Drive Warrior Episode14「破滅への楔」

 

 

 プルートはメイだった。この非情な現実に、ヒカルは困惑を膨らませる。

「ヒカル・・あなたは私の味方なの?・・それとも、敵・・・?」

 非情な心境を打ち明けたメイが、ヒカルに問い詰めてくる。しかしヒカルは困惑するばかりで、答えることができない。

「もしも味方だと言うなら、一緒に来て・・世界平和への戦いへ・・・」

 メイが呼びかけるが、ヒカルは誘いを受けようとしない。するとメイは差し伸べていた手を引っ込めて、ため息をついた。

「ヒカルは分かってくれないのね・・でも攻撃的なことが好きでないのは、ヒカルらしくもあるけど・・・」

 呟くように言いかけてから、メイがヒカルに背を向ける。

「せめて私の邪魔はしないで・・できることなら、ヒカルとは戦いないから・・・」

 メイは冷徹に告げると、ヒカルの前から去っていった。

「待って・・メイ、待って!」

 追いかけて呼び止めようとするヒカルだが、体が言うことを聞かずに倒れそうになる。しかしヒカルは踏みとどまろうとしない。

「ちゃんと話さなくちゃいけないのに・・全然話せなかった・・・このまま、メイを行かせるわけには・・・!」

Feelings sympathize. However, you should take a rest first of all.(お気持ちは察します。ですがまずは体を休めたほうがいいです。)

 前に進もうとするヒカルを、カイザーが呼び止める。

「でも、追いかけなかったら、2度とメイに会えなくなるんじゃないかって・・・!」

You and she are best friends. It would be better to be able to meet excluding today. Next, let's arrange feelings while being take the rest by time when it meets.(あなたと彼女は親友同士。今日以外に会えないことはないはずです。次に会う時までに、休息を取りながら気持ちの整理をしましょう。)

「カイザー・・・でも・・・でも・・・!」

 説得しようとするカイザーだが、ヒカルは納得することができず、涙ぐんでいた。しかし今の自分にメイを連れ戻せる力は残っていないことを、彼女は思い知らされていた。

Let's return really. Will you be actually feeling that it is necessary not to cause anxiety even to parents?(本当に戻りましょう。両親にまで心配をかけてはいけないことは、あなたのほうが実感しているでしょう?)

 カイザーの言葉に、ヒカルは渋々頷いた。バリアジャケットを解除した彼女は、力なく家に向かうのだった。

 

 ヒカルがウラヌスであることを知ったメイ。ヒカルの前から去ったものの、メイは自分の考えを変えるつもりはなかった。

「まさかウラヌスがヒカルだったとはね・・正直驚いたわ・・・」

 メイがヒカルのことを気にして、ため息混じりに呟く。

「ハデス、そのことは知っていたようね・・・?」

Yes. Because Uranus and the landlord's data were memorized beforehand.(はい。事前にウラヌスとその宿主のデータを記憶されていましたので。)

 メイに訊ねられて、ハデスが答える。 

It is you that said that you may not say. You did not try to hear it stubbornly though I advised to you.(言わなくていいと言ったのはあなたです。私はあなたに忠告したにもかかわらず、あなたは頑なに聞こうとしませんでした。)

「分かっているわ・・私は後悔はしていない。驚きはしたけど、私は私の戦いをやめるつもりはない・・・」

 ハデスに謝意を示す一方、メイは自分の決意を貫き通そうとしていた。

「ギルティアだけでなく、世界と戦うために、私は力を、あなたを宿したのよ・・敵は誰だろうと容赦しない・・たとえその敵が、ヒカルであっても・・・」

 決意を募らせて、メイが両手を強く握りしめる。彼女はヒカルと戦うことへの迷いを振り払おうとしていた。

 

 メイとのすれ違いに苦悩したまま、ヒカルは帰宅した。元気のない彼女の様子に、アカリは心配になった。

「どうしたの、ヒカル?ひどく疲れてるみたいじゃない・・」

 アカリが声をかけるが、ヒカルは沈痛な面持ちを浮かべたまま答えない。

「さすがにこの調子は見過ごせないわ・・本当に何があったの・・・!?

