仮面ライダークロス

-Endless Riders history-

第9章

 

 

 或人がギャグを言った瞬間、この場が静寂に包まれた。

「おい・・・悪ふざけに来たのなら帰れ・・・」

 声を振り絞ったゲイツに言われて、或人がショックを受けて大きく肩を落とした。

 そのとき、シュウが握った右手を振り上げて、ライたちに向かって振り下ろした。

「うあっ!」

 シュウのパンチの起こした突風に押されて、ライとソウゴが地面に叩きつけられる。或人も吹き飛ばされて、クロスカリバーの落ちているほうに転がった。

「オレだけ帰るわけにはいかない・・オレも、仮面ライダーになったんだから・・!」

 立ち上がった或人がベルト「飛電ゼロワンドライバー」を装着して、キーアイテム「プログライズキー」の1つ「ライジングホッパープログライズキー」を、右側の認証装置「オーソライザー」で解除してロックを解除する。すると彼の前に機械的な巨大なバッタが現れた。

「変身!」

 或人がライジングホッパープログライズキーを飛電ゼロワンドライバーにセットした。

“飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a riderkick.”

 周りを飛び回っていたバッタがバラバラになって、スーツと仮面になって或人を包み込んだ。

「オレの名はゼロワン!仮面ライダーゼロワンだ!」

 或人が再び名乗りを上げた。彼は仮面ライダー、ゼロワン・ライジングホッパーに変身した。

「ゼロワン・・新しい仮面ライダーか・・!」

「ということは、僕たちの後輩になるってことだね♪」

 ライが或人を見て呟いて、かなたが感動を見せる。

「その力は今、みんなを困らせている!オレがみんなの笑顔を守ってみせる!」

 或人が思いと決意を言い放って、シュウに向かっていく。

「そのライダーは力を暴走させているだけだ!倒しちゃダメだ!」

「分かっている!止めることができるなら、そうしたほうがいいに決まっている!」

 ソウゴの呼びかけに、或人が答える。彼もシュウを救いたいという意志を持っていた。

 シュウが或人を狙って腕を振りかざす。或人は素早く軽やかな動きとジャンプで、シュウの打撃をかいくぐっていく。

「はっ!」

 或人がシュウに向かってキックを繰り出した。しかしシュウはものともせず、体に力を入れて或人を押し返した。

「彼はスピードはあるが、ラスト相手では力不足のようだね・・」

 ウォズが或人の能力を確認して呟く。

「だったらオレたちと力を合わせればいいだけのことだよ。」

「そうだな・・これは元々、オレたちが戦っていたことだ・・オレたちが何もしないわけにいかない・・!」

 ソウゴが気さくに言って、ライが両手を強く握りしめる。

「その剣をオレに渡してくれ!」

 ライが呼びかけて、或人が地面に落ちているクロスカリバーに目を向けた。彼はシュウの攻撃をかいくぐって、クロスカリバーを拾った。

「いきますよ!」

 或人がクロスカリバーを投げて、ライがつかんだ。

「ありがとう、或人!」

 ライが或人に礼を言って、シュウに向かっていく。ソウゴも剣「サイキョージカンギレード」を手にして、ライに続く。

 シュウがジャンプをして、ライたちに向かってキックを繰り出す。

「みんな、離れろ!」

 聖也が呼びかけてかなた、ゲイツたちとともにシュウから離れる。ライ、ソウゴ、或人がジャンプして、シュウよりも高く上がった。

 ライとソウゴがクロスカリバーとサイキョージカンギレードを振り下ろして、シュウの肩に叩き込んだ。シュウが突き飛ばされて、地面に叩きつけられた。

“クロス!”

“オールクロスパワー!”

 ライがクロスソウルをクロスカリバーにセットした。

「クロス・オールカリバー!」

 彼がシュウに向かってクロスカリバーを振り下ろす。

“キングギリギリスラッシュ!”

