Drive Warrior Episode03「魔の包囲網」

 

 

 ギルティアの手によってアームドデバイス、カイザーを植え付けられ、ドライブ・ウォーリアー、ウラヌスとしての宿命を背負わされたヒカル。普通の生活を送れなくなってしまった自分に苦悩しながらも、ヒカルはギルティアと戦うことを決意した。

 だがヒカルにはまだ戦いどころか護身においても自信がなかった。どうしたらギルティアの攻撃をかいくぐることができるのか、彼女はまだ不安を払拭しきれていなかった。

 そこでカイザーが提案したのが、イメージトレーニングである。

 カイザーが想定した精神世界で、戦うこと、自分の魔力を扱うことを学んでいく。学んで学習することで、実際に魔力を使うときに効果的になるのである。

 この訓練は若干の精神的負荷がかかる程度で、肉体には影響はなく、精神や命に異常が起こることはない。

 この日の授業中も、ヒカルは現実では授業に注意を向ける一方で、魔法に関するイメージトレーニングを行っていた。

 ヒカルの意識は精神世界の中、眼下に大海原が広がる空に停滞していた。

「準備できたよ、カイザー・・これからどうしていけばいいのかな・・・?」

Please run through to the goal point in the future. The bullet of magic flies aiming at you though a straight line distance is 1km.(これからゴール地点まで駆け抜けていただきます。直線距離は1キロメートルですが、魔法の弾があなたを狙って飛んできます。)

 声をかけるヒカルにカイザーが説明する。彼女が見つめる先に点滅する淡い光があり、さらに彼女の周囲を大量の光の弾が浮遊していた。

Becoming a goal while evading the flying bullet is a target. The bullet changes the orbit even if set at a speed that is faster than you, and evaded and pursues you.(飛んでくる弾を回避しながらゴールに到着することが目標です。弾はあなたより速い速度に設定してあり、回避されても軌道を変えてあなたを追跡します。)

「誘導弾・・しかも数がたくさん・・・よけられるかな・・・?」

Whenever it hits the bullet, the penalty of ten seconds is imposed once. Please aim at 60 seconds. Not only the speed but also the height of the spatial awareness and reflexes is demanded, and have it in mind, please.(1回弾に当たるごとに10秒のペナルティを課します。60秒を目標にしてください。速さだけでなく、空間認識と反射神経の高さも要求されますので、頭に入れておいてください。)”

「難しいよ、この訓練・・・もしかしたら成功しないかも・・・」

 訓練を難しく考えて、ヒカルが肩を落とす。

Please do not think too much difficultly. It is not because there is a chance only once. Because it is significant to increasing the frequency of the success, and driving in to my body and mind.(あまり難しく考えないでください。1回しかチャンスがないわけではありません。成功の回数を増やして、自分の体と心に叩き込むことに意味があるのですから。)”

「そ、そう・・それなら少しは気楽にやれるかな・・・」

 励ましの言葉をかけるカイザーに、ヒカルが苦笑いを浮かべる。

「それじゃ、始めて、カイザー!」

 ヒカルがカイザーに呼びかけて飛び出した。一気にスピードを上げていた彼女を、光の弾が追いかけていく。

(来た・・!)

 迫ってくる弾を感知するヒカル。飛び込んできた弾を、彼女は上下左右に動いてかわしていく。

 だが弾は方向転換して、再びヒカルに向かっていく。

 弾が飛んでくる方向と数が増えていき、ヒカルは徐々に回避が困難になっていく。

(よけるのが難しくなる・・何とかして当たらないようにしないと・・・!)

 向かってくる弾に意識を傾けるヒカル。だがそれが集中力の散漫につながった。

「くっ!」

 ヒカルについに弾がかすめてきた。その彼女にさらなる弾が容赦なく襲いかかってくる。

「早く・・早くゴールしないと・・・!」

 ゴールにたどり着くことに焦りを募らせるヒカル。さらにスピードを上げて弾を振り切ろうとするが、さらに弾の直撃を受けることとなった。

 そしてようやくゴールにたどり着いたヒカル。スピードを上げすぎたために、彼女はゴール地点から大きく離れた場所で止まることとなった。

「ハァ・・ハァ・・張り切りすぎちゃった・・・カイザー、タイムは・・・?」

78 seconds. It adds for 70 seconds because it hit seven times. It is 148 seconds in total.(78秒。7回当たりましたので70秒加算。合計148秒です。)

