Drive Warrior Gears
Episode23「ふたりの旅立ち」

 

 

 ヒカル、タクミの前に立ちはだかったコスモ。彼はラムの魔力を奪い取って、力を高めた。
(ヒカル、さっきの一撃で力を消耗してる・・あれだけのパワーのヤツの相手は、今は骨が折れる・・!)
(うん・・私で何とかやってみるよ。タクミは少し離れてて・・)
 タクミとヒカルが念話で会話をする。タクミがゆっくりと後ろに下がっていく。
「理想郷の実現のため、君の力も貸してほしい・・」
 コスモがヒカルに向かって手を差し伸べてきた。
「あなたの思い通りにはならない・・その理想郷のために、他の人を犠牲にするやり方を、私たちは認めない!」
 ヒカルはコスモの考えを否定して、怒りを浮かべる。
「やむを得ない・・理想郷への道を阻むのなら、倒す以外にない・・・」
 コスモは肩を落としてから、ヒカルに鋭い視線を向けてきた。その視線に気圧されそうになるのを、ヒカルが耐える。
“Please evacuate!He will accelerate!(退避してください!加速してきます!。
 カイザーがヒカルに向けて警告する。彼女が後方にジャンプすると同時に、コスモが前へ動き出す。
 空中に飛んだヒカルの後ろに、コスモは回り込んでいた。
「彼女の魔力を得て、私の力が高まったのは間違いないようだ・・」
 コスモが呟いて、ヒカルの背中に手を当てた。
「うあっ!」
 コスモから放たれた衝撃波に突き飛ばされて、ヒカルが地上に叩き落とされる。
「ヒカル!」
 タクミが叫ぶ先で、倒れたヒカルが立ち上がる。
“The ability has been much higher than before.It is an effect that captured magical powers.(先程よりも格段に能力が上がっています。魔力を取り込んだ効果でしょう。)”
 カイザーがヒカルに向けて注意を呼びかける。
(あの子から魔力を吸い取って強くなってるってことだね・・!)
 ヒカルが心の中でカイザーと会話する。
(でも元々の力は彼女のものだから、消耗させていけば威力が落ちてくるはずだよ・・!)
“I will support as much as I can. Please pay attention too.(私もできるだけ援護していくつもりです。あなたも十分注意を払ってください。)”
 作戦を練り上げるヒカルに、カイザーが助言する。
(ヒカル、大丈夫か!?ヒカル!)
 タクミもヒカルに向けて念話を送ってきた。
(タクミ・・うん、平気・・タクミはもう少し休んでて・・!)
(ヒカル・・ムチャだけはしないようにしてくれよ・・いざとなったらすぐに援護に行くから・・!)
 互いに念話を投げかけ合うヒカルとタクミ。2人は互いに気を遣っていた。
「この力に時期に慣れていくだろう・・君もこの洗礼を受ける準備をしておくことだ。」
 コスモが手を動かして、高まっている力を実感していく。彼がヒカルに向かって急降下する。
 ヒカルが後ろに動いて、コスモの襲撃に備える。
「戦い慣れているようだが、力の差は開いているようだ。」
 コスモがヒカルの力量を計って呟きかける。
「理想郷に力を捧げなかったことを、後悔することだ。」
 コスモが一気に加速して、ヒカルの後ろに回り込んだ。ヒカルがとっさにコスモから離れようとしたが、コスモが出した手を体に当てられて突き飛ばされる。
 ヒカルが空中で体勢を整えて着地するが、直後にコスモが後ろに回り込んできた。
 ヒカルがとっさに振り返り、コスモに向けて拳を繰り出した。しかし彼女の拳はコスモに当たる手前で止まった。
(圧力がかかって、攻撃が止められてる・・!)
 ヒカルが押し切ろうとするが、コスモはさらに圧力を強めていく。
「その程度では私のこの力を押し切ることはできない。」
 コスモが言いかけて、ヒカルに向かって左手をかざした。
“Please get away soon.The other's energy is increasing.(すぐに離れてください。相手のエネルギーが増大しています。)”
 カイザーが注意を呼びかけて、ヒカルがコスモから下がる。
「うあっ!」
 コスモが放った衝撃波に押されて、ヒカルが吹き飛ばされて、その先の木の幹に叩きつけられた。
 強い衝撃に痛みを覚えて、ヒカルが声にならないうめきをもらした。
(回避が間に合わない・・すぐによけようとしても間に合わない・・・!)
“It has a speed exceeding the reaction speed.If we do not make predictions at all times, we can not wait for action.(反応速度を超えるスピードを備えています。常に予測を立てなければ、対処が待ち合いません。)”
 ヒカルが危機感を募らせて、カイザーが呼びかける。2人がさらに感覚を研ぎ澄ましていく。
 コスモがヒカルを見下ろして、彼女の出方を冷静にうかがう。
(しかも向こうは全然隙がない・・こっちの動きをちゃんとつかもうとしている・・・)
 コスモの動きを見て、ヒカルが緊張を膨らませていく。
