オールライダーVSダークライダー
-Justice or
Dark-
第4章
他のライダーたちの行方と手がかりを追う進之介たち。その最中、進之介と霧子はチェイスのことを考えていた。
「泊さん、ここはやっぱり・・」
「あぁ・・オレも今それを考えてた・・」
霧子が声をかけて、進之介が言葉を返す。2人のやり取りを耳にして、剛と光太郎たちが足を止める。
「どうしたんだ、進之介くん、霧子さん?」
光太郎が進之介たちに声をかけてきた。
「はい・・もしかしたらアイツが、他のライダーたちと会っているかもしれないと思って・・」
進之介が考えていたことを打ち明けた。その言葉を聞いて、剛は目つきを鋭くする。
「この状況・・アイツも悪のライダーたちに狙われないとは言えない・・」
「ちょっと、進兄さん・・もしかして、チェイスのことを言ってるのか・・・!?」
言いかける進之介に剛が詰め寄ってきた。
「アイツは正義か悪かって言われたら、間違いなく悪だ!なぜならアイツはロイミュードだからだ!」
剛がチェイスに、ロイミュードに対する憎しみを口にする。彼の態度を見て、光輝と巧が思いつめる。
「やめて、剛!チェイスは・・!」
「姉ちゃんも目を覚ませよ!アイツはロイミュード!人間を襲う敵なんだよ!」
霧子も呼びかけるが、剛はチェイスへの敵視をやめない。すると巧がため息をついてきた。
「自分にとってロイミュードってヤツは全て敵・・そう思ってんだろ・・?」
「何だよ、いきなり・・それの何がおかしいんだよ!?」
巧が投げかけてきた言葉に、剛が声を荒げる。
「ロイミュードってヤツじゃないが、お前みたいに敵だと滅ぼすだの言ってるヤツがいた。敵だと思ってるヤツらの中に、人間の心を持ったヤツがいるのも構わずにな。」
「まさかロイミュードの中に、人間の心があるってのか?アイツらは人間の皮をかぶってるだけさ。心のない悪魔ばかりだ!」
巧の言葉をもはねつける剛。
「それが正義だとは、僕には思えない・・憎しみをぶつけて、怒りのままに正しいことをしても、救われることはない・・自分自身も、自分が守ろうとしたものも・・」
すると光輝が剛に言いかけてきた。
「偽物の正義を憎み、怒りのままに敵と見なした相手を倒していく・・それを続けても、その人の心が晴れることはなかった・・・」
「それじゃ、オレがロイミュードを倒すのは、意味がないっていうのか・・!?」
「そうじゃない・・人々を苦しめる怪人より前に、打ち勝たないといけない相手がいる・・憎しみに駆り立てられる自分自身だ・・」
反論してくる剛に光輝が自分の考えを口にする。
「自分と向き合い、自分の家族や仲間と向き合って、答えを見つけていく・・本当の大切なことが見えるようになる・・」
「悪を倒し、世界と人々だけでなく、その思いや夢も守る。それが正義なんだ・・」
光輝に続いて光太郎も語りかけてきた。彼らの言葉を受けて、剛が心を揺さぶられていた。
「剛・・・」
そんな剛を見て、進之介と霧子も戸惑いを感じてた。
そのとき、進之介の携帯電話が鳴り出した。かけてきたのはりんなだった。
“今、異常な振動をキャッチしたわ!埠頭のほうよ!”
