Drive Warrior Gears

Episode15「迷いと怒り」

 

 

 ヒカルとの再会を果たしたものの、アリシアたちに妨害されたメイ。1度引き上げた彼女は、再びヒカルと対面する機会を待っていた。
「ヒカル、他の魔導師や騎士と一緒に行動していた。邪魔者が多いわね・・」
“Those 2 people have the strong magic in particular. It's necessary to make the preparations careful to decide not to bother, isn't it?(特にあの2人は強い魔力を備えています。邪魔されないようにするためには、準備を念入りにする必要がありますね。)”
 呟きかけるメイにハデスも言いかける。
「でも誰だろうと何人いようと関係ない・・私はヒカルと戦い、そして勝つ・・・!」
 しかしメイのヒカルへの敵意を絶やさない。
“I'm your device and am your life. I concentrate my energy on your purpose.(私はあなたのデバイスで、あなたの命です。あなたのために力を注ぎます。)”
「ありがとう、ハデス・・あなたには助けられているわね・・今回、ドライブチャージシステムを入れられるときも・・」
 ハデスに感謝を口にするメイ。ドライブチャージシステムが組み込まれる一瞬だけ、彼女はハデスが助けてくれると思っていた。
「全てはヒカルを倒すため・・ギルティアは滅んでも、ドライブウォーリアーの戦いは終わっていない・・決着は必ず付ける・・・!」
 ヒカルとの決着をつける。メイの意思はそれだけに向いていた。

 心身ともに疲弊してしまったヒカル。彼女はミュウに医務室に運ばれて、ベッドに横たわっていた。
 気絶してから数時間が経って、ヒカルは目を覚ました。
「わ・・私・・・」
「気が付いたわね、ヒカルちゃん。ここはロードサイドの医務室よ。」
 声を上げるヒカルにミュウが言いかける。
「ロードサイド・・・メイは!?メイはどこですか!?」
「君が相手をしていた子のこと?アリシアとブレイドが加勢に来たところで引き上げていったわ・・」
 メイのことを思い出して問い詰めるヒカルに、ミュウが真剣な面持ちで答える。
「そんな・・・早く、メイを探さないと・・・!」
 メイを探しに行こうとするヒカルだが、体に痛みを感じてベッドに座り込む。
「ムチャしたらダメよ、ヒカル!まだ体も心も回復していないんだから・・!」
 ミュウがヒカルに駆け寄って支える。
「ですが、早く行かないとメイが・・・!」
「行ってどうするつもりなの・・?」
 声を上げるヒカルをミュウが呼び止める。彼女の言葉を聞いて、ヒカルが困惑を覚える。
「あなたと彼女に何があったのか、私たちはまだ完全に分かっているとは言えない・・でも、ドライブチャージシステムを手に入れて強力になっている彼女を止めるには、対策が必要になってくるわ・・!」
「ミュウさん・・・」
「まずは冷静になるのが先よ。彼女と向き合うのはその後じゃないと・・」
 ミュウに励まされて、ヒカルが戸惑いを感じていく。
「今は休んでいて、ヒカル。明日また様子を確かめさせてもらうわね・・」
「はい・・すみませんでした、ミュウさん・・・」
 ミュウが言いかけて、ヒカルが小さく頷く。ミュウはヒカルへの心配をかけたまま、1度医務室から外に出た。
“Did it calm down?(落ち着きましたでしょうか?)”
 その後、少し間を置いてから、カイザーがヒカルに声をかけてきた。
「カイザー・・うん・・大丈夫・・・」
 ヒカルが答えて小さく頷く。
“I can't forbid surprise in her having lived and having challenged to a battle again, either. But when being confronted with her, since sticking to irresolution and anxiety, it won't be mutual purpose.(彼女が生きていてまた戦いを挑んできたことには、私も驚きを禁じ得ません。ですが彼女と向き合うときは、迷いや不安に囚われていてはお互いのためになりません。)”
「でも、私・・メイちゃんのこと・・・」
“There is still a chance to understand each other. I'll prepare for that case and rest.(分かり合う機会はまだあります。そのときに備えて休んでおきましょう。)”
 困惑しているヒカルにカイザーが励ましていく。
「カイザー・・・うん・・・」
 ヒカルが落ち着きを取り戻そうとしながら小さく頷く。彼女は心身を休めようと、ベッドに横たわった。

