舞HIME –another elements- 第22話「鴇羽巧海」
堅にとどめを刺そうとするなつき。それを止めようとする千草。
それを見かねた奈緒がジュリアを駆り、剣を堅に突きたてようとする。
「あっ!ペガサス!」
気付いた千草がペガサスに呼びかける。ペガサスがジュリアの進撃を突進で阻む。
その隙になつきが彼女を突き飛ばし、銃を構える。しかしその先に堅の姿がなかった。ジュリアの糸に縛られていたはずの彼は、そこから抜け出していた。
毒づいたなつきが、銃を持った手を下ろす。奈緒も呆れた態度を見せながら、爪とジュリアを消した。
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん!」
再び姿を消した堅に、千草は涙をこぼしながら叫んでいた。
なつきと奈緒の攻撃から逃れた堅。彼を助けたのは、凪の炎だった。
彼を拘束していた糸を焼き切り、この中等部の校舎裏まで導いたのだった。
「やれやれ。ずい分と弱気になっちゃったんだね。少し前のガンコなところが全然見れないね。」
無邪気な笑みを浮かべて、呼吸を荒げている堅を凪が見下ろす。その態度に堅が苛立って、凪をねめつける。
「いきなり現れて勝手なこと言うな。それに余計なこともな。オレの命だ。オレの自由だ。」
「でも、そうはいかないんだよね。君にはもう少し頑張ってもらわないとね。」
言い切る堅に、凪がからかうように答える。その言葉に堅が眼を紅くして、波動の刀を振り下ろす。それを凪は飛び上がってかわし、木の枝の上に着地する。
堅が不敵な笑みを浮かべている凪に、鋭い視線を向ける。しかし未だに呼吸は荒かった。
「相変わらず勝手を言ってくれるな!アンタたちにいいように振り回されるくらいなら、死んだほうがマシだ!」
語気を荒げる堅。凪は笑みを崩さず、睨みつけてくる堅を見下ろす。
「コワい、コワい。触らぬ神にたたり無しだね。」
凪が再びからかうように言うと、堅はさらに波動をぶつけてくる。それを凪は軽やかにかわして、その場から立ち去った。
堅も苛立ちを感じながら、満身創痍のまま歩き出した。
(結局・・何もかもオレの思い通りにならないのかよ・・・憎しみを叩き込んでも、死ぬことを望んでも・・・)
満たされない虚無感を覚えながら、堅は再びさまよい始めた。
「えっ!?なつきが、堅くんを!?」
千草の話を聞いた舞衣が驚きの声を上げる。奈緒と別れたなつきと千草は、裏庭に出たところで舞衣と会ったのだった。
「ちょっと、なつき!こんなのって!」
「アイツが言い出したことだ。それに、このままアイツの暴走を放置しておくわけにもいかないだろう。」
言い寄る舞衣に憮然とした態度を取るなつき。彼女の言葉に、舞衣は反論できず黙ってしまう。
しかし千草はたまらず、なつきに詰め寄った。
「でも、だからってお兄ちゃんを襲うなんて!もしもこれ以上お兄ちゃんを傷つけるっていうなら、舞衣さんでもなつきさんでも、私は許しませんから!」
悲痛を込めて言い放つ千草に、なつきはたまらず彼女の頬を叩いた。
「なつき!」
舞衣が止めに入るが、叩かれた頬に手を当てる千草になつきがさらに言い寄る。
「何を言っているのか分かっているのか!アイツはオーファンの記号を埋め込まれている!その本能を止めるには、もうアイツを倒すしかないんだ!」
必死の思いで訴えるなつき。しかしその言葉に憤慨した千草は、彼女の頬を叩き返す。
「お兄ちゃんは人間です!たとえ体がオーファンでも、心を持った人間です!だから、お兄ちゃんは絶対に死なせません!」
