Drive Warrior Episode11「錯綜」

 

 

 ネネを人質に取り、ヒカルを追い詰めていくカイロス。だが怒りを爆発させたヒカルは、ネネを救出し、カイロスに攻め立てていた。

「これほどの力を出してくるなど・・・!」

 ヒカルの力に危機感を覚えるカイロス。だが彼はすぐに不敵な笑みを取り戻す。

「だが、まだ小娘がそこにいる・・下手にかわせば、そいつも巻き添えに・・!」

 カイロスがヒカルだけでなくネネにも狙いを定める。そのとき、ヒカルが素早く飛び込み、カイロスを大きく突き飛ばしてきた。

「速い!」

 毒づくカイロスが空中で踏みとどまり、両手を突き出して魔力を収束させる。

「だがこれだけの攻撃、小娘を守りながら防ぎきれるものか!」

 カイロスが言い放ち、眼下の公園に向けて魔力を放出する。ヒカルが閃光を見据えたまま、真っ向から飛び込んでいく。

「アンタの勝手で、みんなを危ない目にあわせたりしない!」

 ヒカルが両手を突き出して、殴りつけるように閃光を弾き飛ばした。

「バカな!?この攻撃を跳ね返すなど・・!?

 全力の砲撃を弾き返され、カイロスが驚愕する。上昇してきたヒカルが、カイロスに鋭い視線を向けてくる。

「ダイアナの言うとおり、予想を大きく上回る力を出してくるということか・・・ウォーリアー・ウラヌス、これで終わったと思うな!」

 これ以上の攻撃が有利をもたらさないと痛感し、カイロスは捨て台詞を吐いてからヒカルの前から去っていく。

「逃がさない・・逃がしたら、またみんなが・・・!」

「ヒカル!」

 カイロスを追撃しようとしたとき、ヒカルはネネの呼び声を耳にする。その瞬間、怒りに駆り立てられていたヒカルが我に帰る。

「ネネちゃん・・・!」

 自分の正体をネネに知られることになり、ヒカルが愕然となる。ゆっくりと公園に降り立つも、彼女は体を振るわせるだけで言葉を出すことができなかった。

(見られた・・ネネちゃんに、あたしのこと・・魔法のことを・・・!)

 どう切り出したらいいのか分からず、ヒカルはネネに目を合わせることもできずにいる。

(どうしたらいいの・・どうしたら・・・!?

Be steady. How it opposite to the friend if you become confused here?(しっかりしてください。あなたがここで取り乱したら、友人とどう向き合うのですか?)

 混乱していくヒカルにカイザーが呼びかけてきた。

(カイザー・・・ネネちゃんにイヤな思いはさせたくない・・でも、どうしたらいいのか・・・)

We will be honestly told to stay up. It becomes only a counterproductivity even if it cheats.(私たちに起きていることを正直に打ち明けるしかないでしょうね。ごまかしても逆効果にしかなりません。)

(正直に・・そうするしかないかもしれない・・・)

 いい考えが思い浮かばないまま、ヒカルがようやくネネに視線を向けた。常人離れしたヒカルを目の当たりにして、ネネは困惑を隠せなくなっていた。

「ネネちゃん・・ビックリしてるよね・・まるでマンガみたいなことを、あたしがしてたんだから・・・」

 何とか言葉を切り出そうとするヒカル。ネネはヒカルに困惑の視線を向けてきていた。

「何がどうなってるの・・ヒカル、何なのよ、今の・・・!?

「えっと・・話せば長くなるというか・・どう話したらいいのか分かんないというか・・・」

 問い詰めてくるネネに、ヒカルは言葉を詰まらせる。

「ちゃんと説明して!でないと納得しろって言われてもできないって!」

 ネネに詰め寄られて、ヒカルがさらに困惑する。彼女は何とか、自分なりに事情を説明しようとした。

 

 ヒカルの発揮した強大な力に返り討ちにされ、やむなくギルティア本部に戻ってきたカイロス。2度もの撃退に、彼は苛立ちを膨らませていた。

「バカな・・いくらドライブウォーリアーとはいえ、あんな小娘にオレが逃げ帰ることになるとは・・・!」

「ウラヌスが出してきた真の力、あなたも体感したようね・・」

 カイロスに声をかけてきたのはダイアナだった。

「フン・・失敗したオレを見下しに来たのか・・・!?

