オールライダーVSダークライダー
-Justice or
Dark-
第5章
1度士たちの前から撤退した進之介たち。だが士の攻撃を受けて進之介は意識を失っていた。
「進之介くん、まだ意識は戻らないか・・・」
光太郎が進之介を見て、深刻さを浮かべる。
「まさかまたディケイドが出てくるとは・・・」
「自分がこの世に戻ってきたために、他の悪のライダーや怪人たちも復活を果たした・・まだ他に誰がよみがえってきたのか、計り知れない・・」
一真と朔也が士のことを思い出して言いかける。
「進之介くんの受けたダメージも心配だ・・どうにかして回復を・・」
「一刻の猶予もないです・・荒療治をするしかなさそうです・・」
光輝と霧子が呟いたところだった。救急車のシフトカー「マッドドクター」が駆けつけてきた。
「泊さんとクリムをお願い・・」
“Mad doctor.”
霧子がマッドドクターを手にすると、進之介のシフトブレスにセットする。するとマッドドクターが進之介の体に手を加える。
「ぐ、ぐあぁっ!」
マッドドクターの治療を受ける進之介が絶叫を上げる。マッドドクターの治療にはとてつもない痛みが伴うのである。
「おいおい、ホントに大丈夫なのかよ・・」
「良薬口に苦しって言うけど、それ以上かも・・・」
進之介の様子に巧が肩を落として、良太郎が心配の眼差しを送る。マッドドクターの治療が終わって、進之介は落ち着きを取り戻した。
「もう少しすれば目を覚まして完全回復、か・・・」
進之介の様子を見てから、剛がチェイスに振り返る。
「さて、今のうちにロイミュードを片付けるとするか・・」
剛がチェイスに詰め寄ろうとするが、霧子が割って入ってきた。
「待って、剛!チェイスは悪くない!」
「どいてくれ、姉ちゃん!ロイミュードが人類の敵なのは、姉ちゃんも分かってるはずだろ!」
呼び止める霧子に剛が怒鳴る。彼は未だにチェイスを敵視していた。
「ヤツが怪物だからというだけで敵だと判断するなら、オレも剣崎もお前の敵ということになる。」
そこへ始が剛に声をかけてきた。
「オレはアンデッドで、剣崎も世界とオレを守るために、自らアンデッドとなる道を選んだ。だがオレも剣崎も大切なものを守る心を持ち、人間たちの中で生きている・・」
「オレも同じだ。最初は人間じゃなくなる自分に絶望したけど、今はその自分を受け入れてる。世界を守るために・・」
始に続いて紘汰も剛に語りかける。
「怪人たちの多くは、世界や地球を征服しようとしたり、自分を見せつけたりして、みんなを苦しめている・・だけどその中には、人間以上の人間らしさを持つ人もいる・・」
さらに光輝も剛に言いかける。
「だからアイツにも、人間の心があるっていうのか・・・!?」
しかし剛は聞き入れようとしない。すると光太郎も剛に声をかけてきた。
「君が彼に対してどう考えているのかは君の自由だ。だが今倒すべき相手は他にいる・・」
光太郎が口にした言葉を聞いて、剛が士のことを思い出す。
「悪の仮面ライダーをよみがえらせている張本人がディケイドであることは間違いないと言っていいだろう。アイツを倒さないと、世界が、地球が、あらゆる世界がムチャクチャになる・・」
「戦って、倒すんだ・・正しいことを壊そうとする悪を・・・!」
光輝も紘汰も、士を倒して世界を守ることを心に決めていた。
「お前たちが何と戦い、何を考えて生きてきたのかは知らない・・だがこれだけは理解した・・仮面ライダーと呼ばれるお前たちは誰も、世界や人間たち、大切なものを守るために戦っている・・」
光太郎たちの姿、考えと直面して、チェイスが改めて、仮面ライダーの存在意義を悟った。
「そしてこの男にも、お前にも、その正義がある・・・」
チェイスに目を向けられて、霧子が小さく頷いた。
「ディケイド以外の悪のライダーたち・・何人復活しているのか・・」
