仮面ライダークロス
-Endless Rider’s history-
第9章
或人がギャグを言った瞬間、この場が静寂に包まれた。
「おい・・・悪ふざけに来たのなら帰れ・・・」
声を振り絞ったゲイツに言われて、或人がショックを受けて大きく肩を落とした。
そのとき、シュウが握った右手を振り上げて、ライたちに向かって振り下ろした。
「うあっ!」
シュウのパンチの起こした突風に押されて、ライとソウゴが地面に叩きつけられる。或人も吹き飛ばされて、クロスカリバーの落ちているほうに転がった。
「オレだけ帰るわけにはいかない・・オレも、仮面ライダーになったんだから・・!」
立ち上がった或人がベルト「飛電ゼロワンドライバー」を装着して、キーアイテム「プログライズキー」の1つ「ライジングホッパープログライズキー」を、右側の認証装置「オーソライザー」で解除してロックを解除する。すると彼の前に機械的な巨大なバッタが現れた。
「変身!」
或人がライジングホッパープログライズキーを飛電ゼロワンドライバーにセットした。
“飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns
to a riderkick.”
周りを飛び回っていたバッタがバラバラになって、スーツと仮面になって或人を包み込んだ。
「オレの名はゼロワン!仮面ライダーゼロワンだ!」
或人が再び名乗りを上げた。彼は仮面ライダー、ゼロワン・ライジングホッパーに変身した。
「ゼロワン・・新しい仮面ライダーか・・!」
「ということは、僕たちの後輩になるってことだね♪」
ライが或人を見て呟いて、かなたが感動を見せる。
「その力は今、みんなを困らせている!オレがみんなの笑顔を守ってみせる!」
或人が思いと決意を言い放って、シュウに向かっていく。
「そのライダーは力を暴走させているだけだ!倒しちゃダメだ!」
「分かっている!止めることができるなら、そうしたほうがいいに決まっている!」
ソウゴの呼びかけに、或人が答える。彼もシュウを救いたいという意志を持っていた。
シュウが或人を狙って腕を振りかざす。或人は素早く軽やかな動きとジャンプで、シュウの打撃をかいくぐっていく。
「はっ!」
或人がシュウに向かってキックを繰り出した。しかしシュウはものともせず、体に力を入れて或人を押し返した。
「彼はスピードはあるが、ラスト相手では力不足のようだね・・」
ウォズが或人の能力を確認して呟く。
「だったらオレたちと力を合わせればいいだけのことだよ。」
「そうだな・・これは元々、オレたちが戦っていたことだ・・オレたちが何もしないわけにいかない・・!」
ソウゴが気さくに言って、ライが両手を強く握りしめる。
「その剣をオレに渡してくれ!」
ライが呼びかけて、或人が地面に落ちているクロスカリバーに目を向けた。彼はシュウの攻撃をかいくぐって、クロスカリバーを拾った。
「いきますよ!」
或人がクロスカリバーを投げて、ライがつかんだ。
「ありがとう、或人!」
ライが或人に礼を言って、シュウに向かっていく。ソウゴも剣「サイキョージカンギレード」を手にして、ライに続く。
シュウがジャンプをして、ライたちに向かってキックを繰り出す。
「みんな、離れろ!」
聖也が呼びかけてかなた、ゲイツたちとともにシュウから離れる。ライ、ソウゴ、或人がジャンプして、シュウよりも高く上がった。
ライとソウゴがクロスカリバーとサイキョージカンギレードを振り下ろして、シュウの肩に叩き込んだ。シュウが突き飛ばされて、地面に叩きつけられた。
“クロス!”
“オールクロスパワー!”
ライがクロスソウルをクロスカリバーにセットした。
「クロス・オールカリバー!」
彼がシュウに向かってクロスカリバーを振り下ろす。
“キングギリギリスラッシュ!”