「分かりました、りんなさん!」
りんなの報告にお礼を言う進之介。彼は埠頭のほうに振り返り、そこからかすかに煙が上がっているのを目にした。
「あっちだ・・まさか、戦いが・・・!?」
一抹の不安を覚えた進之介が埠頭を目指す。そこへトライドロン彼らの前に走り込んできた。
「進之介、急ぐぞ!チェイスが他のライダーたちに襲われている!」
ドライブドライバーが呼びかけて、進之介が霧子とともにトライドロンに乗り込む。
「先に行きます!オレたちの仲間のピンチなので!」
「おお、おい、進兄さん!姉ちゃん!」
呼びかける進之介を、剛が慌てて呼び止める。が、彼の制止を振り切って、トライドロンは走り出していった。
「オレたちもそれぞれのマシンで行こう!」
「はい!」
光太郎が声をかけて、光輝が答える。
「アクロバッター!」
「メガブレイバー!」
2人の呼び声を受けて、2台のバイク「アクロバッター」とメガブレイバーが駆けつけてきた。
トライドロンに乗って先に埠頭に向かっていた進之介と霧子。運転する進之介にドライブドライバーが呼びかけてきた。
「進之介、チェイスを攻撃してきたライダーたちは、他のライダーたちが迎撃してくれた。」
「そうか。助かった・・でも、オレたちも急いで合流しよう・・!」
ドライブドライバーの言葉を受けて、進之介が笑みをこぼす。しかし霧子が深刻な顔を浮かべていることに、進之介が気づく。
「どうした、霧子?・・チェイスなら大丈夫だ。アイツがそう簡単にやられたりしない。他の仮面ライダーが助けに来ているならなおのことだ。」
「はい・・チェイスのこともですが、剛も・・・」
声をかけてきた進之介に、霧子が自分の考えを打ち明ける。
「剛、チェイスも敵だと思っていて・・光太郎さんや光輝さんが止めても納得していなかったし・・」
「霧子・・・」
霧子が剛とチェイスへの思いを口にして、進之介が戸惑いを感じていく。チェイスは悪くないという霧子の思いを、進之介は理解していた。
「善か悪かは人間かそうでないかと違いだけで決まるものじゃない。自分の力と心を正しく使うかどうかなんじゃないかな・・」
「泊さん・・・」
「チェイスは確かにロイミュードだけど、霧子やみんなを守ろうとする心がある。他のライダーのみんなも、人間でなくても正義と心がしっかりとある・・」
チェイスや光太郎たちのことを考えて、進之介が彼らの正義を実感していく。霧子が彼の言葉を受けて、戸惑いを感じていく。
「大丈夫だ、霧子。まだ迷いを抱えているところもあるけど、チェイスもみんなのヒーロー、仮面ライダーだ。」
「・・そうですね・・せめて私たちが信じないと・・・」
進之介に励まされることになって、霧子は改めてチェイスを信じることにした。
「2人とも、おしゃべりはここまでだ。急ぐぞ。」
ドライブドライバーが声をかけて、進之介が頷く。トライドロンがスピードを上げて、埠頭を目指した。
襲撃してきたシドに対し、極アームズとなって様々な武器を駆使する紘汰。紘汰は火縄大橙DJ銃を連射して、シドを狙い撃ちする。
「コ、コイツ・・調子に乗りやがって!」
いきり立ったシドが、チェリーエナジーロックシードをソニックアローに移す。
“チェリーエナジー。”
シドがソニックアローを撃つと、サクランボ型のエネルギー弾が放たれる。紘汰がエネルギー弾に包まれて、圧力をかけられる。
「このまま押しつぶしてやるよ!」
シドが言い放って、エネルギーをさらに注ぎ込む。
そのとき、紘汰が火縄大橙DJ銃を大剣モードにして、エネルギー弾を切り裂いた。
「何だとっ!?」
自分の必殺技を破られたことに、シドが驚愕する。火縄大橙DJ銃を振りかざして、紘汰がシドに目を向ける。
「これが、他の人を傷付けてアンタが手に入れようとした力だ・・その力の重みに比べたら、アンタの攻撃は痛くもかゆくもない・・」
紘汰が低く告げて、火縄大橙DJ銃の切っ先をシドに向ける。
「オレもやる・・力を合わせよう・・・!」
そこへ一真が声をかけてきて、紘汰が頷いた。
“Spade ten,jack,queen,king,ace.Royal straight flush.”
