Drive Warrior Gears

Episode05「帰るべき場所」

 

 

 カイザーにドライブチャージシステムが組み込まれたことにより、ヒカルは魔力と戦闘力を飛躍的にアップさせていた。
「すごい・・あの人、魔力がすごくなっている・・・!」
「ドライブチャージシステムが、これほどまでのレベルアップをもたらすとは・・それだけ彼女の潜在能力が高いことを表している・・・!」
 アリシアもブレイドも強くなったヒカルに驚いていた。
「バカな・・あれほどの魔力と攻撃力、この前は感じられなかったぞ・・・!」
 ガリューもヒカルに対して驚きを隠せなくなっていた。
「何かあったのだ・・この数日の間に・・・!」
 自分の両手を見つめているヒカルに、ガリューが視線を戻した。
「すごい・・こんなに力がすごくなっているなんて・・・!」
 ヒカルも自分の力の高まりに驚きを感じていた。
「このまま、このドライブチャージシステムを使っていけば、負けることはないかも・・」
“Multiple use is a prohibited thing.Please aim at the time of being made to hit the mark certainly as much as possible.Then,a burden should be minimized.(多用は禁物です。確実に命中させられるときを極力狙ってください。そうすれば負担を最小限に抑えられるはずです。)”
 自信を感じていたヒカルに、カイザーが注意を促した。
「そうだった、そうだった・・でもドライブチャージをした攻撃を確実に当てられるタイミング、私に見つけられるかな・・・」
“The timing can be judged if it is you.(あなたならそのタイミングを判断できます。)”
「カイザー・・うん、やってみる・・またカイザーに頼ることになっちゃうけど・・よろしくね・・・!」
“Please leave.(任せてください。)”
 カイザーからの助言を受けて、ヒカルが改めて構えてローザたちを見据える。
「調子に乗っちゃって・・こうなったらあたしが・・!」
「いいえ、もう戻るわよ・・」
 ヒカルに攻撃を仕掛けようとしたラムだが、ローザに止められる。
「ちょっと!邪魔しないでよ、ローザ!」
「今のあの子に迂闊に手出ししたら、やられる可能性が高いわ。今のあの子は以前とは違うのよ。」
 怒鳴るラムをローザが呼び止める。ヒカルを倒したい気持ちを抑えて、ラムは渋々ローザの言葉を聞き入れることにした。
「今回はここまでにしておいてあげる。でも次はこうはいかないわ。」
 ローザがヒカルに向けて声をかけてきた。
「あなたをマスター・コスモへの人柱として連れていく。それができなければ、危険な存在として始末させてもらうわ。どっちにしても、覚悟しておくことね・・」
 そしてローザはガリュー、ラムとともにヒカルたちの前から去っていった。ヒカルもブレイドもローザたちを追おうとしなかった。
「大丈夫、ガリュー!?・・ケガとかはない・・!?」
「オレは特にケガなどはしていない・・だが、ここの部隊はもう・・・」
 アリシアからの心配の声をかけると、ブレイドが地上を見下ろして歯がゆさを浮かべる。彼らが助けようとした部隊は全滅、誰も助けることができなかった。
「・・そっちは回復したようだな。それもかなりのレベルアップを果たしたようだ。」
 ブレイドがアリシアと一緒にヒカルに視線を移す。2人が彼女の前に降り立った。
「お姉ちゃん・・お姉ちゃん!」
 アリシアが気持ちをあらわにして、ヒカルに抱き着いた。泣きつくアリシアを見て、ヒカルも笑みと涙を浮かべた。
「君も無事でよかった・・今度は守れたみたいだね・・・」
「今回だけじゃない・・この前だって、私を守ろうとしてくれた・・ありがとう、お姉ちゃん・・・」
 優しく声をかけるヒカルに、アリシアが感謝をする。互いの無事を感じて、2人とも安心していた。
 そのとき、ヒカルが突然ふらついて、アリシアに支えられた。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「う、うん・・ちょっと疲れちゃったかな・・」
 心配の声をかけるアリシアに、ヒカルが照れ笑いを見せる。彼女はアリシアだけでなく、ブレイドにも支えられた。
“Probably, it is a sake having consumed magic too much by Drive charge.It is better to recover,if it rests, but not to strain oneself now.(ドライブチャージで魔力を消費しすぎたためでしょう。休めば回復するでしょうが、今は無理をしないほうがいいです。)”
 カイザーもヒカルの心に呼びかけてきていた。
(うん、そうだね・・それにしても、ドライブチャージがこんなに疲れるなんて、ビックリだよ~・・)
“The body will get used gradually.Then, getting tired with one motion will decrease.(徐々に体が馴染んでいくことでしょう。そうすれば1回の発動で疲れてしまうことは少なくなるでしょう。)”
 ドライブチャージの反動を痛感するヒカルを、カイザーが励ましていく。
(あの人たち、またやってくるかな?・・私が回復する前に、またすぐやってくるんじゃ・・・)
“He keenly realizes your present magic and I cannot think that the other side also devises an attack immediately.Let's take rest within now.(今のあなたの魔力を痛感して、向こうもすぐに攻撃を仕掛けてくるとは思えません。今のうちに休息を取っておきましょう。)”
(カイザー・・うん。分かったよ・・・)
 カイザーからの助言を受けて、ヒカルは休息に専念することを心に決めた。
「あの・・また、お世話になってもいいでしょうか・・・?」
 ヒカルが照れ笑いを見せながら、アリシアとブレイドに声をかけた。するとアリシアがヒカルに笑顔を見せてきた。
「私がお願いしたいと思っていたことだよ・・・」