ソウゴも刀身から光を発したサイキョージカンギレードを振り下ろした。その刀身には「ジオウサイキョウー」の文字が浮かんでいた。
シュウが両手を振り上げて、手のひらでクロスカリバーとサイキョージカンギレードを受け止めた。ライとソウゴがさらに力を込めて、シュウを押し込んでいく。
「ライたちがここまでやっても耐えていくなんて・・!」
「だったらオレもやってやる!」
かなたが焦りを噛みしめて、或人もライたちの援護に出る。
「待つんだ。僕と一緒にやろう。」
そこへ1人の仮面ライダーが現れて、或人に声を掛けてきた。青年、吾郎が変身した仮面ライダーGである。
「あなたも、仮面ライダー・・!」
「君はまだ実り始めたばかり。寝かせたワインが味を増すように、君も時期に強くなっていくだろう。力だけでなく、体の内も・・」
戸惑いを覚える或人に、Gが励ましの言葉を送る。
「はい!ありがとうございます!」
或人が感謝して、飛電ゼロワンドライバーにセットされているライジングホッパープログライズキーを再び押し込む。Gもベルトのワインのコルクを押し込んだ。
「スワリングライダーキック!」
「ライジングインパクト!」
Gが或人とともにジャンプして、体を回転させる。2人が繰り出したキックが、シュウの体に叩き込まれた。
シュウが体勢を崩して、ライとソウゴに押されて地面に膝を付いた。
「今だ!」
ライがソウゴとともにクロスカリバーとサイキョージカンギレードを振り抜いた。シュウが体を切りつけられて、仰向けに倒れた。
「よし!これで決めるぞ!」
ライが声を上げて、ソウゴだけでなく、聖也たちも頷いた。
“ライダースマッシュ・オール!”
“ライダースマッシュ・ヴァーイス!”
ライと聖也がクロスタイフーン、クラールタイフーンを回転させて、足にエネルギーを集める。
「Jさん、あなたの自然の力、使わせていただきます・・!」
“J!”
かなたが言いかけて、Jの力を宿した「Jソウル」のスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・J。”
全身から光を発したかなたがライ、聖也と同時にジャンプした。立ち上がったシュウもジャンプして、キックを繰り出した。
「オールクロスキック!」
「ヴァイスクラールキック!」
「ルシファーライダーキック!」
ライ、聖也、かなたが繰り出したキックが、シュウのキックとぶつかり合った。
「まだ互角のようだな・・!」
「だったらオレたちもライダーキックだ!」
ゲイツがライたちとシュウの戦況を見て毒づいて、ソウゴが呼びかける。
「そうだな・・行くぞ、ジオウ、ウォズ!」
ゲイツが声を掛けて、ソウゴとウォズが頷いた。
“フィニッシュターイム!”
ソウゴとゲイツがジクウサーキュラーを回転させて、全身から光を発する。
“ファイナリービヨンドザタイム!”
ウォズもビヨンドライバーを操作してソウゴ、ゲイツとともにジャンプしてキックを繰り出した。ライたち6人のキックが、シュウのキックを押し始める。
「もう少し・・もう少しだ!」
或人がライたちを見て声援を送る。
「オレたちも力を合わせて、クロスたちに送るぞ。」
そこへ1号がやってきて、或人の肩に手を乗せてきた。
「オレたちから仮面ライダーが誕生した。その後も様々な時代、様々な世界でライダーが現れた。」
「そして今、お前も仮面ライダーになった。新しい時代の仮面ライダーの1人として。」
1号に続いて2号も或人に激励を送った。
「オレが、新しい時代の仮面ライダー・・・仮面ライダーの魂と歴史、途絶えさせるわけにはいかないです・・!」
或人が戸惑いを感じてから、仮面ライダーとしての自覚と決意を胸に秘めた。
「ゼロワン、お前の持てる力と思いを、オレたちとともにクロスたちに届ける!」
「はい!」
1号の指示に或人が答える。彼らとV3たちが意識と力を集中させていく。
「ライダーシンドローム!」
或人たちの体から光が放出される。光がライたちに注がれて、キックの威力を増大させていく。
「力が、どんどん強くなっていく・・!」
「仮面ライダーのみんなが、オレたちに力を貸してくれている・・!」
