Drive Warrior Episode19「宿命の前兆」
ヒカルの猛反撃によって作戦が失敗し、命を落としたダイアナ。彼女の無念を晴らすため、ブルガノスがヒカルに最後の挑戦を仕掛けようとしていた。
(ウォーリアー・ウラヌス・・今度こそ・・今度こそこのブルガノスがお前を倒す・・・)
ヒカルへの怒りと闘志を募らせていくブルガノス。
(見ていろ、ダイアナ・・私の全てを賭けて、ウラヌスを倒してみせる・・・!)
今は亡きダイアナに呼びかけ、ブルガノスが両手を強く握りしめる。彼は戦いに備えて、集中力を高めていった。
ダイアナの決死の猛攻に辛くも勝利したヒカル。だが彼女は後味の悪さを感じていた。
全ての悲劇の元凶であるギルティア。その親玉を一刻も早く倒すことが悲劇を終わらせる道だと、ヒカルは割り切ろうとしていた。
(カイザー・・ギルティアのボス・・クロノスって言ったよね・・・)
“Only I also hear the name, and it doesn't know details. However, it might expect that it will have power that exceeds a high-ranking executive and be correct.(私も名前を聞くだけで、詳しいことは知りません。ですが上位幹部をも上回る力を持っていると見て間違いないでしょう。)”
ヒカルが切り出した問いかけに、カイザーが答える。
ギルティアの統率者、クロノス。ギルティアにおいて絶対的な存在とされながら、その正体を知る人物はいないと言われている。カイザーもクロノスに関する詳しい情報を持っていなかった。
(カイザーでも知らない・・何だっていうの、クロノスは・・・)
“However, time that will approach the true colors one of these days is sure to come. Let's maintain me without rushing it.(ですが近いうちにその正体に近づくときが来るはずです。焦らずに自分を維持していきましょう。)”
(カイザー・・・ありがとうね・・・)
励ましてくるカイザーに、ヒカルが感謝の言葉をかける。
(ギルティアやクロノスもだけど・・メイとも・・向き合わないといけない・・・戦うことになるとしても・・・)
メイとの次の対面を予期するヒカル。彼女は次の戦いに備えながら、束の間の休息に身を預けるのだった。
警察の神凪家への監視は続いていた。しかし邸宅の私室にいたメイは、全く追い詰められているとは思っていなかった。
(そろそろ動いたほうがよさそうね・・いい加減にギルティアが狙ってくるでしょうから・・)
警察とギルティアの出方をうかがっていくメイ。
“It becomes impossible to go back here. Can you determine it?(ここからの後戻りはできなくなります。覚悟はできていますか?)”
そこへハデスがメイに呼びかけてきた。それでもメイは顔色を変えない。
(もう後戻りするつもりなんて全くない・・もう戻りたくても戻れないのよ・・・)
心の中で言い放つと、神凪家に身を潜めていたメイが玄関から出ていった。その彼女の姿にコウたち刑事も気付いた。
メイが向かっている正門の前に、飛び出したコウたちが駆け込んできた。
「神凪メイだな?悪いが一緒に来てもらおうか・・」
「殺人容疑で逮捕、というのでしょう・・?」
低く告げてくるコウに、メイが落ち着いた態度で問い返す。
「話は署で聞く。一緒に来るんだ・・」
刑事の1人がメイをつかもうとする。だがメイが刑事の手を振り払う。
「今の私は何者にも従わないわ・・愚か者たちの味方をするつもりなら、相手が誰だろうと容赦はしない・・・!」
目つきを鋭くしたメイが、コウたちの前でバリアジャケットを身につける。異質の服装に身を包んだ彼女に、コウたちが緊迫を覚える。
「そ、その姿は・・・!?」
「やはり、お前が街の役員を殺害したのか・・!?」
刑事たちが銃を手にして身構える。しかしメイは全く物怖じしない。
「そんなもの、私に通用するはずがないじゃない・・」
「大人しくしろ!さもないと撃つぞ!」
低く告げるメイに、刑事たちが銃を構えて警告する。
「よせ、やめろ!」
コウが呼び止めるが、刑事たちはメイに向けて発砲してしまう。だが放たれた弾丸はメイに当たる直前に、突然かき消えた。