 医務室を後にしたミュウが、廊下の真ん中でブレイドと会った。
「ヒカルの様子は?」
「まだ動揺しているわ。メイという子とは関係が浅くない、ということね・・」
 ブレイドに聞かれて、ミュウが深刻な面持ちで答える。
「ヒカルとあの子・・ドライブウォーリアーとしてデバイスを組み込まれた・・」
「そして統率者の後継者を決めるために、2人は戦った・・ヒカルが生き残り、組織は壊滅した・・」
 ミュウとブレイドがヒカルとメイのことを話していく。
「2人はきっと親友同士だったのね。友達と戦うのは、ヒカルにとっても辛いこと・・」
「また向き合うことになるとは・・それもさらに互いに力を付けているし・・」
「サポートはしたいとは思うけど・・・」
「これは2人の問題だ。2人で解決するしかない・・オレたちができるのは、本当にサポート止まりだ・・」
 ミュウとブレイドが言葉を交わして、頷き合う。2人はヒカルを支えつつ、彼女の決断を尊重しようと考えていた。
「ブレイド・・ミュウ・・・」
 アリシアがやってきて、ブレイドたちに声をかけてきた。
「ヒカルは?・・ヒカルは大丈夫なの・・・?」
「体のほうはね・・でもメイという子のことを気にしているわ・・」
 アリシアの問いかけにミュウが答える。彼女の話を聞いて、アリシアが動揺を覚える。
「ヒカル・・・!」
「今は1人にしておいて。気持ちの整理をさせておかないと・・」
 ヒカルのいる医務室に向かおうとしたアリシアを、ミュウが呼び止める。
「でも、ヒカルが辛くなっていくのは・・・」
「何かあれば私が見るから・・アリシア、あなたも今は休んだほうがいい・・」
 辛さを見せるアリシアにミュウが呼びかける。彼女に励まされて、アリシアは小さく頷いた。
「オレも今のうちに休んでおく。監視もウィザードとウィッシュが頑張っている・・」
「えぇ。私たちに任せて、ブレイド。」
 ブレイドの声にミュウが答える。ブレイドはアリシアとともにミュウの前から去った。

 メイの洗脳に失敗し、新たな敵としてしまったヴァンフォード。ローザとガリューはこの事態に危機感を募らせていた。
「神凪メイを洗脳できず、みすみすドライブチャージシステムを持ち出されるとはね・・・!」
「強敵に仕立て上げてしまうとは・・これではマスター・コスモもお怒りに・・・!」
 マスター・コスモからの怒りを買うことに、ローザもガリューも焦りを隠せなくなっていた。
「早く手を打たなければ、最悪、オレたちは消滅させられる・・・!」
 ガリューが窮地を痛感した瞬間だった。彼らの心に思念が飛び込んできた。
(これは・・・!)
(マスター・コスモ・・・!)
 コスモからの思念を感じ取り、ローザとガリューが息をのむ。2人は思念の内容を実感した。
「マスター・コスモ・・私たちを、お許しに・・・!?」
 コスモのこの判断に、ローザは戸惑いを隠せなくなった。ガリューもコスモから許されたことを意外に感じていた。
「マスター・コスモが・・オレたちを・・・」
「でも、私たちに後がないのは確か・・最後のチャンスと思ったほうがいい・・・」
「分かっているわ・・もはや失われているも同然と考えるべき命・・」
「今度こそヴァンフォードを倒す・・ブレイドも、天宮ヒカルも神凪メイも・・・!」
 ヒカルたち、そしてメイの打倒を強く誓う。2人は後がないことをさらに痛感していた。
「ところで、ラムはどうしているの・・?」
「目は覚ましたが、またどこかへ行ったようだ・・マスター・コスモのご意思なのだろうが・・・」
 ローザの問いかけにガリューが真剣な面持ちのまま答える。ラムの動向は2人の及ばないところにあった。

