Drive Warrior Gears

Episode02「魔法の崩壊」

 

 

 絶体絶命に追い詰められたヒカルを助けたのは、家にいたはずの金髪の少女。彼女は金色の光でローザを引き離した。
「大丈夫?・・危ないところだったみたいだね・・・」
「あなたは、いったい・・・!?」
 声をかけてきた少女に、ヒカルは戸惑いを浮かべていた。
「わざわざ私たちの前にやってくるとはね・・でもあなただけじゃなく、そこの彼女も私たちの軍門に下ることになるのよ・・」
 ローザが少女に向けて右手をかざす。少女は緊張を見せながらも、引き下がろうとしない。
「私のために、関係ない人がひどい目に合うのはイヤだから・・・」
「だから出てきたの?優しいわね・・でもその優しさはムダとなるのよ・・」
 真剣な顔の少女にローザが光を放つ。すると少女が金色の光の壁を作り出して、ローザの光を跳ね返した。
 跳ね返ってきた光を軽い身のこなしでかわすローザ。
“Get set.”
 少女が金色の宝石を組み込んだ黒い杖を取り出した。音声はこの杖から発せられていた。
「バルディッシュ、バリアジャケットをお願い・・」
“Yes sir.”
 少女の呼びかけに杖「バルディッシュ・アサルト」が答える。少女の体を漆黒の服とマントが包み込んだ。
「これって・・・まさかあの子も、ドライブウォーリアー・・・!?」
“No.She does not require it, even if something is planted also in the same classification as you by the body.(いいえ。彼女はあなたと同じ種別でも、体に何かを植え付けられてもいません。)”
 驚きの声を上げるヒカルにカイザーが説明する。
“The magic which she is using is Mid-childa system.A device is also an intelligent device.(彼女が使っている魔法はミッドチルダ式。デバイスもインテリジェントデバイスです。)”
「ミッドチルダ・・インテリジェントデバイス・・」
 カイザーの説明を聞いて、ヒカルは当惑する。頭の中に湧き上がる疑問を抑えて、彼女は少女を助けることを考える。
「今はあの子を助けることを優先しないと・・いくら魔法が使えるからって、あんな小さい子を戦いに巻き込むわけにいかない・・・!」
“Neither a crack nor physical strength is recovered yet.Participating in a battle now is dangerous.(まだ傷も体力も回復していません。今戦いに参加するのは危険です。)”
 少女を助けようとするヒカルをカイザーが呼び止める。
「カイザー・・それでも、あの子をほっとくなんてできないよ・・・!」
“Let's see a situation now.Please give priority to being accompanied by her and seceding from her at least.(今は様子を見ましょう。せめて彼女を連れて離脱することを優先してください。)”
「カイザー・・・そうするしかないかもしれない・・・」
 危険に陥ることをカイザーからとがめられて、ヒカルは状況を見ながらすぐに対応できるように備えた。

 バルディッシュを手にして構える少女。彼女を見ても、ローザは余裕を崩していない。
「いくらデバイスを使っても、その程度では私にも勝てないわよ。」
「私のために誰かがイヤな思いをするぐらいなら、私はもう逃げない・・」
 ローザに声をかけられても、少女は引き下がらない。
「だったら少し痛めつけておこうかしら・・思い知るといいわ、アリシア・テスタロッサ・・・!」
 ローザが少女、アリシアに向けて光の弾を放つ。アリシアは空に飛びあがってかわすが、弾は動きを変えて彼女に向かってくる。
 アリシアは動じることなく、冷静に弾の動きを見定めていく。
「プラズマランサー。」
 アリシアが右手をかざして、金色の光の弾を出現させる。彼女が操作する光の弾が、ローザの光の弾とぶつかり合って相殺される。
「魔力が強いだけでなく、魔力の使い方や戦い方もうまい・・私たちのためにその魔力を使えば、決してムダになることはないのに・・」
 ローザが右手をかざして衝撃波を放つ。アリシアは即座に反応して、紙一重で衝撃波をかわした。
“It seems that it is used to her and remarkable practice.Magic and management are almost perfect.(彼女、かなり実践に慣れているようです。魔法も対処もほぼ完璧です。)”
「うん・・子供なのに、私より全然すごい・・・」
 アリシアへの感心の声を上げるカイザーとヒカル。
“Was practice repeated many times or was the wonderful teacher?(幾度も実践を繰り返してきたか、もしくはすばらしい師がいたのでしょうね。)”
「それでも、あの人に勝てるかどうかは・・・」
 しかしヒカルはアリシアへの不安を消せないでいた。

