Drive Warrior Gears

Episode01「新たなる脅威」

 

 

魔法の力。
夢や希望に満ちあふれた力であると知られている。

だが魔法も力や技術の一種。
癒しや幸福だけでなく、破壊や戦慄ももたらすことのできるもの。

悲劇と宿命を体感した戦士が今、新たなる戦いに足を踏み入れる。


 街外れに点在している家の数々。その中の1つから元気に出てきた1人の少女がいた。
 天宮(あまみや)ヒカル。活発で明るい性格をしていて、黒のショートヘアをしている。運動神経がずば抜けているが、勉強が苦手。
 ヒカルは1人で街を転々としてきた。疲れて休んでいたところを、2人の夫婦に声をかけられ、彼らの家に居候することになった。
 武藤(むとう)ガイとリン。家の近くでレストランを営んでいる。
 ヒカルはガイたちのお世話になっているお礼として、彼らのレストランで働いていた。活気あふれる彼女の働きぶりに、ガイもリンも感心していた。
「やるね、ヒカルちゃん。すっかり立派なウェイトレスだよ。」
「ここでのウェイトレスの仕事が初めてとは思えないくらいの成長ね。」
 2人が見守る中、ヒカルは笑顔で接客をこなしていった。
「ヒカルちゃん、そろそろ休憩に入ってもいいよ。少し休みながらやっていかないと疲れちゃうよ。」
「はい、分かりました、店長・・」
 ガイに呼びかけられて、ヒカルは休憩室に入った。そこには1人の青年が先に休憩していた。
 癖のあるはね具合の黒髪をしている。ガイとリンの息子、武藤タクミ。気さくな性格であるが、感情的な面を見せることも多々ある。
「ヒカル、今日もやってるみたいだね・・」
「もう、タクミ・・いつまでも休んでないでいい加減に動いてよ。いくらお客さんが少なくなってきたからって、気を抜きすぎだよ。」
 声をかけてきたタクミに、ヒカルが不満を浮かべてきた。
「接客っていろいろとコツがいるんだよね・・やっぱりオレには料理と皿洗いが似合ってる気がする・・」
「文句言うぐらいなら最初からその仕事をしなきゃいいのに・・」
 ため息をついているタクミに呆れて、ヒカルもため息をついていた。
「それを言わないでって・・やることに悩んでいるところで、何もしないのはよくないって言われて、ここの仕事をやらされてるヤツの身にもなってよね・・」
「ブラブラしてるだけの人の気持ちなんて、同じようにブラブラしてる人にしか分かんないよ・・」
 愚痴をこぼすタクミに、ヒカルはすっかり呆れ果てていた。
「ところでヒカル、こっちに来る前は何してたんだ?」
 タクミが唐突に口にしてきた言葉に、ヒカルが当惑を覚えた。タクミの問いかけに答えることをためらい、彼女は口ごもった。
「それよりも早く仕事しなきゃ。でないといくらガイさんとリンさんの子供でも、クビにされちゃうよ。」
「分かったよ。それじゃやる気を出すとするかな・・」
 ヒカルに背中を押される形で、タクミは仕事に向かっていった。彼の姿が見えなくなったところで、ヒカルは悲しい表情を浮かべた。
(人の昔のことなんて、軽々しく聞くもんじゃないよ・・あのことは、今でも忘れたいと思っているのに・・・)
“Please do not care.You only tried to protect you to you.(気にしないでください。あなたはあなたなりにみなさんを守ろうとしただけです。)”
 心の中で呟いていたヒカルに向けて声が投げかけられた。その声は外には響かず、彼女に直接伝わるものだった。
 ヒカルの体の中にはアームドデバイス「カイザー」が埋め込まれていた。地球支配を企んだ組織「ギルティア」に拉致され、彼女はギルティアの時期統治者、ドライブウォーリアー「ウラヌス」に改造された。だが彼女はカイザーの力と知識に助けられながら、ギルティアを壊滅させることに成功した。多くの犠牲とともに。
 ギルティアとの戦いを終えて新たな日常を送っている間も、ヒカルとカイザーは会話をすることがあった。
“You lead a new life now in this way, and are also following mental recovery slowly.I consider that it is better to enjoy this peaceful life.(あなたは今こうして新しい生活を送って、ゆっくりと精神面の回復も進んでいます。この平穏な生活を楽しんでいくほうがいいと、私は思います。)”
(カイザー・・ありがとう・・いつまでも落ち込むのは、みんなに悪いもんね・・・)
 カイザーに励まされて、ヒカルは微笑んだ。彼女の心の中に勇気と安らぎが膨らんできていた。
(あのときの日常はもうない・・あるのはカイザーと、私自身だけ・・・)
 辛い過去に区切りをつけようとしながら、カイザーは今の生活、レストランでの仕事に意識を傾けていた。