“キワミスパーキング!”
2人がキングラウザーと火縄大橙DJ銃にエネルギーを集めて振りかざす。2つの強力な光の刃を受けて、シドが大きく吹き飛ばされる。
「ぐあぁっ!」
シドが絶叫を上げて大きく横転する。彼のまとうシグルドの鎧が損傷して、火花を散らしていく。
「ぐっ・・オレが・・こんなところで・・・!」
いら立ちをふくらませてうめくシドだが、ダメージが大きく立ち上がることもままならない。
「もう諦めろ。これだけの攻撃を受けて生きているだけでも、大したものだ・・」
朔也がシドに向けて忠告を送る。しかしシドは聞こうとしない。
「こんなところでやられてたまるか・・オレの力を、お前たちに思い知らせる・・・!」
対抗意識をむき出しにして、シドが力を振り絞って立ち上がる。
「しつこいヤツだ・・」
始がシドに対して呆れる。朔也と睦月が迎撃のため構える。
そのとき、一条の光がシドの体を貫いた。
「がはっ!」
後ろから攻撃されて、シドが絶叫する。突然のことに紘汰たちがたまらず身構える。
「ここまで往生際が悪いと見苦しいぞ。」
シドの後ろから声がかかる。そこには1人の男がいた。
「お前は・・・!?」
その男を目にして、紘汰たちが驚きを見せる。男は彼らの見知った人物だった。
「久しぶりだな、ブレイド。鎧武もずいぶんと変わったものだな。」
「お前もよみがえっていたのか・・ディケイド・・・!」
声をかけてきた男に一真が声を上げる。
「お前たちの知っている男か・・?」
チェイスが紘汰たちに問いかける。
「お前は最近現れたライダーか。いや、かつてのライダーでもあったというべきか、プロトドライブ・・今はチェイサーと呼ぶべきか。」
男がチェイスに目を向けてきた。
「お前、何者だ・・?」
「オレは門矢士。通りすがりの仮面ライダーだ。」
男、士が名乗ると、1枚のカードを取り出した。
「覚えておけ・・変身。」
“Kamen ride,Decade.”
士がカードをベルト「ディケイドライバー」にセットする。彼の体をマゼンタの装甲が包み込んだ。
士は仮面ライダー「ディケイド」へと変身した。
「ヤツも、仮面ライダーなのか・・・!」
「あぁ・・だがアイツには他にも通り名がある・・“世界の破壊者”だ・・」
チェイスが声を上げると、一真が言いかける。
「だがアイツは死んだはずだ・・またよみがえったとでもいうのか・・・!?」
紘汰が士に対して疑問を抱く。士は光輝に倒され、1度よみがえった後も再び倒されている。
「お前もオレのことを知っていたか。ヘルヘイムの支配者になったのは伊達じゃないってことか。」
「アンタをよみがえらせたのは誰だ?・・それとも、今回の黒幕もアンタなのか・・!?」
「あぁ。オレが自力で地獄から出てきた。たとえ命を落としても、オレにできないことはないからな。」
問いかける紘汰に士が強気に言いかける。
「どこまでも往生際悪く・・諦めが悪くしつこいぞ・・・!」
「諦めの悪さが仮面ライダーの強さだろう?オレも正義のためにやるまでだ。本当の正義に塗り替えるために・・」
不満を口にする紘汰を、士があざ笑ってくる。
「ぐっ・・お前・・オレの邪魔を・・・!」
致命傷を負ったシドが声と力を振り絞ってきた。
「もうお前の負けは決まった。悪あがきもここまで来ると見苦しいだけだ。」
士は吐き捨てると、武器「ライドブッカー」を「ガンモード」にしてシドを射撃する。
「ぐはっ!」
シドが射撃を受けて押される。士がディケイドライバーにカードをセットする。
“Final attack ride,Decade.”