 ローザと一進一退の魔力の攻防を繰り広げていたアリシア。しかしアリシアは自分が押されていると感じていた。
(このまま長引かせたら、私たちのほうが不利になる・・あの人も危なくなる・・・)
 アリシアが心の中で打開の糸口を探っていく。
(バルディッシュ、どうしたらいいかな・・やっぱり、ここはあの人と一緒に逃げるのがいいのかな・・?)
“I also think that opting for a conclusion or evacuation is the best before a battle is prolonged.I believe your judgment.(戦闘が長引く前に決着か退避を決めることが最善だと私も思います。ですが私はあなたの判断を信じます。)”
 疑問を投げかけるアリシアに、バルディッシュが答える。その答えを聞いて、アリシアが迷いを振り切る。
「ありがとう、バルディッシュ・・一気に決めるよ・・・!」
 アリシアが感謝を感じて、バルディッシュを構えた。
“Haken Form.”
 バルディッシュが形状を変えて、先端から光の刃を発する。その姿かたちは死神の鎌のようだった。
「本気で来るということね・・その攻撃、私が弾き返すわ・・」
「ハーケンセイバー!」
 アリシアがバルディッシュを振りかざし、光の刃を放つ。回転しながら進む光の刃をかわすローザだが、光の刃は反転して再び彼女に向かっていく。
 ローザは2撃目も軽い身のこなしでかわすが、アリシアが彼女に詰め寄ってきていた。
「くっ!」
 ローザが右手に魔力を込めて突出し、バルディッシュの光の刃を受け止める。
(ここまで高い力を発揮してくるとは・・私が手こずらされるなんて・・・!)
 心の中で焦りを膨らませていくローザ。アリシアに一閃に押されて、彼女が体勢を崩す。
「今!」
 アリシアがローザに向けて再びバルディッシュを振りかざす。体勢を整えきれず、ローザは回避に間に合わない。
“Another powerful magic is approaching.(もう1つの強力な魔力が接近しています。)”
 そのとき、バルディッシュがアリシアに向けて呼びかけてきた。次の瞬間、1人の男が飛び込んできてアリシアを横から突き飛ばす。
 アリシアがビルの屋上に落とされて、激しく横転する。
「その程度の相手に手こずっていてどうする、ローザ?」
「手こずってはいないわ、ガリュー。魔力の強さを直に確かめていただけよ。」
 男、ガリューにローザが悠然さを見せる。
「だったらそんなお遊びはやめて、さっさと仕事を終わらせちゃおうよ。」
 さらに1人の少女が現れて、ローザとガリューに声をかけてきた。
「あなたまでやってきたの、ラム・・?」
「だっていつまで待っても戻ってこないから、退屈になってきちゃったよ~!」
 肩を落とすローザに、少女、ラムが不満の素振りを見せてきた。
「私だけに任せられないというのは分からなくもないけど、3人もここに来たら逆に退屈することになるわよ・・」
「オレたちは任務を遂行するだけだ。私情を挟むことは許されない。」
 からかうローザだがガリューは表情を変えずに言葉を返す。
「まぁいいわ・・そういうことなら・・・」
 ローザがガリュー、ラムとともにアリシアに視線を向けてきた。
“This situation is quite disadvantageous for us.The possibility of escape of a success is also quite low as well as fighting.(この状況は私たちにかなり不利です。戦うのはもちろん、逃げるのも成功の可能性がかなり低いです。)”
 バルディッシュからの言葉を受けて、アリシアが焦りを覚える。彼女は起きてはならない事態を痛感していた。
(それでも、諦めるのはよくない・・諦めたら、その時点でその低い可能性もなくなってしまうから・・)
 危機感を感じながらも、アリシアはローザたちに抗おうとする。
「私たち3人を相手にしようとはね・・勇ましいことだわ・・」
「だが今のそれは勇気ではなく無謀。そのことを思い知るといい。」
 ローザとガリューがアリシアに告げると、ラムが右手から無数の小さな光の弾を出現させる。
「それじゃ、楽しいゲームの始まりだよー!」
 ラムが右手を振りかざして光の弾を放つ。アリシアは空に飛び上がるが、光の弾も彼女を追って方向を変えてきた。
 アリシアは冷静に弾の動きを見てかわしていく。だが彼女の背後にガリューが回り込んできた。
「えっ・・!?」
「これは1対1の勝負ではないぞ。」
 驚きを見せるアリシアに、ガリューが魔力を込めた拳を叩き込んだ。突き飛ばされたアリシアがビルの一角に叩き込まれた。
 激しく叩き落されたアリシアだったが、バルディッシュが即座に展開した球状の障壁で衝撃が和らいでいた。
「ありがとう、バルディッシュ・・助かったよ・・・」
 アリシアが感謝の言葉をかけると、バルディッシュが反応を見せる。
「でも・・このままじゃ本当に危険・・ここから脱出するにしても、いい方法を見つけないと・・確実にやられる・・・!」
 起き上がったアリシアがローザたちを見据える。ローザとラムは彼女がいつ出てきてもいいように、魔力を放てる準備をしていた。

