Drive Warrior Episode06「終わりなき思い」

 

 

 カイロスとの戦いでの魔力の消耗による過労から入院していたヒカル。2泊の入院を経て、彼女は退院を認められた。

 病院を出たところで、ヒカルはアカリの出迎えを受けることとなった。

「ヒカル・・おかえりなさい・・・」

「お母さん・・ただいま・・・ごめんなさい・・ホントに心配かけて・・・」

 声をかけてくるアカリに、ヒカルが微笑みかけて答える。2人は親子の抱擁を果たしていた。

「お父さんが帰ってきてるわよ・・帰ってきたらたっぷり説教してやるって・・・」

「エヘヘヘ・・覚悟しておかないと・・・」

 アカリの言葉を聞いて、ヒカルが苦笑いを浮かべる。2人は気持ちを楽にしながら、家へと向かった。

 

「ゴメン!ホントにごめんなさい!」

 その翌日、ヒカルはメイたちに謝った。ヒカルがメイに向けて深々と頭を下げていた。

「ヒカル・・私こそごめんなさい・・私もあのときはしつこくなってしまったわね・・・」

 メイもヒカルに向けて頭を下げる。2人が同時に顔を上げて、笑顔を見せ合った。

「やれやれ。これで何とか一件落着ね・・」

 ネネがヒカルとメイを見て、苦笑いを浮かべる。

「ホントによかったよ〜・・ヒカルちゃんが元気になって、メイちゃんと仲直りできて・・」

 マモルも2人の仲直りを見て、安心を浮かべる。

「でも、ヒカルの入院が1番責任があるな・・」

 ネネが唐突に口にした言葉を耳にして、ヒカルが気まずくなる。

「今日のお昼の購買部行きはヒカルになりそうね・・」

「これだけみんなに迷惑かけてるんだから、しょうがないね・・・」

 メイに促されて、ヒカルはため息混じりに頷いた。

「そろそろ次の授業の開始よ。急ぐわよ・・」

「う〜、今日も大変だよ〜・・」

 メイに促されて、マモルが肩を落とす。教室に向かう中、ヒカルは心の中でカイザーに声をかけた。

(ホントに、何とか一件落着って感じだね・・でもメイと仲直りできたみたいだから・・・)

It was good. Bonds with everybody have deepened further by this reconciliation.(よかったですね。この和解で、みなさんとの絆がさらに深まりましたね。)

 安堵を募らせるヒカルを、カイザーが励ましていく。

I want to value this friendship really. Though you understand enough though I do not say purposely.(この友情は、本当に大切にしたいですね。私がわざわざ言わなくても、あなたには十分分かっていますが。)

(うん・・みんなを守る・・それでみんなを心配させない・・これが、今のあたしの大事なこと・・・)

 自分が心がけることを思い返して、ヒカルは小さく頷く。気持ちを新たにして、彼女は日常へと意識を戻していくのだった。

 

 この日の授業が終わり、放課後を迎える。ヒカルは授業の束縛から解放されて、気分を明るくして下校の準備をしていた。

「ヒカル、今日は一緒に帰ってもいいかな・・?」

 そこへメイがヒカルに声をかけてきた。

「メイ・・あたしはいいけど、マモルとネネは?」

「今日は用事があるから一緒に帰れないって・・さびしいけど、仕方ないね・・」

 ヒカルが聞き返すと、メイが困り顔で答える。

「エヘヘ・・マモルちゃんとネネちゃんには悪いけど、久しぶりの2人だけの下校を楽しむとしましょうか。」

 ヒカルは苦笑いを見せながら呼びかけると、メイも気持ちを切り替えて頷いた。2人は学校の正門を通り、帰路についた。

「少し寄り道していくわよ・・」

「いいけど・・どこに・・?」

 メイに声をかけられて、ヒカルが疑問符を浮かべる。2人が訪れたのは小さな神社だった。

「神社、だけど・・ここで何を・・?」

「普段、あまり神頼みとかはしないんだけど・・ここ最近、いろいろあったから・・・」

 さらに問いかけるヒカルにメイが答え、お参りをする。

「私たちがいつまでも元気で仲良くできますように・・」

「ち、ちょっと、メイ!?

