Drive Warrior Episode04「ひび割れた友情」

 

 

「お母さん、いってきまーす♪」

 ヒカルが挨拶をして元気に家を飛び出す。丁度メイが訪れ、一緒に登校することとなった。

 ドライブ・ウォーリアーの力に翻弄され苦悩してきたヒカル。だがその力に慣れていき、彼女は平穏な時間に気持ちを戻しつつあった。

 ヒカルはその平穏に並行して、元気を取り戻していった。

「おっはよー、ヒカルちゃん、メイちゃん♪」

 学校に登校したヒカルとメイに、マモルが元気よく声をかけてくる。

「おはよう、マモルちゃん♪今日も元気にいくからねー♪」

 ヒカルも元気に答えて、マモルとハイタッチをする。

「明るいのはいいけど、ちゃんと勉強に集中してよね、2人とも・・」

 そこでネネに注意をされて、ヒカルもマモルも肩を落とす。だがメイは、ヒカルについて何か引っかかるものを感じていた。

 

 普段と変わらないように見えるヒカル。メイはヒカルが何かを思いつめていると感じてならなかった。

 その真意を聞きたい。だが無理に聞こうとしても逆効果になりかねない。気持ちの板挟みにあい、メイは胸を締め付けられる思いに駆られていた。

「メイちゃん、今日は元気ないみたいだよ・・?」

 休み時間、考え込んでいたメイにヒカルが声をかけてきた。

「大丈夫?ムリしないほうが・・・」

「私は平気よ。私に関してはここのところ悩みはないから・・」

 心配の面持ちを見せるヒカルに、メイが微笑みかける。だがすぐにメイの表情が曇る。

「あえて悩みがあるとしたら、ヒカルのこと・・・」

「あたし・・・?」

 メイが切り出したことに、ヒカルが当惑を見せる。

「あの日からヒカル、何かがおかしい・・いつも寝坊してばかりだったあなたが、突然きちんと起きるようになったし・・これはいいことだけど、あまりに突然すぎて・・・」

 メイが口にした心配に、ヒカルも不安を覚える。普通の人間でない自分の日常が変わり、元に戻し切れていないことを、ヒカルは改めて痛感していた。

「本当に何もないの、ヒカル?あなたが変わってしまったような気がしてならない・・」

「そんなことないよ・・心配してくれるのは嬉しいけど、ホントに何ともないから・・・」

「で、でも・・とても何ともないとは・・・」

「何でもない!何でもないよ!」

 何度も心配してくるメイに、ヒカルは思わず大声を上げてしまった。我に返ったヒカルが罪悪感を覚え、困惑する。

「ゴ、ゴメン、メイちゃん・・・あたし、そんなつもりじゃ・・・」

「ううん・・悪いのは、しつこくした私のほう・・・」

 謝るヒカルだが、メイは自分を責めるだけになってしまった。

「ゴメン・・ホントにゴメン・・・」

 ヒカルも謝るばかりとなってしまった。彼女はこれ以上声をかけることができず、2人の間に溝ができてしまった。

 

 ダイアナ、ブルガノスに続いてヒカルの拘束に打って出ることとなったカイロス。彼はヒカルの住んでいる地域の環境、彼女の知人など、あらゆる情報を収集、分析していた。

「なぜ家族やら親友やらといった絆や周りを気にするのか、逆に理解できないな。気にしなければ理想の戦士だといえるのに・・・」

 ヒカルの心理をあざ笑うカイロス。そんな彼のいる部屋に、ダイアナがやってきた。

「あなたもあなたで手が込んでいるようね・・」

「ダイアナか・・遊びはこれまでということを思い知らせてやるさ。ウォーリアー・ウラヌスにも、お前たちにも・・」

 声をかけてきたダイアナに、カイロスが侮辱を込めた言葉を返す。目つきを鋭くするダイアナだが、あえて話を続ける。

「それで、ウラヌスを捕獲する作戦は決まったの?」

「決める必要などない。手段を選ばなければ、ウラヌスを捕らえることなど造作もないのだからな・・」

 ダイアナの疑問を愚問と思い、カイロスが不敵な笑みを浮かべる。

「さてそろそろ始めるとしようか。オレが行うウォーリアー・ウラヌスの捕獲を・・」

 席を立ったカイロスが、ヒカルを捕らえるための行動を開始した。

 