 アリシアに襲いかかるローザ、ガリュー。ラム。3人を見てヒカルも緊張を募らせていた。
「3人も・・いくらあの子でも・・!」
“In addition to the situation of 3 to 1, every person's capability is high.Being damaged the way things stand is also a question of time. (3対1という状況に加えて、1人1人の能力が高いです。このままではやられるのも時間の問題です。)”
 不安を浮かべるヒカルに、カイザーが注意を呼びかける。
「助けないと・・このままあの子を見捨てていいなんてことない・・・!」
“Their fighting power is higher than you, and they are not perfectness of you yourself.Being damaged together with her cannot be denied, either.(ですが彼らはあなたよりも戦闘力が高いですし、あなた自身万全ではありません。彼女と一緒にやられることも否定できません。)”
「それでも・・それでもあの子を助けないと・・・!」
 カイザーからの注意を受けても、ヒカルの意思を変えない。
“Even if she pulls together with you, a possibility that this situation can be overcome is low.Please be ready for that, listen to my attention exactly and act.(あなたと彼女が力を合わせても、この状況を乗り越えられる可能性は低いです。そのことを覚悟して、私の注意をきちんと聞いて行動してください。)”
 するとカイザーがヒカルのサポートを行うことを提言してきた。
「カイザー・・ありがとう・・・それじゃ、行くよ・・・!」
 ヒカルがカイザーに感謝して、アリシアを狙っているローザたちに向かって飛び出していった。

