Drive Warrior Episode08「戦士の覇気」

 

 

 ダイアナが開発したアームズによって魔力を封じられ、ヒカルは窮地に追い込まれていた。機械兵士の攻撃で、彼女は意識を失ってしまった。

「あまり勝利に浸るのは逆効果になるわね・・早く連れていくわよ・・」

 ダイアナが呟いてから、アームズにヒカルを捕まえるように指示する。

Please wake up. It is destroyed in your daily life when captured as it is.(目を覚ましてください。このまま捕らわれてしまったら、あなたの日常まで壊されてしまいます。)

 カイザーが呼びかけて、ヒカルを目覚めさせようとする。

「これまでよ、ウラヌス・・2度と逃げないように、すぐに人間としての記憶を消し去るわよ・・」

Were solitarily and being filled in pitilessness daily when you had been valuing it?There are your neither family nor best friend in the daily life.(孤独と非情に満たされているのが、あなたが大切にしてきた日常なのですか?その日常に、あなたの家族や親友はいません。)

 ダイアナが勝ちを確信したときだった。カイザーの必死の呼びかけで、ヒカルはようやく意識を取り戻した。

 とっさに起き上がって、アームズの伸ばしてきた手から逃れるヒカル。

「危なかった・・もうちょっとで捕まるところだったよ・・」

「まだそんな力が残っていたとは・・アームズ、追うのよ!」

 安堵の吐息をつくヒカルと、アームズに指示を出すダイアナ。迫ってくるアームズから、ヒカルが後退して距離を取っていく。

「ゴメンね、カイザー・・気絶しちゃってたんだね・・・心配させちゃって、ホントにゴメン・・・」

It can say, and is safe. You may return before it was caught consideration.(いえ、大丈夫です。捕まる前に意識が戻ってよかったです。)

 謝るヒカルにカイザーが弁解を入れる。

「カイザー、どうしたらいいのかな!?・・・今度また気絶しちゃったらまずいよ・・・!」

 ヒカルがカイザーに呼びかけながら、アームズの突進をかいくぐっていく。

We today are surely disadvantageous. The good policy running away here.(今の私たちは確実に不利です。ここは逃げるほうが得策です。)

「逃げる・・あたしもそうしたほうがいいと思う・・・!」

 カイザーの提案を受け入れて、ヒカルがダイアナたちから全速力で離れていった。

「逃がすな!必ず捕らえろ!」

 ダイアナが呼びかけながら、アームズとともにヒカルを追う。ダイアナはひとまずアームズの上に飛翔してから、ヒカルに向けて光の弾を放つ。

(アームズの近くにいれば、私も魔法を阻害されてしまうからね・・・!)

 胸中で呟きながら、ダイアナがヒカルに向けて光の弾を連射していく。弾はヒカルの眼前の建物に命中して爆発し、彼女の視界を遮った。

「今よ!捕らえなさい!」

 ダイアナの指示を受けて、アームズたちが巻き起こる煙の中に飛び込む。だが煙の中にヒカルの姿はなかった。

「いない!?・・どこに行ったというの・・・!?

 驚愕を覚えるダイアナが、ヒカルの行方を追う。だが彼女はヒカルの姿を見つけることができなかった。

 

 ダイアナのアームズの襲撃から、辛くも逃げ切ることができたヒカル。窮地を脱したことに、彼女は今まで感じたことのない安堵を覚えていた。

「ふぅ・・ホントにもうダメかと思ったよ・・もしもカイザーが呼んでくれなかったら、あたし、ホントに捕まってた・・・」

It was really a near miss. To be able to get away in that situation is not to be able to do many times.(本当に危機一髪でしたよ。あの状況で逃げ切れるのは、何度もできることではありませんよ。)

 ヒカルに続いてカイザーも安心の意思表示を示してきた。

「でも、あのアームズって敵、ホントに厄介だったよ・・近づいただけで魔法が使えなくなるなんて・・・」

 ヒカルはアームズとの戦いを思い返していた。アームズの発するAMFで魔力を封じられ、彼女は思うように戦うことができなかった。

「ホントにどうしたらいいのかな?・・攻撃してきても力を抑えられたら・・・」

Knocking down applying the speed to the object ahead by one as much as possible is an optimal way. Power is sealed off if becoming a long war and it becomes disadvantageous.(先ほどのように物体にスピードをつけて、極力1発で倒すのが最善の方法です。長期戦になれば、力を封じられて不利になってしまいます。)