“For a prudent opponent, you'd better wait for the other side to move.As it leads to recovery of physical fitness here, it is convenient.(慎重な相手には、向こうが動き出すのを待ったほうがいいです。こちらとしては体力の回復にもつながりますので、好都合です。)”
(ありがとう、カイザー。こっちの集中力を切らさないようにしないと・・)
 カイザーからの助言を受けて、ヒカルはコスモの動きに集中する。
「本当に戦い慣れている・・本当に惜しい。ここで葬ってしまうのは・・」
 コスモが言いかけて、全身に魔力を集中させる。
(来る・・!)
 ヒカルがコスモが仕掛けてくるのを見て、すぐさま動き出す。彼女の視界からコスモの姿が消えた。
 ヒカルは慌てることなく、感覚と研ぎ澄ませてコスモの行方を追う。彼女が後ろに下がると同時に、コスモが彼女の眼前に現れた。
 ヒカルが地面を強く踏んで、上空に飛び上がる。
「判断力にも長けている・・しかし・・」
 コスモが呟き、ヒカルのさらに上まで移動した。
「うあっ!」
 コスモが手を伸ばした瞬間、ヒカルが体を押さえつけられて動けなくなる。
「これは、念力・・体が、動かない・・!」
“I can not cancel this bondage.(この束縛を解除することができません。)”
 ヒカルがうめき、カイザーもコスモの力を払いのけることができない。
「これで簡単に自由に動くことができなくなった。このまま体を粉砕することも難しくない・・」
 コスモが言いかけて、もう一方の手を伸ばす。
(このままじゃ、やられる・・!)
 ヒカルが絶体絶命を痛感して顔を歪める。
 そのとき、コスモはヒカルに攻撃を出さずに彼女から離れた。彼女の目の前を1つの光が飛んできた。
 駆けつけたのはアリシア。彼女が魔法の砲撃を放って、コスモをヒカルから引き離したのである。
「アリシアちゃん!」
 コスモの念力から解放されたヒカルが、アリシアを見て声を上げる。
「遅くなってごめん、ヒカルさん・・間に合ってよかった・・・!」
「ううん、助かったよ・・ありがとう、アリシアちゃん・・!」
 声を掛けるアリシアに、ヒカルが感謝した。
「ヴァンフォードの2人は退けた。残るはコスモだけだ。」
 ブレイドも駆けつけて、ヒカルたちに声を掛けてきた。
「ブレイドさん!」
「ヒカル、お前は少し体力を回復させろ。お前がこの戦いのカギになる。」
 声を上げるヒカルに、ブレイドが呼びかける。
「はい・・私はタクミと合流しますが、2人も危なくなったら、深追いはしないでください・・!」
「もちろんだ。オレもアリシアも倒れるつもりはない。」
 答えるヒカルに、ブレイドがアリシアとともに微笑んで頷いた。
「2人も理想郷のために身を捧げようとはしないか。」
 コスモがアリシアとブレイドを見下ろして、敵対は避けられないと認識する。
「ロードサイドの面々は、私がここで葬り去る・・」
 コスモが表情を変えずに言いかけて、ブレイドたちに向かって右手をかざす。
「アリシア、ヒカルを避難させるんだ!」
「はい!」
 ブレイドが呼びかけて、アリシアがヒカルを抱えて離れる。コスモが右手から光の球を2つ放った。
 光の球はそれぞれブレイドとアリシアを追いかけてきた。
(ホーミングか・・破壊しなければやられる・・!)
 ブレイドがコスモから離れたところで、向かってくる光の球を迎え撃つ。
「ロードカートリッジ!」
 トランザムに魔力の弾丸を装填して、ブレイドが振り下ろす。彼の一閃が光の球を切り裂いた。
 アリシアもカートリッジロードを行ったバルディッシュを構えて、光の球を迎え撃つ。
“Haken slash.”
 アリシアが振りかざしたバルディッシュが、光の球を切り裂いた。
「さすがだ。予想していた以上に、一筋縄にはいかないようだ。」
 ブレイドとアリシアの動きを見て、コスモが微笑む。
「それでも理想郷を阻む敵ならば、排除するしかない・・・!」
 コスモが目つきを鋭くして、全身に魔力を込める。アリシアとブレイドが警戒した直後、コスモの姿が彼らの視界から消えた。
 その次の瞬間、アリシアの横にコスモが姿を現した。
(速い・・!)
 目を見開くアリシアに、コスモが左手を伸ばした。彼の手による打撃と衝撃で、アリシアが強く吹き飛ばされた。
「アリシア!」
 ブレイドが声を上げると、その直後にコスモが彼のそばに移動してきた。
「くっ!」
 ブレイドが振り返り様にトランザムを振りかざす。しかしコスモの姿が消えて、この一閃は空を切った。
 直後、ブレイドが上から圧力がかかって、地面に押し付けられる。上空に現れたコスモが、ブレイドに衝撃波を放ったのである。
「その大振りの剣、自由には使わせない・・」
 着地したコスモが倒れたブレイドを見下ろす。
(このすごいスピード・・回避しようとしても間に合わない・・・!)
 コスモの戦闘力にブレイドが毒づく。
(回避ができないというなら、防いで反撃に転ずるしかない・・!)
(でもそれは危険だよ、ブレイド・・あれだけの威力の攻撃を真正面から受け止めるのは・・・!)
