美少女への渇望

 

 

魔界にて保管されていた宝石「魔石」。

そのうちのひとつの邪な力が、数多くの美女を巻き込むこととなった。

 

全裸のオブジェにされた美少女が集められたコレクション。

それをもたらした魔石が、もしも他の人が手にしていたとしたら・・・

 

 

 街で有数の資産家の1人、黒野(くろの)レイン。誰に対しても真面目で親切に接するため、街の人々からの信頼が厚かった。

 だが本当の彼は筋金入りの変態。美女の裸にばかり興奮を覚える性格で、彼の私室にはエッチな本が大量に隠されているほどである。

 本やポスターなどを見て、性欲を抑えていたレイン。だが近頃彼は、その興奮を抑え切れなくなっていた。

「ハァ・・何だか満たされない・・やっぱり見るだけでは限界があるのか・・・」

 虚無感を覚えてため息をつくレイン。

「やっぱりさわってみないと満たされないってことなのか・・確かにあのスタイルのよさ、そこからかもし出される美しさは、実際に直面してみないと分からないものなのか・・・」

 本当の興奮について改めて考えるレイン。

「でも、何の断りもなくそんなことしたら確実に逮捕だ・・高い学力と資産しかないんじゃ、それを覆すことなんてできるわけない・・・」

 込み上げてくる欲求を満たせず、レインはひどく落ち込む。

「せめて警察を追い払えるくらいに強かったら・・あの怪盗、シャドウレディのように・・・」

 妙な想像を膨らませていくレイン。だが考えれば考えるほどに夢物語に思えてしまい、レインは気落ちしたまま日常へと戻っていった。

 

 散歩はレインの表向きの趣味だった。何か新しい発見があるのではないか、という理由を彼はこぎつけていた。

 この日、街の通りに足を踏み入れたレイン。そこで数人の若い男たちに声をかけられた。

「黒野さん、今日も散歩ですかー?」

「え、あ、うん、まぁ、そんなところだ・・街の様子を見ておきたいし、何よりいい運動になるからね・・」

 笑顔を見せて真面目に答えるレイン。

「ところで、例の勝負についてご存知ですか?」

「例の勝負?」

 男たちが切り出した話題に、レインが疑問符を浮かべる。

「シャドウレディとスパークガールの勝負ですよ!世間をにぎわせている怪盗と、その正体を暴こうと挑戦してきた正義の稲光の対決!」

「僕はTVで見てたからハッキリとは見えなかったけど・・かなりの白熱とお色気だったそうです・・」

「シャドウレディの正体を暴けるってとこまで来てたけど、結局服を切り裂かれちゃったんですよ・・まさか街のど真ん中で、美少女のストリップが見れるとは思わなかった!」

「おいおい、そういう話はやめなって・・黒野さんのような人が、そんなハレンチなのが好きなわけないよ・・」

 レインを前にして、男たちが屈託のない会話を繰り広げる。レインはただただ苦笑いを浮かべるばかりだった。

 シャドウレディ。世間をにぎわせる女怪盗。卓越した身のこなしで警察の包囲網を潜り抜け、狙った獲物を必ず盗み出す。

 そのシャドウレディを捕まえようと挑戦状を叩きつけてきたのが、正義の稲光、スパークガールである。ワイヤーを駆使した巧みな動きと、電気棒「エレキロッド」でシャドウレディを追い詰めたことがある。

 最終的にシャドウレディに衣装を引き裂かれて敗北。スパークガールは素肌を公衆の面前にさらすこととなった。

「ニュースになっていたので耳にはしていたよ・・内容が内容だから、あまり感心できないけど・・」

「やっぱり真面目な人だよ・・尊敬してしまうよ・・」

 レインが口にした感想に、男たちが感心の言葉を口にする。

「すいません、おかしな話をして・・これからも頑張ってくださいね・・」

「ありがとう・・頑張るよ・・」

 男たちと別れて再び歩き出すレイン。だが人気のない裏路地に差し掛かったところで、彼は抑えていた感情を表に出してきた。

(みんなの前で裸・・そんな粋なことをするなんて、シャドウレディも憎い演出を・・・!)