 呼吸を整えていくヒカルに、カイザーが答える。不甲斐ない結果を出してしまい、ヒカルが肩を落とす。 

Be not disappointed. It is a good record when the first doing. The important one are to shorten time to it more than this time. Let's devote slowly oneself decisively.(気を落とさないでください。最初にしては好成績ですよ。それに大切なのは、今回より時間を短くさせていくことです。諦めずにゆっくりと精進していきましょう。)

「そうだね、カイザー・・・よしっ!この調子でやっていこう!」

Haste is a taboo. Only forging is not training. It is possible to come own ability is not able not only to be decreased but also to come back in the worst case if the extra strain is put on the body and the spirit. It is training to rest the body at times.(焦りは禁物です。鍛えることばかりが訓練ではありません。体や精神に過度の負荷をかければ、自身の能力を低下させるばかりでなく、最悪の場合、再起不能になることもあり得ます。時には体を休めることも訓練です。)

「カイザー・・・そうだね・・やっぱり小休止のほうがいいかもね・・・」

 カイザーから注意を受けて、ヒカルが苦笑いを浮かべて頷く。彼女の魔法に関する精進はまだ始まったばかりである。

 

「天宮さん。天宮さん!」

 精神世界での訓練から現実に意識を戻したとき、ヒカルは先生から声をかけられた。

「は、はいっ!」

「天宮さん、この部分を音読して!」

「あ、あの・・・どこでしたっけ・・・?」

 先生に呼ばれるも、授業への集中がおろそかになっていたヒカルは苦笑いを浮かべるしかなかった。この後ヒカルは先生に睨まれ続けることとなった。

 

「ハァ・・ひどい目にあったよ〜・・・」

 その日の昼休み、ヒカルはため息をついてから購買部で買ってきたパンを口にする。

「ボーっとしているヒカルが悪いのよ・・いつものことだけど・・・」

「それにしても今日はホントに大変だったねぇ・・あれだけ怒られたヒカル、久しぶりに見たかな・・」

 ヒカルののん気にメイが呆れ、マモルが苦笑いを見せる。

「ここ最近元気がなくて考え事ばかりだったヒカルだけど、元気だけは戻ったみたいね・・」

「エヘヘヘ・・ありがとう、ネネちゃん・・心配してくれて・・」

 声をかけたネネにヒカルが感謝の言葉をかける。

「メイもマモルちゃんもありがとうね・・あたし、嬉しいよ・・・」

「私は何もしていないわ。でもいつでも相談に乗れるようにはしていたけどね・・」

 続けて感謝をしてくるヒカルに、メイが淡々と言葉を返す。

「相談したくなったときは遠慮しないで・・私じゃなくてもネネでもマモルでもいいから・・・」

 メイが真剣な面持ちでヒカルに呼びかける。

「そうだよ、ヒカルちゃん♪たまにはあたしたちを頼ってちょうだいね♪」

「マモルはあまり頼りがいがないけど・・」

 上機嫌に呼びかけたところでネネにからかわれて、マモルが気落ちしてしまう。このやり取りにヒカルとメイが笑みをこぼしていた。

 

 1度ならず2度もヒカルを捕まえることができなかったギルティア。だが負傷が完治したダイアナは、新たな作戦を立案していた。

「確かにドライブ・ウォーリアーの力は高い・・私たちの予想をはるかに超えるほどの・・単独で真っ向から攻めても太刀打ちできないだろう・・・」

 ヒカルの魔力の高さを思い返していくダイアナ。

「でもまだまだこちらには打つ手がある・・ドライブ・ウォーリアーといえども、その魔力は無尽蔵ではないのだから・・・」

 不敵な笑みを浮かべて、ダイアナが振り返って整列しているエビルたちに呼びかける。

「ドライブ・ウォーリアーだからといって臆するな!高い魔力と戦闘力を備えていようと、まだ戦い慣れていない幼子であることに変わりはない!」

 ダイアナがエビルたちに檄を飛ばしていく。

「ウォーリアー・ウラヌスを、天宮ヒカルを捕まえる!多勢でかかれば敵わない相手ではない!」

「はっ!」

 ダイアナの命令を受けて、エビルたちが駆け出していく。ヒカルを捕らえるため、ダイアナも行動を開始するのだった。

 

