Drive Warrior Episode07「封じられた魔法」
なかなか家に帰ってこれないコウが帰ってきた。ヒカルは久しぶりの家族そろっての夕食を楽しむのだった。
「どうだ、ヒカル?久しぶりの父さんとの食事は、やっぱりいいもんだろ?」
「うん♪こうして家族みんなで食事するなんて、ここしばらくなかったから・・」
コウが気さくに声をかけると、ヒカルも笑顔で答える。
「すまんな、ヒカル・・あんま休みが取れなくて・・・」
「いいよ、気にしなくて・・お父さんは刑事で、みんなのために頑張っているんだから・・あたしのわがままで、お父さんを独占したらいけないよ・・」
「う〜、娘にこんな言葉をかけられて、父さんは嬉しいぞ〜!」
「もう、お父さんったら大げさなんだから・・」
喜びの涙を流すコウに、ヒカルが苦笑いを見せる。だがその後、コウが笑みを消して真剣な面持ちを浮かべてきた。
「ヒカル、悩み事とかはないのか?父さんに相談とかしなくて平気か?」
コウに唐突に切り出された話に、ヒカルが当惑を覚える。
「大丈夫・・もしどうしても辛くなったときは、遠慮なく相談するからね・・もちろん、お父さんがいるときに・・」
「そうか・・肝心の父さんがいなくちゃ元も子もないな・・」
ヒカルの答えを聞いて、コウが苦笑いを浮かべる。
「どうやら、そういうのはお母さんの役目みたいね。」
そこへアカリが声をかけてきた。
「く〜、やっぱ家族ってのはいいなぁ〜・・こういうのがあるから、父さんは頑張れるんだぞー!」
「あんまりムチャしないでよ。私もヒカルも心配してるんだから・・」
意気込みを見せるコウに、アカリが励ます。両親のやり取りを見て喜びを感じるも、ヒカルは自分が関わっている戦いについて打ち明けられないことに辛さを感じていた。
家族との久方ぶりの食事を終えて、ヒカルは自分の部屋に戻っていた。
(お父さんと一緒にいると、あたしもお母さんも楽しくなってくる・・あたしが戦いをしているなんて、とても話せないよ・・・)
ヒカルが心の中で呟いて、ため息をつく。
(こういうときにどういう気分になるのがいいのか、分かんない・・カイザー・・に相談してもよく分かんないかな・・・)
“Hearth with the family seems to be wonderful from me. Because time with the family cannot be taken for you easily, it is likely to become irreplaceable.(家族との団らんは私からも素晴らしいと思えます。あなたの場合、なかなか家族との時間が取れませんが、だからこそかけがえのないものとなってくるのでしょうね。)”
苦笑いを浮かべるヒカルに、カイザーが声をかけてきた。
“Father and mother understand. Though not telling of the Japanese oak that it wants to avoid extra confusion might be good.(お父さんもお母さんも分かってくれます。余計な混乱を避けたいというなら、打ち明けないほうがよろしいでしょうが。)”
(カイザー・・ありがとうね・・・でも、カイザーには家族はいるの・・・?)
“I do not have the family. To begin with, I belong to a special class in the device.(私に家族というものはいません。そもそも私はデバイスの中でも特殊な部類に属します。)”
(特殊な、部類・・・?)
“The manufacturing process, the character, the potentiality, and the most are special. The reason for all is that it is given by the ruler.(製造過程、性質、潜在能力、そのほとんどが特殊なのです。全ては統治者に与えられるためです。)”
(・・ギルティアは、あたしを王にしようって言ってた・・そのためにあたしにカイザーを・・・)
“At first, I was transplanted by you for the purpose. However, I am your own power now. As not the ruler but you to the end.(当初はその目的のために、私はあなたに移植されました。ですが今は、私はあなた自身の力となっているのです。統治者としてではなく、あくまであなた自身として。)”
ギルティアによって置かれた自分の境遇を痛感するヒカルに、カイザーがさらに励ましていく。
“You only have to use power regardless of the reason why I am developed as you think.(私が開発された理由に関わらず、あなたはあなたの思うように力を使っていけばいいのです。)”
(ありがとう、カイザー・・あたしはあくまであたし・・ギルティアなんかのいいようにされたりしないんだから・・・)
カイザーの言葉に背中を押されて、ヒカルが気持ちを落ちつけていく。
(あたしは負けない・・みんなを守るためにも、ギルティアを・・・!)