 心の中で後悔の叫びを上げるレイン。シャドウレディとスパークガールの対決のニュースは耳にしていたが、直に見れなかったことを彼は悔しがっていた。

(それにしても、夜に隠れた2人のヒロインか・・どんな体をしているんだろうか・・・2人の裸を見てみたい・・いや、触ってみたい!)

 さらなる欲情に駆り立てられるレイン。だが彼はすぐに落胆を浮かべた。

(でも、それこそ叶わないことだよね・・・)

“力がほしいか・・・?”

 そのとき、どこからか声が発せられてきた。レインが周囲を見回すが、人の姿はない。

「気のせいか・・ビックリしたよ・・・」

“力がほしいか・・・?”

 安堵の吐息をついたところで、レインは再び声を耳にする。彼は耳を澄まして、声のしたほうに意識を傾ける。

 その先には人はいない。ただひとつの宝石が落ちているだけである。

「宝石・・・?」

 レインが眉をひそめて、宝石に近づいていく。

“お前の求める力、私が与えてやろうか・・・?”

 そのとき、三度声が発せられた。同時にレインが見ていた宝石から淡い光が浮かび上がった。

「もしかして、宝石がしゃべっている・・・!?

“お前には強く望むものがある。その望みを叶える力を、お前に与えよう・・・”

 驚きを覚えるレインに向けて、宝石が呼びかけてくる。

「本当に・・本当に僕の望みを叶えてくれるのか・・・!?

“それはお前次第だ・・私が与える力・・どう使うかはお前の自由だ・・・”

 レインが問いかけると、宝石が淡々と答える。その言葉を耳にして、レインが歓喜の笑みを浮かべた。

 彼はその宝石を持って家に戻った。自分の部屋に戻ってから、彼は改めて宝石に呼びかけた。

「ところで、お前が僕に与える力って、どういうものなんだ・・・?」

“私の力は石化の力・・あらゆるものを意のままに石に変える・・・”

「石化の力・・・本当に、僕の思うままにできるのか・・・!?

“お前が望むなら・・・”

 力の詳細を確かめたレインが、歓喜を覚える。

「その力があれば、僕は強くなれる・・美女に触れることができる・・・!」

 その瞬間、レインは決心した。宝石の力を受け入れ、美女に触れることを。シャドウレディとスパークガール、2人のヒロインを最終目標として。

 

 街中の暗い夜道を、1人駆け抜ける少女がいた。少女は必死になって、自分を狙う影から逃げ惑っていた。

 少女は裏路地に逃げ込み、来た道に目を向ける。追ってくる影が来ていないか、彼女は確かめようとした。

 そのとき、少女の周囲に白い霧が流れ込んできた。後ろに振り返った彼女の前に、不気味な黒い影が立ちはだかっていた。

 

 暗闇に満たされた大きな部屋。その真ん中で少女は目を覚ました。

「目が覚めたようだね・・割とすぐに起きたようだ・・」

 声をかけられて少女が恐る恐る振り返る。その先には黒装束に身を包んだレインが立っていた。

「あなたは・・黒野さん・・・!?

「喜ぶがいい・・君が私のコレクション第1号だ・・」

 驚きの声を上げる少女に、レインが笑みを浮かべる。

「楽しみだ・・どのように美しく仕上がるのか、確かめてみよう・・・」

「な・・何を・・・!?

 喜びを膨らませるレインが、意識を集中する。彼に見つめられて、少女が恐怖を募らせる。

 

    カッ

 

 レインの目からまばゆいばかりの光が放たれた。

 

   ドクンッ

 

 その光を受けた少女が強い胸の高鳴りに襲われる。動揺のあまり、彼女は目を見開いていた。

「これでうまくかかったことになるが・・・」

  ピキッ ピキッ ピキッ

 レインが呟きかけた瞬間、少女の着ていた衣服が突如引き裂かれた。あらわになった素肌が固く冷たくなり、ところどころにヒビが入っていた。

「な、何、コレ!?・・体が、動かない・・・!?

「成功だ・・僕の思った形で石化が発生している・・・!」

 驚愕する少女と、石化の効果を確かめて喜びを覚えるレイン。

「私に何をしたの!?何がどうなってるの!?

