Drive Warrior Gears

Episode11「魔の覇者の降臨」

 

 

 ヴァンフォードの作戦が進行している現状に、ブレイドたちもヒカルも気が気でなくなっていた。徐々に体力と魔力は回復に向かっているが、心は逆に揺さぶられていた。
 気持ちの整理がつかないまま、ヒカルは1度ガイとリンのレストランに戻ってきた。
「おかえり、ヒカルちゃん・・あれ?何だか元気が・・」
 リンが声をかけるが、ヒカルの様子を気にして当惑を覚える。
「リンさん、大丈夫ですよ。私は今日も元気です。」
 ヒカルが笑顔を見せてリンに答える。それが作り笑顔であると、彼女はリンに気付かれなかった。
(ガイさんやリンさん、タクミには心配させないようにしないと・・)
 ヒカルが心の中で自分に言い聞かせる。
(ヴァンフォードの事件になんて巻き込めない・・私やカイザーのことも、知られるわけにいかない・・)
“I also pay careful attention about the thing of you or you.(私もあなたやみなさんのことに関しては細心の注意を払います。)”
 苦悩していくヒカルにカイザーも助言する。
(ありがとう、カイザー・・本当に気を付けないと・・・)
 カイザーに感謝をしてから、ヒカルは自分の部屋に戻っていく。その彼女の様子をタクミが気にしていた。

 ガイのレストランに戻っていったヒカルのことを、アリシアは気になっていた。
「そんなに心配するんだったら、追いかけていったらどうなんだい?」
 アリシアの様子に対して、ウィザードがため息をついてきた。
「ウィザード・・でも、ヒカルのところへ勝手に押しかけるのは・・」
「大丈夫だって。ヒカルならそんなこと気にしないって。」
「でもやっぱりいきなりは・・・」
「もう~!じれったいな~!」
 消極的なアリシアにウィザードが不満を膨らませる。
「無理やり押しかけたら悪いよ・・アリシアさんにもヒカルさんにも、向こうのみなさんにも・・」
 するとウィッシュがやってきて、ウィザードに声をかけてきた。
「けど、そうしねぇといつまでたっても・・」
「だからって、迷惑をかけていいわけじゃないよ・・・」
 ウィザードが文句を言うが、ウィッシュは引き下がらない。するとウィザードが呆れてため息をついてきた。
「ウィッシュったら、どっかでガンコなとこあるよなぁ・・」
 ウィザードは頭を抱えて、1人部屋を後にした。
「ありがとう、ウィッシュ・・・」
「ううん。私は別に・・今はちょっとそっとしておいた方がいいと思っただけ・・」
 お礼を言うアリシアにウィッシュが微笑む。
「アリシアさんもそう思っているのですよね・・?」
「うん・・ヒカルもまだ、気持ちの整理がついていないみたいだから・・・」
 ウィッシュに言われてアリシアが自分の気持ちを正直に告げる。
「ちょっと間を置いてからだね、ヒカルさんのところへは・・」
「うん・・」
 アリシアの声にウィッシュが頷く。2人はヒカルのことを心配しながらも、信じて待つことを心に決めていた。