 ソウゴも刀身から光を発したサイキョージカンギレードを振り下ろした。その刀身には「ジオウサイキョウー」の文字が浮かんでいた。

 シュウが両手を振り上げて、手のひらでクロスカリバーとサイキョージカンギレードを受け止めた。ライとソウゴがさらに力を込めて、シュウを押し込んでいく。

「ライたちがここまでやっても耐えていくなんて・・!」

「だったらオレもやってやる!」

 かなたが焦りを噛みしめて、或人もライたちの援護に出る。

「待つんだ。僕と一緒にやろう。」

 そこへ1人の仮面ライダーが現れて、或人に声を掛けてきた。青年、吾郎(ごろう)が変身した仮面ライダーGである。

「あなたも、仮面ライダー・・!」

「君はまだ実り始めたばかり。寝かせたワインが味を増すように、君も時期に強くなっていくだろう。力だけでなく、体の内も・・」

 戸惑いを覚える或人に、Gが励ましの言葉を送る。

「はい!ありがとうございます!」

 或人が感謝して、飛電ゼロワンドライバーにセットされているライジングホッパープログライズキーを再び押し込む。Gもベルトのワインのコルクを押し込んだ。

「スワリングライダーキック!」

「ライジングインパクト!」

 Gが或人とともにジャンプして、体を回転させる。2人が繰り出したキックが、シュウの体に叩き込まれた。

 シュウが体勢を崩して、ライとソウゴに押されて地面に膝を付いた。

「今だ!」

 ライがソウゴとともにクロスカリバーとサイキョージカンギレードを振り抜いた。シュウが体を切りつけられて、仰向けに倒れた。

「よし!これで決めるぞ!」

 ライが声を上げて、ソウゴだけでなく、聖也たちも頷いた。

“ライダースマッシュ・オール!”

“ライダースマッシュ・ヴァーイス!”

 ライと聖也がクロスタイフーン、クラールタイフーンを回転させて、足にエネルギーを集める。

Jさん、あなたの自然の力、使わせていただきます・・!」

J

 かなたが言いかけて、Jの力を宿した「Jソウル」のスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。

“ダークチャージ・J

 全身から光を発したかなたがライ、聖也と同時にジャンプした。立ち上がったシュウもジャンプして、キックを繰り出した。

「オールクロスキック!」

「ヴァイスクラールキック!」

「ルシファーライダーキック!」

 ライ、聖也、かなたが繰り出したキックが、シュウのキックとぶつかり合った。

「まだ互角のようだな・・!」

「だったらオレたちもライダーキックだ!」

 ゲイツがライたちとシュウの戦況を見て毒づいて、ソウゴが呼びかける。

「そうだな・・行くぞ、ジオウ、ウォズ!」

 ゲイツが声を掛けて、ソウゴとウォズが頷いた。

“フィニッシュターイム!”

 ソウゴとゲイツがジクウサーキュラーを回転させて、全身から光を発する。

“ファイナリービヨンドザタイム!”