「1発で・・そうしないとホントにダメになりそう・・・」

 カイザーの助言を受けて、ヒカルが肩を落とす。

「あっ!いけない!」

 そのとき、ヒカルが突然大声を上げた。

「レストランに行かないと・・もうみんな着いて準備してるよ・・・!」

You should hurry up. You are angry when late.(急いだほうがいいです。遅刻しては皆さんに怒られてしまいます。)

 ヒカルは慌ててレストランに向かって駆け出していった。

 

 その頃、メイ、マモル、ネネは既にレストランに着いていた。だが早めに来ていたため、彼女たちはヒカルを待っていた。

「ヒカルちゃん、遅いね・・」

「もしかして道に迷っているのかしら・・・?」

「ありえるのが怖い・・・」

 マモル、メイ、ネネが心配を口にする。

 そこへヒカルが全速力で走り込んできた。彼女の到着にマモルが喜びを見せる。

「ヒカルちゃん!・・よかった・・・」

「ハァ・・ハァ・・・遅刻、してないみたい・・・」

 息を絶え絶えにしながら、ヒカルが安堵を覚える。

「本当に心配したわよ、ヒカル・・てっきり道に迷ったんじゃないかって・・」

「それは大丈夫・・ちょっと日直の仕事に手間取っちゃって・・・」

 ため息混じりに言いかけるメイに、ヒカルが苦笑いを浮かべて答える。本当は道に迷いかけていた彼女だが、道順を記憶していたカイザーのナビゲーションで事なきを得たのである。

「休んでる暇はないよ、ヒカル。これから仕事なんだから・・」

「大丈夫、大丈夫・・いい準備運動になったから・・」

「別に運動しようってことじゃないんだけど・・・」

「エヘヘ、そうだった・・」

 呆れて肩を落とすメイに、ヒカルがさらに苦笑いを見せる。

「それでは、頑張っていくわよ。」

「おーっ♪」

 ネネの呼びかけに、マモルが上機嫌に答える。

(ありがとうね、カイザー・・あなたがいなかったら確実に遅刻だったよ・・)

You may not grow serious.(大変なことにならなくてよかったです。)

 心の中で感謝するヒカルに、カイザーが落ち着いて答えた。

 

 それからヒカルたちのレストランでの仕事が始まった。

 以前にレストランでの仕事を経験していたネネはもちろん、ヒカルとメイも飲み込みが早く、的確にウェイトレスの仕事をこなしていった。だがマモルは失敗を重ねてしまい、ひたすら謝ったりネネたちに助けられたりするばかりとなっていた。

 落ち込みそうになっていたマモルだが、オーナーに元気づけられて明るさを取り戻していった。

 こんなマモルの失敗を除いて、ヒカルたちの仕事は滞りなく行われていった。

「いやぁ、本当に助かったよ・・ありがとうね、ネネちゃん、みんな・・」

 オーナーがヒカルたちに感謝の言葉をかける。しかしマモルは落ち込んだままだった。

「そう落ち込まないで、マモルちゃん。他のみんなだって、最初は緊張や失敗はするものだよ・・」

「でも、そのせいであたし・・・」

「今度はきちんとできるようになる・・みんなが来てくれて本当に助かったよ・・・」

 自分を責めて涙目になるマモルを、オーナーが励ましてくる。

「今日は本当にありがとうね、みんな。みんながいなかったら、どうなっていたか・・」

「いいえ、私たちもいい勉強になりましたよ。こちらこそありがとうございました・・」

 互いに感謝の言葉をかけ合うオーナーとメイ。

「今度もよろしくお願いしますね♪」

 ヒカルも笑顔を見せて、心からの喜びを感じた。

 