 ブレイドを相手に戦闘訓練をしていたアリシア。彼女はヒカルへの心配から、もっと強くなりたいと思っていた。
「ムリをして強くなる必要はないぞ、アリシア。お前の強さは日に日に高まっているし、バルディッシュも強化されている。」
 ブレイドがアリシアに向けて注意を促す。
“It's as he says. It's important to take a rest now.(彼の言う通りです。今は休息を取るのが大切です。)”
 バルディッシュからも注意を言われて、アリシアが戸惑いを覚える。
「でも、ヒカルのことを考えたら・・・」
「気持ちは分かるが、焦りは禁物だ。気が気でないのはおそらくヒカルのほうなのだから、オレたちが冷静に支えなければならないのだぞ・・」
 不安を口にするアリシアに、ブレイドが激励を送る。彼はアリシアに近寄って、優しく肩に手を添えた。
「ヒカルは強いし、カイザーもついている。それでも何かあれば、ヒカルのほうからオレたちを頼ってくるはずだ。」
「ブレイド・・バルディッシュ・・・」
 ブレイドに励まされて、アリシアが落ち着きを取り戻していく。
「今はムチャな特訓はしない・・でも、イメージトレーニングはやっておくよ・・」
「そのぐらいまではムリには止められないか・・それも程々にな・・」
 実践の訓練を中断したアリシアに、ブレイドが笑みをこぼした。アリシアはバリアジャケットを解除してから、訓練場を後にした。
(神凪メイの登場でヒカルが困惑し、その影響がアリシアにも出ている・・良くも悪くも、ヒカルがオレたちに変化をもたらしたのは間違いないようだ・・)
 ブレイドがメイやヒカルのことを考えていく。
(この影響が、いい方向に向かえばいいが・・・)
 一抹の不安を抱えながら、ブレイドも急速に意識を向けることにした。

 ロードサイドの本部にて一夜を過ごしたヒカル。朝早く目を覚ましていた彼女は、1人廊下の真ん中にいた。
“How about feeling?(気分はいかがですか?)”
(カイザー・・うん・・だいぶ落ち着いてきた・・・)
 カイザーから声をかけられて、ヒカルが微笑んで頷いた。
“Still, a mind and body and, you can't declare to be stable. Please try to avoid impossibility to the utmost.(まだ心身ともに安定しているとは言い切れません。無理は極力避けるように努めてください。)”
(うん・・ありがとう、カイザー・・)
 カイザーから励まされて、ヒカルが感謝する。しかし彼女の表情がすぐに曇る。
(また必ず、メイと会うことになる・・そうなったら、また戦うことになるかもしれない・・)
 ヒカルがメイのことを考えていく。
(会ったときに迷いが出てしまうかもしれない・・迷わなくても、今のメイは前よりも強くなってる・・ドライブチャージシステムも・・)
“Even if I think simply, I'm the partner who can't be careless. A confrontation with her would be something quite severe.(単純に考えても油断できない相手です。彼女との対峙はかなり厳しいものとなるでしょう。)”
 苦悩を深めるヒカルにカイザーが注意を促す。わずかの油断も命取りになると、ヒカルは改めて痛感していた。
(それでも私が何とかしないと・・元々は私とメイの問題だから・・・)
 ヒカルが自分に言い聞かせて、メイと改めて向き合おうと考える。
“I'd like to support it as much as possible, too.(私もできる限りサポートしたいと思っています。)”
(カイザー・・ありがとうね・・これからもよろしくね・・)
 助言をしたカイザーにヒカルが感謝する。彼女は気を引き締めて、廊下を歩き出した。
「ヒカル・・」
 そこへアリシアが声をかけてきて、ヒカルが足を止めて振り向いた。
「ヒカルは・・大丈夫・・・?」
「アリシアちゃん・・・ゴメンね、心配かけちゃって・・私は大丈夫だよ・・」
 心配してくるアリシアに、ヒカルが微笑んで答える。
「何かあったら私に言って・・私じゃなくても、ブレイドでもミュウでもいいから、自分だけで抱え込まないで・・・」
「アリシアちゃん・・うん、ありがとうね・・何かあったらみんなに助けを求めるから・・」
 励ましの言葉を投げかけるアリシアに、ヒカルが笑顔を見せて答えた。しかし彼女が見せたのが作り笑顔だと感じて、アリシアは喜ぶことができなかった。
「私、ブレイドさんとミュウさんに言って、ガイさんたちのところに戻る・・」
「ヒカル・・・」
 ヒカルはアリシアに告げてから、再び廊下を歩き出した。
「待って、ヒカル・・私も一緒に行くよ・・・」
 アリシアも声をかけて、ヒカルを追いかけていった。

