを粉々に吹き飛ばす・・カイザーを失うのは惜しいけど、このままあなたを野放しにするよりはいいわ・・・!」

「まさか、自爆するつもりなの!?

「そうよ!私も死ぬけど、これだけ密着していれば、さすがのあなたも死ぬわよ!」

 驚愕するヒカルに言い放ち、ダイアナが魔力を集中させる。彼女の腕を振り払おうとするヒカルだが、ダイアナから抜け出ることができない。

「絶対に離さない・・あなたは私と一緒に、地獄に落ちるのよ!」

「冗談じゃない!あたしも死ぬわけにはいかないよ!」

 高らかに哄笑を上げるダイアナに、ヒカルが必死に抗おうとする。

All of the power that can be had are demonstrated and it escapes. The close-in of this self-destruction cannot be endured in case of you who strengthens.(持てる力のすべてを発揮して脱出するのです。たとえ強くなったあなたでも、この至近距離での自爆に耐えられません。)

 カイザーがヒカルに向けて呼びかけていく。

(でもカイザー、ダイアナから抜け出せない・・・!)

It is safe. If it is you, it is possible to do. Please believe you.(大丈夫です。あなたならできます。自分を信じてください。)

 心の中で不安を浮かべるヒカルに、カイザーがさらに声をかけてくる。その言葉に励まされて、ヒカルが気持ちを引き締める。

「ムダなことは考えずに考えずに諦めることね!あなたは私とともに滅びる運命にあるのよ!」

「そんな運命、あたしは受け入れない!」

 ダイアナの言葉を跳ね除けるヒカル。ヒカルは残った自分の魔力を振り絞り、両腕に集めていく。

「決して逃がさない!絶対にあなたを離したりはしない!」

 ダイアナも負けじとヒカルをつかむ両手に力を込める。だがヒカルの力がダイアナを徐々に上回っていく。

「ここまで力を上げてくるとは・・せめて私の魔力が解放されるまで・・・!」

 自分の魔力が爆発するのを予期するダイアナ。彼女は爆発までヒカルを押さえ込もうと、最後の力を振り絞る。

(あたしは・・あたしは負けられない・・みんなのために・・メイのためにも!)

 ヒカルの脳裏にメイの姿が蘇る。メイと一緒に、今までどおりの楽しい時間を過ごしたい。その一途な願いが、彼女を奮い立たせていく。

 ついにヒカルの力が、ダイアナの両手を振り払った。

「なっ・・!?

 自分からヒカルが離れていくことに、ダイアナは目を疑った。だが彼女の視界がすぐに真っ白になっていった。

(これが・・私の最後だというの・・・こんなことで、私の命が終わってしまうの・・・!?

 絶望に襲われていくダイアナが、心の中で呟いていく。

(申し訳ありません、マスター・ウラヌス・・あなたのご意向に背いてしまって・・・)

 クロノスへの謝意と罪悪感に満たされながら、ダイアナが瞳を閉じる。彼女の姿が消え、閃光とともに爆発を巻き起こした。

 とっさに防御の体勢を取って、ヒカルが衝撃に備える。爆発の光に襲われて、彼女が吹き飛ばされる。

「うわっ!」

 ビルの壁に叩きつけられて、ヒカルが悲鳴を上げる。だがそれ以上の外傷はなく、生き延びることができた。

 体を起こして周囲の様子を確かめるヒカル。眼下の街に被害は見えず、ダイアナの姿はなくなっていた。

「危なかった・・街には何も起きてないみたい・・・」

 街を見下ろすヒカルが安堵の吐息をつく。

「いけない・・みんなのこと・・・!」

 だがヒカルはすぐに緊張を覚え、学校へと引き返していった。

 

 ダイアナの敗北と死を、ブルガノスとカイロスも見ていた。

「そんな、バカな!?・・・ダイアナが・・死んだ・・・!?

