Drive Warrior Episode12「戦士の総突撃」

 

 

 ダイアナ、ブルガノス、カイロス。3人のギルティア上位幹部全員の総攻撃に、ヒカルは絶体絶命の危機に陥っていた。

「どうした?ずい分と動きが鈍くなっているぞ?」

 倒れ込んでいるヒカルを見下ろして、カイロスがあざ笑ってくる。

(何とか反撃しないと・・このままじゃやられる・・・!)

 ヒカルがとっさに飛び上がって、反撃に転じようとする。カイロスも飛翔して、ヒカルに追い打ちを仕掛ける。

 カイロスが連射する光の弾を、ヒカルは身をひるがえしてかわしていく。だが彼女の眼前にブルガノスが飛び込んできた。

「私を忘れては困るぞ!」

 ブルガノスが繰り出した拳がヒカルを突き飛ばす。彼女はビルを突き破って、さらに吹き飛ばされていく。

(戦い方の違う敵の攻撃・・こんなによけるのが難しいなんて・・・!)

It turns behind and it crowds.(後ろに回り込んできます。)

 危機感を膨らませていくヒカルに、カイザーが呼びかけていく。彼女の後ろにいたダイアナが左手をかざし、拘束魔法を発動する。

「危ない!」

 ヒカルが振り返りざまに衝撃波を放って、ダイアナを引き離す。結果、ヒカルは拘束魔法を受けずに済んだ。

「なかなかやるな。我々3人を相手にしてまだ動けるとは・・」

 ブルガノスがヒカルの力に改めて感心する。3人のギルティア上位幹部の異なる攻撃手段に、ヒカルは焦る一方となっていた。

(ホントにきつい・・カイザーが呼びかけてくれなかったら、あっという間にやられてるよ・・)

All cooperation seems to have improved an individual ability though it is difficult to say to be suitable of all breaths. A weak point each other is supplemented.(全員の息が合っているとは言い難いですが、全員の連携が個々の能力をも高めているようです。互いの弱点も補われています。)

 思考を巡らせるヒカルに、カイザーが注意を投げかける。

(どうしたらいいのかな・・・1人ずつ相手にしても他から攻撃されるし・・・!)

The movement of three people is gripped. If it is you, it is possible to do though it is necessary to note more than before.(3人の動きをつかむのです。今まで以上に注意する必要がありますが、あなたならできます。)

 打開の策を探るヒカルに、カイザーがアドバイスを送る。

If the practice and the simulation are done repeatedly, and you strengthened bonds in addition.(練習とシュミレーションを重ね、さらに絆を強めていったあなたなら。)

 カイザーのこの言葉を聞いて、ヒカルが記憶を呼び起こす。

 互いに心の支えとなっているメイ。素性を知りながらも理解してくれたネネ。元気を分け与えてくれるマモル。

 かけがえのない友情と、この絆を守ろうとする自分の気持ちが、ヒカルを支えていた。

(ありがとう、カイザー・・・やっとネネちゃんが受け入れてくれたんだから・・ここで負けるわけにいかないよね・・・)

 笑みを取り戻したヒカルが、気持ちを落ちつけてダイアナたちを見据える。

「何がおかしい?追い込まれて開き直ったのか?」

 カイロスがあざ笑ってくるが、ヒカルは自分らしさを崩さない。

「あたしは負けないよ・・みんなとまた一緒に、楽しい時間を過ごしていくんだから・・・」

「わけの分からないことをまだ口にするとは・・まだまだ絶望を与えておかなければならないようだ・・」

 カイロスがヒカルに向けて光の弾を放つ。

「もう逃げない!」

 ヒカルが両手を前に突き出して光の壁を出し、カイロスの射撃を防ぐ。続けてダイアナがヒカルの背後に回り込み、バインドをかけようとする。

「同じ手を何度も受けるあたしじゃないよ!」

 すぐにヒカルが振り返り、ダイアナの体に打撃を叩き込む。苦痛にさいなまれ、ダイアナがバインドの発動に失敗する。

 そこへブルガノスが飛び込み、ヒカルに殴りかかろうとする。

「やあっ!」

 ヒカルがダイアナの右腕をつかむ。そのまま彼女を投げ飛ばして、ブルガノスにぶつかる。

「何っ!?