 ブレイドとミュウに帰ることを告げたヒカル。ブレイドもミュウもヒカルに対して深刻さを感じずにはいられなかった。
「このままあなたを帰すのは・・あのメイって子がやってくる可能性があるし・・」
 ミュウがヒカルを心配して、思い悩む。
「私もそばについている・・何かあればすぐにみんなに知らせるから・・」
「アリシア・・分かった。アリシアがヒカルのそばに付いていてくれ・・」
 アリシアも頼んできて、ブレイドが頷いて聞き入れることにした。
「アリシアも立派な魔導師だ。ヴァンフォードやメイに簡単にやられるようなことにはならない・・」
「ありがとう、ブレイド・・何かあればすぐに知らせる・・・」
 ブレイドからの信頼を受けて、アリシアが感謝する。
「行こう、ヒカル・・みなさんには私がうまく話すから・・」
「ありがとう、アリシアちゃん・・でも私がうまく話すよ・・」
 言いかけるアリシアに感謝して、ヒカルが言葉を返す。2人はガイたちのレストランに戻っていった。
「2人だけで大丈夫なのかしら?・・普通なら大丈夫な2人だけど、今のヒカルは・・」
「しっかりしている、ヒカルもアリシアも。今のヒカルの心にはまだ不安が残っているが、自分で立ち直れる強さがあるし、アリシアもそばにいれば、取り返しのつかないことには絶対にならないはずだ・・」
「ブレイド・・・そうね・・2人とも、元々しっかり者だからね・・」
 ブレイドの言葉を聞いて、ミュウは笑みを浮かべる。
「ウィザードとウィッシュに、ヒカルたちのことも気にするように言っておくかな。」
 ミュウはのん気な素振りを見せて、ウィザードたちのところへ向かった。
「オレはヴァンフォードに備えることにしよう・・ただでさえヴァンフォードは野放しにはできないからな・・・」
 ブレイドもつかの間の休息を有効に使おうと意識を傾けていた。

 アリシアと一緒に地上に戻ってきたヒカル。2人はガイたちの店に戻ってきた。
「ヒカルちゃん、大丈夫かい!?」
「はい・・ごめんなさい、ガイさん、リンさん・・心配かけて・・」
 駆け込んできたガイにヒカルが謝って頭を下げる。
「私が悪いんです・・私がヒカルさんを連れ回してしまって・・・」
 アリシアもとっさに言いかけて頭を下げる。
(2人とも・・もしかして、また・・・)
 タクミはヒカルとアリシアがまた魔法に関係した事件に関わったことに気付く。
「すぐに仕事しますから、すぐに準備を・・!」
「ううん、今日はもう休んだほうがいいわ。アリシアちゃんもそばについていてあげて・・」
 仕事に戻ろうとしたヒカルに呼びかけて、リンはアリシアにも頼む。
「分かりました・・そばについています・・・」
「アリシアちゃん・・リンさん・・・はい、分かりました・・・」
 2人の思いに気圧されて、ヒカルは肩を落としながら聞き入れることにした。
「さぁ、私たちは仕事を続けるわよ。」
「はい、リンさん。」
 リンの呼びかけにカレンが答える。
「オレもヒカルたちのそばについてる・・手伝いぐらいはできるから・・」
 タクミがヒカルとアリシアのそばにいることを申し出てきた。
「分かった。タクミ、2人のことを頼むぞ。」
「うん。ありがとう、父さん・・」
 頷くガイに励まされて、タクミはヒカルとアリシアのそばにいることにした。
「行こう、ヒカル、アリシアちゃん・・」
「うん・・」
 タクミに声をかけられて、ヒカルとアリシアは部屋に戻っていった。