あふれてくる力に、ソウゴとライが戸惑いをふくらませていく。彼らは聖也たちとともに、抱えている力を振り絞った。
「仮面ライダー・・私が滅ぼす・・・!」
シュウが声を振り絞って、ライたちを押し返そうとする。
「仮面ライダーは滅びない・・正義と自由、平和と命、大切なものを守るために、仮面ライダーは戦い続ける・・!」
ライが声と力を振り絞って、シュウに言い返す。
「オレたち自身だけでなく、オレたちを信じている人がいる・・その人たちのためにも、オレたちは負けられない・・!」
ライの脳裏にまりとひろしの姿がよぎった。まりはひろしとともに、ライたちが無事に戻ってくることを願っていた。
「仮面ライダーは全てを滅ぼす・・ライダーは滅びなければならない・・・!」
「みんなが信じている仮面ライダーが、滅びていいわけがないだろう!」
仮面ライダーへの敵意を見せるシュウに、ライが言い返す。
「自分の意思だけで全てを滅ぼそうとする・・そんな考え方で、強い魂と歴史を覆すことはできない!」
ライが言い放って、聖也たちとともにキックを押し込んだ。シュウがキックを押し切られて、体にキックを叩き込まれた。
シュウの体からあふれていた黒いオーラが一気に噴き出して、完全に抜け切った。巨大になっていたシュウの体が、元の大きさに戻っていた。
「オ・・オレは、何をしていたんだ・・・?」
シュウが自分に起きたことを確かめる。彼のラストへの変身が解かれて、ラストドライバーとラストソウルが消えた。
「ここは?・・オレの知っている場所じゃない・・」
「ここはオレたちの世界・・お前のいた世界とは別の世界だ・・」
周りを見回すシュウの前に、ライが聖也たちとともに降り立った。
「仮面ライダー!?・・お前たちがいるせいで、オレたちは、みんなは・・!」
シュウがライたち仮面ライダーに対して、怒りをあらわにする。
「君のいた世界で、君たちを苦しめることになった責任は、我々仮面ライダーにある。しかしそれでも我々は、世界に生きる全ての人々や命を守るために戦っていく。」
「オレたちは神ではない。それでも多くの人を救うために、オレたちは命と魂を賭ける。」
1号と2号が自分たちの意思を告げる。シュウは納得していないが、それでも自分たちの戦いを続けていく決意を消さなかった。
「ここでもう1度言うぞ・・お前の世界を消したのは仮面ライダーの合わさった力じゃない・・ラスト、お前の力が引き起こしたものなんだ・・・!」
ライがシュウに事実を告げた。
「ふざけるな・・自分のしたことを棚に上げて、オレに濡れ衣を着せるのか・・!?」
「だったら自分で見てくればいい・・消える直前の、お前の世界を・・」
怒りを覚えるシュウに対して、ライがジオウのライダーソウル「ジオウソウル」を取り出した。
“ジオウ!”
ライがジオウソウルのスイッチを入れて、意識を集中した。ジオウソウルから金色の光が放たれて、シュウが包まれた。
光で目がくらんだシュウが、ゆっくりと目を開けた。彼は仮面ライダーと怪人の戦いが激化していた自分の世界を目の当たりにしていた。
「あれはオレだ・・ライダーの戦いでみんながムチャクチャになっていることに、オレは怒りを感じ始めていた・・・!」
目の前にいるもう1人の自分を見て、シュウが記憶を思い返していく。今見ているのが消える直前の自分の世界だと、彼は理解した。
仮面ライダーへの怒りをふくらませて、ラストドライバーとラストソウルを手にして、ラストに変身した。手にした力でライダーたちに攻撃したことも、シュウは思い出した。
そして持てる力を解放して、制御できないほどにまで増大させた。その瞬間に自我を失ったことを、シュウは思い知らされた。
「オレ、これほどの力を出したのか・・・!?」
ラストとなった自分の力も思い出して、シュウが戸惑いをふくらませていく。
「その後にライダーたちが力を増しすぎたことで、空間を歪めて世界が・・・!」
自分の中にある記憶を信じていたシュウ。しかし空間を歪めたのは、他のライダーたちの力ではなく、彼自身の暴走した力だった。
