Blood –Blue Fiend- File.10 蒼天のヤヨイ
ハヤトが眼を覚ましたときには、既に日が昇りきっていた。意識はもうろうとしていたが、彼はさわやかさを感じていた。
「オレは・・・こんなにも眠ってしまっていたのか・・・」
昨晩のことが幻でないことを確かめるため、ハヤトは自分の手のひらを見つめた。
(オレにも、守るべきものができたのかもしれない・・それが、お前も追い求めていたものだろうか・・サツキ・・・)
サツキのことを思い返し、ハヤトはその手を握り締める。
(オレはアイツを救ってやらなくてはならない・・それが、アイツがオレを救おうとしていることへの報いか・・・そして、エドガーと決着を着けなくてはならないようだ・・)
ヤヨイの気持ちとエドガーとの戦い。ハヤトの心の中で、様々な感情が錯綜していた。
そして視線を移したところで、ハヤトは驚愕を覚える。隣にヤヨイの姿がなかったのだ。
「ヤヨイ・・・!?」
ハヤトはベットから降りて、部屋を見回す。だが気配を探っても、ヤヨイは部屋とその周辺にいない。
部屋を出て廊下を進んでいくと、ハヤトはアテナを見つめる。
「ヤヨイはどこに行った?眼を覚ましたらいなくなっていた。」
「ハヤト・・・え?ヤヨイさんが?」
ハヤトの声にアテナが驚きを見せる。
「ディオネ様から、昨晩はあなたと過ごしたと聞いている。一緒ではないのか?」
「いなくなっていた・・気配を探ったが、ここにはいないようなのだ・・」
アテナが訊ねると、ハヤトが深刻な面持ちを浮かべて答える。
「ここにいない・・・それでは、ここを出て行ったことになる・・・家に戻ったのでは・・・?」
「アイツは日常に戻れないことを理解しているはずだ。それは考えにくい。」
ヤヨイがどこに行ったのか見当がつかず、ハヤトとアテナが考えを巡らせる。
「もしかして、サターンの本拠地に向かったのでは・・!?」
そこへ現れたディオネが一抹の不安を口にする。
「ディ、ディオネ様・・まさか、サターンに挑んだというのですか・・・!?」
「バカな!?アイツもエドガーの力は十分理解しているはずだ!それこそ考えられないことだ!」
その言葉にアテナとハヤトが声を荒げる。
「考えられないこととは言い切れないでしょう。譲れない何かが、彼女の中で芽生えたのか・・・」
ディオネが深刻さを募らせて言いかける。
「血迷ったか!1人で行けば確実に命はない!さもなくば、エドガーの思い通りにされる!」
ハヤトが歯がゆさをあらわにして駆け出そうとするが、ディオネに腕をつかまれて止められる。
「待ちなさい!・・単独で向かって無事で戻れる保証がないのはあなたも同じでしょう、ハヤト。」
「邪魔をするな。言ったはずだ。オレの邪魔をするなら、たとえお前でも容赦しないと。」
ディオネの制止に対して鋭く反論するハヤト。だがディオネはハヤトの腕を放さない。
「今回ばかりは了承しかねます。たとえあなたが、私たちに牙を向けてこようとも・・・!」
「オレも今回ばかりはここを通させてもらう。今出なければ、オレは破滅の末路を辿ることになる・・・!」
互いに退こうとしないディオネとハヤト。しばしの沈黙が経過し、ハヤトがディオネの手を払う。
「アテナ、アルテミス、ハヤトを止めなさい!最悪、始末しても構いません!」
「了解!」
ディオネの呼びかけにアテナと、駆けつけたアルテミスが答える。ハヤトは2人を見据えて、後退しながら身構える。
「ここでムダな力を消費している暇はない。かかってくるなら瞬殺されることを覚悟しろ・・・!」
ハヤトは言い放つと、アルテミスの繰り出した拳をかわし、アテナの破邪の力を警戒する。その警戒心を向けられて、アテナが思いとどまる。
