Blood Sexual Twin- File.8 氷と紅

 

 

 青年の命が失われたことにより、美女たちを封じ込めていた水晶が粉々になる。解放された美女たちが、一糸まとわぬ姿で意識を取り戻す。

「あ、あれ?・・あたし・・・」

「えっ!?私、裸!?

「そういえばあのおかしな人に何かされて・・・」

 美女たちがいろいろな様子を見せていた。その中でルナとナナは床に横たわっていた。

「やっぱりみんな、落ち着かなくなっちゃうよね・・・」

「ここは成り行きに任せよう・・今の私たちには、もうやることをみんなやりきったから・・」

 ナナの言葉に答えながら、呼びかけるルナ。2人は疲労にさいなまれて、そのまま眠りについた。

 

 その後、駆けつけた警察によって、誘拐された美女たちは保護された。ルナとナナもその保護下を受け、落ち着きを取り戻しつつあった。

 それから2人は帰宅し、平穏の時間に戻っていった。

「やっと戻ってこれたって感じだね・・」

「本当に・・戻ってこれてよかったと思っている・・ナナと一緒に帰ってこれて・・」

 ナナが言いかけると、ルナが微笑んで答える。ルナはここに戻ってきたことに、初めて強い安心感を覚えていた。

 強くなることへの重圧にさいなまれ、ルナは精神的に参っていた。ナナの支えがなければ、ルナは家に戻れなかったかもしれない。

「ありがとう・・ナナがいなかったら、私は・・・」

 ルナが言いかけると、ナナが彼女の口元に指を当ててきた。

「もうそれ以上言わないで。ルナは私のために命懸けになってくれたんだから・・」

 ナナに言いかけられて、ルナは安心感を覚える。彼女はもう何も言う必要はないと思うことにした。

「今日はもう休もう、ナナ・・このままベットに入って・・」

「そうね・・今回は本当に疲れてしまったね・・」

 ナナとルナは声を掛け合うと、一糸まとわぬ姿のままベットに横たわった。2人は寄り添いあい、互いの肌に触れる。

「こうして体に触れていると、気分がよくなってくる・・」

「今夜はナナが私に触れてきて・・私のこと、好きにしていいから・・・」

 安堵の笑みをこぼすルナに、ナナが囁きかけてきた。その言葉に促されて、ルナがナナの胸の谷間に顔をうずめてきた。

「ハァ・・ルナの息が、私の体に・・・」

 ルナの息遣いを感じて、ナナがうめく。するとルナがナナの乳房に口をくわえてきた。

「あはぁ・・吸って・・もっと吸って・・もっとムチャクチャにして・・・」

 押し寄せる快感を堪能して、ナナがさらにあえぐ。ルナはナナの胸を揉み、さらに舌で彼女の肌を撫でていく。

 高まっていく快楽を抑えることができなくなり、ナナは秘所から愛液をあふれさせた。感情のこもった液が、ベットのシーツをぬらしていく。

「我慢しなくていいよ、ナナ・・あなたの気持ちを、もっとあふれさせて・・・」

 ルナは言いかけると、ナナの秘所に顔を近づけ、舌を入れる。その接触にナナが叫ばずにいられなかった。

「あぁぁ・・ルナ・・ルナ・・・!」

 快感が頂点に達し、絶叫を上げるナナ。ルナは顔を離すと、再びナナを抱きしめた。

「ナナ・・私の気持ち、ちゃんと伝わったかな・・・?」

「うん・・ルナの気持ち、ちゃんと伝わったよ・・・」

 ルナの囁きにナナが頷く。2人は肌を触れ合ったまま、この一夜を過ごしたのだった。

 

 夜の街をビルの屋上から見下ろしていたミーナ。彼女はお酒を口にしており、泥酔していた。

「ふぅ・・夜のお酒は、最初は暑苦しくなるけど、時間がたつと涼しくなっていい気分になってくるのよねぇ〜・・」

 一息ついて感嘆の言葉を呟くミーナ。

「それにしてもあのナナっていう子、すごい力だったなぁ〜・・あれは火傷じゃすまないねぇ〜・・」

 ミーナはふと、ナナのことを思い返していた。

 ミーナはルナとナナと対面し、1度2人を氷付けにしたことがある。だがナナの力によってその氷は破られた。

「またちょっとよっかい出してみようかなぁ〜・・久しぶりに楽しい時間を過ごしてみたいし〜・・」

 ミーナは言いかけると、再びお酒を口にする。彼女は千鳥足のまま、屋上を後にした。

 

