-乙HiME -Wings of Dreams-

final step「Dream☆Wing」

 

 

 解き放たれる炎。振り下ろされる光刃。

 センとケインが衝突し、激しい火花を撒き散らす。センが振りかざすクサナギの一閃を、ケインの炎の拳が弾き返す。

 迷いを振り切ったセンと、オトメをはじめとしたナノテクノロジーの壊滅を強く望むケイン。互いに一歩も引かない拮抗した攻防を繰り広げていた。

「なるほど。この前みたいに腑抜けてはいねぇようだな。」

「フン。あんなくだらねぇオレを引っ張り出してんじゃねぇよ。」

 不敵に笑うケインに憮然さを見せるセン。だがケインはすぐに鋭い眼つきに戻る。

「だがオトメの力を受け入れているテメェやこの世界は、意味のねぇ破壊を生み出すだけだ・・・!」

「そんなことねぇよ。」

 苛立つケインにセンが言い返す。センの脳裏に、チヒロやアリカ、たくさんの人々の姿がよみがえる。

「アイツらは夢に純粋なんだ。夢や憧れに真っ直ぐなだけで、傷つけ合うつもりなんかねぇんだ。」

「力の意味を知らずに、おめでたいだけにしかならねぇな。」

「いいや。アイツらは戦争のことを知ることになるだろう。アイツらと過ごしてみて、アイツらもオレと同じ、平和を願ってる連中だってことがよく分かった。」

 クサナギの握るセンの手に力が入る。

「オレもアイツらも、自分の中の夢に向かって突き進むだけだ!」

 クサナギを振りかざして、センがケインに飛びかかる。

「それが未来のねぇ夢でもか!」

 ケインが右の拳に炎をまとって迎撃する。再び2つの力が荒々しく衝突し、互いに弾かれる。

 だがケインは勢いを殺さず、さらに炎の拳を繰り出す。その一撃がセンの腹部に叩き込まれる。

「ごあっ!」

 炎の余波に当てられながら、センが吹き飛ばされ、大木の数本に衝突して叩き折る。血反吐を吐きながら、センは横転して倒れる。

 うめくセンに近づき、ケインが鋭く見下ろす。彼の右手の炎はまだ灯ったままである。

「この世界に未来はねぇ。そんなくだらねぇものに期待するくらいなら、いっそのこと、オレの手で滅ぼしてやる・・・!」

 ケインが炎の右手をセンに向ける。センは彼の前でゆっくりと立ち上がる。

「何勝手に決め付けてんだよ、テメェは・・・」

「決め付けじゃねぇよ。実際にオレが体感して、思い知らされた結果の考えだ。強すぎる力は全てを滅ぼす。その力にすがってるテメェらは、未来を閉ざしてるのと同じなんだよ。」

 センの言葉に対して、ケインが鋭く言い放つ。するとセンが不敵な笑みをこぼす。

「どこまでもくだらねぇ考えしてやがるな・・未来は先が分からねぇから面白いじゃねぇの。だからどいつもこいつも夢を持ち、その夢のために全力を出してるんだ・・・!」

 言葉を返すセンを、苛立ったケインが一蹴する。その拍子でセンの手からクサナギの柄が離れ、光刃が消失する。

「破滅の先には何もねぇ。夢も未来もな。」

「本気で言えんのかよ・・この先に何もねぇってよ・・・!?」

「言えるさ。クサナギの力に溺れてテメェに殺されかけた、あのときのオレのようにな!」

 激情に駆られるケインが、センに炎の右手を突き出す。だがその手が、突如出現した光刃に受け止められる。

「何・・!?」

 その瞬間に驚愕するケイン。センが手にしていたのは明らかに破邪の剣だった。

 

 ナノマシンの力で体質を変化させてくるカナデに、チヒロとチグサは悪戦苦闘を強いられていた。コーラルの力では、カナデの金属の戦術にまるで歯が立たない。

「これで分かったでしょう?コーラルの力では私には勝てない。今のうちにマイスターを呼んだほうがいいんじゃないかしら?シズルだったら大歓迎ね。今度こそ決着を付けてあげるわ。」

