Drive Warrior Episode13「戦士の邂逅」

 

 

「おはよう、メイ♪」

 登校のために家を出たヒカルが、やってきたメイに明るく声をかけた。

「おはよう、ヒカル。元気が戻ったみたいね・・」

「エヘヘヘ・・お手数おかけしました・・」

 ヒカルがメイに苦笑いを見せる。

「でも、もう大丈夫・・ネネちゃんともきちんと分かり合えたし・・・」

「ネネと何かあったとは気付いていたけど、解決したようね・・・」

 落ち着きを取り戻していくヒカルに、メイも優しく声をかける。

「今日も急ぐわよ。でないとネネにからかわれることになるわよ。」

「う〜、それもそれでイヤだよ〜・・」

 メイに声をかけられて、ヒカルは気まずくなりながら駆け出していった。2人は学校につくと、ネネとマモルと会った。

「ヒカルちゃん、メイちゃん、おはよー♪」

「おはよー、マモルちゃーん♪」

 明るく元気に挨拶をするマモルとヒカル。ネネと目を合わせると、ヒカルは明るさを抑える。

「昨日はありがとうね、ネネちゃん・・ネネちゃんのおかげで、この通り元気になれたよ・・」

「感謝するのはこっちのほうよ、ヒカル・・メールありがとう・・」

 互いに感謝の言葉を投げかけるヒカルとネネ。ネネはヒカルを改めて受け入れていた。

「教室に行くわよ。ホームルームに間に合わなかったら元も子もないよ。」

「うん♪行こう、みんな♪」

 ネネに声をかけられて、ヒカルは再び笑顔を見せた。

 これからもこの平穏な日常が変わることはない。ヒカルはそう信じていた。

 

 ヒカルとメイを戦わせようと画策するカイロス。彼はふと、ダイアナの作戦室を訪れた。

「私に何の用なの、カイロス?」

 ダイアナが振り向かずにカイロスに声をかける。

「まさかあれだけの自信を見せながら、すぐに諦めたわけではないでしょうね・・?」

「フン・・だが、アームズを借りたい・・」

「アームズを?まだ開発途中のものが多く、量産にはまた至っていないわ・・」

「いるだけで構わん。後はエビルで補充する・・」

 カイロスの持ちかけた案を受けて、ダイアナが疑問を覚える。

「・・いいわ。あなたが何を企んでいるのかは知らないけど・・3機だけなら整備も全て完了しているわ・・」

「そうか。それで構わん。その3機、借りていくぞ・・」

 ダイアナの了承を得て、カイロスが不敵な笑みを見せる。彼は自信を見せながら作戦室を出ていった。

(わずかながらも私に助力を求めてくるとは・・カイロスも追い詰められているということね・・・)

 カイロスに余裕がなくなったことを察して、ダイアナは彼の作戦を見届けることにした。アームズの戦闘データを洗い直す意味を含めて。

 