士がディケイドライバーから放ったエネルギー弾の直撃で、シドが吹き飛ばされて消滅した。
「仲間を消した・・オレたちを倒そうとしていたライダーを・・・」
「オレはコイツを仲間と思ったことはない。コイツもそのつもりでいた。ただオレの邪魔をしたから消しただけだ。」
チェイスが声を上げるが、士はあざけるだけだった。
「地獄に落としても戻ってくるなら、完全に存在を消滅させるしかないってことなのか・・・!?」
「そうなるだろうな。だがそれはできないことだ。今度こそ、お前たちを倒すからな。」
紘汰が声を振り絞ると、士が強気に言い返す。
「全員が束になっていたら分からなかっただろうが、それももうその勝機もない。」
「確かに、他のライダーたちの何人かが襲われたと聞いている・・だがお前はまだライダーたちを甘く見ている。凶悪ではあるがライダーでありながら・・」
士の口にした言葉に一真が言い返す。
「チェイスのように、仮面ライダーは新しく現れる。そしてみんなは、数多くの正義と思いを背に受けて、強くなっている・・」
紘汰も続けて士に言葉を投げかけたときだった。
彼らの前にトライドロンが駆けつけてきた。ドアの開いたトライドロンから、ドライブに変身した進之介が出てきた。
「大丈夫か、チェイス・・・!?」
「お前・・・オレは何ともない・・他の仮面ライダーたちに助けられた・・・」
進之介が声をかけると、チェイスが落ち着いて答える。
「仮面ライダーの先輩のみなさん・・まだまだたくさんいるなんて・・・!」
紘汰たちを見渡して、進之介が驚きと感動を見せる。
「あれが車を駆る仮面ライダー、ドライブか。」
「体にタイヤを付けている・・・」
「奇抜な姿だが、それが彼の特徴であり、能力のポイントなのだろう・・」
始、睦月、朔也が進之介を見て呟く。
「気を付けろ・・そこにいるディケイドと呼ばれるヤツ、強いぞ・・」
チェイスが声をかけて、進之介と霧子が士に目を向ける。
「もしかして、あのライダーが・・・!」
「今回の事件の黒幕か・・・!」
霧子と進之介が緊張を覚えて呟く。
「仮面ライダードライブか。どれほどのものか、オレが確かめてやる。」
士が笑みをこぼして、進之介に向かっていく。
「とんだ邪魔が入ったが、この手で他のライダーたちを葬り去る・・」
シャドームーンが紘汰たちに目を向ける。
「オレを戦いの相手にする気か・・だったら、ひとっ走り付き合えよ!」
進之介が言い放つと、士に向かって飛びかかる。連続でパンチを繰り出す進之介だが、士は回避とさばきでかいくぐっていく。
「ドライブというだけあってスピードはそれなりにあるな。オレほどじゃないけどな。」
士は強気に言うと、左足を出して進之介を蹴り飛ばす。横転する彼の前で、士がカードを取り出す。
「オレが教えてやるよ。本当のハイスピードというものを・・」
“Kamen ride,Kabuto.”
士がカードをディケイドライバーにセットすると、彼が変身しているディケイドの姿が変わった。ディケイドライバー以外が、ワームと戦う仮面ライダー「カブト」へと姿が変わった。
士は歴代の仮面ライダーに変身する能力を持ち、そのライダーの技や能力を使うこともできる。
“Attack ride,Clock up.”