 この日の授業が終わり、ヒカルはマモルに誘われて空野家にやってきていた。マモルの両親は2人とも仕事のため、家にいなかった。

「あがって、あがって♪大したものは出せないけど、遠慮しないで・・」

「アハハハ・・それじゃ、お邪魔しまーす。」

 マモルに声をかけられて、ヒカルが家に上がる。2人はマモルの部屋でお菓子とジュースを口にすることとなった。

「ゴメンね、ヒカルちゃん。こういうのしか用意できなくて・・」

「いいよ、気にしないで♪あたしの家もそんな感じだから・・」

 謝るマモルにヒカルが弁解を入れる。

「それに、謝らなくちゃいけないのはあたしのほう・・・」

 ヒカルはマモルに沈痛な面持ちを見せる。

「あたしがマモルちゃんやみんなを心配させちゃって・・・」

「ううん、それはあたしが悪いんだって・・あたしがジュースを投げたから・・・」

 互いに自分を責めるヒカルとマモル。困惑を膨らませていたところで互いの顔に目を向け合ったとき、2人は思わず笑みをこぼした。

「あんまり思いつめすぎるのは、あたしたちには似合わないね・・・」

「そうだね・・やっぱり元気1番♪笑顔が1番だね♪」

 苦笑いを浮かべるヒカルに、マモルが笑顔を見せる。

「大丈夫、大丈夫♪メイもネネちゃんも分かってくれてるって♪」

 ヒカルに励まされて、マモルがさらに笑顔を見せた。

 そのとき、家のインターホンが鳴り響いた。マモルが部屋を出て玄関に向かった。

「どちらですかー?」

「神凪メイよ。ネネも一緒よ。」

 マモルが声をかけると、訪れたメイが返事をしてきた。マモルが玄関のドアを開けて、メイとネネを目にする。

「2人も来てくれたんだ〜♪ヒカルちゃんも来てるよ〜♪」

 明るく声をかけるマモル。彼女とともに部屋に来たメイとネネに、ヒカルも喜びを見せた。

「この様子なら、マモルだけじゃなく、ヒカルも元気になったようだね。」

 ネネがヒカルの様子を見て安心する。

「でも勉強はしっかり集中してやらないといけないよ、2人とも。」

「そんな、メイちゃ〜ん・・」

「いじわる言わないで〜・・・」

 注意をしてくるメイに、マモルとヒカルが気落ちする。2人の反応を見て、メイとネネは笑みをこぼした。

 

 親友との楽しい時間を過ごして、ヒカルは次第に安らぎを取り戻しつつあった。

 ドライブ・ウォーリアーとしての宿命を背負わされ、常人離れした力を出すようになってしまったが、力をうまく抑えることで、今までの平穏な生活を送ることができると、ヒカルは信じていた。

(大丈夫・・こうして普通じゃなくなっても、普通に過ごすことができてるんだから・・・みんなも、あたしが変わってしまったなんて思っていない・・思っていない・・・)

 心の中で自分に言い聞かせていくヒカル。彼女はその調子で家に帰ろうとしていた。

 その途中、ヒカルは奇妙な感覚を覚えた。自分に向けて何か鋭いものを突き付けられているかのような感覚だった。 

(この感じ・・カイザー、もしかして・・・!?

Many perceived the approaching person. It is enclosed.(接近する人物を多数感知しました。囲まれています。)

 心の中で呼びかけるヒカルに、カイザーが答える。

 次の瞬間、黒ずくめの男、エビルが姿を現した。それも十数人という大人数で。

「フフフフ、久しぶりね、ウォーリアー・ウラヌス・・」

 さらにダイアナが姿を現し、ヒカルに笑みを見せてきた。

「この前はあなたの力を甘く見ていた・・でももう容赦しない・・徹底的に痛めつけてやる・・・!」

 ダイアナが笑みを消すと、ヒカルを取り囲んでいたエビルたちが身構える。

「ウォーリアー・ウラヌスを拘束しなさい!多少の手傷は負わせても構わん!」

 ダイアナの指示を受けて、エビルたちがヒカルに襲いかかってきた。

「カイザー!」

 叫ぶヒカルがバリアジャケットを身に着けて、魔力を解放する。彼女は向かってきたエビルを数人、打撃を浴びせて突き飛ばした。

「これが、ドライブ・ウォーリアーの力・・・!?