「あなたじゃないのよ・・ウラヌスの力が脅威ということよ・・・」

 鼻で笑ってくるカイロスに、ダイアナはため息混じりに言いかける。

「私たちの攻撃も、常識も通用しない・・全てを塗り替えてくる・・それはあなたも嫌々ながら感じているはずよ・・」

「そんなバカなこと・・・!」

「もはや魔法やデバイスといった理屈ではなくなっている・・おそらく、プルートとなった神凪メイも・・・」

 吐き捨てるカイロスに、ダイアナが話を続ける。彼女の言葉を耳にして、カイロスも緊迫を感じずにはいられなかった。

「プルートも、ウラヌスが出したような馬鹿げた力を出すというのか・・・!?

「可能性はある・・いいえ、そう考えるのが妥当よ・・・」

 問い詰めてくるカイロスに、ダイアナが深刻さを募らせて答える。

「これまで私たちはマスター・クロノスに忠誠を誓いながらも、野心や意地のために反目しあってきた。だがここはもう、私たち上位幹部が結束しなければならないのかもしれない・・」

「納得いかないがな・・だがもはや、マスター・クロノスの意向を遂行するためには、これ以外に術がないのだろう・・・」

 ダイアナの言葉をカイロスが渋々受け入れる。

「どうやら一時的に協定が結ばれたようだな・・」

 そこへブルガノスも姿を現し、ダイアナとカイロスに目を向ける。

「本当に一時的だがな・・・」

 不満を込めた言葉を口にしてから、カイロスは不敵な笑みを見せた。

 

 ウラヌスとしての力をネネに知られることになったヒカル。彼女は自分なりに事情を説明したが、ネネは納得できないでいた。

「魔法・・ギルティア・・・聞かされても何が何だかさっぱりだ・・・」

「やっぱりそうだよね・・あたしでも今でも分かんないことのほうが多いかもしれない・・・」

 ため息をつくネネに、ヒカルは苦笑いを浮かべるばかりになっていた。

「簡単に言うと、ギルティアってのが、世界征服を企んでいる悪い連中で、ヒカルはそいつらと戦ってるってことなんだよね・・・?」

「まぁ、そんなところかな・・あと、もうあたし、ただの人間じゃないの・・魔法が使えるってだけじゃなくて・・・」

 ネネの言葉に頷いてから、ヒカルは自分の胸に手を当てた。

「あたしの中には、カイザーってデバイスが埋め込まれてるの・・カイザーが外れたら、あたしは死んじゃうって・・・」

「ヒカル・・・!」

「ギルティアに改造されて、あたしは体も普通じゃなくなってる・・・この前、マモルちゃんからジュースを受け取ったときだって・・・」

 ヒカルが口にした言葉を聞いて、ネネは記憶を巡らせる。マモルが投げたジュースのパックがヒカルがつかんだ瞬間に弾けたのは、ヒカルが改造されて身体能力が上がっていたためだった。

「もう普通の体には戻れない・・今日まで何とか普通に過ごせたのが不思議なくらい・・・」

「戻れないって・・昨日まで普通に一緒に過ごしてきたじゃない!戦いだって、今日や昨日の話じゃないって・・・!」

 物悲しい笑みを見せるヒカルに、ネネが呼びかけていく。彼女の言葉を受けて、ヒカルが戸惑いを覚える。

「・・ゴメン・・ヒカルが大変だってことは分かってるけど・・私も、わけ分かんないんだよ・・・!」

「ううん・・ネネは悪くない・・・悪いのは、みんなのいるこの世界を壊そうとするギルティアと、あたし・・・」

 納得できないでいるネネに、ヒカルは弁解を入れる。

「ホントにゴメン・・あたしでも、まだまだ分かんないことが多すぎて・・・」

 謝ることしかできなくなるヒカル。ネネは歯がゆさを浮かべたまま、ヒカルに背を向ける。

「今日のことは、とりあえずみんなには黙ってる・・こっちもヒカル以上に、分かんないことが多すぎてるから・・・」

「ありがとうね、ネネちゃん・・気遣ってくれて・・・」

 振り絞るように言いかけるネネに、ヒカルは感謝をする。ネネはわだかまりを抱えたまま、ヒカルの前から去っていった。

(ちゃんと説明できなかった・・ネネちゃん、納得してなかった・・・)

