Drive Warrior Gears

Episode14「悪夢の再会」

 

 

 ヒカルのかつての親友、メイ。宿命の激闘の果てに命を終えたかに思われた。
 しかしメイは生きていた。体内にあったアームドデバイス「ハデス」が再び活動して、彼女は生存することができた。
 復活を果たしたメイは、ヒカルに対する憎悪を膨らませていた。彼女はヒカルを探して転々としていた。
(これだけ探してもヒカルは見つからない・・ハデス、あなたも探知できていない・・・)
“Itself senses its magic several times, but the inside in a boundary fence can't be grasped to the correct location.(その魔力そのものは何度か感知していますが、結界の中など、正確な位置までは把握できていません。)”
 メイが心の中で呟き、ハデスが報告をする。
(他の勢力が動いている・・きっと、私を狙ってきた連中も、その一味・・)
 ヒカル以外にも叩くべき敵がいる。メイはそう考えていた。
(連中は何者なのか・・また出てきたら今度は突き止める・・・)
 次の機会に敵の正体を突き止めることを、メイは心に決めた。
“The strong magic was sensed. I'm approaching this.(強い魔力を感知しました。こちらに近づいています。)”
 そのとき、ハデスが魔力を感知して、メイに警告を送ってきた。振り返った彼女の前に現れたのは、兵士たちを伴ったローザだった。
「その兵士・・またあなたたちなのね・・・」
 メイがローザに鋭い視線を向ける。
“She has potential ability beyond the soldier you kept occupied so far.(彼女は今まであなたが相手をした兵士を超える潜在能力を備えています。)”
 ハデスがメイに向けて忠告を送る。しかしメイは引き下がろうとしない。
「あなた、強い魔力を備えているわね。その力、私たちに貸してもらえるかしら?」
 ローザが妖しく微笑んで、メイに向けて手を差し伸べてきた。
「断る・・私は誰の思い通りにもならない・・・」
「あなたの力を今以上に上げられるとしても?」
「そんな罠にかかる私ではない・・力なら、自身で高めていく・・」
 ローザの誘いを断り、メイは振り返って歩き出そうとする。
「天宮ヒカルは格段に強くなっているのよ。」
 ローザが口にしたこの言葉を耳にして、メイは足を止めた。
「ヒカルがどこにいるのか知っているの・・・?」
 メイが話に食いついたと思い、ローザが笑みをこぼす。
「彼女の体内にあるデバイスには、新たにドライブチャージシステムが組み込まれたわ。あなたの今の魔力、まだ彼女の域に達してない。」
「だからあなたたちの言う通りにしろと?話にならない・・そのドライブチャージシステム、私が自分で手に入れる・・」
「純粋なドライブチャージシステムを手に入れられるのは、ロードサイドと私たちヴァンフォードが確実。でもロードサイドはあなたを警戒して、システムを組み込もうとはしないでしょうね。」
「場所さえ分かれば十分。手に入れて組み込むだけのこと・・」
「分からない子ね。今のあなたではロードサイドにも私たちにも勝てない。ドライブチャージシステムを手に入れることもできないわ。」
 自分の意思を貫こうとするメイに、ローザが呼びかけていく。
「それとも、今ここで私たちに挑むつもりなのかな?」
「今ここで倒されたいということか・・ならば望みどおりに!」
 挑発してくるローザに、メイが鋭い視線を向ける。メイの体から魔力のオーラがあふれ出す。
「いいわ。私たちも早くあなたを捕獲か始末をしたほうがいいと思うから・・」
 ローザが前に出て、メイを迎え撃つ。兵士たちが警戒を強めながら後ずさりする。
“Please be careful. The magic which has no things felt so far is kept.(気を付けてください。今まで感じたことのない魔力を秘めています。)”
(関係ない。ヒカルを倒すまで、私は負けはしない・・相手が誰だろうと・・・!)
 ハデスが忠告を投げかけるが、メイは聞かずにローザに向かっていく。メイがローザに向けて、魔力を込めた拳を繰り出す。
 だがローザが張った魔力の障壁に、メイの拳が防がれる。
「何っ・・!?」
「思っていた通り、あなたの力はこの程度ね。私にも遠く及ばない・・」
 驚きの声を上げるメイに、ローザが微笑みかける。彼女が左手をかざして、メイの体に魔力の衝撃を叩き込む。
「うっ!」
 重みのある一撃を受けてうめくメイ。彼女がそのまま上空に跳ね上げられる。
「人の言うことにはきちんと耳を傾けたほうがいいわよ・・」
 微笑みかけるローザの眼前に、メイが落下して倒れる。起き上がろうとした彼女に、ローザが高度のバインド「フープバインド」をかけて拘束した。
「これであなたは体の自由が利かない・・麻酔をかけた後、フロンティアに戻るわよ。」
「了解。」
 ローザが呼びかけて、兵士の1人が答える。身動きの取れないメイがバインドを強引に引きちぎろうとするが、その最中に兵士に後ろ首に麻酔を打たれる。
「わ・・私は・・こんな・・ところで・・・!」
 抗おうとするメイだが、意識を保てなくなって突っ伏した。
「これよりフロンティアに移送します。」
「すぐにドライブチャージシステムを組み込むわ。その前に脳とデバイスに洗脳プログラムを打ち込むけど・・」
 メイを連れていく兵士たちに言いかけて、ローザはまた笑みをこぼした。