「こんなの、我々ではとても太刀打ちできるわけが・・・!」

 エビルたちがヒカルの見せた力に畏怖する。

「うろたえるな!恐怖するほどの戦い方はしてこない!」

 ダイアナが檄を飛ばし、エビルたちを鼓舞する。

「前後左右と上、5方向から時間差で攻め込みなさい!」

 ダイアナの指示を受けて、エビルたちがヒカルに向かって飛びかかる。迎撃しようとするヒカルだが、徐々に攻撃が間に合わなくなり、ついに両腕を押さえ込まれる。

「しつこいよ・・こんなに寄ってこないで!」

 ヒカルが力を振り絞って、エビルたちを振り払う。だが他のエビルが間髪置かずに攻め込んでくる。

(そうよ。この調子で戦っていきなさい。そして魔力を消耗していきなさい。魔力を使い果たしたときが、あなたの敗北の時よ・・)

 戦いを強いられていくヒカルを見つめて、ダイアナが笑みをこぼす。エビルを使ってヒカルの魔力を消耗させて追い込むのが、彼女の作戦だった。

(ホントにしつこいよ・・やっつけてもきりがないよ・・・!)

 次々と押し寄せてくるエビルに、ヒカルは焦りを募らせていく。

(どうしたらいいの!?・・この大勢をいっぺんにやっつけることができれば・・・!)

Please recall it. It is time when it actually demonstrates the experience has been piled by training only now.(思い出してください。今こそ訓練で積み重ねてきた経験を、実際に発揮するときです。)

 思考を巡らせるヒカルに、カイザーが呼びかけてきた。

(カイザー!・・でも、どうやったら・・・!?

Please sharpen senses. All enemies' position and attacks are recognized by not only eyes but also the body and minds.(五感を研ぎ澄ましてください。目だけでなく、体と心で敵全員の位置と攻撃を認識するのです。)

 カイザーの言葉を聞いて、ヒカルがこれまで経験してきたイメージトレーニングを思い返していく。

(でもあたし、まだ全然ノルマに達していないし・・実戦でうまくいくかどうか分かんないし・・・!)

If it is you, it is possible to do. I who is with you understand. I believe you.(あなたならできます。あなたと一緒にいる私には分かります。私はあなたを信じています。)

(カイザー・・カイザーがそこまで言ってくれるなら・・・)

 カイザーから信頼を寄せられて、ヒカルが気持ちを落ち着かせていく。

「信じてあげないと失礼になっちゃうね!」

 言い放った彼女が駆け出し、ダイアナやエビルたちを振り切っていく。

「逃げようというのだけどそうはいかない・・追いなさい!絶対に逃がすな!」

 ダイアナが呼びかけて、エビルたちがヒカルを追う。エビルたちの動きは、疲れが出ているヒカルを上回っており、彼女の前に回り込んできた。

「囲まれたらやられる・・辛くても振り切らないと・・・!」

 ヒカルは足に力を込めて、エビルの襲撃と追撃をかいくぐっていく。

It comes three people and right and left from the back respectively in pairs.(後ろから3人、左右からそれぞれ2人ずつ来ます。)

 カイザーのサポートを受けて、ヒカルが跳躍してエビルたちの突進をかわす。彼女は小さな公園まで駆け抜けてきていた。

It attracts well, and it collects to one place. Then, we will press for an answer oppositely at a dash.(うまく引きつけて、一ヶ所に集めるのです。そこで逆に私たちが一気に畳みかけましょう。)

 カイザーの提案にヒカルが頷く。彼女は公園の中央で立ち止まり、追いかけてきたエビルたちを見据える。

 両手に力を集中させながら、タイミングを計るヒカル。エビルたちが目前となったところで、彼女は上に大きく飛び上がる。

It is now. Please use what little strength one has, and drive it in aiming at the other party.(今です。力を振り絞って、相手に向けて叩き込んでください。)

「行くよ!バーストミーティア!」

 ヒカルが降下しながら、両手に集めていた魔力をエビルたちに叩き込む。爆発のような衝撃が、エビルたちを吹き飛ばした。

 持てる力を使ってエビルたちを一掃したヒカル。倒れたエビルから電気がほとばしり、その体から機械的な内部が見えていた。

「ロボット!?・・この人たち、みんなロボットだったの・・・!?