 レストランや武藤家での日常を過ごして、気持ちを落ち着かせようとするヒカル。しかし考えを巡らせてばかりで、彼女は気が休まらなくなっていた。
「ハァ・・お出かけでもしてみようかな・・」
 気晴らしの目的で、ヒカルは1人外に出かけようとした。
「おい、ヒカル。」
 玄関に来たところで、タクミがヒカルに声をかけてきた。
「タクミ、どうしたの?」
「いや、どっか出かけるなら、オレも一緒に行くよ。オレも散歩に出たいなって思ってたとこだったから・・」
 問いかけるヒカルにタクミが気さくに言いかけてきた。
「何でわざわざ一緒に行かなくちゃいけないわけ?他の誰かを誘ったら?私は1人で気晴らしをしに行くんだから。」
「いやぁ、他のヤツと都合がつかなくてな・・」
 気が滅入るヒカルに、タクミが気さくに振る舞う。彼がごまかしを見せているのが見え見えで、ヒカルは参ってため息をついた。
「とにかく私は私で出かけるから。タクミはついてこないで。」
 ヒカルはタクミに注意をしてから、改めて外に出た。
“Is it what does not need to go together?I think that it is taking a change of air even when it is together with him.(一緒に行かなくてよろしいのでしょうか?彼と一緒でも気分転換になると思いますが。)”
(今は私たちだけでいいんだから。そのほうが気が楽。)
 言葉を投げかけてきたカイザーにも、ヒカルは突っ張った素振りを取っていた。
(それに、タクミやみんなを、私たちの戦いに巻き込むわけにいかないから・・・)
“Although I also understand it...(それは私も分かりますが・・・)”
 タクミたちを気遣うヒカルに、カイザーも言葉を詰まらせる。
(今の気晴らしは1人のほうがいい・・もうちょっと落ち着いたら、誰かと一緒でも悪くないかなと思う・・)
 ヒロミが笑みを取り戻して言いかける。彼女の脳裏にガイやリン、タクミたちの顔がよぎっていた。
“Someone is following back.(誰かが後ろをついてきています。)”
 そこへカイザーが呼びかけてきた。ヒカルが緊張を覚えて足を止めて、後ろに注意を向けて、再びゆっくりと歩き出す。
 そして小道から大通りの歩道に来たところで、ヒカルが一気に振り返った。そこにいたのはタクミだった。
「タ、タクミ・・!?」
 ヒカルがタクミに驚いて、思わず後ずさりする。
「何だよ、急に・・オレのほうがビックリしたっての・・・!」
 タクミも驚きを見せて呼吸を乱す。
「な、何でタクミがいるのよ・・!?」
「たまたまだ。たまたま行く方向が同じだっただけだって・・」
 睨みつけてくるヒカルにタクミが肩を落としながら答える。
「ハァ・・もうタクミったら・・・」
“It acts here together.(ここは一緒に行動するしかなさそうですね。)”
 大きくため息をつくヒカルに、カイザーが呼びかける。
「もう、勝手にしてよね、タクミ・・」
 タクミに呆れ果てて、ヒカルはため息をついてから歩き出した。彼女に対してタクミが笑みをこぼした。

 タクミと一緒に街に繰り出すことになったヒカル。ヒカルはタクミがそばにいることを気にすることなく、気分転換を実感していた。
(タクミに私たちのことを明かせないから、1人で行こうとしたんだけど・・)
“Magic powerful for the moment is not perceived.Probably, it will be satisfactory even if still together.(今のところ強い魔力は感知されません。まだ一緒でも問題ないでしょう。)”
 心の中でため息をつくヒカルに、カイザーが助言をする。
“Since it tells about immediately after something is.(何かありましたらすぐに知らせますので。)”
(ありがとう、カイザー。ホントに助かるよ・・)
 支えてくれるカイザーにヒカルが感謝する。彼女とタクミは街の広場にやってきていた。
「みんな気分がよさそうだね・・街はいつ来てもにぎわってる・・」
 ヒカルが口にした言葉に、タクミが疑問符を浮かべる。
「こんなにぎわいがいつまでも続いていったら・・」
「ヒカル・・・」
 物思いにふけっているヒカルを見て、タクミが戸惑いを覚える。ヒカルが何か悩みを抱えているものと、タクミは考えていた。
(私が・・私たちが守らないといけないってことだね・・・)
“Occasionally not holding only by oneself is also important.Even though it hides the thing of me or magic, I regard him and the others as satisfactory as for a reliance.(ですが時には、自分たちだけで抱え込まないことも大切です。私や魔法のことを隠すにしても、彼や他の方を頼りにしても問題ないと思います。)”
 心の中で呟くヒカルに、カイザーが助言を投げかける。
(カイザー・・そうかもしれないね・・この際だから、タクミとも・・)
 ヒカルが落ち着きを取り戻して、タクミに目を向けた。
「ここまで来たんだから、いろいろ見て回ることにする。」
 ヒカルがタクミに笑みを見せると、軽やかに歩き出した。
「ヒカル、ちょっと待てって・・」
 タクミが軽い足取りを見せるヒカルを、慌てて追いかけていった。

 人が行き交う街中を歩く1人の青年。他の人々とは違う格好をした青年は、淡々とした様子で歩いていく。
 青年は街を見回して笑みをこぼしていた。
「賑やかだね・・みんな楽しそう・・・」
 街の様子を楽しむ青年。しかしすぐに彼の顔から笑みが消える。
「賑やかだけど・・騒々しくもある・・・」
 青年は街の中に潜んでいる闇に疑念を抱いていた。