決心を固めていくヒカル。日常から離れず、その中で日常を守っていく。これが彼女の率直な気持ちだった。
ヒカル捕獲のために行動と暗躍を続けていくギルティア。ダイアナはヒカル打倒のための秘策を練っていた。
(ウォーリアー・ウラヌス、天宮ヒカルの魔力と戦闘能力・・最初の段階から高い数値を出していて、それが日に日に上昇している・・)
ヒカルの戦闘データを洗いなおしていくダイアナ。
(でも彼女の力は、体に宿しているカイザーにほとんど委ねている。その魔力の解析は既にできている・・)
思考を巡らせるダイアナが、おもむろに笑みを見せる。
(魔力を封じてしまえば、ウラヌスといえど戦うことはできない・・その策は既に練り上がっている・・)
席を立ったダイアナが振り返る。その視線の先には待機状態の機械が立ち並んでいた。
(これがウラヌス捕獲のための切り札となる・・整備は万全でならないと・・・)
次の作戦に向けて、ダイアナは着々と準備を進めつつあった。
コウとの夕食を過ごしてから一夜が明けた。ヒカルが登校で家を出ると、メイと顔を合わせた。
「おはよう、ヒカル・・今日は調子がよさそうね・・」
「おはよう、メイ♪・・昨日の約束はどうだった?」
笑顔で挨拶を交わすメイとヒカル。
「うん・・落ち着いた時間を過ごすことができたわ・・ヒカルが気を遣ってくれたから・・・」
「そう言われると照れるよ、エヘヘ・・」
優しく言いかけるメイに、ヒカルが照れ笑いを見せる。
「あたしも昨日の夜は、久しぶりにお父さんが帰ってきたから、楽しく過ごせたよ〜♪」
「おじさま、帰ってきていたのね・・警察の仕事でなかなか帰ってこれないそうだから大変じゃない?」
「そんなことないって。お父さんは、みんなのために頑張ってるんだから・・」
「私のお父様も、仕事は違うけどみんなのために頑張っている・・だから私も寂しくないわ・・」
笑顔を見せるヒカルと、微笑みかけるメイ。父を誇りとする言葉を2人とも口にしていた。
「あ、あまり長話していると遅刻するわよ。」
「そうだった、そうだった・・急ごう、メイ♪」
メイに言われてヒカルが慌てる。2人は駆け足で学校に向かっていった。
久しぶりの休日を過ごすこととなったコウ。彼は神凪家に向かい、トウジと会っていた。
「久しぶりだな、トウジ・・」
「お互い時間と休日が取れないから、こうして会うのは本当に稀な気がする・・」
笑みを見せて声をかけるコウとトウジ。
「部屋に入れ。立ち話は落ち着かないだろう・・」
「オレは別に構わないが、お言葉に甘えることにしよう・・・」
トウジに導かれて、コウは邸宅の1室にやってきた。2人はテーブル越しに腰かける。
「メイちゃんは真面目で優しくていいな・・ヒカルはやんちゃで、出かけたらどこに行くのか分かんなくなってくる・・メイちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだ・・」
「そんなこというな・・メイにもヒカルちゃんの元気と明るさを見習わせたいと思っているくらいなのだから・・」
気さくに言いかけるコウに、トウジが苦言を呈する。
「お前さんのしていることは、公にできない秘密裏の職務だ。警察でも下手に手を出せば首が飛びかねないほどのな・・」
コウが真剣な面持ちを浮かべて、話を切り替えた。
「まさかとは思うが・・犯罪になるようなこと、していないだろうな・・・?」
「仮にしているとして、“はい、しています”というヤツがいるのか?そういうところを徹底的に調べるのも、警察の役目だろう?」
「相変わらず食えないヤツだよ、お前は・・初めて会ったときからそうだった・・・」
「そういうお前も、ふざけているように見えて勘が冴えている。敵に回すと実にやりにくいタイプだ・・」
互いに腹を探るような言葉をかけるコウとトウジ。2人とも親友と思いながらも、懸念も抱いていた。
「何にしても、メイちゃんを危険に巻き込むようなマネだけはするな・・自分の子供を巻き込むようなことをするなら、そいつは親失格だからな・・」
「そうだな・・お互い、子供が無事平穏に過ごせるように努めなければな・・」
忠告を送るコウに、トウジは笑みを見せて頷いた。