千草は眼から大粒の涙をこぼしながら叫ぶと、たまらず走り出した。
「千草ちゃん!」
舞衣が呼び止めるが、千草は聞かずに走り去ってしまう。少女の後ろ姿を見て、なつきも困惑を隠せなかった。
男子寮の自室にいた巧海と晶。巧海の話を聞いて、晶は息をひとつもらした。
「アイツは、どこをほっつき歩いてるんだか。」
「神崎さんや武田さんに聞いても分からないって言うし、バイトにも行ってないみたいだし。」
嘆息する晶と心配の様子を見せる巧海。
「仕方がない。オレが探しに行くとするか。」
「僕も行くよ。」
外に出ようとした晶に、巧海は真剣な面持ちで声をかける。しかし晶は彼に振り向きながら、
「お前はここで待ってろ。ただ事じゃない気がする。お前に何かあったら、お前の姉ちゃんに殺されちまう。それに、行き違いで戻ってくるかもしれないし。」
「だったら、ご飯を食べてからにして。」
笑みを見せて言う巧海に、晶が眉をひそめる。
「お腹が減ったら戦はできないよ。今作るから待ってて。」
「お、おい、巧海・・」
晶が呼び止めるのも聞かず、巧海がきびすを返してキッチンに向かう。
そのとき、この部屋のチャイムが鳴り響き、晶と巧海が玄関に振り返る。
「ったく。誰だ、こんなときに・・」
「僕が出るよ。」
呆れ果てる晶の代わりに、巧海が玄関に向かう。彼がドアノブに手をかける直前、再びチャイムが鳴る。
「はい、どちらさ・・ま・・・」
笑みを見せてドアを開ける巧海の表情が困惑に染まる。ドアを開けたその先には、堅の姿があった。
「か・・堅さん・・・?」
「何!?」
巧海がもらした言葉に、晶が声を荒げる。疲れきっていた堅は、巧海に寄りかかるように前のめりに倒れてきた。
「おわわ、あ、晶くん!」
「巧海!・・おい、しっかりしろ!」
慌てる巧海に駆け寄り、晶が堅に呼びかける。堅はもうろうとしながらも、2人の姿に気付く。
「たっくん・・晶・・・」
2人の姿を確認して、堅が小さく呟く。
「おいっ!・・巧海、誰か呼んで来い!それと救急車に!」
「わ、分かったよ!」
「ま、待ってくれ・・」
晶の指示を受けた巧海を呼び止める堅。
「大丈夫だ・・このくらい、大丈夫だから・・」
「でも、堅さん・・!」
必死に笑みを作る堅だが、巧海の心配は消えない。
「とにかく、ベットまで運ぶぞ。このままにはしておけないからな。」
晶の言葉に巧海が頷く。2人は堅の腕を肩にかけて、部屋のベットまで運んで横にした。
満月に照らされた学園内にある林。その中心にデルタはたたずんでいた。
「不知火堅を助けたそうだな、炎凪。」
デルタが突然振り返り、その方向に向けて言い放つ。その先の木の枝で、白髪の少年が無邪気な笑みを浮かべて彼を見下ろしていた。
「困るんだよねぇ。僕の段取りを無視して勝手に事を運んじゃ。」
言い放つ凪。デルタ不敵な笑みを消さずに彼に言葉を返す。
「その物言いは心外だな。HIMEが倒されることは、お前たちも不都合というわけではないだろう?賛同されても文句はないと思うが?」
デルタは黒い右手から黒い炎を灯す。
「これはオレが、オレのやり方でやっていることだ。風華だろうと一番地だろうと、邪魔はさせない。それにもうすぐ媛星が“蝕”に入る。遅かれ早かれ、HIMEを滅ぼすことに変わりはないだろう?」
不敵な笑みを見せるデルタと凪。黒と赤の炎を燃え上がらせて、2人は姿を消した。
明かりの灯っている部屋の天井。意識を取り戻した堅が見たのはその天井だった。
窓越しから外を見ると、朝日が昇ろうとしていて、かすかに明るさを見せ始めていた。視線を移すと、包帯が巻かれている自分の体と、ベットに寄りかかるようにしてうつ伏せで寝ていた巧海の姿が眼に留まった。
