Drive Warrior Gears

Episode10「悪夢の予兆」

 

 

 目的の場所にたどり着いたローザ。彼女はそこで水晶を発見した。
 手にした水晶から、ローザは強い魔力を感じていた。
「ここに他の人間や動物はいない・・間違いない・・これが、私たちの目的・・・!」
 確信を抱いたローザが水晶を運び出すことを決めた。
「ロードサイドが近づいてきている・・早く出ないと・・・!」
 ヒカルとアリシアの接近に気付いていたローザは、急いで部屋を出て洞窟を抜けていく。外へ出ようとしたところで、彼女は2人の姿を目にした。
 ローザはとっさに魔力を抑え込んで、岩場の影に隠れた。
(あの子たちにコレの存在を絶対に見られるわけにはいかない・・見られたら必ず奪いに来る・・・!)
 ヒカルたちへの警戒を強めていくローザ。彼女は2人に気付かれないように、洞窟やフレアクロスから脱出しようとしていた。
(ガリューはまだブレイドと戦っているみたい・・私が何とかするしかない・・・)
 ヒカルとアリシアの注意が外れる一瞬の隙を見計らうのに、ローザは細心の注意を払った。

 トランザムと光の剣を手に、ブレイドとガリューは激闘を続けていた。2人とも決め手を欠いて、体力と魔力を消耗させていた。
(このままではアリシアたちを追いかけることができない・・それどころか力尽きて動けなくなる可能性も出てくる・・・!)
 焦りを感じながら、ブレイドが打開の糸口を探っていく。
(アレを使うわけにはいかない・・使えばおそらくガリューを倒せるだろう。最悪でも退けることはできる・・だが確実にまともに動けなくなって、アリシア達に追いつけなくなる・・・!)
 自分が秘めている能力の使用を躊躇するブレイド。ガリューの打倒かヒカルたちとの合流か、ブレイドは苦渋の選択を迫られていた。
(やはりまだ使えない・・オレがやるべきなのは、ガリューをアリシアたちのところへ行かせないようにすること・・・!)
 ブレイドは秘めている能力の使用を取りやめて、ガリューを倒してヒカルたちと合流することを心に決めた。
「お互い、長引くのをよく思っていないだろう?これでしまいとするか・・」
「フン。そうしようか・・幕引きは貴様の断末魔だ!」
 言いかけるブレイドにガリューが言い放つ。ブレイドの構えるトランザムがカートリッジを装填していく。
“Blitz rot.”
 ブレイドが素早くトランザムを振りかざす。この一閃に不意を突かれて、ガリューが目を見開く。
 とっさに2本の光の剣を交差して一閃を防ぐガリュー。一閃を防ぎ切った彼だが、光が消えた先にブレイドの姿はなかった。
「逃げた!?・・いや、まさかブレイドのヤツ・・・!」
 ガリューがブレイドの行方に対して憤りを覚える。
「行かせるか、このままローザのところに!」
 ガリューが怒号を放って、ブレイドを追って全速力で飛び出した。