「できることなら、子供との時間を大切にしたいものだ・・こういう考えは親バカに思われてしまうものだが・・・」
「それならそれで結構・・子供が喜ぶなら何の問題もない・・」
「そうありたいものだが、私も夕方にはまた出なければならない・・」
「オレは呼び出しがなければ明日の朝までいられる・・他のヤツがちゃんとやってればいいんだけどな・・・」
次第に屈託のない会話をしていくようになるトウジとコウ。
「お互い、子供には苦労させられるな・・・」
「そうだな・・・」
ため息をつくコウに、トウジも頷く。そしてトウジが椅子から腰を上げた。
「オレはそろそろ帰るぞ。母さんから、家にいるときぐらいは家の手伝いをしろってうるせぇんだ・・せっかくの休みだってのにこき使ってくれる・・」
「そういうな。奥さんがいるだけマシというものだ・・妻がなくなり、私までなかなか家に戻れないから、メイには本当に寂しい思いをさせてしまっている・・・」
コウが声をかけると、トウジが物悲しい笑みを浮かべてきた。
「・・苦労させられているのは、子供だけじゃねぇってことだな・・・」
皮肉を口にしてから、コウは部屋を出た。
「・・・本当、食えない男だ、お前は・・・」
コウの姿が見えなくなってから、トウジがため息混じりに呟いた。
「えっ?知り合いのお店のお手伝い?」
休み時間に切り出された話題に、ヒカルが思わず声を上げる。話はネネが持ちかけたものだった。
「知り合いが経営してるレストランがあるんだけど、そこで風邪が広まっちゃって、バイトのほとんどが病欠になっちゃったんだよ・・」
「そのバイトの代わりをあたしたちにしてほしいってことなんだね、ネネちゃん?」
事情を説明するネネに、マモルが訊ねてくる。
「そうはいうけどね、レストランのウェイトレスは簡単な仕事じゃないのよ。特にドジなマモルに務まるような仕事じゃないよ・・」
「そんなことないって♪あたしだって、やるときゃやるんだから♪」
苦言を呈するネネに、マモルが上機嫌に答える。
「何だか先が思いやられる・・・ヒカルとメイはどうかな?・・ムリそうだったら諦めるけど・・・」
「あたしは大丈夫だよ。よくお母さんのお手伝いとかしてるから・・」
「私も構わないわ。困っているとはお互い様だから・・」
言葉を投げかけるネネに、ヒカルとメイが笑みを見せて答える。
「ありがとう、2人とも・・恩に着るよ・・」
ネネが喜びの笑みをこぼす。友達の手助けができることに、ヒカルも笑顔を見せていた。
「それに、マモルだけで手伝いをさせたら、レストランがつぶれてしまうかもしれないし・・」
「ひどいよ、メイちゃんまで〜・・・」
メイにからかわれて、マモルが涙目を見せる。
「それじゃ、とりあえず放課後に店に来てよ。いきなり仕事してくれってわけじゃないんだけど、雰囲気ぐらいはつかんでいてほしいから・・」
「どういうお店なのか気になるなぁ〜・・今からドキドキしちゃうよ〜・・」
ネネの誘いを受けて、ヒカルは胸を躍らせるのだった。
そして放課後、ネネの知り合いのレストランを訪れたヒカルたち。レストランでは和気あいあいの雰囲気を醸し出していた。
「へぇ、いい感じの店ね。」
「ここに来るお客さんは、いい気分で食事できるね・・」
レストランに向けて感嘆の声を上げるメイとヒカル。
「でもこの前の風邪騒ぎで、少し慌ただしくなってるけど・・」
ネネはため息混じりに言いかけると、店の中をのぞき込む。
「オーナー・・どこですか、オーナー・・・?」
「お、ネネちゃんじゃないの。もしかしてこの子たちが、お手伝いしてくれるって言ってた?」
ネネに呼ばれてレストランの店長が顔を出してきた。
「オーナー・・はい。今日は見学になりますが・・」
「そうかい、そうかい。もしよかったら声かけてね。制服は万全だから。」
ネネが声をかけると、オーナーがにこやかに声をかけてきた。
「優しそうな人だね。みんなの憧れって感じだね・・」
「優しいを通り越して、人がよすぎるのが逆に欠点になってるんだけど・・」
微笑むヒカルの言葉に、ネネが肩を落としながら呟く。
「これなら私も楽しくやれるかもしれないわ・・」
メイもオーナーや店内の雰囲気を見て、期待を感じていく。