 休み時間でのすれ違いから、からヒカルとメイは互いに声をかけることができなくなっていた。それは放課後も続き、2人は一緒に帰ろうともしなかった。

 1人下校するヒカル。メイとケンカしてしまったと思い込み、彼女はため息をついていた。

(どうしてあんな大声出しちゃったんだろう・・そんなつもりなんてなかったのに・・・)

 自分がメイにしてしまったことを責めるヒカル。

(メイはあたしを心配してくれてたのに、そんな態度を見せたら、怒るよね・・・)

 メイの優しさを傷つけてしまったことに、ヒカルは罪悪感を膨らませていく。

(あたしはギルティアに狙われて、こんなことに巻き込まれて・・好きで戦っているわけじゃない・・・でもこのことは誰も知らない・・だからあたしの悩みも分かんない・・メイちゃんも・・・)

Please do not obsess it so much. Because you also are holding worry by you. It has been rolled in the fight for which it doesn't hope because power is gained because I was accepted. You have been worrying deeply that.(あまり思いつめないでください。あなたもあなたで悩みを抱えているのですから。私を受け入れたことで力を得て、望まない戦いに巻き込まれてしまった。あなたはそのことを深く悩んできました。)”

 自分を追い詰めていくヒカルに、カイザーが励ましの言葉を投げかけてきた。

(カイザー・・・でも、あたしとあなたのことは、メイちゃんたちには話せない・・そのせいでみんなに心配させて、勝手に自分で決め込んでいるって思わせてる・・・そんなあたしの気持ちを、分かってもらえるとは・・・)

The time that everybody also surely understands comes. When it is your important best friend.(みなさんもきっと分かってくれるときが来ます。あなたの大切な親友でしたら。)

 カイザーのこの言葉を受けて、ヒカルが戸惑いを覚える。彼女はメイたちと過ごしてきた時間を思い返していた。

 心配してくれる、大切にしてくれる親友がいる。この大きな友情が自分を支えてくれていると、ヒカルは改めて実感したのだった。

(そうだよね・・みんな、分かってくれるよね・・あたしの友達なんだから・・・)

 徐々に気持ちを落ち着かせていくヒカル。カイザーの励ましが、彼女の心にあった悲しみを和らげたのである。

(あたし、メイに謝らなくちゃ・・悪いのはあたしなんだから・・・)

Apologizing might put while it is a few. I think that it is good after feelings each other are made to settle down.(謝るのは少し時間を置いたほうがいいかもしれませんね。お互い気持ちを落ち着かせてからのほうがいいと、私は思います。)

 メイに謝りに行こうとしたヒカルだが、カイザーに呼び止められる。

(そう、かもね・・・もうちょっと後でもいいかな・・・)

 カイザーの言葉を受けて、ヒカルが照れ笑いを浮かべる。

 家に向かってゆっくりと歩いていくヒカル。その中で彼女はまた不安を感じていた。

(カイザー・・あたし、メイと仲直りできるかな・・・?)

I believe that you can be reconciled with everybody. Because I also understand there is a best friend who sincerely values you and is.(あなたがみなさんと仲直りできると、私は信じています。あなたを心から大切にしてくれている親友がいることを、私も分かっていますので。)