 復活とパワーアップを果たしたヒカルに追い込まれて、やむなく撤退したローザたち。ラムはフロンティアで苛立ちをあらわにしていた。
「もうっ!今度会ったらあたしがやっつけてやるんだから!」
「ならもう少し力を上げたほうがよさそうね。今のあの娘、前と比べて確実にレベルが上がっているわ。」
 苛立ちを隠せないでいるラムに、ローザが注意を言いかける。
「何かあったのよ。蘇生されたことにも驚きだけどね・・」
「ブレイドたちにあの娘が加わったとなれば、オレたちの兵力の強化に大きな支障が出る・・」
 ローザに続いてガリューも危機感を見せる。彼らにとってヒカルが最大の脅威となっていた。
「あの娘のデータを集める必要がありそうね・・どこか弱点を見つけられるかもしれないし・・」
「そんな小さいことしなくても、あたしがアイツをやっつけてやるよ!」
 ローザが呟きかけると、ラムが強気に言い放つ。
「その大口が命取りにならないようにすることだ。本当に侮ってはいけない相手になりそうだ・・」
「侮るも何も、他のヤツがいい気になるのが気に入らないだけさ!」
 ガリューが声をかけても、ラムは強気な態度を変えない。彼女は歩き出して2人の前からいなくなった。
「本当に仕方がないわね、あの子・・」
「今は次にアイツと戦うために、体力の回復と情報集めをすることだ。」
 ラムに呆れるローザにガリューが言いかける。
「そうね。私たちも万全でいないとね。向こうに回復の機会を与えることになるけど、本当に仕方ないことね・・」
 ラムの言動に呆れながらも、ローザとガリューはヒカルをはじめとしたロードサイドの打倒を図っていた。