 アームズを引き連れてヒカルの捜索を行っていたダイアナ。だが必死の捜索もむなしく、その日にヒカルを見つけることができなかった。

「バカな・・あれだけ追い込まれて、そう遠くに行けるはずがない・・魔力を抑えているしかないか・・・!」

「自信満々だった割には、ずい分と不様なことだな。」

 焦りを感じていたダイアナの前に、カイロスが姿を現した。

「でも魔力を封じるという私の作戦は成功したわ。魔力を封じられたことで、ウラヌスは著しく弱体化した・・」

「だがお前はそれでもウラヌスを捕獲するに至っていない。結局、お前の力ではウラヌスを捕らえることは・・」

 ダイアナの言葉をあざ笑うカイロス。だが次の瞬間、ダイアナが右手を伸ばして光の刃を発し、切っ先をカイロスの眼前に突き付けてきた。

「いつまでも私を侮るな、カイロス・・私はギルティア上位幹部の1人。ドライブウォーリアーとはいえ、小娘1人に手を焼かされることはない・・・!」

「言ってくれる、ダイアナ・・ならばやってみせろ。オレはお前の成功を高みの見物で見届けさせてもらう。」

 鋭く言いかけるダイアナに対し、カイロスは不敵な態度を崩さない。彼はきびすを返して、転移して姿を消した。

「必ず見つけ出すのよ、ウラヌスを!草の根分けても探し出すのよ!」

 ダイアナの指示を受けて、アームズがヒカルの追跡を再開するのだった。

 

 レストランでの仕事を終えて、家に向かっていくヒカルたち。いい経験ができたと思い、彼女たちは満足感を覚えていた。

「今日はありがとうね・・みんなのおかげで助かったよ・・」

 ネネがヒカルたちに感謝の言葉をかけてきた。

「いいよ、ネネちゃん。困ったときはお互い様だよ♪」

 ヒカルがネネに笑顔で答える。だが彼女の顔からすぐに笑顔が曇る。

「むしろ、あたしがみんなに迷惑かけちゃったかな・・あたしが遅れて、またみんなに心配かけちゃって・・・」

「今回は気にしていないわ。遅刻にならなかったんだし・・」

 自分を責めるヒカルに、メイが弁解を入れる。

「今日はあたしが全然足引っ張っちゃったし・・」

 マモルも照れ笑いを見せながらヒカルを励ます。元気づけられたヒカルが笑顔を取り戻す。

「よーし♪今度は気持ちを引き締めていくよー♪」

「もう、調子いいんだから、ヒカルは・・」

 上機嫌に声を上げるヒカルに、メイは呆れていた。

 それからヒカルはメイたちと別れ、帰り際に1人買い物に向かうのだった。その途中、彼女はカイザーに声をかけていた。

(今日はホントにありがとうね、カイザー・・カイザーがいなかったら、あたし、ホントにダメになってた・・)

It is possible to say, you are not late, and above all. Causing anxiety to everybody is not pleasant for me.(いえ、あなたが遅刻にならなくて何よりです。みなさんに心配をかけてしまうことは、私にとっても快いことではありませんからね。)

 感謝の言葉をかけるヒカルに、カイザーが親切に言葉を返す。

(おかげで、みんなにあんまり心配かけずに済んだ・・明日も気を引き締めていかないとね・・)

Please do not overwork earnestly. Everybody is disillusioned this time when becoming a hospitalization commotion the other day.(くれぐれも無理はしないようにしてください。先日のように入院騒ぎになると、今度こそみなさんに幻滅されてしまいますよ。)

(そうだね・・あんまり迷惑かけちゃうと、いい加減に愛想を尽かされちゃう・・・)

 カイザーの言葉を背に受けて、ヒカルは元気を取り戻していくのだった。

 そのとき、ヒカルは魔力の接近を感じて緊迫を覚える。

「この感じ・・ギルティア・・・!?

 ヒカルは呟いてから後ろに振り返る。ダイアナがアームズとともに降り立ってきた。

「ここにいたのね、ウォーリアー・ウラヌス・・ずい分と手間をかけさせて・・・」

「ダイアナ・・やっと無事に仕事が終わったっていうのに・・・!」

 不敵な笑みを見せてくるダイアナに、ヒカルが毒づく。

「もう逃がさない・・今度こそお前を捕獲する・・行け、アームズ!」

「カイザー!」

 ダイアナの指示で飛び出すアームズと、バリアジャケットを身につけて飛び上がるヒカル。彼女はアームズとの一定の距離を保とうとする。

It is good. Please value a physical attack with the object. Magic is obstructed, and it is extremely dangerous if approaching.(いいですね。物体による物理攻撃を重視してください。接近すれば魔法が阻害されてしまい、極めて危険です。)

(分かってる・・うまくあの機械を壊せれば、形勢逆転できる・・・!)