「王蛇、エターナルに僕たちは遭遇しました。あとはシャドームーン・・」
「歌舞鬼という鬼も、シドというアーマードライダーは倒した・・」
朔也、光輝、睦月が情報を口にしていく。
「あと赤い体をした怪物もいたな。ライダーじゃないが、壊すことばっか考えてる物騒なヤツだった・・」
「赤い体・・もしかしてデェムシュ・・アイツまで生き返ったのか・・・」
巧が口にした言葉を聞いて、紘汰が呟く。
「他に誰が出てきているか、把握できていない・・」
「何にしても、首謀者のディケイドを倒すのが先決だ・・」
一真と始が言いかけて、光太郎たちが頷いた。
「人々を、それぞれの世界を守るために・・・」
光太郎たちの決意を目の当たりにして、霧子が戸惑いを感じていく。
「そうだ・・みんなを守らないと・・・」
そのとき、進之介が意識を取り戻して体を起こしてきた。
「泊さん、気が付いたんですね・・・!」
「あぁ・・さっきのは効いた・・フォーミュラのスピードで回避しようとしていなかったら、さすがにやられていた・・・!」
喜びを見せる霧子に、進之介が安心を浮かべる。
「まさに紙一重の生存だったな。」
「ベルトさんも無事だったんだな・・」
声をかけてきたドライブドライバーに、進之介が答える。
「私もマッドドクターの治療を受けて回復した・・ディケイド・・世界の破壊者の異名は偽りではないようだ。あらゆる世界の力を身に宿し、我々にぶつけてきている・・」
「その力で何度もよみがえってきてるのか・・」
ドライブドライバーも進之介も士のことを口にしていく。
「それでもオレたちは戦っていく。世界や地球を守るために、人間の自由と平和のために・・」
光太郎が口にした決意を聞いて、進之介と霧子、チェイスの心が揺れる。彼らは自分たちの戦い守る理由を思い返していた。
「人間を守るのが、仮面ライダーの使命・・仮面ライダーとして戦うオレの使命でもある・・」
「私には泊さんや剛、チェイスのような力はないけど、みんなを助けたいという気持ちは強い・・」
チェイスと霧子がそれぞれの考えを呟いていく。
「悪から人々を守る・・命だけでなく、心や思いも・・それがオレが背負った使命・・刑事として、仮面ライダーとして、人間として・・・」
決意を口にして、進之介が手を握りしめる。彼は人々を守るために士に立ち向かうことを、心に決めていた。
「まずは状況把握だ。ディケイドの位置とヤツを含めた悪のライダーと、味方のライダーの把握を・・」
進之介が情報の整理を試みる。
「他にどんな仮面ライダーがいるのですか・・?」
霧子が光太郎たちに疑問を投げかけたときだった。
「オレたちも仮面ライダーだ。」
そこへ2人の青年が現れて、進之介たちに声をかけてきた。
「あなたたちは・・・?」
「僕たちは2人で1人の探偵で・・」
「2人で1人の仮面ライダーだ。」
霧子が声をかけると、2人の青年、フィリップと左翔太郎が自己紹介をする。2人は端末「ガイアメモリ」、「サイクロンメモリ」と「ジョーカーメモリ」を手にした。
「変身!」
“Cyclone.”
“Joker!”
フィリップがベルト「Wドライバー」にセットしたサイクロンメモリが、翔太郎のWドライバーに転送される。同時に翔太郎もジョーカーメモリをWドライバーにセットして、バックルを展開する。
“Cyclone,joker!”
翔太郎の体を緑と黒のスーツと仮面が包み込む。そしてフィリップがその場に倒れる。
「翔太郎くん、フィリップくん、君たちも無事だったか・・」
光太郎が声をかけて、翔太郎が頷く。
仮面ライダーW。風都の平和を守る、2人で1人の仮面ライダー。Wに変身している間は、フィリップの意識は翔太郎の中に入っている。
「竜と流星は他のライダーたちと合流している。オレたちと弦太朗でこっちに来るはずだったんだけど・・」
“他のライダーが無事でいると聞くと、その場所に1人で行ってしまったよ・・”