 思わぬ反撃を受けて、ブルガノスがうめく。ヒカルが見据える2人の後ろから、再び光の弾が飛び込んできた。

 ヒカルも障壁を出して光の弾を逆方向に跳ね返す。射撃してきたカイロスが、自分の放った弾に撃たれる。

「くっ!まさか自分の攻撃を受けることになるとは・・・!」

 痛みを覚えるカイロスが苛立ちを浮かべる。

「私たちの動きを的確に捉えている・・こんな形で巻き返してくるとは・・・!」

 ブルガノスもヒカルの反撃に危機感を感じていく。

「だが、私たち全員に太刀打ちできるとは言い切れないわ・・」

 だがダイアナはすぐに笑みを取り戻す。

「相手の裏をかいても効果的ではない。ならば真正面から叩き潰すまで!」

 いきり立ったブルガノスが、ヒカルに真っ向から飛びかかっていく。彼の気迫と速さに、ヒカルは一瞬対応が遅れた。

 回避が間に合わず、即座に迎撃するヒカル。だがブルガノスのパワーに次第に押されていく。

「立ち回りはよくなっても、力の差はいかんともしがたいようだな!」

 言い放つブルガノスがさらに力を込める。彼の力に競り負けて、ヒカルが大きく突き飛ばされる。

「よくやった、ブルガノス!今度こそ当ててやる!」

 カイロスが横転するヒカルに向けて、三度射撃する。光の弾が地面に当たり、砂煙が舞い上がった。

 

 レストランから帰宅したネネ。自分の部屋に戻ったところで、彼女はヒカルのことを考えていた。

(ヒカル・・変わらない、明るく元気な姿・・それなのに、どこかであんな戦いを続けてるんだよね・・・)

 魔法の戦士としてみんなを守る戦いを続けているヒカルに、ネネは困惑を募らせる。

(私にはヒカルみたいな力はない・・だから、ヒカルとまた会えると信じることしかできない・・・)

 ヒカルみたいに戦うことができない自分を、ネネは呪っていた。

(だからヒカル・・ちゃんと無事に帰ってきて・・それを願うことしか今はできないよ・・・)

 信頼とともに悔しさと辛さを感じて、ネネが部屋の壁にもたれかかる。彼女はひたすらヒカルの無事を願うのだった。

 

 勢いを増したダイアナたちの攻撃で、爆発の煙に包まれたヒカル。彼女にとどめを刺そうと、カイロスが右手を伸ばす。

「2度とふざけた抵抗ができないよう、ここでとどめを刺してやる・・・!」

 姿が見えるようになった瞬間に砲撃を放とうと、カイロスは魔力を集束させていた。だが、治まった煙の中にヒカルの姿がなかった。

「何っ!?

「よけていたの!?・・いったいどこに・・・!?

 驚愕を覚えるカイロスとダイアナ。彼らはヒカルの行方を追って、周囲に注意を向ける。

 そのヒカルを先に発見したのはダイアナだった。ヒカルは上空で両手に魔力を集中させていた。

「コイツ、いつの間にあそこであんな行動を!」

「バーストミーティア!」

 カイロスが目を見開いた瞬間、ヒカルが魔力を集めた両手を突き出して急降下してきた。彼女の両手の魔力の光が地面にぶつかると、衝撃波が巻き起こってダイアナたちに襲いかかった。

 踏みとどまろうとするダイアナたちだが、ダイアナとカイロスが衝撃に耐えきれずに吹き飛ばされる。

「この攻撃・・前よりも威力が上がっている・・・!」

 ヒカルの攻撃の衝撃の強さを痛感して、ブルガノスがうめく。着地したヒカルが、呼吸を乱しながらも冷静にブルガノスを見据えていた。

「負けるわけにはいかない・・あたしはまた、みんなと一緒に楽しい時間を過ごしたい・・出かけたいところとか、たくさんあるんだから・・・!」

 親友との友情をひたすら実感していくヒカル。さらに上がっていく彼女の魔力と戦闘技術に、ブルガノスは危機感を隠すことができなくなっていた。

Energy has gathered backward.(後方にエネルギーが集まっています。)

 そこへカイザーが呼びかけ、ヒカルが即座に動く。彼女の後ろに回り込んでいたカイロスが、出力を上げた光の弾を放ってきていた。

 ヒカルがカイロスに反撃しようと、右手をかざして魔力を集中させる。だが集めていた彼女の魔力が突然消失した。

「えっ・・・!?