 翌朝、ルナとナナは同時に眼を覚ました。2人は互いの顔を見つめ合って、笑みをこぼした。

「おはよう、ナナ・・ゴメンね、昨日はやりすぎて・・」

「ううん・・本当にスッキリした気分だよ・・ありがとうね、ルナ・・・」

 苦笑いを浮かべるルナに、ナナが笑顔を見せる。

「でも今度は、私がルナをいじるからね・・私も、ルナに気持ちを伝えたいから・・・」

「分かったわ、ナナ・・でも、お手柔らかにね・・」

 ナナの言葉を受けて、ルナは笑みをこぼして頷いた。

「それじゃ、昼間は買い物に行くとするわね。いろいろと買っておきたいものもあるし・・」

「なら私も一緒に行くよ。2人でなら楽しい買い物になると思うから・・」

 ルナが提案したことにナナが同意する。2人は買い物のため、街に繰り出すことにした。

「でもちゃんと服は着ないとね。」

「そうだね、エヘへ・・」

 この朝、ルナとナナから笑顔が途切れることはなかった。

 

 昼間の街はにぎやかさで満たされていた。その中でルナとナナはひと時の急速を楽しむことにした。

 新着の洋服のチェック、アイスやクレープなどの買い食い、アクセサリーなどの品定め。

 戦いや事件から離れた日常を堪能して、ルナとナナは安らぎを感じていた。

 その最中、2人はレストランにて小休止していた。

「ふぅ・・何だか張り切りすぎたね・・」

「そうだね・・思いっきり買いすぎちゃったよ・・」

 ルナとナナが感嘆の言葉をかける。2人はこの有意義な時間に感謝していた。

「私たちは、その・・いろいろあるからね、いろいろ・・だから、いろいろ買っても損じゃないって言うか・・」

「ウフフ、そうだね・・今の私たちにとって、何気ないことがかけがえのないものになると思うよ・・」

 照れくさそうに言いかけるルナに、ナナが笑顔をこぼす。その言葉を受けて、ルナも落ち着きを取り戻した。

「私たちはブラッド。闇に紛れて生きるのが性・・だからこそ、こういう日常に憧れたりする・・・」

「そうだね・・私の場合、こういう時間を過ごしたことがほとんどなかったから・・余計に嬉しく感じるよ・・・」

 淡々と言いかけるルナと、過去を思い返して物悲しい笑みを浮かべるナナ。

「これから一緒に楽しい時間を過ごしていこうね、ナナ・・・」

「ルナ・・・うん・・」

 ルナの励ましを受けて、ナナは安心感を込めた笑みを見せて頷いた。

 互いに支えあい、弱さを補っている。この絆がある限り、2人は決して絶望することはない。ルナもナナもそれを確信していた。

「キャアッ!」

 そのとき、通りから突如悲鳴が湧き上がった。その声を聞いて、ルナとナナが緊張を覚える。

「何かあったのかな、ルナ・・・!?

「行ってみよう、ナナ・・」

 悲鳴の上がったほうへ向かうルナとナナ。2人が目撃したのは、凍りついた人々だった。

「氷付け・・・!?

「この力・・もしかして・・・!?