ハヤトは右手から紅い光を発し、鞭のように放つ。アテナとアルテミスは身を翻して、その一閃をかわす。
だがそれはハヤトの狙い通りのことだった。2人が距離を離したのを見計らって、彼は廊下を駆け出していった。
「しまった・・!」
意表を突かれたアテナが毒づく。2人はハヤトを止めるべく、続けて駆け出そうとする。
「待ちなさい、2人とも!」
そこへディオネに呼び止められ、アテナとアルテミスが驚きを覚えながら振り返る。
「なぜですか、ディオネ様!?あれではハヤトが・・!」
「もう彼を止めることはできないでしょう・・あのまま私たちが戦えば、内部崩壊は必死。そこをサターンに付け込まれる危険が出てきます。」
反論するアルテミスにディオネが言いとがめる。
「ですが、このままではハヤトが確実に・・・!」
「分かっています・・・私たちもすぐに、サターン鎮圧の名目にて出撃します。ただし目的はあくまで天城ハヤトの確保と東条ヤヨイの保護。そのことは十分注意するように。」
「はいっ!」
ディオネの指示を受けてアテナとアルテミスが敬礼を送り、それぞれ行動を開始した。2人を見送るディオネの脳裏に、一抹の不安がよぎっていた。
(ハヤト、ヤヨイさん、必ず、無事でいてください・・・)
1人サターンの本拠地に乗り込もうとしていたヤヨイ。森を突き進む彼女は、その途中、見知った人物と再会する。
それは、彼女のかつての同級生、リサだった。
「リサ・・・」
「ヤヨイ・・無事だったのね・・・」
互いに動揺をあらわにするヤヨイとリサ。2人ともどう言葉をかけたらいいのか分からないでいた。
しばしの沈黙を先に破ったのはヤヨイだった。
「ゴメン・・・私のせいであなたを、エリを・・・」
「ヤヨイ・・・」
謝るヤヨイにリサが困惑を浮かべる。
「許せないならそれでいい・・私はたくさんの罪を犯してきたから・・あなたやエリにも・・」
「確かに、あれはあなたにも悪いところがある・・・あなたがあんなおかしなことに首を突っ込まなければ・・・」
自分を責めるヤヨイに、リサが追い討ちをかける。だがヤヨイに対して怒りよりも友情を感じてしまい、リサは歯がゆさを募らせた。
「私もイヤになるくらい言われたよ。何でこんなことに関わっちゃったんだろうって・・」
「私、今でもヤヨイが許せない・・でも、あなたを恨んだってエリが戻ってくるわけじゃないし、エリだって喜ばない・・」
リサは言いかけて、ヤヨイに近づいていく。
「だから、エリを助けて・・私よりも、あなたのほうがエリを助けだせるから・・」
「リサ・・・」
懇願してきたリサに、ヤヨイが困惑を浮かべる。
「すごくなってるんでしょ?・・あの時見たあなたの眼、じっと見つめていられなかった・・・」
「それがブラッド、吸血鬼の力なの・・・」
「なるほど・・・とにかくお願い・・もう私には、とても手の負えないことなの・・・」
リサの言葉を受けて、ヤヨイが小さく頷いた。親友の気持ちをムダにしてはいけない。ヤヨイの心に新たな使命感が芽生えた。
そのとき、リサから稲妻のような電撃がほとばしった。その衝撃でヤヨイが弾き飛ばされる。
「キャッ!」
「ヤヨイ!・・な、何よ、コレ・・・!?」
悲鳴を上げるヤヨイとリサ。周囲の電撃に絡め取られ、リサが身動きを封じられる。
「東条ヤヨイを追ってきたつもりが、興味をそそられる獲物が一緒だったとは。」
そこへ1人の男が林の中から姿を現した。その男に、立ち上がったヤヨイは見覚えがあった。
「エドガー・・・!?」
「久しいな。お前が向かってきたのを感じたので、歓迎のために出向いたわけだ。」