 妖しく微笑んで、傷だらけのチヒロとチグサを見据えるカナデ。だが2人とも諦めてはいなかった。

「これは私たちの戦い・・・お姉さまたちに迷惑をかけるわけにはいかないわ・・・!」

「こんなことでめげるわけにはいかないもんね・・・アンタなんかには、絶対負けないんだから!」

 チヒロとチグサがカナデに言い放つ。笑みをこぼして強がってはいるが、余裕がないことはカナデは見透かしていた。

「もういいわ。あなたたちがそのつもりなら、私が終わらせてあげるわ。天国で後悔するといいわ!」

 カナデが右手をかざすと、金属の刃となってチヒロとチグサに向かって伸びていく。満身創痍の2人は、回避がままならない状態だった。

「マテリアライズ!」

 そのとき、突如飛び込んできた蒼の一閃が、カナデの攻撃を阻んだ。呆然となるチヒロとチグサ、驚いて眼を見開くカナデが振り返った先には、マシロからの認証を受けて蒼天の青玉のマイスターローブをまとったアリカの姿があった。

「アリカちゃん・・」

「アリカちゃん・・!」

 チヒロとチグサがアリカの登場に思わず声を上げる。

「ゴメンね、チヒロちゃん、チグサちゃん・・私もオトメになるために、全力で戦うから!」

 2人に笑顔を見せてから、アリカはカナデを真剣に見据える。カナデは妖しい笑みをアリカにも向けていた。

「蒼天の青玉、マイスター、アリカ・ユメミヤ、あなたも私が葬ってあげるわ。」

 カナデが再び右手を金属の刃に変えて、アリカに向けて解き放つ。アリカは手にしていたブルースカイスピアで攻撃を弾くと、間髪置かずに間合いを詰める。

 エレメントを振りかざし、一閃を繰り出すアリカ。だがカナデは体を金属に変えて防ぐ。

「マイスターとしての資質は十分だわ。でも経験は明らかにあなたは私に劣っているわ。」

 言い放つカナデがアリカの頭をつかみ、身を翻して突き飛ばす。大きく転倒しながらも、アリカはすぐに体勢を立て直す。

「私に勝ちたいのなら見せなさい!経験の差を跳ね除ける、あなたの大きな力を!」

 カナデが立ち上がるアリカに向けて言い放つ。アリカは瞳を閉じて、手にしているブルースカイスピアに意識を集中する。

 力を注がれていくエレメントが徐々に大きくなる。同時に彼女のGEMがカウントを刻む。

 やがてカウントが終わり、アリカの攻撃準備が整う。カナデも右手を変質させて身構える。

「アリカ、行け!」

 駆けつけたマシロがアリカに呼びかける。エレメントの出力を駆使して、アリカがカナデに飛びかかる。

 金属の刃に形を変えた右手を突き出し、カナデも迎撃する。2つの力の激突が、火花を散らして周囲にまでほとばしる。

 蒼天の青玉の力がカナデの金属の力を脅かし、彼女の右手に亀裂を生じさせる。その影響の激痛に彼女は顔を歪める。

「こ、こんなところで・・こんなところで負けるわけにはいかないのよ!」

 カナデが激情をあらわにして、力任せにアリカの攻撃を押し切ろうとする。だがそれが逆にカナデの右腕の負傷を深めることになる。

 そしてついにアリカの一閃がカナデの右腕を破壊する。だが、カナデはまだ諦めてはいなかった。

 即座に左手を金属の刃に変えて、突進を終えたアリカに向けて伸ばす。

「そんな・・!?」

「アリカ!」

 振り返るアリカ。たまらず叫ぶマシロ。カナデの攻撃を回避しようとするアリカだが、刃は彼女の右腕に突き刺さる。

「うあっ!」

 腕を貫かれて、アリカが激痛を覚えてうめく。マシロもこの痛みの共有に顔を歪める。

 傷ついた右肩を左手で押さえたところを、カナデが刃を鞭のようにしならせて、アリカの持つブルースカイスピアを弾く。

「しまった!」