 メイは拘束されてローザたちに連れ込まれた。フロンティアにて、ガリューが意識を失ったメイを目の当たりにした。
「それが、強い魔力の持ち主か。」
「そう。しかもあの天宮ヒカルと同じ、ドライブウォーリアーと同じ存在よ。」
 言いかけるガリューにローザが説明する。
「アイツと同じだと・・!?」
「もっとも、体内にあるデバイスにドライブチャージシステムがなかったから、捕まえるのは簡単だったけど・・」
 眉をひそめるガリューに、ローザが微笑みかける。
「これからドライブチャージシステムを組み込むわ。洗脳プログラムを入れた上で。」
「気を付けろ。天宮ヒカルと同じなら、何を仕掛けてくるか、まだ分からないぞ。」
 2人が言いかけて、メイに目を向ける。メイは目を閉じて眠りについていた。

 メイはフロンティアの研究室に運ばれた。研究室にある機器が、彼女の身体チェックを行っていく。
「やはり天宮ヒカルと同じ種類と思われるデバイスですね。宿主の生命活動も担っています。」
 研究員がローザにメイについて報告する。
「なるほどね。ならそのデバイスに洗脳プログラムを組み込めばいいだけのこと・・」
 ローザが納得して、メイをじっと見つめる。
(彼女が私たちの切り札になる。そしてマスター・コスモのこれ以上ない右腕となる・・)
 メイがヴァンフォードの最高の切り札となると確信して、ローザは笑みをこぼした。
「ドライブチャージシステムと、洗脳プログラムの組み込みを。反撃を仕掛けてこないように、警戒を怠らないように。」
「了解。」
 ローザの命令に研究員と兵士が答えた。
「システム、およびプログラム、デバイスに挿入開始。」
 研究員たちがコンピュータを操作し、ハデスにドライブチャージシステムと洗脳プログラムを同時に挿入する。これでメイに反撃されることなく洗脳し、強力な尖兵として引き込めると、ローザたちは確信していた。
 メイが目を覚ますことなく、彼女への挿入作業が完了した。
「挿入作業、全て完了しました。これで神凪メイは我々の命令通りに動きます。」
 研究員の1人がローザに報告する。
「ウフフフ・・意識を取り戻すのが待ち遠しいわ・・」
 改めてメイを見て、ローザが笑みをこぼす。彼女は1度研究室から外に出た。
「これでマスター・コスモの理想郷がさらに早く実現することになる・・」
「手を焼いているロードサイドも、これで・・」
 研究員と兵士たちが期待を感じて笑みをこぼす。彼らが横たわっているメイに目を向ける。
「オレたちのためにしっかりと働いてもらうぞ。」
「・・・お断りだ・・・!」
 兵士が喜びを浮かべていたところで、メイが突然目を開いた。
「な、何っ!?」
 驚愕する兵士がメイに殴り飛ばされて、壁に叩きつけられる。メイは寝台から起き上がり、寝台に向けて拳を振り下ろした。
 メイの打撃の衝撃が拡散して、研究室に爆発を巻き起こした。
「どうして!?洗脳プログラムが働いていない!?」
 研究室に戻ってきたローザが、メイを見て驚きをあらわにする。
「私を洗脳しようと企んでいたのは分かっていたわ。だからハデスが洗脳プログラムを遮断するバリアを、自分の周囲に展開していたのよ。」
 メイが不敵な笑みを浮かべて、ローザたちに語りかける。
“Before the effect came, I erased the brainwash program you inserted.(あなたたちが挿入した洗脳プログラムは、効果が及ぶ前に私が消去しました。)”
 ハデスも続けてローザたちに説明をしていく。
「そんな・・そんなことをしてくるなんて・・・!」
 自分たちの支配をはねのけてみせたメイに、ローザが憤りを覚える。
「本当なら、私を利用しようとしたあなたたちを今すぐ始末するところだけど、私にはどうしても倒さないといけない相手がいる・・・!」
 メイが低い声音で言うと、拳を振りかざして壁を打ち破った。彼女はそのまま飛び出して、廊下を駆けていく。
「全ての転送装置をロック!外へ転送させないように!」
「はっ!」
 ローザの命令に研究員が答える。フロンティアにある全ての転送装置が停止して、他の世界への移動が制限された。
「神凪メイを包囲するのよ。たとえフロンティアから飛び出そうとしても、宇宙空間と次元のトンネルの中では生存できないわ。」
「了解!」
 ローザが兵士たちとともにメイを追う。レーダーの捕捉から、ローザたちはメイを徐々に包囲していく。
「まさかあの娘が洗脳をはねのけて脱走するとはな・・」
 いら立ちと焦りを募らせるローザのそばに、ガリューがやってきた。
「侮っていないと思っていたが、まだ侮っていたようね・・・!」
「オレたちも追うぞ。早く捕らえて、今度こそ洗脳して、マスター・コスモの支配下に置く・・」
 憤りを口にするローザにガリューが呼びかける。2人もメイを追って動き出した。

