Blood –Cursed Eyes- File.9 絶望

 

 

 それは、私とレイジが初めて会った日。レイジが家に帰ろうとしていたときだった。

「あ、そうだ。これを君にあげるよ。」

 レイジが唐突に私に、ペンダントらしきものを渡してきた。十字架の彫刻が施されている銀のメダルだった。

 銀や十字架などが吸血鬼が嫌うものなどという噂や作り話を耳にはしていたが、ブラッドにはそんな弱点はない。私はレイジに自分がブラッドであることを言わなかったし、レイジも私が人間でないことを知らない。

「これを私に?・・・ダ、ダメだ!こんないいもの、私は受け取れないよ・・・!」

 私にもこれが高価なものだということはすぐに気づいていた。そんなものを簡単に受け取るわけにいかない。

 だがレイジは笑顔を見せてこう言ってきた。

「どうしても受け取りたくないっていうなら、明日まで預かっておいてくれないかな?明日また会う約束の意味を込めてね。」

「約束・・・私とレイジがまた・・・」

「うん。そのときに返してくれればいいよ。ホントは友情の印でもらってほしかったっていうのが本音なんだけどね。」

 笑みをこぼすレイジの思いが、私は嬉しかった。そこまで私はレイジに思われている。そのことが嬉しくてたまらなかった。

「ありがとう・・それでは、とりあえず預かっておくよ。」

「お礼を言うのはこっちのほうだよ。僕のわがままを聞いてくれて、ありがとね、マナちゃん・・・」

 お互いに礼を言う私とレイジ。大切なペンダントを私に預けて、レイジは私と別れた。

 だけど結局、そのペンダントを返すことはできなかった。

 