 ヒカルの心の声にカイザーが答える。ヒカルの心はメイとの和解のことでいっぱいになっていた。

 そのとき、ヒカルは奇妙な感覚を感じて足を止めた。強い力が近づいてくるのを、彼女は実感していた。

「お前か、カイザーを宿したウォーリアー・ウラヌスは・・」

 そこで声をかけられて、ヒカルが振り返る。彼女の前に現れたのはカイロスだった。

「お前がカイザーを与えられたときは、オレはその場にいなかったから、会うのは初めてになるな・・オレはカイロス。ギルティアの上位戦士の1人だ・・」

「ギルティアの人が、また・・・!」

 名乗りを上げるカイロスに、ヒカルが緊迫を覚える。

「オレはダイアナとブルガノスのようにはいかない。つまりはもうお遊びはおしまいということだ・・」

 カイロスが目を見開いて、ヒカルに襲いかかろうとしていた。

「待って!ここで攻撃してくるつもり!?ここで戦ったら、街にもみんなにも被害が・・・!」

「それがどうした?オレはお前を捕まえるためなら手段を選ばない。周りの連中がどうなろうと関係ない。」

 呼びかけるヒカルだが、カイロスは聞き入れようとしない。

「仮に他のヤツが勘ぐってきても、オレたちには太刀打ちできない。それだけの力の差があることを、お前も分かっているはずだ・・」

「だからって、関係のない人を巻き込むことないじゃない!あたしは逃げも隠れもしないから、人のいないところで戦おう!結界の中でもいいから!」

「そんな必要がどこにある?むしろ、お前の言う関係のないヤツらのいるここが、オレにとっては好都合・・」

 ヒカルの申し出を受け入れず、カイロスがあざ笑ってくる。

「周りに他のヤツがいれば、お前はなぜか本気で戦えなくなる。心というものがある人間はそういうものらしいからな・・それに、オレとしても人質にできるヤツがたくさんいていいからな・・」

 目的のためなら手段を選ばないカイロスに、ヒカルは焦りを募らせていく。

Please take care. A new other party doesn't get the appearance that uses a strategy secret invite it into a different space seen.(気を付けてください。今度の相手は異空間に誘い込む等、隠密な戦法を使ってくる様子は見られません。)

 そんな彼女にカイザーが呼びかけてきた。

If unskillfully fighting back, surrounding people will be rolled. I think that the good policy the lure of here in the place where the person doesn't exist.(下手に応戦しようとすれば、周囲の人々を巻き込むことになります。ここは人のいない場所におびき寄せるのが得策だと思います。)

(そうしたいけど・・あの人、ここから動こうとも考えていないよ・・・!)

 カイザーからの提案に、ヒカルは焦りを深めていく。カイロスは街の人々を利用することも厭わない。

The optimal way cannot be planned excluding this though this becomes a dangerous bet. However, I believe you, and recommend this method.(これは危険な賭けになってしまいますが、これ以外に最善の方法を立案できません。ですが私はあなたを信じて、この方法を勧めます。)

 カイザーが続けて出してきた提案に、ヒカルは新たなる緊張を覚える。

(・・・確かに危なっかしいけど、これ以外に方法はなさそうだね・・・カイザーが信じてくれてるんだから、やらないと失礼だよね・・・)

「カイザー!」

 カイザーの気持ちを受け止めたヒカルが、周りに自分たち以外の人がいないのを確かめてから、バリアジャケットを身に着けて構える。

「やっとその気になったか・・だがお前に打つ手など存在しない。」

 不敵な笑みを崩さないカイロス。ヒカルが意識を集中して、両手、両足に魔力を込める。

「行くよ!」

 言い放つと同時に、ヒカルが飛び出してカイロスに突進する。彼女はカイロスをつかんだまま、全速力で上空に押し込み、人のいないほうに向かって突き進んでいく。

「なるほど。強引に場所を変えさせようというのか・・だがこの地域にいる人間は多く密集している。お前のやりやすい場所も限られてくるのではないのか?」

 人のいない場所に移動させようとするヒカルを、カイロスがあざ笑ってくる。彼の言葉がヒカルの心理に揺さぶりをかける。

Do not hesitate. A little hesitation will cause here the damage to surroundings.(迷ってはいけません。ここはわずかな迷いでも、周りへの被害をもたらすことになります。)

 そこへカイザーに呼びかけられて、ヒカルが集中を強める。だが彼女の両腕をカイロスがつかんできた。

「わざわざオレがお前の誘いを受けると思うか?」

 カイロスがヒカルを地上に向けて投げつける。眼下の大通りに落とされそうになるヒカルだが、踏みとどまって空中に停滞する。

「なかなかやるな、ウォーリアー・ウラヌス・・だが・・」

 カイロスが両手を突き出して、魔力による砲撃を放とうとしていた。

「待って!この角度でそんな攻撃したら、通りにいる人たちが!」

「それがどうした?」

 呼びかけるヒカルだが、カイロスは意に介さずに砲撃を放ってきた。

(どうしたらいいの!?どうやったら、あの攻撃を・・よけたら、下の人たちが・・・!)