「そうか・・寮の自分の部屋に戻ろうとして、たっくんたちの部屋に来ちまってたんだな。」
頭に手を当てて、記憶を思い返す堅。彼は助かったのであるが、それは彼の望んでいたことではなかった。
「眼が、覚めたんですね。」
そこへ突然声をかけられ、堅は振り向いた。寝ていた巧海が眼を覚まし、笑みを見せていた。
「たっくんが、手当てしてくれたのか・・・?」
「はい。すごく疲れてて傷もあったので。でも今は誰も連絡はしてませんよ。」
「そうか・・・晶はどうしてるんだ?」
堅が部屋を見回しながら、冷めたスープを温めなおしている巧海にたずねる。
「晶くんなら外に出て様子を見てますよ。何かあったんじゃないかって。」
彼の言葉を聞いて、堅が納得して頷く。晶も彼も心配しているのだ。
「なぁ、たっくん・・」
「え?」
堅に声をかけられ、巧海が振り向く。
「ちょっと、一緒に来てもらってもいいか?」
真剣な堅の面持ちに、巧海は緊張を覚えた。
様子見を終えて部屋に戻ってきた晶。何らかの企みが蠢いていることには気付いていたが、それが何なのかまでは分からなかった。
(いったい何だというんだ。アイツの身に何かあって、千草を困らせているっていうのは確かなんだか・・)
思考を巡らせても、謎が謎を呼ぶばかりで、答えに行き着けなかった。
「おい、巧海、堅の具合はどうなん・・・」
ぶっきらぼうな態度を見せながら、ベットに向かう晶。しかしそこに堅と巧海の姿がないことに気付き、彼は足を止める。
周囲をうかがっても、2人の姿はない。
「あのバカ、揃いも揃って!」
毒づきながら、晶は外に出て行った堅と巧海を追いかけた。
堅は満身創痍の体を引きずって、巧海を連れて裏山に来ていた。堅のことが心配でならなかったものの、彼の真剣な眼差しを見て、巧海はかける言葉が見つからなかった。
しばらくの沈黙が続いた後、彼は携帯電話を取り出した。
「どこに電話するんですか?・・それよりも、早く戻らないと。晶くんやみんなが心配してますよ・・」
「千草も、か・・・」
思い切って声をかけた巧海に、堅が呟くように答える。
「アイツのアニキだから、アイツのいる場所に戻るべきだと・・・」
冷淡とも思える堅の言葉に、巧海は思いつめて返す言葉を見失う。その反応を見て、堅が物悲しい笑みを浮かべる。
「オレはアニキ失格だよ・・・アイツにたくさん迷惑をかけてきてるし、今もこうして心配をかけてる・・・オレがいないほうが、アイツのためなんだ・・」
「そんなことないよ!」
堅の言葉に声を荒げて反論する巧海。しかし我に返って動揺を浮かべる。
「すみません。でも、千草ちゃんはそうは思ってないと思いますよ。」
「えっ・・・?」
「たとえそばにいなくたって、何もしなくても、堅さんが千草ちゃんのお兄さんであることに変わりはないですよ。」
微笑んで答える巧海。千草が兄のことを心から想っていることを彼は気付いていた。
しかしその想いが自分を殺そうとしていると思い込み、堅はさらなる困惑を感じていた。その迷いを振り切ろうとしながら、彼は電話をかけた。
堅を探す千草を追いかける舞衣となつき。女子寮にひとまず戻ってきたところで、携帯電話のベルが鳴る。
2人は自分のものが鳴っていると思い、確かめる。しかし鳴っていたのは舞衣のもので、彼女は相手を確認する。
「堅くん・・・!?」
「何!?」
彼女のもらした言葉になつきが驚きの声を上げる。困惑を抱えながらも、舞衣はその電話に出た。
「もしもし・・・?」
“もしもし、舞衣ちゃんか・・・?”