 ウォズもビヨンドライバーを操作してソウゴ、ゲイツとともにジャンプしてキックを繰り出した。ライたち6人のキックが、シュウのキックを押し始める。

「もう少し・・もう少しだ!」

 或人がライたちを見て声援を送る。

「オレたちも力を合わせて、クロスたちに送るぞ。」

 そこへ1号がやってきて、或人の肩に手を乗せてきた。

「オレたちから仮面ライダーが誕生した。その後も様々な時代、様々な世界でライダーが現れた。」

「そして今、お前も仮面ライダーになった。新しい時代の仮面ライダーの1人として。」

 1号に続いて2号も或人に激励を送った。

「オレが、新しい時代の仮面ライダー・・・仮面ライダーの魂と歴史、途絶えさせるわけにはいかないです・・!」

 或人が戸惑いを感じてから、仮面ライダーとしての自覚と決意を胸に秘めた。

「ゼロワン、お前の持てる力と思いを、オレたちとともにクロスたちに届ける!」

「はい!」

 1号の指示に或人が答える。彼らとV3たちが意識と力を集中させていく。

「ライダーシンドローム!」

 或人たちの体から光が放出される。光がライたちに注がれて、キックの威力を増大させていく。

「力が、どんどん強くなっていく・・!」

「仮面ライダーのみんなが、オレたちに力を貸してくれている・・!」

 あふれてくる力に、ソウゴとライが戸惑いをふくらませていく。彼らは聖也たちとともに、抱えている力を振り絞った。

「仮面ライダー・・私が滅ぼす・・・!」

 シュウが声を振り絞って、ライたちを押し返そうとする。

「仮面ライダーは滅びない・・正義と自由、平和と命、大切なものを守るために、仮面ライダーは戦い続ける・・!」

 ライが声と力を振り絞って、シュウに言い返す。

「オレたち自身だけでなく、オレたちを信じている人がいる・・その人たちのためにも、オレたちは負けられない・・!」

 ライの脳裏にまりとひろしの姿がよぎった。まりはひろしとともに、ライたちが無事に戻ってくることを願っていた。

「仮面ライダーは全てを滅ぼす・・ライダーは滅びなければならない・・・!」

「みんなが信じている仮面ライダーが、滅びていいわけがないだろう!」

 仮面ライダーへの敵意を見せるシュウに、ライが言い返す。

「自分の意思だけで全てを滅ぼそうとする・・そんな考え方で、強い魂と歴史を覆すことはできない!」

 ライが言い放って、聖也たちとともにキックを押し込んだ。シュウがキックを押し切られて、体にキックを叩き込まれた。

 シュウの体からあふれていた黒いオーラが一気に噴き出して、完全に抜け切った。巨大になっていたシュウの体が、元の大きさに戻っていた。

「オ・・オレは、何をしていたんだ・・・?」

 シュウが自分に起きたことを確かめる。彼のラストへの変身が解かれて、ラストドライバーとラストソウルが消えた。

「ここは?・・オレの知っている場所じゃない・・」

「ここはオレたちの世界・・お前のいた世界とは別の世界だ・・」

 周りを見回すシュウの前に、ライが聖也たちとともに降り立った。

「仮面ライダー!?・・お前たちがいるせいで、オレたちは、みんなは・・!」

 シュウがライたち仮面ライダーに対して、怒りをあらわにする。

「君のいた世界で、君たちを苦しめることになった責任は、我々仮面ライダーにある。しかしそれでも我々は、世界に生きる全ての人々や命を守るために戦っていく。」

「オレたちは神ではない。それでも多くの人を救うために、オレたちは命と魂を賭ける。」

 1号と2号が自分たちの意思を告げる。シュウは納得していないが、それでも自分たちの戦いを続けていく決意を消さなかった。

「ここでもう1度言うぞ・・お前の世界を消したのは仮面ライダーの合わさった力じゃない・・ラスト、お前の力が引き起こしたものなんだ・・・!」

 ライがシュウに事実を告げた。

「ふざけるな・・自分のしたことを棚に上げて、オレに濡れ衣を着せるのか・・!?

「だったら自分で見てくればいい・・消える直前の、お前の世界を・・」

 怒りを覚えるシュウに対して、ライがジオウのライダーソウル「ジオウソウル」を取り出した。

“ジオウ!”

 ライがジオウソウルのスイッチを入れて、意識を集中した。ジオウソウルから金色の光が放たれて、シュウが包まれた。

 

 光で目がくらんだシュウが、ゆっくりと目を開けた。彼は仮面ライダーと怪人の戦いが激化していた自分の世界を目の当たりにしていた。

「あれはオレだ・・ライダーの戦いでみんながムチャクチャになっていることに、オレは怒りを感じ始めていた・・・!」

 目の前にいるもう1人の自分を見て、シュウが記憶を思い返していく。今見ているのが消える直前の自分の世界だと、彼は理解した。

 仮面ライダーへの怒りをふくらませて、ラストドライバーとラストソウルを手にして、ラストに変身した。手にした力でライダーたちに攻撃したことも、シュウは思い出した。

 そして持てる力を解放して、制御できないほどにまで増大させた。その瞬間に自我を失ったことを、シュウは思い知らされた。

「オレ、これほどの力を出したのか・・・!?

 ラストとなった自分の力も思い出して、シュウが戸惑いをふくらませていく。

「その後にライダーたちが力を増しすぎたことで、空間を歪めて世界が・・・!」

 自分の中にある記憶を信じていたシュウ。しかし空間を歪めたのは、他のライダーたちの力ではなく、彼自身の暴走した力だった。

「そんな!?・・オレが、オレの世界を滅ぼした・・・!?

 自分のしたことに目を疑うシュウ。彼は絶望を覚えて、地面に膝を付いた。

「オレが世界を消したにもかかわらず、それを忘れて、それを仮面ライダーのせいにして、消して回っていたのか・・・!?

 取り返しのつかない過ちを痛感して、シュウがふさぎ込む。どうしたらいいのか、自ら答えを出すこともできず、シュウはその場から動けなくなっていた。

「だけど、何もかも終わりってわけじゃない・・」

 シュウの横にライが姿を現した。

「お前が消したライダーのみんなも、別の空間から戻ってきた・・お前の世界も元に戻っているはずだ・・」

「オレの世界が、戻ってきているのか・・・!?