翔太郎とフィリップが事情を説明する。彼らは仮面ライダーフォーゼ、如月弦太朗と行動をともにしていたが、弦太朗は勝手に動き出してしまったのである。
「弦太朗くんらしいけど・・1人で動くのは危険だ・・!」
「僕たちも早く行かないと・・・!」
光輝と良太郎が不安を感じて、弦太朗のところへ向かおうとした。
“でもその前に相手しないといけないのがいるよ。”
フィリップが言葉を投げかけて、進之介たちが足を止める。
「出てこいよ。姿隠してコソコソしてるのは分かってるぞ。」
翔太郎が言いかけて指をさす。その先の広場に突然1人の仮面ライダーが現れた。
「フフフ・・よく見破ったな。さすが探偵ライダーだ。」
現れたライダー、ベルデが笑みをこぼしてきた。
「探偵ライダー・・言ってくれるな、アイツ・・」
“本当のことだけど。”
翔太郎がため息をついて、フィリップが口を挟む。
「ベルデ・・カメレオンみたいに姿を消せるライダー・・・!」
「コソコソ隠れて不意打ちを狙ってたってわけか・・」
光輝が身構えて、巧が肩を落とす。
「だけど翔太郎さんたちに気付かれていた。不意打ちは失敗ということだな。」
紘汰も前に出てベルデに言いかける。
「フン。いつの時代になっても、生意気な態度の子供が出てくる・・実に不愉快だな・・」
ベルデが進之介たちを見て不満を口にする。
「そういうアンタも自分に酔っている大人のくせして・・」
そこへ声がかかり、ベルデが後ろに視線を向ける。物陰から現れた男に、巧は見覚えがあった。
「草加・・お前もよみがえってたのか・・・!?」
「相変わらず人間面して生きてるのか、お前・・人間を食い物にするヤツの1人なのに・・・」
声を上げる巧に男、草加雅人があざ笑ってくる。
「その態度と考え方・・本物だな・・」
巧はため息をついてから、雅人に鋭い視線を向ける。
“1つ聞くよ。君は僕たちの味方かな?もっとも、君の場合、言葉よりも行動で答えたほうがよさそうだ。”
フィリップが雅人に向けて問いを投げかける。すると雅人が笑みをこぼしてきた。
「そんなに知りたいか・・だったら、これが答えだ・・」
“Standing by.”
雅人が答えて、携帯電話「カイザフォン」に変身コード「913」と「ENTER」を押す。
「変身。」
“Complete.”
カイザフォンをベルト「カイザドライバー」にセットして、ライダー「カイザ」に変身した。
「どうやらベルデと同じく、オレたちの敵に回るみたいだな・・・フィリップ、いつものやるぞ。」
“いつまでたってもやるんだね。僕も好きだからいいけどね。”
翔太郎が声をかけてフィリップが答える。翔太郎がベルデと雅人を指さす。
「さぁ、お前たちの罪を数えろ!」
翔太郎とフィリップが声をそろえて言い放つ。
「その生意気さが、お前らの罪だ。」
ベルデは吐き捨てると、翔太郎に向かっていく。ベルデは正確な攻撃を仕掛けるが、翔太郎は軽やかにかわしていく。
反撃に出る翔太郎だが、ベルデもまた軽やかにかわして距離を取っていく。
“Clear vent.”
ベルデが左ももにある「バイオバイザー」にカードをセットして、自分の姿を消す。
「くっ!姿を消しやがった・・!」
“不意打ちを狙ってくるよ、翔太郎。”
辺りを見回す翔太郎に、フィリップが注意を投げかける。
「こうなったらコレで・・コレなら隠れていても・・!」
翔太郎が言いかけて、新たに2つのガイアメモリ「ルナメモリ」と「トリガーメモリ」を取り出した。
“Luna,trigger!”
彼が2つのメモリをWドライバーにセットすると、Wのスーツの緑と黒がそれぞれ黄色と青に変わる。
翔太郎はWの別形態、「ルナトリガー」になった。
「これで逃げ道をふさいで・・」
“待つんだ、翔太郎。ベルデにはあのカードが・・”
翔太郎が銃「トリガーマグナム」で狙い撃ちしようとして、フィリップが呼び止める。
“Copy vent.”