「なっ・・!?」
銃が効かないことに刑事たちが驚愕する。メイは冷淡な表情のまま、右手を振りかざす。
右手から放たれた真空の弾が、刑事たちを撃ち抜いた。
「ぐあっ!」
昏倒して動かなくなる刑事たち。人間離れした力を見せつけるメイに、コウが緊迫を募らせていく。
「おじさんはすぐにはやらない・・私の怒りを思い知らせてやる・・・」
メイが言い終わると同時に、コウがとっさに横に飛んだ。メイが放った光の弾を、コウは辛くも回避した。
「動きがいいね・・でも結局は人間・・・」
メイが体勢を整えるコウに一気に詰め寄り、打撃を叩き込む。
「ぐっ!」
目にもとまらぬ重い攻撃に、コウが激痛を覚えてうずくまる。起き上がれない彼に、メイが何度も踏みつけて痛めつけていく。
「中途半端な正義感、平和を見失った正義・・実に不愉快よ・・・!」
「メイちゃん・・どうして、こんなことを・・・君は真面目で誠実な子だったはず・・その君が・・・!」
冷淡に告げてくるメイに対し、コウが声を振り絞る。しかしメイは顔色を変えない。
「まだ私をそういう人だと見てくれるのは嬉しいわ・・でも、世界はおじさんが思っているような平和なものではないのよ・・・」
一瞬物悲しい笑みを見せるメイだが、すぐに冷たい表情に戻る。
「世界は正さないといけない・・本当に力のある人間が動かしていかないといけないのよ・・・!」
「違う・・世界を動かしていくのは力ではない・・人を思う心だ・・・!」
「その心を、愚か者にあったとでもいうの!?」
言い返してくるコウに、メイが憤慨し、彼を踏みつけている足に力を込める。
「今世界を動かしている連中は、心を持たない愚か者ばかり!自分たちのことしか考えていない!」
「メイちゃん・・・!」
「そんな連中に世界を任せたら、どうなるか分かったものじゃない!だから私は正すのよ!愚かになっていく世界を!」
うめくコウの前で、メイが声を張り上げる。世界に対する憎悪が、彼女の中を駆け巡っていた。
「だからって・・どんな理由があっても、人殺しを許すわけにはいかねぇ・・・!」
コウが声と力を振り絞り、メイの足を振り払って起き上がろうとする。
「第一・・そんなことをして、ヒカルが喜ぶわけがねぇ・・お前を信じているヒカルのことを、少しは考えたらどうなんだ・・・!」
「ヒカルも分かってくれると思っていた・・・でも、ヒカルも同意してくれなかった・・・」
必死に呼びかけるコウだが、メイは冷たく吐き捨てるだけだった。
「私は戦う・・本当の平和のためなら、どんな相手でも倒していく・・・!」
「君は・・ヒカルやみんなの気持ちを裏切ってまで、こんなバカなことをしたいのか・・・!?」
決意を口にするメイに、コウが怒りの言葉を投げかける。その言葉が、メイの感情を逆撫でした。
「あなたも、愚か者の味方なのね・・・!」
怒りを噛みしめたメイが、コウを持ち上げる。彼女はコウをつかんでいる両手に魔力を集中させる。
「愚か者は見逃さない・・全員私が、世界から消す・・・!」
メイが両手から魔力を放出し、閃光をきらめかせる。その光に襲われて、コウは焼き尽くされたような衝撃に襲われた。
(メイちゃん・・・ヒカル・・・)
メイとヒカルへの思いを胸に秘めたまま、コウは倒れて力尽きた。
ヒカルは今、ビル街にある階段に来ていた。彼女はそこで気持ちの整理をしていた。
メイとどう向き合っていけばいいのか、ヒカルは考えていた。気持ちの整理をするときは、彼女はよくこの階段に来ていた。
(メイ・・あたしはもう迷わない・・今度見つけたら、メイちゃんを止めるから・・・)
改めて決意を固めるヒカル。気分を落ち着けたところで、彼女は改めてメイを探しに出ようとする。
「ここにいたか、ウォーリアー・ウラヌス・・」
そのとき、ヒカルのいる階段にブルガノスが現れた。ブルガノスは鋭い殺気をヒカルに向けてきていた。
「ブルガノス・・・!」
「ウラヌス、お前を倒す・・ダイアナの恨みを晴らしてやる・・・」
緊張の色を見せるヒカルに、ブルガノスが敵意をむき出しにする。
「どうして・・・どうしてそこまでギルティアのために・・・!?」
「どうして?今更愚問とは・・全てはマスター・クロノスの意思だ・・」
ヒカルの唐突な問いかけに、ブルガノスは目つきを鋭くしたまま答える。
「この世界の支配こそがマスター・クロノスの意思だ。だがダイアナはこの志半ばにして命を落としてしまった・・」
ダイアナの無念を痛感して、ブルガノスが歯がゆさを見せる。
「この私の全てを賭けて、ウォーリアー・ウラヌス、お前を倒す!」