 メイのお参りの内容に、ヒカルが動揺を見せる。

「私もこういうことを実際に口に出すのは恥ずかしいわね・・でもこれが、私の今の正直な気持ちだから・・・」

「メイ・・・ありがとうね・・ホントに、ありがとう・・・」

 メイの心境を聞いて、ヒカルが微笑む。

「あたしも、みんなと一緒にいたい・・いつまでも一緒にいたいよ・・・」

「ヒカル・・・」

「もちろん進学とかで、いつまでも一緒にいられないことは分かってるけど・・さびしいのがイヤだっていうのも確かだし・・・」

 困惑しながら自分の気持ちを口にしようとするヒカル。するとメイがヒカルの肩に手を添えてきた。

「私だってさびしいと思っているわ。マモルもネネも・・だからこそ、一緒にいたいと思う気持ちが強くなると、私は思う・・・」

「メイ・・・そうだね・・さびしくなるのは、みんなと一緒にいたい・・離れたくないと思ってるからなんだよね・・」

 メイの言葉に納得して、ヒカルが頷いていく。

「それに、1度離れ離れになっても、絶対に会えないわけじゃない・・またいつかどこかで再会して、友達との思い出を思い出すときが来るわ・・」

「メイ・・あたしたち、離れてもまた会えるよね・・・?」

「その前に、私たちがずっと一緒にいられることを願うべきじゃない?あまり後ろ向きな考えはよくないわ・・」

「メイ・・・」

「考えなしの能天気になりすぎるのは、逆にいけないけどね・・」

 喜びを募らせたところでメイにからかわれて、ヒカルがふくれっ面を見せる。彼女の反応を見て、メイが笑みをこぼす。

「ごめんなさいね・・でも離れ離れになりたくないと思っているなら、簡単に離れ離れになるはずがないわ・・」

「うん・・あたしも、メイやみんなと離れたくない・・それがあたしの、正直な気持ち・・・」

 互いに自分の正直な気持ちを口にするメイとヒカル。ヒカルがメイに向けて手を差し伸べてきた。

「改めて、これからもよろしくね、メイ・・・」

「・・・うん・・よろしく、ヒカル・・・」

 メイもヒカルの手を取って、結束の握手を交わした。

 この友情がいつまでも続いていく。たとえ離れ離れになったとしても、この友情が変わることはない。ヒカルもメイもそう思っていた。

 

 それから神社を後にして通りを歩いていたヒカルとメイ。平穏な雰囲気を感じる中、メイがヒカルに声をかけてきた。

「本当にごめんなさいね、ヒカル・・付き合わせてしまって・・」

「いいよ、メイ・・メイに迷惑かけたお詫びということで・・」

 謝るメイに、ヒカルが照れ笑いを見せて弁解を入れる。

「あっ、もう約束の時間になるわ・・急いで帰らないと・・・」

 メイが通りがかったコンビニエンスストアにある時計を目にして、声を荒げる。

「本当にゴメン、ヒカル!最後まで一緒に帰れなくて・・」

「いいよ、いいよ。それより急がないと約束に遅刻しちゃうよ。」

「そうね・・本当にゴメン、ヒカル・・」

 ヒカルに謝りながら、駆け足で去っていくメイ。彼女に手を振って、ヒカルは見送った。

「離れ離れになっても、友情は変わらない、か・・そうなってほしいと、あたしも思うよ、メイ・・・」

 メイの姿が見えなくなったところで、ヒカルは微笑んで呟いた。

Please take care. Moreover, it is dragged in to a different space.(気を付けてください。また異空間に引きずり込まれます。)

 そのとき、カイザーがヒカルに向けて声がかかってきた。次の瞬間、彼女の周囲から人の姿が消えた。

「結界・・またギルティアが襲ってきたっていうの・・・!?

 ヒカルが警戒を強めて周囲に注意を向け、ギルティアの位置と動向を探った。

「そんなに警戒しなくても、私はここにいるぞ!」

 そこへ高らかに声がかかり、ヒカルが振り返る。通りを挟んだ先のビルのひとつのてっぺんに、ブルガノスが立っていた。

「あなたは確か、ブルガノス・・・!」

「覚えていてくれたか、ウォーリアー・ウラヌス!1度は私を退けたことは称賛しておこう!」

 身構えるヒカルに、ブルガノスが不敵な笑みを見せる。

「だがこの前のようにはいかない!ウォーリアー・ウラヌス、今度こそお前を捕獲する!」

 言い放つブルガノスが、ヒカルに向けて飛びかかる。

「カイザー!」

 ブルガノスが繰り出した拳で、ヒカルのいる場所が爆発を起こす。だがバリアジャケットを身に付けたヒカルが、爆発から飛び出していく。

「毎度毎度襲いかかってくるなんて!ホントしつこいよ!」

「ならば我々ギルティアにその身を委ねることだな!そうすれば何もかも終わるのだ!」

 不満を言い放つヒカルに、ブルガノスが高らかに言い放つ。

「それもイヤ!アンタたちの思い通りにはならない!みんなも傷つけさせない!」

「強情なことだな!そんな都合のいいこと、全て叶うと思っているのか!?