驚愕するヤヨイに、エドガーが不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「リサを放して!私が狙いなら、リサは関係ないでしょう!?」
「フッ。お前も“こちら”側の者なら、それが浅はかなことであることは理解しているはずだ。」
ヤヨイの呼びかけをエドガーが一蹴する。
「表の世界とは違い、裏の世界は無法の境地。善人が卑怯と思っていることさえ許されるのだ。」
エドガーが口にする言葉に反論できず、ヤヨイが押し黙ってしまう。
「それが不条理だというなら、力で己を示してみるがいい。お前の力で、お前の友人を私から取り戻してみせろ。」
さらにエドガーが不敵な笑みを浮かべてヤヨイに言い放つ。
「だったらもう何も言わずに、リサを助ける!」
「やってみるがいい。この状態から力を注がなくても、この娘の動きを封じるには十分だ。」
言い放つヤヨイを見据えて、エドガーはリサへの力の挿入を中断する。ヤヨイが飛びかかっていくが、エドガーに軽々とかさわれてしまう。
「どうした?そんな猪突猛進では私を止めることも叶わんぞ。」
エドガーがヤヨイをあざけり、距離を取っていく。ヤヨイは気持ちを落ち着かせて、右手に意識を集中させる。
(やってみよう・・私がハヤトみたいにやれるかどうか・・ここで前に出ないと、リサまで失ってしまう・・・)
リサを助けるため、ハヤトを守るため、ヤヨイは決意を固めていく。彼女の右手に紅い光が宿り、強まっていく。
ヤヨイはさらにイメージを膨らませて、光をエドガーに向けて放つ。光はハヤトと同様に鞭のような動きを見せてエドガーに迫る。
(エドガーと同じ力の形と使い方だな・・気に入らん。不愉快だ。滑稽極まりない・・・!)
憤りを膨らませるエドガーが、向かってきた紅い光を左手で払いのける。軽々と攻撃を跳ね返されたことに、ヤヨイが驚愕する。
「ハヤトとの付き合いは、お前などと比較にならないほど長い。その手の攻撃はお見通しだ。」
エドガーが不敵な笑みを浮かべてヤヨイに言い放つ。
「後手に回るだけでは終わらない。そろそろ攻めさせてもらうぞ。」
エドガーは右手に紅い光を宿し、ヤヨイを見据える。かざしたその右手から紅い弾丸が放たれる。
ヤヨイはとっさに身を翻して、紅い弾丸の群れをかわす。だが弾丸は軌道を変えて、再びヤヨイに向かっていく。
ヤヨイは素早く動いて弾丸を回避しようとするが、弾丸の群れはしつこく追いかけてくる。
(これじゃきりがない・・何とかして跳ね返さないと、いつか命中する・・!)
思い立ったヤヨイはさらに森の中を駆けていく。そして彼女は、力を発しているエドガーを見据える。
「残念だが、その手はお見通しだ。」
だがエドガーはヤヨイの動きを把握していた。彼はさらに紅い弾丸を彼女に向けて放つ。
「えっ!?」
挟み撃ちにあい、弾丸の直撃を受けるヤヨイ。爆発に巻き込まれて、彼女が地面に叩きつけられる。
「私に引きつけてギリギリでかわして当てようと考えたのだろうが、それは子供の浅知恵に過ぎないおびき出すつもりが、逆に私におびき出されたということだ。」
立ち上がろうとするヤヨイを見下ろして、エドガーが不敵な笑みを浮かべる。
「もういい。茶番は終わりだ。お前はそこで見ているがいい。友人が私の手に堕ちるところを。そして友を守れなかったことを、己の無力さと愚かさを悔やむがいい。」
「やめて!リサを放して!」
言い放つエドガーにヤヨイが叫ぶ。だが彼女には彼に立ち向かえるだけの力が残っていなかった。
その視線の先で、エドガーが再びリサに向けて力を注ぐ。その刺激にリサがうめき声を上げる。
(力がほしい・・リサを助けられる力が・・自分を貫き通すための力が・・・!)