「見たとおり、体が石になっているのだ。それも、私がかけたのはただの石化ではない。体だけを石にして、同時に衣服や装飾品を全て引き剥がしてしまう・・結果、生まれたままの姿の美しいオブジェとなるというわけだ・・」

 悲鳴を上げる少女に、レインが自分が得た力を語っていく。

  ピキッ ピキキッ

 石化が進行し、少女の衣服が一気に引き裂かれていく。彼女の石の素肌が、レインの前にさらけ出される。

「本当にすごい・・石化の進行も私の思いのまま・・私の考えひとつで、君は美しいオブジェになれるのだ・・」

「イヤッ!私、石になんてなりたくない!助けて!助けてください!」

 さらなる喜びを膨らませるレインに、少女が悲鳴を上げて助けを求めてくる。

「せっかくのこの力なんだ・・きちんと君の素肌を私に見せてくれ・・・」

  ピキキッ パキッ

 微笑んでくるレインの前で、少女の体がさらに石になっていく。手足の先まで石化が進行し、頬や髪もひび割れていく。

  パキッ ピキッ

「イヤ・・やめて・・・助けて・・・」

  ピキッ パキッ

 弱々しく声を発する少女だが、やがて唇をも石に変わり、声を出すこともできなくなった。

   フッ

 ついに瞳にもヒビが入り、少女は完全に石化に包まれた。身につけていた衣服を全て引き剥がされ、彼女は全裸の石像にされて微動だにしなくなっていた。

「すばらしい・・本当にすばらしい力だ・・僕の望んだ形になっている・・・!」

 自分がもたらした石化の力を確かめて、レインが歓喜を覚える。

「石にしてしまえば、抵抗されることはない・・しかも体を石にしながら衣服を全て引き剥がして裸にしてくれる・・・」

 レインは呟きながら、石化した少女の石の胸に触れる。触れられているにもかかわらず、少女は何の反応もせず微動だにしない。

「待ちに待った美女の素肌・・胸や足、髪や唇・・その美しい姿が、何の邪魔もされずに眺められる・・触れられる・・しかもオブジェになったことで、美しさが際立っている・・・」

 少女の石の体を撫で回して、レインが喜びに打ち震える。だが彼女から手を離したところで、彼は笑みを消す。

「でも、まだ僕の心は満たされない・・もっともっと美女の素肌を見てみたい・・僕の近くで、見つめて、触れてみたい・・・」

 さらなる欲望に駆り立てられていくレイン。その欲望を満たすため、彼は宝石から与えられた力をさらに使うのだった。

 

 それから街では次々と美女の誘拐が多発した。犯人は黒ずくめの姿となったレインだった。

 彼は夜になると宝石から手に入れた力を使って美女を連れ去ると、自分の屋敷の広間にて石化していった。既に多くの美女が全裸の石像にされて佇んでおり、レインのコレクションは日に日に充実していった。

 石の美女たちの裸を目に焼き付けて、またその素肌に触れて、レインは喜びを膨らませていた。

「すばらしい・・たくさんの美女が僕の目の前に立ち並んでいる・・しかも全員が裸を見せている・・・」

 笑みを振りまきながら、レインが石化している美女の1人の体に触れていく。

「これが僕の望んでいたこと・・こんなに気分がよくなることだなんて・・・」

 喜びの言葉を口にするレイン。だが突然彼の顔から笑みが消える。

「でも、まだ足りない・・何かが足りない・・・もっともっと美女を呼び込まないといけないってことかな・・・それとも・・・」

 満たされない気分に駆り立てられるレイン。数多くの美女を連れてきて全裸の石像に変え、その美しさと素肌を堪能してきたが、彼の欲望は解消されるどころか、さらに増していた。

「やはりあの2人でないとダメなのか・・・シャドウレディとスパークガール・・・」

 呟きかけるレインが笑みを強める。彼の欲望の矛先は、世間を騒がせる怪盗と、彼女を追う正義の稲光へと向けられていた。

 