 言い返すヒカルに、ブルガノスが再び飛びかかる。彼が伸ばしてきた右手から、ヒカルは軽い身のこなしでかわす。

「ちょこまかと逃げ回りおって!」

 ブルガノスがいら立ちながら、ヒカルを追いかけていく。ヒカルは攻め立ててくるブルガノスとの距離を取ろうとする。

(至近距離で戦ったら、あたしが不利になる・・ここは距離を取って、遠くから攻撃を・・!)

 ヒカルは反撃のチャンスを狙っていた。それまでブルガノスの攻撃をかわして、一定以上の距離を保とうとした。

 だがブルガノスが突き出した右の拳から衝撃波が放たれた。その衝撃を撃ち込まれて、ヒカルが体勢を崩されて地上に落下する。

「何、今の!?・・・魔法・・・!?

「これは打撃から発せられる圧力の衝撃だ。直接打撃するよりは威力は劣るが、遠くの相手に攻撃を当てられる・・」

 疑問を覚えるヒカルに、ブルガノスが語りかけていく。

「遠距離攻撃を狙っていたようだったが、私にそのような小細工は通用しないぞ・・お前の逃げ足、どこまで続くか!」

 ブルガノスがヒカルに向けて打撃の衝撃波を放ってきた。回避を試みるヒカルだが、目に見えない攻撃に対し反応が遅れていた。

「どうした!?最初の勢いはどこに行った!?

 ブルガノスがあざ笑いながら、さらに打撃の衝撃波を放っていく。ヒカルは加速して、必死に衝撃波をかわしていく。

The enemy approaches.(敵が接近してきます。)

 そこへカイザーがヒカルに呼びかける。直後、ヒカルの眼前にブルガノスが接近してきていた。

「しまっ・・!」

 ブルガノスに殴り飛ばされて、ヒカルがその先の建物の壁に叩きつけられる。痛烈な衝撃に襲われてうめき、ヒカルが力なく地上に落下していく。

 揺さぶられていた意識をはっきりとさせて、ヒカルは地上に衝突する直前で浮遊し、衝突を免れた。

「危なかった・・・あの攻撃に気を取られたら、ブルガノスが攻め込んでくる・・・」

 安堵と危機感を感じていくヒカル。彼女は上空を見上げ、空中に停滞しているブルガノスを見据える。

「どうやらここまでのようだな。大人しく私と来るなら、これ以上は苦しむことがなくなるのだぞ。」

「冗談じゃないって!あたしはアンタたちの言いなりにはならない!何度も言わせないで!」

 不敵に言い放つブルガノスに、ヒカルが不満を言い返す。

「本当に強情だな・・だがこの調子ならば、気絶させることは不可能ではない・・仮に命を奪ったとしても、このまま敵に回しているよりはいいだろう!」

 ブルガノスが右手を掲げ、魔力を収束させていく。

(逃げてばかりじゃピンチは終わらない・・何とか反撃しないと・・でも、どうやったら・・・!?

The other party is certainly the above in power. However, you have strong feelings that try to defend an important person. The feelings change into power that exceeds the other party.(確かにパワーでは相手のほうが上です。ですがあなたには、大切な人を守ろうとする強い気持ちがあります。その気持ちが、相手を超える力に変わります。)”

 思考を巡らせるヒカルに、カイザーが呼びかけてきた。

Please use power as you believe. You who tries to fight to be correct do not have wrong.(あなたの信じるように力を使ってください。正しいことのために戦おうとしているあなたに非はありません。)

(ありがとう、カイザー・・そう言ってもらえると、気持ちが落ち着くよ・・・)

 カイザーに励まされて、ヒカルが微笑みかける。彼女の心から徐々に困惑が弱まっていく。

I thoroughly support it. Therefore, you must concentrate on the attack.(私が徹底的にサポートしていきます。ですのであなたは攻撃に専念してください。)

(分かったよ、カイザー・・サポート、お願いね!)

