Drive Warrior Episode10「運命のはじまり」

 

 

 ついにハデスを手に入れ、ウォーリアー・プルートとしての力を手に入れたメイ。だが彼女はいつまでも喜びに浸ってはいなかった。

(やっと手に入れた・・ハデスを、世界を正しく導ける力を・・そしてうまくいった・・ギルティアに洗脳されずに済んだ・・・)

 神凪家に戻ったメイは、ハデスと自分の中に宿る力を実感していく。

(これでギルティアは、私を完全に反逆者と見なしたわね・・おそらくお父様も・・・)

 ギルティアとの敵対を実感し、メイが右手を握りしめていく。

(ハデス、あなたはギルティアに忠誠を誓っているの?私の居場所を、ダイアナたちに知らせるつもりでいるの?)

I am not when I recognize the rebel of the organization you. I exist for the purpose is not to organize but you the main now.(私はあなたを組織の反逆者と認識してはいません。私は組織のためでなく、主であるあなたのために今は存在しているのです。)

 メイの心の声にハデスが答えていく。

(ということは、あなたはギルティアではなく私の味方。ギルティアを敵に回しても構わない。そういう認識でいいのね?)

You and I are of one mind and flesh. Even if you will fall into what situation, I fight with you.(私とあなたは一心同体。あなたがどのような状況に陥ることになっても、私はあなたと一緒に戦います。)

 問いかけてくるメイに、ハデスが自分の考えを告げる。

(ウラヌスが先にこの世界のどこかで戦っている・・ギルティアと完全に対立していることは確か・・)

It meets Uranus, and it will fight sooner or later. The true colors of Uranus ・・・(遅かれ早かれ、ウラヌスと対面し、戦うことになるでしょう。ウラヌスの正体は・・・)

(いいえ、言わなくていいわ・・ウラヌスが何者かなんて、私には関係ない・・・)

 ハデスが告げようとしたウラヌスの正体を、メイは聞こうとしない。

(たとえウラヌスが誰だろうと、敵になるなら容赦なく倒す・・たとえその人が家族や親友でも・・ギルティアの思惑通りになるとしても・・・)

May I not really tell it?You were understood and the gentle person was able to be understood from making you and the mind and body commuted. Though it is good when it never regrets because it knows the reality of pitilessness ・・・(本当に私から打ち明けなくてよろしいのですか?あなたが優しい人ということは、あなたと心身を通わせることで理解することができました。非情の現実を知って、後悔することがないといいのですが・・・)”

(後悔はしないわ・・後悔するなら、ここまでのこと、最初からやる気にならなかったわ・・)

 ハデスの言葉を聞いても、メイの決意は変わらない。彼女はギルティアも含めて、自分に立ちはだかるものを敵として倒していこうとしていた。

It has understood. Please use my power as you think. My power is your power.(分かりました。あなたの思うままに私の力を使ってください。私の力は、あなたの力です。)

(ありがとう、ハデス・・あなたのこと、頼りにさせてもらうわ・・・)

 力を貸そうとするハデスに、メイが信頼を寄せていく。

(これからのギルティアは、私への敵意を今まで以上に強めてくる。いつどこで襲撃を受けることになるか、私でも予測が追い付きそうもない・・ハデスも警戒を怠らないようにして・・)

It has understood. It informs you at once when the person who is recognizing to you that it does harm approaches.(分かりました。あなたに害をなすと認識している人物が接近した場合、あなたにすぐに知らせます。)

 メイの呼びかけにハデスが答える。周囲への警戒を強めたまま、メイは日常へと気持ちを切り替えていった。

(近いうちにお父様とも会うことになる・・味方になってくるか、敵となるか、お父様にも警戒しなければ・・・)

 

 ダイアナとアームズとの対戦での力の暴走。無意識の中で起こった異変に対する不安と苦悩を、ヒカルは今も抱えていた。

(あたし、このまま戦ってもいいのかな?・・あたし、どうしていくのがいいのかな・・・?)

