Drive Warrior Gears

Episode09「灼熱の戦い」

 

 

 ヴァンフォードの動きと居場所を捉えるため、ウィザードとウィッシュはレーダーでの監視を続けていた。
「ハァ・・こういつも、レーダーとにらめっこしてると疲れちまうっての・・」
 椅子にもたれかかって愚痴をこぼすウィザード。そんな彼女のいる監視室にウィッシュが入ってきた。
「ウィザード・・代わるよ・・・」
「ありがと、ウィッシュ。ちょっと休むよ・・」
 ウィッシュが声をかけてきて、ウィザードが答えて席を立つ。
「しっかし、こうも何にもないと退屈で退屈で・・出てくるならさっさと出て来いっての!」
「でも、何もないなら何もないに越したことはないよ・・何事も平和が1番・・」
 不満を見せるウィザードにウィッシュが微笑みかける。
「けどこうも退屈だと、なぁ・・」
「ウィザードはアクティブなのが好きだね・・」
「まぁな・・退屈なのはどうにも気が滅入る・・」
「私は平和なのがいいな・・平穏、静か、落ち着き・・そういうのが・・」
「ウィッシュはそういうのが好きだよな。性格もそんなんだし。」
「うん・・そのほうが落ち着くよ・・」
 ウィザードとウィッシュが話をして気晴らしをしていく。
「それじゃあたしは休むぞ。ウィッシュ、後は頼むな。」
「うん・・」
 ウィザードが改めて声をかけて、ウィッシュが頷いた。ウィッシュがレーダーに目を向けて、ウィザードが監視室を出ようとした。
 そのとき、突然警報が鳴り響き、ウィザードとウィッシュが緊張を覚える。
「あ、あれ・・・!」
 ウィッシュが指し示したレーダーには、複数のエネルギーの反応が示されていた。
「噂をすればヴァンフォードかよ!」
 ウィザードが毒づいてから、ブレイドたちに知らせに飛び出した。

 ガイとリンの手伝いで、レストランでの仕事をしていたヒカル。カレン、リオ、アスカもここでのバイトをしていた。
「ヒカルさん、休憩入ってください。落ち着いてきましたので。」
「うん。分かったよ、カレンさん。」
 カレンの呼びかけに答えて、ヒカルが休憩に入った。
「ふぅ・・だんだんと慣れてきたね。ここの仕事も、ドライブチャージシステムも・・」
“A system and magic are adapting themselves completely.You yourself can treat well.(システムも魔力も完全に順応してきています。あなた自身もうまく扱えてきています。)”
 慣れを実感しているヒカルに、カイザーが呼びかけてくる。
“I also have full knowledge about new power,and support you.(私も新しい力について熟知していって、あなたをサポートしていきます。)”
(うん。ありがとう、カイザー。改めてよろしくね・・)
 助言を投げかけたカイザーに、ヒカルが感謝をした。
“ヒカルちゃん、今大丈夫!?”
 そのとき、ヒカルの心にミュウの念話が飛び込んできた。
(ミュウさん、どうしたんですか・・!?)
“ヴァンフォードが動き出したの。砂漠の世界“フレアクロス”にいるわ。”
(分かりました!すぐにそちらに向かいます!)
 ミュウとの念話を交わして、ヒカルはリンたちに気付かれないように店の裏口から外に飛び出した。彼女はミュウが行った転送で、1度ロードサイド本部に向かった。