 次の手を考えるブレイドに、アリシアが念話で呼びかけてきた。
(しかし回避しようとしても間に合わない・・追い込まれるのは時間の問題になる・・ならば真正面から迎え撃つしかない・・・!)
 それでもブレイドは最善の方法として、真っ向勝負を挑もうとする。
(だったらオレもやらせてくれ・・!)
 そこへタクミも呼びかけてきた。
(オレが援護でもすれば、ブレイドさんの負担もちょっとは軽くなるはずだ・・オレもやるぞ・・!)
(タクミ・・お互い、ムチャはしないことだな・・・!)
 意気込みを示すタクミに、ブレイドが笑みをこぼして頷いた。
(オレが先行する・・アリシアたちは援護するんだ・・隙があれば迷わず攻撃を仕掛けろ・・!)
(うん・・!)
 ブレイドが呼びかけてアリシア、タクミ、そしてヒカルが頷いた。
 コスモが再びブレイドを狙って動き出した。トランザムを構えたブレイドの眼前に、コスモが現れた。
 コスモが突き出した右手を、ブレイドがトランザムを掲げて受け止める。
(今だ!)
 ブレイドが呼びかけて、アリシアとタクミが同時に飛び出した。突っ込んできたタクミに気付いたコスモが、ブレイドに対する衝撃波を強めた。
「うっ!」
 ブレイドが耐えきれずに突き飛ばされる。コスモが振り向き様に手を出して、タクミが振り下ろしたギャラクシーを受け止めた。
「何っ!?」
「高まった私の力、その程度に屈することはない・・」
 驚くタクミに言いかけて、コスモがもう一方の手をかざす。
「うぐっ!」
 タクミが体に衝撃波を受けて、激痛に襲われて顔を歪める。それでも彼は踏みとどまって、押されないようにする。
(今だ、ヒカル・・!)
 タクミが念話を送って、ヒカルがコスモに向かって飛びかかる。
「そのような手では私を止めるには至らない・・」
 コスモがタクミを止めたまま、ヒカルを迎撃しようとする。そこへアリシアの放った光の刃が飛んできた。
 コスモがタクミを振り払い、上空に飛んで光の刃をかわす。その彼を狙ってヒカルがジャンプして、魔力を込めた拳を繰り出した。
 回避が間に合わないと判断したコスモが、左手でヒカルの拳を受け止めた。
 しかしヒカルの拳を押さえ切れず、コスモが押されて、左手に一瞬しびれを覚えた。
 コスモがとっさに右手を振りかざして、衝撃波でヒカルを吹き飛ばした。
「ヒカル!」
 大木に叩きつけられたヒカルに、タクミが叫ぶ。次の瞬間、コスモが彼のそばまで移動してきた。
「ぐっ!」
 コスモが続けて衝撃波を放ち、タクミも吹き飛ばされて地面を転がる。
(タクミさんとヒカルさんが・・!)
 アリシアが息をのんで、振り向くコスモを警戒する。
“That is afterimage.It is not real.(あれは残像です。本物ではありません。)”
 バルディッシュが呼びかけて、アリシアが振り返る。その先にコスモが移動してきた。
「見抜くほどの技量と感覚はあるようだ・・しかし、力はそこまでとはいえないようだ・・」
 コスモが低く告げて、アリシアに向けて右手をかざした。
「うっ!」
 アリシアが念力で束縛されて、体を持ち上げられる。アリシアがもがくが、念力から抜け出せない。
「他の者はすぐには動けない。お前が滅びることは避けられない・・」
 コスモが言いかけて、アリシアに攻撃を仕掛けようと左手を構えた。
 そのとき、コスモは左手と両足に違和感を覚えた。金の輪が現れて彼の手足を拘束して、彼は動きを封じられた。
「バインド・・短時間に仕掛けていたか・・」
 コスモがバインドに目を向けた瞬間、アリシアは念力から抜けて彼から離れる。
(アリシアちゃん!)
 ヒカルが念話で呼びかけて、アリシアと合流した。
「アリシアちゃん、大丈夫!?」
「はい・・向こうは追い込まれているはずなのに、全然その素振りも見せない・・・!」
 ヒカルの声に答えて、アリシアがコスモを見て焦りを募らせる。
「すごいパワーとスピードだけど、その分消耗も激しいはず・・・!」
「それだけの強さを全部使いこなしていたら、ホントにどうにもならないよ・・・!」
 ヒカルとアリシアがコスモの出方をうかがっていく。コスモの魔力が消耗されたときにチャンスがあると、彼女たちは考えていた。
「だったらマジで数で切り抜けるしかないな・・・!」
 タクミもヒカルたちと合流して声を掛けてきた。
「タクミ、でもコスモのあの動きについていくのは難しいよ・・!」
「それも覚悟の上だ・・敵わなくても、ちょっとぐらいの足止めはやれるはずだ・・!」
 心配するヒカルに、タクミが自信を見せる。
「タクミ・・・私の近くから離れないようにね・・私がすぐに行けるように・・・!」
「ありがとう、ヒカル・・心強いって言っておくよ・・・!」
 ヒカルがフォローして、タクミが笑みをこぼした。
「では二手に分かれるぞ・・お互い、すぐにフォローに出られるように・・!」
 ブレイドが指示を出して、ヒカルたちが頷く。ヒカルとタクミ、アリシアとブレイドが二手に分かれて動き出す。
「お前たちが何をしてきても、私が歩みを止めることはない・・」
 コスモがヒカルたちの動きを見極めて、ブレイドに狙いを定めて加速する。
(来たか・・!)
 ブレイドが振り向いて、コスモの接近に備えてトランザムを構える。コスモが手をかざして衝撃波を放つが、ブレイドはトランザムを盾にして踏みとどまる。