 フロンティアの廊下を突き進んでいくメイ。彼女は立ちふさがってきた兵士たちを次々に蹴散らしていく。
(ハデス、座標は定まった!?)
“There is considerable distance to the earth from here, but it's possible to change.(ここから地球へはかなりの距離がありますが、転移可能です。)”
 メイが心の中で問いかけ、ハデスが答える。
(ならすぐに地球に向かう・・ヒカルとの決着をつけるために・・・!)
 メイはハデスに言いかけて、さらに廊下を駆け抜けていく。彼女の周りを兵士たちが取り囲んできた。
「おとなしくしなさい!あなたにもう逃げ場はないわ!」
 ローザが呼びかけて、メイに忠告を投げかける。
「改めて洗脳を受けろ。それとも力ずくで従わされるのが好きか?」
 ガリューも呼びかけるが、メイは従おうとしない。
「従うこと自体、受け入れるつもりはない・・邪魔をするなら、誰だろうと倒すだけよ・・・!」
 メイがガリューたちに言いかけた。
“Movement to the earth is begun.(地球への移動、開始します。)”
 ハデスが呼びかけて、メイの体から淡い光が発した。
「転移するわ!止めるのよ!」
「はっ!」
 ローザの呼びかけを受けて、兵士たちがメイに飛びかかる。しかし彼らが捕まえる前に、メイは姿を消した。
「しまった・・地球に逃げられた・・・!」
「レーダーで転移先を捕捉して!見失わないで!」
 ガリューが毒づき、ローザが兵士たちに指示を出す。
「配下に置くことに失敗して、さらに強大な敵を作り出すなんて・・これでは、マスター・コスモがお怒りに・・・!」
 ローザは危機感を募らせて体を震わせる。
「今は神凪メイを押さえることが先決だ・・オレたちも行くぞ、ローザ・・!」
「分かったわ・・このまま逃がすわけにはいかない・・・!」
 ガリューとローザもメイを追ってフロンティアから転移していった。