 アリカがたまらず、地面に突き刺さったエレメントに駆け寄ろうとするが、肩の痛みに歩みを阻まれる。

「ウフフフ。私の力を凌駕したのは誉めてあげるわ。でもね、その腕では私に抵抗することはできない。」

 不敵な笑みを浮かべるカナデが、傷ついたアリカに近づく。破壊された右腕が徐々に再生し、元の人間の腕に戻る。

「今の私はCEMによって全身を形成している。CEMを破壊しない限り、私は何度でも再生する。もっとも、破壊されたときや再生するときの痛みは消えないけどね。」

 勝機を見出しているカナデを前にして、アリカが歯がゆさをあらわにする。アリカに向けてカナデが金属の鞭を振るい、叩きつける。

「ぐっ!」

 カナデの容赦ない攻撃に、アリカとマシロが苦悶の表情を浮かべる。親友の危機に、チヒロとチグサはいてもたってもいられない心境に駆られていた。

「助けなきゃ・・アリカちゃんとマシロ様は、私たちの代わりに・・・!」

「ここで黙って見ているわけにはいかないよね・・・!」

 互いに眼を向け合って頷き合うチヒロとチグサ。2人は地面に突き刺さっているブルースカイスピアに眼を向ける。

(あれはマイスターのエレメント・・コーラルでしかない私には使えないかもしれない・・でも!)

(あれに賭けてみるしかない!・・・アリカちゃん、お兄ちゃん、みんな・・力を貸して・・・!)

 駆け出していく中、チヒロとチグサは胸中で呟く。2人は手を伸ばし、アリカのエレメントを手にする。

 2人の思いに呼応するかのように、ブルースカイスピアが輝きを宿す。その光にチヒロとチグサが眼を見開く。

「これって・・私を受け入れているってこと・・・!?」

「分かんない・・・だけど、もうやるしかないよ・・・!」

 はじめは動揺を覚えていたチヒロとチグサだが、エレメントの切っ先をカナデに向ける。カナデもその輝きに眼を見開いていた。

「これは・・・蒼天の青玉が、彼女たちを受け入れたとでもいうの・・・!?」

 驚愕をあらわにするカナデに向かって、チヒロとチグサは駆け出してブルースカイスピアを突き出した。輝きは一気に増して、光としてカナデの胸を、体内にあるCEMを貫いた。

 渾身の突進を繰り出したチヒロとチグサが立ち止まり振り替えると、彼女たちがまとっていたコーラルローブが消失し、元の制服に戻る。

「これが、私たちの全力・・私たちの夢・・・!」

「あなたに、私たちの夢を止めることはできない!」

 チグサとチヒロがカナデに言い放つ。満身創痍に陥っている2人がふらつく。

「ウフフフ。夢ね・・・私も持っていたのよね・・あなたたちと同じ、夢を・・・」

 カナデがチヒロとチグサに振り返り、妖しく微笑む。CEMを破壊された彼女の体は無機質の崩壊のように崩れ去っていた。

「CEMをインストールされた人間は、その人を動かす全てを機能している。CEMが破壊されれば、何らかの形で体が崩壊する。」

 崩れていくカナデを目の当たりにして、チヒロたちは困惑を隠せなくなる。

「覚えておきなさい。自分たちのすることには、必ず代償が生まれてくる・・たとえそれが、どんなに些細でつまらないことでもね・・・」

 笑みをこぼしたままカナデの表情が固まると、そのまま完全に崩れ去っていった。彼女の最期を、チヒロたちは戸惑いを覚えながら見つめていた。

 

 ケインが放った炎の拳を防いだのは、カタシから預かったミロクだった。破邪の光刃と炎の拳が衝突し、激しい火花がほとばしる。

「ミロクだと!?・・そんなものを、いつの間に・・・!?」

 思わぬ武具の介入に、ケインが驚愕を覚える。力の相殺と同時に、ケインはセンとの距離を取る。

(カタシ・・まさかテメェの力を借りることになるとはな・・・その借りは必ず返してやるからな・・・)