 ローザの魔力を感知して駆けつけたヒカルとアリシア。しかし2人はまたもローザを見失ってしまった。
「ローザ、どこに行っちゃったんだろう・・・!?」
「この近くにいるのは間違いない・・・」
 ヒカルとアリシアが辺りの地上を見渡していく。
「私、下に降りてみる。アリシアちゃんは外をお願い・・」
 ヒカルの声にアリシアが頷く。ヒカルがゆっくりと地上に降りていく。
(あれ?あそこ、岩・・洞窟・・・!?)
 ヒカルが洞窟の入り口を発見して、目を凝らす。
“Heterogeneous magic is felt from that cave.An enemy's magic is differed from.(あの洞窟から異質の魔力を感じます。敵の魔力とは違います。)”
 カイザーがヒカルに助言を投げかける。
 ヒカルとアリシアに見つからないように魔力を抑え込んだローザだが、水晶から発せられる魔力までは抑え込むことはできなかった。
(アリシアちゃん、あの洞窟が怪しいから、ちょっと行ってみるね・・・!)
(分かった。気を付けて・・)
 歩き出していくヒカルが、アリシアと念話でやり取りする。ヒカルは洞窟へ慎重に進んでいく。
(誰かいるはず・・いきなり飛び出してきても対応できるようにしないと・・・!)
 ローザや他のヴァンフォードの奇襲に備えて、ヒカルはさらに前進していく。
(もうすぐ・・もうすぐで洞窟に・・・)
“It seems that there is no change in the magic felt.(感じられる魔力に変動はないようです。)”
 洞窟の出入り口に差し掛かるヒカルに、カイザーが助言を投げかける。
(もう少し・・もう少し・・・)
 ヒカルが洞窟の目前に踏み入ろうとしたときだった。
“Another magic is perceived.It is hiding in the point.(別の魔力を感知。その先に隠れています。)”
 そのとき、カイザーがローザの魔力を感知した。その言葉を受けて、ヒカルが身構えた。
(魔力の変化・・気付かれた・・!?)
 魔力を抑えて身を潜めていたローザも、ヒカルに気づかれたことに気付いた。彼女も隠れるのをやめて、ヒカルとアリシアを迎え撃とうとした。
 そのとき、ヒカルとローザの間に1つの爆発が起こった。突然のことにヒカルもローザも驚きを見せる。
「な、何っ!?」
「この魔力・・まさか・・・!?」
 声を荒げる2人の前に現れたのはラムだった。
「君は・・・!」
「ラム・・目が覚めたの・・・!?」
 ヒカルとローザの間で、ラムが閉ざしていた目を開いた。
「あたしが寝ている間に、とんでもないことになってるじゃない・・」
 ラムがローザとヒカルを見て不敵な笑みを浮かべてきた。
「さっさと行っちゃってよ。あたしはそういう地味な作業は好きじゃないんでね・・」
「とりあえず礼は言っておくわね。ここは任せるわ・・」
 言いかけるラムに返事をすると、ローザは水晶を持って移動していく。
「待って!」
 ヒカルがローザを追いかけようとするが、ラムが行く手をさえぎってきた。
「アンタはあたしの遊び相手だよ・・」
 ラムがヒカルを見つめて不敵な笑みを見せてくる。
「邪魔しないで・・あのままあの人を逃がすわけにはいかないんだよ!」
 ヒカルが言い放ち、ラムに飛びかかる。だがラムに軽々とかわされる。
「うっ!」
 ラムに膝蹴りを叩き込まれて、ヒカルがうめく。ラムが続けて打撃を繰り出すが、ヒカルは反応して素早くかわした。
「あ、危ないところだった・・・!」
“Please take care.Magic and a dormant faculty are improved markedly for some time.(気を付けてください。以前よりも魔力や潜在能力が格段に上がっています。)”
 安堵を見せるヒカルにカイザーが注意を投げかける。
「今までみたいになめた態度を取れると思わないことだね・・」
 ラムがヒカルに自信を込めた笑みを見せる。
「今のあたしの力、思う存分楽しみたいんだよね・・アンタで試してやるから・・・!」
 ラムが笑い声をあげながら、全身から魔力の光を放出していく。
“This is the power more than imagination.(これは想像以上の力です。)”
 カイザーもラムの魔力に脅威を感じていた。
「それじゃ行くよ・・あっさりやられないようにね!」
 ラムが一気にスピードを上げて突っ込んできた。ヒカルが突き飛ばされて、砂漠の砂地に叩きつけられた。

 突然のラムの登場と驚異的な魔力の上昇を、アリシアも目の当たりにしていた。
「まさか、こんなに力が上がるなんて・・・!」
 アリシアもラムの魔力に緊迫を隠せなくなっていた。
“Fighting only by her is dangerous.I have to support.(彼女だけで戦うのは危険です。援護しなくては。)”
「うん・・そうだね・・・」
 バルディッシュの助言を受けて、アリシアがヒカルのところへ行こうとした。
(待って、アリシアちゃん・・ローザを追いかけて・・・!)
 そのとき、ヒカルが念話でアリシアに呼びかけてきた。
(私は大丈夫・・あの子は、私だけで何とかするよ・・)
「でもヒカル、それじゃあなたが・・・!」
(今はあの人を捕まえないと・・あの人、何か持ってたみたいだし・・)
 心配を見せるアリシアに、ヒカルが微笑みかける。
「分かった・・でも危なくなったら、絶対にすぐに呼んで・・・」
 互いに頷き合うアリシアとヒカル。アリシアはローザを追って飛行していった。
「逃がすかよ・・」
 アリシアを追おうとしたラムだが、ヒカルに行く手を阻まれる。
「君の相手は私だよ!」
「そうか・・そんなにあたしのイライラをぶつけられたいんだね・・だったら望みどおりにしてやるよ!」
 構えるヒカルにラムが笑みを見せて飛びかかってきた。