 レインが宝石を手にしてから1週間が過ぎた。夜の街では刑事や警官たちが警戒を強めていた。

 その光景を、黒ずくめのレインが見下ろしていた。

「ムダだ。今の僕は、たとえ警察でも捕まえることはできない・・・」

 不敵な笑みを見せると、レインは次の獲物を求めて周囲を見回す。彼の視界に、白い長髪の美少女の姿が入ってきた。

「今度は彼女にしよう・・僕の見立てでは、彼女もそれなりの裸を秘めていることだろうね・・・」

 期待に胸を膨らませると、レインは白い霧を発しながら少女に接近した。

 立ち込める霧に気付いて、少女が恐怖を覚える。必死に逃げ惑う彼女だが、追ってくる影は付いてきていた。

 少女の前に姿を現したレイン。少女が悲鳴を上げて逃げていき、壁に追い込まれた。

「で、出たわね!飛んで火にいるなんとやら・・!」

 少女がレインに向けて涙ながらに言い放つ。レインが彼女を捕まえようと、ゆっくりと歩を進める。

 そこへ小動物がレインに向かって飛びついてきた。その姿は小さな悪魔そのものだった。

 だがレインはその小悪魔を簡単に払いのけ、気絶させて捕まえる。

「何なんだ、これは?・・まぁいい。今は目の前の獲物を・・」

 レインは疑問を押し殺して、改めて少女を捕まえようとする。

「そこまでよ、連続誘拐犯!」

 そこへ別の声が飛び込み、レインが足を止めて後ろに意識を傾ける。背後の建物の屋上に、1人の少女が立っていた。

 全身を覆うスーツと機械的な装備。正義の稲光、スパークガールだった。

「女を狙う敵!アンタはこの私、スパークガールが成敗してくれる!」

 街の平和を守るため、スパークガールが高らかに言い放つ。

「スパークガール・・私が求めていた獲物の1人・・・」

 彼女の登場にレインが歓喜を覚える。求めていたスパークガールが、彼の前に現れたのだ。

「私と一緒に来い。お前なら私を満たしてくれる・・・」

「ふざけないで!アンタのような悪には絶対に従わない!」

 手招きをしてくるレインに反発し、スパークガールが飛びかかる。少女は彼女を応援することしかできなかった。

 ワイヤーを駆使した素早い動きが、スパークガールの持ち足だった。だがレインは彼女の攻撃を軽々とかわしていた。

(なかなかの速さだ・・でも僕から見れば全然遅い・・・)

 余裕を感じていくレイン。それでもスパークガールは果敢に攻めてくる。

「大人しくしろ。大人しくついてくれば、手荒なことはしない・・」

「私は悪には従わない!何度も言わせないで!」

 レインが呼びかけるが、スパークガールは全く聞こうとしない。

 そのとき、少女がその隙にこの場から離れようとしていた。だが気づいていたレインは、髪を伸ばして彼女を捕まえる。

「キャアッ!」

 体を髪で縛られて、少女が悲鳴を上げる。その声を聞いて、スパークガールの動きが一瞬鈍る。

 その一瞬を見逃さず、レインが髪を伸ばしてスパークガールを捕まえる。

「し、しまった・・・!」

「ようやく捕まえた・・これで君も私の思い通りにできる・・・」

 うめくスパークガールを見つめて、レインが笑みをこぼす。

「ワイヤーを使った動きは見事だが、私には通用しない・・今度こそ私と一緒に来てもらおうか・・」

「冗談じゃない!このままやられるわけにはいかない・・!」

 声をかけてくるレインに言い返し、スパークガールが髪を振りほどこうとする。

「こうも暴れられたら、連れ帰ることができない・・ここではしたくなかったが、仕方がない・・・」

 レインは呟くと、スパークガールに向けて意識を傾ける。彼に鋭く睨みつけられて、スパークガールが緊迫を膨らませる。

 

    カッ

 

 レインの目からまばゆい閃光が放たれた。

 

   ドクンッ

 

 その光を受けたスパークガールが強い胸の高鳴りを覚える。その後、レインは彼女を縛っていた髪をほどく。

「少し早いけど見ておくといい。自分がこれからどうなるのか・・」

  ピキッ ピキッ ピキッ

 レインが後ろの少女に向けて言いかけたとき、スパークガールに異変が起こった。彼女の来ていた衣装が弾け飛び、あらわになった左手、左胸、下腹部が固く冷たくなり、ところどころにヒビが入っていた。

「な、何なの、コレ!?・・体が、動かない・・・!?

「体が石になってく・・・これって・・・!?