士のスピードが一気に上がって、進之介の視界から消えた。次の瞬間、彼が士から横からキックを受ける。
「何っ!?」
あまりに速い攻撃に進之介が驚く。彼が反応するよりも速く、士は動いていた。
「ドライブになっているのに、まるでどんよりに襲われているいたいだ・・!」
「逆だ。アイツのスピードがあまりに速すぎるのだ。向こうにはおそらく、我々が重加速を受けているかのように、スローに見えているのだろう・・」
声を上げる進之介にドライブドライバーが呼びかける。
「ワイルドのパワーでもテクニックの正確性でも、あれほどのスピードを捉えるのは極めて難しい。」
「だったらコレで対抗するしかない。これならあのスピードにも追いつける!」
ドライブドライバーに答えて、進之介がシフトカー「シフトフォーミュラ」を取り出して、シフトブレスにセットした。
“Drive!Type formula!”
彼のまとうドライブの装甲が、フォーミュラカーのような形に変わった。
ドライブの高速形態「タイプフォーミュラ」。タイプスピード以上の超高速を発揮できるが、体への負担も大きくなる。
「こっちもスピード、フルスロットルだ!」
進之介も一気に加速して、超スピードを出している士に対抗する。進之介のスピードは士に追いつき、互角のスピード戦を繰り広げた。
進之介と士が高速を止めて、互いを見合う。
「なかなかやるな。ドライブという名は伊達じゃないってことか。」
士が笑みをこぼすと、カブトからディケイドに戻る。
「だったら今度はパワーで押し切る。」
士は言いかけて、新たにカードを取り出してディケイドライバーにセットする。
“Kamen ride,Ryuki.”
士は次は、ミラーモンスターと契約する仮面ライダーの1人「龍騎」に変身した。
「また別のライダーに変わった・・・!?」
「他の仮面ライダーの姿と能力も使えるようだ。しかも元々の潜在能力もあって、本物に勝るとも劣らない戦いをしている。」
驚きの声を上げる進之介にドライブドライバーが言いかける。士がさらにカードをディケイドライバーにセットした。
“Attack ride,advent.”
すると赤い龍「ドラグレッダー」が呼び出されて、口から炎の球を放ってきた。
「龍!?」
進之介が驚きながら、炎の球を素早くかわしていく。
「ドラゴンが現実に現れるとは!?・・歴代の仮面ライダー・・我々の知識や常識を超えていて、奥が深い・・!」
ドライブドライバーもドラグレッダーに対して驚きを感じていた。
そこへ光太郎と光輝、そしてバイク「ライドマッハー」に乗った剛がやってきた。
「進兄さん!」
士に追い込まれている進之介を見て、剛が声を上げる。
「進之介くんを援護するんだ・・!」
「はいっ!」
光太郎の声に光輝が答える。
「チェイス・・・!」
そのとき、剛がチェイスを目にして怒りを覚える。だが士と戦う進之介のことも目の当たりにして、剛は迷いを抱く。
「今は進兄さんか・・・!」
“Signal bike!”
剛が迷いを振り切って、シグナルマッハをマッハドライバー炎にセットする。
「レッツ・・!」
「変身!」
剛が光太郎、光輝とともに変身する。
“Rider!Mach!”
彼らはマッハ、RX、オメガになって、それぞれのバイクを走らせてドラグレッダーに向かう。
3人の突撃によって、ドラグレッダーが進之介から引き離される。
「剛!みなさん!」
進之介が立ち上がって声を上げる。剛が彼と合流して、ライドマッハーから降りる。
「今度はオレがパワーを見せてやるよ!」
剛が士に目を向けると、ミニカー「シフトデッドヒート」を取り出して、マッハドライバー炎にセットした。
“Signal bike,shift car!Rider!Dead heat!”
彼がマッハの強化形態「シフトデッドヒート」になった。デッドヒートは熱エネルギーによる高い攻撃力が特徴だが、強い精神力がなければそのパワーを制御できず暴走する危険が伴う。
「お前が悪い仮面ライダーたちをよみがえらせた黒幕だな。オレが速攻で地獄に送り返してやる!」
剛は言い放つと、士に向かって飛びかかる。剛の速く重いパンチが、士に次々に命中していく。
「くっ!・・力強く攻め立ててくるな・・・」
毒づく士が1枚のカードをディケイドライバーにセットする。
“Final attack ride,Ryuki.”