 カイザーの助言を受けて、ヒカルが気を引き締める。だがアームズは建物のそばや狭い場所を避けて、ヒカルに近づいてきていた。

「あなたを逃がしてからも、私はアームズにデータを送っていた。あなたの思い通りの攻撃はさせないわよ・・」

 ダイアナがヒカルに向けて語りかける。アームズの接近で魔力が封じられ、ヒカルはうまく飛行することができなくなる。

「いけない・・このままじゃやられちゃう・・どこかに、うまくおびき出せれば・・・!」

 ヒカルは落下しながら、周囲を見回してアームズをおびき寄せようとする。

There is a doorway of the underground passageway to be near. It is drainage.(近くに地下通路の出入り口があります。下水道のようです。)

 そこへカイザーの声が飛び込み、ヒカルが振り向く。水位の低い川につながる下水道のトンネルを発見した。

(もうそこに行くしかない!)

 思い立ったヒカルが下水道に向かっていく。だがそこへダイアナが飛び込んできた。

「わざわざあなたの都合のいい場所に行かせると思って?」

 ダイアナが言いかけて、光の鞭を伸ばす。ヒカルは身をひるがえして鞭をかわし、さらに前進する。

「負けたくない・・アンタたちなんかに、あたしたちの楽しい時間を邪魔されたくないよ!」

 言い放つヒカルが速度を上げて、下水道のトンネルに入っていく。アームズも彼女を追っていく。

(ここで一気に、あの機械を叩く!)

 ヒカルが下水道の歩道に着地し、振り向きざまに床を殴りつける。崩れ出すトンネルの瓦礫に押しつぶされて、アームズが次々と大破していく。

(こっちも脱出しないと押しつぶされちゃう!)

 ヒカルも急いで出入り口とは反対方向へ進み、別の出口を目指す。狭い通路を突き進んで、彼女はかすかに差し込んできた明かりを見つけて、上へと登っていく。

 その先のふたを破って、ヒカルは外に飛び出した。ふたと見られたものはマンホールだった。

It is dangerous. The evasive action at once.(危ない。すぐに回避行動を。)

 そこへカイザーの声がヒカルの心に響いた。次の瞬間、ヒカルの首に光の鞭が巻き付いた。

「うっ!」

 首を締めあげられて、ヒカルが顔を歪める。

「あれだけの騒音と崩壊を起こせば、アームズだけでなく、お前も中にはいられないだろう!」

 ヒカルを捕らえたダイアナが高らかに言い放つ。光の鞭で締めつけられて、ヒカルが息苦しさを感じて顔を歪める。

「仮にここで息の根を止めてしまったとしても、カイザーは回収できる。どちらにしてもお前の抵抗もここでついえるのよ、ウラヌス・・いえ、天宮ヒカル!」

 ダイアナがさらに力を込めて、ヒカルの首を締めつける。必死に光に鞭から抜け出そうとするヒカルだが、思うように力を入れられなくなる。

(ダメ・・このままじゃまた意識を失っちゃう・・意識を失ったら、今度こそ捕まっちゃう・・・!)

 苦痛と息苦しさのあまり、ヒカルの意識がもうろうとなっていく。

(みんなを・・みんなをこれ以上辛くさせたくないよ・・・!)

 メイたちを思うヒカルの中で、怒りが爆発した。彼女の体から光があふれ出してきた。

「これはっ!?

 彼女の突然の異変に、ダイアナが驚愕を覚える。光を発するヒカルの首に巻きついていた光の鞭が引きちぎられる。

「これほどの力が、どこに・・うわっ!」

 ヒカルの光の衝撃で、ダイアナが大きく吹き飛ばされる。電撃を帯びた光は、ダイアナに痛烈なダメージを与えていた。

「行け、アームズ!ウラヌスの魔力を封じろ!」

 ダイアナが呼びかけ、残ったアームズがヒカルに襲いかかる。アームズが接近することで、ヒカルは魔力を抑え込まれるはずだった。

 だが接近したアームズが、ヒカルの発する魔力の光で破壊された。

「バカな!?射撃でも砲撃でも、魔法ならば無効化される!アームズを魔法で直接破壊することはできないはずなのに!?