 手にしているミロクを眼にして、センは胸中で呟いた。そして地面に転がっているクサナギの柄に眼をやる。

「どこまでテメェは・・そんなものに頼ろうとするんだ・・・!?」

 ケインがセンに向けて憤りの言葉をかける。

「破邪の剣は、ナノマシンは世界を狂わせる代物だ・・それにいつまでも固執して、使い続けて・・・テメェは世界がどうなってもいいのかよ!?」

「・・・世界がこれからどうなろうと、オレには関係ねぇ。だが今のオレには、アイツらが持ってるような夢がある・・・」

 センはクサナギのあるほうへと歩き出し、ケインに答える。

「みんなが幸せでいてくれる・・それがオレの夢だ・・・」

 そしてクサナギの柄を手にして意識を傾ける。彼の手にした2本の破邪の剣に光刃が灯る。

「破邪の剣はもともと1本で、そのもともとの形になって初めて破邪の剣になるらしい・・」

(カタシから聞いたことだがな・・・)

 ケインに語りかけながらもカタシのことを思い返すセン。そしてクサナギとミロク、2本の柄の先端を突き合わせると、2本の剣は1本の双刃の剣となった。

「それがどうした・・そいつが世界を狂わせるものだということに変わりはねぇ・・・!」

 ケインがうめくように言い放つが、センは顔色を変えない。

「こいつはオレの、オレの周りにいる連中の夢を切り開くためのもんだ。そしてこいつの力は2倍だなんて単純なもんじゃねぇよ・・・」

 センは落ち着いた口調で告げると、破邪の剣を構えてケインを見据える。ケインも右手に炎を灯して攻撃を繰り出そうとしていた。

「燃え尽きて塵となるがいい、セン!」

「ストリウム・ランスエッジ!」

 持てる力の全てを込めて、ケインとセンが飛び出す。最大出力の炎の拳と光刃が激突し、膨大な衝動をもたらす。

 やがてセンとケインがすれ違い、2人は踏みとどまって互いに振り返る。

 2人は全ての力を注ぎ込み、使い果たしていた。破邪の剣の光刃の消失がそれを証明していた。

「そうか・・これがテメェの力・・テメェの夢か・・・」

 ケインがセンに向けて不敵に笑う。ケインの心境を察して、センは笑みを見せることができなかった。

「夢というほど大それたもんでもねぇけどな・・」

「言うじゃねぇか・・だが、オレはここまでだ・・・」

 ケインが口にしたその言葉に、センが眼を見開く。

「勘違いするなよ。オレのCEMと体は限界にきちまってる・・テメェが息の根を止めなくても、オレはいずれくたばる・・・」

 言い放つケインの体が炎に包まれる。それは彼のCEMと肉体の崩壊を意味していた。

「テメェは夢を追え・・テメェだけの夢を・・・」

「ケイン!」

 燃え盛るケインにセンが手を伸ばす。

「あばよ、セルゲイ、カタシ・・セン・フォース・ハワード・・・」

 不敵に笑うケインが炎の中に消える。その最期を、センは迷いのない眼で見つめていた。

「ケイン、テメェの命も罪も、オレが背負ってやる・・そしてオレは進む・・オレの夢を・・・」

 センはケインに対して決意を告げると、振り返りこの場を立ち去った。彼の眼にはかすかな涙が流れ落ちていた。

 