 ラムに救われる形で、ローザは水晶を持って洞窟を脱出した。フレアクロスを移動する彼女を、アリシアが追走していた。
(どこまでもしつこいわね・・あの娘に止められているわね、ラム・・)
 ラムの状況をすぐに理解するローザ。
(このままじゃ追いつかれるわね・・ここは・・・!)
 ローザはアリシアを迎え撃ち、バインドを仕掛けていく。アリシアは彼女のバインドに気付いて、左右に動いていく。
(引っかかったら動きを止められて、確実に逃げられる・・下手をしたら、私が捕まってしまう・・・!)
 ローザが仕掛けてくるバインドを警戒して、アリシアが回避していく。
「待って!止まって!」
 アリシアがバルディッシュを掲げて、光の矢を連射する。ローザは持っている水晶を守りながら、光の矢を回避していく。
(このままじゃ追いつかれる・・バインドにも引っかからない・・・!)
 アリシアに捕まる危機感を募らせていく。
(コレのこともロードサイドに調べられることになってしまう・・それだけは絶対に・・・)
 水晶を守る事に焦りを感じていくローザ。アリシアが彼女を回り込もうと、横をすり抜けようとした。
 そのとき、ローザの持っていた水晶から突然光が発せられた。
「えっ!?」
 突然の閃光に驚くアリシア。水晶の光のまぶしさで、彼女は目がくらんでしまう。
「し、しまった・・・!」
 たまらず目を閉ざすアリシア。動きが止まった彼女を見て、ローザが笑みをこぼす。
「今よ・・!」
 ローザが怯んでいるアリシアの手足にリングバインドを仕掛けた。
「しまった・・・!」
 体の自由を奪われて動けなくなるアリシア。だがローザはアリシアを攻撃しようとせず、水晶を運び出すことを優先した。
 ローザはフロンティアに意識を傾ける。彼女は転移魔法の発動に成功して、フロンティアに移動していった。
 アリシアがバインドを打ち破ったときには、ローザの姿は消えていた。
「しまった・・逃げられた・・・」
 アリシアが辺りを見回して、気まずさを感じていく。
“I am sorry.I also missed the whereabouts.(申し訳ありません。私も行方を見失いました。)”
「ううん、バルディッシュは悪くない・・私が油断していたから・・・」
 謝罪を投げかけるバルディッシュにアリシアが言葉を返す。
「それよりも今は、ヒカルのところに戻らないと・・あの子、前に現れたときよりも全然強さが上がっている・・」
 アリシアはローザの追跡を中断して、ラムと戦っているヒカルの援護に戻ることにした。

