Drive Warrior Gears

Episode08「つながり」

 

 

 アリシアとブレイドを救出したヒカルは、2人とともにミュウたちのところへ戻ってきた。
「ヒカルちゃん、大丈夫みたいね・・すぐに医務室に。」
「はい。お願いします、ミュウさん・・」
 ミュウがヒカルからアリシアを預かって、医務室に運んでいった。
「ブレイドさんも医務室に行きましょう。ブレイドさんのほうがケガがひどいですから・・」
「あぁ。オレたちも行くか。話は向こうでもできる・・」
 ヒカルが声をかけて、ブレイドが頷く。2人も医務室に向かって歩いていった。

 フロンティアにて次の出撃に備えていたローザとガリュー。2人がラムの魔力を感知した。
「ラムが戻ってきたようね。けっこう派手に暴れてきたみたいね。」
「いや、これは戻されたのだ。転移魔法で・・」
 微笑みかけるローザに、ガリューが目つきを鋭くして言いかける。
「転移されたって、誰に・・?」
「それは断定できない・・だがそれが可能だとすれば・・・」
 ローザの問いに答えかけて、ガリューが歩き出した。ローザも疑問を抱えたまま、ガリューを追いかけていく。
 2人が駆けつけた廊下には、意識を失ったラムの姿があった。
「ラム・・魔力の消耗が激しいわね・・」
「リミッターを解除して力を解放したのか・・・」
 横たわっているラムを見て、ローザとガリューが呟く。
「そのラムを転移させられたのは・・」
「あの方しかいない・・マスター・コスモ・・」
 ローザとガリューが緊張を募らせる。2人はマスター・コスモがラムを転移させたのだと確信した。
「マスター・コスモは我々の動向を常に把握している・・失敗を繰り返せば、オレたちは確実に消されることに・・・!」
「でもラムがここにいるのは、私たちが信頼もされているということでもある・・」
「その信頼に応えなくては・・邪魔者を排除し・・」
「強い魔力の持ち主を取り込み、ヴァンフォードを強固にする・・」
 会話を交わすガリューとローザの前に、兵士たちが駆けつけてきた。
「ラムを治療しろ。ただし完全に魔力を封じ込めた状態を維持しろ。」
「了解しました。」
 ガリューの命令を受けて、兵士たちはラムを抱えて立ち去っていった。
「遅かれ早かれ、ブレイド・ストラトスたちの邪魔が入ることになる。それまではマスター・コスモの命令に忠実でなければ・・」
「強い魔力の戦士を、ヴァンフォードの先兵へ・・」
 ガリューがローザと声を掛け合って不敵な笑みを見せると、任務に向けて動き出していった。