Please float the image of the defense magic. I progress the image.(防御魔法のイメージを浮かべてください。そのイメージを私が展開します。)

 焦りを膨らませるヒカルに、カイザーが呼びかける。その言葉に促されて、ヒカルが意識を集中して両手を突き出した。

 彼女の前に光の壁が出現した。それもかなりの大きさの。

「これって・・・!?

 自分が発した巨大な障壁にヒカルは驚いていた。これは彼女が練った障壁のイメージを、カイザーが彼女の魔力を費やして具現化させた結果だった。

 ヒカルが発した障壁で、通りに向かって放たれた砲撃が阻まれ、かき消された。

「ふぅ・・何とかみんなを守れたけど・・ずるがしこいことをしてくるよね・・・!」

 ヒカルが安堵と同時に、卑劣な手段を使ってくるカイロスに不満を感じていた。

It comes from the back.(後ろから来ます。)

 そこでカイザーに声をかけられて、ヒカルが振り返る。同時に飛び込んできたカイロスに、彼女は首をつかまれる。

「さすがだと言いたいところだが、甘さもさすがだと言っておこうか・・」

 カイロスが笑みを強めて、ヒカルを持ち上げてさらに強く締め付ける。するとヒカルがカイロスの腕を取り、再び移動しようとする。

(ホントにどうしよう・・この調子じゃ、仮に人のいないところに連れ込んでも、他の人を傷つけようとしてしまう・・・!)

Let's face the bay shore, and jump into the sea as it is. When it is a water inside, the damage to surroundings can be held off.(このまま湾岸に向かい、海の中に飛び込みましょう。水中でしたら周囲への被害を食い止めることができます。)

 打開の糸口を探るヒカルに、カイザーが提案を持ちかける。

(み、水の中って・・いくらあたしでも、いつまでも水の中にいたら息が続かないって!)

Here should be going to conclude it in a short time. We become disadvantageous, and the damage to surroundings will expand, too, if prolonged. Badness and your best friend will be rolled.(ここは短時間で決着をつけるべきです。長引けば私たちが不利になり、周囲への被害も拡大することになります。最悪、あなたの親友も巻き込まれることになりかねません。)”

 心の中で慌てるヒカルにカイザーが続けて呼びかける。その言葉を聞いて、ヒカルがメイたちを思い返していく。

(そうだよ・・ここであたしが何とかしないと、メイが、みんなが・・・!)

 親友を守りたい。その一途な気持ちが、ヒカルを奮い立たせた。

 彼女は力を振り絞ってカイロスを押さえ込み、湾岸に向かって加速していった。

「また人のいないところに誘い込むつもりか?それを受け入れるつもりはないと何度・・」

 カイロスがあざ笑いながら、ヒカルを振り払おうとした。だがヒカルの力が強く、カイロスは振り払うことができない。

「これほどの力を・・これがドライブ・ウォーリアーの戦闘力というのか・・・!」

 ヒカルの底力を痛感して、カイロスが毒づく。ヒカルはカイロスを抱えたまま、湾岸に飛び出して海に飛び込んだ。

 水中に入ったところで、ヒカルはカイロスを放す。彼女は息を止めながら、さらに彼女は意識を集中する。

(息苦しい・・いくら身体能力が上がっているって言っても、息止めに自信があったわけじゃないし・・・)

 心の中で苦しさを訴えるヒカル。彼女の前でカイロスが不敵な笑みを見せてくる。

(水中に引き込むとは、知恵を絞ってくるな、ウラヌス・・)

 ヒカルの心にカイロスの声が響いてくる。

(カイロス!?・・あたしの、心の中に・・・!?

(念話のことはカイザーから聞かさせていないようだな。魔力に慣れた者なら思念を送って会話することができるというのに・・)

 驚きを覚えるヒカルを、カイロスがあざ笑ってくる。

(だがお前は水中での戦いをこなせるかな?戦い慣れているオレより優位に立てるかどうか・・)

 カイロスが念話を送り、無数の光の弾を出現させた。

(動きがとりにくい水中で、これだけの攻撃をかわしきれるかな?)