 順調にレストランでの仕事をこなしていったヒカル。この日の仕事の時間が終わり、彼女は大きく背伸びをした。
「では店長、お先に失礼します。」
「お疲れさん、ヒカルちゃん・・真っ直ぐに帰るのかい?」
「いえ、ちょっと街に寄り道してみようかなって思ってます・・散歩の意味も込めて・・」
「あまり遅くならないようにね・・ヒカルちゃんなら大丈夫だと思うけど・・」
 ガイとの会話を終えて、ヒカルはレストランを出て街に繰り出した。
 街は平日ということもあって、さほど人は多くはなかった。それでも街のにぎわいを見せていた。
(平和だね・・みんなが今の時間を楽しんでる・・)
“You kept this peace.(この平和をあなたが守ったのです。)”
 ヒカルの心の声にカイザーが答える。
(でも、みんなが平和に暮らしている中で、誰かが悲しい思いをしているんだね・・私たちみたいに・・・)
“It is also one of the strategy of a bad person to advance a plot, as it is not known by people.Not noticing itself is not a bad thing. (人々に知られないようにして企みを進めていくのも、悪い人の作戦の1つです。気づかないこと自体が悪いことではありません。)”
(でもカイザー、ギルティアがやったその悪いことで、みんなが・・)
“Furthermore, it is not also your cause.Because nobody's peace which is present in this world continued when you were not.(ましてあなたのせいでもありません。あなたがいなかったら、この世界にいる誰の平和も続かなかったのですから。)”
 自分を責めるヒカルをカイザーが励ます。勇気づけられたヒカルが、涙をこらえて微笑みかける。
(そうだよね・・私が何とかしなかったら、私たちだけじゃすまなかった・・誇っても、責められることはないんだよね・・・)
 気持ちを落ち着かせようとして、ヒカルがその場で深呼吸をする。
 新しい生活の場、新しい日常は始まった。気持ちのほうも新しくしようと、ヒカルは思っていた。
 そのとき、ヒカルは街の中で小さな息遣いがしているのを耳にした。普通の人の耳には聞き取りにくいほど小さかったが、改造を施されているヒカルの五感は普通の人間を超えており、その聴覚が小さな息遣いを捉えたのである。
(この感じ・・割と近い・・・!)
“There is a life reaction in 200 meters of the directions of 10:00 from here.Magic is also emitted although it is weak.(ここから10時の方向200メートルに生命反応があります。微弱ではありますが、魔力も発しています。)”
(魔力!?・・まさか、ギルティアの生き残り・・・!?)
 カイザーの助言に驚きを覚えるヒカル。彼女は息遣いの聞こえるほうに向かって走り出した。
 ヒカルは感覚を研ぎ澄ませたまま、特定の場所に行き着こうとしていた。
“Please take care.There are other reactions of magic.(気を付けてください。他にも魔力の反応があります。)”
(えっ・・!?)
 カイザーが告げた注意に、ヒカルがさらに警戒を強める。彼女は街の中の裏路地に差し掛かり、その先の角を曲がった。
 ヒカルが目にしたのは倒れている1人の金髪の少女と、彼女を取り囲む数人の黒ずくめの男たちだった。
「あなたたち・・・どうしたの!?その子に何かしたんじゃ・・!?」
 ヒカルが声を上げると、少女を取り囲んでいた男たちが振り返り、襲いかかってきた。ヒカルはとっさに動いて、男たちが繰り出してきたパンチをかわした。
「いきなり襲いかかってくるなんて・・!」
 再び迫ってきた男たちをヒカルが迎え撃つ。彼女のパンチを受けて、男の1人が突き飛ばされて壁に叩き付けられる。
 ヒカルが続けて男たちを攻撃していく。彼女の攻撃の威力は高かったが、男たちは平然と立ち上がってきた。
「この人たち、強い・・私の力を受けても立ち上がってくるなんて・・・!」
“They are not ordinary persons.It cannot be predicted to me what you do, either.(彼らは普通の人ではありません。何をしてくるのか、私にも予測しかねます。)”
 焦りを感じるヒカルに、カイザーが注意を呼びかける。
「何をしてくるとしても、このままあの子を放っておくことはできない・・!」
 ヒカルは諦めずに、少女を守るために男たちに立ち向かう。彼女はさらに力を込めて、男たちを殴り飛ばした。
 激しく壁に叩き付けられた男の体から電気が発せられた。男は電気を出しながら小刻みに震えて、その場に倒れて動かなくなった。
「えっ!?ロボット!?・・もしかしてこの人たち、私と同じ・・!?」
“No.The organic matter is not contained in the structure of their body.He is a perfect robot.(いいえ。彼らの体の構造に有機物は含まれていません。完全なロボットです。)”
 驚きを感じるヒカルに、カイザーが説明を投げかける。男たちは人の姿かたちをしていたが、機械で作られていた。
「ホントに誰なのか分かんないけど、あの子をこのままにしておくのもよくない・・・!」
 ヒカルは男たちを振り切って、倒れている少女を抱えた。彼女は少女とともに小道を進んでいくが、別の男たちが道を塞いでいた。
「こんなところにまで・・・この子を抱えたままじゃ戦えない・・どうしたら・・・!?」
“A magic reaction is not felt for the upper one.It is good to escape, after going up on a building.(上のほうに魔力反応が感じられません。建物の上に上がってから逃げるのがいいです。)”
 焦りを感じていくヒカルに、カイザーが助言をする。
(タイミングを合わせてジャンプするしかないね・・・!)
 ヒカルが男たちが迫ってくるのを見計らう。男たちはゆっくりと彼女との距離を縮めてきた。
「今!」
 ヒカルはタイミングを見計らい、上に向かってジャンプした。男たちが足を止める中、彼女は少女を連れて建物の上に上がり、すぐに素早く移動していった。
 小道から飛び出す男たちだが、ヒカルと少女を見失っていた。