「待って、ブルガノス!・・どうしても、戦わないといけないの・・・!?」
構えを取るブルガノスに、ヒカルが呼びかける。しかしブルガノスは戦意を消さない。
「ここまで我々に刃向い、ダイアナを死に追いやった・・今になって戦いを避けられると思っているのか?・・滑稽だ・・・」
「そう・・・だったら人のいないところにして・・たとえ結界の中でも、ここでは戦いたくない・・・」
「人がいるところも避けたいか・・・いいだろう・・転移するぞ・・・」
「うん・・ホントに人のいない、みんなを巻き込まないところに・・・」
ヒカルの同意を受けてから、ブルガノスが転移魔法を発動させた。2人は人のいない草原へと移動し、さらにブルガノスが展開させた結界の中に隔離された。
「これで文句はないだろう?・・ここでなら存分に魔力を振るうことができる・・・」
「あたしは、まだ倒れるわけにはいかない・・・だからもう、戦うことに迷わない・・・!」
不敵な笑みを見せるブルガノスと、身構えるヒカル。
「カイザー!」
叫ぶヒカルの体をバリアジャケットが包み込む。臨戦態勢に入った彼女が、ブルガノスを見据える。
「アンタたちギルティアの思い通りにはさせない!あたしが止めてやる!」
「強気だな・・だが私は止まるわけにはいかないのだ!」
ヒカルとブルガノスが真正面から同時に飛び出していく。2人が繰り出した拳がぶつかり合い、激しく火花を散らす。
だがヒカルが力負けし、ブルガノスに押される。怯んだ彼女に向けて、ブルガノスが追撃を狙う。
ヒカルはとっさに飛び上がり、ブルガノスの打撃をかわす。すかさずヒカルがブルガノスに回し蹴りを叩き込む。
「その程度か、ウォーリアー・ウラヌス・・・!?」
ブルガノスがヒカルの足をつかみ、振り回して地面に叩きつける。
「うっ!」
全身に衝撃を覚えて、ヒカルが顔を歪める。さらにブルガノスに蹴り飛ばされ、彼女は激しく横転する。
「すごい力・・今までとは何かが違う・・・!」
“Do not relax your guard. The other party demonstrates power more than before.(油断してはいけません。相手は今まで以上の力を発揮してきています。)”
毒づくヒカルにカイザーが呼びかける。ヒカルは周囲に注意を払いながら立ち上がる。
そこへブルガノスが飛びかかり、魔力を込めた拳を繰り出してきた。カイザーによって魔力の障壁が展開されたが、ブルガノスの打撃を防ぎきれず、ヒカルが上空に大きく突き飛ばされる。
ヒカルは負けじと右手を握りしめて、魔力を集中させる。彼女は上昇してきたブルガノスを迎え撃つ。
2人の拳がぶつかり合い、雷のような衝撃がほとばしる。ヒカルはさらに左手を突き出して、打撃の威力を上げようとする。
だがブルガノスは身をひるがえして、ヒカルの攻撃をかわす。
「そのような攻撃で私を倒せるものか!」
ブルガノスがヒカルの頭をわしづかみにする。振り払おうとするヒカルが、ブルガノスに空中で大きく振り回されていく。
さらにブルガノスがヒカルを地上に向けて投げ飛ばした。
「くっ!」
ヒカルは全身に力を込めて踏みとどまり、地上に衝突するのを免れた。彼女は浮遊したまま、上空にいるブルガノスを見据える。
「手強い・・全然攻撃を当てられない・・跳ね返されるだけ・・・!」
力を増していくブルガノスに、ヒカルが危機感を膨らませていく。
“The match from the front is dangerous. It would be better to aim at the situation reversal by using other party's power.(正面からの勝負は危険です。相手の力を利用して、形勢逆転を狙ったほうがよさそうです。)”
カイザーからの助言を受けて、ヒカルが小さく頷く。
「どうした、ウラヌス!?手も足も出せないか!」
ブルガノスがヒカルに向けて高らかに言い放つ。ヒカルはブルガノスの出方をうかがいながら、打開の糸口を探っていた。
「来ないというなら、私から行くぞ!」
ブルガノスが両手に力を込めて前に突き出し、巨大な光の弾を出現させる。
「射撃、砲撃は得意ではなく大振りだが、これだけの出力で放てば素早く回避しても間に合わないだろう!」
光の弾を高らかに掲げるブルガノス。
(周りに人や街がないのがせめてもの救いだけど・・あんなのを撃たれたら、よけようとしてもよけきれない・・・!)