 強大な魔力とパワーを発揮するラム。彼女の魔力を込めた打撃で、ヒカルが突き飛ばされていく。
「どうしたの!?こんなんじゃ面白くないじゃん!」
 ラムがヒカルを見下ろしてあざ笑ってくる。
「このままじゃやられる・・こうなったら、ドライブチャージで・・・!」
“If it is used abundantly, the burden on the body will become large.Please take care.(多用すると体への負担が大きくなります。気を付けてください。)”
 ドライブチャージを行おうとするヒカルに、カイザーが注意を促す。
「分かってる・・1発で決めたいところだよ・・・!」
 ヒカルがラムに視線を戻してから意識を集中していく。
(魔力を集中させて、右手に込める・・・!)
 ヒカルがドライブチャージを行って、右手に魔力を集中させていく。銃に弾丸を装てんするように。
「ちょっとは楽しめそうだね・・けど、勝つのはあたしだよ!」
 ラムが目を見開いてヒカルに飛びかかる。
「行くよ・・グランドスマッシャー・ドライブ!」
 ヒカルがラムに向けて、魔力を込めた拳を繰り出す。ラムも魔力を込めた拳を繰り出して、ヒカルの打撃とぶつけ合う。
 ラムの放った一撃は以前よりも格段に増していた。だがヒカルが繰り出した一撃はその威力を上回っていた。
「うっ!」
 ヒカルに競り負けてラムが突き飛ばされる。彼女は洞窟の入り口のそばの壁に叩きつけられる。
「や、やった・・うまく当たった・・・!」
 攻撃を当てられたことに安堵した瞬間、ヒカルが体に痛みを覚える。
(右腕に痛みが・・これが、ドライブチャージを本格的に使った反動・・・!?)
 押し寄せる腕の激痛に顔を歪めて、ヒカルが危機感を覚える。
“Is it OK?Is what it mourns over only an arm?(大丈夫ですか?痛むのは腕だけですか?)”
(カイザー・・うん、大丈夫・・)
 カイザーの心配の声にヒカルが答える。
“The reaction and burden which are placed on you yourself after all are heavy.Multiple use is a prohibited thing.(やはりあなた自身にかかる反動や負担は大きいです。多用は禁物です。)”
(うん・・これで終わって、連続して使うことがなくなればいいんだけど・・・)
 カイザーの注意を受けて、ヒカルはラムとの戦いが終わることを願った。
 そのとき、洞窟のあるほうで爆発が起こった。ラムが姿を現して、息を乱していた。
「そ、そんな・・・!?」
 ラムがまだ立っていたことにヒカルが驚く。
「これじゃ、また使うしか・・・!」
“Please wait.Her power has become weaker.(待ってください。彼女の力は弱まっています。)”
 身構えるヒカルにカイザーが助言する。ラムは疲れの色を隠せなくなっていた。
“It seems that a blow of your now was effective.It also seems that the power which she herself demonstrates has brought it the big burden.(あなたの今の一撃が効いたようです。それに、彼女自身が発揮している力が、大きな負担をもたらしているようでもあります。)”
 カイザーがラムの状態を把握して、ヒカルに告げる。
「か・・体が、思うように動かない・・どうなってんだよ・・・!?」
 ラムが息を乱したまま声を荒げる。ラムが発揮していた巨大な魔力を、攻撃力も巨大となるが、彼女にかかる反動も大きかった。
「今のあたしは、こんなことで・・・!」
 思うように体を動かせず、ラムがいら立ちを見せる。そこへアリシアが戻ってきて、ヒカルのそばに降りてきた。
「アリシアちゃん!・・あの人は・・!?」
「ゴメン・・逃げられてしまった・・・」
 声を上げるヒカルに、アリシアが困った顔を見せて答える。アリシアが未だに呼吸を乱しているラムに視線を移す。
「1発当てたけど、まだ力は残ってるみたい・・・!」
 ヒカルが状況を説明して、アリシアがさらに緊張を感じていく。
「ヒカル!アリシア!」
 そこへブレイドが駆けつけて、ヒカルたちの前に降りた。
「ブレイドさん・・すみません・・あの女の人に逃げられてしまいました・・・」
「オレもガリューを振り切ってきた。だがすぐにここに追いついてくるだろう・・・!」
 互いに事情を説明するヒカルとブレイド。そこへブレイドを追いかけてきたガリューが到着した。
「あれは、ラム・・あれほどまで魔力は高くなかったはず・・・!?」
 ガリューがラムを見て驚きを覚える。ここに来るまでに強い魔力を感じていたガリューだが、それがラムのものだとは思ってなかった。
「ここは引き下がったほうがよさそうだな・・」
 ブレイドがガリューとラムを見てから、ヒカルとアリシアに呼びかける。
“The strength of her now is an unknown and prediction does not often become me, either.It is better to have retreated and to elaborate a measure now.(彼女の今の強さは未知数で、私にも予測がままなりません。今は退却して、対策を練ったほうがいいです。)”
 カイザーもヒカルたちに助言を投げかける。
「うん、分かった・・ここから脱出しましょう!」
 ヒカルが呼びかけて、アリシア、ブレイドと一緒に意識を集中していく。
「このまま逃がすものか!」
 ガリューが光の剣を構えて、ヒカルたちに向かっていく。
「つながった!転送!」
 アリシアが転移魔法の発動に踏み切った。3人がガリューとラムの視界から消えた。
「しまった・・逃げられた・・・!」
「もう・・あたしはまだまだやれたのに~・・」
 毒づくガリューとふくれっ面を浮かべるラム。次の瞬間、ラムが全身に激痛を感じて、その場に倒れ込む。
「ラム!?」
 ガリューが駆け寄ってラムを支える。
「ラム、しっかりしろ!」
 ガリューが呼びかけるが、ラムは意識を取り戻さない。
「オレたちも戻らないといけないようだ・・・!」
 ガリューは毒づきながら、ラムを連れてフロンティアに戻っていった。