 制服に着替える中、ヒカルが心の中で不安を膨らませていく。そんな彼女にカイザーが呼びかけてきた。

The purpose of reason why you fight and reason to use power is to defend family, best friend, and your own important one? willIt is necessary to get over fear to power and reckless driving if it is thought that it doesn't want to jeopardize everybody.(あなたが戦う理由、力を使う理由は、家族や親友、あなた自身の大切なものを守るためでしょう?みなさんを危険にさらしたくないと思っているなら、力や暴走に対する恐れを乗り越えなくてはなりません。)”

(カイザー・・・)

 カイザーが投げかけた言葉に、ヒカルが戸惑いを覚える。

(でも、ホントにどうしたらいいのか・・・また暴走して、今度はメイやみんなを傷つけちゃったら・・・)

It is safe. You have courage and the geniality to confront also in what. I believe getting over not being defeated even at this scary and suffering.(大丈夫です。あなたにはどんなことにも立ち向かっていく勇気と優しさがあります。この怖さや苦しみにも負けずに乗り越えると、私は信じています。)

 不安を拭えずにいるヒカルを、カイザーが励ましていく。

(優しいのはカイザーのほうだよ・・少なくてもあたしなんかより・・・)

It is you that gave the geniality. The geniality and courage taught and you taught any adversity to tear me.(その優しさを与えてくれたのはあなたです。その優しさと勇気が、どんな逆境も破れることを、あなたは私に教えてくれました。)

 物悲しい笑みを浮かべるヒカルに、カイザーがさらに励ましていく。

Therefore, please believe you. If oneself is believed, you can never do.(だから自分を信じてください。自分自身を信じれば、あなたにできないことはありません。)

(自分を信じる・・今までずっとそうしてきたはずだったのに・・・)

 これまでのギルティアとの戦いを思い返して、ヒカルは徐々に気持ちを落ちつけていく。

 何度となく突破できないと思ったことがあった。だがカイザーの助言と諦めない気持ちが、この状況を次々と打ち破っていった。

 今ここにいることを実感して、ヒカルは笑顔を取り戻していった。

(ありがとう、カイザー・・さて、今日も元気でいきましょう♪)

Then, let's hurry up. Because it doesn't allow everybody to wait.(では急ぎましょう。みなさんを待たせてはいけませんから。)

「いけない!急がないとメイに怒られちゃう!」

 カイザーの言葉を聞いて、時計を見たヒカルが慌て始める。日常に気持ちを切り替えて、彼女は家を飛び出した。

「あっ!メイ、丁度来たみたいだね・・」

 ヒカルが家を出たときに、メイもやってきていた。

「ヒカル・・また寝坊でもしたのかしら?それとも余裕ができたと思って油断していたとか?」

「エヘヘ・・そうかもしれないね・・」

 メイにからかわされて、ヒカルが照れ笑いを見せる。

「それじゃ行こう、メイ♪遅刻しちゃうよ♪」

「誰のせいで遅刻するかもしれなくなっているのよ・・」

 上機嫌に言いかけるヒカルを、メイが呆れ気味に追いかけていく。2人は遅刻することなく学校にたどり着くことができた。

「おはよー、ヒカルちゃん、メイちゃん♪」

「また遅刻したんじゃないかって思ったよ・・」

 マモルが明るく声をかけ、ネネがからかってくる。こうした屈託のないやり取りが、ヒカルにとってかけがえのない日常となっていた。

 メイもそう思っていた。だがこの日常が今の世界の中にあることを快く思っていなかった。

 

 ヒカルとメイ。ウラヌスとプルート。

 ドライブウォーリアーとなった2人の少女が、平穏な日常の中で生活している。互いの素性を知らないまま。

 そんなヒカルとメイの様子を見て、カイロスがあざ笑っていた。

「つくづく人間とは分からない生き物だ。なぜそんなに慣れ合っているのか・・」

「いつまでも様子見ばかりしていていいのかしら?」

 ため息をついたところで、カイロスはダイアナに声をかけられる。

「うまくつぶし合ってくれればよかったが、まだ互いの正体を知る予兆もなく、慣れ合いを続けているようだ・・」

「それでどうするの?つぶし合うまで待っているつもり?」

「まさか。どちらかが潰されやすい状況を作り出しておく。そうしたほうがうまく事が運ぶというもの・・」

 ダイアナの苦言に対して、カイロスは不敵な態度を崩さない。

「神凪メイのほうが隙が少ない。一方、天宮ヒカルは実に感情的。付け込むならそっちのほうがやりやすい。」

 カイロスは語りながら、ヒカルのデータに目を通していく。

「神凪メイに気付かれないようにすることを重視して、天宮ヒカルを徹底的に罠にかけていく。どう苦しんでいくのか、楽しみだ・・」

「目的を間違えないで。全てはマスター・クロノスの意思のままに・・」

 笑みをこぼしていくカイロスに、ダイアナが注意を促す。

「お前に言われるまでもない。必ず結果をもたらしてやろう・・」

 あくまで自信に満ちた態度を崩さないカイロス。彼は次の一手を見出しつつあった。

 

