仮面ライダーオメガ 第20話
ガルヴォルスである徹に攻撃しようとする一矢と、徹を守ろうとする光輝。光輝は一矢の前に立ちはだかろうとしていた。
「まさかこんな形で、君との決着を着けられるとはな・・」
「オレはあなたと戦っている場合じゃないんだけど・・・」
笑みをこぼす一矢と、焦りを募らせる光輝。
「来るなら早く来い。でなければオレから行くぞ。」
「やめてくれ、一矢さん!あの人は・・・!」
淡々と言いかける一矢を、光輝が呼び止める。しかし一矢は聞き入れずに、光輝に攻撃を仕掛ける。
猛襲する一矢に対し、光輝は反撃することをためらっていた。
その間に徹は、恐怖をあらわにしながら逃げ出していった。
「逃げられると思って・・」
それに気付く一矢だが、光輝に行く手を阻まれて追うことができなくなる。
「まずは君を倒さないといけないようだ・・」
「待ってくれ、一矢さん・・オレたちは、こんなことをしている場合じゃない!」
光輝を倒すことに専念する一矢。光輝は危機感を覚えて、必死に打開の策を模索していた。
再び光輝に助けられて、徹はさらに逃げていく。だが、くるみからの連絡を受けて駆けつけた太一と弥生と遭遇する。
「あれが、まさか・・・!?」
「もしかして、くるみさんが言っていたガルヴォルス・・・!?」
弥生と太一が緊迫を覚える。2人は倒すべき敵を完全に誤解していた。
「もうやめてくれ・・僕を殺さないでくれ!」
徹が恐怖のあまりに太一たちに飛びかかる。太一がとっさに水晶を手にする。
「変身!」
その水晶をベルトにセットして、太一がクリスに変身する。彼は即座にパンチを繰り出し、徹を迎撃する。
「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・!」
太一が言いかけて、徹に攻撃を仕掛ける。徹が慌てて逃げ出し、激しく横転する。
その怯えた姿に、太一も弥生も疑問を感じた。
「このガルヴォルス・・何かおかしい・・・」
「そうだね・・すごく怯えている・・・」
逃げ出していく徹の後ろ姿を見つめる太一と弥生。戦意を揺さぶられた太一が、光輝と一矢のいるほうに振り向く。
「光輝くんたちと合流しよう・・詳しく話を聞かないと・・」
太一の呼びかけに弥生が頷く。2人はひとまず光輝たちのところに向かう。
ところが、一矢が光輝を攻め立てている戦況を、2人は目撃する。
「光輝くん!」
たまらず飛び出す太一が、一矢に飛びかかり光輝を庇う。
「何をしているんですか!?敵はガルヴォルスではないんですか!?」
「太一くん!?」
一矢に呼びかける太一の登場に、光輝が驚きを覚える。直後、太一が一矢に殴打されて突き飛ばされる。
「君まで何を考えているのかな?吉川光輝はガルヴォルスを庇っているのだぞ・・」
「ガルヴォルスを庇ってる!?・・・さっきのガルヴォルスのこと・・・!?」
呆れ気味に言いかける一矢に、困惑を覚える太一が光輝に振り返る。
「違うんだ!あの人は悪いガルヴォルスじゃない!他のガルヴォルスに追われていて、それで逃げてきたんだ!」
「光輝さんの言うとおりです・・・!」
光輝が呼びかけたところで、ヒカルがくるみとともに駆けつけてきた。
「あの人は、徹さんは追われているだけなんです・・何も悪いことはしていません・・・!」
「ガルヴォルスにいいも悪いもない・・オレは単に、降りかかる火の粉を払っているに過ぎない・・」
語りかけるヒカルだが、一矢は悠然と言いかける。だが彼はギガスへの変身を解除する。
「だが拍子抜けだ。戦いと勝利は次の機会に預けるとしよう・・」
一矢は言いかけると、きびすを返して光輝たちの前から去っていった。