 ウィザードとウィッシュの誘導に導かれる形で、ヒカル、アリシア、ブレイドはロードサイド本部に戻ってきた。
「みなさん、無事だったのですね・・よかった・・・」
 ウィッシュがヒカルたちの無事に安心の笑みをこぼす。
「ふぅ・・危ないところだったよ・・」
 ヒカルが戻れたことに安心して、大きく肩を落とす。
「それで、ヴァンフォードはどうしている・・・!?」
「ヴァンフォードの2人もフレアクロスからいなくなったよ。こっちに気付いた様子はないみたい・・」
 ブレイドの問いかけにウィザードが状況を説明した。
「結局、痛み分けというところか・・」
「でもあの人、何か持っていった・・あれは何なのでしょう・・・?」
 ブレイドが呟いたところで、ヒカルがローザのことを思い出す。
「何か水晶のようなものを持っていた・・もしかして、ヴァンフォードが探していたのはあれじゃ・・」
「水晶・・フレアクロス・・・もしかして・・!?」
 ヒカルの話を聞いて、ミュウが血相を変えた。
「ミュウさん、知ってるのですか・・・!?」
「えぇ・・私の記憶と情報が確かなら、それは“プロシード”のはず・・」
 ヒカルの疑問にミュウが答える。
「プロシード・・魔力の源とされている古代資源か・・!」
「“ジュエルシード”以上の資質を備えたロストロギア・・フレアクロスに隠されていたなんて・・」
 ブレイドとアリシアがプロシードについて言いかける。
「えっと・・そのプロシードって、何なんですか・・・?」
 ヒカルがプロシードについて聞いてきた。するとミュウが彼女に説明をしてきた。
「プロシードは強い魔力を秘めたロストロギアで、魔力兵器の動力源などに使えるのよ。」
「でも秘められている魔力が強すぎて応用が利かなくて、暴走することが多かったんです・・それで危険物として処分されていって・・」
 ミュウに続いてウィッシュも説明する。
「それがあの世界にあって、ヴァンフォードに取られてしまった・・・」
「プロシードも魔法兵器などへの転用が不可能ではない。ましてヴァンフォードではなおさら・・」
 アリシアとブレイドがプロシードを奪われた現状に危機感を募らせる。
「何を仕掛けてくるか分からない・・本当に油断ならないぞ・・・」
「やばい・・マジで用心しないと・・」
 ブレイドが呟いて、ウィザードも焦りを感じていく。
「とにかく、あなたたちは体を休めていて。情報収集は私たちがやるから・・」
「ミュウ、すまない・・よろしく頼む・・」
 ヴァンフォードの情報収集に努めるミュウに、ブレイドが小さく頷いた。
「私も今のうちに休んでおかないと・・」
“The big burden is placed on you in drive charge.I also think that rest is required.(ドライブチャージであなたに大きな負担がかかっています。私も休息が必要と思います。)”
 呟きかけるヒカルにカイザーも助言を送る。
「1発でもあれだけの消耗と痛み・・早く体が慣れてくれると信じるしかないね・・」
“Multiple use is a prohibited thing till then.It is better to stop to necessary minimum like this time.(それまで多用は禁物です。今回のように必要最低限に留めたほうがいいです。)”
「うん・・分かってる・・・ありがとう、カイザー・・」
 励ましの言葉を送ってきたカイザーに、ヒカルが感謝を示した。