ヤヨイが全身に力を込める。振り絞られた力が紅い光となって、彼女の体から煙のようにあふれ出す。
「ヤヨイ・・・」
「リサ・・・!?」
そのとき、リサが弱々しく声を発して、ヤヨイが当惑を見せる。
「もういいよ・・私のために、あなたの気持ちを壊したくない・・・だから・・・」
笑顔を作るリサの体がだらりと下がる。彼女の衣服が電撃で引き裂かれ、裸身があらわになる。
「ヤヨイ・・私に構わずに、コイツをやっつけて・・・」
ヤヨイに全てを託したリサが、球状となった稲妻に包まれていく。そしてその稲妻が光り輝き、リサは水晶の中に眠るように閉じ込められた。
「リサ・・・リサ!」
ヤヨイが悲痛さを膨らませて叫ぶ。その眼前で哄笑を上げながら、エドガーがリサを閉じ込めている水晶を手に取る。
「これでまた1人、私の渇きを潤す娘が手に入った・・」
エドガーがリサをまじまじと見つめると、ヤヨイに眼を向ける。
「さて、次はお前だ・・本当ならその五体をバラバラにしてやりたいところだが、ハヤトがお前と決別するところをきちんと確かめられなくなるからな・・」
エドガーがヤヨイに向けて鋭い視線を向ける。まるで刃物で容赦なく切りつけてくるようなその視線に一瞬怯むが、ヤヨイは踏みとどまる。
「いいだろう。お前も私の力で封じてやろう。そしてハヤトの見つめる前で、お前を握りつぶしてやろう。」
狂気を募らせるエドガーに、ヤヨイが戦慄を覚える。
「すばらしい余興となるだろう。私に握りつぶされたお前の血飛沫が、紅い花火のようにきらびやかに咲き乱れる。喜びのあまりに震えが来るぞ・・・!」
込み上げてくる歓喜を抑えきれず、エドガーが哄笑を上げる。
「悪いけど、これ以上、あなたの思い通りにはならない・・・」
そこへヤヨイが反論の声を上げ、エドガーが笑みを消す。
「エリ、リサ、そしてハヤトのためにも、私はあなたに、絶対負けられない・・あなたを止めなくちゃいけない!」
「粋がるな!ハヤトをけがした罪人の分際で!」
ヤヨイの決意に対して激昂するエドガー。彼女を封じ込めようと、両手をかざして力を放とうとする。
「エドガー!」
そこへ声がかかり、ヤヨイとエドガーが眼を見開く。2人が振り返った先には、慄然さをあらわにしているハヤトの姿があった。
「ハヤト・・・!」
ヤヨイとエドガーが驚愕の声を上げる。ハヤトは2人を見据えて、振り絞るように声を上げる。
「お前たち・・オレを勝手に理由に祀り上げるな・・・!」
「まさかお前が来てくれるとは・・丁度いい、ハヤト。この女を始末するところを見届けてくれ。」
エドガーがハヤトに向けて悠然と言いかける。その言葉にハヤトが憤りを覚える。
「相変わらずお前は・・どこまで身勝手な男なのだ、お前は・・・!?」
「勝手?私はお前を昔に戻そうとしているだけだ。そのためには、この女の存在が弊害となってくるのだ。」
ハヤトの怒号を受けても、エドガーは顔色を変えない。
「お前も眼を覚ますのだ、ハヤト。私もお前もブラッド。血と戦いに飢えた吸血鬼なのだよ。だからそんな甘い考えを抱いてはいけない。」
「何度も言わせるな。オレの進む道はオレが決める。お前に合わせるつもりはない。」
「滑稽だな。お前は愚か者たちに毒されているようだ。東条ヤヨイ。そして、石川サツキ・・」
「どこまでも自分に酔っているのだな、エドガー・・・実に哀れだな・・・」
言葉を掛け合うも互いに聞き入れようとしないハヤトとエドガー。2人は互いに向けて紅い光を放つ。