 ネネに悪いことをしたと思い、ヒカルが気落ちする。

I'm sorry. Though I was able to explain if everybody was able to be told my voice ・・・(すみません。私の声をみなさんに伝えることができたなら、私が説明することができたのですが・・・)

 その彼女にカイザーが謝罪の言葉をかけてきた。カイザーの声は、宿主となっているヒカルにしか伝わらないのである。

(ううん、謝らなくちゃいけないのはあたしだよ、カイザー・・あたしがだらしがないから・・あたしがきちんと力を扱えないから、みんなを巻き込んで・・・)

 ヒカルが罪の意識を募らせて、自分を責める。彼女はひたすら自分の弱さと無力さを呪っていた。

(それにきちんと説明できなかった・・力を手に入れたのにあたし、何にもできてない・・・)

Please do not worry. You carried out the effort in your own way. Still, the result of the best doesn't necessarily come out. A painful result that wants to turn one's eyes away and becomes it might wait.(気にしないでください。あなたはあなたなりに尽力を尽くしました。それでも最善の結果が出るとは限りません。目を背けたくなるような辛い結果が待っていることもあります。)”

 次第に塞ぎこもうとしていたヒカルに、カイザーが励ましの言葉を投げかけていく。

However, your honest feelings are transmitted to the other party without fail. All the more if the other party is connected by strong bonds.(ですがあなたの正直な気持ちは、相手に必ず伝わります。その相手が、強い絆で結ばれているならなおさら。)

(ホントに、伝わってるのかな?・・・ネネちゃん、分かってくれてるのかな・・・?)

Let's believe and wait for here. If it is a true friend, you are sure to be accepted.(ここは信じて待ちましょう。本当の友人なら、あなたのことを受け入れてくれるはずです。)

(信じる、か・・・そうだよね・・信じないと・・信じてあげないと、辛いことなんて乗り越えられないよね・・・)

 カイザーに勇気づけられて、ヒカルが気持ちを引き締めていく。

(さっきあの場所で、メイと気持ちの整理をしたばかりじゃない・・またすぐにくじけたら、ネネちゃんやメイ、みんなに悪いよ・・・)

 先ほどメイとの時間を思い出すヒカル。大きな階段から景色を眺めながら大きく深呼吸をすることで、気持ちを新たにする。この決心と友達との絆を、ヒカルは改めて実感するのだった。

(ゴメンね、カイザー・・そしてありがとうね・・カイザーがいなかったら、ホントにダメになってたよ、あたし・・・)

 ヒカルがカイザーに感謝を傾ける。自分が気付いていない気持ちをカイザーが感じ取ってくれていると、彼女は思っていた。

Then, let's return early. It causes anxiety to not only the friend but even also the family when slowing.(では早く帰りましょう。遅くなると友人だけでなく、家族にまで心配をかけてしまいますよ。)

「えっ!?ウソ!?もうこんな時間!・・ホントに急がないと、お母さんにまた叱られちゃう〜!」

 カイザーの言葉を聞いて時計を見たヒカルが、慌てて家に向かって駆け出していった。

 

 非日常的、非現実的なヒカルの力を目の当たりにして、ネネは困惑を拭えなくなっていた。このわだかまりを抱えたまま、彼女は帰宅した。

(ヒカル・・何でヒカルが、あんな危ないことをやってんのよ・・・!?

 ヒカルとカイロスの戦いを思いだして、ネネが困惑を膨らませて息を荒くしていく。

(あんな怖くて、あんな危ない戦いをしてて・・何なのよ・・何だっていうのよ・・・!)

 込み上げてくる不安と恐怖に耐えきれず、ネネが玄関で耳を手で塞いで座り込む。

(受け入れないといけないことは分かってる・・でも、それができるほど、私は強くなかったってことかな・・・)

 不安を消せないまま、ネネは自分の部屋に戻っていった。着替えをしないまま、彼女はベッドに突っ伏した。

(どう接したらいいの・・・今までどおりに過ごしたらいいの・・・?)