「元の世界に戻ればいい・・お前の世界に、きちんと戻れるはずだ・・・」

「元の時間と空間に戻れば、元のオレたちの世界が・・・!」

 ライから世界の無事を聞かされて、シュウが心を動かされていく。

「オレたちはオレたちの戦いを続ける・・それはオレの大切なものを守る戦いだ・・・」

 ライが自分の決意をシュウに告げる。

「お前もお前の大切なもののために戦えばいい・・仮面ライダーのことをちゃんと考えて向き合って、それでも許せないと言い張るなら、お前の全部を賭けてぶつかればいい・・」

「仮面ライダーと、ちゃんと向き合う・・・」

 ライの投げかけた言葉に、シュウが小さく頷いた。

「オレは帰る・・みんなが待っているから・・・」

 ライがシュウに言ってから振り返る。

「お前も帰れ・・お前の大事な人が、そこで待っているんだろう?」

 ライがシュウに呼びかけて、1人歩き出す。

「大切なものを守るために戦う、素顔を隠した戦士・・それが、仮面ライダーだ・・・!」

 仮面ライダーへの思いを口にして、ライは姿を消した。

「仮面ライダー・・・」

 シュウは戸惑いを感じて、自分の胸に手を当てた。

「オレは、ライダーと面と向かって、考えを伝える必要がある・・言葉だけじゃなく、最悪、力でも・・・」

 新しい決心をして、シュウは眼前の景色を見つめる。歪みに囚われていた世界が、段々と元に戻っていく。

 それは仮面ライダーと怪人たちの激闘で荒れる前の世界。ライダーたちは存在していたが、怪人たちは彼らに敗北を喫していた。

「戻ってきたのか・・オレは、オレの世界に・・・!」

 シュウが元に戻った自分の世界の大地を、しっかりと踏みしめる。平和になった世界に、彼は笑みを浮かべていた、久しく浮かべていなかった笑顔だった。

 