(今だ、みんな!)
 ブレイドが念話で呼びかけてヒカル、タクミ、アリシアが同時にコスモに飛びかかる。
 タクミとアリシアがギャラクシーとバルディッシュを同時に振りかざす。コスモが意識を集中して、障壁を展開して2人の攻撃を防いだ。
(ヒカル!)
 タクミが呼びかけて、ヒカルがコスモの懐に一気に詰め寄った。
“Drive charge.”
 魔力を右手に集中させて、ヒカルがコスモに向かって拳を振りかざした。
「うぐっ!」
 コスモは回避が間に合わず、体に拳を受けて顔を歪める。彼は強く突き飛ばされて、激しく地面を転がっていく。
「マスター・コスモ!」
 ガリューが声を上げて、ローザも動揺を見せる。立ち上がろうとするコスモだが、ふらついて再び地面に膝を付く。
(今の私が、これほどのダメージを負うことになるとは・・力が上がっているはずなのに・・・!)
 コスモが体を駆けていく痛みに耐えて、焦りを覚える。
(思い切り打ち込んだのに、あんまりダメージを受けてないみたい・・・!)
 ヒカルがコスモの様子を見て、脅威を感じて緊張を募らせる。
“Although it is certain that the magical power is exhausted, it is difficult to say that there is a problem with battle because the bottom power is large.(魔力を消耗しているのは確かですが、底力が大きいため、戦闘に支障があるとは言い難いです。)”
 カイザーもコスモの状態を分析して告げる。
(今の決定打を、何度も当てていかなくちゃならないってことだね・・・!)
“However, it is not an opponent who receives a direct hit many times easily.You have to attack and do not miss any opportunities.(ですが何度も簡単に直撃を受ける相手ではありません。チャンスを1つも逃さないようにして攻撃しなければなりません。)”
(これはホントに厳しいね・・でもやるしかない・・みんなもその気になってるから・・!)
“I will follow up as much as possible so please trust me and you.(私も極力フォローしますので、私とみなさんを信じて下さい。)”
(ありがとう、カイザー・・もちろん、信じているからね・・あなたたちを・・・!)
 助力するカイザーに感謝して、ヒカルが魔力と集中力を高める。
(みんな、引き続き援護をお願い・・もう1度、今みたいな1発を・・!)
 ヒカルが念話でタクミたちに呼びかける。
(次もうまくいくか分かんないけど、やってやる・・!)
(みんな、ムチャはしないで・・危なくなったら下がって・・・!)
(お互い、生き残ることも忘れないようにな・・・!)
 タクミ、アリシア、ブレイドが互いに声をかけ合う。彼らは散開して、コスモへの攻撃のチャンスを狙う。
「ヤツらめ、いい気になりおって・・・!」
「マスター・コスモ、私たちも加勢します・・!」
 ガリューとローザがコスモと合流して、ヒカルたちを迎え撃つ。
「お前たち・・・」
 コスモが並び立った2人に視線を向ける。
「我々はマスターに使える戦士・・!」
「どこまでもマスターにお供します・・!」
 ガリューとローザがコスモに助力を進言する。
「そうか・・ならばお前たちの力、使わせてもらう・・」
 するとコスモがガリューとローザの腕をつかんで、魔力を自分に吸い寄せた。
「ぐおっ!・・マ、マスター!?」
「な、何をするのですか、マスター・コスモ・・・!?」
 ガリューとローザが魔力を吸い取られて、苦痛に襲われる。
「お前たちも、私の目指す理想郷の人柱となるのだ・・」
 コスモが言いかけて、ガリューたちの魔力を自分に取り込んだ。
「がはっ・・!」
 魔力を全て奪われて、ガリューとローザが力尽きて倒れた。
「ガリュー、ローザ・・!」
「他の仲間からも、魔力を奪い取るなんて・・・!」
 ブレイドとアリシアがガリューとローザを見て、驚愕を覚える。
「お前たちも理想郷のための人柱となるのだ・・お前たちの力を使って、私が実現してみせる・・・!」
 さらに高まった自分の魔力を実感して、コスモが笑みをこぼす。
「自分の目的のために、また仲間を・・!」
「この2人も私のために戦ってきた。理想郷のための人柱になること、彼らも承知している・・」
 怒りを覚えるタクミに、コスモが言いかける。さらに強い魔力を体に宿して、コスモは笑みを強めていた。
「コスモ、あなたの目指している理想郷は何なの!?誰かを犠牲にしてでしか成り立たないものなんて、私は絶対に認めない!」
 ヒカルもコスモに向かって怒りの声を上げる。
「全てを平穏に・・全てが平和に暮らせる理想郷を、私は見出す・・・」
「そのために他の人を犠牲にする・・コスモ、あなたを私たちは許さない!」
 理想郷に執着するコスモに、ヒカルが怒りの声を上げる。彼女もタクミたちも、コスモに果敢に立ち向かっていった。