「よーし♪あたし、頑張っちゃうよー♪」
「ヘンに張り切り過ぎて、失敗しないでよ・・」
意気込みを見せたところでネネに不安を投げかけられて、マモルが気まずくなる。
それからヒカルたちはレストランの仕事を見学していった。雰囲気をつかんだところで、彼女たちは自信を持つことができた。
結果的にその日は仕事をすることはなかったが、ヒカルたちは明日に向けて弾みをつけることにした。
そして翌日の放課後を迎える。メイ、マモル、ネネがレストランに向かおうとするが、その日はヒカルの日直の日だった。
「まさかタイミングが悪くなるなんて・・・」
慌ただしくなっていく自分に、ヒカルは気まずくなっていた。
「ゴメン、みんな・・先に行ってて・・」
「でも、それだとヒカルが遅刻するって・・初日から遅刻はまずいわよ・・」
呼びかけるヒカルにメイが苦言を呈する。
「それでみんなが遅刻したら、それこそまずいって・・あたしに構わずに先に行って・・」
「ヒカル・・・じゃ、遅れないようにしてよ・・・」
ヒカルの言葉を受け入れて、メイはマモル、ネネとともに先に教室を出た。
「さて、急いで仕事を終わらせないと・・」
ヒカルは気を引き締めて、日直の仕事を急いで終わらせる。学校を飛び出した彼女は、メイたちを追いかけていった。
「すっかり遅れちゃったよ〜・・ホントに急がないと遅刻になっちゃう〜・・」
ヒカルが全力でレストランに向かって走っていた。
その途中、ヒカルは奇妙な感覚を覚えて足を止めた。彼女の前にダイアナが姿を現した。
「久しぶりね、ウォーリアー・ウラヌス・・」
「ギルティア・・この忙しいときに・・・!」
微笑みかけてくるダイアナに、ヒカルが焦りを膨らませていく。
「今度こそ私と一緒に来てもらうわよ。あなたはドライブウォーリアーとして、ギルティアのために戦わなければならないのだから・・」
「あたしはアンタたちの思い通りにはならない!あたしたちの生活を壊そうとするなら、あたしはアンタたちを倒す!」
「言うようになったわね。でも抵抗は無意味よ。もうあなたは私たちに刃向かうことはできない・・」
言い放つヒカルに対して笑みを絶やさないダイアナ。彼女の後ろから数体の人型の機械が現れた。
「今度の相手はこのアームズよ。これまで私たちの手を散々焼かせてきたあなただけど、今度苦汁をなめるのはあなたよ、ウラヌス。」
ダイアナが合図を出すと、機械「AMS」がヒカルに向かって歩き出した。
「どんな相手が来たって、あたしは負けない!カイザー!」
ヒカルが言い放ち、バリアジャケットを身につけてアームズを迎え撃つ。
“Please take care. That is different from the current other party.(気を付けてください。あれは今までの相手とは違います。)”
そこへカイザーがヒカルに呼びかけてきた。迎撃しようとしていたヒカルだが、とっさにジャンプしてアームズから離れた。
「どういうことなの、カイザー!?今までと違うって・・!?」
“It is not in my data. What ability and do it attack, and the forecast is not set up by me either. A thoughtless action incurs danger.(私のデータにありません。どのような能力や攻撃をしてくるか、私にも予測が立てられません。軽率な行動は危険を招きます。)”
訊ねてくるヒカルにカイザーが答える。ギルティアに関するデータを備えているカイザーだが、新しく開発されたアームズに関するデータは持っていなかった。
「向こうが何とか手の内を見せてくれたらいいんだけど・・・」
希薄な期待を胸に秘めて、ヒカルがアームズの襲撃に注意を傾ける。
“It approaches from three another forward and two rear side.(前方の3体の他、後方から2体迫ってきています。)”
カイザーの呼びかけを受けて、ヒカルはアームズの接近を警戒する。アームズの1体が彼女に距離を詰めてくる。
「迎撃しないとやられる・・1発与えて、それから離れたほうが・・・!」