 シュウの世界から戻ってきたライ。彼を聖也とかなた、1号たち仮面ライダーが待っていた。

「ラスト、無事に自分の世界に戻ったんだな・・」

 かなたが声を掛けて、ライが頷いた。

「オレはオレの戦いをしていきます・・それが仮面ライダーにふさわしいのかどうか、分からないですが・・・」

「大切なものはそれぞれだ。それは仮面ライダーも例外ではない。」

「守ろうとする意思があれば、仮面ライダーとしての強さは十分だ。」

 自分の思いを口にするライに、1号と2号が励ましを送る。

「本物の強さを持っていることは、聖也もかなたも分かってるからな・・」

 巧も言いかけて、聖也とかなたが微笑んで頷いた。

「だからこそオレたちの力がお前たちに応えている。」

「オレたちが力を貸しているだけじゃない。オレたちとお前たちのつながりの証でもある。」

 一真と紘汰もライたちに告げて、それぞれラウズカードと「オレンジロックシード」を見せた。

「そして仮面ライダーの歴史は、これからも続いていく・・」

 光輝も言いかけて、或人に目を向けた。

「オレとお前から仮面ライダーの歴史が始まり、時代と世界を超えてこれだけのライダーが生まれた。」

「悪のライダーも生まれてしまったが、正義と強き魂は決して悪に屈することはなかった。」

「それはたとえ孤独の戦いに身を投じていても、オレたちに守りたいもの、オレたちを支えてくれる人がいたからだ。」

 1号、2号、V3が自分たちのことを語っていく。

「オレたちはみんなの希望となっているが、オレたちにとってもみんながいることが希望となっている。」

「だからオレたちは悪と戦っていられるし、これからも戦い続けることができるんだ。」

 光太郎と翔太郎もライたちに向かって思いを告げた。

「オレは気に入らねぇヤツをバッタバッタとやっつけられりゃ、それで満足だけどな!」

 モモタロスが高らかに言い放って、ポーズを決めた。

「ライくん、ソウゴくん、君たちはオレたちの力と魂をつなげる仮面ライダーだ。」

「そして今度は、君たちがその魂を未来へつなげる番だ。」

 光太郎と1号がライたちに激励を送った。

「はいっ!」

 ライとソウゴが答えて、聖也とかなたが頷いた。

「ではオレはそろそろ行きます。みんなが待っているんで・・」

 或人が声を掛けて、ライたちの前から去っていった。

「ありがとう、或人。また会おうな。」

 ライが礼を言って、或人を見送った。

「オレたちも行こうか、ゲイツ、ウォズ。」

「我が魔王の赴くままに。」

「みんなが待っているからな。」

 ソウゴが呼びかけて、ウォズとゲイツが言い返す。

「ライ、オレもまた会えるときが来るって思ってるよ。」

「お前の考え、オレたちも受け止めているからな。」

 ソウゴに続いて戦兎もライに言ってから歩き出した。

「僕もこれからも、患者の悪い運命を変えていく。僕たち仮面ライダーが、世界やみんなを救うように。」

「みんなの命を守っていくのが、オレたちのやるべきことなんだ。」

 永夢とタケルも決意と命の大切さを告げて、ライたちの前から去っていった。

「オレはこれからも戦う・・バケモノだろうと人間だろうと、好き勝手にしてみんなをムチャクチャにして、それが正しいことにされるわけにはいかない・・・!」

 ノゾムは自分の揺るぎない意思を口にして、1人歩き出した。

「オレもみんなのところで戻るよ。オレもみんなも、これから先も突っ走っていこう。」

「オレにはオレのいるべきステージがある。もちろん、お前にもお前のステージが、みんなにもそれぞれのステージが。」

 進之介と紘汰がライたちに言って、去っていく。紘汰ははじまりの男の姿になって、地球から消えていった。

「オレたち仮面ライダーが、みんなの希望になっているんだ。」

「オレたちはみんなダチだ!仮面ライダーもみんなも!」

「それで握手をするために、助けたい人を助けるために、オレもみんなも手を伸ばすんだ。」

 晴人、弦太朗、映司もライたちに激励を送って去っていった。

“僕たちも戻ろうか、翔太郎。風都(ふうと)が僕たちを待っている。”

「あぁ。オレたちはこれからも、世界を泣かせる悪を引きずり出してやるさ。」

 フィリップに答えて、翔太郎が微笑んでから風都に向かった。

「オレはオレたちのいるところに戻るぜ。だけどクライマックスはどこまでも続いていくぜ!」

「僕も、僕の家に帰るよ。みんなを心配させたらいけないし・・」

 モモタロスと渡も言って、ライたちの前から走り出した。

「オレが行くのは常に天の道。他の者を導くのも、オレの成すべきことだ。」

「オレもこれからも精進していくつもりだ。みんなも鍛錬は怠らないようにな。」

 総司が冷静に告げて、響鬼が言って敬礼のようなポーズを見せてから去っていった。

「オレも仲間のところへ戻るよ。」

「こんなオレにも、帰るところがあるからな・・」

「オレもやることがまだまだあるからな。」

 一真、巧、真司も声を掛けて、仲間たちに会いに歩いていった。

「オレの戦いはまだ途中だ。みんなを守るためのね。」

「オレは旅だけどね。」

「やるべきこと、やりたいことを精一杯がんばる。それはライダーも普通の人も同じだよ。」

 吾郎、雄介、翔一も声を掛け合って、それぞれの道へ進んでいった。

「僕は本当の正義を守るための戦いを続けていくよ。」

「オレは人間と“アマゾン”、両方が手を取り合えるようにするために・・」

 光輝と悠もそれぞれの決意を言って、ライたちの前から去っていった。

「ありがとう、ライ、みんな。一緒に戦ってくれて・・」

「オレも新しい答えを見つけられた気がする。」

「仮面ライダーの魂と心、オレにも分かった・・オレの中にも、それがあることも・・」

 蓮太郎、主水、レントもそれぞれ思いと感謝を口にして、ライたちと別れた。

(みんな、一緒に戦ってくれて、とても嬉しかった・・・!)