 タクミと一緒に街を巡ることにしたヒカル。軽い足取りを見せるヒカルを、タクミは慌てて追いかけていく。
「おい・・勝手に動き回ると迷子になっちまうぞ・・」
 タクミが呼びかけるが、ヒカルは明るく振る舞うばかりだった。
「もう、さっきは落ち込んでいたってのに、すっかり元気取り戻して・・」
 ヒカルの様子を見て呆れるも、タクミは安心の笑みをこぼした。
 それからヒカルはショッピングモールに来て、そこのお店を回っていった。
「これはよさそうだけど高そう・・こっちはちょっと派手かな・・」
 ヒカルが服を比べて、選ぶのに悩んでいる。それを見てタクミがまた苦笑をこぼす。
「女の買い物は長いとはよく言ったもんだ・・」
 ヒカルの様子を見てタクミが呟く。その彼にヒカルが2着の服を持って駆け寄ってきた。
「タクミはどっちがいいと思う?」
「オレに聞くなって。お前が着るのをオレが選んで納得できるもんじゃないだろ・・」
 聞いてくるヒカルにタクミが呆れる。
「それもそうだよね・・アハハハ・・・」
 ヒカルが苦笑いを浮かべて、改めて選びなおしに戻った。
“Is a show of courage shown him?(彼に空元気を見せていますね。)”
(そう感じるかな?シャキッとしてると思っても、そうでないみたいだね・・)
 カイザーから呼びかけられて、ヒカルが心の中で苦笑いをこぼした。
(でも、今の私にはこれが精一杯なのかも・・気にしないようにするのがいいかも・・)
 さらに苦笑して、ヒカルは街中でのひと時を楽しもうとしていた。
 そしてヒカルとタクミは、レストランで小休止を取ることにした。
「ふぅ・・久しぶりにこんなに街の中を回ったかな・・」
 ヒカルがオレンジジュースを口にして、安心を見せる。
「何だよ、ヒカル・・外へはいつもどこに行ってるんだよ・・」
「えっ!?・・それは・・」
 タクミに問いかけられて、ヒカルが動揺を見せる。魔法やロードサイド、ヴァンフォードのことを話せるはずもなかった。
「ち、ちょっとね・・エヘヘヘ・・・」
 ヒカルが照れ笑いを見せてごまかそうとするが、タクミの疑いの眼差しは消えない。
「ちょっと寄り道とかしててね・・」
 あくまでごまかそうとするヒカルに、タクミが呆れてため息をつく。
「でもこれからは、街でたくさん寄り道できるかな・・」
「ヒカル、調子いいんだから・・」
 笑顔を見せるヒカルに、タクミが苦笑いを浮かべた。
「そういえばヒカル、お前のことをあんまり知らなかったな・・」
 タクミが話題を変えると、ヒカルが表情を曇らせた。彼女は昔に自分が体験したことを思い出して、辛さを感じていた。
「聞いてもいいか、ヒカルが前、どんなことしてたのか・・」
「それは・・・」
 話を聞いてくるタクミに、ヒカルは答えられなかった。彼女自身にとってできれば思い出したくない、誰かに言いたくない過去だった。
「ハァ・・言いたくないことみたいだな・・なら言わなくていい・・」
「タクミ・・ゴメン・・・」
 無理に聞こうとしないタクミに、ヒカルが肩を落として謝る。
「別に何も悪くないじゃないか、ヒカルは・・」
「そ、そうだね・・アハハ・・」
 タクミに言われるばかりで、ヒカルは苦笑いを浮かべるばかりになっていた。
(ホント・・できることなら、このまま私の中だけで封じ込めておきたいこと・・メイ・・・)
 ヒカルが心の中で辛い過去のことを思い返していた。
 神凪(かんなぎ)メイ。ヒカルの幼馴染みだった少女である。メイはヒカルのカイザーと同じアームドデバイス「ハデス」を体内に入れたドライブウォーリアー「プルート」でもあった。
 ドライブウォーリアーの選別のため、ヒカルとメイは戦う宿命を背負わされた。その戦いの中でメイは命を落とした。
 親友や家族、大切な人たちを失った悲劇は、ヒカルにとって2度と体感したくないこととなっていた。
(もう私の大切な人を失いたくない・・みんなのことを守る・・でも、だから、みんなのことを巻き込みたくない・・・)
“Neither that tragedy nor your also becoming hot nor I want to repeat.(あの悲劇も、そのためにあなたが辛くなるのも、私も繰り返したくありません。)”
 心の中で願いを募らせるヒカルに、カイザーも呼びかけていく。
 もしも自分のことを知られれば、タクミたちを危険に巻き込みかねない。ヒカルはそれを1番の不安としていた。
「それじゃ、そろそろ帰ろうかな。楽しい時間を過ごせたし。」
 ヒカルがジュースを飲みほして席を立つ。
「ありがとうね、タクミ。ホントに。」
「オレは進行方向が一緒だったってだけだから・・」
 お礼を言うヒカルにタクミが気さくに答える。彼も席を立って、ヒカルと一緒にレストランを後にした。