 カイザーに後押しされて、ヒカルが身構える。

「まだ抵抗してくるか!どこまでもムダな足掻きが好きなようだな!」

 あざ笑ってくるブルガノスが、左の拳で打撃の衝撃波を放つ。ヒカルは飛翔して衝撃波を放ち、ブルガノスに向かっていく。

「真正面から向かってくるとは、血迷ったか!」

 ブルガノスが迎撃のために、魔力を集中させていた右手をヒカルに向けて振り下ろす。

Sonic move.”

 ブルガノスの目には、自分の攻撃がヒカルに命中したように見えた。だが攻撃が当たったはずの彼女の姿が霧散するように消えた。

 ヒカルはブルガノスの打撃をかわしていた。魔力を伴った彼女の素早い動きは、残像を残すほどのものだった。

「こっちよ!」

 ブルガノスの後ろに回り込んだヒカルが、右足を振りかざす。彼女の蹴りを体に受ける突き飛ばされるも、ブルガノスは拳を繰り出して衝撃波を放つ。

 ヒカルは両手を突き出して光の壁を発し、衝撃波を防ぐ。だが障壁を解いたとき、ヒカルの前にブルガノスの姿はなくなっていた。

「ど、どこ・・!?

 ヒカルが周囲に注意を向けて、ブルガノスの居場所を探る。

It is on. It tries to rush on here.(上です。上からこちらに突進しようとしています。)

 その彼女にカイザーの声が伝わる。上を見上げたヒカルに向かって、ブルガノスが右手に魔力を集中させて降下してきていた。

「逃げ足だけでは私からは逃げられないぞ、ウラヌス!」

 ブルガノスが右の拳をヒカルに向けて繰り出す。ヒカルはこの一撃を、少しだけ体をかがめて紙一重でかわした。

(また残像か!?・・それとも本物か・・!?

 ブルガノスが眼前にいるヒカルの正体を探る。低姿勢のまま左手を出してくるヒカルの姿は、霧散せずに残っている。

(本物か!)

 目の前にいるヒカルが残像でないことに気付き、ブルガノスが身構える。ヒカルは左手をブルガノスに当てて、魔力を集束させていく。

(左手をひねって射撃の軌道をずらせば、私には当たらない!その時こそウラヌス、お前の終わりだ!)

 勝利を確信したブルガノスが、ヒカルの伸ばしている左手をつかもうとする。

「行くよ!グランドインパクト!」

 そこへヒカルが左手に集めていた魔力に向けて、右手を突き出してきた。右手の打撃で押し出されて、魔力に一気に加速がつく。

「何っ!?