 ロードサイドの基地に戻ってきたヒカル、アリシア、ガリュー。彼らをキャミィとウィッシュが迎えた。
「おかえりなさい、みなさん。無事に帰って来れましたね。」
「うん・・でも、向こうの部隊の人たちは助けられなかった・・・」
 声をかけたキャミィにアリシアが答えるも、悲しい顔を浮かべる。
「でもあなたが目を覚ましてよかった・・」
 ウィッシュがヒカルに目を向けて、安心を見せた。
「私もこうして生きているのが不思議というか、複雑な気分・・しかもあんなに強くなっていたなんて・・」
「ドライブチャージシステムをあなたのデバイスに組み込んだおかげね。」
 改めて驚きの言葉を口にしたヒカルに、ミュウが声をかけてきた。
「魔力の弾丸を装てんするベルカ式カートリッジシステムが今まで組み込まれていたあなたのデバイスだけど、グラン式ドライブチャージシステムが組み込まれたことで、魔力の活用がよりうまくいくようになったの。結果、魔法の効果もつよくなったわけ。」
「活用が・・だからうまく魔力を引き出せるようになったんですね・・」
 ミュウの説明を聞いて、ヒカルが改めて納得する。
「でもだからといって魔法や戦闘の連続は避けるように。特にドライブチャージは。」
「分かっています・・カイザーからも注意されました・・」
「カイザー・・あなたの体にあるデバイスね。」
 ミュウがヒカルの胸元に指を当てて、彼女の中にカイザーがいることを確かめようとする。
「あなたのほうが十分に分かっていると思うけど、デバイスが破壊されたらあなたの命はないわ。それを忘れずに魔力を使うことよ。」
「はい・・私がいなくなったら、みんなが悲しむことを、改めて分かりましたから・・」
 ミュウからの注意を受けて、ヒカルは頷いてからアリシアに振り向く。彼女に目を向けられて、アリシアが戸惑いを見せた。
「だから私は、絶対に死んだりしない・・あなたやみんなとは笑顔で一緒にいたいからね・・」
「お姉ちゃん・・ありがとう・・えっと・・・」
「天宮ヒカル。よろしくね。」
「アリシア・・アリシア・テスタロッサです・・」
 ヒカルとアリシアが改めて挨拶をして、手を取って握手を交わした。
「ところで、今日は何日ですか?私がここに運ばれて、どれくらいたっていますか・・?」
 そのとき、ヒカルがふと時間を気にした。
「お前をここに連れてきてから4日はたっているはずだ・・」
「4日!?いけない!ガイさんとリンさん、心配してるよ~!」
 ブレイドが答えると、ヒカルが慌てふためく。
「早く、早く帰らないと・・!」
「とはいうが、1人で帰って事情はうまく話せるのか?オレたちのことは打ち明けられないし、話しても信じてもらえるはずもないが・・」
 どうしたらいいのか分からないでいるヒカルに、ブレイドが困った顔を浮かべる。
「だったら私が行くわ。私ならうまくごまかしを入れながら説明できるわ。」
 するとミュウが説明に名乗り出てきた。
「とりあえず私に任せて。あなたの素性もある程度分かっているから・・」
「はい・・ありがとうございます・・」
 微笑んでくるミュウに、ヒカルが感謝の笑顔を見せた。

 ヒカルが帰ってこないことにガイ、リン、タクミの不安と心配は頂点に達していた。
「もう耐えられないぞ!警察に知らせて、ヒカルちゃんを探してもらったほうがいい!」
 ガイがついに思い立って、警察への連絡に踏み切ろうとした。
 そのとき、家のインターホンが鳴り響いて、ガイ、リン、タクミが玄関のほうに振り向いた。
「もしかして・・・!」
 ガイが声を上げるが、彼の前にタクミが玄関に向かった。彼が玄関のドアを開けると、その先にヒカルが立っていた。
「ヒカル!?・・ホントにヒカルなのか・・・!?」
「うん・・ゴメン、タクミ・・心配かけて・・・」
 驚きを隠せなくなっているタクミに、ヒカルが苦笑いを見せる。
「ヒカルちゃん・・・今までどこに行ってたんだ!?心配したんだぞ!」
 顔を出してきたガイがヒカルに怒鳴ってきた。するとヒカルが悲しい顔を見せて頭を下げてきた。
「ガイさん・・リンさん・・・ごめんなさい・・今まで・・」
「このことは私が説明します。」
 そこへミュウがガイ、リン、タクミの前に姿を見せた。
「はじめまして。私はミュウ・ハイラックス。医療科学の研究していまして。」
 ミュウがガイたちに事情を説明する。もちろんミュウは魔法や自分たちの正体を明かすようなことをうまく隠して語った。
「療養に集中するあまり、知り合いに連絡を取ることに頭が回りませんでした。申し訳ありません・・」
「そうでしたか・・何はともあれ、ヒカルちゃんが無事に帰ってきてよかった・・ホントによかった・・・」
 ミュウの話を聞いて、ガイがリンとともに改めて安心を覚える。
「今日はゆっくりと休ませてあげてください。元気を取り戻したと言っても、疲れが残っていないわけではないので・・」
 ミュウがガイたちに言いかけて、小さく頭を下げた。
(何かあったら、あなたの持っている携帯電話のほうに連絡を入れるから・・)
(ミュウさん・・・分かりました・・いろいろとありがとうございました・・ブレイドさんやアリシアちゃんたちにもよろしく・・)
 ミュウとヒカルが念話で話をした。ミュウが目を合わせて、ヒカルに頷いた。
「では私はこれで失礼します。」
「はい・・いろいろとありがとうございました・・!」
 ミュウが頭を下げると、ガイが改めてお礼を言う。ヒカルにも笑みを見せてから、ミュウは武藤家を後にした。
「ヒカルちゃん・・・おかえり・・ヒカルちゃん・・・」
「ただいま・・ガイさん・・リンさん・・タクミ・・・」
 ガイが帰ってきたヒカルを抱きしめた。あたたかく迎えてくれたガイたちに感謝して、ヒカルはこの場所が自分のいるべき場所だと実感した。
「ヒカルちゃん、本当に何があったの?・・本当に何ともないの・・・?」
「はい。ミュウさんの言う通り、助けられて元気を取り戻しました。」
 リンからの心配の声に、ヒカルが笑顔で答えた。
「とりあえずご飯にしようか。きちんと食べてから休んだほうがいいからな。」
「ガイさん・・はい。いただきます・・」
 ガイに勧められて、ヒカルは彼らの手料理を口にすることにした。長い時間を経て、彼女は自分の場所に帰れたことに安心を感じていた。