 ヴァンフォードの動きを警戒して、ロードサイドは捜査を進めていた。しかしブレイドたちは現在のガリューたちの動向をうかがい知ることができないでいた。
「見つからない・・これだけ探しても手がかり1つ見つからないなんて・・」
「フレアクロスで、ヤツらは膨大な魔力の消耗をしたようだった・・まだ回復に至っていなくて、動けない可能性もあるが・・」
 アリシアとブレイドたちが言葉を交わしていく。
「でも私たちに見つからないように動いている可能性も・・」
「このまま警戒を続けよう。ただの徒労に終わるなら、それに越したことはない・・」
 不安を感じていくアリシアにブレイドが呼びかける。アリシアが頷いて、ヴァンフォードの捜索と警戒を続けた。
(ヒカル・・大丈夫かな・・・落ち着きを取り戻せているかな・・・)
“Let's trust her now.Composure could be regained when it has returned.(今は彼女を信じましょう。戻ってきたときには落ち着きを取り戻せていることでしょう。)”
 ヒカルの心配をするアリシアに、バルディッシュが励ましの言葉をかける。
「ありがとう、バルディッシュ・・ごめんね、心配かけて・・」
 アリシアがバルディッシュに感謝して、気持ちを落ち着けていく。
(ヒカル・・今は休んでいて・・・私もしっかりするから・・・)
 ヒカルのことを気にしながら、アリシアは捜索を続けるのだった。