 ヒカルの助力を受けて、マナを探しに外に出ていたミナミ。町から外れた小さな丘にたどり着き、そこで彼女は仰向けに倒れているマナを発見する。

「マナちゃん!」

 ミナミが慌ててマナに駆け寄り、体を起こして呼びかける。

「マナちゃん、しっかりして!マナちゃん!マナ・・・!」

 呼びかけていた中、ミナミは奇妙な感触を覚える。マナを支えていた手をおもむろに見つめると、その手のひらに血がついていた。

「マナちゃん・・・!?」

 ミナミは紅く染まっていく手を見つめたまま愕然となる。さらに視線を移すと、マナは胸を貫かれて出血していた。

「マナちゃん・・・しっかりして、マナちゃん!今すぐに病院に向かうから!」

 気持ちを引き締めて、ミナミはマナを抱えて丘を駆け出した。まだ間に合う。マナは絶対助かる。そう信じてミナミはひたすら走り出していた。

 だが町の病院にたどり着こうとしたとき、マナが閉ざしていた眼をゆっくりと開けたのだった。

「ここ・・は・・・?」

「えっ・・!?」

 唐突に口にしてきたマナの声に、ミナミが驚いて足を止める。眼を疑ったが、マナはミナミの見つめる中で声を振り絞っていた。

「マナちゃん、大丈夫なの・・・!?」

「ミナミ・・・私は・・・?」

 互いに疑問を投げかけるミナミとマナ。ミナミの腕から下りて、マナは自身の安否を確かめる。

「どういうことなんだ・・・私は胸を刺されて・・・」

「そうだよ・・・マナちゃん、血がいっぱい出て、とても助かる傷じゃないはずなのに・・・」

 平然と立っているマナの様子に、ミナミは動揺を隠せなかった。

「なぜ私は生きているんだ・・・いくらブラッドでも、これほどの傷を受ければ・・・」

 九死に一生を得たことに疑念を抱いていたときだった。マナは胸元からあるものを取り出した。

 それは7年前にレイジから預かったままだった銀のメダルである。メダルの中心に傷がついていた。

「レイジ・・・お前が、私を守ってくれたのか・・・?」

 傷ついたメダルを手にして、マナは戸惑いを浮かべた。彼女は思わず眼から涙をあふれさせていた。

「それ、レイジが子供の頃に大事にしてた・・」

 そこへミナミが声をかけ、マナが困惑を浮かべたまま振り返る。

「おかしいわね・・確かレイジ、失くしたって言ってたのに・・・」

 疑問符を浮かべるミナミの言葉を聞いて、マナは思わず笑みをこぼした。

「・・・ありがとう、レイジ・・・でも、私はお前にまだ謝っていない・・・」

 マナはペンダントをしまって、屋敷のほうへと眼を向けた。

「戻ろう、ミナミ。レイジのところに戻ろう。戻って、レイジと話がしたい・・・」

「ヒカルちゃんの感謝しないとね。マナちゃんの居場所を探してくれたのは、ヒカルちゃんなんだから。」

「ヒカルが?・・・余計なことを・・・」

 ミナミのこの言葉にも、マナは笑みをこぼしていた。照れ隠しに悪ぶっていると察して、ミナミも笑みを浮かべていた。

「とにかく戻りましょう。今日はパーティーなの。」

「パーティー・・・悪くないかもな・・・」

 笑顔を見せるミナミに、マナは小さな笑みを浮かべていた。

 

 その頃、ベットで横になったまま眠っているレイジを心配していたエリナ。しばらく彼女が様子を見ていると、レイジがようやく眼を覚ました。

「あっ!レイジさん、気がつきましたのですね・・・」

「エリナ・・・オレは・・・?」

 喜びをあらわにするエリナと、記憶を巡らせるレイジ。

「いつ起きられるか分かりませんでしたから。少し季節が早いですけど、そうめんを作っておきました。」

「えっ?もう夜なのか・・・オレ、そんなに寝ていたのか・・・」

 微笑むエリナにレイジがきょとんとした面持ちを見せる。起き上がろうとしたところをエリナに止められる。

「いけません、レイジさん。ムリをせずにゆっくりなさって・・」

「エリナ、マナちゃんはどこにいるんだ!?・・帰ってきてるのか・・・!?」

 レイジに問いかけられると、エリナは沈痛の面持ちを浮かべて答える。

「まだ帰ってきていませんわ。ミナミさんが探しに出ていますが・・・」

 エリナの言葉にレイジも動揺を隠せなくなっていた。だがエリナは胸中で歓喜を感じていた。

 マナは2度と帰ってこない。なぜなら自分が心臓を貫いて息の根を止めたから。彼女はそう確信していた。

「ただいまー。」

 そのときミナミが帰宅し、レイジとエリナが玄関のほうへ眼を向ける。

「ミナミが帰ってきたようだ。とりあえず顔見せておかないと。」

 レイジがエリナに支えられながら、ミナミのいる玄関に向かう。

「ミナミ、帰ってきたの・・か・・・」

 レイジがミナミを迎えたとき、驚きを覚えて眼を見開く。玄関にはミナミの隣にマナの姿もあったからだ。

「お姉ちゃん、帰ってきたんだね・・あっ!マナお姉ちゃん!」

 続いて顔を出してきたユミ、そしてヒカルもマナの帰宅を笑顔で迎えた。迎え入れてくれる人たちの存在を目の当たりにして、マナは戸惑いを隠せなかった。

「マナちゃん・・・帰ってきたのか・・・?」

 レイジがマナに向けて声をかける。しかしレイジの表情に笑みはなかった。

 マナが帰ってきたことは嬉しかったが、7年前の出来事がレイジの、マナの心に溝を生み出していた。今もそのすれ違いは解消されていなかった。

 そしてもう1人、マナの帰宅に笑顔を見せていない人がいた。エリナである。

(どうして!?・・どうしてマナが帰ってくるのよ!?・・・アイツは私が仕留めたはずよ・・・!)