 エビルの正体を目の当たりにして、ヒカルは驚きを見せる。遅れて駆けつけたダイアナも、エビルたちの軍勢を撃破したヒカルに驚きを隠せなくなっていた。

「まさか、あれだけの数のエビルを倒してしまうとは・・・ウォーリアー・ウラヌス・・まさかここまで成長してくるとは・・・!」

 緊迫するばかりのダイアナに、ヒカルが振り返ってきた。

「あたしは負けない・・アンタたちの思い通りにはならない・・みんなにも危害を加えさせない・・・!」

「まさか、また撤退することになるとは・・・でも私たちにはまだまだ打つ手が残っている!」

 決意を口にするヒカルに言い放つと、ダイアナは後退して撤退していった。

「いけない!逃げられる!」

It is not necessary to overwork and to run after. Because it is likely to have the opposite result to what was intended as walking into a trap etc. even if it runs after forcibly.(無理して追いかける必要はありません。無理に追いかけても罠にかかったりするなど、逆効果になりかねませんので。)

 ダイアナを追いかけようとするヒカルを、カイザーが呼び止める。ヒカルは思いとどまって、ダイアナを見逃すこととなった。

It did. The result of training went out.(やりましたね。訓練の成果が出ましたよ。)

 カイザーがヒカルの戦いぶりを褒める。だがヒカルは首を横に振る。

「あたしなんて全然ダメ・・カイザーが助けてくれなかったら、きっとダメだった・・・」

This victory is what you gripped it. You repulsed them, and this place was defended. Therefore, there is not a problem even if it boasts either.(この勝利はあなたがつかんだものです。あなた自身が彼らを撃退し、この場所を守ったのです。ですので、誇っても何の問題もありませんよ。)

「カイザー・・・そういってくれると、気持ちが落ち着くよ・・・」

 カイザーに励まされて、ヒカルが安堵を浮かべた。

「あたしは戦う・・メイやマモルちゃんやネネちゃん、みんなと一緒にいるのがとっても楽しいから・・・もちろんカイザー、あなたとも・・・」

We wish to express our gratitude. When it is possible to say to you so, I am glad.(感謝します。あなたにそう言ってもらえると、私も嬉しいです。)

「これからもよろしくね、カイザー・・・」

Please give my best regards only here the renewal.(こちらこそ、改めてよろしくお願いします。)

 一心同体の絆を強めていくヒカルとカイザー。バリアジャケットを解除して、彼女は意識を現実に戻した。

(今度こそ帰ろう、カイザー・・お母さんに心配させるといけないから・・・)

 気持ちを切り替えて、ヒカルは家へと向かっていった。

 

 1度ならず2度もヒカルを拘束できずに撤退することとなったダイアナ。ことごとく予想を超えていくヒカルの魔力に、ダイアナは憤りを感じていた。

(まさかあのようなことに・・私たちであっても、ドライブ・ウォーリアーに太刀打ちできないというのか・・・!?