 この異変にヒカルが目を見開く。振り向いた先には1体のアームズがいた。

(あの機械・・魔力を封じられた・・・!?

 一気に危機感を覚えるヒカルが、アームズの打撃を受けて地上に叩き落される。一時的に魔力を封じられてダメージが大きくなったものの、彼女は立ち上がった。

(まさかここで持ちこんでくるなんて・・・!)

The enemy is not an exaggeration to say that it will have put out all power by he or she. It cannot be asserted that other parties are three people.(敵は全ての力を出してきていると言っても過言ではありません。相手が3人とは言い切れません。)

 さらに追い込まれていくヒカルに、カイザーが呼びかけてくる。魔力が戻ったことを確かめてから、彼女は立ち上がる。

 そのとき、ヒカルの首に光の縄が巻き付いた。引っ張られたヒカルがそのまま首を絞められ、息苦しさを覚える。

「油断したわね・・わずかでも力を出せなくすれば、それがあなたを追い込むチャンスとなる・・・!」

 光の鞭を発するダイアナが、ヒカルをさらに引きずり込もうとする。

(苦しい・・早くコレを外さないと・・・!)

 ヒカルが首から光の縄を外そうとする。だが息苦しさのあまり、彼女は力を入れることができなくなっていた。

Please escape early. The way things are going, the suffocation death will be done.(早く脱出してください。このままでは窒息死してしまいます。)

(そんなこと言ったって・・首がしまって、うまく力が・・・!)

 カイザーが呼びかけていくが、ヒカルは光の縄を外せず、意識が遠のいていく。

The other party is attacked. It is possible to drive it in to the disappearance if it attacks it because this rope is magic.(相手を攻撃するのです。この縄も魔法ですので、攻撃すれば消失に追い込めます。)

(そ、そうだった・・このっ!)

 カイザーの助言を受けて、ヒカルがダイアナに向けて攻撃を仕掛けようとする。そこへカイロスが飛び込み、ヒカルに右手を突き付ける。

「このまま反撃させると思うか?」

 不敵な笑みを見せて、カイロスが砲撃を放つ。ヒカルはとっさに横転して砲撃をかわすが、ダイアナへの攻撃のタイミングを外してしまった。

(ダメ・・・もう・・力が・・出ない・・・)

 意識を保つことができなくなり、ヒカルが倒れて動かなくなる。

(負けられない・・・負けたらみんなと一緒にいられなくなる・・みんなの楽しい時間がなくなっちゃう・・・!)

 心の声を上げたときだった。息苦しさで意識を失いかけていたヒカルが、ゆっくりと立ち上がってきた。直後に彼女の首を絞めていた光の縄が突然断ち切れる。

「何っ!?

 突然のことにダイアナが驚愕を覚える。

「これが、ウラヌスの真の力か・・・!」

 ヒカルの放つ力を目の当たりにして、ブルガノスが緊迫を覚える。

「みんなとまた、楽しい時間を過ごしたい・・・だから、絶対に負けられない・・・!」

 ヒカルが低い声音で告げると、素早く飛びかかってダイアナを突き飛ばした。

「ぐっ!おのれ!」

「これほどとは・・ならばその高まる魔力をこの手で叩き潰すまで!」

 毒づくカイロスと、ヒカルに飛びかかるブルガノス。だがブルガノスが振りかざした拳を、ヒカルは左手で軽々と受け止めた。

「何だと!?私の攻撃を片手で・・!?

 さらに右手に力を込めるブルガノスだが、ヒカルを押し切ることができない。たまらず左手を振りかざすブルガノスだが、ヒカルが彼の右腕を両手でつかんで投げ飛ばす。

 カイロスがヒカルを背後から狙い撃ちしようとするが、ヒカルに鋭い視線を向けられて思いとどまる。

(カイザー、心配かけちゃってゴメン・・もう大丈夫だよ・・・)

You ・・・ The ego was not lost.(あなた・・・自我を失っていなかったのですね。)

 心の中で声をかけるヒカルに、カイザーが安堵を返す。秘められた魔力を解放したヒカルだが、今までのような暴走には陥っていなかった。

(カイザー、あたしは攻撃に集中するから、敵の位置をキャッチして・・ちゃんとよけて対応するから・・・)

It has understood. Please let me hear my voice and never never miss it.(分かりました。私の声を聞き逃すことがないようにお願いします。)

(ありがとう、カイザー・・それじゃ、行くよ!)