ヒカルもブルガノスの魔力の迎撃に、焦りを隠せなくなっていた。
“Even if it evades, it suffers from the aftereffect. Only catching, and driving back as it is are here.(回避しようとしても余波でダメージを受けてしまいます。ここは受け止めて、そのまま跳ね返すしかありません。)”
(カイザー・・そうしたら、魔力を消耗しちゃうよ・・・!)
カイザーからの助言に、ヒカルが困惑を膨らませていく。
“It leads to the consumption of power more than this when it is a method excluding this. This is a method of the best that I derived though it might be painful.(これ以外の方法ですと、これ以上の力の消費に繋がってしまいます。苦しいでしょうが、これが私が導きだした最善の方法です。)”
(これしかない・・これしか・・・)
“It is believed that it is possible to do if it is you. Therefore, it proposed this method.(あなたならできると信じています。だからこの方法を提案しました。)”
カイザーからの信頼に勇気づけられていくヒカル。彼女は気持ちを引き締めて、両手に力を込める。
「受け止めるつもりか・・そうでなければ面白くない!」
目を見開いたブルガノスが、ヒカルに向けて巨大な光の弾を放つ。ヒカルは両手を突き出して、光の弾を受け止める。
光の弾の魔力を止めきれず、ヒカルが徐々に押されていく。
“Do not receive it completely completely. To play it, it drives it back.(完全に受け切ってはいけません。弾くように跳ね返すのです。)”
「弾くように・・弾くように!」
カイザーの助言を受けて、ヒカルがさらに両手に力を込める。両手から衝撃波がほとばしり、光の弾を逆方向に跳ね返した。
「何っ!?」
驚愕の声を上げるブルガノスが、跳ね返ってきた光の弾をかわす。
「この攻撃をそのまま返してくるとは・・ウラヌス・・・!」
ヒカルの力を痛感していくブルガノス。地上に視線を戻した彼だが、その先にヒカルの姿がない。
「いない!・・ウラヌス、どこに・・・!?」
ヒカルの行方を追って、ブルガノスが視線を移す。彼は視線を上空の太陽に向ける。
太陽に紛れて、ヒカルが両手に魔力を集めていた。
「グランドスマッシャー!」
ブルガノスに向けて魔力を放出するヒカル。不意を突かれたブルガノスが、ヒカルの魔法の直撃を受ける。
地上に叩きつけられて、ブルガノスがうめく。一気に魔力を放出して、ヒカルも疲れを隠せなくなっていた。
「魔力が強いだけでない・・機転も利く・・・!」
立ち上がるブルガノスが危機感を募らせていく。だが彼の激情は増す一方となっていた。
「だが、このままで済ますものか・・ダイアナが浮かばれない・・・!」
ダイアナの恨みを晴らすため、ブルガノスはさらに怒りと激情を膨らませていく。
「覚悟しろ、ウォーリアー・ウラヌス!お前を倒す以外に、私が報われる手段はない!」
「あたしはアンタたちなんかに負けない!もうこれ以上、みんなの日常を壊されてたまるもんか!」
互いに高らかに言い放つブルガノスとヒカル。地上に降りてきた彼女を、ブルガノスが鋭く見据える。
(見ていろ、ダイアナ・・必ずウラヌスを地獄に叩き落としてやる・・・!)