 マナが帰ってきたことが信じられず、エリナは疑念と憤りを隠すのに必死になっていた。

「今夜はそうめんにしてみました。いつマナさんとミナミさんが帰ってきてもいいように。」

 荒れる感情を抑えて、エリナは笑顔を作ってマナとミナミに告げる。

「ありがとう、エリナさん。そうめんならみんなで食べられるからね。」

 するとミナミも笑顔で答えてきた。そしてユミやヒカルに呼びかけて、ミナミたちはリビングに向かった。

「ミナミ、エリナ、もう少し休ませてもらってもいいかな・・・?」

 マナに眼を向けたレイジが自分の部屋に引き返そうとする。呼び止めようと思ったマナだが、何を言えばいいのか分からず、結局声をかけることができなかった。

 

 この日の夕食は、女性だけの晩餐となった。本来なら喜ばしい食事となるはずだった。

 ミナミたちは少なからず、レイジのことを気にかけていた。特に事の発端であるマナは、レイジが気がかりでならなかった。

 全員が言葉を切り出せないでいた沈黙。それを打ち破ったのはミナミだった。

「マナちゃん、これからどうするつもりなの・・・?」

 ミナミに問いかけられて、マナは戸惑いを見せた。

「私はレイジが幸せになってくれるなら、恋のライバルっていうのに負けても構わない。」

「こ、恋って・・私は・・・」

 真剣さを込めた笑みを見せるミナミの言葉に、マナが戸惑いを浮かべる。

「分かってるわ。マナちゃんは普通にレイジを好きでいるだけだって。私だってそう。でも私は自分の気持ちを押し付けたりせずに、レイジが幸せになってくれることを願っているだけ。」

「ミナミ・・・」

「だからマナちゃんはマナちゃんの気持ちを、レイジに伝えればいいのよ。」

 ミナミに励まされて、マナは笑みをこぼした。

「ありがとう、ミナミ・・・レイジと話してみるよ・・・」

 マナの決心を聞いて、ミナミは笑顔で頷いた。

「ごちそうさまでした・・・」

 するとエリナが先に食事を終えて、早々にリビングを出て行ってしまった。

「エリナさん、何だか様子がおかしいね、お姉ちゃん・・」

「そうね・・あまり食べるほうではないですけど・・・」

 ユミが唐突に声をかけると、ミナミが呆然と答えた。そして少し間を置いてから、マナもリビングを後にした。

 

 早々に食事を終えたエリナは、レイジの部屋に来ていた。彼女がドアを閉めた音に気づいて、レイジが寝返りを打って眼を向けてきた。

「エリナ、どうしたんだ?オレはもう少し休みたいんだけど・・・」

 レイジが力のない声で言いかけてくる。沈黙を置いてから、エリナは閉ざしていた口を開いた。

「レイジさん、今、私は本当に辛いです。レイジさんがマナさんのために辛くなっているのを見ていると、いても立ってもいられない心境です。」

「エ、エリナ・・・!?」

 いつもと違うエリナの言動に、レイジが戸惑いを見せる。

「でももう心配は要りません。私がそばにいますから。私がレイジさんを苦しめるものから守っていきますから・・・」

 エリナが悩ましい面持ちのまま、当惑するレイジに寄り添ってきた。レイジが快く思っていないことを気に留めずに、エリナがさらに続ける。

「レイジさん、私はあなたが好きです。あなたを愛しています。たとえあなたが私をどう思おうとも、私はあなたへのこの想いを伝えたかった・・・!」

「エリナ、やめてくれ・・オレは、こんな・・・!」

 抵抗を覚えるレイジだが、エリナはそんな彼を抱擁し、自分の気持ちを押し付けようとする。

「やめろ、エリナ!そんな無理矢理な・・・!」

「お願いです、レイジさん!せめて私の気持ちを聞いてください!」

 嫌がるレイジの唇を奪おうと、エリナが顔を近づける。彼女はレイジへ思いを寄せていたが、マナの介入で平然さを揺るがされていき、ついにはレイジへの独占欲が強まってしまっていた。