 ビルに落ちたアリシアを、ローザたちは空中で待ち構えていた。だがラムが待ちくたびれてため息をついてきた。
「いつまで待たせるのよ・・こうなったらあぶり出してやるんだから・・・!」
 ラムが右手を掲げて、光の弾を作り出していく。
「オレたちの任務はアリシアの捕獲だ。抹殺しては元も子もない。」
「ホントにあぶり出すだけだって。このぐらいじゃさすがに即死ってことはないわよ。」
 ガリューが注意してくるのを聞かずに、ラムがアリシアが落ちたビルに向けて光の弾を放った。弾はアリシアが落ちたビルを次々と撃ち抜いていく。
「やった!これじゃいくらなんでもダメージは避けられないわね!」
「オレたちがヤツを探す手間もな・・」
 満面の笑みを見せるラムだが、ガリューが投げかけた言葉を耳にして唖然となる。
「これで雌雄が決しても、この煙の中ですぐにヤツを探し出せたのか?」
「それは・・・」
 ガリューに問いかけられて、ラムが言葉を詰まらせる。だがすぐに彼女は不機嫌を見せる。
「分かったわよ!あたしが見つけ出してくればいいんでしょ!」
 ラムが1人で立ち込める煙の中に飛び込んでいった。彼女の様子を見てガリューがため息をつく。
 煙の中でアリシアを探すラム。しかし立ち込める煙のため、彼女は見つけられないでいた。
「もう・・いるならさっさと出てきてよね・・・!」
 ラムがアリシアを探して不満を募らせていた。
 そのとき、ラムが突然動きを止められた。目を見開く彼女の手足には金色の光の輪がついていた。
「バインド・・まさかアイツ・・・!」
 動きを止められたことにラムが声を荒げる。彼女の眼前に、バルディッシュを構えたアリシアがいた。
「あなたが飛び込んできてくれて助かった・・簡単にバインドをかけることができたよ・・・」
 アリシアが落ち着きを見せて声をかけてきた。彼女が仕掛けた光の輪「リングバインド」で、ラムは手足の自由を封じられていた。
「しばらく大人しくしていて・・これ以上、私を追いかけたり、関係ない人を巻き込んだりしないで・・・」
 苛立ちを見せるラムに忠告して、アリシアがローザとガリューに視線を移す。
「あれだけ大口を叩いてやられていては世話が焼ける・・」
「いいわ。元々は私がやることだったのだから・・」
 ため息をつくガリューと、改めてアリシアに攻撃を仕掛けるローザ。
 アリシアは一気にスピードを上げて飛び上がり、ローザが放ってきた光の球をかいくぐっていく。
(うまくバインドをかけられれば、私たちもあの人も逃げられるチャンスはある・・!)
“Don't get impatient.If it gets impatient, we may be able to stop a motion conversely.(焦ってはいけません。焦れば逆に私たちが動きを封じられることになりかねません。)”
 思考を巡らせるアリシアにバルディッシュが注意を入れる。彼女はローザだけでなく、ガリューの動きにも注意を払った。
 だがまだ2対1であるため、アリシアの不利は変わらない。それでも彼女は慎重に打開の道を切り開こうとしていた。
「ムダな抵抗を・・この程度では時間稼ぎにもならない・・」
 ガリューは目つきを鋭くして、両手から稲妻のような光を放つ。光は2本の剣となって、彼の両手に握られる。
 ローザの攻撃をかわしていくアリシアに向かって、ガリューが飛びかかって剣を振りかざす。アリシアがとっさにバルディッシュで剣の1本を防ぐが、もう1本の剣を受け止めきれずに突き飛ばされる。
 バルディッシュが自動展開させた光の壁が剣を防いだものの、その勢いまでは止められず、アリシアは地上に突き落とされた。
 痛みを感じながらも立ち上がるアリシアの前に、ガリューが降下して着地した。
「遊びは終わりだ。大人しくオレたちと来い。」
 ガリューがアリシアの眼前に剣の切っ先を向ける。下手に動くことができなくなり、アリシアがじっとするだけとなる。
 そのとき、ヒカルが飛び込んできて、ガリューを横から突き飛ばした。
「大丈夫!?ケガとかない!?」
 ヒカルがアリシアに駆け寄って心配の声をかけてきた。
「あなた・・・」
 笑顔を見せるヒカルにアリシアが戸惑いを見せる。
「よかった・・3人のうち、あなたが1人の動きを止めてくれた・・今のうちに・・・!」
「私よりもあなたに何かあるほうが辛い・・だからあなたが1番に逃げないと・・・!」
 お互いの心配をするヒカルとアリシア。するとヒカルがアリシアの腕をつかんで、ローザとガリューから離れていく。
「ほっとけないよ!女の子が戦って、危なくなっているのに・・自分だけ逃げるなんてできないよ!」
「でも・・だからって、あなたが・・・!」
 声を振り絞るヒカルにアリシアが言い返したときだった。
“An attack comes from the sky.(上空から攻撃が来ます。)”
 カイザーがヒカルに向けて呼びかけてきた。ローザが彼女たちに向けて光の弾を放ってきた。
 ヒカルはアリシアを連れたまま、飛び上がって光の弾から逃げていく。
「私は助ける・・この子を絶対に見殺しにしない・・・!」
 ヒカルが決心を口にしながら、アリシアを連れてローザから離れていく。
“It comes from width.(横から来ます。)”
 そこへカイザーが声をかけてきた。ガリューが横からヒカルたちに向けて、光の剣を突き出してきた。
「危ない!」
 ヒカルがとっさにアリシアを突き放した。
 次の瞬間、ガリューの出した剣がヒカルの体を貫いた。ヒカルが自分を貫いている刃を見て目を見開く。
「えっ・・・!?」
 アリシアも眼前の瞬間に愕然となっていた。ガリューの剣はヒカルの腹部に刺さっていた。
「息の根を止めることになったが、これも仕方がない・・・」
 ガリューはヒカルから剣を引き抜く。ヒカルが力なく倒れて動かなくなる。
「そんな・・・私を庇って・・こんなことに・・・!」
 アリシアがヒカルが倒れたことに愕然となる。立ち上がれなくなってしまったアリシアに、ガリューとローザが近づいてきた。
「1人を殺してしまったのは残念だけど、まだあなたがいる・・」
「お前だけでも連れ帰る・・お前の高い魔力は、オレたちのために役立てられることになる・・」
 ローザとガリューがアリシアを捕まえようと手を伸ばしてきた。
 そのとき、ローザとガリューが突然横から突き飛ばされた。捕まえられると思ったアリシアが戸惑いを浮かべる。
「大丈夫だったか、アリシア・・」
 アリシアの前に銀髪、長身の青年が声をかけてきた。
「ブレイド・・・私は大丈夫だけど・・私を助けようとして・・・」
 アリシアの答えを聞いて青年、ブレイド・ストラトスがヒカルに目を向ける。
「彼女・・普通の人間ではない・・もしや、戦闘機人・・・!?」
「分からない・・でも、すごい魔力を持っているし、動きもうまい・・・」
 ブレイドの問いかけにアリシアが答える。
「まずはこの場から脱出するのが先決だ。彼女も一緒に連れて行く・・」
「私を助けてくれた・・敵だなんて思いたくない・・・」
 ブレイドの呼びかけにアリシアが答える。突き飛ばされたローザとガリューが立ち上がり、ブレイドに目を向ける。
「オレが注意を引き付ける。その隙にお前はできるだけ遠くへ逃げろ。オレもすぐに追いつく。」
「でもブレイド、あなただけじゃ・・!」
「オレのスピードは折り紙つきだ。たとえヴァンフォードだろうと、簡単には追い付きはしない・・」
 不安を見せるアリシアに、ブレイドが強気な振る舞いを見せた。
「あれはブレイド・ストラトス・・ここでヤツに邪魔されるとは・・・!」
 立ち上がったガリューがブレイドに鋭い視線を向ける。
「このまま逃がすわけにはいかないわ・・・!」
 ローザがヒカルを抱えて飛び上がるアリシアに向けて、光の鞭を伸ばす。だがブレイドが振りかざした右足に弾かれる。
「お前たちの相手はオレがしてやる。少しの間だけな。」
 低く告げるブレイドに、ガリューが光の剣を振りかざしてきた。ブレイドは素早い動きでガリューの剣をかわしていく。
 その間にアリシアがヒカルを連れてこの場を離れていった。
(そろそろ頃合いか・・)
 2人の姿が見えなくなったところで、ブレイドはローザとガリューの攻撃をかいくぐって、戦いの場を抜け出していった。
「待て!逃げるな、ブレイド!」
 ガリューが苛立ちを見せて、手にしていた剣を地面に突き立てる。光の剣は霧のように消えていった。
「もう少しというところで、ブレイドに邪魔されるとはね・・・」
 ローザがため息まじりに言いかけて、バインドに手足を拘束されているラムに近寄った。
「相変わらず、自力でバインドや結界を破れないのね、ラム・・」
「うるさいわね!すぐに自力で敗れるようになってやるわよ!」
 肩を落とすローザにラムが不満を言う。ローザにバインドを解除してもらい、ラムは手足の自由を取り戻した。
「今回は私たちもいい思いをしないわね。いい素材を見つけたのに逃がして、しかも1人を再起不能にさせてしまった・・」
「それはもう仕方がないことだ。本来の目的、アリシア・テスタロッサを捕まえればいい・・」
 気落ちするローザにガリューが呼びかける。
「1度戻るぞ。アリシアを捕らえるのは出直してからだ・・」
「残念だけど、そうするしかないみたいね・・」
「あたしはまだまだやれるんだけどね・・」
 ガリューの呼びかけにローザが渋々答え、ラムが強がりを見せる。彼らは結界を解除してから、街から離れていった。