「うん・・・メイと、ケンカしちゃって・・・」

 駆け寄ってきたアカリにヒカルが弱々しく答える。魔法については打ち明けられなかったため、彼女はウソを交えていた。

「ケンカ・・・本当にそれだけなの・・・?」

「うん・・ちょっと、気持ちの整理がつかないから・・もう休むね・・・」

 アカリの心配を振り切って、ヒカルは自分の部屋に戻っていった。

「ヒカル・・・」

 心配でたまらなかったアカリだが、かける言葉が見つからず、黙り込むしかなかった。

(やっぱり・・お父さんに話したほうがいいかもね・・・)

 

 メイとのすれ違いから生じた絶望に打ちひしがれ、ヒカルは自分の部屋のベッドに閉じこもった。

(何とかしないと・・このままメイを放っておいたら、メイと仲直りできなくなる・・・)

Please answer without rushing it now. Can be be the best opposite to her.(今は焦らずに答えてください。全力で彼女と向き合えるように。)

 不安を膨らませていくヒカルを、カイザーがなだめていく。

It believes. Who calls her if you do not believe?(信じるのです。あなたが信じなかったら、誰が彼女に声をかけるのですか?)

(信じたい・・信じたいよ・・・でも、どうやってメイを信じていけばいいのか・・・)

 励ますカイザーだが、メイと分かり合えない状態のヒカルの心を癒すことはできなかった。

(早く明日になって・・早く明日に・・・)

 次の朝になってほしいと願っていくヒカル。いつしか考えることに疲れ、彼女は眠ってしまっていた。

 

 メイの攻撃の前に退却したものの、彼女とヒカルを鉢合わせることに成功したカイロス。彼は回復を待ちながら、ヒカルとメイが同士討ちするのを心待ちにしていた。

「これからヤツらがどのように自滅していくのか、楽しみだ・・」

「本当に楽しみにしているのね・・・」

 そこへダイアナが現れ、カイロスに声をかけてきた。

「戦いにおいては、ヤツらの考えは対照的だ。決して交わることなく、どちらかが確実に破滅する・・」

「そううまくいけばいいけど・・ウラヌスとプルート、どちらも曲者だからね・・・」

「曲者だから、こういうところは扱いやすいのだがな・・」

 忠告してくるダイアナだが、カイロスは強気な態度を崩さない。

「どちらが生き残ろうが、どちらも無事では済まなくなる・・そのときがお前たちの最期だ・・・」

 ヒカルとメイの同士討ちを狙い、カイロスは歓喜を膨らませていった。

 

 翌朝、起床して朝食を取るヒカル。しかしメイのことを気にしていたため、彼女はまだ元気を取り戻していなかった。

 昨日アカリから相談されたコウが、ヒカルの様子を見かねて声をかけてきた。

「友達とケンカしたそうだな?」

 コウの問いかけに当惑するヒカルだが、すぐに小さく頷いた。

「父さんも昔はよくやっていたさ・・悪ふざけでケンカになったり、悪いことを止めようとしてケンカになったり・・」

「お父さんも、ケンカとかしてたんだ・・・」

 コウの切り出した話に、ヒカルが弱々しく答えていく。

「父さんが直接お前の口から、学校や友達のことを聞いてやる機会はあんまりないからな。だけど、ケンカした相手が大親友なら、仲直りした後は、ケンカする前よりも仲良くなれるもんなんだ。」

「前よりも仲良くなれる、か・・そうなれればいいけど・・・」

「お互い納得するまで気持ちを伝え合っていけばいい。時にはやりすぎることもあるけどさ・・丸く収まったら、迷惑かけた人に謝って、無事解決だ・・」

「さすが、警察官は経験豊富だね・・お母さんが好きなのも納得だよ・・」

 コウの話を聞いて、ヒカルが笑顔を取り戻す。

「こうなっちゃったら、向き合わないといけないってことかな・・・?」

「こういうことは当事者同士で解決するしかない。父さんがしてやれるのは、こうして経験談を語ってやることだけだ・・」

 真剣な面持ちで言いかけるコウに、ヒカルは小さく頷くばかりだった。

 