 ロードサイド本部に来たヒカル。本部は慌ただしい様子になっていた。
「ヴァンフォードはどうしましたか!?」
 ヒカルが飛び込んできて、アリシアとミュウが振り返ってきた。
「ローザとガリューが動いている。ブレイドが先に向こうに行って、気づかれないように尾行しているわ。」
 ミュウがヒカルに説明して、モニターに目を向ける。モニターにはガリューとローザを監視しているブレイドの姿が映し出されていた。
「私も行きます。ヴァンフォードが何か悪いことをするのは分かってることだから・・」
 ヒカルがミュウに向けて呼びかけてきた。
「でも、ヴァンフォードの今回の目的が何か、まだはっきりとしていないのよ・・」
「あの人たちが悪いことをしてからじゃ遅いです。その前に止めないと・・!」
 ミュウが苦言を言うが、ヒカルは考えを変えない。
「仕方がないわね・・アリシア、ヒカルちゃんのブレーキになってあげて・・」
「ミュウ・・うん。私も行くよ・・」
 ミュウに呼びかけられて、アリシアが真剣な面持ちで頷く。
「ミュウさん・・アリシアちゃん・・ありがとうございます!」
 ヒカルがミュウとアリシアにお礼を言って頭を下げた。
「それじゃ行こう、アリシアちゃん。」
「うん・・」
 ヒカルとアリシアが頷き合って、転送機の台の上に乗る。ミュウがコンピューターを操作して、2人が転送される座標を設定した。
「2人とも気を付けて・・深追いは絶対にしないように・・」
「はい、ミュウさん・・」
 ミュウが投げかけた注意に、ヒカルが微笑んで頷いた。
「それじゃ行くわよ。」
 ミュウがヒカルとアリシアとフレアクロスに向けて転送した。
「ウィザード、ウィッシュ、3人とヴァンフォードの動きを見失わないで・・・!」
「分かってるって!」
「うん・・・!」
 ミュウの呼びかけに答えて、ウィザードとウィッシュがレーダーを注視していった。

 ミュウの転送でフレアクロスにやってきたヒカルとアリシア。2人は一面に広がる砂漠の上空で浮遊していた。
「ここが、フレアクロス・・・」
「ふえ~・・ムチャクチャ熱いよ~・・」
 アリシアが周りを見回す中、ヒカルが砂漠の暑さに悲鳴を上げていた。
“The temperature in this world is just over or below 60 degrees.It is not the environment where an ordinary human being can live.(この世界の気温は60度前後です。普通の人間が住める環境ではありません。)”
「ええっ!?そんなにムチャクチャなところ!?」
 カイザーからの説明を聞いて、ヒカルがさらに滅入ってしまう。
「早く見つけよう・・ヴァンフォードの動きと、ブレイドの居場所を・・」
「アリシアちゃん・・うん・・・!」
 アリシアの呼びかけに、ヒカルが暑さに耐えながら頷く。2人はブレイドとヴァンフォードを探して飛行していった。
“The reaction which advances to northeast previously in 50-km north-northeast is two.One reaction which pursues it feels.(北北東50キロ先に北東へ進行する反応が2つ。それを追跡する反応が1つ感じます。)”
 カイザーが魔力を探知してヒカルたちに伝える。
「もしかしてブレイドさん、ヴァンフォードに気づかれたんじゃ・・・!?」
「ううん。ブレイドはロードサイド1の強さを持っている。そんなことになっている可能性は低いよ・・」
 不安を口にするヒカルに、アリシアがブレイドへの信頼を口にする。彼女の言葉を聞いて、ヒカルが真剣な面持ちになって頷く。
「慎重に行こう・・私たちでヴァンフォードに気付かれたらいけないから・・」
「うん、そうだね・・慎重に、ね・・」
 アリシアの呼びかけに、ヒカルが緊張を浮かべて小さく頷いた。

 マスター・コスモの意思を受けて、ガリューとローザはフレアクロスを進行していた。
「この先にいるのね、強い魔力の持ち主が・・」
「マスター・コスモの仰せだ。この世界の、この辺りのどこかに潜んでいる。」
 ローザとガリューが呟きかけて、砂漠を見渡しながら進行していく。
「だがオレたちには何者なのかは分からない。人の姿かたちをしているとは限らない・・」
「何にしても、それを私たちが見つけ出す・・マスター・コスモと、ヴァンフォードのために・・」
 2人は使命を果たすために、魔力の捜索を続けていく。
 その2人の動きをブレイドは追跡していた。
(ガリュー・・ヤツら、どこまで移動するつもりだ?)
 ガリューとローザの動向に疑問を感じながらも、ブレイドは追跡を続ける。
(もしかしたら気付いて気付かぬふりをして、オレの出方をうかがっているのかもしれない。それも考慮して、追跡を続行しなければ・・)
 警戒心を強めたまま、ブレイドはガリューたちの追跡を続けた。
(ヤツら、ヴァンフォードは強い魔力の持ち主を狙っている・・自分たちの戦士の軍勢を築き上げるために・・このフレアクロスにも、その危機にさらされようとしている者がいる・・)
 ヴァンフォードの目的と行動を推測していくブレイド。
(ヤツらの思い通りにはさせない・・オレとガリューの悲劇を、繰り返させるわけにはいかない・・・!)
 改めて決意を固めて、ブレイドはガリューとローザを追っていった。