 アリシア、タクミとともに自分のの部屋に来たヒカル。深呼吸をした彼女に、タクミが声をかけてきた。
「また、魔法の事件だったのか・・?」
「タクミ・・・うん・・しかも今回は、ちょっと大変なことになったの・・・」
 タクミからの問いかけに、ヒカルが小さく頷く。
「また、とんでもない敵が出てきたとか・・・」
「まぁ、そんなところ・・・」
 タクミがさらに言葉をかけて、ヒカルが笑みをこぼす。タクミはヒカルの心境を痛感して、これ以上追及できなかった。
(そう・・メイのことまで、タクミを巻き込めない・・・これは、私が向き合わないといけないこと・・・)
 メイとは自分が決着を付けないといけないこと。それでタクミを危険な目にあわせるわけにはいかない。ヒカルはそう思っていた。
「な、何か食べ物とか飲み物でも買ってくるから・・アリシアちゃんはヒカルのそばにいてあげて・・」
「は、はい・・ありがとうございます・・」
 モヤモヤした気分を振り払おうとして買い物に出ることを決めたタクミに、アリシアが微笑んで答えた。ヒカルのことを気にしたまま、タクミは部屋を出た。
「ヒカル・・タクミさんを巻き込まないようにして・・・」
「うん・・これは本当なら、私とメイのことだから・・私が、タクミやアリシアたちと会う前のこと・・・」
 アリシアが戸惑いを見せて、ヒカルが自分の過去を口にする。
「ドライブウォーリアーとして、2人は戦いを強いられてしまったんだよね・・・」
「今のメイは、私を倒すっていう意思が強くなっている・・ドライブウォーリアーとして戦うことを望んでいる・・・」
 アリシアに聞かれて、ヒカルが小さく頷く。
「全ては私たちをドライブウォーリアーにしたギルティア・・許せなかったギルティアは壊滅した・・・」
 自分のこれまでの戦いを思い返して、ヒカルが自分の胸に手を当てる。
「でも私はそのとき、みんなを守ることができなかった・・メイを助けることもできなかった・・・」
「ヒカル・・・」
「メイが生きていたのが嬉しかったのは、私の本音・・」
 メイのことで苦悩を膨らませるヒカルに、アリシアがさらに心を揺さぶられる。
「メイは私が止めないといけない・・そして今度こそ、必ず助けてみせる・・・!」
「私も、そうであってほしいと思うけど・・メイさんは、あなたがいること自体も、許すことができなくなっているんじゃ・・・」
「それは分かってる・・だからこそ私が何とかしないと・・・」
「ヒカルの気持ちは分かる・・でも、私たちも力になりたい・・・」
 ヒカルと思いを伝え合って、アリシアが彼女と手を取り合う。
「手伝わせて、ヒカル・・何でもいいから・・・」
「アリシア・・ありがとう・・私と、メイのために・・・」
 アリシアからの思いを受け止めて、ヒカルが感謝した。
(メイは私が止めるべきこと・・でも私は、1人じゃない・・・)
 今の自分には新しい仲間や家族がいることを、ヒカルは改めて実感していた。