 医務室にて療養を受けていたアリシアとブレイド。その中、ブレイドはヒカルから話を聞いていた。
「ヒカル、ドライブチャージシステムの扱いはものにしているのか?」
「基本的なことはできるようになりました。でもたくさん使うことはできないし、まだまだ応用がうまく使えないし・・」
 ブレイドの問いかけに、ヒカルが笑みをこぼしながら答える。
「カイザーからも使い過ぎやムチャはしちゃいけないって、注意を受けています・・まだまだ訓練やイメージトレーニングが必要だって・・」
「そうか・・だが今は、お前もオレも体力も魔力も消耗している。訓練するにしても、少し休息を取ってからだ。」
「はい・・ブレイドさんも腕を治さないとですね。」
 会話を弾ませて、ブレイドとヒカルが笑みをこぼしていく。
「ヒカルちゃん、この際だから家に帰ったら?あまり家族に迷惑をかけるといけないし。」
 ミュウがヒカルに呼びかけてきた。するとヒカルの表情が曇った。
「ガイさんたちは、私の本当の家族ではないんです・・私の家族は、ギルティアのために・・」
「ギルティア・・もしかして、ヒカルにカイザーを入れたものか?」
 ヒカルが口にした話を受けて、ブレイドが問いかける。ヒカルは頷いてから、自分がこれまで経験してきたことを打ち明けた。
 ギルティアによってカイザーを体に入れられて、ドライブウォーリアーにされたこと、ギルティアの策略で家族や友達を失ったこと、そして無二の親友と戦わされたこと。
 ガイたちにも話さなかったことを、ヒカルはブレイドたちに話した。
「ヒカルちゃんに、そんなことが・・・」
「それで君の体の中にデバイスが組み込まれていたのか・・」
 ヒカルの話を聞いて、ミュウが戸惑いを感じて、ブレイドが納得をする。
「カイザーがたくさんのことを教えてくれたから、私は今生きていられたんです・・魔法の使い方を教えてくれたし、私を励ましてもくれた・・」
“I am a master and one in body and mind.When getting used not only to the power of a master but to a support, I am also long-cherished desire.(私はマスターと一心同体です。マスターの力だけでなく、支えにもなれるのでしたら、私も本望です。)”
 ヒカルが正直な気持ちを口にすると、カイザーも答えていく。
「ホントにありがとう、カイザー・・今もこうして助けられているし・・」
 たくさんの助けをしてくれたカイザーに、ヒカルが感謝の言葉を投げかける。
「今は思いつめないほうがいい。オレだけではない。お前も休息を取るときだ。体も心も・・」
「はい、そうします・・」
 ブレイドの呼びかけにヒカルが答える。
「あの・・私も・・・」
 そのとき、意識を取り戻したアリシアが体を起こして声をかけてきた。
「ヒカルさんが住んでいるところへ、行ってみたい・・どういうところなのか、いろいろ確かめてみたい・・」
「住んでいるって言っても居候なんだけどね・・・」
 自分の気持ちを伝えるアリシアに、ヒカルが照れ笑いを見せる。
「この際だから、アリシア、あなたもヒカルちゃんと一緒に休日を過ごしてきたら?」
「ミュウさん・・ありがとうございます・・」
 ミュウから声をかけられて、アリシアが感謝を見せる。
「それじゃアリシアちゃんと一緒に行きますね・・」
「あぁ。何かあれば連絡を入れる。気にせずに羽を伸ばすといい。」
 ヒカルが声をかけると、ブレイドが微笑んで頷いた。ヒカルはアリシアと一緒に家に戻っていった。
「アリシアにはムチャさせてばかりだったからね。こういう時間が本当に貴重になってくると思うわ。」
「あぁ。アイツは自分のことより他の人のことを優先させることが多い。だから時には、自分が心から楽しめる時間を作ってあげないと・・」
 ミュウが微笑みかけて、ブレイドも言いかける。ヒカルやアリシアが戦いのない平穏な時間をいつまでも送れることを、2人は願っていた。
「そういうあなたも体を休めないとね、ブレイド。キャミィ、ウィザード、そばにいてあげて。」
「分かりました♪」
「あんま世話焼かせんなよな。」
 ミュウが呼びかけると、キャミィとウィザードがブレイドを連れていく。
「おいおい、引っ張るな、お前たち・・」
 引っ張られるブレイドが声を上げていた。

 アリシアと一緒に自分の世界に戻ってきたヒカル。無事に帰れたことにヒカルは安心を感じていた。
 その彼女の隣で、アリシアが街の様子を見渡していた。
「アリシアちゃんはもしかして、地球は初めて・・・?」
「えっと・・この世界には何回か来たことがあるけど・・こういう都会に来たのは初めてかもしれない・・自然にあふれた場所とか古風なところに来るのが多かったから・・」
 ヒカルに声をかけられて、アリシアが正直に語りかける。
「なるほど・・アリシアちゃんにもいろいろあったんだよね・・いろいろ、大変なことが・・・」
「ヒカルお姉ちゃん・・・」
 ヒカルに気持ちを悟られて、アリシアが戸惑いを覚える。
「いつかお母さんと一緒に、もっといろんな場所、たくさんの世界を巡ってみたかった・・でも、その願いももう叶わない・・・」
「アリシアちゃん・・・」
「お姉ちゃんが気にすることはないよ・・今は私には、みんながいるから・・・」
 微笑みかけるアリシアに、今度はヒカルが戸惑いを覚える。彼女はアリシアが見せているのが作り笑顔であることを分かっていた。
「私がお世話になっている家に行こうか。アリシアちゃんのこと、紹介するね・・」
「お姉ちゃん・・大丈夫かな・・私が行っても・・・?」
「大丈夫だって。ロードサイドのこととかは言わないようにするから・・」
 ヒカルに励まされて、アリシアが安心を見せた。
“Since I will support if something is, it is reliable.(何かあれば私がサポートしますので、ご心配なく。)”
 カイザーもヒカルとアリシアに声をかけてきた。
「ありがとう、カイザー・・それじゃ行こう、アリシアちゃん・・」
「うん・・」
 ヒカルとアリシアが手をつないで、ガイたちのレストランに向かった。