 朝食を終えて、登校のために家を出るヒカル。だがメイは来ていなかった。

「メイ・・まだ来てないのかな・・・?」

 メイが来ると信じて少しだけ待つことにしたヒカル。だがメイがやってくる気配はない。

「もしかして、先に行っちゃったのかな・・・?」

 次第に不安を覚えるヒカル。これ以上待つと遅刻してしまうと思い、彼女は改めて学校に向かうことにした。

 何とか遅刻することなく登校できたヒカル。教室に来た彼女だが、メイの姿はなかった。

「おはよう、ヒカルちゃん。遅刻しなかったようだね。」

 ネネが笑みを見せて、ヒカルに挨拶をしてきた。

「おはよう、ネネちゃん・・メイがいないみたいだけど・・・」

「うん・・体調がすぐれないから今日は休むって・・」

 挨拶を返すヒカルにネネが答える。メイと話ができない状態に、ヒカルが沈痛の面持ちを浮かべる。

「何があったの、ヒカルちゃん・・?」

 マモルがヒカルに心配の声をかける。

「うん・・メイとちょっとね・・」

 ヒカルが作り笑顔で答え、自分の席に着くヒカル。彼女とメイに何かあったのだと、ネネは感付いていた。

(メイが来ていなかった・・これじゃあたし、メイに何もしてやれない・・・)

 ヒカルがメイに対して不安を膨らませていく。そんな彼女にカイザーが声をかけてきた。

Let's pay a sympathy visit after school. Let's make the place of the discussion again.(放課後にお見舞いに行ってみましょう。改めて話し合いの場を作りましょう。)

(お見舞いか・・怖いけど、行ってみるしかないね・・・)

 不安と緊張を抱えながら、ヒカルはメイに会おうという気持ちを強めていく。気持ちを切り替えた彼女は、この日の授業に集中するのだった。

 

 放課後となり、帰宅途中にメイに会いに神凪家に向かおうとしていたヒカル。その彼女にネネが声をかけてきた。

「ヒカル・・もしかして、メイもヒカルの戦いに巻き込まれたんじゃ・・・」

 ネネが切り出した話にヒカルが当惑する。ここまで来て隠し事は逆効果になると思い、ヒカルは打ち明けることにした。

「行きながら話すよ・・みんなまで簡単に巻き込ませるのはよくないから・・」

 ヒカルの申し出にネネが頷いた。2人は学校を出て、神凪家を目指した。

 マモルはレストランの仕事があるため、先に学校を出ていた。

「メイも戦ってた・・あたしが巻き込んだんじゃなくて、自分から進んで・・・」

「メイも、ヒカルと同じように・・すごい力を・・・」

「うん・・でも、一緒に悪い人と戦ってくれるってわけじゃないみたい・・・」

 ネネに説明するヒカルが沈痛の面持ちを浮かべる。

「メイは、ギルティアだけじゃなく、今のこの世界も敵に回してる・・止めようとしたら、メイと戦うことになるかもしれない・・・」

「メイが・・・何を企んでるんだ・・・!?

 ヒカルの話を聞いて、ネネが困惑を覚える。だがネネはすぐに気持ちを切り替える。

「それで、ヒカルとしてはどうしたいんだい・・・?」

「えっ・・・?」

 ネネに問いかけられて、ヒカルが戸惑いを覚える。

「ヒカルとしてはメイのしていることに納得してるの?それとも不満で、止めないといけないと思ってるの?」

「それは・・・でも、メイはあたしの友達だし・・・」

「友達だったら、悪いことを見過ごしてもいいの・・・!?

 迷いを見せるヒカルに、ネネが問い詰めてくる。

「悪いことをしてると思ってるなら、たとえ友達でも・・いや、友達だからこそ止めないといけないんじゃないの!?・・こういうときに大事なのは、自分の気持ちなんじゃないの・・!?

 ネネの言葉を受けて、ヒカルが戸惑いを覚える。彼女の中で迷いが和らいできていた。

「あたしの気持ち・・・あたしがメイにしたいのは・・・」

 ヒカルが自分の気持ちと考えを確かめていく。彼女は何とかして決意を固めようとしていた。

「まずはメイとちゃんと話さないと・・あたしのこの力は、壊すためではなく守るために使うって・・・」

「そのことはメイに伝えてやらないと・・」

 自分の気持ちを口にするヒカルに、ネネが笑みを見せる。2人は気持ちを新たにして、神凪家に向かった。

 神凪家にたどり着いたヒカルとネネ。ヒカルは緊張を膨らませながら、ネネに向けて声を振り絞った。

「メイの家だけど、何が起こるか分かんないのが正直なところ・・だからネネちゃんも注意して・・」

「うん・・どれだけ注意できるか分かんないけど・・・」

 ヒカルの注意にネネは頷くだけだった。ヒカルが正門のインターホンを押そうとした。

“待っていたよ、ヒカル・・”

 そのとき、ヒカルの頭にメイの声が入りこんできた。

(メイの声!?・・あたしの頭に、メイの声が・・・!?