 ヒカルのことを考えて気が気でなくなったタクミは、ごまかして外に出ていた。気持ちの整理がつかなくて、彼は道の真ん中でため息をついた。
(オレにできること・・何もないのか・・・!?)
 自分の無力を痛感して、タクミが自分の胸に手を当てる。
(男のくせに、なんて情けないことなんだ・・・!)
 彼は大きくため息をついて、気まずさを募らせていく。
「気持ちを切り替えて戻るとするか・・」
 タクミは自分に言い聞かせて、ヒカルたちのところに戻ろうとした。
 そのとき、タクミは突然違和感を感じて足を止めた。同時に彼の周りにいた人々の姿が消えた。
「あれ?・・どうなってるんだ・・・!?」
 タクミが周りを確かめるが、人の気配がまるでない。
「誰かいないのか?・・誰もいないのか!?」
 タクミが呼びかけるが、誰からの返答もない。
(もしかして、これが前にヒカルたちから聞いた、結界の中ってヤツなのか・・!?)
「今、ヒカルの身近にいる1人ね・・?」
 そのとき、突然声をかけられて、タクミが驚きを覚える。緊張を膨らませる彼に向かって、足音が響いてくる。
 タクミの前に現れたのはメイだった。
「君!・・周りに人が誰もいなくなっちゃったんだ!・・誰かいてくれてよかった・・・」
 メイが同じように結界に閉じ込められた人あと思って、タクミが安堵を見せる。
「あなただけをこの中に閉じ込めることができたようね・・」
 メイが口にしたこの言葉を聞いて、タクミの表情から安堵が消えた。彼はたまらずメイから離れて、緊迫を覚える。
「もしかして、君が・・!?」
「ヒカルを倒すために、あなたを利用させてもらうわ・・・」
 息をのむタクミに言いかけて、メイが意識を集中する。
「ハデス!」
 ハデスが起動して、メイの体をバリアジャケットが包み込んだ。
「その格好・・ヒカルと同じ・・・!?」
「そう・・私はヒカルと同じように、デバイスを体に宿している・・私たちは戦う宿命にあるのよ・・・」
 さらに緊迫するタクミに、メイが冷たい目つきのまま語りかける。
「あなたを私のそばに置けば、ヒカルは戦うしかなくなる・・あの子は最初のように、私と戦うのをためらっているから・・・」
「ヒカルが、君と・・・!?」
「あの子と私が戦うのは宿命なのよ・・ギルティアが滅んだとしても・・」
「もしかして、ヒカルが話そうとしない昔のことに関わってるってことなのか・・・!?」
 語りかけるメイにタクミが困惑を募らせていく。
「あの子は相当に、そのときのことを話したくないようね。ヒカルもヒカルなりに悩んでいるよう・・でもそれでも、私たちの戦いは止まることはない・・・」
 メイがヒカルのことを考えて、目つきを鋭くする。
「私たちは逃げることはできない・・ドライブウォーリアーとしての力からも、戦いからも・・・」
「ちょっと・・そうやってヒカルを追い詰めるなよ、君・・・!」
 自分の意思を口にするメイに、タクミが声を振り絞って呼びかける。
「ヒカルが経験した過去がどれだけ辛いものなのかはオレには分かんないし、きっと想像もできないのかもしれない・・でもヒカルはそこからやっと解放されて、幸せになろうとしてる!それをぶち壊して、君は平気なのか!?」
「ヒカルを倒さないと、私に未来はないのよ・・ヒカルに勝たないと、私は先へ進むわけにはいかない・・・!」
 タクミの呼びかけを聞き入れず、メイは自分の意思を貫く。
「そのためなら私は、もう手段を選ばない・・・!」
「君・・・!」
 目つきを鋭くするメイに、タクミが緊迫を募らせる。メイがタクミの体に打撃を与えて気絶させる。
「今はおとなしくしてもらう・・全てが終わったら、あなたを解放する・・・」
 もたれかかったタクミを見つめて、メイが言いかける。
“I'll put us out from a memory.(私たちのことを記憶から消しましょう。)”
「そうしなくても何も問題ないわ・・魔力も感じないし・・」
 ハデスが助言して、メイが落ち着いたまま答える。
「仮に潜在能力があって、それを解放して攻撃してきても、私はそれをねじ伏せる・・私はヒカルに勝つためなら、容赦はしない・・」
 ヒカルへの敵意を募らせるメイ。彼女は気絶しているタクミを抱えて、この場から歩き出した。

「タクミ、帰りが遅い・・どこか、寄り道しているのかな・・・?」
 タクミが帰ってこないことに、ヒカルが心配を感じていく。
「私、ちょっと探しに行ってくるよ・・」
「待って、ヒカル・・1人になったら危険だよ・・ヴァンフォードが狙っているかもしれないし、メイさんだって・・」
 タクミを探しに行こうとするヒカルを、アリシアが呼び止める。
「それでタクミに何かあったら・・・!」
「私たちが離れ離れになるのはよくない・・探しに行くなら、一緒に行こう・・」
「アリシアちゃん・・・ありがとう、アリシアちゃん・・」
 一緒に探しに行こうとするアリシアに、ヒカルが感謝して目に涙を浮かべた。
「そうと決めたら行こう・・気持ちが変わらないうちに・・」
「うん。メモ書きを残して、携帯にも一応連絡を残して・・」
 アリシアに言われて頷いてから、ヒカルは携帯電話を取りながら部屋を出た。
「つながらない・・やっぱり何かあったんじゃ・・気付いてないだけならいいんだけど・・・」
「私たちが考えている不安が、当たっているかもしれない・・・」
 タクミへの心配を募らせていくヒカルとアリシア。2人はタクミがメイかヴァンフォードに捕まったことを予感していた。


次回予告

2人のドライブウォーリアーの終わりのない宿命。
メイの挑戦と感情が、ヒカルの心を追い詰める。
ロードサイド、ヴァンフォード、メイ。
3つの勢力の戦いは続き、拍車をかける。

次回・「混戦」

少女たちの心の向かう先は・・・?

 

 

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