 レストランでの営業を続けていたガイ、リン、タクミ。カレンとリオも接客をしていた。
「少し落ち着いてきたか・・カレンさん、リオさん、休憩入っていいよ。」
「分かりました。」
「ふぅ・・今日も乗り切った~・・」
 ガイに呼びかけられて、カレンが答えて、リオが安心を浮かべた。
「オレもそろそろ疲れてきたなぁ・・」
「タクミはあんまり仕事してこなかったし、男なんだし・・休憩はもうちょっと後だ。」
「そんな~・・」
 肩を落とすタクミがガイに注意をされる。タクミは仕方なく仕事を続けることにした。
「ただ今帰りました、ガイさん、リンさん。」
 そこへヒカルがレストランに帰ってきて、ガイたちに声をかけてきた。
「おかえり、ヒカルちゃん。丁度お店のほうが落ち着いてきたところ・・」
 ガイが挨拶をしたところで、ヒカルの後ろに隠れていたアリシアに気付いた。
「ヒカルちゃん、その子は・・?」
「えっと・・ミュウさんの知り合いで、ここのことを紹介したくて・・」
 ガイが訊ねると、ヒカルがアリシアのことを紹介する。
「はじめまして。武藤ガイです。君の名前は・・?」
「アリシア・・アリシア・テスタロッサです・・」
 ガイに挨拶をされてアリシアも自己紹介をした。
「アリシアちゃんね・・私はリンです。よろしくね、アリシアちゃん。」
「リンさん・・ガイさん・・・はい。よろしくお願いします・・」
 続けて挨拶をしてきたリンに、アリシアが笑顔を見せて頭を下げた。
「よーし。今日はアリシアちゃんにおいしいものをごちそうさせてあげないとね。」
「そんな・・私のためにそこまで・・」
 リンの提案にアリシアが動揺を見せる。
「いいよ、アリシアちゃん。ここは甘えちゃおう。タクミも手伝って。私もやる。」
「オレも付き合うのか?ヒカルも人使い荒いなぁ・・」
 アリシアに続いてタクミにも呼びかけるヒカル。彼女に言われて、タクミが大きく肩を落とした。

 アリシアのためにお手製のケーキを作るリンたち。ヒカルも腕を振るったケーキが、アリシアの前に置かれた。
「食べてみて、アリシアちゃん。みんなで力を合わせて作った特製ケーキ♪」
 リンに明るく声をかけられるが、アリシアはケーキをじっと見つめたまま動揺を募らせていた。
「いいのかな・・私が食べても・・・」
「いいって、いいって~♪アリシアちゃんのためのケーキなんだから♪」
 戸惑っているアリシアにヒカルが笑顔を見せる。
「それじゃみんなで一緒に食べよう♪それなら楽しくなると思うよ♪」
「ヒカル・・みなさん・・・」
 ヒカルに笑顔を見せられて、アリシアはガイたちを見回して戸惑いを感じていく。
「それじゃ、お言葉に甘えることにします・・」
 アリシアがフォークを手にして、ケーキをひと口する。ケーキの甘さとおいしさを感じて、彼女は戸惑いを覚える。
「おいしいでしょ?リンさんのお手製ケーキは一味違うんだから♪」
 ヒカルが笑顔を見せると、アリシアも喜んで笑顔を見せた。
「それじゃ、私もいただいちゃうかな♪」
 ヒカルもケーキを口にして、おいしさを分かち合う。
「ホントにおいしい♪リンさんはケーキ職人ですよ♪」
「そんなことないわ。ヒカルちゃんたちが手伝ってくれたからよ。」
 ヒカルが喜びの声をかけると、リンが照れ笑いを見せた。
「だとしたらオレの手伝いもイケてたな。」
「もう、あなたったら・・♪」
 ガイが気さくに言いかけると、リンが照れ笑いを見せてきた。
「ったく、オレの両親はこんなときまで・・」
 2人の様子を見て、タクミが呆れて肩を落とした。
「ガイさん、リンさん、この後にアリシアにこの街を案内したいんですけど・・」
 ヒカルがガイたちに提案を持ちかける。するとガイとリンが頷いてきた。
「よーし。それじゃタクミ、お前もついていってやれ。」
「えーっ!?何でオレまで!?」
 ガイに呼びかけられて、タクミが不満の声を上げる。
「女の子だけで街に行かせたら危ないだろうが。せめて荷物運びぐらいしろって。」
「それが狙いなのかよ!」
 ガイが続けて言った言葉に、タクミはさらに怒鳴る。2人のやり取りを見て、ヒカルだけでなく、アリシアも笑みをこぼしていた。