 ブレイドに助けられたアリシアは、ヒカルを連れて飛行していた。心配を募らせるアリシアに、ブレイドが追い付いてきた。
「ブレイド、ヴァンフォードは・・!?」
「うまく巻いてきた・・再び見つかる前に戻るぞ・・」
 アリシアの心配の声にブレイドが答える。
「でも、この人は・・・」
「おそらくこの世界の医療や技術では治せない・・一緒に連れて行く・・・」
 眠り続けているヒカルに目を向けるアリシアとブレイド。2人はヒカルも自分たちの集まりの場所に連れて行くことを決めた。
「彼女は体内にデバイスを移植されていて、その活動によって生かされているのだろう。今、彼女は体内のデバイスが損傷して活動できなくなっている・・」
「でもそれだとこの人は、デバイスが命ってことだよ・・デバイスが傷ついてしまったら・・・!」
 ブレイドの説明を聞いて、アリシアは最悪の事態を頭に浮かべた。
 ヒカルは体に植え付けられたデバイス、カイザーによって生きている。もしもカイザーが壊れてしまうと、ヒカルは命を失ってしまうのである。
「魔法技術を駆使しても、助かる可能性は少ないのが現状だ。それでも、そのわずかな可能性に賭けたいと、アリシア、お前も思っているのだろう・・?」
「うん・・助けたい・・私を助けてくれた、この人を、絶対に・・・!」
 ブレイドに自分の願いを口にするアリシア。2人ともヒカルを助けたい気持ちは同じだった。
「なら急ごう・・オレたちのためにも、彼女のためにも・・」
「ありがとう・・ブレイド・・・」
 呼びかけるブレイドにアリシアが感謝を見せる。2人はヒカルを連れてこの場を離れた。