「ウラヌス、お前はお前の戦う理由を持っているなら、その全てを持って私を倒してみせろ!」
ブルガノスが残された力を振り絞って、ヒカルに向かっていく。
「あたしには戦う理由がある!もうアンタなんかに、あたしたちをムチャクチャにされたくない!」
ヒカルも負けじとブルガノスを迎え撃つ。繰り出された拳をかわし、彼女が魔力を込めて打撃を叩き込む。
「ぐっ!」
威力のある一撃を受けて、ブルガノスがうめく。だがブルガノスはすぐさま両腕でヒカルを捕まえてきた。
「なっ!?」
「さすがのお前もこうなっては優位に立てないだろう・・・!」
驚愕の声を上げるヒカルに、ブルガノスが鋭く言い放つ。
「このまま締め付けて、バラバラにしてやる・・!」
ブルガノスが両腕に力を込める。強く締め付けられて、ヒカルが激痛を覚えて顔を歪める。
「痛いか!?苦しいか!?・・だがダイアナが受けた苦しみは、この程度ではないぞ!」
さらにブルガノスに締め付けられ、ヒカルが声にならない絶叫を上げる。
(このままじゃやられちゃう・・何とか抜け出さないと・・・!)
ブルガノスから離れようとするヒカルだが、力のある両腕から脱出できない。
(抜け出せない・・早くしないと、ホントに体がバラバラになっちゃう・・・!)
“Power is only liberated at a dash. The other party is also the same as receiving the remark that decides an argument when sticking in the so much.(一気に力を解放するしかありません。これだけ密着していたら、決定打を受けるのは相手も同じです。)”
危機感を膨らませるヒカルに、カイザーが呼びかけていく。
(危なっかしい方法だけど・・このままじゃどの道やられる・・・!)
意を決したヒカルが全身に魔力を集中させていく。
「魔力を爆発させて私を退けるつもりか!その前にお前を倒す!」
ブルガノスも魔力を高めて、さらに強くヒカルを締め付けていく。しかしヒカルは激痛に耐えて、魔力の集中に意識を傾ける。
「お前だけは必ず倒す!お前だけは私が倒してやるぞ、ウォーリアー・ウラヌス!」
「倒れない!あたしはここで倒れるわけにいかない!」
互いに言い放つブルガノスとヒカル。
「この先にメイが待ってると思うから・・だからここで倒れたら、2度とメイを止められなくなる・・・!」
決意を膨らませていくヒカルの体を、淡い球状の光が包み込んだ。
「お、押さえ切れないだと!?・・私ですら超えるのか、ヤツの力は・・・!?」
必死に押さえ込もうとするブルガノスだが、ヒカルの力が彼の両腕を押し返していく。
「このまま・・このままお前を・・・!」
「そこをどいて!あたしとメイの邪魔をしないで!」
押し込もうとするブルガノスを、ヒカルがついに跳ね除けた。
「バカな!?」
「バーストエクスプロージョン!」
驚愕するブルガノスの前で、ヒカルが魔力を解放した。爆発のように解放された魔力の光に、ブルガノスも巻き込まれた。
「ぐあっ!」
ヒカルの魔力を全身に受け、ブルガノスが絶叫を上げる。
「こんなことで倒れてなるものか・・・ウラヌスだけは・・ウラヌスだけは!」
残った力の全てを放出して、ブルガノスが閃光を跳ね除けようとする。だが2つの魔力の衝突と爆発で、ブルガノスが大きく吹き飛ばされた。
魔力の放出で形勢を逆転させたヒカル。だが周辺にブルガノスがいないこと気付き、彼女は当惑を覚える。
「ブルガノスがいない・・もうちょっとだったのに・・・!」
ブルガノスを倒せなかったことを悔しがるヒカル。歩き出そうとした彼女だが、体が思うように動かせずふらつく。
「いけない・・ちょっとムチャしすぎたみたい・・・」
“It is sure to have consumed it considerably though it has let go. However, though here is greatly consumed, too.(逃がしてしまいましたが、かなり消耗したはずです。もっとも、こちらも大きく消耗していますが。)”
苦笑いを浮かべるヒカルに、カイザーが声をかける。
“Let's already returned, and take a rest once. It might be better than irreparable oppositely with run after rushing it.(もう戻って、1度休みましょう。焦って追いかけて、逆に取り返しのつかないことになるよりはいいでしょう。)”