 ナナが声を荒げ、ルナが思い立つ。2人はこの氷付けを引き起こした犯人の気配を探す。

「この力・・確かミーナって人の・・・」

「うん・・多分、私たちを誘っている・・・」

 ナナの言葉にルナが答える。2人は集まってきている人込みを抜けて、ミーナを居場所を探した。

 近くのビルの屋上に眼を向けると、そこにミーナがいた。彼女はワインの瓶を片手に酔っていた。

「酔ってる・・・」

「あんなところから街の人を凍らせるなんて・・しかも私たちを誘い出すために・・・」

 呆れるルナの隣で、ナナがミーナに向けて敵意を見せる。ミーナが陽気な態度で、2人に向けて手招きをする。

 その誘いに乗るようにナナが駆け出し、ルナもそれに続く。2人はミーナの待つ屋上にたどり着いた。

「わざわざ誘いに乗ってくれたのねぇ〜・・ありがとうねぇ〜・・」

「私たちを誘い出すために、関係ない人まで・・・」

 気さくに声をかけてくるミーナに、ナナが鋭く言い放つ。

「だって暑苦しかったんだもん〜・・」

 ミーナの気のない返事に、ルナもナナも呆れるばかりだった。

「とにかく、このような茶番はやめてもらうわよ。私たちに用があるなら、直接会いに来なさい。」

「だから〜・・暑苦しかったから涼しくしただけだって〜・・」

 気持ちを落ち着けたルナも言いかけるが、ミーナは緊張感のない態度で返すばかりだった。次の瞬間、ルナがミーナに向けて紅い刃を解き放つ。

 刃はミーナのよこをすり抜けていった。かすめた彼女の右の頬から血があふれる。

「次に悪ふざけしたら、すぐに終わらせるわよ。そうなったら、あなたも死んでも死に切れないはずだけど・・?」

 鋭く言い放つルナ。ミーナがひとつ吐息をつくと、ようやく真剣な面持ちを見せた。

「そろそろ真面目にならなくちゃいけないみたいね・・・」

 真面目になったミーナが、出現させた氷の剣を手にする。

「ちょっと本気でやりあってみたいなぁって思ってね・・あなたたちの力がどれくらいまで強くなるのかをね・・」

「挑戦したい、ということだね・・私としては、戦いは好きじゃないんだけど・・」

 ミーナの言葉に対し、ナナが沈痛の面持ちを浮かべる。だがミーナはそれを真に受けようとしない。

「不満みたいだけど悪いね・・ちょっと本気になってもらうよ・・」

「そんなに相手をしたいというなら、断れそうもないわね・・でも、ここだと被害が出る。誰もいないところに場所を変えるよ・・」

 詰め寄るミーナにルナが言い放つ。

「いいわ・・あんまり熱くないところだったら、どこでもいいわよ・・」

 ミーナがそれに同意し、ひとまず氷の剣を消した。

 

 3人がやってきたのは、風通しのいい草原だった。通り過ぎる風を感じて、ミーナが安堵を覚える。

「ここなら問題はないと思うんだけど・・・?」

「問題なし。むしろいいところを紹介されて、感謝しているくらいよ・・」

 ルナの言葉に、ミーナが笑みをこぼす。

「それじゃ改めて、あなたたちの力を見せてもらっちゃおうかな・・・」

 ミーナは微笑んで言いかけると、再び氷の剣を手にする。ルナも紅い剣を出現させて、彼女を迎え撃つ。

「ルナ、私も戦うよ・・ルナを傷つけさせはしない・・・」

 ナナの言葉を聞いて、ルナが小さく頷く。そこへミーナが飛びかかり、氷の剣を振り下ろす。

 ルナが紅い剣を振りかざし、ミーナの一閃を受け止める。ミーナは空いている左手をかざし、冷気を放とうとする。

「ルナ!」

 そこへナナが紅い閃光を解き放ってきた。ミーナはとっさにルナから離れて、攻撃をかわす。

「ルナ、大丈夫!?