 束の間の休息をタクミと一緒に過ごしたヒカル。2人は家に向かって歩いていた。
(これで気分一新でやれるかな。この日常を過ごすのも、ヴァンフォードと戦ってみんなを守るのも。)
 ヒカルが心の中で落ち着きを実感していた。
“The strong magic was sensed.(強い魔力を感知しました。)”
 そのとき、カイザーがヒカルに忠告を投げかけてきた。彼女が足を止めて、周囲に注意を向ける。
(強い魔力・・まさかヴァンフォード・・・!?)
 ヒカルが一気に緊張を膨らませていく。
(カイザー、その魔力はどこにいるの・・・!?)
“About 50 meters of front. I'm approaching this. The potential ability which has no things detected so far.(前方約50メートル。こちらに近づいてきます。今まで探知したことのない潜在能力です。)”
 ヒカルの問いかけにカイザーが答える。ヒカルも前から来る強い魔力を感じ取った。
(このままじゃ、タクミが巻き込まれる・・・!)
 タクミが襲撃に巻き込まれてしまうと危惧するヒカル。
「タクミ、ちょっと用事思い出したから・・!」
「えっ!?ちょっと、ヒカル!」
 駆け出したヒカルにタクミが声を上げる。ヒカルはタクミを巻き込まないようにと、わざと強い魔力のほうに向かっていく。
(たとえ私が危険に巻き込まれることになっても、タクミや他の人を巻き添えにするよりは・・・!)
 魔力が向かってくる方を目指すヒカル。彼女は強く感じていく魔力に緊張を募らせていく。
 そのとき、ヒカルはさらに違和感を覚えて目を見開く。
“A boundary fence was spread.(結界が張られました。)”
 カイザーがヒカルに助言する。
(その魔力の持ち主の仕業・・!?)
“Probably.(おそらく。)”
 ヒカルが投げかけた疑問にカイザーが答える。
「私にも分かる・・こっちに近づいてきてる・・・!」
 ヒカルがさらに緊張を膨らませていく。強い魔力は彼女のいる方へ向かっていた。
 そしてヒカルの前に、1人の青年が現れた。
「強い力を持つ者だけを閉じ込める結界を張った・・お前には強い潜在能力が備わっているようだ・・」
 青年が表情を変えることなく、ヒカルに声をかけてきた。
「あなたは誰?・・どうして、そんなことを聞くの・・・?」
 ヒカルが警戒を強めたまま、青年に問いかける。
「私には分かる。お前の体の中に、人工知能を有したデバイスが組み込まれていることを。それによる強い力と命を宿していることを・・」
 青年が表情を変えずにヒカルに言いかける。
「強い力を備えているなら、力を貸してほしい・・世界のために・・・」
 青年がヒカルに向けて手を差し伸べてきた。
「あなた、何者・・・!?」
「私の名はコスモ・・あらゆる世界を正しい形に導く存在だ・・」
 ヒカルからの問いかけに青年、コスモが名乗る。
「コスモ・・もしかしてあなた、ヴァンフォード・・・!?」
「ヴァンフォード・・私が束ねるものの総称・・・」
 緊迫を募らせるヒカルにコスモが呟く。彼はヴァンフォードを束ねるマスター・コスモだった。
「私に力を貸す者は、私をマスターと呼んでいる・・お前も私に力を貸してもらいたい・・私が世界を正しく導くために・・・」
「それって、世界を支配しようっていうことでしょ!?そんなこと、させるわけにいかない!」
 手を差し伸べるコスモに言い返して、ヒカルが意識を集中する。
“Please be careful. While I sensed, he keeps the power which is most.(気を付けてください。彼は私が感知した中で1番の力を秘めています。)”
 その彼女にカイザーが注意を促す。
“It's too dangerous to keep occupied only by you. I escape from a boundary fence now, and it should join everyone.(あなただけで相手をするのは危険すぎます。今は結界から脱出して、みなさんと合流すべきです。)”
(でも、このままアイツを野放しにするのは・・・!)
“And there is a person shut in the boundary fence besides us.(それに私たち以外に、結界の中に閉じ込められている人がいます。)”
(えっ・!?)
 カイザーが投げかけた言葉に、ヒカルが驚きを覚える。彼女はたまらず辺りに注意を傾けた。
「ヒカル!」
 聞き覚えのある声を耳にして、ヒカルがさらに驚愕を覚える。彼女の後ろに現れたのはタクミだった。
(タクミ・・何で・・・!?)
 タクミが来たことにヒカルが驚きを隠せなくなる。
“When a boundary fence was spread, it has been involved and shut.(結界が張られたとき、巻き込まれて閉じ込められてしまったのでしょう。)”
 カイザーがヒカルに説明をする。
(こんな状況でタクミがそばに・・・これじゃ、魔法が使えない・・・!)
 ヒカルがさらなる焦りを感じていく。タクミの前で魔力を使うことはできないと、彼女は思っていた。