 その日の放課後、ヒカルはメイとともに下校の準備をしていた。

「あれ?マモルちゃんとネネちゃんはレストランだっけ?」

「えぇ。ネネがマモルを引っ張っていったわ。マモル、今度は失敗しないといいのだけど・・・」

 ヒカルが訊ねると、メイがため息混じりに答える。ネネは遅刻しないように、マモルを連れてレストランに向かって駆けていった。

「メイ、今日は時間あるんだよね?一緒に行きたいところがあるんだけど・・」

「えっ?いいけど、どこに行くつもりなの・・?」

 ヒカルの誘いにメイが疑問を投げかけてきた。

 

 ヒカルとメイが来たのは、街中で最も高いビル。そのそばの階段だった。

「んー!やっぱりここに来ると気持ちがのびのびとなってくるよー♪」

「それは私も思うけど、ここに何の用があるの?」

 大きく背伸びをするヒカルに、メイが改めて疑問を投げかける。

「たまにはここに来て、気持ちを楽にしたかったんだよね・・ホントはマモルちゃんとネネちゃんも連れてきたかったんだけどね・・・」

「ヒカル・・・」

 微笑んで語るヒカルに、メイが戸惑いを見せる。

「ここしばらく、いろいろなことがあったからね、あたし・・ホントは、もうちょっと前にここに行きたいと思っていたけど、その時間も、余裕さえもなくて・・・」

「・・私も、こういうところがあったら、早めに来ていたかも・・・」

 ヒカルの言葉を聞いて、メイも笑みをこぼす。

「ヒカルがどういう悩みを抱えているのか、まだ予測できていない・・でも何かあったら、私がヒカルを助けに行くから・・・」

「メイ・・・ありがとうね。どうしてもダメなときは、メイに甘えることにするね・・」

 メイからの励ましの言葉を受けて、ヒカルは笑顔で頷いた。

「もしもメイに何があったら、あたしがメイを助けに行くからね♪」

「ありがとう、ヒカル・・気持ちだけ受け取っておくわね・・」

 ヒカルから励ましを返されて、メイも笑顔を見せて頷いた。

「さて、いくら時間があるからっていつまでも寄り道をしていていいことにはならないわ。そろそろ帰りましょう。」

「あ、深呼吸をさせて、お願い♪」

 メイが呼びかけると、ヒカルが1回背伸びをする。気持ちを楽にしてから、彼女はメイとともに帰路につくのだった。

 

 その頃、レストランでの仕事をこなしていったネネとマモル。何とか様になってきたマモルに、ネネは安堵を感じるようになった。

 そんな感じでこの日の仕事を終えた2人は、レストランを後にして帰路についていた。

「ふぅ・・今日は何とか失敗しなかったよ〜・・・」

「これからもこの調子で頼むよ、マモルさん。」

 肩を落とすマモルに、ネネがからかい半分で呼びかけていく。

「それじゃ、私はこれから用事があるから。また明日学校で。」

「うん♪じゃあね、ネネちゃん♪」

 ネネは帰り道の途中でマモルと別れ、寄り道をすることになった。

 

「あっ、買わないといけないものがあったわ・・」

 同じ頃、メイも用事を思い出していた。

「大丈夫、メイ?1人でもここから帰れる?」

「あまりバカにしないでよね。むしろヒカルのほうが1人で帰れるのか、心配よ・・」

 心配するも逆にメイに心配されて、ヒカルが気落ちする。

「それじゃまた。今日は本当にありがとうね、ヒカル。誘ってくれて・・」

「メイ・・・うん♪あたしも嬉しいよ♪」

 駆けていくメイを、ヒカルが大きく手を振って見送っていった。

(さて、気持ちが大分楽になったところで、早く家に帰ろう♪遅くなっちゃうとお母さんに叱られちゃう・・)

 気持ちを新たにして、ヒカルも家に帰ろうとする。

(どうしたの、カイザー・・・?)