 フレアクロスの移動を続けていくローザとガリュー。ところが2人はふと動きを止めた。
「こっちに近づいてきている魔力があるわね・・」
「私たちがどこに行くのかを探っているのかしら・・?」
 ガリューとローザが感じ取っている魔力に疑問の感じていく。
「尾行されている・・可能性がないとは言えない・・むしろ高い・・・」
「私たちヴァンフォードを警戒している人が増えてきたということね・・・」
 2人が目つきを鋭くして、後ろに振り返った。彼らは近づいてくる魔力を迎え撃とうとした。
 ガリューとローザが見据えていたのは、ヒカルとアリシアだった。
「あの2人・・ここに来ていたのか・・・!」
「私たちのことをつけ回しているのかしらね・・」
 ガリューたちがヒカルたちを見据えて呟きかける。
「オレが2人を倒す。ローザは先に行け・・」
「1人でいいの?あの子、最初に会ったときとは全然違うのよ。」
「もう油断も手加減もしない・・それにオレたちの目的は、フレアクロスにいる強い魔力の持ち主を連れ出すことだ。」
「ガリュー・・すぐに来てよね・・・」
 ローザはガリューに言いかけると、先に進んでいった。

 ガリューとローザの居場所をつかんだヒカルとアリシア。徐々にガリューたちに接近していったヒカルたちだが、気付かれたことをカイザーとバルディッシュが察知する。
「どうしよう・・このままじゃブレイドまで気付かれちゃう・・・」
 ヒカルがガリューたちを見据えたまま、焦りを感じていく。
「こうなったら、私が注意を引き付けないと・・その間にアリシアちゃんはブレイドさんと合流して・・」
「でもヒカル、それじゃあなたが・・!」
「私がブレイドやアリシアちゃんみたいに、慎重に行動するのは難しいみたい・・だから私が2人の注意を引き付ける・・・」
 不安の声をかけるアリシアにヒカルが決心を告げる。
“It supports so that I may not fall into danger.(私が危険に陥らないようにサポートします。)”
 カイザーがヒカルとアリシアに助言を送る。
「ヒカル・・カイザー・・・」
 アリシアがヒカルたちに戸惑いを感じていく。
「それじゃ、私が先に飛び込んで、ヴァンフォードを引き付ける。その間にヒカルちゃんはブレイドと合流して。」
「ヒカル・・・!」
 ヒカルはアリシアに言うと、ガリューとローザに向かって飛び出していった。
「ヒカル・・・」
 ヒカルを見送るアリシアが戸惑いを感じていく。
“Let's carry out as she says now.Don't make her courage useless.(今は彼女の言う通りにしましょう。彼女の勇気を無駄にしてはいけません。)”
「バルディッシュ・・・うん・・そうだね・・・」
 バルディッシュに声をかけられて、アリシアが頷く。彼女はすぐにブレイドを見つけて降下していった。
「ブレイド・・」
「アリシア・・なぜここにいる・・・!?」
 アリシアとブレイドが小声で言葉を交わす。
「ブレイドのことが心配になってしまって・・・ごめんなさい・・・」
「アリシア・・・後でヒカルにも謝ってもらわないとな・・・」
 謝るアリシアに対して、ブレイドは肩を落としてため息をついた。
「ヒカルはローザを追っていったようだ・・アリシア、お前もヒカルを追え・・」
「ブレイド、あなたは・・・?」
「オレはガリューを足止めする。ヤツも好きにさせるわけにはいかない・・」
 ガリューはアリシアに答えて、ヒカルの前に立ちふさがっているガリューに目を向けた。