確かに堅の声だった。彼の声を耳にして、舞衣の眼が見開かれる。
「堅くん、今どこにいるの!?千草ちゃん、とっても心配して・・!」
“黙って、聞いてくれ・・・”
声を荒げる舞衣に、堅が真剣に語りかける。
“たっくんはオレが預かった。返してほしかったら、裏山に来い。何人連れてきてもいい。むしろ多いほうがいいかもな。ただ、千草は連れてくるな。もし連れてきたら、たっくんの無事は保障しない。”
そう告げて、堅は電話を切った。舞衣が呼びかけるが、彼からの返事はなかった。
「今、お姉ちゃんに、ですか?」
携帯電話をしまう堅に、巧海が困惑の面持ちを浮かべてたずねてくる。
「あぁ。舞衣ちゃんと話がしたいんでな。それも、千草のいないところで。」
「千草ちゃん、きっと寂しがっていると思いますよ。」
答える堅に、巧海が悲しい顔をする。
「堅さんは千草ちゃんを心から想っているんですね。でもそれで気遣っているなら、少し違うと思います。」
「えっ・・・」
「もし本当に千草ちゃんを想ってるなら、もう1度会って話し合おうよ!千草ちゃんのためにも、そばにいてあげなくちゃ!」
悲痛の思いで言い放つ巧海。彼の心を込めた言葉に、堅は戸惑いを隠せなかった。
「でないと、お互いの気持ちは伝わらないよ・・・」
涙ながらに微笑む巧海。
姉のいる彼は、千草の気持ちと堅の気持ちが分かる気がしていた。だから、彼らがすれ違っているのを黙っていられなかったのである。
彼の励ましを胸に秘めて、堅は笑みをこぼす。そして彼の頭に優しく手を当てる。
「ありがとう、たっくん。舞衣ちゃんは、たっくんの最高の姉ちゃんさ。十分自慢できるぜ。」
「堅さん・・・」
気さくな笑みを作る堅に、巧海の戸惑いは消えない。
「晶、いるんだろ?出て来いよ。」
そして振り向いた先の木を見上げて声をかける。そこから忍び装束に身を包んだ晶が飛び降りてきた。
「晶くん!」
声を荒げる巧海。
「気付いていたか。伊達に武術を習得していないな。」
晶が呆れた態度を見せる。それを見ながら堅が立ち上がる。
「たっくんを頼む。できるだけ、ここから離れてくれ。」
晶に巧海を託す堅。遠くを見据える彼を見て、晶は小さく頷き、巧海の手を取る。
「堅さんはどうするの!?」
巧海が叫ぶが、堅は顔色を変えない。
「オレはここでやることがある。行ってくれ。」
「でも!」
「いいから行け!・・お前のお姉ちゃんと、面と向かって話がしたいんだよ・・・!」
うめくように言い放つ堅。戸惑いを見せて返す言葉を失くす巧海を、晶は無言で連れて行く。
(ホントにありがとう、たっくん・・・けど、オレは・・・)
去っていく巧海と晶を見送って、堅が苦悩する。そしてしばらく待っていると、連絡を受けた舞衣、なつき、命、碧が駆けつけてきた。
「来てくれたか。約束どおり、千草はいないみたいだな。」
舞衣たちを見据えて、堅が笑みをこぼす。すると舞衣が前に出る。
「巧海はどこなの!?巧海を返して!」
舞衣が叫ぶと、堅は巧海と晶が去った方向に振り向く。
「たっくんなら晶が連れてった。もう裏山から出たと思うけど。」
堅がそういうと、舞衣は安堵して胸をなでおろす。そんな彼女を見て、堅が真剣に語りかける。
「舞衣ちゃん、オレがアンタを呼んだ理由は分かってるよな?今度こそ、オレを殺してほしいってことだ。」
「それで、アンタは満足なの?それで千草ちゃんが満足すると思うの?」
そこへ碧が呼びかける。しかし堅の気持ちは変わらない。
「もしこのままオレを放っておけば、オレは憎しみに操られて、誰かを殺してしまう。その前に倒してほしいんだ、オレを。それが千草のためにもなるんだ。」
胸に手を当てて悲痛の表情を浮かべる堅。その手に力が入り、彼が顔を歪める。