 カイロスがヒカルに向けて魔力の弾を放つ。かいくぐろうとするヒカルだが、水の抵抗を受けて動きが取りづらくなり、弾の直撃を受けてしまう。

(水のせいで、思うように動けない・・これじゃ格好の的だよ・・・!)

(せっかくの苦肉の策も裏目に出たな。これでおしまいになりそうだ・・)

 危機感を募らせるヒカルと、勝利を確信するカイロス。ヒカルはカイロスの放つ光の弾の前に、防戦一方となっていた。

It is dangerous. The combat continuance more than this is related to your life. The conclusion in a short time is also impossible. Here at least reaches the sea once.(危険です。これ以上の戦闘継続は、あなたの命に係わります。短時間での決着も不可能。ここはせめて1度海上に出ましょう。)

 カイザーがヒカルを心配して呼びかけてきた。

Harm reaches surrounding people if it is not possible to win certainly here. However, your best friend will feel sorry if you come to die. You are sure not to hope for it either.(確かにここで勝利できなければ、周りの人々に危害が及びます。ですがあなたが死んでしまうようなことになれば、あなたの親友が悲しむことになります。それはあなたも望んではいないはずです。)”

 カイザーのこの言葉を聞いて、ヒカルが目を見開いて不安を浮かべる。

(そう・・・このままやられたら・・メイに謝れなくなる・・それだけじゃない・・メイやみんなが・・・!)

 ヒカルの脳裏にメイたち親友の顔が浮かび上がってくる。そのとき、彼女の体を包むように球状の光が発せられた。

(何っ!?

 驚愕を覚えるカイロス。ヒカルに飛んできた光の弾が、球状の障壁に阻まれて爆発を引き起こす。

(先ほどといい、防御は優れているようだな・・だが守ってばかりではオレには・・)

 すぐに不敵な笑みを取り戻すカイロス。だが彼の視線の先で、ヒカルが両手を前に突き出してきた。

(何をするつもりだ?ここでそんな大出力の攻撃をすれば、いくら海中でも周りに影響することに・・)

 大出力の魔法をヒカルが撃てないと考えていたカイロス。だがヒカルは両手から光の砲撃を発射してきた。

(血迷ったか!)

 カイロスがあざ笑いながら、上に上がってヒカルの砲撃をかわす。だがヒカルの砲撃が軌道を変えて、カイロスを追撃してきた。

(バカな!?アレの軌道を変えてきただと!?

 さらなる驚愕を覚えるカイロス。海上に出ようとしたところで、彼がヒカルの砲撃に巻き込まれた。

 

 カイロスの攻撃を退けるために、魔力を振り絞ったヒカル。だが今の砲撃で、彼女は魔力の大半を消耗してしまった。

(何とか当てられたけど・・ちょっとムチャしすぎちゃったかな・・・?)

It is dangerous in water today with exhausted. Let's go out of the sea early.(今の疲れ切った状態で水中にいるのは危険です。早く海から出ましょう。)

 カイザーがヒカルに呼びかける。残った力を振り絞って、ヒカルが海から出ようとする。

 魔力が弱っており、飛行することもままならなくなっていたヒカル。それでも彼女は陸に上がろうと、必死に海を進んでいった。

 

 海から陸に上がろうとしているヒカルを、カイロスは見下ろしていた。ヒカルの砲撃を受けたものの、彼は辛くも脱して空中に停滞していた。

「ウォーリアー・ウラヌス・・ここまでの手を打ってくるとは・・しかもオレの目論みをことごとく破ろうとするとは・・・」

 ヒカルの力を痛感して、カイロスは毒づく。彼は自分の思い通りにヒカルを捕獲できなかったことに苛立ちを感じていた。

「だがオレのやり方は間違っていない・・現にウラヌスは追い詰められ、魔力を著しく消耗している・・・」

 だがカイロスはすぐに不敵な笑みを浮かべた。

「だがオレも手傷を負っている・・ヤツにとどめを刺すことは可能だが、オレが倒れては元も子もないからな・・」

 カイロスが負傷した左腕を押さえる。ヒカルの砲撃で負ったものだった。

「傷を治したらすぐに戻るぞ・・それまで生きていることを喜ぶのだな、ウォーリアー・ウラヌス・・・」

 カイロスは哄笑を上げながら姿を消した。ヒカルにとどめを刺せるときを心待ちにしながら。

 