 それからヒカル、アリシア、タクミは街に繰り出すことになった。アリシアを連れて街中を駆けていくヒカルに、タクミは追いかけることに参っていた。
「おいおい、はしゃぎすぎだっての・・!」
「タクミ、もうちょっと運動して体力付けたほうがいいって♪」
 不満を見せるタクミに、ヒカルが笑顔を振りまく。
「これじゃアリシアちゃんより、お前のほうが子供みたいじゃないか・・」
 タクミが口にしたこの言葉を耳にして、ヒカルが我に返って照れ笑いを見せた。
「いいよ、ヒカルさん・・ヒカルさんは私のために・・」
「アリシアちゃん・・ゴメンね、大人げなくて・・・」
 微笑みかけるアリシアに、ヒカルは笑みをこぼしたまま謝る。
「そんなに元気が有り余ってるなら、ちょっとぐらい荷物を持てっての。」
 タクミが持っていた荷物を2つほど放って、ヒカルが慌ててキャッチする。
「せっかく買ったものを放らないでって・・!」
「上に乗せてたのは軽くて壊れにくいもんだよ。」
 文句を言うヒカルに、タクミも憮然とした態度で言い返す。すると2人のやり取りを見て、アリシアが笑みをこぼしてきた。
「えっ・・!?」
「アリシアちゃん、どうしたの・・・!?」
 彼女の笑みに動揺を見せるタクミとヒカル。
「ごめんなさい・・でも2人が話しているのを見ていて、楽しくなってきて・・」
「ア、アリシアちゃん・・・エヘヘ、恥ずかしいところ見せちゃったかな・・」
 アリシアが答えると、ヒカルが照れ笑いを見せた。タクミも苦笑いを浮かべて肩を落とした。
「それじゃ、仕切りなおして買い物を続けるか・・」
「タクミ・・うんっ♪」
 タクミに声をかけられて、ヒカルが笑顔で頷く。アリシアも微笑んで、2人と一緒に買い物を続けていった。

 ヒカルやアリシアのことを気にするブレイドとミュウ。2人は作業と休息をしながら、2人のことを考えていた。
「アリシアとヒカルちゃん、楽しくやっているかな?」
「ヒカルが一緒だし、アリシアも素直だから、楽しい時間を過ごせているだろう。」
 ミュウが投げかけた言葉にブレイドが答える。
「まだヴァンフォードが動きを見せていないが、油断は禁物だ。」
「分かっているわ。ウィザードとウィッシュがレーダーを見ているから。」
「ヴァンフォードはオレたちの力に警戒すらするようになった。特に新しくドライブチャージシステムをものにしたヒカルは。それ故、オレたちの警戒の裏をかいて何か仕掛けてくることも考えられる。」
「えぇ。この本部とアリシアの警戒を強めているわ。あなたもいつでも飛び出せるように、今のうちに休んでおいて。」
「ならばここで休息を取らせてもらう。休みながらでも精神統一はできるからな。」
「それだったら自分の部屋でお願いね・・」
 ミュウと会話を交わして、ブレイドは自分の部屋に戻っていく。
「2人とも、このまま何も事件がなく、楽しく過ごしてほしいわね・・」
 ヒカルたちの平穏を願いながら、ミュウは作業を続けるのだった。

 アリシアとの楽しい時間を過ごしたヒカル。2人とタクミは街の中のハンバーガーショップで休憩を取っていた。
「ふぅ・・いろいろ回ったね♪」
「調子に乗りもしたけどな・・さすがに一気に買いすぎだって・・」
 笑顔を見せるヒカルに、タクミが呆れて肩を落とす。2人にやり取りを見て、アリシアが戸惑いを浮かべている。
「本当に仲がいいんですね、ヒカルさんとタクミさん・・」
「アリシアちゃん!?・・私たちは、そんなわけじゃ・・!」
 アリシアが口にした言葉に、ヒカルが動揺を見せる。
「そうだな・・オレは荷物持ちで来たわけだし・・」
「タクミ、そんなわけじゃ・・!」
 タクミが不満を見せると、ヒカルがまた動揺を見せる。するとタクミとヒカルが笑みをこぼした。
「今日はホントに楽しかったね、タクミ、アリシアちゃん・・」
「まぁ、悪くはなかったな、今日は・・」
 ヒカルが声をかけると、タクミが照れくさそうに答える。
「私、とても楽しかった・・ケーキもおいしかったし、買い物もいろんなところに行けた・・」
 アリシアも今日の時間を振り返って、喜びと安らぎを感じていく。
「ありがとうございます・・ヒカルさん・・タクミさん・・」
「いいよ、アリシアちゃん。私たちも楽しい時間を過ごせたんだから。」
「オレも悪くなかったから、気にしなくていいって。」
 感謝の言葉をかけるアリシアに、ヒカルとタクミが微笑んで答える。
「それじゃお店に帰って、ガイさんたちに今日のことをたくさん話さないとね。」
「うん・・ミュウさんたちにも話をしてあげないと・・楽しみになってきた・・」
 ヒカルの言葉にアリシアが頷いた。