 カイザーからの返事がないことに、ヒカルが疑問を覚える。

(カイザー・・・?)

Please take care. I feel the power of the person who aims at us to be near.(気を付けてください。近くに私たちを狙う人物の力を感じます。)

 カイザーからの呼びかけを聞いて、ヒカルは緊張を覚える。彼女は街にいる人々から離れて巻き込まないようにする。

(ギルティアが、また襲ってくるなんて・・いい加減にしてほしいよ・・)

 不安を膨らませながら、ヒカルは人の少ない街外れに向かっていく。

(逃げてしまっていいのか、ウラヌス?)

 そこへ念話が飛び込み、ヒカルは足を止める。振り返って見上げた彼女。その視線の先の建物の上に、カイロスがいた。

(カイロス・・・!)

(逃げれば街にいる人間がどうなるか。さすがに容易に想像がつくだろう?)

 毒づくヒカルを見下ろし、カイロスがあざ笑ってくる。このまま街から遠ざかることができず、ヒカルは焦りを覚える。

He doesn't choose the means for the purpose. Let's repulse it before something is set.(彼は目的のためには手段を選びません。何かを仕掛けてくる前に撃退しましょう。)

(分かってる・・でも下手に動いたら、それこそアイツの思い通りになっちゃう・・・)

 呼びかけるカイザーの言葉を聞いても、ヒカルは焦りを募らせていく。

「諦めろ。お前に残されている選択肢はひとつしかないのだから。」

 カイロスがヒカルをあざ笑っていく。その態度と言葉が、ヒカルの心を逆撫でした。

「カイザー!」

 バリアジャケットを身にまとい、ヒカルがカイロスに飛びかかる。だがカイロスは迎撃の準備を整えていた。

「本当に分かりやすいな、お前は・・」

 カイロスが右手を掲げて、ヒカルに向けて魔力の閃光を放つ。

「キャッ!」

 この直撃を受けて、ヒカルが大きく吹き飛ばされる。彼女は大きな公園へと叩き落された。

「イタタタ・・見事に返り討ちにされた・・・」

 頭を押さえて痛がるヒカル。立ち上がった彼女の前に、カイロスがやってきた。

「さて、この前やられた屈辱を晴らさせてもらうぞ。オレに屈辱を与えたのだ。徹底的にやらせてもらう・・・」

「そんな勝手に付き合うつもりはないよ!」

 目つきを鋭くするカイロスに、ヒカルが再び飛びかかる。

「何度も同じ手をしてくるとは・・」

 カイロスがあざ笑いながら、再び砲撃を仕掛けようとする。だがヒカルは跳躍して、カイロスを飛び越えて後ろに回り込んだ。

「同じ手が効かないのはこっちのほうだよ!」

 体を回して蹴りを繰り出すヒカル。舌打するカイロスが、後ろに下がって一蹴をかわす。

「何としてでも屈辱を与えてやるぞ。その後でカイザーを取り戻す・・」

 不敵な笑みを見せるカイロスに、ヒカルが果敢に攻め立ててくる。彼女はカイロスに卑劣な手段を出させないようにしていた。

 だが、功を焦るヒカルの攻防は、カイロスの迎撃をやりやすくしていた。

「この攻撃がどこまで続くかな?」

 あざ笑うカイロスが向かってきたヒカルに手を伸ばす。彼が放った衝撃波で、ヒカルが吹き飛ばされて激しく横転する。

 その先の大木の幹にぶつかってもたれかかるヒカル。痛みに耐えながら、彼女は力を振り絞って立ち上がる。

「いけない・・押されてきてる・・何とかしないと・・・!」

 必死に打開の糸口を探るヒカル。カイロスが不敵な態度を崩さずに、ゆっくりとヒカルに迫っていく。

「やっぱり落ち着いて攻めていったほうがいいかも・・カイロスの動きをきちんと見て・・」

There is a civilian to be near. It is a jar that the enemy thinks of if it will roll it.(近くに民間人がいます。巻き込むことになれば敵の思うつぼです。)

 そのとき、カイザーがヒカルに呼びかけてきた。この言葉に彼女がさらなる緊迫を覚える。

(人が・・・どこにいるの!?