 チヒロ、チグサ、センによってルシファーは壊滅の末路をたどった。だが周囲の人間の心境は複雑で、喜びを浮かべる人はいなかった。

 ケイン、ルナの死は、少なからず彼らに悲しみを与えていた。親友や先輩との思い出を胸に、それでも自分の道を歩いていくしかない。

 その決意を胸に秘めて、それぞれの未来へ向かっていくのだ。

 そしてセンも自分の道を歩むべく、ヴィントブルームから旅立とうとしていた。

 誰も断らずに1人出て行こうとしていたが、彼の心境を察していたのか、チヒロ、チグサ、アリカ、ニナ、カタシ、マシロが見送りに出てきていた。

「オレはこういうのはイヤなんだよ。だから黙って出て行こうとしたのによ。」

「何だよ、水臭いこと言うなよ、セン。お前だってホントはうれしいくせにさ。」

 憮然とするセンにカタシが気さくな笑みを見せて答える。

「ケッ!うるせぇよ。」

 するとセンが舌打ちを見せるが、それが照れ隠しということはカタシには分かっていた。

「センさん、お元気で。お養父様にも伝えておきます。」

 二ナが微笑んでセンに言いかけてくる。セルゲイはアルタイの大使館としての職務のため、センの見送りに来れなかった。

「余計なことすんな。いつかまた会うことになるだろうな。アイツはあのガキに従ってんだからな。」

 センがまたしても憮然な態度で答える。

「わ、わらわは別にお前が出て行こうと構わんのじゃ・・別に寂しくも、悲しくもないぞ・・・」

 そこへマシロが突き放すような態度を見せるが、強がりなのは明らかだった。

「だったらオレがいなくても平気なくらい立派になれよ。テメェはオレと違って、この上ないくらいの立場の人間なんだからよ。」

「わ、分かっておるわ!・・お前などに言われなくとも・・わらわは、わらわは・・・!」

 センの言葉に強がりを見せるも、マシロの眼からは涙があふれてきていた。するとセンは、いつの間にか頭の上に乗りかかっていたミコトをつかみ、マシロに突きつける。

「まずはコイツの面倒をしっかり見ることだな。」

「うるさいぞ、セン!」

 ミコトを受け止めながら、マシロが憤慨を見せ付ける。するとセンは彼女に不敵な笑みを見せた。

「セン、今までありがとう。私、絶対オトメになるから!そして、センやみんなが辛くならない、戦争のない平和を保ってみせるから!」

 アリカがセンに向けて自身の夢と決意を告げる。するとセンは笑みをこぼしてアリカに頭に手を乗せる。

「テメェはテメェの夢を追いかけろ。こんな真っ直ぐな気持ちなら、何とかなりそうだな。」

「そうだね。私、頑張るから!」

 センの言葉にアリカが頷く。そしてセンは所持していた破邪の剣のうちの1本、ミロクの柄をカタシに渡す。

「そいつはもともとテメェのもんだ。預かってたもんだから返しとくぜ。」

「あ、あぁ・・ホントはお前にこのまま持っててほしかったとも思ってたんだけどな・・・」

 照れ笑いを見せるカタシにも笑みを見せ、センはクサナギの柄を取り出す。2人はそれぞれ光刃を出現させて交わらせ、互いの決意を見せる。

「カタシ、テメェはどうすんだ?」

「さぁな・・とりあえずガルデローべに頼み込んで雇ってみるかな。それがダメでも、気長にやっていくさ。」

 語り合うセンとカタシが剣を収める。そしてセンがチヒロに眼を向ける。

「チヒロ、テメェもテメェの夢を追いかけろ。オレなんかがいなくても、テメェは今まで立派にやってこれたんだからな。」

「お兄さん・・・私も、立派なオトメになって、みんなのために努力します!」

 センに励まされたチヒロも自分の決意を告げる。

「そうか・・・先のことは分からねぇ。けど、オレはオレの夢を追いかける。」

 センはそういうと振り返り、そのまま歩き出していく。アリカたちの声に手を振らず、振り返りもせずに。

(戦争が起きねぇ世界だけじゃなく・・みんなが、幸せでいてくれる・・・それが、オレの夢だ・・・)

 胸中で自分の夢を呟きかけるセン。だがその夢のことを、アリカ、マシロ、カタシ、そしてチヒロは分かっていた。

(ありがとう、お兄さん・・私はお兄さんの夢が叶うことを、心から信じています・・・)

 センを見送るチヒロも、胸中で自分の夢を囁きかける。

(そして、お兄さんやみんなのために、私はオトメになります・・・)

 

 

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