 病室から出たメイはミュウ、ウィザード、ウィッシュと対面していた。
「コ、コイツ・・物騒なマネしたら、容赦しないよ・・!」
「ウィザード、そんな敵意むき出しにしたら、向こうだって・・・!」
 身構えるウィザードを、ウィッシュがなだめる。2人の前で、メイがミュウに鋭い視線を向けていた。
「私は今でも、ヒカルを倒すことを諦めていない・・ただ、他のヤツに彼女が倒されるのを見逃せない・・・!」
 メイが自分の考えをミュウに告げる。
「今、ヒカルたちはヴァンフォードと戦っているわ。あなたがそのつもりなら、それも放っては置けないということになるわね・・」
 ミュウが彼女の考えを聞いて、状況を伝える。
「そう・・私はヒカルを倒そうとする者を倒す・・相手が誰だろうと・・・!」
「事情はどうあれ、今の相手は共通していることでいいのね?」
 自分の意思を貫くメイに、ミュウが問いかける。メイは目つきを鋭くしたまま、小さく頷いた。
「いいわ。ヒカルたちのところへ転送してあげるわ。」
 ミュウがメイの意思を汲み取って、微笑みかけた。
「ミュウさん、そんなことしたら、そいつはヒカルたちを・・!」
 ウィザードが反対するが、ミュウは首を横に振る。
「今は少しでも最善の方法を取りたいところよ。不安は私も感じているけど、それは後に考えるわ。」
「ミュウさん・・・」
 メイを信じようとするミュウに、ウィッシュが戸惑いを感じて微笑んだ。
「後悔することになるよ・・この私を信じることを・・・」
「用心はするわ。私たちも、ヒカルちゃんも・・」
 忠告を口にするメイに、ミュウは笑みを浮かべたまま言いかける。
「あの転移装置に乗って。ヒカルちゃんたちのところへ送るわ。」
 ミュウがメイを転移装置へ誘導する。
“I can not see a lie or forgiveness.So that should not be a problem either.(嘘や騙しをしている様子は見られません。従っても問題ではないでしょう。)”
 ハデスがメイに向けて助言を送る。
「いいわ。私はヒカルのところへ行く・・」
 メイは頷いて、転移装置の台の上に乗った。ミュウはコンピューターを操作して、転移先を定めた。
「転移開始!」
 ミュウが操作する転移装置によって、メイはヒカルたちのところへ向かった。
「ミュウ、どうなっても知らないからね!」
 ウィザードがミュウに対して不満を膨らませていた。
「私は信じているわ。ヒカルちゃんたちの心と、メイって子の心をね・・」
 ミュウが信頼を口にして、ウィッシュも微笑みかけていた。