 カイザーに呼びかけてから、ヒカルがカイロスに向かっていく。

「真っ向からだと!なめたマネを!」

 苛立ちを見せたカイロスが、魔力を集めていた右手をヒカルに向ける。

「返り討ちにしてくれる!」

 ヒカルに向けて魔力の砲撃を放つカイロス。ヒカルは砲撃に向けて両手を突き出して、力を込めて2つに引き裂いた。

「砲撃魔法を力ずくで引き裂く・・本当にでたらめだ・・・!」

 ヒカルが見せる戦法に、カイロスがうめく。

It approaches at the same time the rear side and the right side.(後方と右側、同時に近づいてきています。)

 カイザーの声を聞いて、ヒカルがその場でかがむ。後ろから伸びてきたダイアナの光の鞭をかわす。

 続けて同時に飛びかかってきたブルガノスを、ヒカルは右足を突き出して迎撃する。

 的確にギルティアの攻撃に対処していくヒカル。今まで繰り返してきた訓練と培ってきた魔力と戦い方だけでなく、彼女の強い意思が強い魔法の戦士へと昇華させていた。

「こうなったら仕方がないわ・・同時攻撃よ!」

 ダイアナが切り出した呼びかけに、ブルガノスとカイロスが目つきを鋭くする。

「力を合わせるのは本当に気が乗らないが・・」

「こうしなければ、ウラヌスには勝てない!」

 ダイアナの指示を受け入れて、カイロスとブルガノスが散開する。3人が魔力を集中させて、ヒカルを狙う。

It seems to attack it by one's three people and one's best. Please watch it.(3人とも全力で攻撃してくるようです。警戒してください。)

 カイザーからの警告を受けて、ヒカルが集中力を高める。彼女もギルティアの攻撃に備えて、魔力を集中させていた。

(たとえ直撃に至らなくても、魔力のぶつかり合いの余波で怯ませることぐらいはできる・・・)

 ヒカルの動きに細心の注意を払いながら、ダイアナが思考を巡らせる。

(私たちが・・ギルティアの上位幹部である私たちが力を合わせて、倒せない敵はいない・・あのお方、マスター・クロノスを除いては・・・!)

「ウォーリアー・ウラヌス、今度こそあなたの最後よ!」

 高らかに言い放つダイアナ。3人の上位幹部が、ヒカルに向けて同時に魔力を放出する。

(一気に力を出して、跳ね返す!)

「バーストエクスプロージョン!」

 ヒカルも魔力を一気に放出する。彼女の魔力は爆発のような衝撃を巻き起こし、ダイアナたちの砲撃とぶつかり合う。

「わ、私たちの力を合わせても、ウラヌスを止められないと・・・!」

 目を見開くダイアナ。彼女はやむなく、ブルガノスとカイロス共々撤退することとなった。

 ギルティアの総攻撃を辛くも切り抜けたヒカル。だが魔力の解放と最大出力の魔力放出で、彼女は疲れ果ててしまった。

「ふぅ・・危なかった・・ギルティアがこれで引き下がってくれなかったら、ホントにどうなってたか・・・」

It was really a near miss. If either was lacked if an adequate liberating high power neither the strategy 2 were put forth completely at the same time, this crisis might not have been come through.(本当に危機一髪でしたよ。高い力の解放と的確な戦術、2つを同時に出しきれていなかったら、どちらかが欠けていたらこの危機は切り抜けられなかったでしょう。)”

 苦難を乗り越えて、ヒカルとカイザーが安堵の声を上げる。

However, I was surprised. Because I was kept while putting out power only in that.(それにしても驚きましたよ。あれだけの力を出しながら自分を保っていたのですから。)

「エヘヘ・・ホントに必死だったから・・・」

 カイザーの言葉を聞いて、ヒカルが照れ笑いを浮かべる。

Still, please take care. If power only in that is multiused even if not driving recklessly, the load proportionally grows, too.(それでも気を付けてください。たとえ暴走していなくても、あれだけの力を多用すれば、負担も比例して大きくなってしまいます。)