「そんな!?・・オレが、オレの世界を滅ぼした・・・!?」
自分のしたことに目を疑うシュウ。彼は絶望を覚えて、地面に膝を付いた。
「オレが世界を消したにもかかわらず、それを忘れて、それを仮面ライダーのせいにして、消して回っていたのか・・・!?」
取り返しのつかない過ちを痛感して、シュウがふさぎ込む。どうしたらいいのか、自ら答えを出すこともできず、シュウはその場から動けなくなっていた。
「だけど、何もかも終わりってわけじゃない・・」
シュウの横にライが姿を現した。
「お前が消したライダーのみんなも、別の空間から戻ってきた・・お前の世界も元に戻っているはずだ・・」
「オレの世界が、戻ってきているのか・・・!?」
「元の世界に戻ればいい・・お前の世界に、きちんと戻れるはずだ・・・」
「元の時間と空間に戻れば、元のオレたちの世界が・・・!」
ライから世界の無事を聞かされて、シュウが心を動かされていく。
「オレたちはオレたちの戦いを続ける・・それはオレの大切なものを守る戦いだ・・・」
ライが自分の決意をシュウに告げる。
「お前もお前の大切なもののために戦えばいい・・仮面ライダーのことをちゃんと考えて向き合って、それでも許せないと言い張るなら、お前の全部を賭けてぶつかればいい・・」
「仮面ライダーと、ちゃんと向き合う・・・」
ライの投げかけた言葉に、シュウが小さく頷いた。
「オレは帰る・・みんなが待っているから・・・」
ライがシュウに言ってから振り返る。
「お前も帰れ・・お前の大事な人が、そこで待っているんだろう?」
ライがシュウに呼びかけて、1人歩き出す。
「大切なものを守るために戦う、素顔を隠した戦士・・それが、仮面ライダーだ・・・!」
仮面ライダーへの思いを口にして、ライは姿を消した。
「仮面ライダー・・・」
シュウは戸惑いを感じて、自分の胸に手を当てた。
「オレは、ライダーと面と向かって、考えを伝える必要がある・・言葉だけじゃなく、最悪、力でも・・・」
新しい決心をして、シュウは眼前の景色を見つめる。歪みに囚われていた世界が、段々と元に戻っていく。
それは仮面ライダーと怪人たちの激闘で荒れる前の世界。ライダーたちは存在していたが、怪人たちは彼らに敗北を喫していた。
「戻ってきたのか・・オレは、オレの世界に・・・!」
シュウが元に戻った自分の世界の大地を、しっかりと踏みしめる。平和になった世界に、彼は笑みを浮かべていた、久しく浮かべていなかった笑顔だった。
シュウの世界から戻ってきたライ。彼を聖也とかなた、1号たち仮面ライダーが待っていた。
「ラスト、無事に自分の世界に戻ったんだな・・」
かなたが声を掛けて、ライが頷いた。
「オレはオレの戦いをしていきます・・それが仮面ライダーにふさわしいのかどうか、分からないですが・・・」
「大切なものはそれぞれだ。それは仮面ライダーも例外ではない。」
「守ろうとする意思があれば、仮面ライダーとしての強さは十分だ。」
自分の思いを口にするライに、1号と2号が励ましを送る。
「本物の強さを持っていることは、聖也もかなたも分かってるからな・・」
巧も言いかけて、聖也とかなたが微笑んで頷いた。
「だからこそオレたちの力がお前たちに応えている。」
「オレたちが力を貸しているだけじゃない。オレたちとお前たちのつながりの証でもある。」
一真と紘汰もライたちに告げて、それぞれラウズカードと「オレンジロックシード」を見せた。
「そして仮面ライダーの歴史は、これからも続いていく・・」
光輝も言いかけて、或人に目を向けた。
「オレとお前から仮面ライダーの歴史が始まり、時代と世界を超えてこれだけのライダーが生まれた。」
「悪のライダーも生まれてしまったが、正義と強き魂は決して悪に屈することはなかった。」
「それはたとえ孤独の戦いに身を投じていても、オレたちに守りたいもの、オレたちを支えてくれる人がいたからだ。」
1号、2号、V3が自分たちのことを語っていく。
「オレたちはみんなの希望となっているが、オレたちにとってもみんながいることが希望となっている。」
「だからオレたちは悪と戦っていられるし、これからも戦い続けることができるんだ。」