そのとき、姿を現したベルデの手にトリガーマグナムが握られた。ベルデはトリガーマグナムをコピーしたのである。
「姿を消してもこれなら狙えると思ったのだろうが、それが分からない私だと思ったか?」
ベルデがコピーしたトリガーマグナムを見て笑みをこぼす。
「これでオレも狙い撃ちができるというものだ。」
ベルデが翔太郎に向けてトリガーマグナムを発射する。放たれた光の球を、翔太郎は横に動いてかわす。
ルナトリガーのトリガーマグナムは、射撃の軌道を変えることができる。ベルデはそのつもりで射撃を仕掛けていた。
だがベルデの射撃は曲がることなく直進していく。
「曲がらないだと!?」
思うように射撃が動かないことに、ベルデが驚きの声を上げる。
“トリガーマグナムをコピーされたのはよくなかったけど、それだけじゃ僕たちの力を完全には使いこなせないよ。”
「ルナの力があっての曲がる射撃だ。」
フィリップが言いかけて、翔太郎がトリガーマグナムを構える。改めて彼が発射した光の球は、ベルデを目指して軌道を変えていく。
「くっ・・こんなことが・・・!」
「やれやれ・・オレがやらないとどうにもならないとはな・・」
焦りを見せるベルデを見かねて、雅人も動き出す。彼は一真と始、紘汰に目を向ける。
「話は聞いている。お前たち3人は怪物なのに人間面してのうのうと暮らしている。しかもその中に、自分から進んで怪物になるのを選んだとか・・」
雅人が一真たちに嘲笑を投げかける。しかし一真たちは冷静さを崩さない。
「お前は分かっているつもりでいて、オレたちのことを分かっていないな・・」
「剣崎は世界もオレも救うために、自ら選んでアンデッドになった。だがアンデッドになっても、剣崎は人間の心を失っていない・・」
一真と始が言いかけるが、雅人は理解しようともせずにあざ笑っていく。
「オレも選んだんだ。世界を守るために、ヘルヘイムの支配者になることを・・だけどオレも、人間の心までは捨てちゃいない・・」
紘汰も雅人に向けて言いかける。
「オレは人間なのに、人間らしさを失ったヤツらを知ってる・・アンタも、そう思えてならない・・」
「・・オレの何が分かる・・何も知らない貴様らが、分かったようなことを言うな!」
紘汰が投げかけた言葉に、平然としていた雅人が感情をあらわにしてきた。
「イヤってほど思い知らされたんだよ・・自分の目的のために、他のヤツを利用して犠牲にして、それでも平気な顔をしてるヤツのやり口を!」
紘汰も感情を見せて、カチドキロックシードと極ロックシードを戦極ドライバーにセットする。
「変身!」
“ロックオープン!キワミアームズ!ダイ・ダイ・ダイ・ダイ・ダイショウグン!”
紘汰が鎧武・キワミアームズに変身して、雅人に向かっていく。
「やはりバケモノはバケモノだ。物分かりの悪さもバケモノ並みということだ・・」
雅人は笑みをこぼすと、紘汰に向かっていってパンチをぶつけ合う。
「おいおい、あんなんでホントに仮面ライダーか?」
「これが悪の仮面ライダーなのか・・」
剛と進之介がベルデと雅人を見て声を上げる。
「仮面ライダーの力でも、使い方を間違えれば悪になる・・ドライブも例外じゃない・・」
「だが君はそのことを理解している。何のためにドライブとなって戦うのか、君は答えを見つけている。」
呟いていく彼にドライブドライバーが呼びかける。
「そして今の君には、世界や地球、平和と自由、大切なものを守ってきた仲間がそばにいる。」
「ベルトさん・・・」
「だから信じるのだ、進之介。私たちだけでなく、君を信じる者たちと、自分自身を。」
ドライブドライバーから励まされて、進之介が戸惑いを感じていく。彼は頷いて笑みを浮かべた。
「ありがとう、ベルトさん・・オレはみんなを守り抜く自分を信じる。だからオレはもう、考えるのをやめた・・!」
迷いと苦悩を振り切った進之介が、ネクタイを締め直す。
「行こう、ベルトさん!」
「OK.Start your engine.」
呼びかける進之介にドライブドライバーが答える。彼はシフトブレスにシフトスピードをセットする。
「変身!」
“Drive!Type speed!”
彼はドライブに変身して、ハンドル剣とドア銃を手にしてベルデに向かっていく。彼は翔太郎と同時にベルデに射撃を仕掛ける。
“僕たちが命中させるから、君はけん制して。”
「分かった。フィニッシュを頼みますよ、先輩たち。」
フィリップが指示を出して、進之介が答える。
「時間がないから一気に決めるぜ。」
“Trigger!Maximum drive!”
翔太郎がトリガーマグナムにトリガーメモリをセットして、エネルギーを集中させていく。
「よし・・オレもやるぞ・・!」
“ヒッサーツ!Fullthrottle!Speed!”
進之介もシフトブレスのイグナイターを押して、ドア銃にエネルギーを集めて、ベルデを狙って発射する。直後にタイヤ型のエネルギーを蹴り飛ばして、光の球にぶつけて分散させる。
ベルデがトリガーマグナムで迎撃して、光の球を撃っていく。
「トリガーフルバースト!」
その隙を狙って、翔太郎がトリガーマグナムから青いエネルギー弾を放つ。分散された弾丸が軌道を変えながら、ベルデに次々と命中した。
「ぐあぁっ!」
大きくダメージを受けたベルデが押されて、火花を散らしながら激しく横転する。
「お・・おのれ・・・!」
立ち上がるのがままならなくなって、ベルデがうめく。
一方、雅人が紘汰の力に徐々に押されていた。いきり立った彼は武器「カイザブレイガン」を「ガンモード」にして射撃する。
紘汰は後ろに下がって射撃をかわす。そこへ雅人がカイザブレイガンを「ソードモード」にして振りかざして、紘汰に切りかかる。
鎧武の鎧が切りつけられて火花を散らす。紘汰は後ろに動いて、雅人との距離を取る。
“ダイダイマル!”