ヒカルがとっさに右手に魔力を集中させて、迫ってきたアームズに向けて繰り出した。だがそのとき、彼女の右手に集まっていた魔力が突然消失した。
「えっ・・・!?」
この異変にヒカルが目を見開く。驚愕のために無防備になってしまった彼女に、アームズが突っ込んできた。
「うっ!」
重みのある打撃を受けて、ヒカルが地上に叩き落とされる。魔力を発揮することができなくなった彼女は、落下の衝撃をまともに受けることになった。
「い、痛い・・こんなにダメージを受けるなんて・・・!」
瓦礫から這い出して、ヒカルが痛みを感じてうめく。
「カイザー、今のどういうことなの!?・・・カイザー・・・!?」
ヒカルが呼びかけるが、カイザーからの返事がない。
「カイザー・・どうしたの、カイザー!?」
ヒカルの呼びかけに全く反応しないカイザー。そこへアームズが降下して右腕を振り下ろしてきた。
すぐにジャンプしてアームズの攻撃をかわすヒカル。魔法の力に依存した戦いをしてきたため、彼女は思うように動くことができず、戸惑いを隠せなくなっていた。
「カイザー、返事して!カイザー!」
必死に呼びかけていくヒカル。しばらく感じ取ることができなかったカイザーを、彼女はようやく感じ取ることができた。
「カイザー・・あたしの声、聞こえてるんだよね・・・!?」
“I'm sorry. The function had been temporarily stopped.(すみません。一時的に機能を停止させられていました。)”
ヒカルの言葉にカイザーがようやく返事をしてきた。
「機能を停止させられたって・・どういうことなの・・・!?」
“It might be enemy's ability. The magic of the other party who entered at a certain distance is enclosed.(おそらく敵の能力でしょう。一定の距離に入った相手の魔力を封じ込めてきます。)”
ヒカルの問いかけにカイザーが答える。
アームズはAMFを周囲に展開させることができる。AMFは魔力結合を解いて魔法を無効化させる効果を備えている。
アームズを檄檄しようとしたヒカルから魔力が消失したのは、アームズが発動させていたAMFによるものだった。
“I who is the device am not an exception. Your power decreases greatly, too, if my power is sealed off.(デバイスである私も例外ではありません。私の力が封じられれば、あなたの力も大きく低下してしまいます。)”
「そんな・・これじゃ、攻撃を仕掛けても全然通用しないってこと・・・!?」
カイザーの言葉にヒカルが困惑する。その彼女に向かって、アームズが迫ってきた。
「近づいたら魔法が使えなくなる・・そうなったらおしまいだよ・・・!」
ヒカルは後退してアームズから離れていく。今度は彼女は魔力の砲撃を放って、アームズを撃退しようとする。
だがアームズの能力によって、砲撃が霧散するようにかき消されてしまった。
「遠くからの魔法も消されちゃう・・・!」
“It becomes impossible to work effectively if approaching and it is caught surely. It is possible to disempower even by shooting and the bombardment by magic, and power is decreased remarkably.(接近すれば力を発揮できなくなって確実に捕まってしまいます。魔法による射撃や砲撃でも無力化され、威力も著しく低下させられます。)”
毒づくヒカルにカイザーが呼びかけていく。迫り来るアームズに対し、ヒカルは回避する一方となっていた。
「どうしたらいいの、カイザー!?これじゃ攻撃的ないよ!」