 ヒカルの行く手を阻むガリュー。ヒカルはローザを追いかけようと考えていた。
「このままじゃアイツが行っちゃう・・早く突破しないといけないのに・・・!」
 焦りを感じていくヒカルの前で、ガリューが2本の光の剣を手にしてきた。
「お前はここで足止めする・・今度こそお前を仕留めてやるぞ・・」
「そのお前をここで足止めして仕留めてやる・・・」
 言いかけるガリューの前に、ブレイドが姿を現した。
「ブレイドさん・・・!」
「ヤツはオレが相手をする。お前はアリシアと一緒にローザを追え・・」
 戸惑いを見せるヒカルに、ブレイドがガリューに目を向けたまま呼びかける。
「これが終わったら言うことがあるからな。必ず戻ってこい・・」
「ブレイドさん・・・は、はい・・」
 ブレイドから注意をされて、ヒカルが苦笑いを浮かべた。彼女はアリシアとローザを追って飛び出していった。
「逃がすか!」
「お前の相手はオレだ・・!」
 追おうとしたガリューの行く手を、トランザムを構えたブレイドが阻んできた。
「まぁいい・・いずれ貴様とは決着を付けようと思っていた。丁度いい機会だ・・」
「お前を拘束して、ヴァンフォードの全てを話してもらうぞ、ガリュー・・・!」
 不敵な笑みを見せてくるガリューに、ブレイドが鋭い視線を向けていた。

 先行したローザを追っていくヒカルとアリシア。2人に気付いていたローザが、手に魔力の光を集めた。
「これ以上つけられるわけにはいかないのよ・・」
 ローザが手を振りかざして、魔力の弾を連射する。ヒカルとアリシアが横に動いて、魔力の弾をかわす。
「また戻ってくるよ・・・!」
 アリシアがヒカルに向けて呼びかける。ローザの放った魔力の弾が、反転して再び2人に向かってきた。
「誘導弾・・全て破壊しないと・・・!」
 声を上げるヒカルが、視線を魔力の弾からローザに移した。
「プラズマランサー!」
 アリシアが金色の光の矢を放って、ローザの光の弾にぶつけて相殺させる。
“It comes also from width.(横からも来ます。)”
 バルディッシュがアリシアに呼びかける。ローザの放っていた魔力の弾が、別方向から彼女に迫っていた。
 アリシアは光の矢を左右に向けて同時に連射する。魔力の弾の多くを迎撃したが、数発が残っていた。
“Defensor plus.”
 バルディッシュがアリシアを守るための光の壁を自動展開して、魔力の弾をさえぎった。
「ありがとう、バルディッシュ・・・」
 バルディッシュに感謝を送って、アリシアがヒカルとローザに視線を移す。2人は構えを取って見合っていた。
「大胆不敵に来たのに、まだついてくるのね・・」
「あなたたちの口から、ちゃんと聞かせてもらうよ・・あなたたちの目的とか、詳しいことを・・」
 笑みを消しているローザにヒカルが問いを投げかける。
「あなたたちに教えることは何もないわ。逆にあなたたちのことを私たちに教えてもらうけどね。」
 ローザがあざ笑うと、右手を軽く動かしていく。ヒカルとアリシアが即座に反応して動き出して、出現したバインドを回避した。
「止めます・・止めてみせます・・あなたを・・あなたたちを・・・!」
 アリシアがバルディッシュを構えて、ローザを見据える。
「邪魔をするものはみんな消滅させてあげるわ。私たちの邪魔をするものは・・」
 ローザが再び魔力の弾を作り出して、ヒカルとアリシアに向かって放つ。
「同じ手は何度も通用しないって!」
 ヒカルが飛び出して魔力の弾をかいくぐって、そのままローザに向かっていく。
「もう1発!」
 ローザが再び魔力の弾を放つ。今度は2人の間で弾が爆発を起こした。
「これって、目くらまし・・・!?」
「しまった・・・!」
 声を荒げるヒカルとアリシア。光が消えたときには、2人の視界からローザの姿は消えていた。
「逃げられた・・どこに行ったの・・・!?」
“It is progressing toward north-northeast.Distance has not been detached yet.(北北東に向かって進んでいます。まだ距離は離されていません。)”
 辺りを見回すヒカルのカイザーが呼びかける。
「ありがとう、カイザー。今度こそ逃がさないんだから!」
 ヒカルが意気込みを見せて、ローザを追いかけていく。アリシアも彼女に続く。
 目くらましを仕掛けて振り切ったと思ったローザだが、すぐに2人がついてきていたことに気付く。
(本当にしつこいわね。このままでは魔力のことに気付かれてしまう・・・!)
 焦りを募らせるローザが止まって、ヒカルとアリシアを見据える。
(ここは倒すか動きを封じるかするしかないようね・・・!)
 ローザは移動しながら、右手の人差し指の先に魔力を集中させていく。
「いい加減におとなしくしてもらうわ!」
 彼女が右手を振りかざして光の輪を飛ばしてきた。ヒカルとアリシアがとっさに輪をかわしていく。
 次の瞬間、ヒカルとアリシアの体を別の光の輪に体を締め付けられた。
「こ、この・・!」
 ヒカルが両腕に力を込めるが、体を締め付けているバインドを破ることができない。
「そこでおとなしくしていることね。私はあなたたちの相手をしている時間はないの・・」
 身動きの取れないヒカルとアリシアに言いかけてから、ローザがまた移動していった。
「いけない!このままじゃ逃がしてしまう・・!」
“Please align with the magic of bind calmly.It becomes easy to break bind by doing so.(落ち着いてバインドの魔力と同調してください。そうすることでバインドを破ることが簡単になります。)”
 焦りを膨らませるヒカルにカイザーが呼びかけてきた。
「カイザー・・・!」
 カイザーの助言を受けて、ヒカルが意識を集中させる。彼女はバインドの魔力の質を捉えて、バインドを打ち破った。
「やった!」
 ヒカルが声を上げると同時に、アリシアもかけられていたバインドを打ち破った。
「まだローザは見失っていない・・・!」
「急ごう、アリシアちゃん・・!」
 アリシアとヒカルが声を掛け合って、ローザを追っていった。