“これは念話。テレパシーのようなものよ。あなたもカイザーと念話で会話をしているじゃない・・”

 心の中で驚きの声を上げるヒカルに、メイの声がさらに入り込んでくる。

「どうしたの、ヒカル・・?」

「メイの声が、あたしの中に・・・」

 訊ねてきたネネにヒカルが答える。

“ネネも一緒ね・・ネネも私たちのことを知っているようね・・”

(・・うん・・あたしが巻き込んじゃった・・・)

“少し前にあなたが悩んでいたのは、ネネを巻き込んだからだったのね・・・入ってきていいわ。今ここに父さんやギルティアはいないから・・”

 メイがヒカルに言いかけると、神凪家の正門が開いた。

「メイが入ってきて、だって・・・」

「私も入ってきていいってことよね?・・・ここまで来たら私も入るよ・・・」

 声をかけるヒカルに、ネネが真剣な面持ちで言葉を投げかける。ヒカルはネネの決心を拒絶することなく、彼女とともに正門を通って屋敷に入っていった。

 正面玄関に行きついてドアを閉めた2人の前に、メイが姿を見せてきた。

「メイ・・・」

「私を止めようとしてもムダよ。私は自ら望んでハデスを受け入れた。世界を塗り替える力を求めてね・・」

 困惑を見せるヒカルに、メイが真剣な面持ちで言いかけていく。

「ネネでも、誰から言われても私は考えを変えないわ。世界は、本当に力のある者が動かしていくべきなのよ・・」

「何言っちゃってるんだよ、メイ・・世界だなんて、そんな・・・」

「能天気にしている間に、世界は滅びへと向かっていくのよ。ギルティアが支配を企てなくてもね・・」

 半ば呆れ気味な態度を見せるネネに対し、メイが目つきを鋭くする。

「その世界を塗り替えるためには、それに見合うだけの力が必要となってくる・・私はそれだけの力を手にできた・・いつでも行動を起こすことができる・・・」

「待ってよ、メイ!それって、みんなを傷つけることだよね!?みんなを傷つける悪い人と戦うんじゃないの!?

 決心を語るメイに、ヒカルが問い詰めてくる。するとメイがさらに目つきを鋭くする。

「なら悪い人は誰のことなの!?ギルティアのような地球征服企む連中だけ!?

「メイ・・・!」

「倒さなければならない敵はギルティアだけではない・・私は、本当の世界の平和を求めているのよ・・・!」

 自分の考えを曲げないメイに、ヒカルもネネもかける言葉が見つからなくなっていた。この沈黙を置いてから、メイがバリアジャケットを身につける。

「ヒカル、もしも邪魔をするなら、あなたも敵と見なす・・・!」

「メイ!」

 敵意を見せつけてくるメイに、ヒカルが叫ぶ。だがメイはヒカルに向かって飛びかかってきた。

「カイザー!」

 とっさにバリアジャケットを身につけて、臨戦態勢に入ったヒカル。だが彼女はメイの突進を受けて、玄関のドアを突き破って外に飛び出した。

「ヒカル!・・メイ、やめなさい!ヒカルに何をするつもり!?

 遅れて外に出たネネが、メイに向かって声を張り上げる。しかしメイは聞こうとせず、ヒカルへの攻撃を仕掛けようとしていた。

「私を止めるつもりなら戦いなさい、ヒカル!それとも私に協力するつもりになったの!?

「やめて、メイ!あたしたちがこんなことをする必要がどこにあるの!?

 言い放つメイにヒカルが呼びかける。だがメイは答えようとせず、ヒカルを攻め立てる。

(どうしたらいいの!?このままじゃいつかやられちゃう・・でもメイを傷つけたくない・・・!)

 防戦一方となっているヒカルが、メイと戦うことに迷いを抱いていた。

Only fighting is here. It is necessary to stop her attack at least.(ここは戦うしかありません。せめて彼女の攻撃を止める必要があります。)

 そんな彼女にカイザーが声をかけてきた。しかしヒカルはそれでも吹っ切れない。

(だって、メイは友達だよ!・・友達と戦って、傷つけ合うなんて・・・!)

Please fight. She will obviously defeat you and is approaching. If some hands do not clap, it surely imperils it.(戦ってください。彼女は明らかにあなたを倒すつもりで迫ってきています。何か手を打たなければ、確実に危険に陥ってしまいます。)

(でも!)