 ヒカルを送ってきたミュウが、アリシアたちのところへ帰ってきた。
「おかえり、ミュウ・・ヒカルさん、無事に帰れたんだね・・・」
「えぇ。向こうにはうまく話をしておいたわ。伏せるべきところはうまく伏せたけど、疑わなければいいけど・・」
 出迎えたアリシアに答えるミュウ。
「一応、ヒカルの動きを監視させてもらう。地球には魔法を探知できる人はいないと言っていいほど少ないからな。」
「それにヴァンフォードが彼女を襲ってきたときに、すぐに助けに行けるように、ね・・」
 ブレイドが投げかけた言葉にミュウが答える。彼女はヒカルの監視を受け入れていたが、アリシアは腑に落ちていなかった。
「やっぱり・・私たちといるとき以外はそっとしておいたほうがいいと思うんだけど・・」
「でもヴァンフォードがヒカルさんをほっとくとは思えないよ・・もちろんプライベートには介入しないというのを条件にするから!」
 呟きかけたアリシアに、キャミィが頭を下げてきた。するとアリシアは納得して微笑みかけた。
「オレたちもヴァンフォードの動きをうかがいつつ、体を休めよう。ヤツが攻めてきても、すぐに対応できるように。」
 ブレイドが駆けた言葉にアリシアたちが頷く。
「ウィザード、ウィッシュ、監視に十分注意してくれ。」
「あたしが見逃す敵なんてないって。」
「はい・・やってみます・・・」
 ブレイドの呼びかけにウィザードとウィッシュが答える。彼らはヴァンフォードの動きに注意を向けつつ、休息を取ることにした。