 次からヒカルとどう過ごしていけばいいのか分からず、ネネは苦悩を続けたまま、いつしか疲れて眠ってしまっていた。

 

 苦悩を深めていたのはヒカルも同じだった。

 カイザーに励まされて気持ちを切り替えた彼女。だがその夜、彼女はなかなか寝付けずにいた。

(どうしよう・・ネネちゃんのことが気になって眠れないよ〜・・・)

 すっかりネネの心境が気になって仕方がなくなっていた。

(やっぱり・・すぐにでもネネちゃんとまた連絡を取ったほうが・・・)

Please endure here. Enduring benefits everybody. Especially, now. As for haste, you are sure to understand the friend is not benefited.(ここは辛抱してください。耐えることも、みなさんのためになるのです。特に今は。焦ることは友人のためにならないことは、あなたのほうが分かっているはずです。)

 焦りを感じだすヒカルに、カイザーが言いとがめる。しかしヒカルは焦る気持ちを止められなくなっていた。

(でも・・やっぱりあたし、ネネちゃんが・・・)

Even when being meet at the school tomorrow when doing, it might be good because I want to confirm feelings by all means.(どうしても気持ちを確かめたいというのでしたら、明日学校で会ったときでもいいでしょう。)

(カイザー・・・ネネちゃんが、あたしを嫌いになってなきゃいいんだけど・・・)

 不安を消せずにいるまま、ヒカルは気持ちを落ちつけようとする。

Please already take a rest. The influence goes out for daily life and the exchange with the friend when obsessing it too much.(もう休んでください。思い詰めすぎると、日常にも友人との交流にも影響が出てしまいますよ。)

(うん・・おやすみ、カイザー・・・)

 カイザーに促される形で、ヒカルは改めて眠りについた。

 

 ネネに正体を知られてから一夜が明けた。寝付くまでに時間がかかってしまい、ヒカルは寝不足になってしまった。

「おはよう、ヒカル・・あら?寝不足?」

「あ、うん・・なかなか寝付けなくて・・・」

 声をかけてきたアカリに、ヒカルが苦笑いを見せる。

「顔を洗ってきなさい。ちゃんと授業を受けられなくなるわよ・・」

「うん・・分かった、お母さん・・・」

 アカリに促されて、洗面所に向かうヒカル。何とか眠気を覚ましてから、朝食を取った彼女は家を出た。

 丁度、メイが天宮家に来たところだった。

「おはよう、ヒカル・・どうしたの?元気ないわよ・・?」

「おはよう、メイ・・お母さんにも聞かれたよ、その言葉・・・」

 メイに心配の声をかけられて、ヒカルが再び苦笑いを見せた。

「寝不足ね・・私も昨日はすぐに寝られなかった・・・」

「メイも・・・?」

「いろいろと悩みとか、考え事とかすると、頭の中でいろんなものが駆けまわって、落ち着かなくなるものなのね・・」

 当惑を見せるヒカルに、メイが語りかけていく。

「お互い、悩みの種を抱えているものね・・」

「しかも自分で解決しないとダメなんだよね・・・」

 互いに肩を落としてため息をつくメイとヒカル。頭が上がらないまま、2人は学校に行きついた。

 その昇降口で、ヒカルはネネと対面する。互いの目を合わせた瞬間、2人とも戸惑いを浮かべる。

「ヒカル・・ネネ・・・」

 ヒカルとネネの様子に、メイも当惑を覚える。

「ヒカルちゃん、ネネちゃん、どうしたの?元気ない・・んんっ!」

 マモルが無邪気に声をかけてくるが、2人の心境を察したメイに口を押さえられる。

「私たち、先に教室に行っているから・・」

 メイはヒカルとネネに声をかけると。マモルの口を押さえたまま教室に向かった。しばしの沈黙を置いてから、ヒカルが重く閉ざしていた口を開いた。

「ネネちゃん・・あの、昨日はホントに・・・」

「いいよ、謝らなくて・・だってヒカルは、悪いヤツらから私たちを守ってくれてたわけだし・・・」

 切り出そうとするヒカルに、ネネが弁解を入れてくる。

「それに、すごい力を持ったこと以外は、今までのヒカルとあんまり変わってないみたいだし・・・これからも、今まで通り過ごせそうな気がしてるんだけど・・・」

「ネネちゃん・・・」

 ネネが告げた心境に、ヒカルが戸惑いを覚える。彼女はネネが今の自分を受け入れてくれていると確信できていなかった。

「もしかして、私の思い込みだったりしたかな、この考え・・・?」

「う、ううん!そんなことないよ!そう言ってもらえるの、願っていたけど叶わないと思っていたから・・!」

 当惑を見せるネネに、ヒカルが慌てて答える。

「こんなこと、とても受け入れてもらえないと思ってた・・でもネネちゃんが受け止めてくれて、あたし、嬉しくて・・・」

「まだ本当に納得できてないところもあるけど、ヒカルがヒカルだってことは変わってないから・・・」

 ネネの言葉と優しさを感じ取って、ヒカルが喜びのあまりに目から涙をこぼす。

「ち、ちょっとヒカル、泣くなんて大げさだって・・・」

「だって・・だって・・こんなあたしなのに嫌われなかったのが、すごく嬉しくって・・・!」

 泣かれて困惑するネネが、ヒカルを落ち着かせようとする。そのとき、朝のホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴りだした。

「あ、もうこんな時間・・ヒカル、急がないと怒られるよ!」

「う、うん・・・」

 慌てだすネネに連れられて、ヒカルは涙を拭いながら教室に向かっていった。

 

 その少し前、先に教室に来ていたメイとマモル。メイに口を押さえられたまま教室に連れて来られる形で来たマモルは、メイが手を離した途端に息苦しさのあまりに大きく深呼吸をする。

「く、苦しいよ〜、メイちゃ〜ん・・・」

「少しはヒカルとネネに気を遣ったらどうなの?デリカシーがないって思われるわよ・・」

 気まずくなるマモルに、メイが注意を促す。

「2人とも何か悩みを抱えてた・・少なくてもヒカルはそんな感じだった・・・」

「う〜ん・・鈍感なのかなぁ、あたし・・・」

 深刻な面持ちを見せるメイと、違う意味で困り顔を浮かべるマモル。するとチャイムが鳴りだし、ネネがヒカルを連れて教室に駆け込んできた。

「ヒカル、ネネ、もう大丈夫なの?」

「うん・・メイ、マモルちゃん、ホントにゴメンね・・・」

 メイが声をかけると、ヒカルは笑顔を見せて答えてきた。ヒカルもネネもこの後落ち着いて、授業を受けることができた。

 

 放課後となり、レストランでの仕事の時間に入ったヒカル、メイ、ネネ、マモル。ヒカルとネネが普段以上の活気を見せていた一方、マモルはまたもや失敗を見せていた。

 今までの落ち着きとにぎわいを取り戻したヒカルたちは、この日の仕事を終えて帰路についていた。

「今日は1番調子がよかったかも。自分でも生き生きしてた気がする・・」

「あたしも♪うまくいったって思うことがいっぱいあったよ♪」

 ネネが投げかけた言葉に、ヒカルが笑顔で答える。

「エヘヘ、あたしもあたしもー♪」

「アンタは今日も失敗してたじゃない・・」

 マモルも笑顔で言いかけるが、ネネに注意をされて気落ちする。

「あたし、ちょっと寄るところがあるから、ここでお別れだね。」

「そう・・それじゃまたね、ヒカル・・」

 帰り道の途中でメイたちと別れ、ヒカルは分かれ道に入っていった。彼女はネネと和解できたことが、今も嬉しく感じていた。

(ホントによかった・・もうダメになるのかって思っちゃったよ・・・)

It was good. If it is a best friend connected by deep bonds, it is one that can change each other.(よかったですね。深い絆で結ばれている親友なら、変わり合えるものなのですね。)

 安堵するヒカルに、カイザーが声をかける。

(ホントは寄り道なんてウソ・・1人で自分の気持ちを確かめたかったんだ・・)

 心の中で呟いていくヒカル。改めてメイやネネたちと向き合うために、彼女は気持ちを落ちつけようとしていた。

 そのとき、ヒカルは突如奇妙な感覚を覚え、緊張を膨らませる。

(この感じって・・もしかして、また・・・!?

It was drawn in to a different space. The enemy lurks to be near.(異空間に引き込まれました。近くに敵が潜んでいます。)

 思い立つヒカルにカイザーが注意を促す。彼女は注意力を高めて、自分を狙う敵の気配を探る。

「感じる・・でも1人だけじゃない・・・!」

 閉じ込められた結界の中で、ヒカルが気配を感じて振り返る。その先のビルの上に、カイロスの姿があった。

「カイロス・・でも今回は他にもいる・・・!」

 カイロスを警戒しながら、ヒカルが視線を移す。別の場所にはダイアナとブルガノスの姿があった。

「久しいな、ウォーリアー・ウラヌス・・」

「もう意固地になっている場合じゃない・・今日こそあなたを拘束させてもらうわ・・」

 ヒカルに声をかけるブルガノスとダイアナ。

「3人で攻めてくるなんて・・1人1人でも手強いのに・・・!」

Please note it. Something seems to be this time different from the current.(注意してください。今度は今までとは何かが違うようです。)