 ヒカル、アリシア、ブレイドとの交戦で体力と魔力を消耗したローザ、ガリュー、ラム。3人は地球の外に待機している戦艦「フロンティア」に戻ってきた。
 フロンティアは透明化や熱遮断などのステルス技術を搭載しており、地球や高い魔力の持ち主に居場所を探知されないようになっていた。
 フロンティアの艦内に入ったローザたちが、アリシアとブレイドの動向に対して憶測を巡らせていた。
「まさか手ぶらで戻ることになるとはね・・」
「今、マスター・コスモがおられないのがせめてもの救いか・・次こそは必ず・アリシア・テスタロッサを・・」
 肩を落とすローザと、責任を痛感するガリュー。
「今度はあたしだけでやっちゃうからね。今度は負けないんだから。」
「軽率に考えるのはやめろ、ラム。今度は命を落としかねないぞ・・」
 気張るラムをガリューが言いとがめる。
「今度は最初から3人でアリシアを狙う。私利私欲に走りすぎると、マスター・コスモからの制裁をうけることにつながる・・」
 ガリューが口にした言葉を聞いて、ローザとラムが息をのんだ。
「し・・仕方ないわね・・あたし、クビ切られたくないもんね・・」
 ラムが突っ張った態度を見せながら、ローザとガリューの前から去っていった。
「ローザも今のうちに体力を回復させておくことだ。今度は容赦はしない。」
「えぇ。私もそのつもりで、今度はやらせてもらうわ・・」
 ガリューが投げかけた言葉を受けて、ローザも立ち去っていった。
(我々ヴァンフォードはマスター・コスモという絶対的存在があるが、勢力拡大のための数が不足している・・戦力を整えるには、高い魔力と戦闘能力を備えた者を引き入れる必要がある・・)
 ガリューが頭の中で現状の情報を整理していく。
(あの娘は死に至らしめてしまった・・現時点で有力なのは、アリシア・テスタロッサとブレイド・ストラトス・・)
 ガリューの頭の中はアリシア、ブレイドとの決着と拘束でいっぱいになっていた。
(必ず使命を果たす・・マスター・コスモとヴァンフォードのために・・・)


次回予告

カイザーの損傷で、深い眠りに落ちてしまったヒカル。
彼女をよみがえらせるため、アリシアたちが尽力する。
ヴァンフォードに対抗する切り札。
それは、グラン式ドライブチャージシステム。

次回・「ロードサイド」

闇を切り開く光の刃・・・

 

 

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