光太郎と翔太郎もライたちに向かって思いを告げた。
「オレは気に入らねぇヤツをバッタバッタとやっつけられりゃ、それで満足だけどな!」
モモタロスが高らかに言い放って、ポーズを決めた。
「ライくん、ソウゴくん、君たちはオレたちの力と魂をつなげる仮面ライダーだ。」
「そして今度は、君たちがその魂を未来へつなげる番だ。」
光太郎と1号がライたちに激励を送った。
「はいっ!」
ライとソウゴが答えて、聖也とかなたが頷いた。
「ではオレはそろそろ行きます。みんなが待っているんで・・」
或人が声を掛けて、ライたちの前から去っていった。
「ありがとう、或人。また会おうな。」
ライが礼を言って、或人を見送った。
「オレたちも行こうか、ゲイツ、ウォズ。」
「我が魔王の赴くままに。」
「みんなが待っているからな。」
ソウゴが呼びかけて、ウォズとゲイツが言い返す。
「ライ、オレもまた会えるときが来るって思ってるよ。」
「お前の考え、オレたちも受け止めているからな。」
ソウゴに続いて戦兎もライに言ってから歩き出した。
「僕もこれからも、患者の悪い運命を変えていく。僕たち仮面ライダーが、世界やみんなを救うように。」
「みんなの命を守っていくのが、オレたちのやるべきことなんだ。」
永夢とタケルも決意と命の大切さを告げて、ライたちの前から去っていった。
「オレはこれからも戦う・・バケモノだろうと人間だろうと、好き勝手にしてみんなをムチャクチャにして、それが正しいことにされるわけにはいかない・・・!」
ノゾムは自分の揺るぎない意思を口にして、1人歩き出した。
「オレもみんなのところで戻るよ。オレもみんなも、これから先も突っ走っていこう。」
「オレにはオレのいるべきステージがある。もちろん、お前にもお前のステージが、みんなにもそれぞれのステージが。」
進之介と紘汰がライたちに言って、去っていく。紘汰ははじまりの男の姿になって、地球から消えていった。
「オレたち仮面ライダーが、みんなの希望になっているんだ。」
「オレたちはみんなダチだ!仮面ライダーもみんなも!」
「それで握手をするために、助けたい人を助けるために、オレもみんなも手を伸ばすんだ。」
晴人、弦太朗、映司もライたちに激励を送って去っていった。
“僕たちも戻ろうか、翔太郎。風都が僕たちを待っている。”
「あぁ。オレたちはこれからも、世界を泣かせる悪を引きずり出してやるさ。」
フィリップに答えて、翔太郎が微笑んでから風都に向かった。
「オレはオレたちのいるところに戻るぜ。だけどクライマックスはどこまでも続いていくぜ!」
「僕も、僕の家に帰るよ。みんなを心配させたらいけないし・・」
モモタロスと渡も言って、ライたちの前から走り出した。
「オレが行くのは常に天の道。他の者を導くのも、オレの成すべきことだ。」
「オレもこれからも精進していくつもりだ。みんなも鍛錬は怠らないようにな。」
総司が冷静に告げて、響鬼が言って敬礼のようなポーズを見せてから去っていった。
「オレも仲間のところへ戻るよ。」
「こんなオレにも、帰るところがあるからな・・」
「オレもやることがまだまだあるからな。」
一真、巧、真司も声を掛けて、仲間たちに会いに歩いていった。
「オレの戦いはまだ途中だ。みんなを守るためのね。」
「オレは旅だけどね。」
「やるべきこと、やりたいことを精一杯がんばる。それはライダーも普通の人も同じだよ。」
吾郎、雄介、翔一も声を掛け合って、それぞれの道へ進んでいった。
「僕は本当の正義を守るための戦いを続けていくよ。」
「オレは人間と“アマゾン”、両方が手を取り合えるようにするために・・」
光輝と悠もそれぞれの決意を言って、ライたちの前から去っていった。
「ありがとう、ライ、みんな。一緒に戦ってくれて・・」
「オレも新しい答えを見つけられた気がする。」
「仮面ライダーの魂と心、オレにも分かった・・オレの中にも、それがあることも・・」
蓮太郎、主水、レントもそれぞれ思いと感謝を口にして、ライたちと別れた。
(みんな、一緒に戦ってくれて、とても嬉しかった・・・!)