 フレアクロスからプロシードを持ち帰ったローザたち。強い魔力の源となるプロシードを見て、ローザは笑みをこぼしていた。
「これが、マスター・コスモが指し示したもの・・」
 ローザがプロシードを台座に置いて下がった。
「それにしても、ラムのあの力・・あそこまで、どうやって魔力を・・・!?」
 ローザがラムの魔力の高まりに疑問を感じていく。
「もしかしたら、ラムはマスター・コスモから力を与えられたのかもしれないぞ・・」
 彼女にガリューが声をかけてきた。
「ガリュー・・マスター・コスモが・・・!?」
「憶測でしかないが、あれほど力を引き上げられるのは、マスター・コスモしか考えられない・・復活させると同時に、潜在能力を引き出されたのだろう・・」
 驚きを見せるローザに、ガリューが語りかける。ローザも考えを巡らせてから頷く。
「それなら、マスター・コスモは私たちにも・・」
「しかしあの力、ラムの本来の力をも大きく超えていた・・あの力、強力だが負担も大きいという・・」
「強くなっても、私たちに大きな負担がかかって・・最悪、死に至る・・・」
 ガリューと言葉を交わしていくうち、ローザが不安を膨らませていく。
「マスター・コスモはラムのことを・・私たちのことを・・・」
「いや、ラムは力を求めていた。マスター・コスモは、この力の向上のリスクのことを話されたはずだ。それを承知で、ラムは・・」
「自分が壊れることになっても力を求める・・ラムらしいわね・・」
 ガリューの話を聞いて、ローザがラムに対して肩を落とす。
「全ては、マスター・コスモのお導きのままに・・」
「私たちがここにいるのも、マスター・コスモのため・・全てを捧げることも、マスターのためとなるなら・・」
 マスター・コスモへの忠誠を改めて誓い、ガリューとローザは次の戦いに備えることにした。
「2人仲良く、のらりくらりのおしゃべりかな?」
 そこへラムがやってきて、ローザたちに声をかけてきた。
「ラム・・体のほうはもういいのか・・?」
「さっきは痛くなってたけど、もう大丈夫。むしろ清々しい感じだよ。」
 ローザが声をかけると、ラムが答えて無邪気な笑みをこぼす。
「感謝します、マスター・コスモ。これだけの力があれば、どんな敵にも負けたりしない・・・!」
 ラムが力を手に入れた喜びを浮かべて、手を握りしめて力を実感していく。
「今度は耐えてやる・・アイツらをまとめて叩き潰してやるよ・・・」
 ラムが笑みを消して言いかけると、ローザとガリューの前から去っていった。
「すっかり自分の力に溺れているわね、ラム・・」
「自ら滅ぶことになろうとも、力の高まりを楽しむ・・もうラムは止まらない・・朽ち果てるまで突き進んでいく・・」
 ラムへの皮肉を口にするローザとガリュー。
「オレたちはどうするべきか・・・」
「ガリュー・・・?」
 呟きかけるガリューにローザが眉をひそめる。
「あの力を授かるかどうか・・時期を見計らうことにする・・」
「・・・私もそのときが来たら求めることにするわ・・今はそのときじゃない・・・」
 2人は力を引き上げてもらう時期が来るのを待つことにして、体を休めることにした。

 フロンティアの奥底、誰も踏み入ることを許されていない場所に、ひとつの影が存在していた。
「人材は増えている・・戦力も増えてきている・・だがまだ足りない・・」
 影が宇宙を見つめて呟きかける。影の手元にはプロシードがあった。
「私と意志を共有する絶対の右腕が必要・・だがあの3人でも、それだけの器には至らない・・」
 影が思考を巡らせて、求めるものを確かめていく。
「我々に敵対する者たちの中に、その存在がいるかもしれない・・確かめてもよさそうだ・・・」
 影はヴァンフォードに敵対するヒカルたちのことを考えていた。
「私が自ら、確かめることにしよう・・誰も私に逆らわせはしない・・・」
 影は呟くと、フ忽然とロンティアから姿を消した。影は転移を使って、地球へと向かった。ガリューたちに気付かれることなく。
「この宇宙は、全ての世界は、この私が必ず統括する・・」


次回予告

危機の予兆を抱えたままの束の間の休息。
揺れ動いているヒカルたちの心を支えるものとは?
世界に降り立った脅威の影。
その圧倒的な魔力が、ヒカルたちに襲い掛かる。

次回・「魔の覇者の降臨」

かつてない力が、世界を震撼させる・・・

 

 

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