「うん・・これもムチャなことに入るから・・・」

 カイザーからの注意を聞いて、ヒカルが沈痛の面持ちを浮かべる。

 力を使いすぎたために入院するまでに至り、家族や親友に迷惑をかけた。そんな自分を責めて、ヒカルは2度とこのような迷惑をかけないようにしようと誓ったのである。

「みんなを守りたいけど・・そのためだからって、みんなに迷惑をかけていいことにはなんない・・・その気持ちはあるんだけど・・どうしたら自分の力をコントロールできるようになるのか・・・」

Let's remember the usage of power again. Do not unconsciously use power, and to you it is possible to demonstrate as the last resort.(力の使い方を覚えなおしましょう。無意識に力を使わないようにしたり、切り札として自分で発揮できるようになったりするために。)

「自分を見つめなおすってことだね・・・力を貸して、カイザー・・また訓練とかイメージトレーニングとかしておかないといけないと思うから・・・」

It has understood. We will help.(分かりました。お手伝いします。)

「ありがとう、カイザー・・・それじゃ、もう休まないとね・・・」

 協力してくるカイザーにヒカルが笑顔で感謝する。彼女がバリアジャケットを解除したと同時に、彼女がいた結界が消失し、普段の日常が戻ってきた。

 体を休めたいと考えながら、ヒカルはこの場を後にした。

 

 上位幹部3人の力を結集させても、ヒカルを打ち倒すことができなかった。ダイアナは絶望感を膨らませ、ブルガノスとカイロスは悔しさと苛立ちを感じていた。

「まさか私たちが、ウラヌスに完敗するとは・・・」

「ウラヌスも成長しているということか・・戦い方、魔力の使い方を学び、的確な攻防を仕掛けるようになってきた・・」

 ダイアナとブルガノスが言いかけると、カイロスが苛立ちを膨らませてそばの壁を殴りつける。

「おのれ、ウラヌス・・このままでは絶対に済まさんぞ・・・!」

「でも何か策はあるの?・・これだけの手を尽くしても、ウラヌスを倒すこともできない・・・」

 声を振り絞るカイロスに対し、ダイアナが悲観を見せる。するとカイロスがダイアナを見下してきた。

「腑抜けたヤツはそこで怯えていろ・・まだ手を出し尽くしたわけではない・・」

「あなたにはまだ打つ手があるというの・・?」

「あるさ・・いくらでも見つけ出せるさ・・・」

 ダイアナが投げかけた問いかけに、カイロスが嘲笑を浮かべながら答える。

「ウラヌスも元は人間・・弱点など探せばいくらでも見つけられる・・・」

「ウラヌスの、天宮ヒカルの身近な人間を人質にしても、あなたは敗れているじゃない、カイロス・・」

「ヤツの身近な人間は他にもいる・・たとえば、ウォーリアー・プルート・・・」

 カイロスが口にした言葉を耳にして、ダイアナだけでなくブルガノスも目を見開く。

「ドライブウォーリアーである以上、たとえ宿命に抗おうとしても対決は避けられない。ヤツらは必ず戦うことになる・・」

「それを悠長に待てと言いたいのか?一刻の猶予も許されないことは、お前も分かっているはずだ。」

 不敵な笑みを見せるカイロスに、ブルガノスが忠告を送る。だがカイロスは笑みを消さない。

「もちろん手は打つさ。2人が少しでも早く鉢合わせし、対立するように・・・」

「そこまでいうなら、その自信の程を見せてもらおうか・・」

 ブルガノスの言葉を受けて、カイロスが笑みを強める。

「待っていろ、ウラヌス。そしてプルート・・お前たちを追い詰めるのは、お前たち自身だ・・・」

 新たなる野心を胸に秘めて、カイロスは新たな手を打つのだった。

 

 ダイアナ、ブルガノス、カイロスが全員でかかってもウラヌスを打倒できなかったことは、メイの耳にも入ってきていた。

(総力戦を仕掛けてもウラヌスには敵わなかった・・・)

 神凪家で情報を整理していたメイが、おもむろに笑みをこぼす。

(当然よ。ドライブウォーリアーはクロノスの後継者のために生まれた存在・・たとえ上位幹部であっても太刀打ちできるわけがない・・)

 ギルティアの失態を嘲笑するメイ。

(でも次は私に目を付けてくるかもしれない・・またはウラヌスと一緒に一網打尽にしてくるかも・・)

 笑みを消したメイが、ギルティアの次の出方を模索していく。

(最悪、ギルティアとウラヌスを同時に相手にすることになる・・それでも私は負けない・・全員倒して、私がこの腐った世界を塗り替える・・・)

 心の中に秘めている感情を膨らませていくメイ。ハデスという力を得たことで、彼女の決意はさらに強まっていた。

(ハデス、あなたの力なら実現できると思う・・・?)