 男たちから逃げ出すことに成功とした。ヒカル。彼女は人のいないところで立ち止まり、少女を下ろした。
「ふぅ・・何とか逃げ切れたけど・・・あの人たち、誰なんだろう・・・?」
“There is no data also in my way.(私のほうにもデータがありません。)”
 男たちと少女に対する疑問を、ヒカルもカイザーも感じていた。
(この子、ホントに誰なんだろう・・あの人たちに襲われていたから、ただ事じゃないよね・・・?)
“Magic is felt from her.It is clear that he is not an ordinary human being.(彼女から魔力は感じます。普通の人間でないことは確かです。)”
(やっぱり魔力があるんだね・・私と同じなのかな・・・?)
“It cannot be concluded.At present, it cannot be understood whether the device is planted like you, and whether it had magic from the first.(それは断定できません。あなたと同じようにデバイスを植えつけられているのか、元々魔力を備えていたのか、現時点では分かりかねます。)”
 疑問を抱くヒカルにカイザーが自分の考えを告げる。少女がまだ目を覚まさない今、彼女への疑問は解消されないままだった。
(やっぱり、ガイさんとリンさんに相談したほうがいいかな・・?)
“Probably, it is not good to judge freely only by me and you.Probably, it will be better to ask for cooperation, if convenient.(私とあなただけで勝手に判断してしまうのはよくないでしょう。支障がなければ協力を求めたほうがいいでしょう。)”
(カイザーもそう思うんだね・・でも、このまま連れてったら逆にビックリさせちゃったり心配させたりするよね・・どう話したらいいのか・・・)
 少女を保護する上での1番の問題に、ヒカルは悩まされた。見ず知らずの女の子を連れ込んだら、逆に騒ぎになってしまう。
“You do not have what malice.It will be satisfactory even if it talks honestly,if it does not use to be related with magic etc. as a mouth.(あなたには何の悪意もありません。魔法などに関することを口にしなければ、正直に話しても問題はないでしょう。)”
(カイザー・・別に悪いことをしたわけじゃないけど・・ガイさんとリンさんなら分かってくれるよね・・・)
 カイザーに励まされて、ヒカルは楽天的に考えることにした。まずは少女の手当てが先だと判断して、彼女はレストランに向かった。