 さらに驚愕するダイアナ。AMFはアームズの周囲で展開される魔法を全て無効化する。アームズが魔法をぶつけられて撃破されることなどあり得ない。彼女はそう思えてならなかった。

「怯むな!複数でヤツを止めろ!」

 さらに言い放つダイアナ。アームズがヒカルに向かって押し寄せていく。

「はあっ!」

 声を張り上げたヒカルが、両手に光を宿してアームズに殴りかかっていく。AMFによる魔法の無効化が、今のヒカルには全く効き目がなくなっていた。

「あり得ない・・AMFを寄せ付けずに魔法を直接叩き込むなど・・ドライブ・ウォーリアーはデバイスを宿し、魔力を駆使して戦う存在・・アームズを倒した攻撃が魔法以外であるはずがない・・・!」

 ダイアナはヒカルの驚異の力が理解できず、愕然となるばかりだった。

「もしや、あれで魔力が抑えられているとでもいうのか・・あれで力の全てでないとしたら、全力なら・・・!」

 危機感をも膨らませていくダイアナに、アームズを全滅させたヒカルが振り向いてきた。

「おのれ、ウラヌス・・こんなはずは・・・!」

 ダイアナは捨て台詞を吐くと、転移魔法でヒカルの前から姿を消した。

 ギルティアの執拗な襲撃を退けると、ヒカルは体から発していた光を消失させる。その瞬間、彼女は自身の意識を取り戻した。

「あれ?・・あたし、何をして・・・また気絶しちゃった・・・!?

 我に返ったヒカルが、困惑しながら周囲を見回す。既にダイアナの姿はなく、この場にいたアームズも全て破壊されていた。

「もしかして、あたしがやったの・・・!?

Yes. You did everything.(はい。全てあなたがしたことです。)

 呟きかけるヒカルにカイザーが答える。彼女は自分でも信じられないような力を発揮したことを自覚していく。

It will be able to be said that this is reckless driving rather than working effectively. You put out power like anger, and smashed the enemy.(力を発揮したというよりは、これは暴走と言えるでしょう。あなたは怒りのままに力を出して、敵を撃破したのです。)

「それじゃ、あたしが知らない間に、あの機械を・・・!」

 カイザーの説明を聞いて、ヒカルがさらに困惑を深めていく。

「暴走・・あたし、見境なしに・・・」

It is safe. It is only an other party that you attacked who should knock it down. None of important people of you have gotten wounded.(大丈夫です。あなたが攻撃したのは倒すべき相手だけです。あなたの大切な人は、誰も傷ついていません。)

「でも、その暴走のせいで、みんなに何かあったら・・・!」

 カイザーの励ましを受けても、ヒカルは不安を膨らませるばかりになっていた。

You should already return. The day grows dark soon.(もう戻ったほうがいいです。もうすぐ日が暮れます。)

 カイザーの言葉を聞いて、ヒカルは小さく頷く。バリアジャケットを解除した彼女は、力なく歩き出していった。

 

 ヒカルが発揮した怒りの力に太刀打ちできず、ダイアナはやむなく撤退することとなった。

「どういうことなの!?・・・アームズでも簡単に破壊されてしまうとは・・・!」

「やはり無様にやられたか、ダイアナ・・」

 体を震わせているダイアナを、姿を現したカイロスがあざ笑ってきた。

「あの力はあまりにも想定外よ・・アームズでもあの魔力を封じることができなかった・・・」

「想定外の力か・・ギルティアを継承するドライブ・ウォーリアーなのだ。それでなければ務まらないというものだ・・」

「そのドライブ・ウォーリアーを逃がしたまま、放置するわけにはいかない・・だが、あの力のデータをまとめなければ、挑むのは無謀にしかならない・・」

「実に臆病なことだ。情けないことだ・・いいだろう。オレがウラヌスを捕獲してやる。」

 怯えるダイアナに対し、カイロスが自信のある態度を見せる。

「お前たちはそこで震えていろ。オレが全てに終止符を打ってくれる・・」

 カイロスは言いかけると、転移して姿を消した。ダイアナも歯がゆさを抱えたまま、街から去っていった。

 