「早くしろ!・・でないと・・・がはあっ!」
狂気に駆られ始める堅。その瞳が紅く染まり出す。
「それが、お前の答えか・・・そうするしかないのか・・・!」
なつきが歯がゆい思いを感じながら、エレメントの銃を出現させる。
「デュラン!」
デュランを呼び出し、臨戦態勢を取るなつき。それぞれのエレメントを手にして身構える命、碧。
彼女たちと殺気を放つ堅の板ばさみを感じながら、舞衣も腕輪を出現させた。
堅を追っていた千草は、風花邸に足を運んでいた。雪之とダイアナの力を借りられない今、彼女が頼ったのが真白だったのだ。
そこで千草は彼女から1枚の手紙を受け取った。おじさんからだった。
千草はその場で手紙の文に眼を通した。そして読み終わった途端、彼女の眼から涙があふれた。
「あなたと堅さんが実の兄妹でないことは分かっていました。でもその思いのつながりは兄妹とも思えるほど強かったのも事実です。」
真白が沈痛の面持ちで千草に語りかける。それを聞いて、千草は微笑んで頷く。
「私もそうじゃないかって思ってたんです。それでも構わない。些細な事だって言うのも。これで、私の想いが実る可能性が出てきましたね。嬉しいです。」
喜びを見せようと微笑む千草。しかしその表現とは裏腹に、眼からは大粒の涙があふれていた。
想いを遂げられる喜びと、実の兄妹でなかったことへの悲しみが葛藤していた。その様子を見て、真白も二三も動揺を隠せなかった。
千草はあふれてくる涙を拭って、歩を進めた。部屋の窓を開けると、そよ風が入り込んで、彼女たちの髪を揺らしていた。
「堅さんを助けに行くのですね?彼はオーファンの力にさいなまれて、鴇羽さんたちに倒されることを望んでいます。」
「お兄ちゃんは人間です。体はオーファンでも、人の心を持った人間です。今、お兄ちゃんを助けてあげられるのは、私だけ・・・」
決意と覚悟を胸に秘めた千草。振り向いて真白と二三に笑みを見せる。
「たとえ私がHIMEじゃなかったとしても、真白さんは私とお兄ちゃんを受け入れてくれましたか?」
彼女の言葉に、真白は微笑んで頷いた。ささやかながらあたたかいものを感じて、彼女も笑みを返し、裏山に視線を戻す。
「ペガサス!」
千草の呼びかけで、エレメントの短刀と天馬が姿を現す。彼女はペガサスの背に乗って、裏山に向かっていった。
(2人なら、この運命を乗り越えられる。私は、そう信じています・・・)
空を翔るペガサスを見送って、真白は千草と堅を信じた。
堅を追い求めて、千草とペガサスは急いでいた。天馬の速さなら、風花邸から裏山まですぐだった。
しかしその途中で、突然巻き上がった炎に阻まれる。
体勢を立て直した千草の眼下に、白髪の男、デルタが姿を現した。
「あなたは・・!」
緊迫を感じながら、千草はデルタの眼前に降下する。彼女を見て、デルタが不敵に笑う。
「お前の兄はHIMEに倒されようとしている。殺意に囚われている自分を呪い、戦意を失くしてその手に自らかかろうとしている。」
「お兄ちゃんが・・・!」
「鴇羽舞衣と不知火堅。2つの強大な力のうち、一方が消えることになる。だがお前が割り込めば、それは一転して徒党という最悪の形となってオレに降りかかることになる。」
不敵な笑みを浮かべて、デルタは左手に氷の刃を握り締め、その切っ先を千草に向ける。
「不知火千草、2人の和解のキーパーソンとなるお前を、オレが直接葬り去ってやる。」
堅を追う千草の前に、デルタが立ちふさがった。
次回
「私の話を聞いて、お兄ちゃん!」
「ペガサスが死ねば、オレも消えて死ぬんだ!」
「私は、2人が再び手を取り合えることを信じています。」
「死ぬっていうのは命が消えるってことじゃない。想い、心、魂が消えるってことだよ・・」