 その日の昼休み、ヒカル、メイ、ネネ、マモルは屋上で昼食を取っていた。ヒカルとメイが屋上から外の街並を眺めていた。

「ここからの眺めもいいねぇ・・」

「時々しか屋上に上がらないから、さらに心地よく見える・・・」

 外の景色を眺めて、ヒカルとメイが感嘆の声を口にする。

「のどか・・本当にのどかに見える・・・でも、こののどかの中で、いろんなことが動いて変わっている・・・」

「メイ・・・?」

 メイが口にした言葉に、ヒカルが疑問符を浮かべる。

「こうしている間にも、街のどこかで建物が建ったり建て直されたり・・話を聞くだけだと些細な変化のはずだけど、その違いだけで別世界に見えてしまう・・」

「うん・・確かにしばらくたつと、ホントに様変わりしてるよね・・ホントにその場所だったのって疑っちゃうぐらい・・・」

 メイの話を聞いてヒカルが笑みをこぼす。

「変わっているのは風景だけじゃない・・人も、世界のあり方も変わってしまう・・私たちの知らない間に・・・」

 メイが口にした言葉を聞いて、ヒカルが困惑を覚える。

 カイザーを体の中に入れられたことで、ヒカルの人生は大きく変わってしまった。常人の力を大きく超え、自分だけでなく世界を掌握しようとする敵と戦うこととなった。

 それでも自分を受け入れてくれる人がいる。何かが変わってしまっても、決して変わらないものも確かに存在している。

 この事実が、非情の現実に苦しむヒカルを支えていた。

「ねぇ・・メイは、変わったりしないよね?・・あたしたちのこの時間は、ずっと過ごせるよね・・?」

 込み上げてくる不安を払拭しようとして、ヒカルが唐突にメイに訊ねてくる。するとメイが微笑みかけてきた。

「ずっとというのは難しいところだけど・・ずっと一緒にいたいという気持ちは私にもあるわ・・マモルにもネネにもあると思う・・・」

「メイ・・ありがとうね・・どこまでかは分かんないけど、できる限り一緒にいたいね・・・」

 メイの心境を聞いて、ヒカルも笑顔で頷いた。

「ねぇねぇ、何の話してたの〜?」

 そこへマモルが2人に声をかけてきた。

「えっと・・お話っていうより、外の眺めを楽しんでたっていうか・・」

「眺めかぁ〜♪こうして見てみると街がおもちゃみたいだよね〜♪」

 ヒカルが苦笑いを見せて答えると、マモルが無邪気に外を見渡していく。

「いいわね、マモルは・・悩みが出てきてもすぐに割り切りそう・・」

「エヘヘ、そんな照れちゃうよ〜♪」

「いや、褒めていないから・・」

 ため息をつくメイの言葉を聞いて笑みをこぼすマモルに、メイは呆れて肩を落とした。

(そうだよね・・あたしたちのこの時間は、まだまだ続くよね・・・)

 一途な願いを胸に宿すヒカル。彼女はこの時間が終わりを迎えるとは考えていなかった。

 

 日常を過ごすヒカルとメイ。その彼女たちの様子を、カイロスは距離を離した上空から見つめていた。

(仲良くやっているようだな、ウラヌスとプルートは・・お互いがドライブウォーリアーであることも気付かずに・・)

 カイロスがヒカルとメイの様子を見てあざ笑う。

(だがあの慣れ合いも終わる・・2人のつながりなど簡単に断ち切れる・・・)

「このまま監視を続けろ。2人が完全に分かれたところで行動開始だ。」

 エビルとアームズに指示を出し、カイロスはいつでも戦えるようにしながら、待機とヒカル、メイの監視を続けるのだった。

 

 放課後が訪れ、下校しようとしていたヒカル。ネネとマモルはレストランの仕事のため、先に下校していた。

「メイ、一緒に帰ろう♪ネネちゃんもマモルちゃんもいないから寂しくて・・」

「あ、ゴメン、ヒカル・・私も寄るところがあるから・・」

 ヒカルが声をかけると、メイが苦笑いを見せて謝ってきた。

「そう・・ううん、謝るのはあたしのほうだよ・・忙しいのに誘っちゃってゴメンね・・」

「いいよ、ヒカル・・今度また誘って・・」

 逆に謝るヒカルにメイが弁解する。ヒカルに見送られて、メイは学校を後にした。

「さて、あたしも帰らないとね・・」

Do not stop on the way so much. The body doesn't feel rested.(あまり寄り道してはいけませんよ。体が休まりません。)

 気持ちを戻すヒカルに、カイザーが注意を促す。

(そうだね、カイザー・・今日は寄り道しないって・・)

 ヒカルは心の中でカイザーに答え、学校を出る。彼女は真っ直ぐに家に帰ろうとしていた。

 だがその帰り道の途中、ヒカルは奇妙な感覚を覚えて立ち止まる。

(この感じ・・・ギルティア・・・!)

 警戒するヒカルが気配の正体に気付く。するとエビルとアームズが彼女の前に現れた。

「黒ずくめと機械・・上位幹部がいない・・・!?

 身構えるヒカルが、ダイアナたちがいないことに疑問を覚える。

「どこかに隠れてるってことなのかな・・・!?

There seems to be no enemy who is hiding only them the enemy within the range that can be perceived.(感知できる範囲内で、敵は彼らだけで、隠れている敵はいないようです。)

 周囲に注意を向けていくヒカルに、カイザーが呼びかけていく。

(ホントに!?・・機械が厄介だけど、それでもあたしをどうにかできるわけがないって、向こうなら分かるはずなのに・・・)

It might be enemy's strategy. Danger of fitting in the trap comes out if attention is neglected.(敵の作戦かもしれません。注意を怠れば術中にはまる危険が出てきます。)

(分かってる・・でもまずはこの人たちを何とかしないと・・・!)