 石化していく自分の体に驚愕するスパークガールと、その姿を目の当たりにして困惑する少女。

  ピキッ パキッ パキッ

 石化が進行し、スパークガールの衣装が崩れていく。同時に彼女の髪も崩れ出していった。

「おや?その髪はかつらか。ずい分と手の込んだ変装だ・・だが私の力はお前を完全に裸にする。正義の味方が、これからは美しいオブジェとして存在することになる・・」

「く、くそっ!・・・私が、こんな・・・!」

 淡々と言いかけるレインに、スパークガールが毒づく。恐怖を募らせる少女に向けて、レインが振り返る。

「心配しなくていい。暴れなければ、君がここで石化されることはない・・」

 淡々と言いかけてくるレインに、少女が息をのむ。

  ピキッ ピキッ

 スパークガールの右の手袋とブーツが壊れて、石の手足があらわになる。完全に裸をさらけ出され、体の自由も利かなくなり、彼女は力を入れることができなくなっていた。

  パキッ ピキッ

 スパークガールを蝕む石化は頬に及んでいた。かつらがさらに壊れ、彼女の本当の髪があらわになっていた。

「ゴ・・ゴメン・・・タ・・タスケ・・ラレ・・・ナ・・・」

 少女への謝罪の言葉を口にするスパークガール。声を振り絞るのもやっとだった彼女に、少女は困惑するばかりだった。

  ピキッ パキッ

 唇さえも石に変わり、スパークガールは声を出すこともできなくなる。少女を助けられなかったこと、レインを倒すどころかなすすべなく全裸をさらけ出すことで、彼女はたまらず目に涙を浮かべる。

    フッ

 その瞳にもヒビが入り、同時にあふれていた涙が石の頬を伝った。レインの石化によって、スパークガールは全裸の石像と化した。

「スパークガール!!!

 その涙を垣間見た少女が悲鳴を上げる。その声と涙をかき消すかのように、周囲には白い霧が広がっていった。

 

 レインに連れ込まれて意識を失っていた少女は、部屋の中で目を覚ました。ゆっくりと顔を上げる彼女は、レインに石化された美女の石像たちを目の当たりにする。

「目が覚めたようだね・・ようこそ、僕の楽園へ・・」

 そんな少女に向けて声がかけられた。彼女に声をかけたのはレインだった。

 そしてレインの前には1人の少女の石像が立っていた。その石像の顔に、少女は見覚えがあった。

「ライム、ちゃん!?・・・ライムちゃんも、石に・・・!?

「おや?君はあのスパークガールと知り合いだったのかい?」

 愕然となっている少女に、レインが悠然と声をかける。

「何を言っているの!?・・だってスパークガールとは全然髪型が違う・・・!」

「あれはかつらだったようだ。僕の石化によって、素肌だけじゃなく素顔もさらけ出した。スパークガールの正体が、ここにいる彼女ということだ・・」

 声を荒げる少女に、レインは淡々と語りかける。少女の親友、細川(ほそかわ)ライムは、先ほど石化されて全裸の石像にされたスパークガールの正体だった。

「まさかスパークガールとしての姿と本当の彼女が全然違う髪型とはね・・でも僕としては素顔のほうが好みだ。ショートヘアは、裸を隠さないからね・・」

 レインは少女に向けて語っていくと、ライムの石の裸身を見回していく。手足や胸や尻は滑らかさや柔らかさを残したまま固まってひび割れ、髪もやや揺らめいた感じのまま固まっていた。

「彼女、最後の最後まで抜け目がなかったよ。オブジェになっていく間に、僕に発信機を付けようとしたのだから・・」

「発信機・・・!?

「もっとも、彼女が完全にオブジェになってからすぐに外して壊したけど・・そう簡単に僕の居場所は暴かせないよ・・」

 レインが口にした言葉に、少女は愕然となる。スパークガールは石化されていく中、レインに発信機を飛ばして居場所を暴こうとした。だがレインは気付いており、戻る前に発信機を外していたのである。

「それにしても、本当にきれいな体をしている・・見ているだけでは我慢ができない・・思わず触れたくなってしまう・・・」

 レインは笑みをこぼして、ライムの胸を撫でまわしてきた。体を触られているにもかかわらず、彼女は全く反応しない。

「手足、お尻、胸・・あらゆる点で僕の心を満たしていく・・正義のために戦う少女・・今まで僕が触れてきた裸の中で指折り・・まさに最高のオブジェにふさわしい・・・」

「やめて・・・」

「君は本当にすばらしい友達を持ったよ。君を助けるために僕に挑み、先に僕にこの体をさらけ出したのだから・・助けられなかったことを謝っていた・・君のために涙を流した・・その正義感や悲しみが、彼女自身を最高のオブジェへと昇華させた・・・」