“ブドウリュウホウ!”
紘汰が大橙丸とブドウ龍砲を手にする。彼はブドウ龍砲で射撃しながら、雅人に近づいて大橙丸を振りかざす。
紘汰がさらに振りかざす大橙丸を、雅人がカイザブレイガンで受け止める。
「いつまでも調子に乗るな・・バケモノが!」
雅人が怒号を放って、紘汰を蹴り飛ばす。
“Exceed charge.”
紘汰が踏みとどまっている間に、雅人がカイザブレイガンにエネルギーを集中させて、エネルギー弾を放つ。エネルギー弾を受けた紘汰が、光に包まれて動きを止められる。
雅人がカイザブレイガンを振りかざして光の刃を飛ばす。同時に彼自身も紘汰に向かって飛びかかる。
「変身・・!」
“Signal bike!Rider!Chaser!”
そこへチェイスがチェイサーに変身して、シンゴウアックスを手にして雅人に飛びかかる。雅人が横から突き飛ばされて、光から解放された紘汰が光の刃をかわす。
「助かった・・ありがとう・・」
感謝する紘汰に頷いてから、チェイスが雅人に向かっていく。
「人間を守るのが仮面ライダーの使命・・お前は違うのか・・・?」
「人間を守る・・確かにそうなるな・・そのために、オレの敵を倒す・・それだけのことだ・・・!」
問いを投げかけるチェイスに言い返して、雅人が右足を突き出す。キックを入れられたチェイスに金色の光の円錐が現れる。
「お前も・・オレの敵だ!」
雅人が飛び上がって、チェイスに向かって両足のキックを繰り出す。
“Break up,gun.”
チェイスがとっさに拳銃「ブレイクガンナー」を取り出して、「ガンモード」にしてエネルギーを集める。これは魔進チェイサーのときでも使っていた武器である。
チェイスが出力を上げたブレイクガンナーからのビームで迎撃して、雅人を引き離す。
「何が正しいのか、まだオレは答えを確定できていない・・だからオレは、ここで倒れるわけにはいかない・・」
“ヒッサツ!Fullthrottle!Chaser!”
チェイサーが右足にエネルギーを集めてジャンプする。彼は紫の光を宿したキックを、雅人に叩き込む。
「ぐあっ!」
突き飛ばされた雅人が横転して倒れる。ダメージの大きい彼のカイザへの変身が解ける。
「な・・なぜだ・・なぜオレが・・・!?」
雅人が心身ともに苦痛を感じて顔を歪める。彼が鋭い視線を巧に向ける。
「オレの思い通りにならず・・オルフェノクであるお前がのうのうと生きている・・そんなバカなことがあってたまるか・・認めないぞ、そんなこと・・・!」
声と力を振り絞って立ち上がる雅人の言葉を耳にして、剛が巧に目を向ける。剛は巧に対しても動揺を抱く。
(アイツもバケモノ・・バケモノだってのに、人間として生きて、人間を守るために戦ってるっていうのか・・仮面ライダーとして・・)
巧や紘汰たちに対して、剛はやるせなさを感じていく。
(チェイスと同じように・・・そんなバカな・・・!)
紘汰たちと同様、チェイスもロイミュードでありながら人間を守れると考えるのが、剛はどうしても腑に落ちなかった。
「今はオレたちが対峙している場合でない。そのことはオレ以上に自覚している者が多い。」
チェイスは雅人に注意を投げかける。しかし雅人もベルデも聞く耳を持たない。
「オレの敵はお前たち・・それは確実だ!」
雅人が叫び声をあげたときだった。1台のビーグル「サイドバッシャー」が駆けつけてきた。
「そいつまで持っていたのか・・・!」
巧がサイドバッシャーを目の当たりにして声を上げる。雅人がサイドバッシャーに乗って、巧がファイズフォンを手にする。
“Standing by.”
「変身!」
“Complete.”