 カイザーと会話を交わしてから、ヒカルが意識を集中する。

「カイザー!」

 叫ぶヒカルの体をバリアジャケットが包み込む。臨戦態勢に入った彼女を目の当たりにして、エビルたちが緊迫を見せる。

「アンタたちの勝手にはさせない!あたしがみんなを守る!」

 ヒカルが言い放って、エビルたちを迎え撃つのだった。

 

 ヒカルと別れて先に学校を出たメイ。彼女も家に帰ろうとしていたが、異質の気配を感じて足を止めた。

「姿を見せなさい。姿は隠していても、魔力は隠し切れていないわ・・」

 メイは振り向かずに後ろに向けて声をかける。その物陰からカイロスが姿を見せた。

「さすがだな、プルート。勘が冴えているようだ・・」

「ついに私にも追跡の手を伸ばしてきたのね。でも私に勝てる見込みがあるの?」

 不敵な笑みを見せるカイロスだが、メイも強気な態度を見せる。

「なければお前を捕まえようとは考えないだろう?すぐにハデスを取り戻すことになるだろう・・」

「できるの?私はあなたたちの思い通りにはならない・・・!」

 勝利の確信を見せるカイロスに対し、メイがバリアジャケットを身につける。ヒカルの着用しているバリアジャケットと似た形状であるが、黒を基調としたものとなっていた。

「ハデスを手にする前から、あなたたちのことは調べさせてもらったわ。あなたたちの戦い方は熟知しているし、対処法もいくつか見出している・・」

「大した自信だな・・その自信が本物かどうか、見せてもらおうか!」

 低く告げるメイに、いきり立ったカイロスが光の弾を放つ。メイに簡単にかわされた弾は、その先の建物に命中する。

「下手によければ周りに被害が及ぶことになる。オレには関係のないことだがな・・」

 攻撃をかわされても、カイロスは不敵な笑みを崩さない。彼はメイもヒカルのように周りを気にして庇おうとすると思っていた。

「その点だけは私も賛成よ・・」

 メイが返してきた言葉に、カイロスが眉をひそめる。

「卑怯な手段を存分に使ってくるのがあなたの戦い方・・でも残念ね。私はあなたの思惑には乗らないわよ・・」

「言ってくれるじゃないか・・ならこれはどうするつもりだ?」

 冷淡に告げるメイに向けて、カイロスが右手を伸ばす。

「よけるのは簡単だろう。だがよければ街が吹き飛ぶ。どれだけの人間が犠牲になることか・・確かめるのも面白いかもしれないな・・」

「やってみたら?庇ったりするつもりは私にはないから・・」

 あざ笑ってくるカイロスだが、メイは焦りを一切見せない。

「どうやらウラヌスは、あなたの卑怯なやり方にはまる甘い人のようね。そのウラヌスに手を焼いていたあなたたちに、私をどうにかできるはずがないわ・・」

「そこまで言うとはな。ウラヌスと違って分かりやすい・・」

 逆にあざ笑ってくるメイに、カイロスが笑みをこぼしていく。

「これで思う存分の全力勝負ができるというものだ・・・!」

 目を見開いたカイロスがメイに閃光を放つ。発射のタイミングを見定めて、メイがカイロスの懐に飛び込んできた。

「威力はあるけど、単調な攻撃ね・・」

 メイは低く告げると、カイロスに向けて魔力を込めた拳を繰り出す。打撃を体に叩き込まれて、カイロスが激痛を覚えて顔を歪める。

 追撃を仕掛けようとするメイから、カイロスがとっさに下がって離れる。

「おのれ!これ以上は好きにはさせないぞ!」

 苛立ちを見せるカイロスが光の弾を連射する。だがメイに軽々とかわされていく。

「素早いが、どこまで持つかな?」

 笑みを強めるカイロス。メイがかわした光の弾が、軌道を変えて再び彼女に向かっていく。

「誘導式・・でもムダよ・・・!」

 メイが魔力を放出して球状の障壁を展開する。障壁にぶつかった光の弾が次々に爆発を引き起こす。

 カイロスは射撃を続けながら、徐々に移動をしていく。

(どこかに移動している・・誘い込もうとしているのでしょうが、私には関係ない・・)

 彼の行動に疑問を覚えながらも、メイは追跡していった。

 