「ナナ・・うん、平気・・」

 ナナの呼びかけにルナが答える。ナナがミーナに向けて再度閃光を放つ。

 ミーナが剣を振りかざして閃光を弾き返そうとする。だが閃光を受け止めきれず、剣が折れてしまう。

「なかなかやるね・・でもこれならどうかな?」

 笑みをこぼしたミーナが手を振りかざし、吹雪を巻き起こす。その冷たい烈風にあおられて、ルナとナナが身構える。

「このままじっとしていたら、凍り付いて動けなくなる・・・!」

「少しでも動いて、氷を取らないと・・・!」

 氷付けにされるのを避けるため、ルナとナナが動き出す。だが2人が離れ離れになったのを狙って、ミーナがナナの前に立ちはだかる。

「これからじっくり遊んであげるわよ・・」

「ナナ!」

 笑みを見せるミーナと、とっさに駆け出すルナ。ナナとミーナが閃光と吹雪を放ち、衝突させる。

「キャッ!」

 その衝撃の反動で、ナナとミーナが突き飛ばされる。ミーナは吹雪を振りまいて、体勢を整えて着地する。

「けっこう熱い攻撃をしてくるじゃない・・こういう意味で冷や冷やするのは、あんまり好きとはいえないね・・」

 苦笑を浮かべたミーナが、横転したナナに眼を向ける。

「ちょっと早い気もするけど、氷付けにするとしようか・・」

 ミーナがナナに向けて右手をかざす。その手のひらから白く冷たい風を収束させる。

「今度はちょっと強めに行くよ・・また相殺されたり跳ね返されたりしたらいけないからね・・」

 ミーナが力を込めて、ナナに向けて吹雪を放つ。ナナも負けじと紅い閃光を放ち、これを迎え撃つ。

 ぶつかり合った2つの力が押し合いへと発展する。だがナナが徐々にミーナに押されていっていた。

「このままだとナナが危ない・・・!」

 思い立ったルナが手にしている剣に力を込める。彼女はミーナの放つ吹雪をその剣で切り裂く。

 その一閃は追い込まれていたナナを救った。だが弾かれた吹雪はまだ効力を失ってはいなかった。

 吹雪は勢いを殺さず、ルナを取り巻いて閉じ込めた。

「けっこうクセがあるでしょ、私の吹雪は・・」

 ミーナがルナに向けて笑みを見せる。ルナが吹雪を跳ね返そうと剣を振りかざすが、吹雪に当たった瞬間、剣が折れてしまう。

「えっ!?

 折れて消滅した剣にルナが驚愕する。

(あの吹雪に最初に攻撃したときに・・・!)

 思い立ったルナに向けて、吹雪の渦が狭まっていく。彼女の体を出現する氷に包まれていく。

「ルナ!」

 たまらず叫び声を上げるナナ。ルナが抗うことができずに、さらに氷に包まれていく。

「ゴメン、ナナ・・油断した・・みた・・・い・・・」

 ナナに言いかけるルナが眼前に氷に包まれる。ミーナの強力な吹雪の効力で、ルナは氷付けにされてしまった。

「そんな・・・ルナ・・・!」

「これは彼女が私より弱いわけじゃないの。ただあなたを守ろうとしたから、私の冷気をかわしきれなかっただけ・・」

 愕然となるナナに向けて、ミーナが淡々と言いかける。

「次はあなたの番よ・・残念だけど、彼女を閉じ込めた氷は、前のときよりも頑丈にしているから、強引に出てくるにしても、時間がかかるよ・・」

 ミーナがナナに向けて三度吹雪を放つ。だがナナの体にまとった紅い光によって弾かれる。

「ん・・・!?

 ミーナが思わず眼を見開く。ナナが光をまとったまま、ミーナに眼を向ける。

「よくもルナを・・もう容赦しない・・・」

 冷淡に言い放ったナナが、光を解き放つ。爆発のような衝撃にあおられて、ミーナが怯む。

「こ、こりゃ効くね・・こりゃ、火傷ぐらいじゃすまないかも・・」

 苦笑いを浮かべるミーナが、無数の氷の刃を出現させる。だが放とうとした瞬間、この刃が弾けるように粉砕される。

 これもナナの力だった。瞬間的に放たれた衝撃波が、氷の刃を叩き潰したのである。

「ルナを氷から出して・・でないとあなたを殺してから、私の手で助け出すから・・」

「やれやれ、怖いね・・熱いね・・こりゃまとにやり合って勝てる気がしてこないよ・・でもその彼女を人質にしたらどうなるのかな?」

 鋭く言い放つナナの前で、ミーナがルナを閉じ込めている氷塊に手を当てた。

「私の力で凍らされている彼女は全くの無防備。私がちょっと力を加えるだけで、彼女の命も粉々になるよ・・」

 ナナに向けて淡々と言いかけるミーナ。ルナの命は今、彼女の手の中にあった。

 

 

File.9

 

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