ライが蓮太郎たちに心から感謝していた。
「オレたちはいつでもつながっている。」
「たとえみんなが遠くにいたとしても・・」
「たとえ人と違う姿や能力があるとしても・・」
「仲間や家族の存在が支えてくれる。」
「だからオレたちは、孤独に押しつぶされることはない。」
J、ZO、シン、BLACK、RXが声を掛け合う。
「悪に操られ、悪に手を染めていたとしても・・」
「罪を償い、正義のために戦うことはできる。」
ゼクロスとライダーマンが昔の自分のことを告げる。
「屈強な敵が現れたとしても・・」
「自らを鍛え、新しい技と力を身に着け、打開することができる。」
「厳しい現実や辛い別れがあるが・・」
「それに押しつぶされず受け切る強さも持っている。」
スーパー1、スカイライダー、ストロンガー、エックスもライたちに激励を送った。
「クロス、みんな、アマゾンのともだち・・ともだちまもるのが、アマゾンのきもち・・」
アマゾンも頷いて、ライたちに友達ポーズを見せた。
「復讐がきっかけだったとしても、悪に立ち向かう正義の心を忘れてはならない。」
「君たちにもそれがあることを、我々も知っている。」
V3と2号がライたちに信頼を投げかけた。
「オレたちはこの先も、正義と平和のために戦う。君たちも君たちの大切なもののために戦うんだ。」
1号が励ましを送って、ライに手を差し伸べた。
「はい、先輩!」
ライが笑みを浮かべて答えて、1号の手を握って握手を交わした。
長い年月の中、様々な世界で多くの仮面ライダーが誕生した。それぞれの場所でそれぞれの戦いをして、時に世界や時代を超えて力を合わせる。
仮面ライダーの歴史と魂の大きさを、ライたちは実感していた。
「オレたちも戦うぞ。いつの時代でも、どの世界でも。」
「おおっ!」
1号が掛け声を上げて、ライたち仮面ライダーが答えた。1号たちはライたちの前から歩き出して、それぞれの戦いに戻っていった。
(ありがとうございます、先輩。オレたちもこれからも戦います。オレたちの大切なもののために、仮面ライダーとして・・)
ライが心の中で決意を呟いて、ライダーたちを見送った。
ライたちが無事に帰るのを信じて、まりとひろしは待っていた。
「揺れも治まったし、空も元に戻った。全部丸く収まったってことだよな・・」
ひろしが周りの様子を見て呟く。
「はい・・・ライくん・・かなたくん・・聖也さん・・・」
まりが答えて、ライたちが戻るのを心から待っていた。
「あっ・・ひろしさん、あそこ・・!」
そのとき、まりが声を上げて、ひろしとともに前を見つめる。2人に向かってライ、聖也、かなたがやってきた。
「ライくんたちです!」
「みんなー、待ってたぞー!」
まりが喜びを浮かべて、ひろしがライたちに向かって大きく手を振る。
「あっ、まりちゃんとおやっさん!あそこまで迎えに来てくれたんだね!」
「2人とも、今回の脅威が去ったことを知ったようだ。」
かなたも喜びを見せて、聖也が微笑んで頷いた。
(帰ってこれた・・オレたちもみんなも、世界も無事だった・・・)
平穏が戻ったことを実感して、ライは笑みをこぼしていた。
(この小さな幸せから、地球や宇宙、世界を守ることが、仮面ライダーの使命なんだ・・・!)
仮面ライダーとしてあるべき姿と、自分自身が守りたいと考えるもの。ライは両者を考えて、改めて決意を固めていた。
「ライくん、もう解決したんだよね・・・?」
まりがライに近づいてきて、声を掛けて微笑んできた。
「まりちゃん・・あぁ。今回のことはな・・」
我に返ったライが、まりに小さく頷いた。
「オレはこれからも戦う・・オレの大切なものを守る・・オレがそう決めたんだ・・・」
自分の決意を口にするライに、まりは戸惑いを感じていた。
(変わっていない・・ライくんのまま・・クロスになっても、ライダーとして戦い続けていても、ライくんの考え方は変わっていない・・)
ライらしさが変わっていないことを実感して、まりは安らぎを感じていた。
「ラーイ!まりちゃーん!」
「ボーっとしてると置いてくぞー!」
かなたとひろしがライたちに向かって呼びかけてきた。
「はーい!行こう、ライくん!」
「あぁ・・!」
まりとライがかなたたちを追っていった。ライたちは橘モーターショップに戻って、束の間の日常に戻っていった。
仮面ライダー。
世界や人々を脅かす怪人に、素顔を隠して戦い続ける戦士。
その歴史は終わらない。
仮面ライダーの歴史は、これからも続いていく。