巧はファイズに変身して雅人に向かっていく。
「変身!」
“Turn up.”
“Change.”
“Open up.”
“Sword form.”
続いて光太郎、一真、始、朔也、睦月、良太郎、光輝もRX、ブレイド、カリス、ギャレン、レンゲル、電王、オメガに変身する。
「メガブレイバー!」
光輝がメガブレイバーを呼んで乗り、雅人とサイドバッシャーに向かっていく。2台のマシンがすれ違いざまにぶつかり合って、光輝と雅人が一瞬ふらつく。
光輝とメガブレイバーが転回して、再び雅人に向かっていく。走り込んできた雅人とサイドバッシャーを、光輝とメガブレイバーはジャンプして飛び越える。
「小賢しいマネを・・・!」
“Battle mode.”
雅人がいら立ち、サイドバッシャーが変形して、二足歩行型のメカになった。サイドバッシャーが振りかざした腕が、光輝とメガブレイバーをはじき飛ばした。
「おいおい、あれはバイクじゃなくて巨大メカだろ!」
進之介が雅人とサイドバッシャーを見て声を上げる。
「我々もトライドロンで対抗するんだ!」
ドライブドライバーが呼びかけて、進之介が頷く。彼のそばにトライドロンが駆けつけてきた。
「進之介くんを援護するんだ!」
「おっしゃー!行くぜ、行くぜ、行くぜー!」
RXの声を受けて、良太郎に憑依しているモモタロスが高らかに言い放つ。モモタロスがソードモードのデンガッシャーを持って、雅人に向かっていく。
雅人がサイドバッシャーを操作する。サイドバッシャーから大量のミサイルが放たれて、雨のように降り注ぐ。
「おいおいおい、ムチャクチャだろ、そんなの!」
モモタロスが慌ててミサイルをかわしていく。しかしミサイルが執拗に飛び込んでくる。
“このままじゃやられちゃうよ!”
「い、言われなくても分かってるって!」
良太郎の声にモモタロスも言い返す。彼に向かってミサイルが四方八方から飛んでくる。
そこへ装甲車「リボルギャリー」が駆けつけてきた。モモタロスがとっさにリボルギャリーに飛びついて、ミサイルと爆発から脱した。
「ふぅ・・助かったぜ〜・・!」
「おいおい・・相変わらず猪突猛進すぎるぞ、アンタ・・」
安心の吐息をつくモモタロスに、翔太郎が呆れる。
“そう言う翔太郎も熱く突っ込むところがあるよ。”
「あの赤鬼ほどじゃないって・・」
フィリップが声をかけて、翔太郎がため息をつく。
「おい!あのロボットのそばまで行け!アイツを引きずりおろしてやるぞ!」
「あのなぁ・・タクシーじゃないって・・」
呼びかけてくるモモタロスに、翔太郎が肩を落とす。リボルギャリーがサイドバッシャーとともに前進して加速していく。
「とりゃ!」
リボルギャリーとサイドバッシャーがぶつかり合う直前に、モモタロスがジャンプして雅人に飛びついた。
「触るな!」
サイドバッシャーから落とされた雅人が、モモタロスを殴りつけて引き離す。
「オレだっておめぇなんか触りたくねぇ!けどブッ倒すにはとことんやってやるぜ!」
モモタロスが高らかに言い放って、デンガッシャーを構える。
“気を付けて。異質かつ強力な力が・・”
そのとき、フィリップが翔太郎たちに向けて声をかけてきた。次の瞬間、金色の鎧をまとった男が、金の羽根とともにモモタロスたちの前に現れた。
“あれはオーディン・・ミラーモンスターを操る仮面ライダーの中でも異質のライダーまで出てくるとはね・・”
「関心している場合じゃないだろ、フィリップ・・ヤツも止めるしかないだろう・・」
説明するフィリップに翔太郎が言い返す。
「戦え・・仮面ライダー同士・・最後の1人になるまで・・・」
「最後の1人・・禁断の果実を求めて戦ったオレたちみたいだな・・・」
呼びかけてくる金のライダー、オーディンに声をかけてきたのは紘汰だった。
「オレは戦うことを選んだ。オレと戦ってきた仲間もきっと・・だけど、そういうのは強要するものじゃない・・」
自分の考えをオーディンに向けて告げて、紘汰が無双セイバーを構える。
「この戦いを望まないのか・・ならば私が相手をする・・そしてお前から消えるがよい・・」
オーディンは紘汰に視線を向ける。神々しさを放つ2人のライダーが、互いと向かい合っていた。