「強引にほしいものを手に入れようとする。お前らしくないな。」

 そこへマナが声をかけ、レイジに顔を近づけようとしていたエリナが動きを止める。その隙にレイジはエリナを跳ね除け、ベットから這い出してきた。

 息を荒げながら嫌悪感さえあらわにしているレイジを、エリナは呆然と見つめるばかりだった。

「自分の気持ちを押し付けずに、相手の幸せを願うのが、双方いいことだ。人から聞いた受け売りだが・・」

 マナが不敵な笑みを浮かべてエリナに言いかける。するとエリナがレイジに見せたことのない憤怒の表情を見せる。

「アンタに、私の何が分かるのよ・・・アンタなんかに・・レイジを想う私の気持ちが分かってたまるものですか!」

 激昂をあらわにするエリナに、レイジがさらなる困惑を感じていた。するとマナが哀れむような心境でエリナに言いかける。

「自分の気持ちを押し付けるだけじゃ、何の意味もない。私もそうしたから、レイジを傷つけて追い込んでしまったんだ・・・」

「奇麗事を言わないでちょうだい。あなたはその気持ちをその眼で、レイジさんの妹のモエさんを石にしたんですからね!」

 エリナのこの言葉にレイジとマナが当惑を見せる。自分の感情に流されて、マナがモエを石化したのは紛れもない事実。それがレイジに葛藤を、マナに罪の意識を植え付けていた。

 自分の中に押し込んでいた感情をぶつけると、エリナはマナを突き飛ばして部屋を飛び出した。

「エリナ・・・」

 エリナの本当の素顔を目の当たりにして、レイジはその場を動くことができなかった。立ち上がったマナが、レイジの代わりにエリナを追いかけた。

 その入れ違いに、ミナミが部屋に入ってきた。

「マナちゃん・・・レイジ・・・」

 マナとレイジの様子に、ミナミも動揺を隠せなかった。

 

 レイジへの想いを打ち壊され、マナに敗北感を受け付けられたと思ったエリナは、感情が荒れたまま外に飛び出した。

「おのれ・・あの吸血鬼女・・このままでは済まさないわよ・・何度生き返ってきても、何度でも私が殺してやるわよ・・・!」

 憤りを抑えきれず、声を荒げるエリナ。1度はマナの胸を突き刺したナイフを手にして、その柄を強く握り締めていた。

「また私の獲物が現れたか・・・」

 そのとき、周囲からエリナに向けて声がかかってきた。彼女が振り返った闇の中から、アーサーが姿を現した。

「あ、あなたはもブラッドってヤツなの・・・!?」

 エリナが恐怖を募らせて、アーサーから後ずさりする。

「お前も人間。私の糧となる存在の1人。」

 アーサーもエリナに向けてゆっくりと歩を進める。彼の紅い眼光が不気味に光り、エリナがさらに恐怖を覚える。

 だがエリナを捕まえる前に、アーサーが唐突に足を止める。

「まさかお前とここで会えるとは思わなかったな。」

 振り返らずに言いかけるアーサーの背後に現れたのは、エリナを追いかけてきたマナだった。退屈しない相手の登場と察して、アーサーが不敵な笑みを浮かべる。

「今までは単なる余興だったが、お前との対決は別だ。今度こそ全力でお前を倒す。」

「倒せるかな、お前に?・・今の私を、お前のようなヤツに止めることはできない。」

 マナは顔色を変えずにブラッドの力を発動し、紅い剣を出現させる。アーサーも金色の剣を具現化させて、マナとの戦いに備える。

(まだレイジに、私の気持ちを伝えてはいない。しかしこれだけは確かだ・・・)

 アーサーを見据えながら、マナは胸中で自分の想いを確かめていた。

(レイジが幸せでいてくれることが、私にとっても幸せなんだ・・・)