 緊迫を募らせるヒカルに、カイザーも呼びかけていく。ダイアナたちが彼女の前に降り立ってきた。

「本当は協力して戦うつもりはなかったが、こうでもしないとマスター・クロノスのお怒りを買うことになるのでな・・」

「拘束が不可能ならば、倒してしまうのも仕方がない。カイザーが無事ならどうにでもできる・・」

 カイロスとブルガノスが言いかけて、ヒカルを見据える。

「どんなことをしてきても、アンタたちにあたしたちをムチャクチャにさせない!」

 言い放つヒカルがバリアジャケットを身につける。3人のギルティア上位幹部を前にしても、彼女は物怖じを見せていなかった。

「私たち3人を同時に相手するつもり?ずい分な自信ね・・」

「自信なんて関係ない・・みんなのことを守りたいから戦うだけ・・・!」

 妖しく微笑むダイアナに、ヒカルが低い声音で言葉を返す。

「やっとネネちゃんと分かり合えて、仲直りしたんだから・・だから、あたしは負けるわけにはいかないんだよ!」

「まだわけの分からないことを・・人間とは本当に不可解だな・・」

 自分の気持ちを言い放つヒカルを、カイロスが嘲笑してくる。

「たとえお前がドライブウォーリアーで、とてつもない魔力を発揮してくるとしても、我々3人全員を1度に相手にできるのか・・・!?

 ブルガノスが先陣を切り、ヒカルに向けて拳を繰り出す。この打撃をかわすヒカルだが、ダイアナが光の鞭を伸ばしてきていた。

 右腕を鞭で縛られ、ヒカルがダイアナに引っ張られていく。

「しまった・・・!」

「1人だけを気にしていると、後ろが隙だらけになるわよ・・」

 声を荒げるヒカルを、ダイアナが鞭を振りかざして地面に叩きつける。

「ぐっ!」

 うめくヒカルが何度も振り回されて地面や壁に叩きつけられていく。そして空中に投げ出された彼女の前に、カイロスが立ちはだかる。

 カイロスが放った魔力の光がヒカルに叩き込まれる。巻き起こった爆発で地上に吹き飛ばされ、ヒカルが叩きつけられた。

「強い・・強いだけじゃなく、息も合ってる・・・!」

 ギルティアの幹部たちの連携攻撃に、ヒカルは危機感を膨らませていた。立ち上がった彼女の前に、ダイアナたちが立ちはだかる。

「今度こそ終わりよ、ウラヌス・・もうあなたの自由にはさせないわよ・・・!」

 ダイアナが目つきを鋭くして、ヒカルに敵意を向ける。ヒカルは負けじと力を入れて立ち上がり、ダイアナたちに挑もうとしていた。

 

 ヒカル、そしてマモルとネネと別れて帰宅した後、メイはギルティアの動向を探っていた。

(ウラヌスが逃げられ、プルートである私にも逃げられた以上、ギルティアにはもう余裕はない・・総力戦も厭わないでしょうね・・)

 ギルティアが全力を出してくると推測するメイ。

(総攻撃はウラヌスだけでなく、もちろん私にも仕掛けてくる・・私も決して油断はできない・・)

 自分に対するギルティアの出方を、メイは模索していく。

(私は3人全員が攻めてきても対応できると思う・・でももしもウラヌスが何の事情も知らない人間だったら、確実に対応が間に合わなくなる・・)

 ひとつの懸念を募らせていくメイ。

(的確な策を打ち出さなければ、ウラヌスは確実に敗北する・・・)

 現状を模索した結論から、ウラヌスに勝機がないと断定するメイ。彼女は自分自身を守ることと、ギルティアを的確に叩いていくことに細心の注意を傾けるのだった。

 

 

次回予告

 

度重なる失態で追い込まれたギルティア上位幹部。

ダイアナたちの同時攻撃に、ヒカルは悪戦苦闘を強いられる。

かつてない強襲を前に、魔法の戦士は秘められし力を覚醒させる。

 

次回・「戦士の総突撃」

 

強まる絆が、力を呼び起こす・・・

 

 

作品集

 

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