 ライが蓮太郎たちに心から感謝していた。

「オレたちはいつでもつながっている。」

「たとえみんなが遠くにいたとしても・・」

「たとえ人と違う姿や能力があるとしても・・」

「仲間や家族の存在が支えてくれる。」

「だからオレたちは、孤独に押しつぶされることはない。」

 JZO、シン、BLACKRXが声を掛け合う。

「悪に操られ、悪に手を染めていたとしても・・」

「罪を償い、正義のために戦うことはできる。」

 ゼクロスとライダーマンが昔の自分のことを告げる。

「屈強な敵が現れたとしても・・」

「自らを鍛え、新しい技と力を身に着け、打開することができる。」

「厳しい現実や辛い別れがあるが・・」

「それに押しつぶされず受け切る強さも持っている。」

 スーパー1、スカイライダー、ストロンガー、エックスもライたちに激励を送った。

「クロス、みんな、アマゾンのともだち・・ともだちまもるのが、アマゾンのきもち・・」

 アマゾンも頷いて、ライたちに友達ポーズを見せた。

「復讐がきっかけだったとしても、悪に立ち向かう正義の心を忘れてはならない。」

「君たちにもそれがあることを、我々も知っている。」

 V3と2号がライたちに信頼を投げかけた。

「オレたちはこの先も、正義と平和のために戦う。君たちも君たちの大切なもののために戦うんだ。」

 1号が励ましを送って、ライに手を差し伸べた。

「はい、先輩!」

 ライが笑みを浮かべて答えて、1号の手を握って握手を交わした。

 長い年月の中、様々な世界で多くの仮面ライダーが誕生した。それぞれの場所でそれぞれの戦いをして、時に世界や時代を超えて力を合わせる。

 仮面ライダーの歴史と魂の大きさを、ライたちは実感していた。

「オレたちも戦うぞ。いつの時代でも、どの世界でも。」

「おおっ!」

 1号が掛け声を上げて、ライたち仮面ライダーが答えた。1号たちはライたちの前から歩き出して、それぞれの戦いに戻っていった。

(ありがとうございます、先輩。オレたちもこれからも戦います。オレたちの大切なもののために、仮面ライダーとして・・)

 ライが心の中で決意を呟いて、ライダーたちを見送った。

 

 ライたちが無事に帰るのを信じて、まりとひろしは待っていた。

「揺れも治まったし、空も元に戻った。全部丸く収まったってことだよな・・」

 ひろしが周りの様子を見て呟く。

「はい・・・ライくん・・かなたくん・・聖也さん・・・」

 まりが答えて、ライたちが戻るのを心から待っていた。

「あっ・・ひろしさん、あそこ・・!」

 そのとき、まりが声を上げて、ひろしとともに前を見つめる。2人に向かってライ、聖也、かなたがやってきた。

「ライくんたちです!」

「みんなー、待ってたぞー!」

 まりが喜びを浮かべて、ひろしがライたちに向かって大きく手を振る。

「あっ、まりちゃんとおやっさん!あそこまで迎えに来てくれたんだね!」

「2人とも、今回の脅威が去ったことを知ったようだ。」

 かなたも喜びを見せて、聖也が微笑んで頷いた。

(帰ってこれた・・オレたちもみんなも、世界も無事だった・・・)

 平穏が戻ったことを実感して、ライは笑みをこぼしていた。

(この小さな幸せから、地球や宇宙、世界を守ることが、仮面ライダーの使命なんだ・・・!)

 仮面ライダーとしてあるべき姿と、自分自身が守りたいと考えるもの。ライは両者を考えて、改めて決意を固めていた。

「ライくん、もう解決したんだよね・・・?」

 まりがライに近づいてきて、声を掛けて微笑んできた。

「まりちゃん・・あぁ。今回のことはな・・」

 我に返ったライが、まりに小さく頷いた。

「オレはこれからも戦う・・オレの大切なものを守る・・オレがそう決めたんだ・・・」

 自分の決意を口にするライに、まりは戸惑いを感じていた。

(変わっていない・・ライくんのまま・・クロスになっても、ライダーとして戦い続けていても、ライくんの考え方は変わっていない・・)

 ライらしさが変わっていないことを実感して、まりは安らぎを感じていた。

「ラーイ!まりちゃーん!」

「ボーっとしてると置いてくぞー!」

 かなたとひろしがライたちに向かって呼びかけてきた。

「はーい!行こう、ライくん!」

「あぁ・・!」

 まりとライがかなたたちを追っていった。ライたちは橘モーターショップに戻って、束の間の日常に戻っていった。

 

 

仮面ライダー。

世界や人々を脅かす怪人に、素顔を隠して戦い続ける戦士。

 

その歴史は終わらない。

仮面ライダーの歴史は、これからも続いていく。

 

 

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