 そして家に帰って、ヒカルたちは買い物のことをガイたちに話した。楽しい時間を過ごせたことを聞いて、ガイもリンも喜びを感じていた。
「よかったね、アリシアちゃん♪たっぷり楽しめた?」
「はい。ヒカルさんとタクミさんに感謝しています・・」
 ガイの言葉にアリシアが微笑んで答える。
「もう荷物持ちはなしだからな。荷物持ちいるならオヤジが行けよな。」
「そうだなぁ。アリシアちゃんと楽しい時間を過ごすのもいいかなぁ・・」
 タクミが不満の声を上げると、ガイが頷いてみせる。
「アリシアちゃん、またいつでもいらっしゃい。私たちは大歓迎ですからね。」
「はい・・本当に、ありがとうございます・・」
 リンが言いかけると、アリシアが感謝を言う。微笑んでいる彼女の目から涙があふれてきていた。
「ど、どうしたの、アリシアちゃん・・・!?」
 泣き出したアリシアにリンがガイと一緒に慌て出す。
「ご、ごめんなさい・・私、とても嬉しくなってきて・・・」
「アリシアちゃん・・・」
 涙を拭っていくアリシアに、ヒカルが戸惑いを覚える。
「私、家族がいなくなって・・こうして家族や友達の時間を送ったのは久しぶりで・・・」
 アリシアが自分の気持ちを切実に語りかける。彼女は家族のひとときを久方ぶりに感じたと思っていた。
 涙を拭っていくアリシアの肩に、ヒカルが優しく手を乗せてきた。
「よかったね、アリシアちゃん・・私たちにできることがあれば・・・」
「ヒカルさん・・みなさん・・・本当にありがとうございます・・・」
 ヒカルが笑顔を見せて、アリシアが心からのお礼を述べた。
「あ、もしかしてお出かけして帰ってきたばかりでしょうか?」
 そこへミュウがやってきて、ガイたちに声をかけてきた。時間を見計らってアリシアを迎えに来たのである。
「ミュウさん。うん、丁度帰ってきたところです。」
 ヒカルが振り向いてミュウに笑顔を見せて答えた。
「アリシアがお世話になりました。これからもどうぞよろしくお願いしますね。」
「いえ、こちらこそ楽しく過ごさせていただきました。アリシアちゃん、またいらっしゃいね。」
 ミュウと言葉を交わして、リンがアリシアに挨拶をする。
「はい・・また、来たときはよろしくお願いします・・」
 アリシアが微笑んでリンたちに頭を下げた。
“Could significant time be spent?(有意義な時間が過ごせましたね。)”
(そうだね・・ホントによかった・・・)
 カイザーからの声に、ヒカルが念話で答えた。
“Peacefulness returns also to you, it is peevish now, and they are the body and the heart.(あなたにも安らぎが戻ってきていますね、体も心も。)”
(ありがとう、カイザー。私もたくさんのことに向き合えそうだよ・・)
 カイザーに励まされて、ヒカルは改めて安心を感じていた。
「それじゃアリシア、そろそろ行こうね。」
「はい。分かりました・・」
 ミュウに声をかけられて、アリシアが頷く。
「私、アリシアちゃんを送ってきますね。ミュウさん、行きましょう。」
「えぇ。本当にありがとうございました。」
 ヒカルが声をかけて、ミュウが改めてお礼を述べた。アリシアがガイたちに笑顔を見せてから、家を出た。
「ミュウさん、ロードサイドのほうは?・・ヴァンフォードは・・?」
 武藤家から離れたところで、ヒカルがミュウに声をかけてきた。
「ロードサイドは何事もなかったわ。あなたたちのことを心配していたぐらいかな・・」
「どうしても心配になってしまいましたか、アリシアちゃんのこと・・」
 ミュウの答えを聞いて、ヒカルが照れ笑いを見せる。
「ヴァンフォードも何も行動を見せてきていない。向こうも休息を取っているのかもしれない・・」
「私たちの注意を避けて、何かしている可能性もあるけど・・・」
 ミュウが口にした言葉に、アリシアも深刻な面持ちで続ける。