 疲弊しながらも、自力で海から出ることができたヒカル。バリアジャケットと解除した彼女は、必死に自分の家に向かって進んでいた。

(急いで戻らないと・・お父さんとお母さんを心配させたらいけないし・・メイにも謝らないと・・・)

 家族や親友のために必死に帰ろうとするヒカル。だが魔法を伴えば軽く進めた距離も、今の彼女にとっては長く感じられた。

Do not overwork. Here should take a rest for the time being.(無理をしてはいけません。ここはひとまず休んだほうがいいです。)

 カイザーが心配の声をかけてくる。しかしヒカルは立ち止まろうとしない。

(ありがとう、カイザー・・・でも、みんなを心配させたらいけないから・・・だから、まだ休んでいる場合じゃない・・・)

 カイザーに感謝の言葉をかけながら、ヒカルは進んでいく。だがとても長距離を歩ける状態ではなかった。

 それでも家に帰ろうとするのは、家族や親友を思ってのことだった。

(帰らないと・・みんなが待っているんだから・・帰らないと・・・)

 帰ろうとする一心で歩を進めていくヒカル。

 だが彼女のその強い意思とは裏腹に、彼女の意識は遠のいていった。やがて歩くこともままならなくなり、彼女は疲れ果てて倒れてしまった。

 魔力、体力を使い果たしてしまったヒカルは、ついに意識を失ってしまった。

Be steady. Do not fall here. Please wake up.(しっかりしてください。ここで倒れてはいけません。目を覚ましてください。)

 カイザーがヒカルに向けて呼びかけていく。だがヒカルは目を覚まさない。

Everybody will feel sorry when you fall here. Please wake up.(あなたがここで倒れたら、みなさんを悲しませることになります。どうか目を覚ましてください。)

 必死に呼びかけていくカイザー。だがヒカルの意識がすぐに戻ることはなかった。

 

 負傷して戻ってきたカイロスの前に、ダイアナとブルガノスが現れた。

「大口を叩いた割には、無様な姿で戻ってきたものだな、カイロス・・」

 ブルガノスがカイロスをあざ笑ってくる。しかしカイロスは不敵な笑みを返してきた。

「大口を叩いているのはお前のほうだぞ、ブルガノス。今回はオレの目論みが完全に外れたわけではない。」

「何だと!?

 逆にカイロスに嘲られて、ブルガノスが苛立つ。

「確かにウォーリアー・ウラヌスは、オレの考えていた以上の魔力と戦闘技術を備えていた。だが結局は人間の小娘だったことも事実・・」

 カイロスが淡々とした口調で語っていく。

「現にヤツは周りを気にするあまり、戦いに専念することができなかった。それを利用したオレの思惑に、ヤツは面白いほどにはまっていた・・」

「私も今回の戦闘を拝見させてもらったわ。ウラヌスは周りに意識を向けすぎるあまり、魔力を著しく減少させていったわ・・捕獲できなかったのはあなたにとっては想定外だったけど、結果ウラヌスは満身創痍になった・・」

 カイロスの話にダイアナが続ける。

「目的のためなら手段を選ばないその狡猾さは相変わらずね、カイロス・・でも、これで終わりということではないでしょう・・?」

「もちろんだ。オレの傷を回復させたら、すぐに出直すつもりだ・・」

 問いかけてくるダイアナに対し、カイロスが笑みを強める。

「感謝するがいい。お前たちの代わりに、オレがウラヌスを捕獲してやろう・・・」

「おのれ、カイロス・・・!」

 高らかに哄笑を上げて去っていくカイロスに、ブルガノスが苛立ちを見せる。

(待っていろ、ウォーリアー・ウラヌス・・今度こそ引導を渡してくれるぞ・・・)

 勝利への期待を胸に秘めて、買いロスは次の戦いに備えるのだった。

 

 

次回予告

 

傷ついた体。

悲しみに満ちた心。

心身ともに追い詰められたヒカルに、カイザーは優しく励ます。

そこに付け入るカイロスの魔手。

 

次回・「手繰り寄せられる絆」

 

親友との和解のため、少女は再び立ち上がる。

 

 

作品集

 

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