 武藤家に帰ってから一夜が過ぎた。自分の部屋で目を覚ましたヒカルが、ふと窓越しに外を見つめた。
 今まで過ごしてきた日常と変わらない景色。街の風景を見つめて、ヒカルは昨日の出来事がウソか夢ではないかと思うようになった。
(昨日はホントのことだったんだね・・カイザーが傷ついて、私が1度死んだのもホントのこと・・・)
 ヒカルは自分の胸に手を当てて、自分がガリューによって命を落としたことを思い返していた。
(ホントに不思議なことばかり・・生き返ったことも、カイザーも私も強くなったことを・・・)
 今の自分に対して戸惑いを感じながらも、ヒカルは今生きていることを実感していた。
(それじゃ、しっかりしないとね・・カイザー、今の私の状態は?私としてはまだ魔法は使える気がしないんだけど・・)
“It has recovered 70%.Unreasonableness is a prohibited thing although a problem is not in everyday life.(70%回復しています。日常生活に問題はありませんが、無理は禁物です。)”
 ヒカルの問いかけにカイザーが答える。カイザーは問題なく正常に機能していた。
(やっぱり・・でも普通に過ごせるだけいいかな・・)
“Probably,it will be satisfactory even if it is living ordinarily,although No. 1 is good as for using quiet in fact.(本当は安静にしているのが1番いいのですが、普通に生活していても問題ないでしょう。)”
(うん・・分かった、カイザー。ムチャしないように気を付けるよ・・)
 カイザーからの注意を受けて、ヒカルは笑顔を浮かべた。
 着替えを終えてリビングに来たヒカル。そこにはガイ、リンが先に朝ごはんの支度をしていた。
「ガイさん、リンさん、おはようございます・・」
「ヒカルちゃん、おはよう。体は大丈夫か?」
 挨拶をするヒカルに、ガイが心配の声をかけてきた。
「はい・・ご心配おかけしてごめんなさい・・」
「いや、いいって。ヒカルちゃんが無事に帰ってきてくれただけでもよしと思うさ。」
 謝るヒカルにガイが弁解を入れる。優しく迎え入れてくれる彼とリンに、ヒカルは戸惑いを感じていた。
「ヒカル・・・」
 そこへタクミが現れて、ヒカルに声をかけてきた。タクミはヒカルに対して戸惑いを見せていた。
「ヒカル・・ホントに何があったんだよ・・あんなにここを離れて・・・」
「タクミ・・・」
 ヒカルに問い詰めてくるタクミを、リンが呼び止める。
「だけど、これだけの時間うちを空けて、倒れただけだなんて・・・!」
「タクミ、もういいだろ・・ヒカルちゃんを追い詰めるなって・・・!」
 さらに問い詰めようとするタクミを、ガイが言いとがめる。タクミは言い返そうとするも言葉が出ず、そのまま黙ってしまった。
「ホントに心配させてゴメンね、タクミ・・ホントにゴメン・・・」
 ヒカルが謝ると、タクミが不満を抱えたまま自分の部屋に戻ってしまった。
「タクミ・・・」
 タクミの様子を目の当たりにして、ヒカルは困惑を感じていた。彼女は彼に本当のことが言えないことに後ろめたく思っていた。
(謝るぐらいなら、ちゃんと話をしてくれればいいのに・・・)
 部屋に戻ったタクミが、ヒカルがきちんと話をしてこないと思って、不満を感じていた。

 ヒカルが休養を取る中、ガイとリンはレストランの仕事をしていた。この日は新しくウェイトレスが加わることになった。
「はじめまして。青山(あおやま)カレンです。」
「大崎(おおさき)リオです!よろしくお願いします!」
「赤塚(あかつか)アスカです・・・」
 3人のウェイトレス、カレン、リオ、アスカがガイとリンに挨拶をしてきた。
「それぞれ性格が違ってるみたいだけど、ここの仕事で1番大事なのは笑顔と挨拶。気持ちを込めてやっていくのが大切だからね。」
 ガイがカレンたちに励ましの言葉を送る。カレンたちも彼の話を真剣に聞いていく。
「お客様を笑顔で迎えて接していく。その心構えを忘れないように。」
「はい!」
 続けて言いかけたリンに、カレンたちが答える。この日の開店を迎えて、カレンたちは初仕事を始めた。
「あ、あの・・やっぱり私も仕事を・・」
 ヒカルがいても立ってもいられない気分を感じて、動き出そうとする。
「ダメよ、ヒカルちゃん。今日はヒカルちゃんの仕事の日じゃないし、今は休みを取らないと。」
「リンさん・・・それじゃ、部屋で休んでますね・・・」
 リンに注意されて、ヒカルが部屋に戻っていく。彼女を気にしたタクミが追いかけようとしたが、リンに止められる。
「タクミ、ちゃんと仕事しないとダメでしょ。」
「もう・・はいはい、分かりましたよ・・」
「“はい”は1回。」
「はーい・・」
 リンに注意されて、タクミは仕事に戻っていった。
(ヒカルちゃんが元気を取り戻せるように、私たちが元気を見せておかないと・・)
 ヒカルのために自分が元気であるところを見せなければと、リンは自分に言い聞かせて仕事に戻った。