「おそらくこれからのヴァンフォードとの戦いは、さらに厳しくなるわ。もうこんなひと時を送ることができなくなるかもしれない・・」
「ミュウさん・・・?」
「できることなら、ヒカルちゃんとアリシアには、このまま戦いから離れて、この日常を過ごしていけたらって思っている・・」
 ヒカルとアリシアに向けて、ミュウが切実な気持ちを伝えてきた。
「ありがとうございます、ミュウさん・・私たちをここまで心配してくれて・・・」
 アリシアが微笑んでミュウに感謝を見せる。
「私も、ミュウさんの優しさ、嬉しく思います・・」
 ヒカルもミュウに笑顔を見せる。
「でも私、ミュウさんやブレイドたちの力になりたい・・みんなが幸せでいられるようにしたいです・・」
「アリシア・・・」
「ごめんなさい、ミュウさん・・ミュウさんが私たちのことを思ってくれたのに・・」
「アリシア・・いいわ。アリシアやヒカルちゃんが日常に戻ってほしいというのが本音だけど、2人の思った通りに過ごしていってほしいのも、私の願いでもある・・」
 互いに自分の気持ちを伝えていくアリシアとミュウ。
「私も、アリシアちゃんやミュウさん、ブレイドさん、みんなのために頑張りたいです。どうかこのまま協力させてください・・!」
 ヒカルもミュウに頭を下げてお願いをする。戸惑いを募らせるミュウだが、すぐに笑顔を取り戻した。
「ありがとう・・本当にありがとうね、ヒカルちゃん・・アリシア・・」
 ヒカルとアリシアに励まされて、ミュウが戸惑いと笑顔を見せた。
「お礼を言うのはこっちです。ありがとうございます、ミュウさん、アリシアちゃん・・」
 ヒカルがアリシアとミュウに感謝する。
「あなたたちがいなかったら、私は今ここにいなかった・・こうしてアリシアちゃんたちと一緒に、楽しい時間を過ごすこともできなかった・・・」
「ヒカル・・・」
 自分の気持ちを正直に語っていくヒカルに、アリシアも戸惑いをかんじていく。
“I was also helped by you.And new power was able to be conceived.I appreciate from the bottom of my heart.(私もあなたに助けられました。そして新しい力を宿すことができました。心から感謝しています。)”
 カイザーもミュウとアリシアに感謝を述べてきた。
「お願いです・・このまま手伝わせていただけませんでしょうか・・・?」
「・・・もちろんよ・・これからもよろしくね、ヒカルちゃん・・・」
 お願いするヒカルにミュウが笑顔で答える。2人が握手を交わすと、アリシアが彼女たちの手に自分の手を乗せてきた。
「一緒に力を合わせて、頑張っていきましょう・・」
「アリシアちゃん・・うん♪」
 アリシアの言葉にヒカルが笑顔で頷いた。

 待機と出撃の準備をしていたローザとガリュー。2人に向けて1つの思念が送られてきた。
「これはもしや、マスター・コスモ・・・」
「さらに、強い魔力の持ち主を探し出して・・・」
 ガリューとローザはその思念がマスター・コスモから送られてきたものだと実感した。
「早く見つけ出さなくては・・でないとマスター・コスモに見限られることになる・・・」
「またロードサイドが邪魔してくるけど、もういいようにはさせないわ・・」
「すぐに動いたほうがいいな・・」
「全ては、マスター・コスモのために・・・」
 マスター・コスモの意思を受けて、ガリューとローザが強い魔力の持ち主の捜索を再開するのだった。


次回予告

束の間の休息は終わった。
ロードサイドとヴァンフォードの新たなる戦い。
改めて決意を固めたヒカルとアリシア。
ヴァンフォードと対峙した彼女のたちの胸に秘めた思いとは?

次回・「灼熱の戦い」

その灯の中に映るものとは・・・

 

 

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