 ガリューたちの魔力も取り込んで強さを高めていたコスモ。攻撃を仕掛けて隙を作ろうとするヒカルたちだが、コスモは攻撃を軽々とかわしてみせていた。
「ホントに力がアップしてる・・追いつくこともできない・・!」
 タクミがコスモの戦闘能力の上昇に、焦りを募らせる。
「せめて私が目指す理想郷のために、華々しく散れ・・」
 コスモが低く告げると、両手に魔力を集中させていく。彼は視線を移して、ヒカルに目を向けた。
 コスモが一気にスピードを上げて、ヒカルに一気に詰め寄った。
「ヒカル!」
 タクミがヒカルに振り向いて叫ぶ。ヒカルが身構えるが、コスモが繰り出した左手に突き飛ばされる。
 ヒカルが体に力を入れて踏みとどまるが、体勢が崩れてふらついた。その一瞬にコスモが彼女に詰め寄ってきた。
「まずはお前だ・・この面々の中で、お前が最も力を備えているようだ・・」
 コスモが言いかけて、魔力を集中させていた右手を、ヒカル目がけて伸ばす。ヒカルの回避もタクミたちの援護も間に合わない。
 次の瞬間、コスモが横に強く突き飛ばされた。体勢を整えたヒカルが目にしたのは、拳を繰り出していたメイの姿だった。
「メイ・・・!」
 驚きと戸惑いを覚えるヒカル。メイに突き飛ばされたコスモだが、すぐに空中で踏みとどまった。
「もう1人のドライブウォーリアーか・・加勢に来るとは・・」
 コスモがメイを見て呟きかける。彼は不意打ちを受けても冷静さを崩さないでいた。
「メイ・・私たちを助けてくれた・・・!」
「勘違いしないで・・あなたは私が倒す・・だから他の人にあなたが倒されるわけにはいかないのよ・・・!」
 声を上げるヒカルに、メイが低い声音で言い返す。
「あのコスモを倒すまでは力を合わせることになりそうね・・でもそれまでよ。その後に今度こそヒカル、あなたを倒す・・・!」
「それでも、メイと力を合わせることができて、私は嬉しい・・・!」
 自分の意思を貫くメイだが、ヒカルは彼女と一緒に戦えると思って、喜びを感じていた。
「まずはあの人を止める・・話はそれからだよ!」
「あなたに言われなくてもそのつもりよ・・!」
 ヒカルとメイが声を掛け合い、コスモを見据えて構えを取った。


次回予告

コスモの目指す理想郷。
それは実際に存在するものなのか、それとも幻想なのか。
人柱のある理想郷なんてない。
本当の安らげる場所と時間を見据えて、ヒカルたちは走る。

次回・「幻想ははるか彼方」

本当の希望への道が今、開かれる・・・

 

 

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