 ドライブチャージシステムを得て、洗脳されることなくフロンティアからの脱出に成功したメイ。彼女は新たな力を得た自分を実感していて、両手を握ったり開いたりしていた。
「これがドライブチャージシステムを得た私・・これが、新しい強さ・・・」
“The magic you have seems to assign itself to the charge when being magic movement.(あなたの持つ魔力そのものを魔法発動の際の装てんに充てるようです。)”
 自分の強くなった魔力を確かめるメイに、ハデスが助言を送る。
「敵から与えられた力になる以上、自分たちで扱いを覚えていくしかないわね・・」
“I make sure that I can handle an analysis of the ability smoothly quickly, too.(私も能力の分析を急いで、順調に扱えるようにします。)”
 力に慣れようとするメイに、ハデスがさらに声をかける。
(ここまで手の込んだことをしたのは、あくまでヒカルを倒すため・・今度こそ、あなたを倒して、私が頂点に・・・!)
 ドライブウォーリアーとしてヒカルを倒すことを、メイは強く心に誓っていた。

 タクミと真っ直ぐに向き合うことができず、ヒカルは不安を募らせていた。自分の迷いを表に出してはいけないとも思って、彼女はレストランでの仕事は集中していた。
「ヒカルさん、いつものように仕事しているように見えるけど・・」
「何か、思いつめているような・・・」
 カレンとアスカがヒカルの様子を見て、小声で言い合う。
「私は相談に乗ってあげたほうがいいと思うけど・・」
「私は向こうから相談を持ちかけてこないうちは・・こっちから聞きに来ても話してくれないってこともあるかもしれないし・・・」
「結局向こうが話してくれるのを待つしかないか・・」
「じれったいですけどね・・・」
 ヒカルのことを話していくカレンとアスカ。
「あなたたち、ここでおしゃべりしていないで、きちんと仕事しなさいよね・・」
 そこへリンがやってきて、カレンたちに注意を言ってきた。
「す、すみません・・」
 カレンとアスカが謝って、それぞれ仕事に戻った。
(タクミとヒカルちゃん、何か悩んでいるみたいだけど・・アリシアちゃんも・・・)
 リンもヒカルたちのことは気になっていた。しかしリンは彼らが相談しに来るのを待つことにして、仕事に集中した。