「一矢さん・・・」
変身を解除した光輝と太一も、困惑の色を隠せなくなっていた。
「もう・・一矢さんったら、事態をややこしくして・・・」
一矢の態度に呆れて、くるみがため息をつく。
「話を聞かせてもらえないかな、光輝くん?・・状況が分かんないと、どうしたらいいのか・・」
「うん・・でも徹さんを探さないと・・探しながら話すよ・・」
太一が訊ねると光輝が頷きかける。徹の捜索を開始しながら、光輝、ヒカル、くるみは太一と弥生に状況を説明するのだった。
ギガス、クリスとも対面して、徹はひたすら逃げ続けていた。疲れ果てた彼は、いつしか人間の姿に戻っていた。
「僕は他の人たちからも狙われているのか・・僕はどうしたらいいんだ・・・!?」
絶望感に駆り立てられて、徹は頭を抱える。
「もう頼れるのは光輝さんたちしかいない・・戻らないと・・・」
光輝への信頼を心に宿して、徹が移動を始める。その彼の前に、竜也が姿を現した。
「お前、ガルヴォルスのようだな・・・?」
竜也がかけた言葉に、徹が恐怖を覚える。
「それじゃ、君も・・・もしかして、君も僕を倒しに来たのか・・・!?」
「ん?何を言っている?・・オレが倒すのは、思い上がった愚か者だ・・」
警戒心を強める徹に、竜也が冷淡な態度で言いかける。
「やめてください・・僕は誰も殺したくないし、殺されたくない・・・!」
「どうした?何かあったのか・・?」
悲鳴を上げて体を震わせる徹に、竜也が疑念を浮かべる。そこで徹は勇気を振り絞り、事のいきさつを打ち明けた。
「他のガルヴォルスに追われている、か・・ヤツもヤツだが、お前も臆病なことだな・・」
「すみません・・でも、嫌なものは嫌ですから・・・」
肩を落とす竜也に、徹が物悲しい笑みを浮かべる。
「オレはこの世界にいる思い上がったヤツらを叩き潰すために動いている・・その標的に、人間もガルヴォルスも関係ない・・」
「叩き潰す・・僕に、それに踏み切れるだけの思い切りがあれば・・・」
「そいつ自身の意思次第だ・・挑む心がなければ、許せない敵にも従わなければならなくなる・・オレには、そんな地獄は真っ平だ・・・!」
自分の考えを口にする竜也に、徹が動揺を浮かべる。徹は自分の在り方を考えさせられていた。
「この世界は朽ち果ててしまった・・誰もオレに救いの手を差し伸べてくれるものはない・・・これはオレの、たった1人の戦いなんだ・・・」
「そんなこと、言わないでください・・世界の誰もが、君が憎むべき敵であるとは限らないじゃないですか・・」
「もはやそれに期待を寄せられるほど、この世界は穏やかではなくなってしまった・・・もうオレが何とかするしか方法はない・・・」
徹が言いかけるが、竜也の考えは変わらない。竜也の強固な意志は、簡単に変わるようなものではない。
「オレの邪魔をしなければ、オレはお前に危害を加えることはない・・ただ、これからどうするのか聞いておきたい・・」
「どうしたいのか、今ははっきりしていない・・まずは生き延びないと、どうにもならない・・・」
「ならばもうもう迷うな・・自分の命は自分で守り抜け・・たとえオレが敵として立ちはだかることになっても・・」
竜也の言葉を受けて、徹の心は揺れる。自分が生き延びるためにはどうしたらいいのか、彼は改めて考えさせられていた。
そのとき、1人の男が竜也にぶつかってきた。すると男がぶつかった右腕を押さえて痛がる。
「イテテテ!腕が!腕が折れちまった!」
その男の声を聞いて、仲間たちが駆けつけてきた。
「どうしたんすか、アニキ!?」
「イデデ!腕が折れちまった!」
仲間たちが訊ねると男がうめく。それを聞いて、仲間たちが竜也を睨みつける。