 同じ頃、ヒカルもエビルとアームズとの激闘を繰り広げていた。アームズのAMFに注意しながら、彼女は着実に戦いを優位に進ませていた。

(ホントにダイアナたちはどうしたのかな・・これだけやっても出てこない・・・)

Do not neglect noting. The loss of bodily strength might be waited for.(注意を怠ってはいけません。体力の消耗を待っているのかもしれません。)

 疑念を募らせていくヒカルに、カイザーが注意を促す。次々に迫ってくるエビルだが、ヒカルにたやすく撃退されていく。

(でも放っておいたら、ギルティアがみんなに何をするか分かんない・・やっぱりここで食い止めないと・・・!)

 込み上げてくる疑念を振り切って、ヒカルがエビルとアームズを迎え撃つ。

It comes from the back.(後ろから来ています。)

 カイザーの呼びかけを受けて、ヒカルが後ろに注意を向ける。アームズの1体が彼女を狙っていた。

(力を封じられる前に距離を・・!)

 ヒカルは素早く動いて、アームズに接近されないようにする。直後に迫ってきたエビルの1体をつかみ、彼女はアームズに向かって投げ飛ばす。

 果敢に攻め立ててくるヒカルに、エビルは次第に畏怖するようになってきた。

「よーし、このまま一気に・・!」

 ヒカルがエビルとアームズに畳みかけようとした。

The energy that approached here was perceived.(こちらに接近するエネルギーを感知しました。)

 そこへカイザーの声が飛び込んできた。警戒したヒカルも魔力を感じ取った。

(2つ・・1つはカイロスの魔力・・でももう1つは感じたことがない・・・!)

 魔力の正体を探ろうとするヒカルだが、1つの魔力の正体が分からず、警戒を強める。

This power ・・・ It has felt it.(この力・・・感じたことがあります。)

 そこへカイザーがヒカルに言葉を投げかける。

(どういうこと、カイザー・・・!?

This is Hades. Because I memorize the power of Hades, the mistake is not found.(これはハデスです。私はハデスの力を記憶していますので、間違いありません。)

(ハデス?・・ハデスって・・・!?

Hades is a device for Pluto. Hades stays in Pluto as I am staying in you.(ハデスはプルートのためのデバイスです。私があなたに宿っているように、ハデスはプルートに宿っています。)

 カイザーの説明を聞いて、ヒカルがさらに緊迫を膨らませる。

(プルート・・どんな人なの・・・!?

 上空を見上げて目を凝らすヒカル。彼女の視界に、近づいてくる2つの人の姿が入ってくる。

 1人はカイロス。もう1人は、

「えっ・・・!?

 ヒカルはその正体に目を疑った。カイロスを追って現れたのは、黒いバリアジャケットに身を包んだメイだった。

 

 移動を続けていくカイロスを追っていくメイ。カイロスの行動に疑問を抱きながらも、メイは冷静さを崩さないでいた。

「どこへ行こうというの?人の多い所におびき出して下手に攻撃させないようにしても、私には通じないわよ。」

 メイが声をかけてから、カイロスに向けて右手を掲げる。その手の平に魔力が集まり、閃光となって放たれる。

 紙一重で閃光を回避するカイロスだが、メイが一気に距離を詰めてきた。

「いつまでも。あなたの追いかけっこに付き合うつもりはないわ・・・」

 メイがカイロスに膝蹴りを叩き込む。怯んだカイロスを、メイは続けて回し蹴りで叩き落とす。

 追いこまれて毒づくカイロスだが、眼下のヒカルを確認して笑みを取り戻す。彼はメイに視線を戻すと、ヒカルのいる場所に向かって降下する。

「どこまで逃げるつもり・・・」

 徐々に苛立ちを感じていくメイ。だが彼女も、眼下のヒカルを目撃する。

「ヒカル・・・!?

 ヒカルに目を疑うメイ。ヒカルも自分に似たバリアジャケットを身にまとっていたのだった。

「あの姿・・まさかヒカルが・・・ヒカル!」

 メイがたまらず呼びかけると、ヒカルも困惑の表情を浮かべてきた。

「メイ・・・メイが、どうして・・・!?

 ヒカルもバリアジャケットを身に付けたメイに、困惑を隠せなくなっていた。

(思惑通り・・ウラヌスとプルートが対面し、互いに動揺している・・・)

 ヒカルとメイの様子を見て、カイロスが不敵な笑みを見せる。

(どんなに強くても、動揺すれば攻撃が散漫になる・・・!)