 予測していなかったことに驚愕するブルガノス。彼の手がヒカルの左手をつかむ前に、魔力が放たれた。

 体に魔力を叩き込まれて、ブルガノスが撃墜される。落下した彼がビルの屋上の床を突き破り、さらに下に突き落とされていった。

「やった・・一気にパワーを叩き込むことができたよ・・・」

 崩れていくビルを見下ろして、ヒカルが安堵を浮かべる。だが彼女はブルガノスへの警戒を消してはいなかった。

 ビルの瓦礫からブルガノスが這い上がってきた。大きなダメージを負っていた彼だが、平然と立ち上がって見せた。

「まさかここまでやるとは・・カイザーの魔力を持て余しているどころか、急速な成長を遂げている・・・・!」

 ヒカルの力に脅威を感じるブルガノス。ヒカルはカイザーがもたらす巨大な魔力を、次第に自分でうまく扱えるようになっていた。

「これではオレやダイアナたちの思惑を超えるのも、おかしなことではないのかもしれない・・・!」

 ヒカルに対する打開の策を見出せなくなり、ブルガノスが歯がゆさを感じていく。

「ウォーリアー・ウラヌス、これで勝ったと思うな!こうしてお前に追い込まれたが、最後にはお前に勝ち、カイザーを取り戻してみせる!」

「そうはいかない!あたしはアンタたちなんかに負けない!アンタたちの好きなようにはさせない!」

 言い放つブルガノスにヒカルも言い返す。

「あたしたちの楽しい日常に土足で入り込んで、勝手なことばかりする悪い人たちを、あたしは許さない!これ以上何かするようなら、あたしはもう迷わない!」

「言ってくれるではないか!だが我々は野望は捨てない!」

 決意を言い放つヒカルを、ブルガノスがあざ笑う。

「容赦をしないのは私のほうだ!取り戻せないというならば、ウォーリアー・ウラヌス、お前をカイザー諸共粉砕してくれる!」

 ブルガノスはヒカルにそう告げると、忽然と姿を消していった。

「やった・・・でも、また攻めてくる・・・」

 安堵と同時に不安を感じていくヒカル。バリアジャケットを解除すると、彼女は結界の中から元の世界に戻された。

(この日常の裏で、あたしはギルティアと戦ってるんだよね・・・)

 大通りと行き交う車と人々を見つめるヒカル。人々は結界の中で行われた戦いのことに、誰も全く気付いていなかった。

(あたし、このまま戦い続けることになるのかな?・・そうなっていくことが、とても辛くなってくる・・・)

Please do not obsess it.(思い詰めないでください。)

 深刻さを募らせていくヒカルに、カイザーが呼びかけてきた。

It is not only you. I do not think the situation in which it will keep fighting to be pleasant either. Because it is understood that you become painful.(あなただけではありません。このまま戦い続けることになる状況を、私としても快く思いません。あなたが辛くなるのが分かっていますので。)

(ありがとう、カイザー・・でも辛いばかりじゃないよ・・・)

 励ましてくるカイザーに、ヒカルが答えていく。

(メイが、みんながいるから・・だからあたしは頑張れる・・・)

 メイたちとの友情を改めて感じ取っていくヒカル。自分を支えているのがこの強い絆であると、彼女は思っていた。

(あたしは負けない・・あたしたちの時間を、ギルティアから守ってみせる・・・)

 決心を強めていき、ヒカルが両手を握りしめていく。

(そのためだったら、あたしはどこまでも強くなってみせる・・カイザー、手伝ってくれるかな・・・?)

If you hope, I always help.(あなたが望むなら、私はいつでもお手伝いしますよ。)

 ヒカルの願いにカイザーが答える。さらに強まっていく支えを実感して、ヒカルは気持ちを日常に戻していった。

 

 ダイアナ、ブルガノス、カイロス。ギルティアの幹部がことごとくウォーリアー・ウラヌスであるヒカルに返り討ちにされてきた。

 この事実はダイアナたちに重くのしかかっていた。

「ウォーリアー・ウラヌス・・天宮ヒカル・・・」

「我々が予想していた以上の大きな力と戦い方を見せつけてくる・・油断しなくとも、我々の力を跳ね返していく・・・!」

 ダイアナとブルガノスが、ヒカルとカイザーの魔力に脅威を感じていく。

「だが倒せない相手ではない。ヤツの心理状態をかき乱せば、必ず捕獲は成功する。」

 だがカイロスは強気な態度を崩していなかった。

「今度はヤツの身近な人間でも狙ってみるか。そうなればヤツは余計に戦いに集中できなくなる・・」

「そんな小細工も、彼女は乗り切る気がしてならない・・・」

 そんなカイロスにダイアナが言葉を切り出してきた。

「どうした?怖気づいたのか、ダイアナ?」

「違う。そういう小細工も、もはや何の意味もないものにされてしまった・・それほどウラヌスの魔力は脅威ということよ・・」

 あざ笑ってくるカイロスに、ダイアナが淡々と言葉を返していく。

「重要なのは、ウラヌスの魔力そのものを封じ込めることよ・・」

「魔力を封じる?・・ダイアナ、何を考えている・・?」

 ダイアナが告げていく言葉に、ブルガノスが眉をひそめる。

「どういう理屈かは断定できないが、ドライブ・ウォーリアーである以上、大きな魔力が原動力になっているのは間違いない。その魔力を抑えれば、どのような心理状態にあろうとも、ウラヌスは力を発揮できなくなる・・」

「確かにそうなれば、捕獲もたやすいだろう。だがどうやってそれを可能とする?」

「焦らないで。私はギルティアで最高の科学者よ。魔力封じを可能とする開発を、私が実現しておくわ・・」

 ブルガノスに疑問を投げかけられても、ダイアナは冷静に答えていく。

「大した自信だな。どれほどのものができるのか、楽しみにさせてもらうぞ・・」

 あざ笑ってくるカイロスを気に留めず、ダイアナが彼とブルガノスの前から立ち去っていく。

(ダイアナも本気になってきたか・・もはや一刻の猶予もなくなっているからな・・・)