“A physical attack not to accompany magic is effective. Because the performance is distributed to the disempowerment of magic, the possibility that other fighting power is missed is high.(魔法を伴わない物理攻撃が有効です。魔力の無力化に性能を振り分けているため、他の戦闘力が欠落している可能性は高いです。)”
呼びかけるヒカルにカイザーがアドバイスを送る。
「魔法を伴わないって・・どうしたら・・・!?」
ヒカルは周囲を見回して、打開の糸口を探るヒカル。彼女はアームズに追い込まれ、ビルを背にすることになった。
アームズ1体がヒカルに向けて突進してきた。紙一重でかわした彼女だが、魔力を封じ込められて飛行できず、崩れ出すビルの破片とともに落下していく。
そのとき、ヒカルはビルの破片がぶつかって怯むアームズを目の当たりにする。
「これって・・・!」
魔力の抑制がなくなって着地するヒカル。彼女はアームズに対抗する手段を見出していた。
「もしかしたら、これが有効かもしれない・・・!」
思い立ったヒカルが、アームズ数体を鋭く見据える。
「観念することね、ウラヌス。あなたがどれほどの力を持っていても、その力を封じられては手も足も出ないわよ。」
ダイアナが妖しく微笑んでヒカルに呼びかける。アームズたちが一斉にヒカルに向かっていく。
ヒカルは後退してアームズとの距離を取っていく。
「そんなことを繰り返したところでムダよ。アームズからは逃げられない・・」
ダイアナが嘲笑してくるが、ヒカルは迫ってくるアームズを見据えて右手を構える。その手の平から光の弾が放たれる。
だが弾はアームズから大きく上に外れていった。
「どこを撃っている?万策尽きて自棄になったの?」
ダイアナがさらにあざ笑ったときだった。アームズのそばにあるビルに弾が当たり、破損した瓦礫が落下してきた。その瓦礫の直撃を受けて、アームズ数体が潰されて爆発を起こす。
アームズは魔法を無効化させるAMFを備えている。だが魔法によって動かされた物体の勢いまで止めることはできない。
そのことに気付いたヒカルは、瓦礫を使ってアームズを撃退する手段を取った。その作戦の効果は絶大だった。
「やった・・これならあの機械にダメージを与えられる・・・!」
勝機を見出したヒカルが、向かってくるアームズの動きを見計らう。
“It comes from the back.(後ろからも来ています。)”
そこへカイザーの声がかかり、ヒカルが後ろを振り向く。アームズだけでなく、ダイアナも彼女に接近してきていた。
「そんな小細工をしてくるとはね・・・!」
笑みを強めたダイアナが右手から光の鞭を発した。光の鞭で右足を引っ張られ、ヒカルが投げ飛ばされる。
放り投げられたヒカルが、迫ってきていたアームズの打撃を受けて地面に叩きつけられる。彼女はそのまま倒れて動かなくなってしまう。
「もしかして気絶してしまったのかしら?魔力が使えなくなるとあっけないものね・・」
ダイアナが倒れているヒカルを見下ろして、妖しい笑みをこぼす。
“Please wake up. The way things are going, it will be caught.(目を覚ましてください。このままでは捕まってしまいます。)”
カイザーが呼びかけていくが、ヒカルは目を覚まさない。
“Who defends your important person if you fall as it is?Please wake up for everybody.(あなたがこのまま倒れてしまったら、誰があなたの大切な人を守っていくのですか?みなさんのためにも、どうか目を覚ましてください。)”
「あまり勝利に浸るのは逆効果になるわね・・早く連れていくわよ・・」
カイザーが必死に呼びかける中、ダイアナがヒカルを捕まえようとする。ヒカルはまだ意識が戻らないままだった。
次回予告
封じられていく魔法の力。
戦う力を失い、ヒカルは苦悩を深めていく。
襲い来るアームズの魔手。
窮地に追い込まれたヒカルに異変が起こる。
絶望からの打開の糸口はあるのか・・・?