 2人の動揺を好機と見たカイロスが、右手をかざして魔力を集中する。

 彼の行動を気に留めることなく、ヒカルはメイとともに驚愕していた。

(メイのあの姿・・メイがドライブウォーリアー・・プルートだったっていうの・・・!?

Do not disarrange the mind. Carelessness is aimed at because the enemy remains in surroundings.(心を乱してはいけません。周りに敵が残っているのですから、油断を狙われます。)

 困惑しているヒカルにカイザーが呼びかけてきた。しかしヒカルは動揺を払拭することができない。

(そんなこと言われても・・メイが・・メイが・・・あたし、メイと戦いたくない!メイはあたしの友達なんだよ!)

It is a prior settlement that the enemy it repulses a clear other party now. Well then, it is likely not to hesitate.(今は敵であることがはっきりしている相手を撃退することが先決です。それでしたら迷うことはないでしょう。)

 心の中で悲痛の叫びを上げるヒカルに、カイザーがさらに呼びかける。この言葉で、ヒカルは何とか気持ちを切り替えようとする。

(うん・・あの兵士や機械だったら、何とかできる・・・)

It is dangerous to be prolonged of here. Let's end it in a short time.(ここは長引くのは危険です。短時間で終わらせましょう。)

(そうだね・・気持ちの整理がつかないから、そうしたほうが・・・)

 カイザーに促されて、ヒカルは現状の打破に専念することにした。

 同じく動揺を隠せなくなっていたメイも、次第に落ち着きを取り戻していく。彼女はあざ笑ってくるカイロスに鋭い視線を送る。

「まさかこのような謀り事を仕掛けてくるとは・・そんなに私を怒らせたかったようだな・・・!」

「悔しいか?お前のその不様を見ると気分がよくなるぞ。」

 怒りを膨らませていくメイをあざ笑うカイロス。その直後、メイが素早く飛び込み、カイロスの体に打撃を叩き込んだ。

「今はヒカルのことは後回しにするわ・・今はあなたを倒すことを優先するわ・・・!」

 冷徹に告げるメイがさらに打撃を浴びせる。吹き飛ばされるカイロスだが、上空で踏みとどまる。

「やってくれるではないか・・どこまでやれる状態なのか、見せてもらおうか!」

 いきり立ったカイロスがメイに向けて光の弾を連射する。しかしメイは軽々と弾をかいくぐっていった。

 

 メイに対する動揺を抱えたまま、ヒカルはエビルとアームズへの攻撃に踏み切った。優位に立っている彼女だが、動揺のために冷静な判断ができないでいた。

(早く・・早くギルティアを何とかしないと・・・!)

Please do not panic. There is not a problem if settling down either.(慌てないでください。落ち着いていれば何の問題もありません。)

 焦っていくヒカルをカイザーがなだめていく。迫り来るギルティアの兵士を前に、彼女は右手に魔力を収束させていく。

「これで終わりにする・・・グランドレイジー!」

 ヒカルがエビルとアームズたちに向けて右手を繰り出す。彼女の右手が叩いたのは、眼前の空間。空間が揺さぶられたことで、強烈な衝撃波が放たれた。

 衝撃波には魔力が込められておらず、エビルだけでなくアームズをも吹き飛ばした。地面や壁に激しく叩きつけられて、機械の兵士たちは次々に破損して倒れていった。

「や・・やった・・・何とか乗り切った・・・」

 エビルとアームズを何とか撃退したヒカル。息を絶え絶えにしながら、彼女はカイロスと交戦するメイに目を向ける。

(メイ・・今度こそメイと声をかけないと・・・!)

 ヒカルがメイに近づこうとするが、魔力の消耗ですぐに飛び上がることができなくなっていた。

Do not overwork. Even if going at once, the body doesn't follow.(無理をしてはいけません。すぐに行こうとしても体がついていきません。)

(でも・・このままじゃ、メイが・・・!)