2つの光は衝突し、その威力を相殺させる。ハヤトもエドガーも顔色を変えず、互いを見据える。
「もはやオレは、お前が執着しているオレではない。お前の望むものは、もはやオレの中には存在しない。」
「それほどまでに私から離れたいというのか・・それほど私を敵に回したいと・・・ならばその眼で見るがいい。この私が、東条ヤヨイを掌握するところを!」
エドガーが眼を見開いて、ヤヨイに狙いを定める。彼の両手には水晶封印のための力があふれてきていた。
「私はその娘を始末する!ハヤト、お前はその隙をついて、私の命を奪え!」
エドガーはハヤトに言い放つと、満身創痍であるヤヨイに向けて稲妻を発する。もはや彼女にはエドガーの攻撃を回避する力は残っていなかった。
そのとき、動けないでいるヤヨイを、ハヤトが駆け込んで抱き寄せる。だがエドガーが発した稲妻に2人は絡め取られてしまう。
「し、しまった・・!」
「なっ・・・!?」
ハヤトが毒づき、エドガーが驚愕する。ハヤトとヤヨイが電撃の刺激で苦悶の表情を浮かべる。
「ハ、ハヤト、どうして・・・!?」
「ヤヨイ、オレはお前を、ヤツに渡すわけにはいかない・・だから、身を投げ打っても・・・!」
疑問を投げかけるヤヨイに、ハヤトが声を振り絞るように答える。
「バカな・・どういうつもりだ、ハヤト!?お前、その忌まわしい女と運命とともにし、私に封じられるつもりか!?」
眼前の光景が信じられず驚愕するエドガーが、ハヤトに言い放つ。するとハヤトは笑みをこぼして、呟くように言いかける。
「少し前なら、今のオレの行為が滑稽であると思っていたことだろう・・だがこの選択は、決して過ちなのではなかったと、今なら思える・・」
「こ・・この愚か者が!ハヤト、お前が何を考え、何をしているのか、分かっているのか!?もうお前は、私の力から逃れることはできない!その娘とともに封印され、半永久を永らえることになるのだぞ!」
「それも一興か・・臆病者になるほうがよほど愚かに思えるからな・・・」
声を荒げるエドガーに、ハヤトが笑みを向ける。そして困惑しているヤヨイに眼を向ける。
「ハヤト・・・私のために、あなたは・・・」
「オレが勝手にしたことだ。お前が気に病むことではない・・」
沈痛さを見せるヤヨイに、ハヤトが弁解を入れる。
「ヤヨイ・・なぜ1人で勝手に・・・お前だけでエドガーに敵うと思っていたのか・・・?」
ハヤトが深刻さを浮かべてヤヨイに問いかける。するとヤヨイも深刻な面持ちを浮かべて答える。
「・・敵わないことは分かってた・・でも、ハヤトのためにもじっとしていられなかった・・・あなたには死んでほしくなかった・・だから・・・」
「ヤヨイ・・・お前はどこまで・・・」
ヤヨイの切実な想いを聞いて、ハヤトは半ば呆れながら微笑む。彼は彼女の体を強く抱きしめる。
「ハヤト・・・」
「もういい・・もうオレたちは、重荷を背負う必要はないんだ・・楽になれ・・深く考え込むな・・・」
戸惑いを見せるヤヨイに、ハヤトは優しく言いかける。収束されていく稲妻で、2人の衣服が引き裂かれていく。
(すまない、サツキ・・オレもここまでだ・・・)
サツキ、そしてヤヨイのことを想い、ハヤトは瞳を閉じた。彼らの姿が、稲妻からの光の中に消えていく。
その光が治まり、ハヤトとヤヨイを封じ込めた水晶が地面に落ちる。
「ハヤト・・・」
眠るように水晶に閉じ込められているハヤトを見つめて、エドガーが歯がゆさを覚える。半ば混乱した心理状態のまま、彼はその水晶を手に取った。