明日菜とのどかの危険な妄想
神楽坂明日菜。
麻帆良学園中等部に通う女子で、強気な性格の少女である。
宮崎のどか。
同じく麻帆良学園中等部に通う女子。本が好きで、図書館で多く本を借りることから、「本屋」と呼ばれている。
日常では大きな関わりの少ないこの2人の、とある出来事だった・・・
図書館で本を借りることが日常となっているのどか。彼女は気分転換の意味を込めて、街中の本屋に足を踏み入れていた。
しかし内気で恥ずかしがりやののどかは、見知らぬ店、見知らぬ人々に困惑していた。
(どうしよう・・何だか恥ずかしくなってくる・・でもここにしかない本があるかもしれない・・・)
不安を感じながらも、のどかは意を決して店内を見回した。店を訪れたのも、楽しい、自分にとってためになる本を探すためだった。
だがのどかの眼に入ったのは、少年漫画。しかもH度の高めの部類に入るものだと、親友から聞かされていた。
(この漫画・・すごく大胆だって・・絵も内容も・・・)
手に取ることにも動揺を隠せなくなるのどか。だが彼女はその漫画に眼を通していた。
(服が破れていく・・こういうのが、最近の漫画なのでしょうか・・・!?)
漫画の過激な描写に、のどかは一気に動揺を膨らませた。そしてあるシーンで、彼女の動揺は頂点に達した。
それは、ザブヒロインがヒロインを庇って石化されるシーンだった。それも体だけ石になり、衣服は石化が進行していくと同時に引き裂かれていくものだった。
完全に石化に包まれたサブヒロインは、一糸まとわぬ姿となってしまった。その石の裸身を目の当たりにして、のどかは動揺のあまりに、頭の中が真っ白になってしまった。
(あっ!・・ま、まさかこんなすごいものまで・・・)
動揺を拭うことができないでいるのどか。
(男の人は、こういうのが好きなのでしょうか・・このようなものが・・・!?)
「あれ?ここにいるのは本屋ちゃん?」
そこへ突然声をかけられて、のどかが驚きをあらわにする。震えながらゆっくりと振り向くと、そこには明日菜の姿があった。
「あ、明日菜さん!?・・・お、驚かさないでください・・心臓が止まるかと思いましたよ・・・」
「アハハハ、ゴメンゴメン。ビックリさせるつもりはなかったんだけど・・・」
たまらず声を荒げるのどかに、明日菜が苦笑いを浮かべる。
「でも本屋ちゃんが本屋にいるなんて・・でも図書館によくいるから不思議じゃないかも・・」
明日菜が気さくに言いかけるが、のどかは気恥ずかしさのあまり、返事ができないでいた。
「それにしても、何を見ていたの?」
「えっと・・その、あの・・・」
明日菜が訊ねてくるが、のどかは困惑して答えられなくなっていた。
「それ、漫画だよね?本屋ちゃんだから、漫画を読んでも不思議じゃないよね。」
「えっと、こ、これは、ちが・・・!」
言いかけてくる明日菜に弁解しようとしたとき、のどかは持っていた漫画を落としてしまう。その拍子にのどかの動揺が一気に高まる。
「あれ?この漫画、木乃香が前に言ってたヤツだよね?あたしはいやらしいから読むのをやめちゃったんだけどね・・」
苦笑いを見せる明日菜に、のどかは赤面して声も出なくなっていた。
「本屋ちゃんがこういうのも読むなんて、ちょっと意外だったかも・・」
「ち、違うんです・・ふと、手に取ってしまっただけで・・・」
納得の素振りを見せる明日菜に、のどかが慌てて弁解する。
「でも、想像したらいけない想像をしてしまって・・・?」
「想像?」
のどかが口にした言葉に、明日菜が疑問符を浮かべる。
「もし私たちが、この誘拐犯に狙われたら・・・」
「あたしたちが狙われたらって・・・それってまさか・・・!?」
のどかが切り出した言葉に、明日菜が困惑を見せる。彼女の脳裏にひとつのイメージが浮かび上がっていた。
美女たちを次々とさらっていく誘拐犯に、明日菜も狙われた。彼女は行き止まりに追い詰められ、誘拐犯と対峙していた。
「んもう!ホントにしつこいんだから!」
いきり立った明日菜が誘拐犯に飛びかかっていく。だが突き出した腕をつかまれ、彼女はそのまま捕まってしまう。
「こ、このっ!放しなさいって!」
誘拐犯の腕から抜け出そうと暴れる明日菜。彼女の出したもう片方の腕が、誘拐犯の顔をかすめた。