 ヒカルがカイザーに問いかけながら、周囲に注意を傾ける。

The rear side of the right side. Distance 300 meters. It is a matter of time that is found though seem not to have noticed by the enemy yet.(右側後方。距離300メートル。敵はまだ気づいていないようですが、見つかるのは時間の問題です。)

(近い・・絶対にカイロスに気付かせないようにしないと・・・!)

 カイロスに鋭い視線を向けるヒカル。最悪の事態にならないように、彼女は必死だった。

「さて、次はどのようなムダな抵抗をしてくるか・・・」

 不敵な態度のまま、カイロスが光の弾を連射してきた。

(よけたら人に当たってしまう・・・!)

 回避が危険と判断し、ヒカルが両手に魔力を集中させて、光の弾を弾いていく。彼女は人に被害が及ばないように手を打っていた。

(ここは、カイロスをここから遠ざけないと!)

 人々を守ろうと、ヒカルはカイロスに向かっていく。

「バカのひとつ覚えのように、真正面から向かってくる・・格好の標的だ・・」

 カイロスが呆れながら迎撃の射撃を行う。彼を引き離そうとするヒカルだが、ことごとく返り討ちにされていった。

「これでは単にみっともないだけだ。逆につまらない・・」

 追いこまれていくヒカルを見下ろして、カイロスがため息をついた。

It is useless, and the distance has contracted. The way things are going, it will be found.(駄目です、距離が縮まっています。このままでは見つかってしまいます。)

 カイザーが呼びかけるが、ヒカルは思い通りの状況に持ちこむことができずにいた。

 そのとき、カイロスが人の気配に気付いて目を凝らす。彼も近くにいた人に気付いてしまった。

(まさか、こんなことで焦るとはな・・・)

 笑みを強めるカイロスが、ヒカルに向けて魔力の光を放つ。眼前に光をぶつけられて、ヒカルが怯む。

 続けてカイロスが大きく飛び上がり、旋回して人のいるほうに向かう。

「し、しまった!」

 驚愕するヒカルがカイロスを追いかけていく。だがカイロスは人質を取っていた。

 捕まったのは、ヒカルのよく知る人。

「ネネ、ちゃん・・・!?

「ちょっと、何よアンタ!?

 目を疑うヒカルの前で、カイロスに抵抗しようとしていたのはネネだった。ネネはヒカルの格好を見て、驚きを覚える。

「ヒカル・・ヒカルなの・・・!?

「ネネちゃん・・これは・・・!」

 ネネにかける言葉が分からず、ヒカルは困惑する。彼女の心境を知らないまま、カイロスが不敵な笑みを見せてきた。

「妙な動きをすればどうなるか、分かっているな?コイツを助けたいならまずはバリアジャケットを解除してもらおうか。」

 カイロスがネネを盾にして、ヒカルに呼びかける。ヒカルはネネを助けようと、必死に思考を巡らせていた。

Do not separate attention from the enemy, the friend, and two people. To begin to help the friend, even a careless little action becomes dangerous, too.(敵と友人、2人から注意を離してはいけません。友人を助けだすためには、わずかな迂闊な行動さえも危険になります。)

 カイザーに促されて、ヒカルが冷静さを取り戻そうとする。

(カイザー・・でも、このままじゃネネちゃんが・・・!)

Warning two people is improved. He seems to have absolute confidence by himself. The chance because of the confidence is sure to arise.(2人への注意を高めるのです。彼は自分に絶対の自信を持っているようです。その自信故の隙が生まれるはずです。)

(隙・・見つけ出す前にネネちゃんに何もなければいいんだけど・・・)

 カイザーの言葉を受けても、ヒカルは焦りと不安を払拭できずにいる。

Please I must incline attention, and give you to me with scrupulous care. I believe that enemy's mean means can be broken if it is you.(私も注意を傾けますが、あなたも細心の注意を払ってください。あなたなら、敵の卑劣な手段を打ち破れると、私は信じています。)

(カイザー・・何とかしないといけないね・・でないと、ネネちゃんが・・・!)