「やめて・・・!」

「彼女は奥の僕の部屋に置いてあげよう・・長い時間、僕のそばにいさせてあげる・・そこで彼女のきれいな体に触れて、僕は満足していくんだ・・・」

「やめて!」

 ライムの体に触れていくレインに、少女が怒りの声を上げた。突然の彼女の叫びに、レインは思わず笑みを消した。

「これ以上ライムちゃんに触らないで!・・ライムちゃんは真っ直ぐな子・・私を助けようとして石にされた・・真っ直ぐなライムちゃんを弄ぶなんて、絶対に許さない!」

「絶対に許さない・・君も彼女のように勇ましいことだ・・せっかくだから、君もオブジェにした後、彼女とともに私の部屋に置いてあげよう・・」

 怒りを爆発させる少女に、レインは悠然と言いかける。少女はポケットからひとつのコンパクトを取り出した。化粧用のようだった。

「お化粧でもするつもりかい?でも分かっているよね?僕の石化を受けたら丸裸になることを・・」

 少女の行為にレインが疑問を投げかける。少女は手にしたコンパクトのアイシャドウを付ける。

 すると少女が突然光に包まれた。何かが弾けるような快感を彼女は感じていた。

「ジャーン♪」

 高らかに決めポーズを取る少女。彼女は黒ずくめのきわどく派手な衣装を身にまとっており、雰囲気も大きく変わっていた。

「久しぶりのこの解放感♪たまんな〜い♪」

「その姿・・まさか、シャドウレディ・・・!?

 声を上げる少女に、レインが驚きを覚える。少女は街をにぎわせていた怪盗、シャドウレディだった。

 シャドウレディは街に散らばった魔石を求めて行動していたのである。

「まさか君があのシャドウレディだったとは・・すごいぞ・・今日は本当についている・・・!」

「あら?私を求めてくれるなんて♪有名人は辛いね〜♪」

「スパークガールとシャドウレディ・・僕が求めていた美女2人が、しかも一夜に2人ともお目にかかれるとは・・・君も彼女のように、僕に裸を見せてくれないかな・・闇に隠れた怪盗の素肌、確かめてみたい・・・」

「残念だけど、私の裸はそう易々と見せられるもんじゃないんだよねぇ。でも大人しくしてくれたら、ちょっとだけサービスしてあげてもいいんだけど・・」

「やはりすばらしい美女は、そう簡単には手に入れられないということか・・・」

 誘惑の素振りを見せてくるシャドウレディに、レインは苦笑いを浮かべる。

「でも簡単じゃないほど手にいれたくなってしまうんだよ、僕は!」

 歓喜をあらわにしてレインが飛びかかる。だがシャドウレディが振りかざした打撃を受けて跳ね返される。

「大人しくしていれば痛い目にあわずに済んだのに・・・私、けっこう強かったりして・・・」

 上品に振舞うシャドウレディ。痛みを感じながら、レインがゆっくりと立ち上がる。

「確かに強い・・美しいバラの棘のように痛々しい・・やはりものにするのは難しいということか・・・」

 痛みを痛感しながらも、レインが笑みをこぼす。

「でも手に入れるのが難しいほど、手に入れたくなる・・どんなことをしてでもね・・・」

 レインは言いかけると、再びライムを抱きしめてきた。その瞬間、シャドウレディの顔から余裕が消える。

「殴られるのはイヤだからね・・仕方がないけどこういう手段を取らせてもらうよ・・・」

「ちょっと・・悪い冗談じゃない・・・!」

「僕を攻撃すれば彼女が壊れてしまうかもしれない・・壊れたら2度と元に戻れなくなるよ・・・」

 ライムを人質に取ってきたレインに、シャドウレディが毒づく。次の瞬間、レインが髪を伸ばしてシャドウレディを縛りつけてきた。

「しまった!」

「捕まえた・・友情はこういうときには仇となるものだよ・・・」

 声を荒げるシャドウレディに、レインが意識を傾けた。

 

    カッ

 

   ドクンッ

 