 無意識の中での暴走に対する苦悩を抱えたまま、ヒカルは帰宅した。

「おかえりなさい、ヒカル。レストランの仕事はどうだった?」

「うん・・ちょっと、張り切り過ぎて疲れちゃった・・ちょっと休むね・・」

 アカリが声をかけるが、ヒカルは元気のない返事をして、部屋に戻っていった。

「よっぽど頑張っちゃったようね・・いい経験になったかしら・・」

 ヒカルの仕事と経験に対して、アカリは満足げだった。

 部屋に戻ったヒカルが、ベッドに倒れ込むように横たわった。

「ハァ・・あたし、このまま戦っていていいのかな・・・?」

 ヒカルがため息混じりに呟いていく。

(もしも見境のないあたしが、メイちゃんやみんなまで傷つけてしまう・・そんなムチャクチャなこと・・絶対にイヤ・・・)

 込み上げてくる不安と悲痛さで、ヒカルが自分の体を強く抱きしめる。

(しっかりしないと・・しっかり力をコントロールしないと、また・・・)

 自分の頬を叩いて気を引き締めようとするヒカル。気合を入れた彼女が、ベッドから起き上がる。

「さーて!明日からも元気でいくよー♪」

 上機嫌に声を上げるヒカルが、明るく部屋を出て、アカリの手伝いと談話をするのだった。

 

 ギルティア本拠地に戻ってきたダイアナ。自分の作戦室にてヒカルに関するデータの整理を行っていた彼女のそばに、ブルガノスがやってきた。

「入ってくるときはせめてノックぐらいして、ブルガノス・・」

「今回の失態は忌々しきものだぞ。まさに醜態だ・・」

 声をかけるダイアナに、ブルガノスが苦言を告げる。

「マスター・クロノスからのお告げをお前にも伝える。ドライブ・ウォーリアーのデバイス“ハデス”を、プルートに与えよ、と・・」

「ハデス・・今度こそ慎重な作業を行わないと・・ウラヌスのような失態を、2度も犯すわけにはいかない・・」

 ブルガノスの言葉を聞いて、ダイアナが目つきを鋭くする。

「でも、今は適した者を見つけ出す精神状態にないわ・・少しだけ休息を・・」

「お前はハデスを継承する者を見つけ出してくれればいい。その後は私がやる・・」

「ブルガノス・・分かったわ・・プルート捜索を最優先とするわ・・」

 ブルガノスの言葉を聞き入れて、ダイアナが気分を切り替える。

「あなたにも知らせておくわ・・ウラヌス、本当に侮ってはならないわ・・ヤツの力は底が知れない・・理屈をことごとく塗り替えていく・・」

「ヤツとてドライブ・ウォーリアーだ。油断がならないことは先刻承知・・」

 ダイアナの忠告を聞き入れるも、ブルガノスは毅然とした態度を崩さない。

「ウラヌス捕獲は、今度はカイロスが乗り出すそうよ・・」

「カイロス・・寝首をかかれぬよう、ヤツにも目を光らせておかなくてはな・・・」

 ダイアナが告げた言葉を聞いて、ブルガノスが呟く。

「では頼むぞ、ダイアナ・・もはや一刻の猶予もないぞ・・」

 ブルガノスはダイアナに告げると、彼女の作戦室から出ていった。

「分かっている・・分かっているわよ・・・!」

 自分に言い聞かせていくダイアナ。彼女は無意識に語気を強めていた。

「ウラヌスに続いて、プルートも覚醒のときを迎える・・マスター・クロノスの後継者という椅子を巡って、ドライブ・ウォーリアーが死闘を繰り広げることになる・・」

 気分を落ちつけていくダイアナが、これから起ころうとしていることを模索していく。

「ギルティアの英知を絶対的なものとするための後継者選別・・どのような結末を迎えることになるのか・・・」

 期待と緊張を膨らませて、ダイアナはギルティアのための新たな作業に入る。彼女が映し出したモニターには、1機のデバイスの姿があった。

 ウォーリアー・プルートに与えられるデバイス「ハデス」である。

 

 

次回予告

 

世界とは何か?

世界は自分を正しく導いているのか?

自分が今まで置かれていた境遇に、疑念を抱き続けてきた少女。

その憎悪が、彼女を戦いへと駆り立てる。

 

次回・「メイ」

 

ギルティアへのいざないと、世界への挑戦・・・

 

 

作品集

 

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