 決意を秘めた眼差しで、マナはアーサーに向かって駆け出し、剣を構える。真正面から来る彼女に対して、アーサーがあざ笑う。

「ついに血迷ったか?正面から攻めて勝てる相手を思ったか?・・愚弄するのも大概にすべきだったな。」

 アーサーがマナの突進を迎え撃とうとする。だが突然マナの動きが速くなったような感覚を覚え、アーサーが眼を見開く。

 気がつくと、マナの紅い剣がアーサーの右のわき腹に刺さっていた。

「何っ・・・!?」

 アーサーがこの一瞬に眼を疑っていた。彼の血が紅い剣を伝って地面に滴り落ちてきていた。

「言ったはずだ。お前に私を止めることはできないと・・・」

 マナは低く言い放つと、アーサーから剣を引き抜く。その直後にアーサーが金色の剣を振りかざすが、マナはその一閃を簡単にかわす。

「バカな!・・私が、心に執着している愚かな同士に深手を負うなど・・・!」

 アーサーが苦悶の表情を浮かべて毒づく。剣を貫かれた痛みよりも、愚かと思っていた相手にこうもたやすく追い込まれたことに屈辱を感じていた。

「認めん・・こんなもの、私は決して認めんぞ!・・・私は劣ってなどいない・・お前などに・・心などという愚かしきものに!」

 憤慨をあらわにしたアーサーは、マナに向けて金色の閃光を解き放つ。触れたものを金に変える効果を備えたこの光を、マナは大きく飛び上がって回避する。

 やがて光が消えて、地上は夜の静寂を取り戻していった。着地したマナが周囲を見回すが、アーサーの姿をどこにもなかった。

 そして、光に巻き込まれたはずのエリナの姿も。

「エリナ・・・いったいどこへ・・・?」

 手にしていた紅い剣を消失させて、マナはエリナの行方を追った。しかしエリナの気配は感じられず、マナは仕方なく家に引き返すことにした。

 

 閃光に紛れてその場を逃れようとしたアーサーだが、彼はエリナに連れられていた。

「どういうつもりだ、お前!?・・私を助けようというのか・・・!?」

「そうね・・でもアンタを助けたのは、あくまで私自身のため、とでも言っておこうかしらね。」

 苛立ちを込めて問いかけてくるアーサーに、エリナが妖しく微笑んで答える。

「後悔するのは、人間のお前とて分かっているはずだ。それとも、自ら進んで私の糧になろうなどと、血迷ったことを思っているのではないだろうな?」

 アーサーが問い詰めるが、エリナは妖しい笑みを崩さない。

「そこまで望むなら拒むことはなかろう。お前の血、我が力の糧となるがいい。」

 アーサーは不敵な笑みを浮かべてエリナの両肩をつかむ。そして彼女の首筋に牙を立て、血を吸いだす。

 その瞬間、エリナは今まで感じたことのない快感を覚える。自分の体が別のものへ変化していることが、彼女は手に取るように理解していた。

(これがブラッドとなっていく私・・・いいわ・・すばらしいわ!・・これで私は、あの女を・・・!)

 アーサーが血を吸いきらないうちに、エリナがアーサーを突き飛ばした。突然のことにアーサーが眼を見開く。

「お前、どういうつもりだ!?」

「どういう?どういうってこういうことよ。アンタならすぐに気づくと思うんだけど・・・」

 声を荒げるアーサーに、エリナが満面の笑みを浮かべて答える。

「まさかお前、ブラッドとなるために、私を利用したのか!?」

 驚愕を見せるアーサーの指摘に、エリナが哄笑を上げる。

「私に力を与えてくれて感謝するわ。お礼に私の新しい力の最初の犠牲者にしてあげる。」

 エリナが紅い眼光を解き放つ。そして彼女の右手に紅い剣が具現化される。

「安心なさい。アンタの血は、私から吸い取った分まで全部吸い取ってあげるから。」

 エリナが初めて見せる凶悪の笑み。その直後、アーサーの断末魔の叫びが夜の闇にこだました。

 

 

次回予告

 

想いはひとつではない。

人の数だけ想いがある。

純粋無垢な心と、邪なる欲情。

その漆黒の力が、破滅への宴の幕を開ける。

 

次回・胎動

 

 

作品集に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system