 休憩がやってきて、ヒカルはレストランの外に出た。彼女は気分を落ち着かせようと、大きく深呼吸した。
(タクミのためを思って、会えて遠ざけているつもりなんだけど・・)
 ヒカルがタクミのことを考えて、ひとつ吐息をつく。
(もしかして、タクミに協力してもらうのがいいのかな・・・?)
“That's that you and he judge. Risk involved from the decision can't be denied.(それはあなたと彼が判断することです。その決断から伴うリスクは否めませんが。)”
 悩みを深めるヒカルにカイザーが助言を送る。
(私と、タクミの・・・)
 自分とタクミの気持ちを気にして、ヒカルの心は揺れていた。彼女は互いの想いを確かめてもいいのかもしれないと思っていた。
(今日の仕事が終わったら、タクミと話をしてみよう・・勝手にしちゃうといけないから、アリシアちゃんも一緒に・・・)
 ヒカルが胸の奥にひとつの決心を宿していた。
 そのとき、ヒカルとカイザーが魔力を感知して、緊張を覚える。
「これは・・・!?」
“The strong magic is approaching this gradually.(強い魔力が徐々にこちらに近づいてきています。)”
 周りを見回すヒカルに、カイザーが呼びかける。
“Moreover this magic is Hades.(しかもこの魔力は、ハデスです。)”
「ハデス!?・・ということは、これは・・メイ・・・!?」
 カイザーの言葉を聞いて、ヒカルはメイのことを思い出す。
(でも、メイは死んだはず・・私の目の前で・・・!)
“I confirmed that the magic and a life reaction went off, too. Even if Hades compares and restarts, it isn't played to her life.(私も魔力と生命反応が消えたのを確認しました。例えハデスが再起動したとしても、彼女の生命までは再生されません。)”
 ヒカルとカイザーがメイが生きていたことに驚きを隠せなくなる。
(とにかく行かないと・・ここで戦うのは、たとえ結界を張るにしてもよくないから・・・!)
 ヒカルはウェイトレスの格好のまま、外へ駆け出していった。感じられる魔力を頼りに、その正体がメイであるかどうかを確かめるために。
 ヒカルはひたすら走り続けて、人気のない小道に差し掛かった。
(近い・・あの魔力をより強く感じ取れるように・・・!)
 ヒカルが感知する魔力に対して緊張を募らせていく。そのとき、彼女の周りに結界が展開された。
 周りに注意を向けるヒカルの耳に、近づいてくる足音が入ってくる。身構える彼女の前に、1つの姿が現れた。
 ヒカルはその姿に目を疑った。彼女の前にメイが現れた。
「メ・・・メイ・・・!?」
 驚愕するヒカルが、思わず体を震わせる。メイはそんな彼女に冷たい視線を送っている。
「夢か幻だと思っているかもしれないけど、私は本物の、神凪メイよ、ヒカル・・」
 ヒカルに向けて低い声音で言いかけるメイ。
「ホントに・・ホントにメイなの・・・!?」
“The sensed magic is the one from Hades without fail.(感知する魔力は間違いなくハデスのものです。)”
 体を震わせるヒカルに、カイザーが助言する。しかしヒカルにはまともに伝わっていない。
「あのとき、私はあなたに敗れた・・私自身も命を落としたと思った・・でも私は生き延びた・・今こうして、あなたの前にいる・・・」
 メイが語りかけて、右手を強く握りしめる。
「今度こそ・・あなたを倒すために・・・!」
 メイが目を見開いて、全身からオーラを放出した。彼女の強化された魔力がヒカルに伝わる。
“This magic numerical value. A drive charge system is also included in Hades.(この魔力数値。ハデスにもドライブチャージシステムが組み込まれています。)”
「えっ・・!?」
 カイザーがメイとハデスの魔力を感知して、ヒカルがさらに耳を疑う。
「新しく生まれ変わった私の力、あなたに叩き込むわ・・ハデス!」
 メイが魔力を放出して、バリアジャケットを身にまとう。彼女が右手を握りしめて、ヒカルに向かって飛びかかる。
“Please fight. I get war preparation at least, and, as it is evacuated.(戦ってください。せめて臨戦態勢を取って、退避するだけでも。)”
 カイザーが呼びかけるが、ヒカルは何の行動も取らず呆然としている。カイザーが自動で起動して、ヒカルにバリアジャケットを着せる。
 そしてカイザーは光の障壁を展開して、メイが繰り出した拳からヒカルを守る。
「戦うのよ、ヒカル!そうしないと、私は納得しない!」
「できないよ、メイ・・また、私とあなたが戦うなんて・・・!」
 呼びかけるメイにヒカルが悲痛の声を上げる。メイの拳の威力に押されて、障壁が破られてヒカルが突き飛ばされる。
“You aren't supposed to waver. A delusion will be also in no solutions.(迷ってはいけません。迷いは何の解決にもにもなりません。)”
 倒されたヒカルにカイザーが呼びかける。
(でもだからって、メイを傷付けることなんて・・・!」
“It'll be withdrawn once. I'll consider a measure after it.(1度撤退しましょう。その後に対策を考えましょう。)”
(カイザー・・・うん・・・!)
 カイザーの指示にヒカルが小さく頷く。彼女はメイから徐々に離れようとする。
「逃げないで・・私は、今度こそ、この新しい力で、あなたを倒す!」
 メイが目を見開いて、ヒカルに向かって飛びかかる。
「グラビティバースト!」
 メイが魔力を圧力にして右手に集中させる。
(威力が桁外れに上がっている・・・!)
 ヒカルがメイの力の高まりを直感したと同時に、メイの放った打撃と衝撃に大きく吹き飛ばされた。
「うっ!」
 ヒカルが壁に強く叩きつけられて、うめいてふらつく。思うように動けなくなった彼女に、メイがゆっくりと近づいていく。
「少しは本気を出して、ヒカル・・それじゃ、あなたを倒しても私は納得できない・・・!」
 メイが低い声音で告げて、両手に魔力を集めていく。ヒカルは彼女と戦う迷いを振り切ることができない。
“Plasma lancer.”
 そこへ金色の光の矢が飛び込んできた。メイは後ろに動いて光の矢をかわす。
「ヒカルさん、大丈夫・・!?」
 ヒカルの前にバルディッシュを構えるアリシアが降り立った。
「アリシアちゃん・・・」
「この人、誰なの!?・・すごい魔力を備えているけど・・・!」
 弱い声を上げるヒカルに、アリシアがメイに目を向けたまま声をかける。
「邪魔者が出てくるなんて・・結界を突破してきたのね・・・!」
 メイがアリシアに目を向けて呟く。
「私が足止めするから、ヒカルさんは逃げて・・・!」
「でもアリシアちゃん、今のメイは魔力が強くなってる!アリシアちゃんだけじゃ・・!」
 呼びかけるアリシアにヒカルが声を上げる。
「アリシアだけではないぞ・・・!」
 さらにブレイドが飛び込み、トランザムを振り下ろしてきた。メイが魔力を込めた拳を繰り出して、トランザムとぶつけ合う。
 攻撃の衝突の相殺による衝撃で、メイとブレイドがはじき飛ばされる。
「くっ・・とんでもない魔力と攻撃力だ・・・!」
 ブレイドもメイの強さを痛感して毒づく。
「大丈夫、ブレイド・・・!?」
「あぁ、オレは平気だ・・だが、ヤツは・・・!」
 駆け寄ってきたアリシアに答えて、ブレイドがメイへの警戒を強める。
“She's harboring a device in the interior of the body, too. A drive charge system is be also equipped with now.(彼女も体内にデバイスを宿しています。さらに今はドライブチャージシステムも搭載されています。)”
 カイザーがブレイドたちに説明をする。
「ヒカルと同じ!?・・もう1人のドライブウォーリアー・・!?」
「しかも、ドライブチャージシステムまで組み込んでいる・・・!」
 ブレイドとアリシアが驚きを感じて、メイを注視する。彼女から出ている魔力を、2人は感じ取っていた。
「また邪魔者が・・それも、結界を突破する魔導師や騎士・・・!」
 メイもアリシアとブレイドの登場にいら立ちを募らせる。
“Even if Tsutomu gets nervous by a partner, 3 people are disadvantageous. I recommend to withdraw and regain the balance once.(3人が相手では、たとえ力が上がっていても不利です。1度撤退して体勢を立て直すことを勧めます。)”
 ハデスがメイに向けて助言を送る。
(ヒカルと1対1で戦って倒さなければ意味がない・・邪魔者がいるなら、引き上げるしかない・・・!)
 ハデスの言葉を聞き入れて、メイが上昇する。
「今回は挨拶としておくよ、ヒカル・・今度は邪魔の入らないようにするから・・・!」
 メイは言いかけると、転移を行ってヒカルたちの前から姿を消した。
「メイ・・私たち、また・・あの戦いを繰り返すっていうの・・・!?」
 メイが再び現れたことと戦うことに、ヒカルは絶望感を募らせていた。
「ヒカル・・・」
 震えている彼女にブレイドも深刻さを感じていた。
「ロードサイドに戻る・・ヒカル、一緒に来てくれ・・・」
 ブレイドが言いかけて、アリシアが頷く。ヒカルは震えてばかりで、彼の言葉が耳に入っていない。
「戻って休もう、ヒカルさん・・」
 アリシアがヒカルに近づいて、手を取ってブレイドに視線を戻す。彼らは転移で1度ロードサイド本部に戻った。