「コイツ、よくもアニキを!」
「この落とし前、どうしてくれんだ、ああっ!?」
仲間たちが竜也に怒鳴って脅しつけてくる。しかし竜也は冷徹な面持ちを見せるばかりだった。
「そうやって弱みを作って屈服させるつもりなのだろうが、オレには通用しない。」
「何だとっ!?」
低く告げる竜也に、男たちが声を荒げる。すると竜也が男の首をつかみ、持ち上げる。
「ぐ・・ぐあっ!」
「今のうちに消え失せろ。ならば骨折程度で済むぞ・・命がいらないのなら好きにしろ・・・!」
苦痛を見せる男に鋭く言いかける竜也。彼はつかんでいた男を突き飛ばし、冷たく見下ろす。
「コイツ、いい気になりやがって!」
「構わねぇ!やっちまえ!」
いきり立った男たちが竜也に飛びかかる。すると竜也が眼を見開き、ドラゴンガルヴォルスに変身する。
「な、何っ!?」
「バ、バケモノ!?」
ガルヴォルスとなった竜也の姿を目の当たりにして、男たちが恐怖を覚える。たまらず男たちが逃げ出そうとするが、憎悪をたぎらせる竜也が剣を出現させて飛びかかり、素早く切りつける。
事切れた男たちが昏倒し、砂のように崩壊する。怒りと憎しみに駆り立てられた竜也に、復習のために命を奪うことのためらいはなかった。
人間の姿に戻った竜也が、困惑している徹に振り返る。
「これが敵と、敵を滅ぼすということだ・・・」
「敵を、滅ぼす・・・」
低く告げる竜也の言葉に、徹が息を呑む。
「迷ったり怖がったりすれば、そのために絶望することになる・・それがイヤなら戦うしかない・・・オレは戦う・・それを阻むことは、誰にもできない・・・」
竜也は振り絞るように言いかけると、ゆっくりと歩き出していった。
「戦うしかない・・僕も、戦えるだろうか・・・」
徹の心の中に、戦う意思が芽生えつつあった。
「徹さん!」
そこへ徹を探していた光輝たちが駆けつけてきた。その呼び声を聞いて、徹が振り返る。
「よかった・・ずい分と探したんですよ・・・」
「・・・ゴメン・・怖くなってしまって・・・でももう大丈夫・・大丈夫だから・・・」
安堵の笑みを浮かべる光輝に、徹が微笑みかける。
「徹さん、今は離れ離れになるのは危険だ・・辛いかもしれませんが、一緒にいたほうがいいと思うんです・・・」
光輝の呼びかけに徹が頷く。彼は光輝たちに連れられて、水神家に戻ろうとした。
そのとき、光輝たちの周りを男たちが取り囲む。彼らは先ほど竜也が葬った男たちの仲間で、連絡を受けてここまで駆けつけたのである。
「おめぇらか、オレらのダチをやってくれたのは・・?」
「ちょっとあなたたち、何なんですか!?」
鋭く問いかけてくる男に、くるみが不満げに言い返す。
「すっとぼけやがって!上等だ!」
「ちょっとやっちまえば素直になることだろうぜ!」
怒号を上げる男たちが、光輝たちに襲い掛かる。素の力があまり強くない光輝は、男たちに抵抗できずに殴り飛ばされる。
「光輝!」
「光輝さん!」
くるみとヒカルが悲鳴を上げるが、男たちに囲まれて光輝に近づけない。
「やめろ!くるみちゃんとヒカルちゃんに手を出すな!」
光輝が2人を助けようとするが、男たちに押さえ込まれる。
「いい加減に素直になれっての!」
男たちの暴力は徹にも及ぶ。迫り来る男たちに、徹が恐怖をあらわにする。
「やめてくれ!僕に暴力を振るわないでくれ!」
徹が叫ぶが、男たちが聞き入れるはずもなかった。
“迷ったり怖がったりすれば、そのために絶望することになる・・それがイヤなら戦うしかない・・・”
そのとき、徹の脳裏に竜也の言葉がよぎる。その言葉が、彼の戦意を駆り立てた。
(そうだ・・もう戦うしかない・・戦わないと生き延びれない・・・!)