「うん・・そうだね、カイザー・・・今日は家に帰ろう・・・」
カイザーに促されて、ヒカルはバリアジャケットを解除する。彼女が見上げた空から、結界が消失していった。
ヒカルの攻撃を受けて、大きく吹き飛ばされたブルガノス。生き延びたものの、彼は思うように動くことができなくなっていた。
「ここまでして・・返り討ちにされるとは・・・!」
ヒカルを倒せなかったことを、ブルガノスが憤る。
「このまま戻るわけにはいかない・・必ずウラヌスを・・・!」
「残念だが、お前がヒカルを倒すことは不可能よ・・」
ヒカルのいる草原に戻ろうとしたとき、ブルガノスが声をかけられる。
次の瞬間、ブルガノスの体を光の刃が貫いた。突然の攻撃にブルガノスが吐血する。
「お前がどれだけ力を出そうと、ドライブウォーリアーを超えることはできない・・ドライブウォーリアーは、クロノスの後継者のための存在とされているから・・・」
ブルガノスから光の刃が引き抜かれる。彼の背後にいたのは、バリアジャケットを身に付けたメイだった。
「お前は、ウォーリアー・プルート・・・!?」
「お前がヒカルを倒せないもうひとつの理由・・それは、ここで私に倒されるからよ・・・」
驚愕の声を上げるブルガノスに、メイが低く告げてくる。
「私はまだ倒れるわけにいかない・・ダイアナの恨みを晴らすため、私はウラヌスを・・・!」
「それは不可能と言ったはずよ・・・!」
激情を募らせていくブルガノスに、メイが目つきを鋭くする。彼女の振りかざした光の刃が、再びブルガノスに突き刺さった。
「ぐふっ!」
「いい加減に倒れなさい・・ヒカルを倒すのは私よ・・・!」
うめくブルガノスに言いかけると、メイが光の刃を引き抜いた。鮮血をまき散らして、ブルガノスが昏倒した。
「私はこの世界を正さないといけない・・ヒカルが力を取り戻して、また私の前に立ちはだかろうとしてくるなら、私は今度こそ容赦しない・・」
冷淡に告げるメイが見つめる先で、事切れたブルガノスが霧散するように消滅していった。
「ヒカルが今の私の、最大の障害になっていると思うから・・・」
きびすを返して歩き出すメイ。彼女は歩きながらバリアジャケットを解除した。
「もう私は、ヒカルと分かり合うことはできない・・・」
コウを手にかけたことを思い出して、メイはヒカルの決別を確信した。
ブルガノスとの激闘を切り抜け、家に向かうヒカル。だが彼女は疲れの色を隠せなくなっていた。
「やっぱりムチャしすぎちゃったってことかな・・早く家に帰らないと・・・」
“It is safe because I am watching it even if it concentrates on the return to the house. It informs them at once if there is something.(私が警戒していますので、家に帰ることに集中していても大丈夫ですよ。何かあればすぐに知らせます。)”
疲弊しきった体に鞭を入れて前に進んでいくヒカルに、カイザーが声をかける。
(ありがとうね、カイザー・・それじゃ、よろしくね・・・)
カイザーに信頼を寄せて、ヒカルはさらに前に進んでいく。彼女はやっとのことで家まで戻ってくることができた。
「やっとついた・・・お母さん、怒ってないかな・・・?」
安堵と不安を胸に秘めて、ヒカルが家の玄関を通った。
「ヒカル!」
そこへアカリが飛び出してきて、ヒカルに詰め寄ってきた。
「わわっ!お母さん、ゴメン、遅くなって!」
勢い負けしたヒカルがたまらず謝る。しかしアカリはヒカルを叱ってはこなかった。
「ヒカル、大変なの!・・お父さんが・・お父さんが・・・!」
「お母さん・・お父さんがどうしたの・・・!?」
言いかけて言葉が続かなくなるアカリに、ヒカルが問いかける。しかしアカリはこれ以上答えることができなかった。
それから少したってから、アカリは重く閉ざしていた口を開いた。このとき、ヒカルはコウの死を知らされることになった。
次回予告
父、コウの死にかつてない怒りと悲しみを覚えるヒカル。
激情に駆られる彼女に、メイが戦いを挑む。
友との絆か、仇への憎悪か?
魔法の戦士の宿命の対決が、幕を開ける。
生き延びる術、分かち合う術はあるのか・・・?