Your being able to achieve your wish is you.(あなたが自分の願いを実現できるのは、あなた自身です。)

 メイの呼びかけにハデスが答える。

I only am chanced to draw out your power and exist. Strength of your mind improves your power.(私はあなたの力を引き出すきっかけでしかありません。あなたの心の強さが、あなたの力を高めていくのです。)

(私の心の強さ・・たとえ私だけの力だとしても、ハデスがいなかったら私はその力も出せなかった・・・)

 ハデスの言葉を聞いて、メイが首を横に振る。

(私はずっと力を求めてきた・・ずっと自分の無力を呪っていた・・・こうしてハデスを体に宿して、私は心の底から喜んだ・・・)

 自分の気持ちと決意を確かめて、メイが右手を握りしめる。

 ひたすら力を求め続けていたメイ。本当に正しい世界を自らの手で導けるように。そのための力を彼女は手に入れることができた。

(ハデス、私に力を貸して・・一緒に戦って・・・)

It supplies even where. Because I am your power, and your life.(どこまでもお供しますよ。私はあなたの力、あなたの命となっているのですから。)

(ありがとう、ハデス・・私は戦う・・今の権力者やギルティアなどに世界を任せてたまるものか・・・!)

 込み上げてくる怒りを膨らませるあまり、メイの爪が手の平に突き刺さって血があふれてきていた。

(ハデス、改めて戦い方を覚えなおすわよ・・より確実に戦いを進められるように・・・)

It consented.(了解しました。)

 メイの呼びかけにハデスが答える。これからの戦いに備えて、メイは訓練を行うのだった。

 

 明日の授業の宿題を済ませて、寝る準備を進めていたネネ。宿題は無事に終えられたものの、彼女はヒカルへの心配を拭えずにいた。

(ヒカル、今も戦っていたりするのかな?・・・でも私にはどうすることもできない・・・)

 ヒカルにどうしていけばいいのか思い浮かばず、ネネが困惑していく。

(せめて、何かいい言葉をかけることができたら・・・)

 考え事を続けていたときだった。ネネは自分の携帯電話が鳴っていることに気付いた。

 それはメールの着信。ヒカルからのものだった。

「ヒカル・・・」

 戸惑いを浮かべて、ネネがメールの内容を確かめる。

 

「ありがとうね、ネネちゃん。これからもよろしくね♪」

 

「ヒカル・・・アンタって子は・・・」

 ヒカルからのメールに、ネネはおもむろに笑みをこぼす。

「そんなメールを出されたら、元気にならないわけないじゃない・・・」

 ネネは携帯電話を動かして、ヒカルに返信した。

 

 就寝前にネネに感謝のメールを送ったヒカル。しばらくして彼女の携帯電話に返信のメールが来た。

 

「明日もちゃんと遅刻しないで学校に来なさいよね。」

 

「エヘヘ・・厳しい返信だね、ネネちゃん・・・」

 ネネの返信を見て、ヒカルが苦笑いを浮かべる。だが彼女はすぐに安らぎを感じていた。

「でもありがとうね、ネネちゃん・・今日はホントに疲れたけど、ネネちゃんのおかげで、何だか元気が出てきたよ・・・」

 ネネに勇気づけられて、次第に安心感を膨らませていったヒカル。気持ちを落ち着けながら、彼女はベッドに横たわる。

「おやすみ、ネネちゃん・・また明日・・・」

 これからの学校での時間に胸を躍らせながら、ヒカルは就寝した。

 

 

次回予告

 

ギルティアの魔手は、プルートであるメイにも伸びてきた。

ハデスを宿したメイが、再び力の片鱗を見せる。

魔法の戦士を追い詰めるカイロスの策略。

 

次回・「戦士の邂逅」

 

ついに対面する、宿命の2人・・・

 

 

作品集

 

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