 カイザーが呼び止めようとするが、ヒカルはメイに近寄ろうとする。しかし気持ちとは裏腹に、体が思うように動かせずにいた。

 彼女の見つめる先で、メイは果敢にカイロスを攻め立てていた。

「しつこいわね・・いい加減に嫌気がさしてきたわ・・」

It advances to the point where the consumption of power is intense slowly. Let's hurry up when doing because it knocks it down.(そろそろ力の消耗が激しいところまで進みます。倒すのでしたら急ぎましょう。)

 苛立ちを感じ始めてきたメイに、ハデスが助言を投げかける。

(私も急ぎたいところだけど、どう攻めたらうまくいくのか・・)

Let's concentrate power on one point, and damage it at a dash. Because the enemy is multiusing the distance attack, the handgrip must be disadvantageous.(力を一点に集中して、一気にダメージを与えましょう。敵は遠距離攻撃を多用しているので、接近戦は不利のはずです。)

(接近戦か・・そうしたほうが賢明かもしれないわ・・・)

 ハデスの助言を聞き入れて、メイが意識を集中する。彼女は右手を強く握りしめて、カイロスに向かって飛びかかる。

「どこまでも小賢しいマネを!」

 カイロスが言い放つと、複数の光の弾を拡散させる。弾はメイを取り囲む形で静止した。

「何をしようと考えていたのか知らないが、これでは身動きが取れまい!」

「そんな小細工、気にするまでもないわ・・・!」

 高らかに言い放つカイロスに対し、メイも強気な態度を崩さない。

「その大口を叩けないようにしてやる!」

 目を見開いたカイロスが光の弾を操作する。だがメイは素早く動いて弾をかいくぐり、カイロスの体に魔力を込めた打撃を叩き込んだ。

「ぐおっ!」

 痛烈な一撃を受けて、カイロスが吐血する。激痛に襲われながらも、カイロスは後退してメイの追撃から逃れる。

「やってくれたな、ウォーリアー・プルート・・・!」

 苛立ちを膨らませるカイロスだが、すぐに哄笑を上げた。

「だがこれでお前たちは鉢合わせをした・・プルートはどうか知らないが、ウラヌスは友情などという妙なものにこだわっているようだからな・・」

 カイロスの言葉を耳にして、メイがヒカルに視線を移す。ヒカルはメイがプルートであったことに困惑を見せていた。

(ヒカル・・・ちゃんと話を聞かないと・・・)

 メイも心の中で困惑を感じていた。同時に彼女はヒカルと向き合わないといけないと思っていた。

「お前たちがこれからどうなっていくのか・・見るのが楽しみだ・・・」

 カイロスは言い放つと、転移してメイの前から姿を消した。

「逃げられた・・・でも、今は・・・」

 メイは肩の力を抜くと、ヒカルの前に降り立った。ヒカルだけでなく、メイも不安を感じずにいられなくなっていた。

「メイ・・・あなたがプルートだったなんて・・・」

「ヒカル・・・ウラヌスがあなただったとは・・・」

 動揺して震えるヒカルと、歯がゆさを浮かべるメイ。

「メイは・・ギルティアとは違うんだよね・・だって、カイロスと戦ってたんだから・・・」

 ヒカルが作り笑顔を見せて、メイに近づこうとする。

「だから、ドライブウォーリアーであっても、あたしたちは友達だよね・・・?」

「ヒカル・・私は本当の世界平和のために戦っている・・相手はギルティアだけでなく、今の世界そのもの・・・」

 問いかけていくヒカルに、メイが低い声音で言いかけてきた。その言葉の意味が分からず、ヒカルがさらに困惑を深める。

「ギルティアを倒すことだけが世界のためになるわけではない・・本当の意味で世界を平和にするには、力を持たないといけない・・ドライブウォーリアーのような、絶対的な力・・・」

「メイ・・・!?

 メイが告げてきた言葉にヒカルは絶望を覚える。後ずさりしそうになるのを、彼女は何とか踏みとどまっていた。

 言葉を投げかけられないでいるヒカルに、メイが手を差し伸べてきた。

「ヒカル・・あなたは私の味方なの?・・それとも、敵・・・?」

 メイが投げかけてきた問いかけに、ヒカルは答えを出せず震えるばかりになっていた。

 

 

次回予告

 

ウラヌスとプルート。

魔法の戦士は親友同士だった。

強固なメイの決意に対し、ヒカルは戦うことに迷いを抱く。

苦悩する彼女に迫るギルティアの次なる策略。

 

次回・「破滅への楔」

 

非情な現実が、少女の心を縛る・・・

 

 

作品集

 

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