 彼の目からの光を受けて、シャドウレディが強い胸の高鳴りに襲われる。

「やった・・ついにシャドウレディをものにした・・・!」

  ピキッ ピキッ ピキッ

 興奮をあらわにしたレインの前で、シャドウレディが石化し、両足があらわになる。

「足が石に・・動けない・・・!」

「身軽な怪盗も、足が石になっていては動けないよね・・」

 うめくシャドウレディに向けて、レインが笑みをこぼす。石になったシャドウレディの両足は、彼女の意思を全く受け付けなくなっていた。

「これからじっくりと見させてもらうよ・・闇に隠されていた怪盗の素肌をね・・」

  ピキキッ パキッ

 石化が進行し、シャドウレディの衣装が引き裂かれていく。石の裸をさらけ出されて、彼女が動揺を浮かべる。

「本当にすばらしい・・その黒い影の中に、こんなにすばらしい素肌を隠していたなんて・・君もスパークガールと同じように、僕の部屋に置いてあげるよ・・」

「こ、こんなの・・・!」

「そうそう。あの不思議な生き物は私がオブジェにしたよ・・何かしてこっそり抜け出そうとしたからね。石にしておけばさすがにどうすることもできないからね・・」

 レインが口にしたこの言葉に、シャドウレディが愕然となる。彼女の仲間の小悪魔は、レインによって石化されていた。

  パキッ ピキッ

 手足の先まで石に変わり、首元や頬さえも石になっていたシャドウレディ。

「こんなんじゃ・・・魔人が・・・」

  ピキッ パキッ

 声を振り絞っていた唇も石になり、声を出すこともできなくなる。

    フッ

 瞳も石に変わり、シャドウレディは完全に石化に包まれた。独特の髪型を保ったまま、彼女は一糸まとわぬ姿のまま、微動だにしなくなっていた。

「やった・・やったよ・・・ついに・・ついにシャドウレディをものにしたよ!」

 レインが喜びの声を上げる。スパークガールとシャドウレディ。世間を騒がせる2人の美少女をものにしたことに、彼の歓喜は頂点に達していた。

「すばらしい!2人のこの裸こそが、僕が求めていた本当の喜び!」

 レインは高らかに言い放つと、シャドウレディの胸を撫でてきた。彼女の石の裸身にも、彼は改めて喜びを感じていた。

「この体が・・そしてスパークガールの体が、ずっと僕のもの・・こんなに喜ばしいことはない!」

 込み上げてくる喜びを抑えることができず、レインが哄笑を上げる。体を触られても、シャドウレディもライムも全く反応を見せない。

「これからの夜が本当に待ち遠しい・・この美しく素晴らしい2人と、ずっと一緒にいられるのだから・・・」

 レインは喜びを膨らませながら、自分の髪を伸ばしてライムとシャドウレディの石の裸身を持ち上げる。2人が壊れないようにして、レインは隣の部屋に移動した。

 改めて置かれた2人の美少女に、レインはさらに笑みをこぼしていた。

「美しき怪盗と正義の稲光・・しかも親友同士・・ともに美しいオブジェとなって一緒にいられるのだから、君たちにとっても損はないはず・・・」

 シャドウレディとライムの石の裸身に同時に触れていくレイン。2人は互いに向き合った形で置かれていた。

「これからの夜が本当に楽しみだ・・でも、もしかしたら2人を超える裸を持っている美女が、この世界にはいるのかもしれない・・・」

 湧き上がる喜びを押し殺して、レインが呟きかける。

「もっとだ・・もっとたくさんの美女の裸をものにしないと・・・!」

 さらに膨らんでくる欲望に駆り立てられて、レインは次の標的を求めて動き出した。2人の最高の美少女を手にしても、彼の欲望が解消されることはなかった。

 

 その後もレインは、美しい裸を求めて美女を連れ去って、石化してコレクションしていった。

 世間を騒がせたシャドウレディとスパークガールが姿を見せなくなり、人々はにぎわいを失くしていた。誰も2人が連れ去られて石化されたとは予想だにしていなかった。

 美女の裸を手にしていくにつれて、レインの欲望は増す一方だった。

 その強い欲望が自身の破滅を招いたのは、シャドウレディとスパークガールが石化されてから数日後のことだった。

 

 

短編集

 

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