 トランザムと2本の光の剣をぶつけ合い、ブレイドとガリューが攻防を繰り広げる。
「ガリュー、お前たちの目的は何だ!?強い魔力の持ち主を連れ去って、何をするつもりだ!?」
「フン。貴様に教えるつもりなどない。他のことも何もかもな!」
 問い詰めるブレイドに言い返して、ガリューが剣を振りかざす。ブレイドがかわしてガリューとの距離を取る。
「やはりお前たちを拘束して、聞き出すしかないようだな・・・!」
「それもムリだ。貴様たちはオレたちに屈服するしかない。」
 再び構えるブレイドをガリューがあざ笑う。2人が剣をぶつけ合い、次々に爆発のような衝撃を巻き起こしていった。

 ヒカルとアリシアを引き離したローザだが、すぐに2人が近づいてきていることに気付いた。彼女は1度地上に降りて魔力を抑えて、2人に気付かれないようにした。
(侮れなくなってきたわね、あの2人。特にあのヒカルという子・・)
 ローザがヒカルたちへの警戒を強めていく。
(あの子を戦力に加えられたら最高だけど、私たちでも手に負えないほどの力と技術を備えている・・・!)
 ヒカルを押さえる手立てを見出せず、ローザは焦りを募らせていく。
(今は罠も作戦も立てていない・・成功は奇跡がない限り不可能というものね・・)
 不利な状況を痛感して、ローザが苦笑をこぼす。
(ここはうまく巻いて、目標を捕らえるのが1番の目的・・)
 目的を絞ったローザが、ヒカルとアリシアを警戒しながら、ゆっくりと前進していった。

 ローザの行方を追うヒカルとアリシア。しかし2人ともローザの行方が分からなくなっていた。
「ローザ、どこに行ったの・・・!?」
 ヒカルが辺りを見回すが、ローザを見つけることができない。アリシアもローザの居場所が分からないでいた。
“Magic cannot be perceived by me, either.(私でも魔力を感知することができません。)”
“Probably, he stops magic, and it is not noticed by us and is making.(おそらく魔力を抑えて、私たちに気付かれないようにしているのでしょう。)”
 カイザーとバルディッシュもローザを捉えることができないでいる。
「こうなったら目で細かく探すしかないのかな・・」
“We explore room by detection of magic.Please search eyes and feeling.(私たちは魔力の探知で居場所を探ります。あなたは目と感覚で捜索してみてください。)”
 困ったヒカルにカイザーが助言を伝える。
「分かった、カイザー。お願いね。」
 ヒカルはカイザーに声をかけて、目を凝らして地上と空を見渡していく。
「バルディッシュ、私たちもその形で・・」
“Yes,sir.”
 アリシアも呼びかけてバルディッシュが答える。ヒカルたちがローザを追って、周辺を細大漏らさずに探りを入れていく。
(何かちょっとでも変化が起これば・・いくら魔力をゼロに抑え込んでも、体を動かせば何の影響もないはずがない・・動いたなら、その変化を見つけられる・・)
 ヒカルは思考を巡らせながら、ローザだけでなく、周囲のわずかの変化にも注意を向けていた。
 そのとき、突然強い風が流れてきた。砂を含んだ風がきたことで、ヒカルとアリシアがたまらず目を閉じた。
「いけない・・この間に逃げられちゃうかも・・・!」
 何とか目を凝らそうとするヒカル。彼女は感覚を研ぎ澄ませて、周囲、ローザへの注意を強める。
「カイザー、魔力の動きは・・・!?」
“I do not feel magic, either.It seems that it is still stopping.(私も魔力を感じません。まだ抑えているようです。)”
 ヒカルが問いを投げかけるが、カイザーもローザの動きを捉えていない。ヒカルもアリシアも冷静さを保つので精一杯だった。