 カイザーに励まされて、ヒカルがネネを助けることに意識を集中する。

「この状況が理解できないのか?抵抗するならコイツが死ぬぞ?」

 カイロスが右手から光の刃を発して、ネネに突き付ける。脅される形で、ヒカルは身に着けていたバリアジャケットを解除した。

「これでいいでしょ・・・ネネを放して!」

「まだだ。まだまだお前を痛めつけておかないとな!」

 呼びかけるヒカルだが、カイロスから光の弾を放たれる。無防備の状態で射撃を当てられて、ヒカルが昏倒する。

「ヒカル!」

「まだまだ。この程度で私の屈辱が晴れると思うか!」

 悲鳴を上げるネネと、目を見開いて射撃を続けるカイロス。容赦のない攻撃を受け続け、ヒカルが激痛にさいなまれていく。

「やめろ!ヒカルに手を出すな!」

「大人しくしておけ。命が惜しかったらな・・」

 暴れようとするネネだが、カイロスに刃を突き付けられて息をのむ。

「さて、あまり時間をかけてもオレに得ではない。カイザーをえぐり出すとするか・・」

 カイロスがネネを捕まえたまま、ヒカルに近づこうとした。だがヒカルは力を振り絞って立ち上がってきた。

「ネネちゃんを・・放して・・・!」

 ヒカルがふらつきながら、ネネを助けようとする。

「言うことを聞けば・・ネネちゃんを放してくれるんだよね・・・?」

「何を言っている?そんなこと、オレが聞き入れたと思っていたのか?」

 声を振り絞るヒカルに、カイロスが嘲笑を返す。彼の言葉を聞いて、ヒカルが愕然となる。

「オレたちのことを見てしまったんだ。お前を始末した後、コイツも後を追わせてやる。」

「どこまで・・どこまで卑怯なの、アンタ・・・!?

 右手を掲げるカイロスに、ヒカルが憤りを覚える。

「どうやら知り合いのようだな。一緒に天国に逝けるのだから、寂しくはないだろう?」

「許せない・・アンタのような人、絶対に許せない!」

 卑劣な手段を使ってくるカイロスに、ヒカルが怒りを爆発させる。彼女の体から金色のオーラがあふれ出してきた。

「まだこんな力が残っているとは・・・だが大人しくしないと、コイツの命は・・」

 ヒカルの見せる力に威圧されるも、カイロスがネネを盾にして彼女を脅す。だがヒカルは力を抑えようとしない。

「聞こえないのか?コイツがどうなってもいいのか?」

「許さない・・ネネちゃんを、あたしの友達を襲う人は、絶対に許さない!」

 カイロスが脅しをかけるが、怒りに駆られたヒカルは聞こえていない。

 そのとき、カイロスが突如両足を引っ張られて倒れ込む。同じく倒れそうになるネネを、ヒカルが飛び込んで受け止める。

「ヒカル・・アンタ・・・!?

 ネネが声をかけるが、ヒカルは答えずに彼女を下ろし、カイロスを見据える。

「もうこれ以上・・アンタの勝手にはさせない・・・!」

 低い声音で告げてくるヒカルを見据えて、カイロスが両足に絡みついている光の縄を外す。ヒカルがとっさに両足を通じて光の縄を伸ばす、カイロスの両足を引っ張って体勢を崩させたのである。

「こんな手の込んだマネをしてくるとは・・だがオレの有利が変わったわけでは・・!」

 不敵な態度を見せ続けるカイロスだが、ヒカルからの突進を受けて吹き飛ばされる。あまりの速さにカイロスは回避がままならなかった。

 両足を地面につけて踏みとどまるカイロス。だが彼から余裕がなくなっていた。

「これほどの力を出してくるなど・・・!」

 危機感を覚えるカイロスに、ヒカルは激しい敵意を向けてきていた。

 

 

次回予告

 

再び起こった暴走と、真実の露呈。

現実離れしたヒカルの姿に、ネネの心は揺れる。

友のすれ違いに苦悩するヒカル。

彼女に追い打ちをかけるかのように、ギルティアの襲撃が迫る。

 

次回・「錯綜」

 

怒りがもたらすのは、幸せか、破滅か・・・?

 

 

作品集

 

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