 ダイアナの心境を察して、ブルガノスが心の中で呟いていく。

(全てはマスター・クロノスのため・・早くウラヌスを連れ戻さなければ・・せめてカイザーだけでも回収しなければ・・・)

 徐々に焦りを膨らませていくブルガノス。一方で彼はダイアナの策略を見届けることにした。

 

 神凪家に帰宅したメイは、父親、神凪トウジと対面した。メイは父であるトウジとの約束をしていたのである。

「お久しぶりです、お父様。このような格好で失礼します・・」

「いや、気にしなくていい。学校と友人との交流は重要だからな・・」

 頭を下げるメイに、トウジが気を遣う。

「立ち話も何でしょうから、中に入りましょう・・」

 メイはトウジに声をかけて、邸宅に入っていった。

「ギルティアは騒然となっている・・ドライブウォーリアーの1人、ウラヌスを捕獲できないでいる・・」

「それほどまでに脅威というのですか、ドライブウォーリアーと、体に宿しているデバイスは・・?」

「それもあるが、ギルティアの予想さえも大きく上回る力を発揮してきている・・こんなことがあるとは、正直思いたくないが・・・」

 トウジが告げてきた話に、メイが驚きを見せる。

「しかし3幹部は必ずウラヌスを捕獲してくださる・・あの方々が、1人のドライブウォーリアーに完敗するはずがない・・・」

「それで、ウォーリアー・ウラヌスは誰なんですか?」

「私たちには詳細は知らされていない。ドライブウォーリアー自体、その存在が秘密裏にされていること。マスター・クロノス直属の戦士以外では、ほんのひと握りしかいない・・」

 メイが投げかけた疑問に、トウジは淡々と答える。

(ウラヌスの正体が分からない以上、本格的に行動を起こすのは危険・・まだ情報収集に集中していたほうがいい・・・)

 メイが思考を巡らせて、最善手を模索していく。

(ウラヌス・・いったい誰がウラヌスとして・・・?)

「メイ、どうした?」

 そのとき、トウジに声をかけられて、メイは我に返った。

「いえ、何でもありません・・失礼しました・・」

「何を考えているのかは知らないが、余計な詮索はするな。それは反逆につながる・・」

「分かっています・・そのような考えは持ち合わせていません・・」

「ならばそれでいい。この世界は力ある存在が動かしていく。力も知性もない今の愚かな人間たちではない・・」

 メイに言いかけるトウジが、語気を強めて目つきも鋭くする。

(そう・・世界は本当に力のある人間が動かすべきよ・・・)

 メイが再び心の中で呟いていく。

(もちろんお父様、あなたもその器ではない・・ギルティアですら、この世界を動かしていくに値しない・・・)

 思考を巡らせていく中、メイも目つきを鋭くしていく。彼女にも力への渇望と世界への野心が芽生え、膨らんできていた。

 

 トウジとの会話を終えて、部屋に戻ってきたメイ。私服に着替えた彼女は、平穏さを保つことができなくなっていた。

(今の私は本当に無力・・こんな私が世界に挑んでも、赤子の手をひねるように簡単にひねりつぶされる・・・)

 自分の無力さを強く呪うメイ。その憤りが、彼女の力への渇望を強くしていく。

(でも私は必ず手に入れてみせる・・世界さえも簡単に動かせるほどの力を・・ギルティアもドライブウォーリアーも、私が越えてみせる・・・)

 さらなる力の追及を誓うメイ。

(ドライブウォーリアーに与えられるデバイスはカイザーだけではない・・そのデバイスが世界を動かせる力を備えているなら、私はそれを手に入れる・・どんな手段に出ても・・・!)

 野心を胸に秘めて、メイは部屋を出る。彼女もまた、心を揺さぶる宿命に身を投じようとしていた。

 

 

次回予告

 

穏やかに過ぎていく日常と、その裏で繰り広げられていく暗躍。

ヒカルを捕らえるべく行動するギルティアは、その襲撃をさらに飛躍させていく。

ヒカルに迫るダイアナの策略。

魔法の戦士に、かつてない危機が迫る。

 

次回・「封じられた魔法」

 

退路を断たれた少女に、明日はあるのか・・・?

 

 

作品集

 

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