「何がどうなってるんだよ・・街の様子がおかしくなって、みんながいなくなって・・・!」
 タクミが非現実的な出来事に困惑を隠せなくなっている。
「アンタ、いったい何なんだ・・アンタ、何か知らないのか・・・!?」
 タクミがコスモに向かって声をかける。ところがコスモはタクミに目を向けもしない。
(このままじゃタクミが危ない・・ここから逃がさないと・・・!)
 ヒカルはタクミをコスモから逃がすことを考える
「タクミ、逃げよう!」
 ヒカルがタクミの腕をつかんで、コスモの前から逃げ出す。
「おい、ヒカル、いきなり何を・・!?」
「何だかイヤな感じがする・・逃げたほうがいいよ!」
 声を荒げるタクミにヒカルが呼びかける。詳しく話せない歯がゆさも、彼女は噛みしめていた。
「アイツが何か知ってるかもしれないじゃないか!ちゃんと聞かないと・・!」
 タクミが呼びかけてくるが、ヒカルは聞かずにひたすらコスモから逃げていく。
(もうちょっとで隠れられる場所がある・・そこまで行けば、私がアイツを引き付けて、タクミから遠ざければ・・・!)
 裏路地の影に1度隠れようとしたヒカル。
「私を振り切ることは不可能だ・・」
 そこへ声がかかり、ヒカルが緊迫を募らせる。彼女とタクミの前にコスモが現れた。
「私についてきてもらおう・・世界のために・・」
 手を差し伸べてくるコスモから、ヒカルがタクミとともに後ずさる。
(このままじゃやられる・・タクミまで危ないことに・・・!)
 絶体絶命を痛感して、ヒカルが困惑する。そのとき、タクミがヒカルの前に出て、コスモに立ちはだかった。
「アンタが何者で、何を考えてるのか知らないけど、ヒカルに軽々しく手を出していいわけじゃないぞ!」
「タクミ・・・!」
 コスモに言い放つタクミに、ヒカルが息をのむ。彼女はコスモを刺激してしまうと危機感を覚えていた。
「世界のために彼女が必要なのだ・・邪魔をしなければ何もしない・・」
「それがダメだって言ってるんだ!ヒカルから離れろ!」
 手を差し伸べてくるコスモに、タクミが言い放つ。
「ここまで邪魔をしようとしているのだ・・滅ぼされてもやむを得ないな・・・」
 コスモが肩を落としてから、伸ばしているから光を発して集めていく。
(このままじゃタクミがやられる・・・そうなるぐらいなら・・・!)
「カイザー!」
 タクミの危機を見かねたヒカルがカイザーを起動させた。彼女がバリアジャケットを身にまとい、コスモの前に立った。
「えっ!?・・・ヒカル・・・!?」
 ヒカルが見せた姿にタクミが驚きを見せる。彼の前でヒカルは戦士としての姿を見せた。
「タクミには手を出さないで・・でないと私、あなたを許さないから・・・!」
 ヒカルがコスモに向かって鋭く言いかける。
「その力・・やはり世界のために必要なものだった・・・」
 ドライブウォーリアーとしての姿を見せたヒカルを見て、コスモが喜びを感じていく。
「すぐに結界を解いて!タクミを解放して!」
 ヒカルはコスモに言い放つと、タクミを抱えて駆け出していった。
「ヒカル、何がどうなってるんだ!?その格好は何!?コスプレ!?」
「今は黙ってて、タクミ!舌噛むよ!」
 疑問を投げかけるタクミにヒカルが呼びかける。
(一気にダッシュして、あの人を振り切る・・タクミが耐えられる範囲で・・・!)
 ヒカルが集中力を高めて加減を調整して加速した。
(は、速い!?)
 あまりに人間離れしているスピードに、タクミは驚くばかりになっていた。
 コスモからかなりの距離を離したと思って、ヒカルは通りの十字路に着地して足を止めた。
「ここまで来ればひと安心かな・・」
 ヒカルは周囲に注意を巡らせてから、安心を浮かべる。
「ふぅ・・・ヒカル、もういいだろ・・説明してくれよ・・!」
 タクミが深呼吸をしてから、改めてヒカルに問いかけてきた。
「うん・・聞いても信じてもらえないかもしれないし、チンプンカンプンになると思うけど・・・」
 ヒカルがタクミに自分たちのことを話すことを心に決めた。
「この結界にいる限り、お前たちに逃げ場はない・・」
 そのとき、ヒカルとタクミの前にコスモが姿を現した。
「結界の中にいる私たちを感知して、ここまで・・・!」
“Moreover I'm changing correctly readily.(しかも軽々と正確に転移してきています。)”
 緊迫を募らせるヒカルに、カイザーが助言を投げかける。
「一緒に来てもらおう・・世界のためだ・・」
「それはどんな世界のため!?・・・アンタのいいようにするってこと・・・!?」
 言いかけるコスモにヒカルが問い詰める。
「私ではない・・世界のあり方だ・・世界のために、私は行動する・・・」
「そういう考え方なら、私はあなたの言うことには絶対に従わない・・・!」
 言いかけるコスモに対し、ヒカルは敵対の意思を示す。
「結界を解いて、タクミを解放して!」
 タクミを助けるため、ヒカルはコスモに立ち向かおうとしていた。


次回予告

突如ヒカルたちの前に現れたマスター・コスモ。
強固な結界に囚われたヒカルが、タクミとともに打開の糸口を探る。
ベールを脱ぐコスモの力と、魔法の戦いを垣間見るタクミ。
錯綜の中で、ヒカルは・・・

次回・「力と心」

脅威の力を切り抜ける術は・・・?

 

 

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