 カイザーの言葉を聞き入れられないでいるヒカル。メイが繰り出した打撃を受けて、ヒカルが大きく突き飛ばされる。

 空中に跳ね飛ばされるヒカルだが、踏みとどまってメイに視線を戻す。

(戦ったら、きっとメイを倒しちゃう・・そうなったらあたし・・あたし・・・!)

To knock it down, will you not have fought?It conveys it to you, and then, it is not guilty, and your feelings are sure to be conveyed also by her.(あなたは倒すために戦ってきたのではないでしょう?ならあなたに罪はありませんし、彼女にもあなたの気持ちを伝えられるはずです。)

 悲痛さを膨らませていくヒカルに、カイザーがさらに呼びかけていく。友情と戦う宿命の板挟みに会い、ヒカルは苦悩していく。

It fights. In how that you have done up to now to fight you.(戦うのです。あなたがこれまでしてきた、あなたの戦い方で。)

 カイザーに促されながら、ヒカルは何とか反撃しようとする。彼女は倒すためではなく、メイを止めるために戦うことを心に決めた。

「やっと戦う気になったようね・・そして私に協力するつもりもないようね・・!」

 一瞬笑みを見せるメイが、ヒカルへの攻撃を再開する。だが彼女が繰り出した右の打撃は、ヒカルが伸ばした左手に受け止められる。

 メイは毒づきながらも左手を突き出すが、これもヒカルに受け止められる。力で押しこもうとする彼女だが、ヒカルは押されずにいた。

(押し切れない・・そんなバカな・・・!?

The other side is the above in power and the short distance attack though you are the above in the speed and the distance attack.(速さと遠距離攻撃はあなたが上ですが、力と近距離攻撃は向こうのほうが上です。)

 驚愕を覚えるメイに、ハデスが言葉をかける。これを聞いたメイが歯がゆさを覚える。

(それはデバイスのデータの比較よ・・手にした力をよりうまく扱えるのは私のほう!)

The other side at least turned out in the above in power. As for the approach and the fight, the amount is bad.(少なくとも力では向こうが上ということは判明しました。接近して戦うのは分が悪いです。)

(それでも、総合能力では私のほうが上よ!)

 ハデスの忠告を聞かずに、メイがヒカルに向けて膝蹴りを見舞う。体に膝を叩き込まれて、ヒカルが怯んでメイの両手を放してしまう。

 メイがすかさず打撃を繰り出していく。次々に攻撃を受けて、ヒカルは追いこまれていく。

(ウラヌスさえも、ヒカルさえも越えられないで、世界を救うなんてできない!)

 自分を奮い立たせようとするメイが、さらに拳を振るう。だが体勢を立て直したヒカルが、メイの攻撃をかわした。

「もうやめようよ、メイ!こんなの、辛いだけだよ!」

 ヒカルがメイの両腕をつかみ、魔力を注ぎ込む。伝達した魔力が電気のような衝撃となって、メイを襲う。

 体に痺れを覚えて思うように動けなくなるメイ。彼女は意識を失いそうになるのを必死にこらえていた。

(このまま・・このままやられてたまるものか・・・!)

「終わりにしよう、メイ・・あたしたち、友達同士で戦いたくないよ・・・」

 ヒカルが悲痛さを噛みしめて、メイに呼びかける。ヒカルはメイを押さえたまま、地上の庭に降り立った。

「ヒカル・・メイ・・・」

 庭に駆け込んできたネネが、2人を見つめて当惑を見せる。

「また仲良くやっていこう、メイ・・ギルティアをやっつけて、またネネちゃんやマモルちゃん、みんなと楽しい学校生活を・・」

 優しく言いかけるヒカルだが、メイに両手を振り払われる。

「その楽しい生活を守るためにも、私は戦わないといけない・・敵を倒さなければいけないのよ・・・!」

「敵って・・倒さなくていい人まで倒しても、いいことにはならないよ・・・!」

「倒さないといけない敵はこの世界にもいる!倒さないといけないのよ!何度言えば分かるのよ!?