顔を傷つけられたことに誘拐犯が苛立ちを膨らませた。彼に睨みつけられて、明日菜が緊迫を膨らませる。
カッ
誘拐犯の眼からまばゆい光が放たれる。
ドクンッ
その眼光を受けた明日菜が強い衝動に襲われる。その衝撃に驚き、彼女は言葉を失っていた。
ピキッ ピキッ ピキッ
そのとき、明日菜の体に異変が起きた。彼女が着ていた衣服が引き裂かれ、さらけ出された右胸と下腹部が白く冷たくなり、ところどころにヒビが入っていた。
「ち、ちょっと何!?体が動かない・・!?」
思うように動くことができず、裸を隠すことができず恥ずかしさを覚える明日菜。彼女の姿を見て、誘拐犯が不気味な笑みを浮かべる。
パキッ
石化が進行し、明日菜の素肌をさらけ出していく。必死に裸を隠そうとする彼女だが、石になった体は彼女の思うように動かせない。
「こんな・・こんなことって・・・!」
抵抗の術を失い、困惑する明日菜。
ピキッ パキッ パキッ
石化が明日菜の手足の先まで及び、ツインテールとなっている髪さえも固めていく。動くことができなくなった彼女は、誘拐犯を見つめることしかできなかった。
「イヤ・・見ないで・・・見ないでったら・・・」
頬を赤らめながら、明日菜が声を振り絞る。
パキッ ピキッ
明日菜の首元や頬まで石に変わっていく。髪を留めていた髪留めが切れ、それに付いていた鈴が地面に落ちて鳴る。
「先生・・ゴメンね・・・ゴメ・・ン・・・」
ピキッ パキッ
憧れの先生への想いを呟くも、唇さえも石になり、明日菜は声を出すこともできなくなった。彼女の眼から涙があふれてきていた。
フッ
その瞳にヒビが入り、明日菜は完全に石化に包まれた。同時に眼からあふれていた涙が、石の頬を伝って流れ落ちていった。
直後に姿を消した誘拐犯。明日菜は石化と同時に全ての衣服を引き剥がされ、一糸まとわぬ石像にされてこの場に取り残されてしまった。
「キャアッ!わ、私、とても恥ずかしいことを思い描いてしまったような・・・」
「そ、それはこっちのセリフよ!裸のまま置き去りにされるなんて、この上ない生き地獄よ!」
赤面するのどかと、恥らうあまりに声を張り上げる明日菜。落ち着こうとしても恥ずかしさが膨らむ一方で、2人とも次第に息が荒くなっていった。
「じ、実は私も・・思い出すだけで恥ずかしくなってくるようなことを・・・」
「えっ!?本屋ちゃんも、こんなことを・・・!?」
赤面しながら声を振り絞るように言いかけるのどかに、明日菜がたまらず声を荒げる。
「私もその誘拐犯に・・・」
囁くように語り掛けるのどかに、明日菜は息を呑んで聞き耳を立てた。
夜の街で突如誘拐犯に捕まってしまったのどか。気絶させられた彼女が次に眼を覚ましたのは、人気のない部屋の中だった。
顔を上げたのどかが、不敵な笑みを見せてくる誘拐犯を目撃する。自分を連れ去った相手を目の当たりにして、のどかが恐怖を覚える。
後ずさりするのどかだが、誘拐犯が出した両手にすぐに捕まってしまう。
「は、放してください!助けてください!」
のどかが助けを請うが、誘拐犯は不敵な笑みを浮かべるばかりだった。彼に鋭く睨みつけられて、のどかは緊迫を覚える。
カッ
誘拐犯の眼からまばゆい光が放たれた。
ドクンッ
その眼光を受けたのどかが強い胸の高鳴りを覚える。その瞬間、彼女は息が止まるような気分を覚える。
ピキッ パキッ パキッ
次の瞬間、のどかの靴と靴下が引き剥がされ、あらわになった素足が石に変わる。
「えっ!?・・靴が!?・・それに、足が石に・・・!?」
自分の身に起きた変化にのどかが驚愕する。その彼女の姿を見つめて、誘拐犯が笑みをこぼす。
「どうなっているのですか!?・・私に何をしたのですか・・・!?」
パキッ パキッ
恐怖を込めた声を上げた瞬間、のどかの体を石化が蝕み出す。腰の辺りまで石に変わり、スカートが引き裂かれて下半身があらわになる。
自分の素肌をさらけ出されて、のどかが動揺して赤面する。その恥じらいを、誘拐犯が見つめて喜びを感じている。
ピキキッ パキッ
石化はのどかの上半身に及んだ。全ての衣服を引き裂かれて裸身をさらけ出し、のどかの動揺はピークに達していた。
「助けてください!このまま裸になりたくないです!」
たまらず助けを請うのどかだが、誘拐犯は哄笑を浮かべるばかりで、石化を解こうとしない。助からないことを痛感して、のどかは言葉を失う。