奮い立った徹が、男の1人が振りかざした拳を受け止める。
「何っ!?」
声を荒げる男たち。彼らの見つめる前で、徹の頬に異様な紋様が浮かび上がる。
「僕がやられるくらいなら・・僕がお前たちをやってやる!」
「いけない!ダメだ、徹さん!」
鋭く言いかける徹と、たまらず呼び止める光輝。だが徹はホエールガルヴォルスに変貌してしまう。
「うわっ!バケモノ!」
「や、やばい!逃げろ!」
慌てて逃げ出す男たち。本能的に戦おうとするあまりに混乱していた徹が、男たちを追いかける。
「徹さん!」
「くっ!・・変身!」
声を上げるヒカルと、たまらずオメガに変身する光輝。男たちに攻撃を仕掛けようとした徹を、光輝が体を張って止める。
「ダメだ、徹さん!そんなこと、人間のすることじゃない!」
「放してくれ、光輝くん!もう僕には、こうするしか道はないんだ!」
呼びかける光輝だが、徹は男たちへの敵意を振り払おうとしない。体を押さえつけてくる光輝を振り払い、徹が男たちを狙う。
「やめろ!」
光輝がとっさに、徹に向けて飛び蹴りを繰り出した。彼の一蹴は徹の頭に当たり、横転させた。
「しまった!・・徹さん!」
気まずさを感じながら、光輝が徹に駆け寄る。だが光輝が差し伸べた手を、徹は跳ね除ける。
「徹さん・・・!?」
「君も・・君も僕を殺すつもりなんだね・・・!?」
困惑する光輝に、徹が低い声音で言いかける。
「ゴメン、徹さん・・これはあくまで、徹さんを止めようと思って・・・」
「僕を陥れるつもりだったのか!?ガルヴォルスである僕を倒そうと企んで・・!」
弁解する光輝だが、それを聞き入れない徹が飛びかかってきた。光輝は徹の突進を受け止め、さらに呼びかける。
「やめるんだ、徹さん!人間の心を取り戻してくれ!」
「お願いです、徹さん!落ち着いてください!光輝さんは敵じゃありません!」
光輝に続いてヒカルも呼びかける。それでも徹は止まることなく、ついに光輝を突き飛ばした。
「これだけ言ってもダメなのか、徹さん・・・!?」
徹に聞き入れてもらえないことに、光輝は歯がゆさを覚える。
「こうなったら、徹さんと戦うしかない・・・!」
「ちょっと待ってよ!相手は徹さんなのよ!」
意を決する光輝に、くるみが声を上げる。
「大丈夫・・気絶させるだけだから・・・まずは徹さんの暴走を止めないと・・・!」
光輝は言いかけてから、徹に向かって飛びかかる。徹が振りかざしてくる腕を払いのけて、光輝は徹への攻撃に踏み切った。
異質の気配を感じ取って、竜也は移動をしていた。そんな彼が目にしたのは、ガルヴォルスとなった徹への攻撃を図るオメガの姿だった。
「アイツ・・また・・・!」
オメガに対して強い憎悪をたぎらせる竜也。飛び出した彼がドラゴンガルヴォルスに変身する。
徹を気絶させようと、決死の攻撃を仕掛ける光輝。そこへ竜也が飛びかかり、光輝を突き飛ばす。
「このガルヴォルス・・また!」
ドラゴンガルヴォルスの乱入に光輝が毒づく。竜也が剣を具現化させて、光輝を鋭く見据える。
「お前も朽ち果てた世界の象徴・・オレの手で叩き潰してやる・・・!」
いきり立った竜也が剣を振りかざす。その剣を受けて、光輝のまとうオメガの装甲から火花が散る。
攻防を繰り広げる2人を見て、徹がとっさにこの場から離れていく。
「いけない!徹さんが!」
「追いかけましょう、くるみさん!」
くるみとヒカルが徹を追いかけていく。光輝は踏みとどまり、竜也を迎え撃つ。
「正義と平和を脅かすガルヴォルス・・お前の勝手にはさせないぞ!」
「どこまでも勝手なことを・・お前の口にする正義など、オレがこの手で叩き壊してやる!」
お互いに敵意を向け合う光輝と竜也。2人は互いの正体を知らぬまま、自分の意思を相手にぶつけようとしていた。