「分かんないよ、そんな身勝手な考え方!」

 メイの言葉に憤慨して、ヒカルが怒りを覚える。彼女はこの怒りのままに、メイに殴りかかろうとした。

 だがヒカルが振りかざした右手は、メイに当たる寸前で止まる。怒りよりも友情が強まり、ヒカルは無意識にメイへの暴力を止めてしまっていた。

「やっぱりダメ・・・間違ってるって分かってても・・メイを殴れない・・メイを倒せないよ・・・!」

 友達を傷つける辛さを訴えて、メイと戦うことを拒絶するヒカル。このためらいが、メイの感情を逆撫でしていた。

「中途半端な気持ちで、私の邪魔をするな!」

 激昂したメイがヒカルの頬を叩く。倒れたヒカルが叩かれた頬を押さえる。

「甘いとは思っていたけど、戦いでもこうまで甘いなんてね・・そんな中途半端で、ギルティアとも、世界の敵とも戦えないわ!」

 憤りを膨らませていくメイが、ヒカルの胸倉をつかんで持ち上げる。息苦しさを覚えて、ヒカルが顔を歪める。

「そんな気持ちで戦わせないように、私がその甘さをここで消してやるわ!」

 メイが怒りのままにヒカルを殴りつけようとする。

「やめなさい、メイ!」

 そこへネネがメイに飛びかかってきた。飛びつかれて押し倒されたことで、メイはヒカルを離す。

「いい加減にしてよ、メイ!私たちを傷つけてまで、何をしようというの!?

「邪魔者は敵だと、何度も言わせないで!」

 怒鳴りかかるネネだが、憤慨するメイに強く突き飛ばされ、その先の壁に叩きつけられる。その衝撃で彼女は右腕に強い痛みを覚える。

「ネネちゃん・・・ネネちゃんが危ない・・・!」

 危機感を覚えたヒカルが力を振り絞り、メイの横をすり抜けてネネに駆け寄った。

「ネネちゃん!しっかりして、ネネちゃん!」

 ヒカルが呼びかけるが、ネネは気絶して動かなくなってしまった。メイと戦うことができなかったヒカルは、ネネを抱えて神凪家を離れた。

「ヒカル・・私は戦う・・たとえあなたを敵に回しても・・・」

 自分が求める平和をもたらすため、メイはヒカルをも敵に回すことをいとわなかった。

 

 メイから逃げ延びたヒカルとネネ。ヒカルは急いでネネを病院に連れていった。診断結果では骨に異常はなかった。

 ネネが療養している間、ヒカルはメイとのすれ違いに苦悩していた。和解どころか溝が深まる現状に、彼女は胸を締め付けられるような気分に駆り立てられていた。

(ダメだよ・・あたし、メイとは戦えない・・友達と戦うことなんてできないよ・・・)

Be not disappointed. You tried to stop her in your own way.(気を落とさないでください。あなたはあなたなりに彼女を止めようとしました。)

 落ち込んでいくヒカルを、カイザーが励ましてくる。しかしヒカルは元気を取り戻すことができず、逆に内向的になる。

(もうイヤだよ・・あたし、戦いたくない・・辛くなるくらいなら、こんな力なんていらなかった・・・)

Do not give it up. Who stops her if you give it up?(諦めてはいけません。あなたが諦めてしまったら、誰が彼女を止めるのですか?)

 悲観するヒカルに、カイザーがさらに呼びかけていく。

Your feelings are sure to be transmitted to her only as follows though it failed in this time. Let's work hard decisively.(今回は失敗しましたが、次こそはあなたの気持が彼女に伝わるはずです。諦めずに頑張りましょう。)

(カイザーに何が分かるの・・・!?

 励まそうとしてくるカイザーを、ヒカルが攻め立てるようになっていく。

(あたしの気持ちをよく知りもしないで・・そんな言葉ばかり投げかけないで・・・)

I am your ally. Even I become painful like being painful of you.(私はあなたの味方です。あなたが辛いままでは、私まで辛くなってしまいます。)

(機械のあなたに、あたしの気持ちなんて分かるわけないよ!)

 ヒカルがカイザーに向けて、心の中で叫び声を上げる。

(いらない・・カイザーなんて・・こんな力なんていらないよ!)

 やりきれない気持ちから、カイザーをも拒絶してしまったヒカル。

 この拒絶が自分を追い詰めることになるとは、このときの彼女は気付いていなかった。

 

 

次回予告

 

メイとの衝突。

傷ついていく仲間と、傷つけてしまう恐怖。

戦うことを拒絶していくヒカル。

彼女の苦悩に付け込まぬギルティアではなかった。

 

次回・「失われた魔法」

 

絶望が、さらなる破滅を呼び込む・・・

 

 

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