 ダイアナの死にブルガノスが絶望する。その隣でカイロスがあざ笑ってきた。

「不様なものだ。最後の最後までマスター・クロノスとギルティアのために戦えないとは・・・」

「口を慎め、カイロス・・お前も似た状況に追い込まれていると言っていたではないか・・・!」

 カイロスの態度にブルガノスが憤りを見せる。しかしカイロスは態度を変えない。

「そうだ・・オレはダイアナのような末路は絶対に辿らない・・オレは任務を果たし、生き延びてやる・・・!」

 カイロスが笑みを消して、振り絞るように言葉を口にしていく。

「ダイアナが必死になったおかげで、ウラヌスは弱っている・・この隙を逃さない手はない・・・!」

「いや、そのような弱みを突いた攻め方が通用しないことは、お前も分かっているはずだ。甘く見ると返り討ちにされるぞ・・・」

 ヒカル打倒に執念を燃やすカイロスを、ブルガノスが言いとがめる。

「次はオレが行く・・ダイアナの恨みは、オレが晴らしてやる・・・!」

「殊勝なことだな・・ダイアナの二の舞にならないことだな・・」

 意を決するブルガノスに、カイロスが不敵に言いかける。ブルガノスは意に介することなく、歩き出していった。

(このままでは済まさんぞ、ウォーリアー・ウラヌス・・ダイアナの恨み、思い知らせてやる・・・!)

 ダイアナの無念とヒカルへの怒りを胸に秘めて、ブルガノスも最後の戦いに臨もうとしていた。

 

 ダイアナとの死闘を切り抜けたヒカルは、急いで学校に戻った。裏口から校舎に入ると同時に、彼女はバリアジャケットを解除した。

 慌てて教室に戻ったヒカル。クラスメイトたちも先生も今目を覚ましたところで、結界も催眠も消えていた。

「あれ?・・私・・・?」

「どうして寝てしまったのかしら・・・?」

 何が起こっていたのか記憶が残らず、クラスメイトたちも先生も困惑するばかりになっていた。

「よかった・・みんな無事みたい・・・」

 何とか事なきを得て、ヒカルは改めて安心をする。しかし彼女は不安を完全に払拭できずにいた。

(ギルティア・・ホントに命がけであたしを倒そうとしてきた・・・命を捨ててまで、どうしてギルティアのために・・・!?

They also are fighting ..the main straightening that he is carrying out the loyalty... They might be life cliffs as fought so that you may defend your important person and place.(彼らも自分が忠義を尽くしている主のために戦っています。あなたがあなたの大切な人や場所を守るために戦うように、彼らも命がけなのでしょう。)

 命を捨ててまで倒そうとしてきたダイアナに憤るヒカルに、カイザーが声をかけてくる。

If such an end was not done, your important person might be sacrificed. It was unavoidable though was painful.(あのような結末をさせないようにしたら、あなたの大切な人を犠牲にしかねなかったところです。辛いことでしょうが、やむを得なかったのです。)

(でも、それで納得できることじゃ・・・)

Power is not complete though improves the possibility. Even if power is obtained, everything cannot be done according to the desire.(力は可能性を高めますが、完全ではありません。力を手に入れても、何もかも思い通りにできるわけではないのです。)

 不安を募らせていくヒカルに、カイザーがさらに助言を投げかけていく。クラスメイトたちとともに、ヒカルも自分の席に着く。

Unhappiness and the tragedy might be experienced by having obtained power oppositely in must being not sure daily life. You are sure to experience it enough, too.(逆に力を手に入れたことで、日常ではありえないはずの不幸や悲劇を体感してしまうこともあります。それはあなたも十分に体感しているはずです。)

 カイザーのこの言葉で、ヒカルがこれまでの戦いと悲劇を思い返していく。

 メイとのすれ違い、マモルの裏切り、ネネの死。ドライブウォーリアーとなった自分が体感したのは、力を得た喜びと優越感ではなく、悲劇と孤独だった。

(ネネちゃん・・メイ・・あたし・・・)

 親友への思いを膨らませ、ヒカルはさらに孤独を感じていった。

 

 

次回予告

 

ヒカルに挑戦状を叩きつけたブルガノス。

ダイアナの恨みを晴らすため、全身全霊を賭ける戦士の猛攻。

激化していく攻防の中、メイがヒカルへの挑戦を決意する。

 

次回・「宿命の前兆」

 

終わりなのか、それとも始まりか・・・?

 

 

作品集

 

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