「ヒカルちゃん、何なんだい、その子・・・!?」
 レストランに戻ってきたヒカルに驚きの声をかけていたのはタクミだった。彼は彼女が抱えている少女を指さしていた。
「ち、ちょっとわけありで・・変な人たちに襲われてたのを助けたんだけど・・・」
「おおっ!いいことしたんだね、ヒカルちゃんは~♪」
 何とか事情を説明しようとしたヒカルに喜びの声を上げたのはガイだった。
「健気な女の子を助ける・・なんて優しいんだ、ヒカルちゃんは~♪」
「あ、ありがとうございます、ガイさん・・・」
 喜びを見せるガイに、ヒカルは唖然となっていた。
「そういう問題じゃないだろ、父さん!ちゃんと事情をハッキリさせないと、人さらいに間違われても文句は言えないぞ!」
「心配ないさ。別に悪いことをしてるわけじゃないんだから。ちゃんと事情を話せば分かってもらえるさ。」
 不満の声を上げるタクミだが、ガイは楽天的に振る舞うばかりだった。
「母さん!母さんも父さんに言ってやってくれよ!」
 タクミがリンに振るが、リンもガイとヒカルの行為を喜んでいた。
「お父さんの言う通りよ、タクミ♪お父さんやヒカルちゃんみたいな優しい人にならないとダメなんだから♪」
「母さんまで・・もう、オレは付き合ってられないよ・・」
 すっかり呆れ果てたタクミは部屋を出て行ってしまった。
「タクミったら・・」
 彼に不満を感じてふくれっ面を浮かべるヒカル。
「とりあえず私の部屋のベッドに寝かせますね。目を覚ましたら、私が話を聞いてきます・・」
「でも、それだとヒカルちゃんの寝る場所が・・」
 提案を口にするヒカルに、ガイが困った顔を見せる。
「大丈夫ですよ。私、どこでも寝られるようになりましたから・・」
 ヒカルは笑みをこぼして、眠っている少女を抱えてレストランを出て行った。
「大丈夫かな、ヒカルちゃん1人で・・?」
「ヒカルちゃんはしっかりしてるから、ここは信じてみよう・・タクミにヒカルちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだよ・・」
 心配するリンに励ますガイが、タクミの性格に対してため息をついていた。