 ガイとリンに促されて、ヒカルは部屋で休息を取っていた。ベッドに寝そべって、彼女は部屋の天井を見つめながら考え事をしていた。
(アリシアちゃんたちが戦っているあの人たち、誰なんだろう?・・どうしてアリシアちゃんを狙ってたのかな・・?)
“It seems that the enemy who aimed at her is gathering the persons having high magic nature although it is a limitation which hears the talk.(話を聞く限りですが、彼女を狙った敵は高い魔力資質を備えた人を集めているようです。)”
 ヒカルの心の声にカイザーが答える。
(高い魔力・・もしかして、ギルティアみたいな連中かな・・・?)
“Judgment material is insufficient for the question yet.Probably,it will be certain to come noting that I will inflict an injury on us.(その疑問にはまだ判断材料が足りません。ですが私たちに危害を加えようとしてきていることは間違いないでしょう。)”
(まだ分からないか・・でもあの人たちからアリシアちゃんやブレイドさんたちを守らないといけないね・・・)
“They are also you who live in this world.(この世界に住むみなさんもですね。)”
 カイザーからの言葉を受けて、ヒカルが戸惑いを覚える。
 自分が守らないといけないのはアリシアたちだけではない。ガイ、リン、タクミ、自分を助けてくれた人たちに魔の手を伸ばすわけにいかない。彼女はそう思っていた。
(また守れないなんてことにしたくない・・今度こそ守ってみせる・・大切な人、みんなを・・・)
“A feeling is known.Please be not eager too much and make.Impatience is a prohibited thing.(お気持ちは分かります。ですがあまり気負いすぎないようにしてください。焦りは禁物です。)”
 決意を固めていくヒカルに、カイザーが励ましの言葉を送る。彼女がだんだんと自分を落ち着かせていく。
(本当にありがとうね、カイザー・・これからもよろしくね・・)
“I need your help just here well.(こちらこそよろしくお願いします。)”
 声を掛け合うヒカルとカイザー。ヒカルは新たな決心を胸に秘めて、ベッドに横になった。

 フロンティア内の自分の作戦室で、ガリューは特訓をしていた。1対1で確実にブレイドを倒すため、彼は自らの体を鍛えていた。
 その彼のいる作戦室に、ローザが入ってきた。
「張り切っているみたいね、ガリュー。そんなに倒したいわけ、ブレイド・ストラトスを?」
「始末するにしても捕獲するにしても、ヤツの強さを上回るのが必須だからな。」
 声をかけてきたローザに、ガリューが訓練を続けながら答える。
「ブレイドたちを打ち負かすのも大事だけど、私たちの使命はそれだけじゃないことを忘れないでよね。」
「分かっている。だがブレイドたちがオレたちの最大の障害となっているのも事実だ。」
「障害ね・・その障害を一掃して、戦力になる人を引き入れるのがヴァンフォードの目的。ブレイドやアリシアたちもその標的なのよ。」
「そしてあの小娘、オレたちの邪魔をしてきたアイツも・・」
 ブレイドがヒカルのことも口にすると、ローザの顔から笑みが消えた。
「最初会ったときは大したことなかったのに、次に会うまでの数日の間にとんでもない魔力を持つようになった・・何があったというの・・?」
「ヤツの飛躍した魔力の正体。それが分かれば、弱点や攻め方も見えてくるかもしれないな・・」
「そのためには、もう1度あの子を戦場に引っ張り出さないとね・・」
 ガリューと会話を交わして、ローザが提案を持ちかける。
「だったらあたしがやるよ。」
 そこへラムがやってきて、ガリューとローザに声をかけてきた。
「今度こそちゃんとストレス発散させないとね。みんなまとめて打ち負かしてやるわ!」
「そうやって功を焦ってばかりなのもどうかと思うけど?」
「焦ってんじゃなくてイライラしてんのよ!アイツらを叩きのめして、初めてストレスがなくなるんだから!」
 ローザが言葉を投げかけても、ラムは戦いを仕掛けることをやめない。
「何度もやられるあたしじゃないわ・・今度こそ思い知らせてやるんだからね、アイツら!」
 ラムは不満を口にしながらガリューの作戦室を飛び出していった。するとガリューとローザが彼女に対してため息をついた。
「もう庇いきれないわね、ラム・・」
「勝手にさせておけ。もはやオレたちが助けてやる義理もない。」
 ラムを放っておくことにしたローザとガリュー。2人は自分たちが果たすべき任務に当たることにした。


次回予告

ドライブチャージシステムを得たカイザー。
新たなる魔法のため、ヒカルは訓練を行う。
大切な人、大切な場所、大切なもの。
守るため、ヒカルはヴァンフォードの襲撃に立ち向かう。

次回・「守るべきもの」

失いたくない、その一途の思いのままに・・・

 

 

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