 突然流れてきた横風。その瞬間、ローザはそれ好機だと判断した。
(今しかない・・今のうちに・・!)
 強い風と砂塵に紛れての移動に、ローザは踏み切った。
(それでも速い動きはできない。魔力を使えば、この風で怯んでいても探知されてしまう。)
 ローザは慌てず騒がず、慎重に前進していく。ヒロミとアリシアの動きに注意を払いながら。
(目的地までは遠くない。間近になったら一気にスピードを上げる・・気付かれても追いつかれる前に、私はたどり着ける・・・)
 ローザは慎重に、気づかれないようにして移動を続けていく。彼女は目的としている強い魔力の居場所をつかんでいた。
 しばらく進んだところで、ローザは目的としていた強い魔力を感じられるようになった。
(あの先に・・・!)
 魔力の正確な位置をつかんでいくローザ。彼女の視界に洞窟の入り口が入ってきた。
(もういいわ・・ここへ一気に飛び込む・・・!)
 ローザは慎重さを切り捨てて、魔力を発揮して高速で洞窟に飛び込んだ。

“Magic has been perceived.(魔力を感知しました。)”
 カイザーがバルディッシュとともにローザの魔力を感知した。
「急ごう、ヒカル・・ローザを押さえよう・・・!」
 アリシアの呼びかけにヒカルが頷く。2人が一気にスピードを上げて、ローザを追っていく。
「向こうは私たちに気付かれてももう間に合わない。そう思って魔力を解放したと思う・・」
「その場所に、ヴァンフォードの目的が・・・!」
「だから警戒したほうがいい。何が起こるか分からないと思ったほうが・・」
「アリシアちゃん・・・うん・・!」
 アリシアの注意を聞いてヒカルが頷く。2人は魔力を発揮して、ローザのいる場所に急いだ。

 洞窟の中を進んでいくローザ。洞窟の中は1本道で、彼女はその道を突き進んでいた。
(もうすぐよ・・私がたどり着く前に、2人は私に追いつけない・・・!)
 自分たちの目的達成を確信するローザ。彼女が洞窟を抜けて、その先の扉にたどり着いた。
「この先に・・・!」
 動揺が込み上げてくるのを抑えて、ローザが扉に手をかけて押す。扉が音を立ててゆっくりと押されて開いていく。
 その先にある部屋に人も動物もいない。あるのは中央の台座に置かれている水晶だけである。
「ここに、目的のものが・・・!?」
 ローザが当惑を覚えながら、部屋の中を進んでいく。そして台座にある水晶を見つめる。
「もしかして、これが私たちの目的・・・!?」
 ローザが困惑を感じながら、手を伸ばして水晶を持ち上げた。その瞬間、ローザは強い威圧感を覚えた。
(この感じ・・まさか、この中に秘められた魔力によるもの・・・!?)
 ローザはこの水晶が目的の対象であることを知る。
「持ち出さないと・・あの子たちに見つからないうちに・・・!」
 ローザは水晶を持って、洞窟への脱出に踏み切った。


次回予告

ローザが発見した水晶。
その水晶に秘められているものとは何か?
運命のカギを握るのは、ロードサイドか、ヴァンフォードか?
砂漠の攻防は激しさを増していく。

次回・「悪夢の予兆」

それは希望か、絶望か・・・?

 

 

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