 家に少女を連れて行き、ベッドに寝かせたヒカル。眠り続けている少女を、彼女は見つめて心配していた。
(この子、ホントに誰なんだろう?・・普通の人間じゃないのは間違いないの、カイザー・・?)
“There is no doubt that point. It has a magical power greater than the average person.(その点は間違いありません。普通の人を上回る魔力を備えていますので。)”
 ヒカルの心の声にカイザーが答える。
(目を覚まして、うまく話してもらえるならいいんだけど・・・何かとんでもないことが起こるんじゃ・・・!?)
“Assertion can not be both. I hope that you do not even anything as I am.(どちらも断定はできません。私としても何事もないことを祈っています。)”
 互いに不安を感じていくヒカルとカイザー。何か起こるのではないかという予感を、彼らは拭うことができないでいた。
 そのとき、眠り続けていた少女が意識を取り戻し、目を開けてきた。
「よかった・・気が付いたんだね・・・」
 体を起こした少女に、ヒカルが喜びの笑顔を見せる。少女は呆然としたままヒカルを見て、そして部屋を見回していく。
「ここは・・どこ?・・・私は、確か追われてて・・・」
「うん・・あなたを見つけて助けて、ここに連れてきたんだよ・・あの人たちなら追ってきてないよ・・・」
 問いかける少女に、ヒカルが笑顔を見せる。彼女が知らない人であったため、少女は怯える。
「大丈夫だって・・ここなら何も危ないことはないから・・」
 ヒカルが優しく言葉をかけるが、少女は不安を拭えないでいた。ヒカルは彼女に困ってしまうが、すぐに真剣な表情を浮かべた。
「何かあったのか、話してくれないかな?・・話してくれたら、私はあなたを助けられるかもしれない・・・」
 ヒカルが少女に向けて手を差し伸べてきた。少女は恐る恐る彼女の手を取った。
 そのとき、ヒカルは少女から不思議な感覚を感じ取った。それが少女の魔力であると推測することは、ヒカルには難しいことではなかった。
(この感じ・・・私も感じ取れた・・やっぱりこの子、私と同じように、魔法の力を持っている・・・!?)
“It is not only it.It corresponds to no nature of magic which I can know.(それだけではありません。私の知り得るどの魔力の資質にも該当しません。)”
 少女から伝わってきた魔力に、ヒカルもカイザーも驚きを感じていた。手を放したヒカルに、少女も戸惑いを見せていた。
「あなた・・・あなたも、もしかして・・・?」
「えっ・・・!?」
 少女が投げかけた言葉を聞いて、ヒカルが戸惑いを見せた。
“The magic of the high numerical value occurred south-southeast.(南南東に高い数値の魔力が発生しました。)”
 そのとき、カイザーが強い魔力を感知した。ヒカルだけでなく、少女も魔力が発せられたほうに振り向いた。
「近づいてくる・・あの人たちが・・・!」
「近づいてくる・・君を追ってたあの黒ずくめの人たちのこと・・・!?」
 息をのむ少女にヒカルが問いかける。少女は震えていて答えることができない。
“Magic has been approaching here.Aren't we aimed at?(魔力はこちらへ接近してきています。私たちを狙ってきているのではないでしょうか?)”
 カイザーからの助言を受けて、ヒカルは決断した。
「あなたはここにいて。私が出たらドアの鍵を閉めて。誰が来てもドアを開けないでね・・」
 ヒカルは少女に呼びかけてから、部屋を飛び出した。少女は困惑を抱えたまま、閉ざされたそのドアをじっと見つめていた。