「またもやられたのか、ダイアナ・・・」

 帰還してきたダイアナに、ブルガノスが声をかけてきた。

「数を束ねても、ウラヌスを捕らえることはできなかったようだが・・・」

 ブルガノスが投げかけた言葉を耳にして、ダイアナが苛立ちを見せる。

「まだまだ打つ手は残されている・・今度こそウラヌスを・・・!」

「その打つ手とは、くだらない茶番のことなのか?」

 ヒカルへの敵意を見せていたダイアナに声をかけたのはブルガノスではなかった。2人の前に長身、細身の青年が姿を現した。

「カイロス・・ここしばらく姿を見せていなかったあなたが、何の用なの・・?」

「何の用、とは言ってくれる・・ドライブ・ウォーリアーを1人逃がしたばかりでなく、2人で3度も捕獲に失敗したお前たちが何を言う・・」

 低く告げてくるダイアナを青年、カイロスがあざ笑ってくる。

「子供染みた攻め方をするから、3度も返り討ちにされる羽目になるのだ・・それもと自分の力を過信していたのか?」

「カイロス、それ以上の冒涜は許さんぞ!」

 笑みをこぼしていくカイロスに、ブルガノスが憤慨する。

「カイロス、あなたなら何とかできるというの・・・?」

「フン。愚問だな。手段を選ぶようなことをしなければ、簡単に捕まえられる・・」

 ダイアナが問いかけると、カイロスが不敵な笑みを見せる。

「ウォーリアー・ウラヌス。オレたちを束ねる存在の1人というだけあって、魔力と戦闘力は並外れている。だが同時に心というものを持った人間であるのも事実だ。」

「だから何だというのだ?」

「分からないのか?人間は家族やら友情やら、妙な結束を持っているようだ。それを利用すれば、ヤツは自分の力に余計な歯止めをかけることになる・・」

 疑問符を浮かべるブルガノスの前で、カイロスが話を続ける。

「利用できるものは徹底的に利用する・・そうすればウラヌスも戦えなくなる・・・」

「だが公に行動すれば、人間どもに不審に思われることになる。そうなれば、こちらの行動範囲を狭めることになる・・」

「臆病な意見だな。人間程度の力と技術に、オレたちを止めることはできない。仮にオレたちの存在を何者かが知ったところで、地球上では非現実的とされているオレたちの力を肯定的と判断するヤツはまずいない。大した問題ではない・・」

 危惧を示すブルガノスをあざけり、カイロスは勝気に振る舞う。

「ウラヌスとなった娘、雨宮ヒカルに関する情報を集めよう。それで攻め方が決まってくる・・・」

 野心をむき出しにして、カイロスがきびすを返し、歩き出していった。

(見せてもらうとするわ・・そこまで見せつけてくるあなたの自信のほどを・・・)

 カイロスが打ち出す一手に対し、ダイアナはブルガノスとともに様子見を決め込むのだった。

 

 ギルティアの動向は、メイの耳にも入ってきていた。ウォーリアー・ウラヌスであるヒカルの捕獲の度重なる失敗に、メイは笑みをこぼしていた。だが彼女はウラヌスがヒカルであることを知らされていなかった。

(ここまで来ると本当に大失態ね。ウラヌスに逃げられた上に、ことごとく撃退されて手に負えなくなっている・・)

 ギルティアの失敗に喜びを感じて、メイが思わず笑みをこぼす。

(でもいつか私の敵になることも否定できない・・それに、ギルティアもさすがに本気になってくるでしょうから・・・)

 ウラヌスとギルティアの今後の動きを推測するメイ。

(この世界は愚かになってきている・・もはや言葉では何も解決しないほどに・・・)

 世界への怒りを募らせて、メイが笑みを消していく。

(この世界を正しく変えていくのは私・・世界の上層部でもギルティアでもない・・・)

 胸の中に秘めている野心を噛みしめるメイ。

(それを可能とさせるための力、必ず手に入れてみせる・・他の何かを壊しても、他の誰かを傷つけても・・・!)

「メイ様、夕食ができあがりました・・・」

 そこへ声がかかり、メイが意識を現実に戻す。

「分かったわ・・それとあなたにひとつ・・」

 答えたメイが、声をかけてきた男に続けて言葉を投げかける。

「ギルティアの動向を逐一報告。極力情報を得て私に教えて・・」

「過度の詮索は反逆と思われます。ここはご自重を・・」

 男に苦言を返されて、メイが毒づく。それでも彼女は野心を捨てず、機会をうかがうことにした。

 

 

次回予告

 

揺れ動く絆。

すれ違う心。

親友の気遣いと裏腹に、ヒカルの心はメイの優しさを拒絶してしまう。

後悔の念に苦悩する少女たち。

そこに付け込まぬギルティアではなかった。

 

次回・「ひび割れた友情」

 

結束を断ち切ろうとする者と、紡ぎ合う者・・・

 

 

作品集

 

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