ピキッ ピキキッ
石化が首元まで迫り、のどかが力を入れられなくなる。彼女の髪さえも石に変わり始めていた。
「助けて・・・先生・・たす・・け・・・て・・・」
ピキッ ピキッ
助けを請うも唇さえも石になり、のどかは声を出すことができなくなる。彼女の眼から涙があふれ、頬を伝っていく。
フッ
瞳さえも石に変わり、流れていた涙が弾けるように途切れる。のどかは誘拐犯のかけた石化に包まれ、一糸まとわぬ石像へと変わり果てた。
のどかは他の美女たちのように石化され、誘拐犯のコレクションに加えられることになった。
のどかが切り出した妄想。それを聞いた明日菜だけでなく、話したのどか自身も動揺の色を隠せなかった。
「ダ、ダダダ、ダメよ、本屋ちゃん!こんなこと、想像するだけでもダメ!」
「す、すみません、明日菜さん・・おかしなこと、言ってしまって・・・」
声を張り上げる明日菜に、のどかが赤面しながら謝る。気まずさを感じたまま、明日菜がのどかに小声をかける。
「でも、石にされた人たち、最後にはみんな元に戻るんだよね・・?」
「はい、そうみたいです・・でも服までは元に戻らないみたいです・・」
「元に戻らないって・・・裸で元に戻るってこと・・・!?」
のどかが切り出した言葉に、明日菜がまたもや赤面する。2人の脳裏に新たな妄想が生まれていた。
誘拐犯がかけた石化が解除され、石にされていた女性たちが元に戻った。のどかも解放され、一瞬安堵を覚えた。
だが自分が裸であることを思い出し、のどかが動揺して赤面する。
「は、裸!?・・そ、そんな・・・!?」
自分の体を必死に抱きしめて、裸を隠すのどか。他の女性たちも恥ずかしさのあまりに、動揺をあらわにしていた。
(わ、私・・どうやって帰ればいいの!?・・・こんなの、他の人たちに見られたくないよ・・・!)
心の声を上げるのどかが、その場に座り込んでしまった。
一方、誘拐犯によって街中で石化されていた明日菜。石化が解かれた彼女も、すぐに自分の裸を隠していた。
「ど、どうしてこんなところで!?」
恥じらいをあらわにして、近くの裏路地に入って身を隠す。
「どうすんのよ、ホントに!?元に戻ったのはいいけど、これじゃ寮に戻れない・・・!」
自分の体を抱きしめて、明日菜はそのまま座り込んでしまう。
「もー!どうやって帰ったらいいのよー!!」
どうしたらいいのか分からず、明日菜は悲鳴を上げるしかなかった。
さらに恥ずかしい妄想をしてしまい、明日菜ものどかも赤くなりすぎて湯気を出していた。
「は・・恥ずかしいです・・・」
「これじゃ、もうお嫁にいけない・・・」
動揺が限界を突破してしまい、2人とも自分で何を言っているのか分からなくなっていた。
「あら?明日菜と本屋ちゃんやないの・・」
そこへ声をかけられ、明日菜とのどかが過剰の反応をする。2人が恐る恐る振り返ると、そこにはクラスメイト、近衛木乃香、桜咲刹那がいた。
「こ、ここここ、木乃香!?どどど、どうしてこんなところに!?」
明日菜が動揺を全開にしながら答える。だが彼女自身ろれつが回っていない。
「どないしてって、ここ本屋やないの。せやから本を探しに来たに決まってるて・・」
「そ、そうですよ、明日菜さん!本以外の目的なんてないですよ・・・!」
笑顔を見せる木乃香と、明日菜に弁解するのどか。刹那が明日菜とのどかの前にある漫画を見て、動揺をあらわにする。
「ち、ちょっと・・2人とも、その漫画は・・・!?」
「せ、刹那さん、この漫画のこと知ってるの・・・!?」
声を荒げる刹那に明日菜が詰め寄る。刹那は困惑してしまい、答えることができない。
「その漫画、うちもせっちゃんも見たことあるよ・・いろいろイメージが膨らんできて、うちはいろいろ楽しめたなぁ・・」
「お、お嬢様!そのようなことを軽々と口にしてはいけません!」
明日菜とのどかに語りかける木乃香に、刹那が慌てて言いとがめる。だが木乃香は柔らかな笑顔を見せるだけだった。
「何だか、おかしなものが流行り出しているような・・・」
おかしな事態に、明日菜は困惑するばかりだった。のどかも赤面したまま、何も言葉をかけられないでいた。
少女たちが思い描く危険な妄想は、留まるところを知らなかった。