 迫ってくる巨大な魔力に向かって、ヒカルは走っていた。その魔力を強く感じるようになり、彼女は緊張を募らせていた。
「やっぱり私たちを狙ってきているみたい・・もしかしたら、あの子だけを狙っているかもしれない・・・!」
“Probably, it will be certain which it is.It has still turned to the direction of movement here.(どちらかということは間違いないでしょう。依然として進行方向はこちらに向いています。)”
 ヒカルが口にした言葉にカイザーが答える。
“Please take care.Because it is what there should be no telling what do and should be looked out for also for magic being high.(気を付けてください。何をしてくるか分かりませんし、魔力が高いというだけでも警戒すべきことですから。)”
 カイザーからの注意にヒカルが頷く。立ち止まった彼女の前に、ひとつの光が降り注いだ。
 その光の中から1人の女性が現れた。長い黒髪と特異なスーツとマントを身に着けた女性である。
「ターゲットの他にもう1つ強い魔力を感じていたが、あなたのことだったようね・・」
「あなた、あの子を狙っているんだね・・あんな女の子をみんなで襲うなんて・・・!」
 淡々と言いかけてくる女性に対し、ヒカルが身構える。
「あなたたち、何なの!?何であの子を狙うの!?」
「あなたには関係ない、というところだけど、見込みのある魔力の持ち主と見て、特別に教えてあげる・・」
 ヒカルが問いかけると、女性が妖しく微笑んできた。
「私はローザ。ヴァンフォード兵団隊長よ。」
「ヴァンフォード・・・!?」
 女性、ローザに対してヒカルが疑問を募らせる。
“I also heard it for the first time.I do not have the information about the language.(私も初めて聞きました。その言葉に関する情報は私にはありません。)”
 カイザーもローザの言葉に疑問を感じていた。
「ヴァンフォードはこの世界からはるか彼方にある惑星と、その大国の名よ。情報では、この世界はまだヴァンフォードの存在さえも見つけられていないようね・・」
「そのヴァンフォードがあの子に何の用なの!?あの子もそのヴァンフォードだっていうの!?」
「あの娘は違う。別の世界の人間だが、強い魔力資質を持っていたからね。私たちの戦力にしようと思って・・」
 ヒカルが投げかける問いかけに、ローザが笑みを見せたまま答えていく。
「でもあなたも強い魔力資質を持っているようね・・あなたにも来てもらうことにするわ・・」
「冗談じゃない!私もあの子も、あなたたちの思い通りにはいかない!」
 手招きをしてくるローザに、ヒカルが敵意を見せて構えを取る。
「抵抗する気?それは最も愚かな行為よ・・・!」
 笑みを消したローザが右手を突き出すと、ヒカルが大きく跳ね飛ばされた。ローザの放った衝撃波がヒカルを襲ったのである。
(すごい力・・ホントにすごい魔力を持ってる・・・!)
「カイザー!」
 ローザのパワーを痛感したヒカルが声と力を振り絞った。すると彼女の体がまばゆい光に包まれた。
 ヒカルの体を新たに形成された衣服が包み込んでいく。その形状は黒を基調とした軍服のように見え、丈夫な材質が盛り込まれていた。
 防護服「バリアジャケット」の形成である。
「それがあなたのバリアジャケット・・ドライブウォーリアーのウォーリアー・ウラヌスね・・」
 バリアジャケットを身に着けたヒカルを見て、ローザが微笑んでいく。
“Please take care.The magic of the prospective more than may be demonstrated.(気を付けてください。予想していた以上の魔力を発揮してくる可能性があります。)”
 カイザーが投げかけた注意に、ヒカルは緊張を抱えたまま頷く。
「あなたのこともある程度調べているわ・・その力を直接確かめさせてもらうわ・・」
 ローザが両手を掲げて、数多くの光の弾を出現させた。その弾がヒカルに向かって飛んでいく。
 ヒカルは的確に動いて光の弾をかわしていく。
“An orbit is changed and it returns.(軌道を変えて戻ってきます。)”
 カイザーがヒカルに呼びかけたと同時に、彼女がかわした光の弾が転回して戻ってきた。
「よけてても意味がない・・グランドスフィア!」
 ヒカルも光の弾を出して、ローザの光の弾を迎え撃つ。光の弾がぶつかり合って、相殺の爆発を起こした。
 ヒカルはローザの動きを探ろうとした。だが彼女の眼前にローザが迫ってきていた。
「本当になかなかやるわね・・でも・・」
 ローザがヒカルの体に右手を当てた。その掌から光があふれ出してくる。
「私たちに刃向かうには力が足りなさすぎる・・・」
 ローザが右手から光を放出した。放たれた光がヒカルの体を貫いた。
 ドライブウォーリアーとしての高い身体能力で、体の再生を速やかに行い、出血は最小限に食い止められた。だが体を駆け巡る激痛とダメージは生半可なものではなかった。
「ぐっ・・・!」
 倒れたヒカルが、込み上げてくる痛みに必死に耐える。彼女はかろうじて意識を失わないようにした。
「急所は外しておいたわ。殺してしまうのはもったいないから・・でも、これ以上抵抗してくるようなら、話は別だけど・・」
 ローザがヒカルの前に来て見下ろしてくる。
「抵抗しないと・・でないと私だけじゃなくて、あの子まで危ないことに・・・!」
「そう・・なら敵として、今ここで排除させてもらうわ・・」
 従おうとしないヒカルに向けて、ローザが右手を伸ばす。ダメージの大きいヒカルには、ローザの魔力をかわす力が残っていない。
 そのとき、ローザが魔力を突然消して後ろに下がった。彼女がいた場所に金色の光が飛び上がってきた。
「えっ・・・!?」
 ヒカルはこの瞬間に目を疑っていた。彼女とローザの間に立っていたのは、家にいるはずの金髪の少女だった。


次回予告

再び幕を開けた戦い。
ヒカルの前に現れた少女の正体は?
ヴァンフォードとは?
かつてない危機を目の当たりにしたヒカルは、果たして・・・?

次回・「魔法の崩壊」

この脅威、抜け出す術はあるのか・・・?

 

 

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