士がジャンプして、ドラグレッダーの前に来る。ドラグレッダーが放つ炎の爆発を利用して、彼が剛に向かってキックを繰り出す。
「炎のキックなら、オレのほうが上だ!」
剛が強気に言うと、シグナルライディングパネルを上げてスイッチ「ブーストイグナイター」を押してパネルを下げる。
“ヒッサツ!Fullthrottle!Dead heat!”
彼が赤い炎をまとってジャンプして、宙返りをしてからキックを繰り出す。2人のキックがぶつかり合って、高熱と爆発を巻き起こす。
剛が着地して、士が押されて地面に落ちる。
「残念だったな。これ以上、お前の好きにはさせないよ。」
立ち上がった士に剛が強気に言いかける。
「なかなかやるな。だったらそろそろ本気を出すか。」
士も強気に言うと、携帯電話「ケータッチ」を取り出した。
“Kuga,Agito,Ryuki,Faiz,Blade,Hibiki,Kabuto,Den-o,Kiba.Final kamen ride,Decade.”
士がケータッチの画面の9つの仮面ライダーのアイコンをタッチすると、彼のまとうディケイドの姿が変化する。ディケイドの強化形態「コンプリートフォーム」である。
「また妙な姿になったものだな。けどこのまま押し切る!」
剛が言いかけると、士に向かって再び飛びかかる。しかしパワーアップを果たした士は、剛のパンチを軽々とかわしていく。
「デッドヒートの剛の攻撃が当たらない・・!?」
霧子が士を見て驚く。士が反撃に出て、剛がパンチとキックを受けて突き飛ばされる。
「新人ライダーに面白いのを見せてやる。」
士が言いかけて、ケータッチの響鬼のアイコンと「F」の字をタッチする。
“Hibiki,kamen ride,armed.”
ライドブッカーをソードモードにした士の隣に、装甲響鬼の幻影が現れる。響鬼の幻影は士と同じ動き、同じ構えを取る。
士がライドブッカーを振りかざして、剛を切りつけていく。マッハの装甲から火花を散らして、剛が横転する。
“Final attack ride,Hibiki.”
「鬼神覚声。」
士が響鬼の幻影とともにライドブッカーを振りかざす。ライドブッカーの刀身から音撃の刃が放たれた。
「まずい!」
“ヒッサーツ!Fullthrottle!formula!”
慎之介が飛び出して、音撃に向かって高速のキックを繰り出す。彼のキックが音撃の刃とぶつかって相殺する。
“Agito,kamen ride,shining.”
次の瞬間、士は構えを取ってエネルギーを集中させていた。彼の隣には仮面ライダー「アギト」・シャイニングフォームの幻影がいた。
「倒す順番が変わるか。ドライブを先に・・」
“Final attack ride,Agito.”
士が前進して飛び込み、進之介にキックを叩き込んだ。士は進之介の動きが止まった一瞬を狙った。
「ぐあぁっ!」
突き飛ばされて激しく転がっていく慎之介。彼が受けたダメージが大きく、ドライブへの変身が解けてしまう。
「泊さん!」
霧子が駆けつけて、進之介を支える。
「泊さん、しっかりしてください!・・ベルトさんまで・・・!」
呼びかける霧子が、進之介だけでなくドライブドライバーも意識を失っていることに気付く。
そこへファイズ、電王・ソードフォームに変身した巧と良太郎が駆けつけた。
「おいおい、こりゃやべぇことになってんな!」
良太郎に憑依しているモモタロスが進之介たちを見て声を上げる。
「ファイズと電王も出てきたか。何人出てきてもオレは止められないけどな。」
「アイツ・・どれだけ倒されても、自分が正しい、自分が1番だと思っているのか・・・!」
強気に言いかける士に、光輝が怒りを覚える。
「このままではドライブが危ない・・!」
「ここは1度引くしかない・・!」
一真と朔也が声をかけて、士の前から離れることを提案する。
「お前たち、少し時間を稼げ・・オレが攻撃したら、全員で撤退しろ・・」
そこへチェイスが呼びかけて、シグナルチェイサーをシンゴウアックスに移す。
“ヒッサツ!Fullthrottle!Chaser!”