 ロードサイド本部に戻ったブレイドたち。彼らをミュウとウィッシュが迎えた。
「みんな、大丈夫?ケガはないようね・・」
「ケガはないが、ヒカルが・・・」
 ミュウの声に答えて、ブレイドがヒカルに目を向ける。ヒカルはメイのことを考えて、困惑を隠せなくなっている。
「医務室で休ませる。しばらくは様子を見て、落ち着かせないと・・」
 ブレイドがヒカルに休息を取らせることを提案する。
「そうね。私がそばについている。ウィッシュはウィザードと一緒に警戒に当たって。」
「分かりました、ミュウさん・・・!」
 ミュウも呼びかけて、ウィッシュが答える。ミュウがヒカルを連れて医務室に向かった。
(ヒカル・・・)
 ヒカルへの心配を募らせるアリシア。
(あのメイという人と、辛いことが・・・)
 メイのことも考えていくアリシアが、辛さと不安を感じていた。


次回予告

メイは生きていた。
ヴァンフォードと並ぶ大敵として現れたメイに、ヒカルの心は揺れる。
終わりの見えない2人の宿命。
苦悩を深めるヒカルに対し、タクミとアリシアたちは・・・

次回・「迷いと怒り」

立ち上がる強さを今こそ・・・

 

 

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