彼は構えたシンゴウアックスのボタンを押す。
“マッテローヨ!”
シンゴウアックスから音声が出て、赤いランプが点灯する。その間、シンゴウアックスにエネルギーが集まっていく。
「あなたを信じます。行きましょう、みなさん・・!」
「あぁ・・!」
睦月が呼びかけて一真が答える。彼らがそれぞれの武器を構えて、士に立ち向かう。
「今度は一斉攻撃か。それでもオレは負けることはない。」
「いや、今度も、何度でもお前を倒す!」
強気に言いかける士に光輝が言い放つ。
「メガブレイバー!」
彼の呼び声でメガブレイバーが来た。座席には1本の剣「スピリットカリバー」があった。
「光輝、冷静を保つんだ。怒りに囚われてしまっては、ヤツの思うつぼだ。」
「メガブレイバー・・ありがとう。オレは大丈夫だ。怒りとかじゃなく、世界と地球、人々の平和と自由のためにアイツを倒す・・!」
注意を呼びかけるメガブレイバーに、光輝は冷静に答える。彼はスピリットカリバーを手にして、柄の先にオメガクリスタルをセットする。
すると光輝のまとうオメガの装甲に金のラインが入った。彼はオメガの強化形態「スピリットフォーム」になった。
「ディケイド、お前の勝手で世界をムチャクチャにされてたまるか!」
「オレは世界を正しくするだけだ。仮面ライダーの正義と歴史もな。」
言い放ってスピリットカリバーを構える光輝に対して、士は強気な態度を変えない。
「オレたちがいることを忘れるな・・!」
“Evolution.”
始が言いかけて、ハートのキングのカードをカリスラウザーに通す。彼はカリスの最強形態「ワイルドカリス」となった。
一真、始、睦月が同時にそれぞれの武器を士に向けて振りかざす。士はライドブッカーで一真たちの攻撃を打ち返していく。
“Absorb queen,fusion jack.
朔也が強化形態「ジャックフォーム」になって、ギャレンラウザーで士を射撃する。だが士は軽やかにかわしていく。
「スピリットスラッシャー!」
光輝が精神エネルギーを集めたスピリットカリバーを振りかざして、光の刃を放つ。
“Final attack ride,Decade.”
士もとっさにライドブッカーを振りかざして、眼前に現れた10枚の光のカードを刃に変えた。2つの刃はぶつかり合って、爆発と衝撃を巻き起こして相殺された。
「互角・・やはり精神力が強くなっているか・・」
士が光輝の発揮したパワーを痛感する。
“イッテイーヨ!”
そのとき、シンゴウアックスのエネルギーチャージが完了した。チェイスが士に向かってシンゴウアックスを振りかざした。
士がライドブッカーを振りかざしてシンゴウアックスを受け止める。チェイサーの一撃は止めたが、その場に大きな爆発が巻き起こった。
「くっ・・!」
爆発で押された士だが、すぐに踏みとどまる。その間に進之介たちは埠頭から姿を消していた。
「うまく逃げられたな。オレとしたことが・・」
士が辺りを見回して肩を落とす。
「オレはヤツらを追う。ライダーたちはこの手で地獄に葬り去る・・」
シャドームーンが士に言うと、進之介たちを追って立ち去っていった。
「好きにさせるさ。お前も、他のヤツらも・・オレも好きでやっているからな・・」
士もディケイドへの変身を解いてから歩き出す。彼は仮面ライダーという存在を、自分の思い描く形に塗り替えようとしていた。